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初恋

香港徒然でくさ

私上野徹の私小説です。
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あの三億円事件の実行犯。

2007年02月18日

転勤希望

 私は開発地域と地主との境界を境界査定に立ち会った時全て頭の中にインプットしていた。
 その為地主を殆ど知っていた。
 地主はその殆どが多和目ちくにいたので、私が村を歩くと村人と会えば必ず寄っていけと言われてお茶をご馳走になった。
 田舎の人はお茶と煮物とかてんぷらとかを縁側で振舞う。
 あまり食べたくない時でも箸で私の手の平に渡してくれるので食べない訳にはいかない。
 あれには時には困ったものだ。

 小学校を作るのに私はどう設計しても用地が足りない。
 隣接する武藤督二さんの土地があれば何とか出来る。
 用地課に依頼するもなかなか買収交渉が上手くいかない。
 
 半ば諦めて造成工事を着工することになった。
 そこで武藤さんとの境界に杭を打つために武藤さんに立ち会ってもらった。
 武藤さんは変わり者らしく村でも評判が悪い。
 村の出事にも殆ど顔を出さないと村の人から前評判を事前に聞き集めていた。

 私は喧嘩してでも一人で買収の交渉をしようと心に決め山の中で落ち合った。
 私は大きな木槌と一束の木杭を担いで山の中で武藤さんを待った。
 武藤さんは野良仕事の途中でやって来た風だった。
 「武藤さん どうして売ってくれないんですか。あの土地がないと小学校の建設が不可能なんです」
 「百姓は土地手放したらお終いだんべ。みんな金に目がくらんで先祖から頂いた土地を簡単に売る。初め反対していた奴等も値を上げたら売ってしもうた」
 「ここに出来る小学校は団地だけの者じゃないんですよ。村の子供たちも通えるんですよ。貴方の家族や将来にはお孫さんたちが近い学校に通えるようになるんです。 貴方の土地は用地を確保するための法面として必要なんです。どうか売ってください」
 「いいや 売るわけにはいかん」と言い張る。
 私は頭にきた。
 「売りたくないなら子供たちの為に寄付したらどうですか」
 私は半分喧嘩腰で言った。
 「そうだな。寄付だったらしてもいいな」
 私は自分の耳を疑った。
 「今まで来た人は金の事しか言わなんだ。いくら欲しいのか。いくらだったら売るのか。そればっかりだ。あんたが始めて金のこと言わなかった」
 武藤さんの顔は来た時より輝いて見えた。
 「上野さんどうぞ 自由に使ってください。そして法面には私が子供達の為に花を植えるよ」
 いきなり武藤さんは饒舌になった。
 おそらく武藤さんは断り続けるのに疲れたのかも知れない。
 首を縦に振るタイミングを失したのでもあろう。
 武藤さんは現場を道案内をしながら、ここに何を植えよう。ここには何をと機嫌よく私を案内した。
 その為後日、わが社との境界ではなく武藤さんとその隣の境界査定に立ち会っていただく約束をして分かれた。

 用地課はどうして説得したんだと頻りに聞いてきた。
 「くれと言っただけですよ」と私は答えた。

 早速遅滞していた小学校の造成工事が始まった。
 武藤さんは工事をよく見に来ていた。
 その武藤さんの顔はいい顔をしていた。
 ところがまた事件が起きた。
 いつもの山田さんが事務所に飛び込んできた。
 「すみません。うっかりよその田んぼに土入れてしまいました」
 聞いてみると小学校予定地の下の永源寺の田に土を入れてしまったらしい。
 「元に戻すと言っても全く聞き入れてくれません」
 私は永源寺の後家さんとは顔見知りであった。
 スナックのリエと親戚だったので滝沢と一緒に遊びに行ったことがある。
 私が行くことにした。
 私はこのような時に決してシナリオを用意しない。
 いきあたりばったりでぶつかるのである。
 筋書きを用意するとその通り行かない時に寧ろ戸惑ってしまう。

 「おばあちゃん ごめんなさい。僕がちゃんと指示しなかったから迷惑掛けています。ばあちゃんちょっと来て」と言って私はその後家さんをみんなから離れ奥に呼んで「あのね あの状態から現状復帰しても前と一緒でいくばくかの慰謝料を取ってもなんの利益もないよ。ばあちゃんの土地は8メートルの幹線道路に接するから道路と同じ高さだったら使いやすいよ。頼まれてあの工事をやったら相当のお金がかかるよ。あのままで良ければ後ろは私どもで立派な石積みもしてあげるしきちんと整地もやるから将来宅地にもなるよ。あれを元に戻せば何の価値もないよ。悪いようにはしないから私の言うとおりにした方がいいよ。あそこの土を取ってしまえば道路よりかなり低くなるからなんにしても使いにくくなるのはまちがいないよ」と諭した。
 「上野さんに任せるか」とめでたく交渉成立。
 復旧工事をやれば又、こちらは多大な金がかかる。
 しかしこのような交渉事も、誰もその過程を見ていないのであまり話題にはならなかった。
 所長も私が行けば安心して結果も聞いてくれない。
 片付けてくるのが何故か当たり前になっていた。
  
 この大好きだった坂戸から転勤したいと思うようになった。
 第一の原因は小岩のこともあった。
 しかし 私はここでは一番乗りだからかなり大きな顔ができたので他には不満はなかったのであるが、その気持ちを大きくさせたのがオイルショックである。昭和48年だったか、オイルショックがやって来て市場から洗剤が消え、トイレットペーパーが姿を消した。
 ニュースではハワイからの帰りにバッグいっぱいのトイレットペーパーを買ってくる光景が映し出されていた。
 三上の家でも押入れの中にトイレットペーパーが布団を外に出していっぱい入っていたらしい。
 私は子会社の角栄ストアーで全く名前の入っていない白い箱に入った洗剤を入手出来た。
 他の客に見つかるとパニックになるからと裏からこっそり出て行った。
 そのオイルショックが直接の原因ではないのだが、その時私は小松左京の日本沈没を呼んでいた。
 その内容は千葉の房総から沈み始め関東は早く沈没する。
 その時、町の中は洗剤、トイレットペーパーが売り切れパニックになりスーパーは壊され人々は物を盗み恐怖の東京が書かれていた。
 その光景に似ていた。
 私は関東脱出を考えた。
 どこでもいいと思った。
 たまたま、当時ブラジルでの超大型団地の計画があった。
 下見に本社から鹿島さんと飯塚竜一が二人で行った。
 私は所長にブラジルに行きたいと申し出た。
 「お前 ブラジルがどんなに遠いか、計画の団地の大きさがどんだけ広いか知ってるか。この団地の地図がブラジルの団地の大きさとすると一区画が今の坂戸の団地ほどあるんだよ。お前行ったら一生帰れないかも知れんぞ」と壁に貼ってある団地のを指しながら言った。
 私はそれでもいいと思った。
 「とにかく 私を推薦していて下さい」と頼んだ。

 新泉所長は三池部長が言っていた通り私は大好きだった。
 本当に部下思いであった。
 それに馬鹿な私の操縦が上手かった。
  
 こんなこともあった。
 ボーナスをもらってどう見ても私が最低のEランクではないかと思えた。
 私は金の話をするのがかねてより大嫌いであり苦手であったが、その時は所長に抗議した。
 「やはりばれたか。お前の言うとおり上野はEランクだよ。俺の気持ちにもなってくれよ。AからEを全部つけなけりゃならんのだよ。もし他の者につけて見れ。大変な事になる。ぎゃあぎゃあ言って来て俺の体が持たん。うちに駄目社員がいないから苦労するのよ。上野お前だけが金に汚くない。お前は金で動く人間じゃない。すまん我慢してくれるか。察してくれよ」
 私は簡単に察してしまった。
 そして決して自分を飾らず正直な新泉さんをますます好きになった。
 新泉さんのエピソードはまだある。
 昭和47年の夏のことである。
 8月のある日曜日の夕方、家にいると三上が「上野さん能登行きませんか」
 「いつ?」
 「今からですよ。俺明日から夏休みですから」と言う。
 「俺はまだ夏休みやないぞ」
 「上野さんはいいんです。勝手に休んでも怒られないから」
 「そうか、そうだね行こうか」と着替えをバッグに詰めて直ぐに三上の買ったばかりの車で出かけた。
 翌朝、能登から電話をした。
 山崎よし江が電話に出た。所長に代わってと言ったが幸い所長はいなかった。
 まっ いいかと電話を切って旅を続けた。
 後で聞いた話だが、所長が「上野ボーナス前に金はあるんかいな」と心配していたらしい。
 またこんなこともあった。
 皆でゴルフに行くから上野も行こうと誘われた。
 私は何も持たないと言うと新泉さんが俺の古いのをあげると言う。
 当時、川越の霞ヶ関から通っていた者が多かったので運転手の中島さんが送り迎えのマイクロバスを出していた。
 新泉さんもそれで通っていたのだが何日経ってもゴルフバッグを持ってこない。
 「悪い、悪い 忘れた」と頭を掻きながら笑っている。
 「笑ってごまかしちゃだめですよ。中島さん明日の朝所長がゴルフバッグを持ってなかったら絶対バスに乗せないでよ」と言った。
 「分かりました。そうします」と中島さんは微笑みながら答えた。
 次の日、やっとゴルフバッグを抱えて新泉さんが出勤してきた。

 こんなこともあった。
 いつものように徹マンをしていた。
 その時新泉さんもいた。
 朝8時を過ぎてもみんな点棒を箱に入れる。
 点棒を箱に入れると言う事はまだ続けると言う合図である。
 「上野よ もう人が出勤してくるよ。やめようよ」と言う。
 「何言ってんですか。俺がやめようと言った時やめなかったくせに。やめたいんなら俺が負けた分チャラのして良いですか」と言うと新泉さんも点棒を箱に入れだした。
 どうやら仕事より買った分をチャラにするのは嫌らしい。
 素敵な上司だった。

 私は九州支社が出来た時、転勤を希望した。

vive614 at 12:51│Comments(0)TrackBack(1)

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