ロンドン・ミュージカル・バンザイ

ロンドンはミュージカルの本場です。ここで、週末中心に、過去5年で300回の劇場通いを続けています。ウェスト・エンドの大作だけでなく、オフ・ウェスト・エンドの小品まで含めて、ロンドンの最新のミュージカル情報(足で稼いだ生情報)をお届けします。

2012年02月

「STOMP(勝手に邦題:ドタン・バタン)」

先週行った「Mousetrap」の隣で、これまたロングラン公演しているのが「STOMP」です。

Stomp

ほうき、バケツ、モップ、マッチなどをパーカッションの道具として使い、これにダイナミックな踊りの振り付けと、ユーモアたっぷりのスキットを組み込んだユニークな作品です。

http://www.stomp.co.uk/location/uk/


実は、この作品、私は、日本からロンドンに出張や遊びで来るお客さんや友人を連れて行くのに良く使っています。

その理由は以下の5つです。

(1)   英語がありませんから、外国語に自信が無くても大丈夫です。

(2)   上演時間が1時間半ですから、時差ボケで眠くなる前に終わります。

(3)   一応、West Endで本場の舞台を見たという実績ができます。

(4)   日曜日にも公演があります。(火曜日、水曜日がお休みです)

(5)   半額券が出るので、TKTSで購入すれば安くて済みます。事前予約も不要です。


日本からロンドンに観光でいらっしゃる方には、すきま時間を有効に使って楽しめるので、特におすすめです。

「オペラAida(邦題:アイーダ)」

ミュージカルにも同名の作品がありますが、今回見たのは、ヴェルディ作曲のオペラ作品の方です。

aida(1)

http://www.royalalberthall.com/tickets/aida/default.aspx


場所は、ロイヤル・アルバート・ホール。円形劇場でのオペラの演出はどんなものだろうかと興味を持って行ってきました。

エジプトの遺跡の発掘現場が劇場の中央(アリーナ)に設けられています。

Aida(2)

おそらく100年ほど前でしょうが、イギリスの発掘隊が遺跡から刀剣、ミイラ、パピルスに書かれた文書を見つけます。女性の画家が、それらを元に空想の世界に浸るなかで、エジプトの将軍ラダメスとエチオピアの王女アイーダの悲劇が再現されていくという見立てになっています。

オーケストラボックスはアリーナの後正面(パイプオルガンなどがある方)の下方に設けられ、その上の大きなスクリーンに、ピラミッドの外観、神殿内部、ナイル河岸などが投影され、アリーナの大道具は固定のまま、場面を切り替えるという工夫をしていました。

このセットの構成の結果、あおりを食ったのがオーケストラの指揮者でしょうか?

通常のオペラでは、指揮者の入場とともに拍手が起き、指揮者もこれに応えて挨拶をするのですが、今回のセットでは観客にオーケストラがほとんど見えなくなってしまったので、指揮者の入場に誰も気が付かず、指揮者も戸惑いながらも指揮を始めざるをえないという現象が起きていました。

肝心のオペラの方ですが、ラダメス役のJoseph Wolvertonとアイーダ役のClaire Rutterはちょっと太めの体型で悲劇の主人公にはちょっとふさわしくなく興をそぎましたが、アイーダの敵役でアムネリス役のLiuba Sokolovaは、深みのある歌声で迫力満点でした。

Aida(3)

実は、このオペラ「アイーダ」を見るのは今回が生涯で2度目です。前回は、今から30年以上も前、ヨーロッパに留学していたころに見たウィーン国立歌劇場での公演でした。(年がわかってしまいますね)

この時は、国会議員とその関係者に対する特別の貸切公演だったため、一般には若干数の立席券だけが売り出されただけでした。

お金のない学生でしたから安さに飛びついて見に行ったのですが、長丁場のオペラを立ってみるのは苦痛以外の何物でもありませんでした。最後の方は、しゃがんで音楽だけ聞いていた覚えがあります。

というわけで、今回は、じっくりと最後まで鑑賞できたという意味で、満足のいくものでした。

「Chicago (邦題:シカゴ)」

Whatsonstage.com awardsの新作ミュージカル賞を受けた「Matilda」を上演する場所を確保するために、ロンドンでロングラン中の「シカゴ」が、小ぶりの劇場であるGarrick 劇場に押し出されてきた形になりました。

chicago

http://chicagothemusical.co.uk/

2009年の6月以降ご無沙汰していたのですが、一週間前に行った「Horrible Histories – Barmy Britain」が同じ劇場を使っていたこともあり、せっかくだからとTKTSで割引券を買って見に行ってきました。

「シカゴ」が長く続いている理由の一つは、主役級に有名な歌手、モデル、俳優などを期間限定で据えることで、演技の違いや解釈の違いなどで、バリエーションを持たせ、結果として、リピータを増やしているからではないでしょうか?


前回見たときは、弁護士役がJerry Springerという米英で有名なTVのニュース番組のプレゼンターで、たった6週間の特別出演でしたが、その堂々とした語り口で、他の役者さんを完全に食っていた感がありました。

今回は、ベルギーのバレリーナ出身の小柄なSarah Soetaertが、単純・無邪気で可愛く奔放なロクシー・ハート役を務める一方、ベルマ・ケリー役は長身で最高にスタイルのいいRachel Macdowallが宝塚の男役のように凛々しく務め、この二人の女優の個性が目立った舞台になっていました。

フィナーレで二人が踊る場面では、長身のRachelと小柄なSarahの身長差が30センチ以上もあるため、ほとんどの場合はちょっと離れて踊らせていましたが、時々絡むところでは、むしろ身長差を利用して上下に重なる面白さを生みだすように振付上の工夫をしていたので感心しました。

残念だったのはメリー・サンシャイン役のR. Whiteheadの役作りの中途半端さ。もっとメリハリをつけてほしかったですね。

ところで、日本の旅行ガイドブックなどにも、おすすめのミュージカルとして、この「シカゴ」がよく出ています。しかし、「英語がよっぽどできる」か、「筋を良く知っていて音楽だけ聞きに行く」かでない限り、音楽と踊りと舞台装置から内容を完全に理解するのはちょっと難しいので、無責任に一般の人にお勧めするのは、ちょっと考えものでしょうね。

「Jersey Boys (邦題:ジャージーボーイズ)」

ドンの劇場は、子供向けを除いてほとんどが日曜日を休みにしています。そんな中で、「Jersey Boys」は大人向けとして数少ない日曜公演のあるミュージカルです。「Whatsonstage.com Awardsの授賞式とコンサート」に出るためにせっかく街に行くのだからと、TKTSで半額券を買って見に行きました。

jersey boys

http://jerseyboyslondon.com/


このミュージカルは、高い唄声で有名になったFrankie Valliとフォー・シーズンズの結成、解散、そして再結成までを彼らの歌を交えて綴ったものです。昔、耳にした曲も多いので、全く親しみが持てないわけではないのですが、「トリビュート」という有名人の活動の歴史をつづるタイプのミュージカルは工夫が無いので、どうも好きになれないというのが本音です。

同じ有名人の曲を並べるなら、「We Will Rock You」「Mamma Mia!」「Dreamboats and Petticoats」のように、さすがと言わせるようなストーリー構築などをして欲しいですね。

ところで、このミュージカルを前に見たのは2009年の7月初旬でした。土曜日の昼の公演を見て、劇場を出たのが夕方の5時ぐらいだったでしょうか、とにかく劇場の前がすごい人混みなのでびっくり。それも、筋骨たくましい肉体を誇るかのような男性たちが多いのに圧倒されました。

なんと、その日はロンドンの同性愛者たちの権利を主張する大パレード「Pride Parade」が開催された日だったのですね。

Jersey Boys」のプリンス・エドワード劇場の周りがSOHO地区でも同性愛者の集う場所として有名ですので、ロンドンの目抜き通りを行進した後、皆、流れてこのあたりに集まってきたようです。

というわけで、その時は、その情景に圧倒されてしまい、ミュージカルの印象はどこかに吹っ飛んでしまった感がありました。

今回は、落ち着いてみることができたものの、やっぱり趣味に合わないものは、時がたってもダメなのだなと再確認した次第です。

プロデューサの養成ということ

日曜日に行ったWhatsonstage.com Awardsの授賞式で、STAGE ONEという団体が紹介されていました。

Awards会場

http://www.stageone.uk.com/


演劇界を活性化させるためには、単に役者さんを養成するだけではだめで、彼らを活かすために、マネージャとしての優れたプロデューサを養成し、新しい良質の作品を上演する機会を作ることが大切だとの理念でできた団体だそうです。

ホームページを見てみると、奨学金や賞金のように渡し切りのお金ではなく、あくまでも投資の対象して資金を供給するという方法をとっています。従って、はじめから劇場事業を成功させるための経験を若手に積ませることを目指すスキームになっているのです。

こんな仕組みがあるからこそ、エジンバラの夏のフリンジやロンドンのオフ・ウェスト・エンドで様々な実験的な舞台が発表され、そこで育った人たちが、さらに経験を積んで、ウェスト・エンドの今の盛況、つまり観光客などが沢山のお金を落としてくれる場を作り上げているのですね。

  • ライブドアブログ