黄金郷

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ワンワールド。それは、1年間FIXの世界一周航空券である。一年で世界一周するのは時間的にかなり厳しい。しかし、その時間制限が有ってこそ光り輝く何かがある。いわば、ワンワールドで旅をするということは、ある一つの作品を作り上げるのと同じこと。みんなそれぞれの旅がある。これはそんなワンワールドを利用し、どこまでできるかチャレンジした365日間の記録である。
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黄金郷  2007年01月31日

いつの間にか未舗装道路になり、その揺れで目を覚まし、ふと外に目をやると、そこには信じられない光景が広がっていた。
さっきまで有った星空が薄くなりだし、辺りは暗闇に包まれた。
その暗闇の真ん中に、刀でどてっ腹を切ったような、一本のスジが入った。
その腹の傷口から血が溢れるように、そこから赤い光が漏れ出し、少しずつ、傷口が開きだした。
赤い傷口は、いつの間にか黄金に変わり、飛び散った血は、辺りの雲を真っ赤に染めた。
信じられない光景だった。
暁の空は、赤い雲と黄金の光で彩られた。
それは本当に短い時間だった。
黒い地面と赤い雲の間に、黄金の湖がにじみ出るように現れた。
その黄金の光の湖の有り得ない程の眩さに、完全に心を奪われた。呼吸が止まった。
その一瞬、本当に一瞬だけ、外の景色の全てが黄金に輝いた。
もはやこの世のものとは思えない光景だった。
まさにエル・ドラド。黄金郷は実在した。

間違いなく僕が人生の中でみた美しいものの全てを超越していた。
これ以上に美しいものなど、この世に存在しないのではないだろうか?
自分が今どこに居て、何をしているのか、生きているのか死んでいるのか、一瞬全てが分からなくなった。
目を見開いたまま、しばらく固まってしまった。
あまりの美しさに、本気で涙が出るかと思った。しかし、それすらも超越し、涙すらでないほど感動した。

その後、黄金卿は数分で消え去り、これまた素晴らしい朝日が現れ、青く澄んだ空を照らした。
黄金郷を写真に収めたが、どうしても見た目通りの美しさにはならなかった。
これはパタゴニアを訪れて、この時間に外を見ていた者だけにしか得られない体験だろう。
感動し過ぎて死にそうになったのも、初めての経験だった。

長距離バスの中では出会いが沢山有り面白い。
まず最初は二階建てバスの1階の席に座った。
となりにいたおじいさんも寝付けないようで、僕越しに窓の外を見たりしていた。
深夜にも何度かドライブインのようなところに止まって、運転手が休憩をするのだが、その時におじいさんも下りて、僕にサンドイッチとドリンクを買ってきてくれた。
ちょうど腹が減っていたけど、バスが何時に出発するか分からなくて外に出られないでいたので、非常に助かった。
さらに朝メシも買ってくれた。
昼前、コモドロリバダビアでの休憩では、僕も一緒に下りた。
今回はちょっと長い間バスが停車するということで、おじさんが「ビールを飲みに行こう」と言ってきた。
自分で金を出そうとしたのだが「NO!」といわれてしまい、またおごられてしまった。
このおじいさんは目が合って微笑む程度で、全く会話はしなかった。しかし、三食おごってくれた。
ものすごくいい人だった。

バスの出発時間の1分前になってもビールを飲んで酔っ払っているおじさんを促し、バス停までダッシュで向かうと、なんとバスが居なくなっている!
ついでにおじいさんも居なくなった!
トイレに行くと、のんびり用を足しているおじいさんを発見。

「バス居なくなっちゃったよ!」

そういうと、

「ええ!?」

とばかりにおじいさんも外に出てきた。
他の乗客もいない。
僕ら二人がぽっつーんとその場に残された。
どうしよう…荷物積んだままなんだけど…
しかし不思議なことに、こんな状況になったら、次々と次にすべきことが浮かんできた。
そして大変な状況なのに、何故かワクワクしてしまった。
T先輩との待ち合わせには遅れるだろうけど、この状況じゃあ仕方がない。
ついでだから、バルデス半島でも回って行こうか?

「ガソリンを入れに行ったんだと思う…」

おじいさんがそういった。
ほんまかいな?

「10分で戻ると思う」

そういってぼ〜っとするおじいさん。
しかし、10分どころか20分経ってもバスは戻らない。
おじいさんもそわそわしだし、あちこち動き出して、周りの人に何かを尋ねだした。
いよいよ動き出すしかねーか?
そう思ったころ、さっきまで乗っていたバスが戻ってきた。
なーんだ、ちょっと残念。
でもまぁ無事に先に進めそうで良かった。
そう思ってバスに乗り、元の席に着こうとすると、チケットを見せろと言われ、

「上の階に行け」

と指示された。何故か僕だけそこで席替え。二階の一番前の特等席に移動となった。
おじいさんは、

「え、えぇ〜??」

みたいなことを言いながら笑っていた。
結局おじいさんは、バルデス半島に動物を見に行く予定だったので、プエルトマドリンだかトレレウ辺りで降りた。
降りるとき、二階に上がってきて、僕に挨拶をして握手をして去っていった。面白いおじいさんだった。

二階席では、隣に居たボリビア出身のガルロス一家と5時間くらい話した。
スペイン語オンリーだったが、旅の指さし会話帳と電子辞書を駆使して話した。
ガルロスは、ジャッキー・チェンとブルース・リーを日本人だと思っていた。
さらに、

「日本は中国のどこに有るのだ?」

と聞かれた。凄い認識だ。
娘に任天堂DSをやらせたら、物凄く楽しそうだった。
お礼に凄く不味いガムをもらった。
僕もそのお礼に、日本からもってきたブラックブラックガムをあげた。
最初悪そうに見えたが、ナイスな感じの良い一家だった。

数時間一人で過ごせた。しばしの休息。本を読んだり、景色を見たり。
しかし、そんな時間は、本当にほんの数時間で終わった。
海岸の町で、なんともごっつくて悪そうな若者が乗ってきた。
バスの中から地元のガラの悪そうなサーファー仲間達に大きく手を振っている。
乗ってくるなりフロントガラスに足を投げ出して、やたら偉そう。

うっわ〜、何この人?

こいつとは友達にはなれんだろう。早く下りねーかなぁ。
しばらくお互い無言で外を見たりしていた。
すると彼は手に持っていた雑誌を開き、クロスワードパズルを始めた。凄い真剣だ。
ごっつい男が真剣にクロスワードをやっている姿はなかなか微笑ましかった。
日本だったら、これが任天堂DSとかPSPとかなんだろうなぁと思いながら、その様子を見ていた。
この状況が大きく変わったのは、ドライブインで休憩をしていた時だ。
バスの前で一服していると、となりで彼が柔軟体操などしていた。
なんとなく、タバコを差し出し、

「吸う?」

と聞いてみると、

「いや、大丈夫、いらない」

と英語で言われた。
あれれ?英語?しかも声が優しい。
席に戻ると、彼から話かけてきた。

彼の名はマリセロ。
メンドーサで生まれ、山で育った。チリの大学で英語を学び、現在はブエノスアイレスで彼女と同姓している。
めちゃくちゃいい奴だった。
何時間話したか分からないくらい話した。
彼は博識で、日本のことも少しは知っていた。自分の携帯と僕の携帯を比べて、日本のテクノロジーは世界一だと言っていた。
マリセロの携帯は2年前に買ったものだそうで、古くてボロいと言って、僕に見せるのが恥ずかしそうだった。
彼もまたアルゼンチンについてきちんとした考えを持っていた。
東京の家賃の高さに驚き、自分の国の貧困を嘆いた。
彼らの初年度の月給は、日本円で3,4万円だそうだ。携帯の端末は高く、お金を貯めて買ったそうで、パソコンなど買うことはまず不可能だと言っていた。
ブエノスアイレス在住だが、キャピタルと呼ばれる都市部ではなく、広大なブエノスの端の方のダウンタウンに住んでいるそうだ。
仕事は交通整理だそうで、失業者で溢れているブエノスでは、仕事があるだけでも良い方だという。
そういえば、その前に会ったガルロスに仕事を聞いたら、親指を立てて

「スーパーの職員だぜ!」

と自信満々で言っていた。こっちの人たちは自分の仕事に誇りを持っている。とても素晴らしいことだと思った。
そしてそれはやはり、仕事が有るということ自体から来る自信と誇りであって、それだけ厳しいアルゼンチンの経済状況を浮き彫りにしているように見えた。

マルセロにスペイン語を勉強しろと言われ、夜寝ようとしたら、バスのテレビで流されていた「デスペラード」を見ろと言って寝かせてくれなかった。
この映画は日本で見たが、仕方なくスペイン語版を眠い目を擦りながら見た。彼曰く、映画は語学の勉強にもってこいだそうで、自分もそうやって英語を覚えたそうな。マジ勤勉。
深夜2時頃、突然映画が終わり、バスの中が真っ暗になったので、僕らはやむなく寝ることになった。


暗闇に切れ目が…


暗闇に切れ目が…

数分、この一番金色の部分が空全体を覆った.jpg

数分、この一番金色の部分が空全体を覆った

ノリのイイ店員.jpg

ノリのイイ店員

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じいさん

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ガルロス一家

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マリセロ(寝起き)


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