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同じく、本和菓衆よりもう一つご紹介したいのが、彩雲堂の生菓子『福 来』。
この生菓子の素材として、テーマとして盛り込まれたのが、クロモジ。
そう、和菓子にとっては欠かすことのできない、あの黒文字です。
爪楊枝よりは太く、上生菓子を切って刺して、食べるために使われます。
でも、その黒文字が、クロモジという木を材料にしてできあがっているとは思っていないでしょう。
いや、そもそも、クロモジという名前の木が存在することすら、多くの人は知らないと思います。
あれほどに和菓子に身近な存在でありながら、それがどういう素材でできているのか、
ほとんど知られていないというところに、まずメスを入れるきっかけになったと思います。
あの太い爪楊枝みたいなものを黒文字というものの、
何で、そう呼ばれているのか、改めて考えたこともなかったと思います。
まさか、クスノキの仲間の樹木として、クロモジという名前の種類があったとは・・・・。
そして、さらに言えば、そのクロモジの木や枝を見たことがあるかと言えば、
これはさらに少なくなり、ほとんどの方が見たことないと答えるのではないでしょうか。


日本橋三越の暖簾をくぐって・・・・

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そんなクロモジの枝を持ち込んで、眼の前で削ってその香りを嗅いでもらう。
そう、和菓子を食べる時にはそれほどはっきりと感じないかもしれませんが、
こうやって、削ったばかりの枝に鼻を当ててみると、明らかに独特の香りが伝わって来る。
かつては多く香料としても用いられたクロモジが、こんな香りを持っているとは・・・・!?
ハーブティーのような香りで、とっても素敵でしたよね。
6代目の山口周平さん自ら、クロモジの香りとその文化をご紹介くださりました。
山間部のいくつかの地方では、クロモジの枝に紅白の餅をつけて、餅花飾りを作ります。
よく年末年始の郷土文化を紹介する番組などに登場するのを記憶している方もいるでしょうか。
五穀豊穣や健康、安全を祈る風習なのですが、紅白の餅はそのあと雑煮などにして食べ、
クロモジの枝は煮出してお茶にして飲むそうです。
餅花飾りの存在は知っていたものの、確かに正月が終わった後、
餅は食べるとしても、クロモジの枝もお茶にして飲むという話は知りませんでしたね。

窓から見つめる長良川
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そして、クロモジのお茶はふくぎ茶と呼ばれていることから、
今回の菓子の名前は、福が来るという字を当てて、ふくぎと読ませているのだそうです。
いやあ、そんな郷土の文化もしっかり伝え、和菓子には欠かせないクロモジについても語り、
しかも、まさかそのクロモジを味わえるとは思いもしませんでしたよね。
下層の羊羹にはクロモジの粉が加えられていて、あのハーブティーのような香りがスーッと鼻を抜けるのです。
上層は薄紫色に染めたそぼろの上に、まさに物語のひとつである餅花飾りをあしらっていて、
何とも愛らしく、下層の個性的な風味を邪魔しないように、食感を変えてそぼろで構成するあたり、
見事に整えてきたお菓子だなあと思いまして、食べるのが楽しみでした。
本和菓衆の初日に伺って、翌日には岐阜に旅立ちましたもので、
旅のお伴に、『福 来』を連れて行きまして、川原町の旅館にチェックインして、
翌朝、窓から見える長良川を見つめながら、じっくりとクロモジの風味を味わいました。
いつもは和菓子を食べるための道具として、名脇役の黒文字が、
今回は和菓子の中に入って主役となっているのですから、きっと喜んでいるんだろうなあと思って・・・・。

秋のイベントでしたけれども、是非これからの年末年始に、
もう一度、福来る菓子として登場してもらいたいなあと、個人的には強く希望します。
いやあ、本当に、今回は勉強になることばかりです!!

福 来 3個入 税込972円

◆ 本 店/ 島根県松江市天神町124 TEL: 0852-21-2727
◇ 販売店/ 日本橋三越のみ
  ※ 日本橋三越で開催された第3回「本和菓衆」(10月14日~20日)にて販売致しました。