『パペラキュウ』という漫画がある。2011年8月からほぼ月刊で連載され、この記事が出るころには第45話まで描かれているはずだが、単行本はまだ出ていない。というのも、この作品は松永豊和という漫画家が個人HPで公開している、完全にインディペンデントなWEB漫画だからだ。 

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タイトルの語感と同じく、主人公のひとり「サチオ」の容姿にも強烈なインパクトがある。なにせ、丸い頭の横からカニのようなハサミと足が生えているのだ。一見して、ギャグ漫画だと思う読者も多いだろう。

 

だが、数話も読み進めれば、かなり重厚なテーマを扱った作品であることが伝わってくるはずだ。サチオの異形や犬の顔をした警官などの突飛なキャラクターも、〝パペラキュウ〞を軸にしたストーリーのなかで、残酷さと不条理のにおいを漂わせ始める。巧みな設定と、過剰で暴力的なアクション描写に圧倒され、この世界観に呑まれてしまうのだ。 

 

筆者は昨年この『パペラキュウ』を知り、ひと晩で公開分をすべて読み切った。余韻に浸りながら頭に浮かんだのは、「なぜ、これほどの漫画を描ける人が、ネットに埋もれているのか?」という疑問だ。 

ご存じの方も多いかもしれないが、松永豊和氏は1993〜1997年にわたって連載された『バクネヤング』でカルト的な人気を得た漫画家だ。その後、『エンゼルマーク』(2001)、『竜宮殿』(2004-2005)を発表したのち、商業漫画誌から姿を消した。 その経緯については、彼がHPに公開している自伝的小説『邪宗まんが道』に詳しく書かれている。もちろん、それは松永さんの視点でしかないわけだが、おそらくは創作にかける作家の熱量と、編集者のそれとのギャップが生んだ行き違いがあったのだろうと推測する。余計なお世話かもしれないけれど、知れば知るほど、「もったいない」と思ってしまった。 


この記事を書くにあたって松永さんにインタビューを申し込んだが、筆者の個人的な疑問に丁寧に答えていただいたうえで、「現在のところ、インタビュー等の取材はすべてお断りさせていただいている」とのお返事をいただいた。当然といえば当然。漫画を描くことも、自分の考えを伝えることも、松永さんはHPで自足しているのだ。創作に関して間に人を挟むことは、彼にとってストレスでしかないのかもしれない。 

 

ただ、一読者としては、この漫画がもっと多くの人に読まれ、いずれは単行本として出版されてほしいと願っている。ひとつは、これだけ真摯に描かれた漫画には対価を支払って当然だと思うし、そうすることで彼に漫画を描き続けてほしいから。それに、不器用だからといって表現者が発表の場を失うようなら、この先こんなにヒリヒリするような漫画が読めなくなるんじゃないかと思うからだ。

 

Ⓒ2008-2015 Toyokazu Matsunaga

 

【関連リンク】

「あの松永豊和は今」(公式サイト)

 

「パペラキュウ」