2018年7月の金融庁検査局の解体に合わせて「金融検査マニュアル」が廃止されることになりました。
金融機関関係者以外の方にはあまり馴染みのないものかもしれませんが、バブル以降、今日に至るまでの銀行の貸出姿勢に多大な影響を与えてきたものです。
金融検査マニュアルは1999年7月に抜本的な不良債権処理を断行するための経済対策として導入されたもので、銀行の資産査定を行う検査官がどのような基準に基づいて判断するかをまとめたものです。
金融検査マニュアルが導入された当時、筆者は地域金融機関で中小企業向けの融資を担当しておりましたが、企業規模に関係なく教科書的に書かれたマニュアルに大変驚かされたことを覚えています。「こんな考え方で中小企業を査定したら大変なことになる」「お役人さんは中小企業の実態を知らな過ぎる」。懸念していた通り、マニュアル導入当時の金融庁による資産査定は酷いものでした。検査官は大企業の財務状況を想定して作られている検査マニュアルの基準をそのまま中小企業に当てはめ、極めて高圧的な態度で資産査定を行いました。我々が財務内容だけでなく、中小企業の実態や経営者の人柄等について説明をしても聞く耳を待たないと言った状況でした。当時の金融庁による資産査定は10名程度の検査官が銀行本店に来て、検査官毎に担当支店を決め、各支店の支店長と融資課長が本店に出向いてヒアリングを受けるというものでした。当時は金融庁も全ての金融機関に対して資産査定を行っていたため人手が不足しており、この検査官は中小企業の経営ってものを全く知らないんじゃないかと思うようなにわか作りの検査官もいました。

当時、中小企業に対する運転資金の融資は手形貸付という形式で、数ヶ月の期間を取った期日一括返済で行われるのが一般的でした。例えば、5百万円を6か月借りる場合、6か月後の期日の数日前に次の6か月の融資を申し込んでおき、期日になったら一旦は自己資金で返済するものの、同時に次の融資を実行するため、借入元金を返済することなく借り続けていられるというものでした。このやり方だと月々の返済がないので、中小企業は資金繰りが楽になります。

金融検査マニュアルはこれを不良債権と認定しました。事実上返済しないのだから、返済猶予債権として不良債権認定すべきだと強く主張してきたのです。中小企業の金融に長く携わってきた者としては、開いた口が塞がらないという感じでしたが、これを不良債権認定されると銀行の不良再建比率は跳ね上がってしまいます。そこでやむなく手形貸付による運転資金の融資から月々返済のある証書貸付に切り替えていきましたが、これが中小企業の資金繰りを大きく圧迫したことは言うまでもありません。
金融庁は銀行の融資姿勢の変化について銀行は「引き当て」と「融資判断」の切り分けが出来ていない、金融検査マニュアルは不良再建の「引き当て」基準を示したもので、銀行の融資判断を示したものではないと言っていますが、バブル崩壊後、自己資本を大きく毀損した状態の金融機関に対してこのマニュアルにある基準を強いれば、銀行の貸出姿勢が縮小に向かうのは必然です。

金融庁の森長官はリレバンや事業性評価を地方銀行に求めています。かつては地銀・信金で当たり前に行われていたことばかりです。金融検査マニュアルが廃止されることで、本来の中小企業金融が復活することを切に望みます。


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