ノーウェア・ボーイ-ひとりぼっちのあいつ
総論:ビートルズファンでなくても十二分に楽しめる、人間ドラマの傑作!

1950年代のリバプール。反抗期真っ最中の高校生だったジョン・レノンは、厳格な叔母・ミミと、陽気で優しい伯父・ジョージの元で暮らしていた。ジョンは幼少のころから叔母に預けられており、実の母が今どこにいるかも知らない。しかし、急死したジョージ伯父さんの葬儀の席で実の母・ジュリアと再会してしまう。真面目なミミとは違い、自由奔放な性格のジュリアはジョンを恋人のように扱い、音楽の素晴らしさを教えてくれたが、彼女はすでに別の男性と再婚し、別の人生を生きていた。「なぜ俺は叔母の元で育てられたのか?」。幼い頃から胸に抑え込んできた想いが溢れだしたジョンは、17歳の誕生日にすべての真実を知る。それによってジョンの心は引き裂かれ、行き場所を失ってしまうが・・・、それでも”音楽”だけは、いつも傍にいてくれた―。

ノーウェアボーイ
ビートルズのCDは1枚も持っていませんし、曲についても(聴けばわかると思いますが曲名は)ほぼ知りません。メンバーも顔と名前が一致するのはジョン・レノンとポール・マッカートニーぐらい。こんな程度のビートルズ知識で観賞にのぞみましたが、いやはや、十二分に楽しめましたよ。当初はジョン・レノンの少年時代を描いた映画ということで不安を感じていましたが、全くの杞憂でした。

まずもって脚本が素晴らしかった。二人の母の愛に葛藤する少年を描いた人間ドラマでありつつ、悲劇的な過去に苛まれる姉妹のドラマであり、ロックンロールという夢に向かって仲間と共に突き進む友情のドラマでもある今作は、ビートルズの文脈に関係なく人の心を打つ物語性を帯びているため、多くの観客が楽しめる優秀な映画に仕上がっています。

*以下、ネタバレぎみです

個人的にはビートルズの前身であるバンド「クオリーメン」の結成話に一番グッときました。初めて買ったギターをベッドに立てかけて「ヤベェ・・・俺のギター超カッコよくね!!」と誇らしげに眺めるジョンや、それ(ギター)を手にしたことにより急に態度がデカくなるジョン。初めてのステージを前にして超テンパってるジョン。ポール・マッカートニーとの出会いで「お前なかなかヤルらしーけど、どんなもんよ?アーン?」みたいな態度のジョン。でもポールの腕前を見せられて「ヤベェ、コイツ俺より上手くね?」みたいにビビっちゃうジョン、などなど(笑)それらのジョン・レノンによって表現される、「何がロックか?」的なアイデンティティーにあてられた少年達の、ちょっと強がった友情の深めあいが最高でした。

もちろん本筋である家族の話も間違いありません。私はジョンの葛藤もさることながら、ミミとジュリアという姉妹の物語に激しく心を揺さぶられました。実母が犯した過去の過ちは母と息子の絆だけではなく、ミミとジュリアという姉妹の絆も引き裂いていた。この事が表現される終盤の展開は涙なしでは観れません。何が感動かって、終盤に明かされる真実によって3人の絆が致命的にバラバラになった後、ミミがジュリアを呼び出して言ったあの台詞です。それまで俺、二人が姉妹だったことをスッカリ忘れてたので、このシーンには稲妻に撃たれたように感動してしまいまいた。そしてドラマは衝撃的な結末に向かいます・・・。いやはや、私はビートルズの件はスッカリ忘れて物語に没入してしまいましたよ。本当に素晴らしいです。

これらのドラマを盛り上げる役者の演技も完璧でした。個人的にはポール・マッカートニー役のトーマス・サングスターが最高でしたが、やっぱり主役のアーロン・ジョンソンや、叔母役のクリスティン・スコット・トーマス、実母役のアンヌ=マリー・ダフという主要の3人ですよね。三者三様にすばらしいキャラクターの構築っぷりで、感服いたしました。

惜しむらくは、感情を処理しきれないジョンが音楽に全てを叩きつける!!的な表現が若干弱かったところかな。「僕はあの頃、歌ってなんかいなかった、愛を叫んでいたんだ」という感動的なキャッチコピーからすると少々パワー不足な感が否めません。ここはひとつベタに、打ちひしがれたジョンが顔を上げると、そこにはギターがあって・・・みたいなのをやってほしかったです(笑)

ということで、最後にちょっとチャチャも入れましたが、今作はビートルズやジョン・レノンファンだけでなく多くの人に自信を持ってオススメできる作品です。もう間違いないので、興味をもたれた方は今すぐ劇場へGOです!


「ノーウェア・ボーイ ひとりぼっちのあいつ」
公開:2010年11月5日(金)
配給:ギャガ
監督:サム・テイラー=ウッド
脚本:マット・グリーンハルシュ
出演:アーロン・ジョンソン、アンヌ=マリー・ダフ、クリスティン・スコット・トーマス、デヴィッド・スレルフォール、デヴィッド・モリッシー、トーマス・ブローディ・サングスター
上映時間:98分
⇒公式ホームページ
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