風に吹かれると
身体は透き通り
いつの頃か消えてしまった犬と
一緒に歩いている
夕暮れのひととき
森の中に光が宿る
過去と未来をつなぐひらめき
切り株にすわって
本棚に埋もれていた本を開くと
新緑の言葉
高いわらい声
飛び出してきて
つながる今を探しはじめる
わたしは死んでいない
過去に開いた花草
抱えて
未来へ運んで行く
ざわめく風に乗って
忘れない
滅びない
透き通った犬が
意地を張ったわたしを
優しく見つめている
あのときと同じ濡れた瞳
一緒に行こうね
いつもいつも
わたしは生きているから
公園の変わらぬ緑
本棚に並んだ、古びた本
全て全てつなげてもっていたくなった。
捨て去ってものも拾い上げたくなった。
不思議な時間だった。