2023年01月13日

「評判いいし」「SAPIXや浜学園なら安心」という判断には要注意! 塾選びで失敗する5大パターン



◆1. 世間一般の評判や勧誘を理由に入塾する
失敗確率が高くなる5つの入塾理由についてお伝えします。受験にたどり着く前に退塾することにならないよう、要注意な事例を把握しておきましょう。

入塾を考える際につい気になってしまうことの代表例が、すでに通塾している友だちの保護者から聞く評判です。「中学受験するならSAPIX」「浜学園に預けておけば安心」と、評判を頼りに入塾を決めてしまう方がいらっしゃいます。しかし、評判がいいからと小学校低学年から入塾しても、受験終了までに退塾してしまうというケースもありますし、知り合いのお子さんに合っている塾が、わが子にも合うとは限りません。


わが子が友だちから塾の勧誘を受けた場合も注意が必要です。「友だちが誘ってくれるなんて、よほどいい塾に違いない」と思うかもしれません。けれどなかには、誘った友だちが入塾したら、その誘った塾生にインセンティブとして高額な金券を配るような塾もあります。その金券をもらうために友だちを塾に誘う子もいるので、注意しましょう。



◆2. 「合格実績」にひかれて入塾する
合格実績にひかれて入塾するのも、失敗する可能性の高い理由です。合格実績は、塾の指導力を測る指標として扱うには難しいものがあります。なぜなら、毎年高い合格実績を出している塾には、入塾の時点ですでに高い学力がある子が集まってくるからです。

そのような塾に子どもを通わせる保護者は、わが子の成績が伸び悩み始めると、個別指導に通わせたり、家庭教師をつけたりします。そんな個別指導や家庭教師の指導のおかげで合格したとしても、塾に通っていれば、その塾の合格実績としてカウントされます。

このような場合の合格実績は、塾の指導力のおかげとは言い切れません。したがって、合格実績を入塾選びの指標にするのは難しいのです。さらに、合格実績を水増しする塾もあとを絶ちません。合格実績のカウントは、各社自社基準でカウントされていますので、華々しい数字に目を奪われないでくださいね。



◆3. 経済的に余裕のない状態で入塾する

経済的に余裕のない状態で入塾するのも、失敗する可能性が高いです。「これくらいならなんとか払えるか……」と月謝を確認して入塾すると、まもなく金策に苦労することになりかねません。

入塾する前には、月謝以外に発生する費用(テキスト代、模試代)、年額の費用、今後の講習会やオプション講座の費用、受験学年時にかかる費用を確認しておきましょう。その上で概算で構いませんので通塾にかかる費用を試算してから、お子さんを入塾することをおすすめします。

なかには、ホームページに月謝を載せていない塾もあります。載せていても見づらいところに書かれており、小さな注釈が添えられている場合もありますので、よく確認しておきましょう。オプション講座についても開催日や価格はほとんど表に出されません。塾に質問しても、今年度のことは決まっていないことも多いため、参考までに昨年度のものを教えてもらいましょう。



◆4. 塾のブランドで選んで入塾する

塾のブランドで選んで入塾することも、失敗する確率が高いです。塾のブランドは、テキストの質、講師の指導力、カリキュラム、合格実績、合格率などで構成されています。それらが高いSAPIXや浜学園は、高いブランド力を誇りますが、万人に合う塾ではなく人を選ぶ塾です。そしてそれは、SAPIXや浜学園だけでなく、すべての塾にいえることです。

まずは、どの塾がいいのか考えるより前に「わが家の教育方針はどうあるのか?」ということを家族で考えてみましょう。わが家の教育方針をある程度一致させた上で、「わが子にはどんな環境の塾が合いそうか」ということを家族で改めて考えることが大事になります。塾内で勉強のフォローが期待できない塾を選ぶのであれば、どんな方法でフォローするかも決めておくことが必要です。

「もし仮にその塾が全くの無名であったとしても、誰にも自慢できなくてもそこを選ぶか」という問いに「イエス!」と答えられるところを選ぶと、失敗確率を下げることができます。



◆5. 子どもにやる気がないのに入塾する

子どもにやる気がないのに入塾することは、最も失敗する確率の高い入塾理由です。塾は、とりあえず行かせさえすれば子どもが勉強好きになって勉強ができるようになる場所ではありません。

「いまから入塾しておかないと、満席で入れなくなっちゃうから」
「塾に預ければ、勉強の楽しさに目覚めてくれるかもしれない」
「家だと全然勉強しないから、せめて塾で勉強してくれれば」
「周りもみんな塾に通い始めているから、うちも」

このような考えで子どもを塾に通わせて、うまく塾に適応できる子は多くありません。塾講師歴25年以上の筆者の印象では、塾講師には「勉強できない子をなんとかして勉強好きにさせて、勉強ができるようにしたい」と思う人よりも、「勉強好きで勉強ができる子をもっと勉強ができるようにしたい」と思っている人の方が多いと感じます。特に、ハイレベルな大手進学塾であればあるほどその傾向は顕著です。

「わが子を塾に通わせよう」と思ったら、お子さんのことを深く知っているお母様、お父様がお子さんの性格、関心のあることを踏まえて「どうしたら勉強する気持ちが高まるか」を考えて、いろいろ試すことが大切です。その結果、わが子が「塾で勉強してみよっかな」という気持ちになったら、そこで塾に通わせても、遅くはありません。ある程度学力があれば、小4、小5になってからでも入塾可能な枠はあります。

その限られた枠に入るほどの学力がなければ、そもそもその塾には向いていないということです。子どもに塾で勉強したいという気持ちがまったくないのに通わせるのは、雛が卵の内側から殻をつつく前に、親鳥が殻を突いて割ってしまうようなものです。

塾の小学1年生から3年生の成績上位者で、5・6年生になってもそのまま上位でいつづけられる子はほとんどいません。「早く入塾すればそれだけ有利」だと思ってしまうのは、塾のマーケティング戦略です。塾に行かなくても通信教材を使って勉強したり、参考書と問題集を使って勉強してわからないことはネットの動画授業で調べたりと、勉強方法の選択肢はいろいろあります。

小学校低学年であれば、日常の延長線上のさまざまな体験、たとえば身近な自然に触れること、科学技術館のようなところに行って体験型学習をすること、好きな本を読むことなどの経験を積んでおくと、あとで本格的な受験勉強をし始めたときに、実体験と結びついた深い理解ができます。すべては子どものやる気、関心が起点となって伸びていきます。

この機会にわが家の教育方針を話し合って、わが子と相性の合いそうな塾や講師を探してみるのはいかがでしょうか。


▼西村 創プロフィール
早稲田アカデミー、駿台、河合塾Wings等で、講師、講師指導、校長などを務め、受験指導の専門家に。歴史・公民・小論文等に関する書籍を11冊出版。メディア出演・YouTube等で、受験や時事問題に関する情報を精力的に発信している。


2023.1.13
ヤフーニュース・オールアバウト  から転載




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中学受験を考える親が絶対知っておきたい「偏差値との向き合い方」


  開成、麻布、桜蔭、雙葉、筑駒、渋幕……東京・吉祥寺を中心に都内に展開する進学塾VAMOSは、「入塾テストなし・先着順」で生徒を選抜しないが、「普通の子ども」を有名難関校に続々と合格させると話題の塾だ。子どもの特徴を最大限に生かして学力を伸ばす「ロジカルで科学的な学習法」が、圧倒的な支持を集めている。本稿では、VAMOSの代表である富永雄輔氏の最新刊『ひとりっ子の学力の伸ばし方』(ダイヤモンド社)から、特別に一部を抜粋して紹介する。
● 偏差値を見てイライラしてしまう親

 お金も時間も充分にかけていることもあって、ひとりっ子の親は、結果を急ぎすぎる傾向にあります。

 「教育のマニュアル本もたくさん読みました。評判の塾にも入れました。送り迎えもしています。だから、早くその結果は?」というわけです。

 しかし、そんな魔法は存在しません。とくに、誰もが最も気にするのは「偏差値」です。

 中学受験のための模擬試験を受ければ、たとえ小学生でも容赦なく偏差値がはじき出されます。しかし、それをはじき出すテストには、これまで公立の小学校で学んできた内容では解けない問題が多く出題されます。

 ですので、最初のうちは29だの33だのというとんでもなく低い数値になることもしばしばで、親は大ショックを受けます。

 ただ、そもそも中学受験の偏差値は、高校受験の偏差値よりも低く出て当然なのです。高校受験の模擬試験はほぼ全員が受けますが、中学受験は、教育への意識が高い家庭の子どもが受けます。つまり、通っている塾のレベルや母集団の違いで、数字にばらつきが出てしまうのが偏差値なのです。

 そうしたことを知らないと、偏差値が伸びないことに焦ってしまい、「勉強の効果が出ていない」「塾が合っていない」と間違った判断をします。

 ひとりっ子の親ほど、急いで間違えるのです。

● 「偏差値の伸び=学力の伸び」ではない

 まず理解しておいてほしいのは、「偏差値が伸びている=学力が伸びている」ではないということです。

 偏差値は相対的なものですから、自分の子どもが大きく伸びていても、周囲が頑張っているために、それがなかなか偏差値に反映されないというケースはよくあります。

 逆に、周囲のレベルが低い模擬試験を受ければ、偏差値は高く出ます。だから、「偏差値を伸ばす」ということには、たいした意味はないのです。

● 子どもの学習を急かさない

 低学年から5年生の子どもにとって、「相対的な偏差値」よりも重要なのは、「絶対的な学力」です。実際に、偏差値が伸びていなくても学力が伸びている子はたくさんいます。

 偏差値や成績は周囲のレベルに影響されるため、急に跳ね上がったり、頑張っているのに伸びなかったりと、おかしな動きをすることがあり、あまりあてになりません。

 一方で、学力は「やっただけ」伸びますし、「やらない」と伸びません。だから、私は偏差値ではなく学力を重視しているのです。

 では、偏差値のように数値化できない学力は、どう測ったらいいのでしょうか。

 私は、その子が「前に教えた内容ができているかどうか」で判断しています。先週に教えた内容が今週はできていれば、学力は伸びていると考えます。

 こうして、「先週覚えたものは今週身につき、今週覚えたものは来週身につき……」というステップを踏むことで、その子の学力は確実に伸びます。

 一つひとつは小さなステップでも、段階的にアップしていけば、やがて中学受験の志望校にも合格するのです。

● 基礎に時間をかけて大きく伸ばす

 とくにひとりっ子の親は、小さなステップをじっくり見守るのが苦手です。わが子の教育にいろいろ投資をしていれば、「もっと効率的な方法があるんじゃないの?」とイライラしてしまうのかもしれません。

 きょうだいが多い家庭であれば気づかないことにも、目がいってしまうのがひとりっ子の親です。子どもの数が多ければ、親もあまりかまっていられません。家事をやっているときに子どもたちがうるさく騒いでいたら、「あんたたち、30分でいいから公文やっていて」「お母さん忙しいんだから、漢字の勉強でもしていなさい」となり、子どもたちは必然的に基礎の繰り返しをする機会が増えます。

 一方で、ずっと子どもを見ていられるひとりっ子の親は、「また同じようなことやっているの?」「もっと先に進んだほうがいいんじゃない?」と、基礎の反復を軽視する傾向にあるのです。

 もちろん、基礎だけではなく応用力も必要です。しかし、基礎なきところに応用はありません。基礎がしっかりしてこそ、大きく伸びるのだということを忘れないでください。

 (本稿は、『ひとりっ子の学力の伸ばし方』からの抜粋・編集したものです)



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2022年07月26日

中高一貫校が有名私大の「系列化」でリニューアル 背景に少子化を見据えた高大連携

 中高一貫校の生き残りをかけた学校改革が相次いでいる。ブランド力を持つ有名大学に推薦で進学できる系列化もその一つだ。系列化を推し進める背景には高大連携がある。AERA 2022年7月18-25日合併号の記事を紹介する。


 リニューアルのひとつの方法が大学の系列化だ。ブランド力を持つ大学に推薦で進学できるメリットは大きく、19年に系列化した青山学院大学系属浦和ルーテル学院は、志願者を前年の約3倍に伸ばした。大学でも、先々の少子化を見据えて高大連携を進めている。  注目は26年度に明治大学の系列校となり、明治大学付属世田谷と改名する日本学園だ。男子校から共学になる。明治大学との地の利が良く、最寄り駅の明大前にある和泉キャンパスへは徒歩10分ほど。駿河台、生田、中野の各キャンパスの最寄り駅にも電車で30分以内に行くことができる。  同校は1885年に創設した東京英語学校が前身と、長い歴史を持つ。教育方針に「天才を創るよりも各人の天分を活かす」を掲げており、個性を尊重する学校方針が明治大学の「個」を強くする教育理念にも通じている。「創発学」という探究型のプログラムがあり、中3時に「15年後の自分」をテーマに研究論文を執筆している。  水野重均校長は、「系列化することで、大学の知見を借りて学びを深めていきたい」と抱負を語る。  進学に関しては、29年度からおよそ7割以上が推薦入学によって進学できる教育体制の構築をめざしている。推薦入学試験の制度が整うことで、受験にとらわれない本質的な学び、また長期の海外留学なども期待される。今後の課題は、共学化へ向けた女子教育への理解と、高大連携をより有効にするためのカリキュラム作りだという。  水野校長は、こう力をこめる。 「講師の先生方だけでなく大学生とも交流し、身近な先輩としてのロールモデルになっていただきたい」 (ライター・柿崎明子) ※AERA 2022年7月18-25日合併号より抜粋


22022.7.25
ヤフーニュースから転載



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wakabanavi01 at 00:29|Permalink 中学受験 

2022年05月10日

首都圏「中高一貫校」最新情報、23年入試の変更点は?【2023年中学受験】



前回と前々回は、2022年の新校長人事を取り上げた。新しい校長が何を手掛けるかで、学校の未来が大きく変わることもある。今回は、2023年入試で変更点がある首都圏中高一貫校を見ていきたい。女子校から「国際」を冠した共学校への変更や少子化が進む中での付属中学の新設をはじめ、入試の変更点など最新の状況について見ていきたい。(ダイヤモンド社教育情報)



● 私立大学が付属中学を今からつくる理由

 20世紀終わりの数年間、本郷・駒場と並ぶ三極構想の一環で、既存の研究施設を移すなどして東京大学柏地区キャンパスの整備が進んでいった。2005年につくばエクスプレスが開業、つくば学園都市よりも東京に近い千葉県北部エリアが、一大文教地区へと変貌を遂げてきている。三井資本による「流山おおたかの森」周辺の開発が象徴的だが、JR常磐線と合わせて、沿線にある柏市と流山市には子育て層が移り住むようになった。


 団塊ジュニア層が進学する以前から、沿線には私立大学の付属中高が新設されていった。中学設立が古い順に挙げると、光栄VERITAS(1983年中高)、江戸川学園取手(1978年高校、87年中学)、芝浦工業大学柏(1980年高校、99年中学)、専修大学松戸(1959年高校、2000年中学)、麗澤(1935年高校、2002年中学)、二松學舍大学附属柏(1969年高校、2011年中学)、東洋大学附属牛久(1964年高校、2015年中学)といった具合に、21世紀に入ってから付属の中学を設立した学校もあることに気付くだろう。


 少子化という逆風の中、2023年に中学を新設するのが流通経済大学付属柏である。付属高校が設立されたのは1985年のことで、その間38年の隔たりがある。ライバル校からは、「専修大学松戸の受験層に、別の選択肢があることを示したのではないか。両校ともスポーツが盛んで、運動部でも頑張りたいという層にもアピールしているようにも思う」という感想も伝わってくる。


 千葉県では、23年が15歳人口のピークとなるため、中学の段階から生徒を確保していきたいという思惑が背景にはありそうだ。22年の高校受験者数を見てみると、専修大松戸の3215人は飛び抜けているものの、二松學舍大柏が1342人、高校だけだが日本体育大学柏の1368人と、流通経済大柏の1188人を上回る人気校が周辺にある。


 12月1日午前に第一志望入試で50人を募集する点は、千葉県にある学校としては一般的な対応である。60人を募集する第1回は、千葉私立御三家で千葉市美浜区にある渋谷教育学園幕張と昭和秀英と同じ1月22日午前に4科で設定した。解禁3日目となり、他校と併願しやすい。

 第2回は専修大松戸(第2回)と同じ26日午前に4科で設けており、併願先として競い合うことになりそうだ。第3回は26日、第4回は2月4日午前にそれぞれ2科で設定、入試会場は流通経済大学の新松戸キャンパスで実施予定となっている。

 他にも、つくばエクスプレスの流山セントラルパーク駅前には、暁星国際流山幼稚園と小学校がすでにあるが、東洋学園大流山キャンパス跡地に暁星国際の中学を設立する構想が浮上しており、このエリアでの中学受験ブームはこの先も継続しそうな様相である。


 東京では、人気の世田谷区に生まれる新たな付属校への人気が高まりそうな勢いにある。この3月31日、明治大学は和泉キャンパスに近い日本学園と正式に系列校連携に関する協定を締結した。26年から男子校の日本学園は共学化して、「明治大学付属世田谷」に校名変更する。その3年後の29年の入学生から、内部推薦により卒業生の7割程度が明治大学に進学できるようにしていくことになる。


 明治大学付属明治は9割程度、明治大学付属中野八王子と明治大学付属中野は8割台がすでに内部進学している。23年に日本学園中学に入る男子は、6年後に明治大学に進む割合がこれら付属校に準じることになるわけだ。

 日本学園では圧倒的に高校からの入学生が多く、中学の募集人員は200人あるものの、実際の入学者数はその1割程度にとどまっていた。23年の募集要項は夏休み明けに公表されることになりそうだが、いまから受験者数の激増が予想される。



● 女子校再生のキーワード「国際」


 生徒募集が厳しくなってきた女子伝統校は、共学化・校名変更して新たな学校として生まれ変わる流れが、21世紀に入ってから増えてきている。中でも、新たな校名に「国際」の2文字を冠して人気化した最初の例が、三田国際学園だろう。1993年に港区芝から世田谷区用賀に移転、2015年に戸板中学校・戸板女子高等学校から現校名に変更、同時に共学化して人気が急騰した。


 戸板中高の故地で、創立120周年を機に「芝国際」に校名を変更して共学化するのが、芝4丁目にある東京女子学園である。国際と冠するだけあって、「世界標準での学びを」がキャッチフレーズであり、STEAM(Science, Technology, Engineering, Artなど多様な対象とMathematics)での学びを掲げている。


 現在、理事長補佐で開校準備室長となっている小野正人氏は、東京都市大学付属と広尾学園小石川の前身である村田女子高校の校長を務めるなど、学校改革のエキスパートでもある。宝仙学園共学部理数インターやかえつ有明高校の立ち上げ時に関わってきた開校準備室副室長の山崎達雄氏とタッグを組んでいく。


 この秋にも竣工予定の12階建てとなる新校舎の7階から10階には、東京学園女子の関係者が立ち上げたサイエンス特化の「ローラスインターナショナルスクールオブサイエンス」が入居するなど、新しい形での協同も進められていく。


 もう一つの「国際」が、学園の設立母体である扶助者聖母会(サレジアン・シスターズ)の名前を冠して23年から共学化し、サレジアン国際学園世田谷となる目黒星美学園(世田谷区)である。姉妹校の星美学園(北区)は22年から一足先に共学化し、サレジアン国際学園となっている。いずれも付属の人気小学校を持ち、これまで他校に進んでいた男子も取り込むことになる。最寄りがJR赤羽駅と東京メトロ南北線赤羽岩淵駅のサレジアン国際も、初年度から東京湾岸や港区などこれまであまり在校生のいなかったエリアからの志願者が集まるなど、手応えを感じている。


 やはり22年に募集再開と合わせて校名変更・共学化をした千代田国際も、生徒像が一変した。こちらは日野田直彦校長と森上展安氏による対談記事をご覧いただきたいが、PBL教育と海外大学への直接進学を明確に掲げている点に特徴がある。


 「国際」を冠していなくても、新しい教育を大胆に取り入れて改革の実績を持つ校長などが吸引力を持ってアピールする学校は、「グローバル系」とも呼ぶことができよう。広尾学園を筆頭に、元女子校のリニューアル校がその多くを占めている。23年に「国際」を冠する港区と世田谷区の2校については、これからも注目してお伝えしていきたい。


 もう一校、こちらは高校のみだが「国際」を冠して、24年から羽田国際となる予定の学校が、昨年創立80周年を迎えた蒲田女子(大田区本羽田)だ。現状では全入状態でも在校生数は定員の2割程度という状況にある、現在、新校舎も建設中で、今回の校名変更と同時に行われる共学化は起死回生の策となる。


● 2科目入試の廃止


 以前の連載でも触れたように、首都圏の男子校で一番多く受験生を集めているのは東京都市大学付属(世田谷区)である。2500人を超えるその受験生の半分は、2月1日午後の入試に集まってくる。2022年の東大合格者数が初めて12人と2ケタになった。その勢いもあってか、悲願の2月1日午前入試に参入することになった。


 募集人員は一般入試で約240人、帰国生入試とグローバル入試(英語・算数・日本語作文)がいずれも若干名で変わらない。一般入試では、新設する1日午前は4科で約50人(II類約10人、I類約40人)となる。廃止した6日午前の約30人(II類約10人、I類約20人)に加えて、2科となる1日午後からは約20人を充てて、こちらは約100人(II類約40人、I類約60人)となる。これまで2日午前に行ってきた約60人(II類約20人、I類約40人)とグローバル入試は4日午前に移し、4日午前の約30人(II類約10人、I類約20人)は5日午前に移る。


 高校からの募集をやめて完全中高一貫化しても、初回入試を2日午前から動かさなかった豊島岡女子学園(豊島区)とは対照的な動きであり、初回の1日午前に第一志望者がどのくらい集まるか、II類の募集人員を維持した2回目となる1日午後の受験者数にどのような影響が出るかが注目点となる。


 共学校の東洋大学京北(文京区)は、 2月1日午前の第1回、2日の第3回、4日の第4回入試をいずれも4科目のみに変更する。1日午後の第2回は国数2科のままとする。22年の志願者数で見ると、第1回326人、第2回467人、第3回442人、第4回363人とバランス良く集めているが、1日午後入試は負担の少ない2科にとどめることで併願需要に応えようという思惑もありそうだ。


 香蘭女学校(品川区)は、2月1日を4科のみとする。2科の受験者数と合格者数の推移を見ると、19年62人・4人、20年41人・6人、21年36人・2人、22年23人・2人といった具合で、年々受験者数は減少傾向にあった。合否判定は4科合計点で行うが、国算各100点、理社各50点の配点はこれまで通りとなる。また、2日午後は国算2科のままだ。第一志望の受験生のために、繰り上げ合格候補者の決定は、1日と2日の両日受験生を優先している。


 神奈川県の学校でも同様の動きが出ている。これまで1日午前の第1回と2日午前の第2回で2科も選択可能だった洗足学園(川崎市高津区)では、すべての入試を4科とし、その総合点で判定することになる。これまで合格者発表数の8割を国算2科合計点の上位から順番に選び、残り2割は、まだ合格が決まっていない4科受験生の4科合計点の上位から選んでいくというユニークな混合判定は、これに伴い廃止となる。


 洗足学園では、これまで2科を設けていた理由として、「小6生になってから通学圏に引っ越してきて、準備期間の短い受験生にも広く門戸を開く」ことを挙げていた。主に帰国生が想定されるそうした受験生については、1月の帰国生入試B方式(英国算型)で対応しており、一般入試の2科の出願者数が4科の10分の1以下という現状が、今回の変更の背景として挙げられそうだ。


 帰国生ということでは、12月に行う湘南白百合学園(藤沢市)の帰国生入試でも変更点がある。面接は廃止する。海外からはオンラインで対面での入試と同時刻に実施する。また、A方式(英国算で受験し、高得点の2科で判定)もしくはB方式(国算2科)のいずれかを選ぶことができる。


 最後に人気の公立一貫校について触れておこう。東京都立の中高一貫校では、武蔵・富士・両国・大泉の4校が22年から高校募集をやめている。2005年に都立で最初に中学校を付設して中高一貫化した白鴎(台東区)も高校からの募集(2クラス80人)をやめ、中高完全一貫化することになった。都立の一貫校の多くは募集人員160人となっている。正式には10月を待たないといけないのだが、高校での募集分が加わることで、白鴎は200人ほどになるかもしれない。同校は、中高の校舎が離れているが、その点は解消しない。


 茨城県では、22年に下妻第一と水海道第一が一貫化したことにより、併設型と中等教育学校の県立中高一貫校が13校となった。東京の都立と区立を合わせた11校を上回る首都圏最多である。埼玉県は、県立1校(伊奈学園)、さいたま市立2校(浦和、大宮国際)、川口市立1校の計4校のみだが、ここに来て、県立の新設構想が浮上している。旧制中学の系譜を引くナンバースクールではない、地域2番手の伝統校などがその対象となっているようだ。


ダイヤモンド社教育情報/森上教育研究所

2022.5.10
ダイヤモンドオンライン から転載




wakabanavi01 at 16:50|Permalink 中学受験 

2022年04月29日

「共立女子」はOGが初就任、私立中高一貫女子校注目の校長人事【2023年入試版】



前回は、オーナー系の学校と大学系列校について、新校長人事を見てみた。今回は、首都圏にある私立中高一貫女子校について引き続き見ていこう。校長人事からは、各校の目指す方向と内部事情が垣間見える。女子校には男性校長が多いことにも気付くだろう。(ダイヤモンド社教育情報)


● 創立以来のOG校長が就任

 首都圏の私立中高一貫女子校でも新しい校長が続々と誕生している。女子校で、1学年の生徒数が300人を超えるような大規模校は数えるほどしかない。創立から136年、新制中学になってから75年、各学年に400人前後が在籍している共立女子で、初めて卒業生が校長になった。高校の教頭から就任した前田好子氏である。さっそくホームページで、「みなさまごきげんよう」から始まる動画のメッセージを発信している。

 共立女子学園には、中高と短大・大学・大学院に幼稚園を合わせて8200人ほどが在籍している。一方、同じ千代田区にあり、中高から大学院までを擁する大妻学院は、多摩・中野・嵐山(らんざん)にも付属の中高を持つ。在籍者数は総勢1万2000人ほどと、女子の学び舎としては最大級の規模を誇っている。

 この大妻でも校長が交代した。新校長の梶取弘昌氏は、男子校の私立武蔵OBで、東京藝術大学声楽科を卒業後、母校で芸術科の教員を務めて校長になった異色の存在である。70歳からの女子校での登板となった。前校長の成島由美氏は、ベネッセコーポレーションの執行役員から転じていたが、今回、古巣の経営陣に戻る。これにより、大妻多摩の熊谷昌子氏が、学院内の中高で唯一の女性校長ということになる。

 同じく千代田区では、麴町学園女子と神田女学園でも校長が交代している。麴町学園女子の新校長には堀口千秋氏が就任した。東京理科大卒業後、理科教員として入った獨協埼玉ひと筋で、中学校の設立にも関与、広報部長や教務主任などを経て教頭となった。前校長の山本三郎氏は、前任の帝塚山学院(大阪市住吉区)で手掛けた関学コースの実績を買われ、本校でも東洋大学グローバルコースを設けている。

 神田女学園では、第15代校長として芦澤康宏氏が就任した。2019年に本校の副校長に就任する前は、学校法人嘉悦学園の理事、大学の事務局長兼アドミッションセンター長、中学の教頭などを務めてきた。前校長の宗像諭氏は広尾学園や開智日本橋学園の共学化や国際バカロレア(IB)の導入などで力を振るった後、2018年から校長に就任した本校でもアイルランドとニュージーランドの高校とのダブルディプロマプログラムを立ち上げている。



● 女子校のこれからを託す人材

 次に、千代田区以外の東京23区内にある学校を見ていこう。男子校の女性校長はとても珍しいが、女子校の男性校長はむしろ多数派といえる。校長人事には、その学校の方向性が表れていることに注目したい。

 目黒区内には7つの中高一貫校があるものの、男女別学校は女子校のトキワ松学園だけとなった。今年で創立106年目となる伝統校は、前校長で保健体育科教員として探究型のプロジェクトアドベンチャーを推進してきた中山正秀氏から、1971年生まれの若き俊英に後を託した。新校長の田村直宏氏は、京都大理学部卒の数学と理科の教員で、教頭からの昇格となる。

 ロイロノートの使い手で、“タムタム”の愛称を持つロイロ認定ティーチャーでもあり、ICT教育の推進役でもある。前任の大阪市旭区にある常翔学園には、大阪工業大学高等学校の時代から勤務しており、物理科教員として学年主任を務め、卓球部顧問としても活躍した。2021年に教頭として本校に移り、翌年の校長就任となった。

 東京大弥生キャンパス(農学部)に程近い文京学院大学女子は、2024年に創立100周年を迎える。2009年にソニーから転じた民間出身の都立高校校長だった佐藤芳孝氏を校長に迎え、学校改革に拍車がかかった。前任の水上茂氏が中高一貫校長に就任した翌年にはユネスコスクールの認定を受けている。

 国際バカロレア(IB)認定校のアオバジャパン・インターナショナルとの教育連携も始めるなど、国際化教育の充実に力を注いでいる。中高新校長の清水直樹氏は、早稲田大教育学部卒業後、本校の世界史教員となり、2016年から高等部の校長に就任していた。

 北区にあるプロテスタント校の女子聖学院では6年間ぶりに校長が交代する。前任の山口博氏は学校法人聖学院の院長・キリスト教センター所長となる。後任には、横浜市にある捜真女学校の元校長で、男子校である聖学院の事務局長も務めた安藤守氏が就くことになった。 

 23年から共学化し、サレジアン国際学園世田谷となる目黒星美学園(世田谷区)では、女子校最後の1年間を、シスターの森下ワカヨ氏が見届けることになる。同校で教鞭を取ってきた森下氏は、学園の設立母体である扶助者聖母会(サレジアン・シスターズ)の総責任者である日本管区長である。一足先に22年に共学化し、星美学園から校名変更した姉妹校のサレジアン国際学園(北区)ともども、校長はシスターが務めることになった。




● カトリック校と神奈川の事情

 吉祥寺駅に近い藤村女子は、ユニークな入試を毎年繰り出すことで印象的な学校だ。創立90周年の今年、教頭と副校長を務めた廣瀬真奈美氏が新校長に就任した。前校長の柳舘伸氏は、中学でのコース制の廃止、高校での3つのコースへの道筋を付けての退任となった。

 カトリック女子校では、修道女(シスター)の教員が校長という例がかつては多かった。杉並区にある光塩女子学院では、2020年に就任した中高OGで上智大に学んだ前校長・佐野摩美氏の急逝を受けて、新校長に就いた鳥田信二氏は副校長からの昇格である。 

 八王子市にある東京純心も、系列の大学を持つカトリックの女子校である。長崎の純心聖母会が設置母体で、本校もシスターが創立しており、キャンパス内には修道院もある。前校長の松下みどり氏も、新校長の森扶二子氏もシスターである。

 神奈川では、横浜女子御三家の1つである横浜雙葉が、木下庸子氏を校長に迎えている。前任の藤原恵美氏は英語科教員で、2018年に副校長から昇格していた。開校以来、聖職者が校長を務めてきた。1999年に漆原隆一氏が校長に就き、その後、千葉拓司氏が就くなど、男性信徒の校長の時期もあった。県内の女子校ではフェリス女学院が突出しており、そこに洗足学園が並ぶような状況になっている。入試の実倍率が2倍に届かない現状も含め、これからどのようにしていくのか、手腕が問われることになりそうだ。

 同じ県内のカトリック女子校では、2021年に湘南白百合学園で修道女(スール)以外の初めての校長が就任している。このあたりは学校によって対応が異なるようだ。

 カトリック校以外の神奈川県内の女子校についても見ていこう。理事長に元米国大使、学園長に前開成校長を擁する北鎌倉女子学園でも校長が交代した。新校長は、神奈川県立湘南台高校と麻生総合高校の校長、神奈川県立高等学校長会副会長を務めた佐野朗子氏である。学園内には内部昇格も視野にあるようだが、時期尚早という判断だったのだろう。相模女子大学中等部・高等部の新校長には、武石輝久氏が就任した。

 最後に、前回ご紹介できなかった共学校と男子校についても触れておこう。

 埼玉県加須市にある開智未来では、数学科教員の藤井剛氏が新校長に就任した。前校長の加藤友信氏は物理の教員で、開智学園グループのICT部門を統括する役割も担っていた。

 灘(神戸市東灘区)の卒業生で、母校の英語科教員となった和田孫博氏は、2007年に校長に就任、野球部の監督・部長も務めるなど名物校長だったが、70歳を機に後進に道を譲ることに。第9代校長となる海保雅一氏は教頭からの就任で、やはり英語科の教員である。



【訂正】 本文第17段落について、初出時『神奈川では、横浜女子御三家の1つである横浜雙葉が、シスターである木下庸子氏を校長に迎えている。』から「シスターである」を削除、『千葉卓司氏』を「千葉拓司氏」にそれぞれ訂正いたします。
(2022年4月27日18:23 ダイヤモンド社教育情報)



2022.4.29
ダイヤモンドオンライン から転載






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