風が吹くとちいさないもうとがたずねて来ます。はしばみ色の目を伏せて 台所で菊の花をゆがいています。
かたわらの鍋で湯があわあわと吹きこぼれています。
…《みずが いっぱい ほしいよ》という声にふりむくと さっきゾウのいた付近から夕月がのぼっています 如雨露(じょうろ)をもってはだしで裏庭におりていくと ゾウは萎えた植物の匂いを立てて臥せっています それは地を這うエレファンタ属というハーブの一種です 遠い星にいつか生えていた薄色(すすきいろ)の草です
…台所でほのかにエプロンが揺れています ちいさないもうとのうしろ姿の近くを 死んだ母が通り抜けていきます(そこはひとつの星です)菊の香りがたたよい 鍋の湯があわあわと吹きこぼれています 「秋のいもうと」より
毎年、この頃になると、この詩集を取り出して、読んでしまう。
生と死、動物と植物、日常と非日常…。
ちいさないもうとがつなぐ両極の世界。
秋分の日に読むとちょうどよかったのかな…と思いながら、本をひっくり返す時間は、なんて贅沢なのだろうと思う。
ねばならない世界に追われて取りこぼしたものを拾って歩くような、そしてその中にささやかな光を見つけて手のひらにそっと包むような、そんな時間を大切にしたい。
いつも、2つの世界は同時に存在する。それを感じて生きていきたい。
かたわらの鍋で湯があわあわと吹きこぼれています。
…《みずが いっぱい ほしいよ》という声にふりむくと さっきゾウのいた付近から夕月がのぼっています 如雨露(じょうろ)をもってはだしで裏庭におりていくと ゾウは萎えた植物の匂いを立てて臥せっています それは地を這うエレファンタ属というハーブの一種です 遠い星にいつか生えていた薄色(すすきいろ)の草です
…台所でほのかにエプロンが揺れています ちいさないもうとのうしろ姿の近くを 死んだ母が通り抜けていきます(そこはひとつの星です)菊の香りがたたよい 鍋の湯があわあわと吹きこぼれています 「秋のいもうと」より
毎年、この頃になると、この詩集を取り出して、読んでしまう。
生と死、動物と植物、日常と非日常…。
ちいさないもうとがつなぐ両極の世界。
秋分の日に読むとちょうどよかったのかな…と思いながら、本をひっくり返す時間は、なんて贅沢なのだろうと思う。
ねばならない世界に追われて取りこぼしたものを拾って歩くような、そしてその中にささやかな光を見つけて手のひらにそっと包むような、そんな時間を大切にしたい。
いつも、2つの世界は同時に存在する。それを感じて生きていきたい。