八戸工大二高に併設型中学 18年度開校目指す文科省、スーパー・プロフェッショナル・ハイスクール10校指定

2017年03月27日

「あえて大学付属校」という賢い選択〈AERA〉


大学付属校が人気だ。入試改革の混乱を避けるため、とも言われるが、実際は改革を先取りしたリベラルアーツ教育が支持されているという。その真価は、進学校が受験シフトに入る高2以降に発揮される。

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 いわゆる早慶MARCHの主な付属校のうち、首都圏にある中学の過去3年の入試倍率をまとめたデータによると、年によって変動はあるが、ほとんどの学校は3倍を超え、右肩上がりになっている学校も少なくない。人気の背景について、四谷大塚情報本部の岩崎隆義・本部長はこう指摘する。

「大学がエスカレーターでついているからとか、新テストに不透明感があるから、といった短絡的な理由で選んでいるのは少数派。それよりも、大学入試改革の理念を先取りした教育に価値を見いだしているご家庭が、付属校を選んでいるのです」



●リベラルアーツの成果

 系列の大学に付属の高校からどのくらいの割合で進学するか、いわば「エスカレーター度合い」をまとめた。一口に「付属」と言っても、学校によってかなり差があることがわかった。例えば慶應の付属校はいずれも100%に近いのに対し、早稲田の付属校の中には5割を切る早稲田高等学校のように、進学校の側面を併せ持つ学校もある。一方、MARCH系では内部進学率が早慶より若干低めの7~8割が多い。しかし前出の岩崎さんは、これはエスカレーター式のほころびではなく、リベラルアーツ教育の「成果」と見る。

「付属校ではペーパーテスト的な勉強だけじゃなく、様々な体験や探究型学習が盛んです。その中で『医師になりたい』『デザイナーになりたい』といった明確な目標が見つかる子も出てくる。付属校というと大学は決まったと思われがちですが、内部進学の資格を保持しつつ、他大受験もできる。選択肢は逆に広がるのです」(岩崎さん)

 付属校の多くが従来取り組んできたリベラルアーツ教育は、他の私立の中高一貫校でも「21世紀型教育」として今、盛んに取り入れられている。ただ、進学校と付属校の最大の違いは高校2年以降のカリキュラムにある。進学校が受験モードにシフトする中、付属校はさらに探究を深めたり、大学への接続を意識した授業をしたりできるのだ。

「我が国の国家インテリジェンスの在り方」「武田泰淳の感性的滅亡体験論」「翼の失速現象の解明と自作風洞によるビジュアル化」「小型節足動物が材質の異なる壁を登る能力について」……。早稲田大学高等学院の論文・作品集をめくると、高校生とは思えない高度な論考に目を奪われる。それが可能なのは、高2からの十分な「助走」があるからだ。



●1万2千字の卒論

 まず総合学習の時間を使って課題を設定し、仮説、論証、プレゼンというプロセスを体験する。さらに、通常の授業でも大学で自分は何を学びたいかをイメージしながら、選択科目を取っていく。大学準備講座として「ビジネス入門」「理工線形代数」などを、大学の学部生に交じって学ぶこともできる。また「法学特論」「経済学・政治学特論」などは大学教員による授業もある。

 そうしたベースのもとに生徒は各自のテーマを決めて、1万2千字程度の卒論に取り組む。約50人の教員が1人当たり10人の生徒を受け持ち、ゼミ形式で指導。研究活動に費用が必要な研究テーマでは「研究計画書」を提出し、認められれば、同窓会からの研究奨励金のサポートも受けられる。


「高校生には、大学生のように『所属する研究室のテーマに合わせないといけない』といった制約がないので、純粋に自分の興味を追求しています。弓道部の生徒がなぜ矢が安定しないのかを科学的に検証するなど、ユニークなものも多く『世界初』の研究になっていることも少なくありません」(同校の小川慎二郎教諭)

 第2外国語についても、同校ではドイツ語、フランス語、ロシア語、中国語のいずれかを必修とし3年間みっちり学ぶ。受験を気にせずに済む付属校だからこそ、大学に入る段階でそれだけの「貯金」ができるのだ。

 一方、「多文化共生」を軸としたリベラルアーツ教育に力を入れるのは、青山学院高等部。東ティモールでのフィールドワークを通して、経済格差やフェアトレードについて学んだり、青山学院大学への留学生と移民やLGBTなどについて議論するなど多彩なプログラムがある。その集大成として高2後半から高3にかけて「共生」をテーマに論文も書く。

 通常の授業の英語も、世界を知り、コミュニケーションするためのツールという位置づけで、穴埋め式のドリルや英文和訳などに割く時間は一切ない。高2で“Discussion in Heaven”と題して、ケネディ大統領やマザー・テレサ、坂本龍馬など著名人の中で誰か一人を蘇らせるとしたら誰にするかを議論したり、高3では、アメリカのノンフィクション作品を半年かけて読み込み、最終的に「赦しとは」「生きるとは」「結婚とは」「年を重ねるとは」といったテーマで30分のプレゼンをしたりする。

「一貫教育という環境の中で、一歩先の学問、面白い勉強に出合ってもらいたい」

 同校の藤井徹也教諭は、カリキュラムの狙いをそう話す。

 大学入試が目指す脱ペーパーテスト、高大接続に付属校は先んじて取り組んできたが、その徹底具合は、当然のことながら、一律ではない。『大学付属校という選択』の著者、おおたとしまささんはこう指摘する。

「大学受験に縛られない本質的な学び、と言いながら難関大学進学コースを作ったり、外部の模試を受けさせたりする学校もある。そうであれば進学校と大差はなくなってしまう」

●ミス恐れずチャレンジ

 その観点でおおたさんが注目するのは、内部推薦の審査基準だ。公表していない学校が多い中、例えば立教池袋高校は「定期試験や提出物など成績の比重は55%、高2、3年で取り組む卒業論文は20%、25%は自己推薦」と明確にしている。自己推薦は部活や生徒会活動、趣味やボランティア等の課外活動など七つの項目の中で最大三つを選んで、自分が頑張ってきたことをアピールするものだ。

 おおたさんは言う。

「親御さんには、楽して大学に行けて、世間に通用する学歴を手に入れるといった理由で付属校を選択するのはお勧めしません。付属校の本来の価値はそんなせこいものではないはず。受験がないからこそミスを恐れず、様々なことにチャレンジできる体制になっているか。その結果としてのいろいろな個性をきちんと評価しているか。そこに注目してほしい」

※学校によって「付属校」ではなく「附属校」「系属校」「一貫教育校」などとしている場合もありますが、本稿は個別校名以外は「付属校」としています。

(編集部・石臥薫子)

※AERA 2017年3月27日号



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