G8サミット 現世のナポレオンたち酸素の缶詰

2006年07月18日

日本の発展は終わった

井上: 国の力とは何をものさしに割り出すのか、よくわかりませんが、最近、日本の国力は、敗戦のあとの自信を喪失していた時代と比べても、また東京五輸のあとと比べても、総体にみんなぼんやりしているというか、何か活力がなくなってきたという印象があります。

司馬: それはありますな。

井上: 今年(九五年)最大の特徴かもしれません。政治家も官僚もすぐに動けない。「乃公出でずんば」というような人もいませんし、一方でどんどん失言して状態を悪くしていく人がたくさんいる(笑)。どうも国力が落ちてきているんじやないかという心配があります。

司馬: もう、だいたいこれで終わりなんでしょう。日本のいわゆる発展は終わりで、あとはよき停滞、美しき停滞をできるかどうか。これを民族の能力をかけてやらなければいけないんです。

井上: 美しき停滞……、それはいい言葉ですね。

司馬: でも、どうもその美しき停滞にはいけそうもない。先日、宮崎駿さんがおっしやってました。アニメ映画をつくるときの、若い声優の声がだめなんだそうです。たとえば『紅の豚」では、登場人物の一人である十七歳の女の子がアメリカからイタリアの町工場主のおじいさんのところに戻ってきて飛行艇を設計するんですが、その子の役を一般の人だちから募集してテストしてみたら、ほとんどみんな娼婦の声なんだそうですな。

井上: なんだかかなしい話ですね。

司馬: 井上さんも私も一人でやってきましたが、吉崎さんはアニメですから画工が必要ですね。しかし画工が百人いても、できる人は何人かしかいないらしいんです。そのできる人は大変な仕事をこなしているけれども、給料は平等にしてあるそうです。で、あんまり忙しそうだから二人にすると、やっぱり二人とも忙しくて同じ効率しかない。それで三人にすると、今度は効率がゼロになるという(笑)。
 会社でもそういうことかおりますね。この問、ある出版社の古手の重役さんが話していました。自分たちのとさには三分の一の人数で、しかもいろいろ遊びながらやっていたのに、いまは自分たちのときよりも忙しそうに働いている。ところが、よく考えてみたら、人数は増えていても、小さな仕事を細分化してただ単に忙しがってるだけだと。「それだけ日本はだめになったんでしょうか」と言ってショックを受けているんですね。

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