とある中年男性の日常と追憶と妄想を綴ったそれを、五味岳久(LOSTAGE)、日暮愛葉(SEAGULL SCREAMING KISSHER KISS HER)、青木ロビン(downy)、ケンゴマツモト(THE NOVEMBERS)、中尾憲太郎(元NUMBER GIRL)など錚々たるアーティストがめくっている。照れ隠しのような冗談と死臭が漂う20万字の書籍は、いかにして産まれたのか? 出張のため秋葉原を訪れた作者の吉田棒一氏に訊いた。

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──文章を書き始めたのはいつですか?


吉田:2001年9月11日からだったのを覚えてます。まだ学生で友だちとバンドをやってて、そのサイトで日記を書き始めたんですよ。それが最初です。「N.Yで大変なことが起きた」って臨時ニュースが流れてたのを覚えてます。

 

──書くこと自体には興味があったんですか?

 

吉田:全然なかったです。

 

──影響を受けた作家って誰ですか?

 

吉田:学生の頃に新刊が出るたびに買ってたのは、松尾スズキさんくらいかもしれない。そもそもそんなに本を読む方ではないですね。「『心臓抜き』(ボリス・ヴィアン著)と関係あるんですか?」とか、『悪道日記?』(アゴタ・クリストフ著)とか『狂人日記?』(魯迅 著)とか、名作との関連性をよく聞かれるんですけど、どれも読んだことなかったです。

 

──町田康さんとか中原昌也さんとか、音楽の人の文章のリズムって独特なんですけど、吉田さんにもそれと近いものを感じます。

 

吉田:よく分からないんですけど、いろんなミュージシャンに受け入れられているのを見ると何か関係があるのかなと思うし、もしそうだとしたら嬉しいです。自分は、本当は音楽をやりたかったけどその才能がなったという人間なので。

 

──ロックバンドskillkillsのマナブスギルさんがつけた「辺境の有害図書」ってキャッチコピー、本当にかっこいいですよね。

 

吉田:あんなイカれたバンドの人に有害だなんて言ってもらえるのは恐縮ですよ。普通のおっさんが書いた本ですから。

 

──その“普通のおっさん”が10年以上書き続けたものをまとめようと思ったのは何故ですか?

 

吉田:友だちにあげようと思って、エスコ(『心臓日記』の装丁を担当)に相談したらBCCKS(書籍の制作、販売を無料で行うwebサイト)を紹介してくれて。ネットに書いてあった文章をまとめて5、6冊作って友達に送りつけたんですよ。それで終わりになるはずだったんですけどね。物好きがいるんだということがよく分かりました(笑)。THROAT RECORDS(奈良県のレコードショップ)やツバメスタジオ(浅草橋のレコーディングスタジオ)で宣伝してもらったり、SEAGULL SCREAMING KISS HER KISSHERやdownyのファンが「(愛葉さんやロビンさんの)ツイートで知りました」って買ってくれて。

 

──エスコさんが手がけた装丁も大きいですよね。

 

吉田:最高ですね。表紙に騙されて買ってる人も沢山いると思います。何書いてあるか分かんない本ですし(笑)。自分でも何書いたか覚えてないし、ほぼ排泄物ですね。

 

──でもそのまま垂れ流すんじゃなくて、書籍として成立させたのは素晴らしいです。

 

吉田:ネットって昔は、面白くないやつは発言権なしって感じでガンガン淘汰されてましたよね。その頃に書いてたので、最低限の読みものくらいにはなっているのかもしれません。

 

──そして実際売れましたよね。執筆が本業でない人がこれだけ結果出した。

 

吉田:出来過ぎですよ(笑)。十分十分。

 

心臓日記

398ページ/2326円

http://vvstore.jp/i/vv_000000000077600/