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和菓子 に参加中!

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今年で3年目となる日本橋三越での本和菓衆のイベントにお邪魔した。
ひと目見た時から、物凄く惚れ込んでしまった菓子が一つあったのです。
真っ白な箱に、ただ銀色の文字で、『みずのいろ』とだけ刻まれたパッケージ。
サダハルアオキのような雰囲気を漂わせていますし、TSUCHIYAとアルファベット表記。
上蓋を開けてみますと、これまた見たことのない収まり方。
まるで記念コインを立ててディスプレイしているように、
カラフルな円盤型の菓子を、スポンジに開けた細い穴に差してあり、
青から緑、黄色からオレンジ、赤へと見事に移り変わって行くのです。
美しいガラス玉のような見た目は、もちろん従来の和菓子の概念を覆し、
こんなパッケージの菓子がこれまでにあったであろうかという斬新さがとにかく目立つ。
だが、それだけで、凄い、凄いと連呼していてはいけません。
それじゃあ、ただ表面的な魅力に惑わされているだけに過ぎないのです。

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銘菓『柿羊羹』を初め、この秋から冬にかけて柿菓子で有名な老舗のつちや。
昨年は3Dプリンターによる立体的な菓子を相次いで生み出していらっしゃいましたが、
今年もその路線を継続してくるのかと思いきや、とんでもないところから攻めて来て、
いやあ、これは素晴らし過ぎると、息を飲んだものでございます。
イベントがスタートする前に、写真で拝見していたのですが、
じっくりと見つめてみますと、本当の魅力に気付いてしまったわけです。
ただ見た目にカラフルで、和菓子と思えないその姿に驚いただけでなく、
その円盤状の菓子の形状をよく見てみますと、
ひとつとして、綺麗に揃ってはいないところに着目したのです。
素材は、夏の干菓子でよく見かける寒天製の琥珀菓子。
よく寒氷であったり、干し錦玉であったり、さまざまな名前で呼ばれ、
表面が乾燥して糖化し、シャリッとした食感を生むと同時に、
その中央部分は、寒天の弾力を残している伝統的な製法によるもの。

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だが、これほどに薄く引き延ばされた琥珀は見たことがない。
多くの場合は、1cm以上の厚みがあって、さまざまな形に切り取られたり、
あるいは、乾燥する前に、不定形にちぎられたものなどがある。
また星や月、さまざまな花の形に、型抜きされたものもたくさんあります。
それだけに、丸い形に型抜きされているのかと誰もが思うでしょう。
そりゃ、そうです。その方が効率的ですし、たくさん作れますからね。
ところが、この菓子をよく見てみますと、縁のところは微妙にゆらめいているのです。
真ん丸に見えて、実は真ん丸ではなく、ひとつ、ひとつ、その形は違うのです。
その不定形こそが、まさに菓銘にある水そのものなのです。
水は液体であって、ちゃんとした形があるものではありません。
自由に動き、さまざまなものに染み込んで、雫となって、
その雫が集まって流れを作り、川となって海となって行く水。

銘菓『柿羊羹』
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いやあ、これをひとつ、ひとつ手作業で仕上げて行くなんて、 
想像できないほどに大変で、見えない努力がそこにあることを知るわけです。
何よりも割れてしまうことが多く、罅が入ってしまったり、
ちゃんとした完成品を仕上げるのも、なかなか苦労したはずで、
そのスタイリッシュな見た目からは想像つかぬほどの職人技が光る菓子なのです。
そして、つちやが本店を構える大垣は、まさに水の都と謳われ、
『水まんじゅう』を初めとして、美味しい水の恵みを受けて生き、
その水と共に菓子を作って来た老舗であり、まさに水なしには今はないのです。
そんな槌谷さんの想いが込められている『みずのいろ』は、
大垣に生きる老舗の魂をも映し出しているのです。
現代的に見えて、分かりやすく美しく、分かりやすく斬新な菓子に、
そんな和菓子ならではの奥深さが秘められているとは、驚く他ありません。

大垣のつちや本店
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そうなのです・・・・新しいからではなく、和菓子らしさを誇るところに惚れたのです。
そして、その鮮やかな色合いは、まさに透明な水がさまざまに映し出す日本の風景。
空の色を表す青、山や木々を表す緑、秋の銀杏を表す黄色、
やがて、色付いていく山の木々や柿の色でもあるオレンジ、
そして、最後は照り映える紅葉が湖面に映った赤と、見事な季節の移り変わりを表現する。
これぞまさに和菓子ではないでしょうか。
直接的な名前や形状で、そのままを表現するのも素晴らしいですが、
それだけではなく、そこに菓子屋の生き様や日本の景色が織り込まれてこそ、
本来の和菓子の有り様と言えるような気がするのです。
もう、これはやられたなと、ただ、ただそのことを槌谷さんにお伝えしたいなあと、
本和菓衆の初日に駆けつけ、もっともっとたくさんの人に、見て味わって感じて欲しいと思いました。

最後に、五色それぞれが異なるフレイバーとなっていて、
青はバタフライ・ピー、緑はスペアミント、黄色はカモミール、オレンジはオレンジピール、
赤はハイビスカス&ローズヒップと、ハーブを使っているところもまた楽しませてくれる。

みずのいろ 10枚入 税込1,080円

◆ 本 店 / 岐阜県大垣市俵町39 TEL: 0584-73-6123
◇ 販売店 / 日本橋・新宿・横浜髙島屋、日本橋・銀座三越・池袋西武(催事販売) 他 
  ※ 髙島屋、三越の一部店舗で取り扱いがあります。