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昨年の秋に新聞記事で取り上げられて、話題となった『山土産』(やまづと)。
夏にご紹介した亀屋則克の『浜土産』(はまづと)もそうですが、土産の文字を書いて“つと”と読ませ、
海の幸、山の幸を土産物とした包みもののことを、“つと”と読んで、苞という文字を書きます。
実際に、他の和菓子屋では、この苞という文字を使っているお店もあり、
笊籠のようなパッケージに生菓子や饅頭、焼菓子などを合わせていることも多いものです。
さて、秋に山の幸の土産と言えば、そりゃ、松茸やら、柿やら、いろいろと思い浮かびますが、
やっぱり、栗ですよね、栗に尽きると思います!!
そして、当然ながら、秋になれば、栗菓子たちが登場してくるのを、
みんな心待ちにしていらっしゃると思いますが、この菓子の登場は特に待ち遠しいものです。
そう、ふんわり、しっとりとした薯蕷生地を蒸し上げて、
その上に小豆こしあんを敷いて、甘露煮した栗を並べて行き、クルッと包み込む。


『山土産』

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巻き寿司のようにして、ロールケーキのようにして包み込みました後、
等間隔にスライスして完成する生菓子なのです。
構成としては栗が入った薯蕷饅頭と変わらないと思いますが、
これがまた形を変えれば、当然味わいも変わるわけです。
饅頭生地で完全に包み込みました場合と違って、
食べた時に、スポンジのように空気が抜け、薯蕷の香りがより一層深く感じられるのです。
あとはやっぱり、栗の姿を見て楽しめるというのは何よりも大きく、
また通常よりもこしあんの分量が多く感じられることもあって、
三つの要素がバランス良く、混じり合って、いやあ、実に幸せなものです。
完全に包んだ饅頭の場合は、あとであんこと栗が勝ってしまうようにも感じますが、
皮生地であるよりも暑く、押し引きするというよりは、同時に最後まで三つの組合せを楽しめます。
この意匠は、末 富で修業を重ねた多くの和菓子屋だけでなく、
さまざまな菓子屋でも見受けられるようになっていますが、飽きませんねえ。
もちろん、切る前のひと棹で買うこともでき、予約される方も多いのです。

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そして、その時期に登場しますきんとんの生菓子に『八重葎』がございます。
先日、名古屋直行便でご紹介した川村屋賀峯総本店でも登場しましたが、
緑色のきんとんの上に、栗色のそぼろきんとんが添えられておりますが、
これこそが、まさに栗あんによるきんとんでして、分かっている人は絶対に逃さない。
むしろ、その部分だけ先に楽しんじゃおう!っていう方も多いはず。
そして、『八重葎』(やえむぐら)と言えば、百人一首の恵慶法師の歌を思い出しますよね。

 八重葎 しげれる宿の さびしきに 人こそ見えね 秋は来にけり

ヤエムグラという小さな白い花を咲かせる植物がありますが、
ここでは、つる草などの雑草たちのことで、草が生い茂って荒涼とした家には、
もう誰も寄りつかないし、物寂しい限りではあるけれども、
何も言わなくても、必ず秋はやって来るものなんだという和歌。
紅葉などの鮮やかな色合いを加えると、この和歌にちなんだ物寂しさは見えてこない。
だが、野草そのままの緑の色に、ススキなどのように枯れて行く葉の色合いを重ね、
シンプルに表現している生菓子は、そんな寂寥感を引き出しながら、
しっかりと秋の味わいである栗を楽しませてくれるのです。
ということで、この組み合わせて、毎年楽しむのがオススメです。

山土産 1 個 税込594円
八重葎 1 個 税込519円

◆ 本 店/ 京都府京都市下京区松原通室町東入ル TEL: 075-351-0808
◇ 販売店/ 日本橋・新宿・京都・大阪髙島屋(10月)
 ※ 毎年10月の生菓子メニューに登場し、本店での製造販売も新栗がある時のみとなります。