おおおっと、企画を根底からくつがえす衝撃のスタート! というわけで、山口監督がお好きなホラー作品を挙げていただきました。知られざる名作のエピソードの数々に、もう聞いてるそばからレンタル屋に走りたい気分!! 必見です!!
『ABC・オブ・デス』
(2012年/山口監督含むほかの監督たち)
これは「パート2がもうすぐDVDになるから買ってね、ついでにこっちも観てね!」というヨコシマな気持ちで推薦します(笑)。
A~Zを26人の監督に振り分けて各々3分の映画を作る、というアメリカのオムニバス企画。日本からは西村喜廣監督、井口昇監督、僕の3人が参加しています。僕はJを与えられたので、『Jidai-Geki』として介錯人の話をやりました。死をテーマにすればなんでもいいと言われたので、僕はホラーじゃなくコメディです。
ほかのもだいたい面白いんだけど、僕が一番好きだったのはザヴィエ・ジャン監督が担当したXの『XXL』。デブの女性がダイエットしてたらパラノイアになって、最後に肉を切り落として痩せるという恐ろしい内容です。僕の作品は海外のサイトで「全く怖くはないが一番印象に残る」って書いてあったのを発見して、すごく嬉しかったですね。26作品あるので、きっと皆さんも好きな作品が見つかると思います。
『ブロブ宇宙からの不明物体』
1988年/チャック・ラッセル監督
今年の7月に待望のDVDが出たSFホラー。ブロブっていうアメーバみたいな宇宙人が地球を侵略するっていう1958年の映画『マックィーンの絶対の危機』のリメイクです。
特殊メイクとかミニチュアとか80年代のアナログな特撮技術を駆使して、ブロブが生きてるように撮れている。脚本は『ショーシャンクの空に』で知られる名手フランク・ダラボンで、無駄がなく予定調和じゃない展開が秀逸です。「この人は最後まで生き残るんだろうな」と思った登場人物が次々に死んじゃう(笑)。この映画どうなるの!? とハラハラするし、それでいて観客の見たいところは全部見せてくれる。
ほかにも『ミスト』っていうホラーを手がけていて、これがスティーブン・キングをして「原作を超えた」と言わしめた名作なんですが、映画史上稀に見る後味の悪いオチで(笑)。ダラボンを感動系の監督だと思ったら大間違いだよ! と言いたいです。

『デッド・カーム/戦慄の航海』
(1988年/フィリップ・ノイス監督)
『マッドマックス』でジョージ・ミラー監督が話題ですが、前から監督を追っていた僕としては「今さらなに言ってんだ!」と。
ミラーがプロデュースしたこの『デッド・カーム』は、劇場公開されなかった隠れた名作です。クルーザーで旅する夫婦の元へ難破船の男がボートで逃げてくるんだけど、実は殺人鬼。怪しく思った夫が難破船へ視察に行ってる間に、男はクルーザーを乗っ取ってしまいます。3人しか出てこないのに緊張感が途切れない、すごい作品です。
それと、ホラーじゃないけどミラーが監督した『ロレンツォのオイル』もオススメ。難病の息子のために両親が新薬を開発する話なんですが、描写がほぼマッドマックス(笑)。感動もののはずなのに、凄まじいカメラワークと凄まじいテンションのまま話が進んでいく。主演のスーザン・サランドンとニック・ノルティが汗びっしょりで絶叫してるシーンしか覚えていません(笑)。
『肉欲のオーディション切り裂かれたヒロインたち』
1983年/ジョナサン・ストライカー監督
原題は「Curtains」っていうカナダのスラッシャーホラー。プロデューサーは『プロムナイト』を手がけた人なんだけど、監督(リチャード・シュープカ)を前衛的すぎるってことでクビにして、80%くらい作り直したんです。それでクソ映画になってしまったんだけど、もともと監督が撮った幻想的なシーンがあんまりにも怖くて素晴らしい。土砂降りの中でなぜか人形が人みたいに座ってたり、山の中でお婆さんの仮面をつけた殺人鬼がスケートしながら出てきたり、すごいシュールなんです。そのシーンだけでも観る価値あり、です。
映画は強烈に残るワンシーンがあればそれで充分。優れたストーリーが観たければ小説でいいですから、僕は絵で見せるってことを考えている映画が好きなんです。残念ながら日本ではDVDになっていないんですが、予告編がYouTubeにアップされているので、せめてそれだけでも観てください。
【予告編】
https://www.youtube.com/watch?v=sUfzdlUXfyI
山口雄大さん
1971年生まれ。自主映画時代から映画祭、コンペなどで高い評価を受ける。2002年に『地獄甲子園』で劇場映画デビュー。『魁! !クロマティ高校THE☆MOVIE』と、実写不可能といわれたマンガを次々と映像化。テレビシリーズ『怪奇大家族』ほか、ビデオ、CMなどでも幅広く活躍。 現在、有名ギャグマンガの新作を製作中。
※本記事は毎月25日頃、各店舗で配布している『VVマガジン』最新号からお届けしております




コメント