マイレージ・マイライフ
総論:孤独に適応した現代人に贈る、監督からのエール。

「サンキュー・スモーキング」、「JUNO/ジュノ」のジェイソン・ライトマン監督が、ジョージ・クルーニーを主役に迎えて描き上げるヒューマンドラマ。年間322日も出張し、月よりも遠い35万マイルもの距離を飛行機で飛ぶ男・ライアン(ジョージ・クルーニー)は、「バックパックに入らないものは背負わない」がモットーの独身アラフィフ男子。目標の1000万マイル獲得を目指し、今日も元気に出張先へ向かう彼の仕事は”リストラ宣告人”。アメリカ中を飛びまわって人の首を切りながら、出張先で出会った女とその場限りの情事を楽しむ生活を営んでいた。

しかしある日、彼のシングル・ライフに暗雲が立ち込め始める。新人のナタリーが、ネットによる解雇通告システムを提案してきたのだ。大幅な経費削減になるネット化にノリノリの会社を無理やり論破したライアンだったが、あろうことかナタリーの教育係に任命されてしまうハメに。気軽だった”マイレージ・ライフ”に現れた突然の来訪者によって、彼の人生はバランスを失い始めるが、それは”自分にとっての人生の充足とは何か?”を問う短い旅の始まりだった―。

マイレージ・マイライフ2
「サンキュー・スモーキング」でタバコ業界の宣伝マンが父親になる話を描き、「JUNO」では十代で妊娠した少女の成長を描いたジェイソン・ライトマン監督が、今作では人生の充足を探す孤独なリストラ宣告人を描いてくれました。

家族や恋人との良好な関係は孤独に陥らない安心をくれるけれど、時として足枷となり人生の自由を奪う。逆に孤独は、自由気ままに人生を謳歌することができるけれど、その代償として定期的に襲ってくる寂しさに耐え抜かなければならない。人間にとってどっちが幸せなのか?この究極的な問題を描き上げた今作。

”アナログ(≒ライアン)vsデジタル(ナタリー)”という古典的な世代間闘争の図式を踏襲し、安定した推進力で物語を進める脚本をベースにして、大胆なカメラワーク、キレのある編集、小気味良い演出、役者の絶妙な演技、気の効いたSE&BGMといった、あらゆる映画的表現の快楽を高次元で結実させた作品となっており、開始わずか数十秒で心を鷲掴みにされ、そのまま空を飛ぶかのようにエンディングまで連れて行かれる感覚を味わいました。映画「マイレージ、マイライフ」は、文句のつけどころのないパーフェクトな作品だと思います。

*以下、ネタバレ含む

独り身の自由(≒孤独)と、家族の安心(≒束縛)、どっちが本当の幸せなのか?この問いについて映画は「どっちが幸せかは人による」という、当然すぎる回答を示します。ようは「ンなモン自分で考えろ」っていうことですね。

ではライアンの孤独な人生は不幸なのでしょうか?

劇中の登場人物はほぼ全員ライアンとは違う価値観で生きており、ある意味でライアンを憐れみつつ、と同時に孤独がへっちゃらで自由気ままなライアンにイラつく姿を見せます。これはもちろん、非孤独の代償として失った”自由”を謳歌するライアンが羨ましいからで、みんなしてライアンを”こっち側”の世界に惹き入れようと揺さぶりをかけます。

そして彼も最終的には「誰かと一緒に生きる方が幸せなのかも・・・」と思ったりする。

でも、ライアンを根本的にグラつかせたのは”こっち側”の人間達ではなくて、ライアンと同類の”その場限りの情事”を楽しむアラフォー女・アレックス(ヴェラ・ファーミガ)だった。そしてライアンは仕事をほっぽり出して彼女を迎えに行きます。

がしかし!ここで驚愕の事実が判明。実は彼女は、旦那も子供もいる立派な人妻だったんですね。いやはや、この墜落感ったらありゃしません(苦笑)この俺に「コイツとなら一緒に生きていけるかも」と思わせてくれたのは、俺のことを息抜きとして扱う”俺のような”女だった。このリアルすぎる現実。ここでライアンは最初の問いかけに答えを出したんだと思います。

そうです、ライアンの人生は幸せだったんですね。

彼は自分の能力を愛し、自分の仕事を愛し、仕事に必要な出張を愛し、空港や飛行機内での生活を愛し、マイルを貯めるという趣味を愛し、主張先で出会う女を愛し、自由を愛していた。その全てを既に手に入れていたことを悟ったライアンは、貯まったマイルを妹夫婦にあげて、心持ちも新たに元の仕事に戻っていきます。

それと対比するように映し出されるのは、家族や恋人と一緒にいることの幸せを語るリストラ社員達の映像群。このエンディングで示されるのは、「何が人生の充足であるかを決めるのは他人ではなく、自分自身であるべきだ」ということなのだと思います。そして同時に、孤独に適応してしまった(せざるをえなかった)多くの現代人に贈る、監督からのエールなのだと思います。

ということで映画「マイレージ、マイライフ」超オススメです!!

P.S.
ちなみにリストラとか失業者問題みたいなものは今作のメインテーマではないと思います。ただ主人公がそういう設定だっただけというレベルで、そっち方面のなにがしを期待して観ると肩透かしをくらいますのでご注意を。


「マイレージ、マイライフ」
公開:2010年3月20日
配給:パラマウント
監督:ジェイソン・ライトマン
脚本:ジェイソン・ライトマン、シェルドン・ターナー
出演:ジョージ・クルーニー、ヴェラ・ファーミガ、アナ・ケンドリック
上映時間:109分
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