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2019年04月25日

「髪をむしるほど過酷」な中学受験の壮絶結末



少子化といわれながら、年々加熱する中学受験。首都圏それも都心に暮らす親にとって、中学受験と無縁という人のほうが珍しいのではないだろうか。

だが、その“リアル”を知る機会は少ない。受験雑誌をにぎわせるのは成功者の話ばかり。しかし家庭によっては文字通り、茨の道であることも少なくない。中学受験をするかしないかは別として、受験をすると決めた家にとってはその道がどのようなものなのか、困難な状況も知ることは大事だろう。今回は残念な個人講師によって、茨の道を歩んでしまった母子に話を聞いた。

 この春、中学3年となった田中智樹くん(仮名)は、自宅から遠く離れた寮のある学校に通っている。寮生活のおかげだろうか、部屋の掃除に洗濯と、身の回りのことは随分と自分でできるようになってきた。月に数度の帰省の度にたくましくなる息子を見て、母親の愛さん(仮名)は胸が熱くなるという。

 だが、今でも悔やむことがある。

 「中学受験に向けた勉強の後半で、息子はどんどん追い込まれていきました。最後は頭にはげができました。でも、私は冷静に判断することができなかった。同じ過ちを他の親子にはしてほしくない。だから、お話ししようと思いました」

 話すには相当の勇気がいっただろう。当時のチラシや資料を手に、少しずつ重い口を開いてくれた。


■はじめは満足のいく成績を収めていた

 智樹くんの中学受験は、受験経験のある母親・愛さんの希望から始まった。幼少期から自宅そばにある大型ショッピングセンター内の幼児教室に通っていた智樹くん。そこが終われば次は塾、というのは自然な流れだったという。智樹くんは小3になると日能研に入塾した。

 日能研は首都圏では名の知れた、大手の中学受験塾だ。入塾にはテストがあり、入塾後は毎回のレベル分けテストの成績によりクラス分けがなされる仕組みになっていた。そして、クラス内での席も成績順。

 こうした塾では子ども同士は否が応でも成績の上がり下がりをお互いに知ることになる。負けず嫌いで競争心のある子どもにとってはいい刺激になるが、成績の上下に敏感に反応し、落ち込んでしまうタイプの子にとっては少々、過酷な環境となる。

 中学受験のための塾は、小3の2月から本格的に開講することが多い。本番である小6の2月の丸3年前、と数えるためだ。ところが智樹くんの入塾は小3のはじめと一足早い。競争相手の数が少ないため、はじめは満足のいく成績を収めていた。



思うような成績を取れなくなったのは小4になってから。理科と社会の勉強が始まった頃のことだという。

 「ランランラン 一番うしろは崖っぷち 一番ま~えはクラスアップ……」

 同じ塾に通う子どもたちの間で、こんな歌が作られて口ずさまれるようになっていた。塾での友だち、“塾友”との関係が良好だった智樹くんも、周りの子と一緒に無邪気にこの歌を口ずさんでいた。

 一番前の席がそのクラスにおける成績トップ集団。一番後ろの席は次のテストの出来が悪ければ、一つ下のクラスに落とされる。そのことをこの歌は意味していた。

 「塾の先生は“やめなさい”って注意していましたけれど、別に悲壮感はなくて、明るく口ずさんでいました」(愛さん)


■親子に芽生えた“上を目指したい”という欲

 成績が“見える化”されているこうした塾では、塾友は仲間でありライバルだ。その意識は通塾により自然に作り出されていく。

 学習量が増えるに伴い、成績が伸び悩んだという智樹くんだが、それでも塾での模試の偏差値は50台後半から60台とまずまずをキープした。だが、この状況がかえって受験熱を加速させることになったのかもしれない。

 「まだ4年生でしたから、頑張れば、もう少し上に上れるのではと、本人も私も思ったのです」(愛さん)

 また、母親の愛さんによれば、本人の希望と環境的要因も大きかったという。自宅のあるエリアでは、受験をして入る中学校の数は限られていた。首都圏の場合、中学受験をして入る学校への通学時間として、1時間は十分に通学圏内といわれる。智樹くんの場合も、その範囲まで考えれば、いろいろな志望校候補が考えられた。

 だが、体力がなく、どちらかといえば気弱なタイプの智樹くん。「あの満員電車に揺られて1時間もかけて通うのは僕にはできない……」そんな気持ちがあったという。

 体力的にも無理のない、比較的通学時間が短い学校――この条件に合う学校は、当時の智樹くんの偏差値では届かない。でも「あと少しで、手が届く」そんな状況だったのだ。ある日、そんな田中家のポストに1枚のチラシが舞い込んできた。

 ――「〇〇中学合格者80%!」「中学入試専門の家庭教師」
「塾の成績が上がらない」「塾の宿題がやりきれない」「算数専門の家庭教師」――

 チラシには目当ての学校の名前が大きく書かれていた。しかも掲げられていたのは80%という高い合格率。受験において算数は要になる科目だ。智樹くんの場合も、算数の成績が上がれば、間違いなく希望の学校の合格ラインに乗れる。そんな思いが親子の頭をかすめたのだ。金額は1時間あたり6000円。息子は「やってみたい」と言ってきた。


 「僕、塾で上のクラスに上がりたい」

 普段は競争心など見えない智樹くんが、はっきりとそう答えた。息子の言葉に押され、愛さんはこの家庭教師に連絡を入れた。

 話を聞くに、首都圏では名の知れた塾の講師として働いた後、個人経営のプロ家庭教師を始めたというこの講師。日能研の宿題のサポートをはじめ、塾の勉強の予習復習を含めて「面倒を見ますよ」との講師の言葉は、親子にとってとても心強く感じられた。

 講師は続けてこうも話した。「この状態ならば何も問題ありません。絶対に受かります!」母親の愛さんはその言葉を信じて、お願いすることに決めたのだ。だが、違和感は「初回の授業からあった」という。


■怒鳴るような声で教える高圧講師

 「コラ! やる気あんのかぁ!」

 ドン。講師の先生と2人きりになる息子の部屋からは、時折凄みの効いた声と共に何かを蹴るような音がした。「受講説明の時にはそんな荒々しい様子は見られなかったですし、この時はもう、“この先生にお願いすれば必ず合格できるんだ”という気持ちばかりが先立っていたので、あの指導は息子が本気を見せないから、先生が活を入れてくれているのだと思っていました」。

 厳しく叱ってくれるのも自分を鍛えるためなのだ。智樹くん自身もそう思うようになっていた。「先生、ちょっと、怖くない?」母親の愛さんが声をかけても「うぅん、ちょっと……」と言うだけ。やめたいとは決して言わないため、そのまま指導をお願いした。

 だが、高圧的な指導はその後も毎回のように続く。「また間違えてる!」「ここはこうだ!」。ドン。「何回やったらわかるんだ」。ノートを叩きつけるような音がすることもあり、指導が穏やかになることはなかった。だが、息子も相変わらず「先生ともう少しやってみる」と言うばかり。

 「実際、この先生についてから、成績が上がり出したんです。クラスも最上位クラスに食い込みだして……。結果がついてこなければ、私もすぐにやめさせていたと思うのですが、結果が出てきていましたから……」

 しかし、成績とは裏腹に、ストレスは着実に智樹くんに蓄積されていた。

 家庭教師をお願いしてからも日能研への通塾は続けていた智樹君。小4の夏休み前になると塾では夏期講習の話が出始めていた。だが、家庭教師からも誘いを受けることになる。「自分が開く夏期講座にこないか」。この夏にグンと成績を上げたいと思った田中親子にとっては大きな選択の時となった。


 「日能研にはすごくお世話になっていましたし、先生もフレンドリーでいい方が多かったのですが、自習室があるといっても自分で勉強を進めるだけでした。宿題があっても丸をつけて返してくれるだけ。一人ひとりに“ここがこう違うから間違えるんだ”という細かな指導は望めませんでした。

 でも、この個人家庭教師の先生は、ノートのとり方にいたるまで、とにかく細かい部分までチェックしてくださいました。自分で進めていく力がまだ弱いうちの子には、手取り足取り教えてくれる個人家庭教師の先生が開く講座のほうがいい気がしてしまったのです」

 こうして、普段は日能研に通いつつも、夏期講習についてはこの家庭教師が開く講座に参加することを決めた。講座と呼ばれる教室では、他学年の生徒が机を並べて勉強していた。面倒見のいい6年生の女の子たちにもかわいがられていたという智樹君。日能研同様にここでの居心地も悪くない様子だった。だが、高圧的な指導は集団指導でも続いていた。

 通い始めて数日、智樹くんの様子が変わった。夜な夜なうなされるようになったという。「う~」とうなされて起きる日々。「怖い……」息子の口からついにこの講師に対しての本音が漏れた瞬間だった。



■いつしか、冷静に判断する力を失っていた

 だが、「やめる」とは言わない。怖い。だけれども成績は上がっている。親子ともに受験という魔物に取り憑かれたかのごとく、成績が上がるということだけにしか頭が働かなくなっていた。

 愛さんが語る当時の様子は、まるでスポーツ指導における指導者からのパワハラを思わせた。一連のパワハラ騒動の中で語られた「ストックホルム症候群」という言葉について、記憶に新しい人も多いだろう。

 怖い。でも、このコーチについていけば必ず力がつく。全国大会に出られる。高圧的な言動におびえる気持ちがある一方で、それは「自分のための指導」だと思い込んでしまう状態を生み出していく。そして、心的外傷後ストレス障害を引き起こす。

 高圧的な指導を繰り返し受けていた智樹くんはまさに、この状態に陥っていたのかもしれない。ジリジリと成績が上がる中、中学受験という茨の道を切り抜けさせてくれるのは、「この先生しかいない」。いつしか、親も子も、冷静に判断する力を失っていた。



2019.4.25
東洋経済オンライン から転載



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wakabanavi01 at 22:28│ 中学受験 
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