
バンドでの作詞・作曲のほか、文筆家や詩人としても活動しており、NHKの子供向け番組にもレギュラー出演。言葉を自在に操りアンダーグラウンドとオーバーグラウンドを行き来する彼のアタマの中を探るために、これまでに影響を受けた本について聞いてみた。
『ぼくの哲学』
(アンディ・ウォーホル 著)
松永 これは芸術家のウォーホルが「愛とはなにか」「時とはなにか」などなど、自身の思想や哲学を書き留めている本です。3行ごとに名言が出てくるんですよ。彼が今の時代に生きていたら、おそらくこの本に書かれていることをそのままTwitterに投稿していたでしょうね(笑)。
——ウォーホルbotといっても過言ではない一冊(笑)。具体的にはどのような影響を受けましたか?
松永 ウォーホルの描く作品は、言うなれば「きらびやかな張りぼて」。「ポップさ」を際立たせながら、そのすぐ後ろには空虚さが控えている。ポップとは何か?「大衆的なものに毒を含ませる」ことだと思います。甘くておいしいお菓子を作っているんだけど、そこに一滴だけ猛毒を含ませる、みたいな。
アーバンギャルドの楽曲でも、聴きやすくキャッチーであることにこだわりつつ、ちょっとした毒を含ませている。ウォーホルがこだわったような「ポップさ」を大事にしています。
『ポケットは 年代がいっぱい』
(香山リカ 著)
松永 これは精神科医の香山リカさんが80年代に自分が過ごした青春を回顧している本。
今でこそ80年代ってすごくきらびやかなイメージがありますけど、これを読むと多くの若者たちはまだまだ泥臭かったことに気付くんです。
——ご自身も80年代のテクノポップを主体にした音楽やカルチャーがお好きだと仰っていますが、この本はどのような点が気に入られていますか。
松永 時代はどうしても包括的に語られがちだけど、実際は個人の内側にあるものを掘り下げていかないと見えてこない部分ってあるんですよ。
この本のようにその人の言葉でその人個人の思いがつづられていると、伝わってくるものがたくさんあります。80年代という時代を知る上での教科書的な存在ですね。
『ぼくらは都市を愛していた』
(神林長平 著)
松永 これは親交のある神林長平先生の本です。デジタルデータが全て破壊されてしまう「情報震」が起きた日本を描いたSF作品で、アーバンギャルドの『あした地震がおこったら』という曲からもインスピレーションを受けたと語っていただいています。この曲は2010年にリリースしていて、本は震災前に書き始められているんですが、東日本大震災を通して「物理的なもの以上に我々は情報に依存している」「街以上に、情報が…人々の言葉が分断されてしまったのだ」と気付かされましたね。
——震災前後で楽曲制作への意識は変わりましたか?
松永 歌詞を「みんな」に向けて書くんじゃなくて「あなた」に向けて書くようになりましたね。聴いている相手と一対一で向かい合うような。もともと心がけていたことではあったけれど、それがより先鋭化されました。
松永天馬さん
アーバンギャルドにて歌、作詞作曲、美術、映像、詩の朗読を担当。バンド活動にとどまらず、詩や小説の執筆、NHK教育『Let’s天才てれびくん』にレギュラー出演するなど、活動は多岐にわたる。9月には夏フェスが似合わないバンド・リスナーによる「鬱フェス」を主催、10月からは全国ツアーを控えている。東京生まれテクノポップ育ち。
※本記事は毎月25日頃、各店舗で配布している『VVマガジン』最新号からお届けしております

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