弁護士・金原徹雄のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します。

徐々に企画が戻ってきた~7/18核戦争防止和歌山県医師の会・2020年平和講演会(久保田智子さん)

 2020630日配信(予定)のメルマガ金原No.3470を転載します。

徐々に企画が戻ってきた~7/18核戦争防止和歌山県医師の会・2020年平和講演会(久保田智子さん)

 COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の拡大により、全世界中の人々が、家庭生活や仕事だけではなく、様々な社会活動を抑制せざるを得ない中、私が近年ずっと関わってきた以下の諸企画も軒並み中止のやむなきに至り、私は、中止のリリースを起案した上で、ブログでお知らせするということ繰り返していました。

2020年3月2日 
講演会中止のお知らせ・3/14君島東彦立命館大学教授講演会を中止します(守ろう9条 紀の川 市民の会)
2020年3月31日 
残念なお知らせ~4/28志田陽子先生講演会(青法協和歌山支部憲法記念行事)の「中止」について 
2020年4月5日 
HAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama 2020”中止のお知らせと“20142019”回顧 

 世界的にはまだまだ流行が収束するめどは立たず、国内でも、東京をはじめ、感染が収まっているとは言いがたい地域もありますが、緊急事態解除宣言も出され、かなりの程度、日常生活が戻りつつあるという状況ではないでしょうか。

 そのような中、例年、初夏に平和講演会を開催される核戦争防止和歌山県医師の会から、今年の講演会のお知らせをいただきましたので、ブログでご紹介することとします。

(チラシから引用開始)
チラシPDF 

2020年平和講演会

きのこ雲の下で起こっていたこと
~オーラルヒストリーとして伝える~

 1945年8月6日に広島に原爆が投下されたということは日本人なら誰もが知る事実です。
 写真・映像、数字で示される事実だけでなく、ひとリ一人、その個人の人生に被爆がどんな意味を持ったのかを考えながら、じっくりとお話を伺い、記録するオーラルヒストリー(口述歴史)の方法だからこそ、立体的に見えてくるものがあります。
 今回、オーラルヒストリーの研究者として、キノコ雲の下で起こっていたことを次世代にどう伝承していくか、についてお話いただきます。

と き 7月18日(土)午後3時~5時
ところ 和歌山県JAビル 2F和ホール
定員60名(申込み、先着順) 参加費無料
講 師 久保田 智子 氏(元TBSアナウンサー)
プロフィール
1977年1月24日生まれ。東京外国語大学を卒業後、2000年にTBSテレビに入社。アナウンサーとして「どうぶつ奇想天外!」「筑紫哲也のニュース23」「報道特集」などを担当。
2013年からは報道局兼務となり、記者として国際、政治、経済ニュースを取材。
2017年にTBSテレビを退社し、アメリカ・コロンビア大学にて修士号を取得。研究テーマは戦争の記憶とオーラルヒストリー。

主催/核戦争防止和歌山県医師の会
連絡先/和歌山市八番丁11番地 日本生命和歌山八番丁ビル8階
        和歌山県保険医協会内 TEL.073-436-3766
(引用終わり)

 会場となる「和歌山県JAビル 2F和(なごみ)ホール」(和歌山市美園町5-1-1)は、A、B、Cの3ブロックに分割使用が可能ですが、事務局である和歌山県保険医協会に教えていただいたところよると、当日はAB2ブロックを使用するそうで、この場合の本来の定員は、
  スクール型 2人掛 120名
  スクール型 3人掛 180名
  椅子のみ 320名
となっています。
  従って、各テーブルに1人掛(もしくは椅子のみ)を前提に、60人で予約を打ち切るということのようです。

 政府が5月25日に発表した「イベント開催制限の段階的緩和の目安」によれば、7月18日に開催される上記講演会(屋内)の場合、ステップ③(7月10日~)にあたり、
  収容率 50%以内
  人数上限 5000人
ということなので、このうちの「収容率50%以内」を目安に「定員60名(申込み、先着順)」としたのでしょう。

 チラシと共に主催団体から送られてきた「お誘い」の文章には、「時節柄、新型コロナウイルス感染防止のため、定員を設け、参加申込みをお願い致します。会場との関係で先着60人とさせていただきます。同封のチラシ・参加申込書のお名前・電話番号・ご住所をご記入の上、事務局の和歌山県保険医協会(FAX:073-436-4827)までFAXいただければ幸いです。」とありました。この方式なら、イベント主催者に要請される「参加者の連絡先把握」も出来ますしね。 

 私が直接関わっている企画で現在検討中なのは、11月3日(火・祝)、「守ろう9条 紀の川 市民の会」の「第17回 憲法フェスタ」(於:和歌山市河北コミュニティセンター)なのですが、企画内容から考えて「予約制」は難しいだろうなあ。さて、どうしたものか。
 それに「感染リスクの最小化」ということでいえば、恒例となっている、記念講演の講師を囲む懇親会をどうすべきか・・・。講演会より懇親会の方がはるかにリスクが高いけれど(マスクをしながら飲み食い、おしゃべりはできませんからね)。

 これから秋にかけて様々な企画を考える団体もあるでしょうから、少しでもご参考になればと思い、「楽屋内」の関心事について考えてみました。

(弁護士・金原徹雄のブログから/核戦争防止和歌山県医師の会関連)
2011年7月9日(2013年7月6日に再配信) 
アーサー・ビナード氏講演会(in和歌山市)レポート/201179 
2013年6月3日 
予告7/6馬場朝子氏講演会「低線量汚染地域からの報告-チェルノブイリ26年後の健康被害」(核戦争防止和歌山県医師の会) 
2015年5月23日 
予告6/27高原孝生氏を招いた平和講演会(核戦争防止和歌山県医師の会) 
2016年4月26日 
予告6/11映画『放射線を浴びたX年後』2部作一挙上映と伊東英朗監督講演会へのお誘い(核戦争防止和歌山県医師の会) 
2017年5月26日 
木戸季市氏(日本被団協事務局次長)講演(7/8プラザホープ)とヒバクシャ国際署名~核戦争防止和歌山県医師の会2017年平和講演会 
2018年5月21日 
川崎哲氏講演会「ICANのノーベル平和賞をうけて私たちは、何をどう取りくむか!」(2018630日@和歌山市勤労者総合センター)のご案内


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『10代からの批判的思考 社会を変える9つのヒント』(名嶋義直編)を読む

 2020628日配信(予定)のメルマガ金原No.3469を転載します。

『10代からの批判的思考 社会を変える9つのヒント』(名嶋義直編)を読む

 1冊の本を読み上げ、その感想をブログにまとめるという作業は、思いの他エネルギーを要することで、昨年(2019年)1月から3月にかけて左自然気胸によって立て続けに3度入院するという偶然の機会に読み得た憲法関連の書籍を取り上げた「入院読書日記」(1)~(3)以来、久しく遠ざかっていました。

2019年3月23日 
『いま 日本国憲法は 原点からの検証(第6版)』(小林武・石埼学編)を読む~入院読書日記(1) 
2019年4月30日 
『「表現の自由」の明日へ 一人ひとりのために、共存社会のために』(志田陽子著)を読む~入院読書日記(2) 
2019年5月18日 
『日本国憲法』(長谷部恭男解説/岩波文庫)を読む~入院読書日記(3) 

 今日取り上げようとするのは以下の書籍です。

『10代からの批判的思考 社会を変える9つのヒント』 
編著者 名嶋義直
著者 寺川直樹、田中俊亮、竹村修文、後藤玲子、今村和宏、志田陽子、佐藤友則、古閑涼二
2020年4月24日 初版第1刷発行
株式会社明石書店


 
 4月中旬にAMAZONで予約しましたが、コロナ禍の影響(?)からか、届いたのは5月13日でした。そして、読み終えたのが6月21日なのですから、約270ページの本を読むにしては時間がかかり過ぎています(そこからブログを書くまでさらに1週間かかりました)。
 この本は、9つの章を9人の共著者が分担執筆していますので、自分の関心の向かう章から読み進めていけば良いのだろうとは思いつつ、出来れば第1章から順番に読み進んでいきたい気持ちもあり、途中まで読んでしばらく中断すると、また前書きに戻って読み始めるということを繰り返していたことが、通読するのにかくも時間を要した主要な原因です。

 そうなったについては、編者の名嶋義直さんが書かれた前書き「この本を手に取ってくれた皆さんへ」が素晴らしく感銘深い文章だったので、ついついそこから読み始めたくなるということもあったと思います。それに、前書きの中で、「もちろんどの章から読んでもいいのですが、第1章から順番に読んでもらうと、その世界の広がりをもっともダイナミックに感じてもらえると思います。」とも書かれていましたしね(実際、そうでした)。

 名嶋さんの前書きは実に11ページにも及び、この本の狙い、読み方、第1章~第9章のガイダンスなどが、丁寧に、誰にでも分かりやすい言葉で説明されています。版元(明石書店)のホームページには、「内容紹介」と「目次」が掲載されていますが、出来れば編者の名嶋義直さんによる「この本を手に取ってくれた皆さんへ」を立ち読みできるようにしておいてくれたらなお良かったのにと思います。

 まず、この本のあらましを知っていただくために、目次の大項目・中項目をホームページから引用するとともに、「この本を手に取ってくれた皆さんへ」の重要部分を転記させていただきます。

(引用開始)
目 次

この本を手に取ってくれた皆さんへ[名嶋義直]

第1章 校則(ルール)って?[寺川直樹]
 1 こんな校則(ルール)がなぜあるの?
 2 自由とルール(秩序)
 3 「よりよい」ルール(校則)の創造へ

第2章 いじめって?[田中俊亮]
 1 はじめに
 2 いじめの定義と分類
 3 いじめの原因は?
 4 いじめをどう解決する?
 5 いじめの「加害/被害」を考える
 6 おわりに

第3章 いろいろな学びの形――高校生活の多様な選択肢[竹村修文・名嶋義直]
 1 先輩からのメッセージ
 2 引きこもりから転校を経験して
 3 母の高校受験挑戦
 4 高校の選択肢はいろいろ

第4章 いろいろな学びの形――生涯学習/キャリア教育[竹村修文・名嶋義直]
 1 生涯学習の時代
 2 生き方は変わってきている
 3 マルチステージを生きるために
 4 さあ、新しいステージへ

第5章 仕事って?[後藤玲子]
 1 はじめに
 2 規範としてのワーク・ライフ・バランス
 3 仕事は多すぎず、少なすぎず、ほどほどに――どうして?
 4 仕事と生活の「適度」な組み合わせ――どのように?
 5 働くとはどういうことなのか
 6 仕事と職業
 7 結びに代えて

第6章 メディアを読む力、問いかける力[今村和宏]
 1 メディアの多様性と偏り、影響力
 2 想像力、疑問を持って読み、ちょっと調べてみる
 3 メディアに問いかけ、発信する

第7章 「表現の自由」って何ですか?[志田陽子]
 1 「自由です」ということの意味
 2 ルールを知ることで自信を持とう
 3 知っておきたい権利のいろいろ
 4 批判と差別は違う
 5 「こんなルールは困る」と思ったら?
 6 「自由です」ということの意味

第8章 豊かでプライドが持てる日本が続くために――多文化共生[佐藤友則]
 1 日本の現状はどうか?
 2 多文化共生、多様性による日本の活性化
 3 多文化共生に関する基本法の整備
 4 自分の手で強い日本を持続=多文化共生の勉強を!

第9章 世界に挑め!――グローバル人材への道[古閑涼二]
 1 はじめに――「どうして英語ができないの?」
 2 グローバル化の必要性
 3 グローバル人材への道
 4 学生時代にすべきこと
 5 おわりに――グローバルという未知の世界へ

この本を手に取ってくれた皆さんへ[名嶋義直] から抜粋

生きる力
 この本は、皆さんのような若い人がその「生きる力」を身につけ、育て、伸ばしていくためのお手伝いをしたいと思って作りました。
「批判的」って、なんかちょっと・・・
 「批判的に考える」とか「批判的思考」とか「批判的姿勢」というのは、簡単に言うと「一歩立ち止まってじっくり考えてみる」姿勢を言います。だから「よいこと」なのです。
 さらに言うと、この「批判的に考える」という姿勢と実践は、今さかんに言われる「アクティブ・ラーニング」の本質そのものなのです。
人生は旅
 この本はこのように、九つの章が少しずつ、また時には章を超えて関連し合いながらつながっていて、皆さんが読み進めて行くにつれて、今自分がいる世界からもっと外の世界・さらに広い世界へ旅に出て行く、そんなイメージで作られています。
いくつかの読み方
  問いの中には簡単には答えられないものがあるかもしれません。そんな時は「自分でいろいろ調べる」などしてみてください。また、自分で考えたり調べたりしても答えが出ない問いがあるかもしれません。その場合でも「考えることを諦めない」で、「どこまで答えられるのか、どこから答えられないのか」を考えてみてください。
 そして、考えたことを身近な人と「対話」してみてください。「他者の考え」は「自分にはない視点」を教えてくれる大切な学びのための資産です。また逆に見れば、あなたの視点が他者の学びに寄与するとも言えます。この「対話を通して学び合う」姿勢を持ってください。
情報にアクセスする (略)
各章の紹介 (略)
よい旅を!
 第1章から第9章までの内容を見てわかると思いますが、それぞれの章で取り上げているテーマは具体的な事例としては個別的なものです。しかしそこを入り口としていろいろ考える実践は、今後さまざまな場面や局面で必要になってくるもので、まさに「生きる力」につながるものです。またこの本を読みながら、自分で考えたり、友達や先生と一緒に考えたり、時には議論して対立したりといった経験も、皆さんにとってとても大切な「生きる力」になるはずです。この本は、知識・考え方(理念や価値観など)・実践する方法、といった多面的な「生きる力」を、この1冊の中で少しでも伸ばしてもらえたらいいなあと思って作りました。
 もしかしたらその「生きる力」はすぐには必要にならないかもしれません。逆に読む前からすでにそのような「生きる力」を必要としている人もいるかもしれません。読者の皆さんにとって、この本が「社会を主体的に生きて行く」上での地図やコンパスのようなものになればとても嬉しいです。この本で学んだことをカバンに詰め込んで自分の旅に出てください。
 では、皆さん、よい旅を!
(引用終わり)

 ここまで引用すれば、この本の紹介としては十分ではないかという気もしますが、それでは、Facebookで明石書店のこの本を紹介するページにリンクし、「皆さん、良い本ですからお薦めします」と一言コメントするのと大差ないことになるので、もう少し続けることにします。

 まず何より述べておきたいのは、この本が(編著者9名が)主として想定した読者層と、今この本を読み終わった私との年代の相当な懸隔をどう理解するかについてです。
 本書は、「皆さんのような若い人」(この本を手に取ってくれた皆さんへ)、「みなさんんの多くは未成年者だと思います。」(第7章)、「その時に法律(※多文化共生基本法)制定の意見書提出の中心になるのは若い読者の皆さんです。」(第8章)、「最後に、皆さんが学生時代にすべきことをお伝えします。」(第9章)など、誰がどう読んでも、この本は明確に若い読者層に向けて書かれています。具体的には、高校生、大学生、あるいは彼らと同年代の青少年ということでしょうか。
 これに対して私は、本書第4章で取り上げられた「生涯学習」の実践として、ここ12年ほど放送大学の現役学生であり続けているものの、昨年末から前期高齢者の仲間入りをしており、本書の想定読者層とは、40~50歳の年齢の開きがあります。
 そのような私が本書を読む意義とは何だろうか?ということは、読み進めながら常に頭を離れなかった問題意識です。
 感銘深く本書を読み終えた今、私のような年配者が本書を読むことによって何が得られるかという観点から、本書の読後感をまとめてみたいと思います。

〇自らの行動の指針として
 通読してみて、編者の名嶋義直さんの「第1章から順番に読んでもらうと、その世界の広がりをもっともダイナミックに感じてもらえると思います。」という助言は正しいと得心がいった一方、私のような年配の読者には、「まず自分が最も関心を有する分野から読み進める」ことをお薦めしたいと思います。
 例えばこういうことです。
 私は、昨年(2019年)1月の入院を機に、6年間続けた「ブログ毎日更新」を中断せざるを得なくなったこともあり、ブログ更新よりもはるかに手軽に出来るFacebookによる情報発信の方により時間を割くようになりました。
 私の場合、SNSの利用はもっぱらFacebookであり、instagramtwitterはほぼ利用していないのですが、情報を受け取るにしても、また発信するにしても、自らのスキルが全く不十分であることを意識せざるを得ませんし、同じような思いを持たれている方も少なくないのではないでしょうか。
 このように、SNSはそこそこ利用しているが、自信を持ち切れないという方には、本書の第6章「メディアを読む力、問いかける力」(今村和宏さん)と第7章「「表現の自由」って何ですか?」(志田陽子さん)をじっくりとお読みになることをお薦めします。
 私のような年代は、新聞を中心とする活字媒体とテレビ、ラジオによる放送媒体が主要な情報ツールという時代に成長し、社会人としての生活をスタートしてからも、インターネットには、相当後年になってから初めて接することになった世代です。また、自らが簡単に情報の発信者となり得る時代も、インターネットの普及と共にやってきたことは言うまでもありません。
 第6章と第7章は、インターネットがらみの問題だけを取り上げている訳ではなく、もっと普遍的な「メディア・リテラシー」と「表現の自由」に関する分かりやすい解説となっているのですが、インターネットと無縁の生活などあり得ない時代だからこそ必要となる、情報の吟味や表現行為について身につけておくべき貴重な知識が豊富に提供されており、一読、思わず膝を打つ箇所がどれだけあるかによって、読者自身の問題意識の高低が測られているような気もします。
 日々Facebookに流れる情報の中には、真偽不明、出典未詳の、正直に言えば、本来取り上げるに値しない膨大な情報が流れていることは、利用している人には説明の必要もないでしょう。そのような情報の中に、たまたま自分の意見に近いものがあったとしても、それを安易にシェアする前に、「待てしばし」「出来るだけ真偽を確認するための裏取りをしよう」という習慣を身につけるためには、本書第6章はとても有用です。
 また、自らが意見や情報の送り手となる場合、そのような「表現の自由」を保障するためにこそ守られなければならないルールがあること、「表現の自由」が民主主義を支えるための根幹をなす権利であること、異論を許容する(異論を表現する自由を保障する)ことこそ、「表現の自由」が想定する「自由」のあり方であることなどが、第7章で語られます。
 この2章については、若い人にももちろん読んでもらいたいですが、年代の別なくとても役立つ章だと思います。

※参考
 第7章の著者・志田陽子先生(武蔵野美術大学教授)は、2018年10月に『「表現の自由」の明日へ 一人ひとりのために、共存社会のために』(大月書店)という単著を刊行されていますので、より詳しく知りたいという方は、同書をお読みになることをお薦めします(冒頭でリンクしているとおり、私のブログでもご紹介しています)。



※参考
 「メディア・リテラシー」ということに関連して書いた私のブログを1つご紹介しておきます。
2019年1月23日 
情報の真偽は自分の目で確認しなければならない~平成26年度東京大学教養学部学位記伝達式における石井洋二郎学部長の式辞から 

〇自分の周りの若い人のために
 本書を冒頭から読み進めながら、「本来の想定読者である若い人たちがこれを読めばどう思うだろうか?」ということを考える瞬間が幾度かありました。
 残念ながら私には子どもがないため、自分の子どもに本書を読むことを勧める訳にはいきませんが、このような読み方も出来るという一例として書いておきたいことがあります。
 第3章「いろいろな学びの形――高校生活の多様な選択肢」(竹村修文さん・名嶋義直さん)には、高校を中退した後、病院で介護の仕事をしながら、息子の高校受験と同じタイミングで通信制の高校に進学して卒業した女性、その息子で、高校を中退した後、建設関係の会社で働きながら、再び高校卒業を目ざす青年などと共に、高校に登校できなくなり、休学、転学、転籍などの末、7年がかりで高校を卒業した女性が、働きながら三級自動車整備士資格を取得し、さらに自動車教習所の指導員になった話が紹介されていました。
 実は、本書を読んでいたころ、私は国選で被疑者弁護事件を1件受任していました。被疑者は20歳そこそこの青年で、高校を中退し、その後少年院にも入り、今は解体の現場で働いているという、(我々にとっては)別に珍しくもない経歴の持ち主だったのですが、珍しかったのは、その青年が「将来は自動車整備士になりたい」という希望を持ち(本人の話では、そんな希望を口に出したのは初めてとか)、お母さんに、そのために何か参考になる本を差し入れて欲しいとお願いしたという話を私にしてくれたことでした。
 参考書の差入れはお母さんに任せることとし、私は、得意の(?)ネット検索でヒットした体験談(整備士になる夢を実現した)などをプリントアウトし、次の接見の時に差入れしました。
 専門学校などを経て資格をとるのでない限り、実務経験を積みながら、まずは三級自動車整備士の資格をとり(ネットで見つけた学科試験を解こうとしましたが全く分かりませんでした)、さらに経験を積んだ上で二級を目ざすということらしく、夢を実現するのは相当に大変らしいということは分かりました。
 幸い、その青年は不起訴で釈放となりましたので、今頃、自分で立てた目標に向かって一歩でも半歩でも前に進んでくれていることを願っているのですが、そのような目標や意欲を持っている、あるいは持ちたいと思っている、一度は高校卒業を断念した青年たちにも、是非本書を手に取って貰いたいと編著者の皆さんは願っておられるのではないか、ということを思ったりしました。

〇これからの日本を考えるために
 「類は友を呼ぶ」という成語を使うのが適切かはさておき、人は、自らの意見・嗜好に適合する情報には喜んでアクセスするが、自らの立場を突き崩されそうになる考え方・情報などからは、意識的・無意識的に目を背けるものであることは、否定しがたいことだろうと思います。
 本書において、特に年配の読者にとって、「あまり読みたくない」章は、第8章「豊かでプライドが持てる日本が続くために―多文化共生」(佐藤友則さん)と第9章「世界に挑め!―グローバル人材への道」(古閑涼二さん)、とりわけ第9章でしょう。
 日本の将来予測、特に著しい人口減少(労働力人口の減少)と市場規模の縮小について、よほど世情に疎い人でない限り、うすうすでも感じていない人はいないと思うのですが、それでも「見たくないものは見ない」人が圧倒的に多いのではないでしょうか。
 そこを堪えて、第8章、第9章を通読すれば、今から若い人と同じことはできないまでも、壮年、老年の者にも出来ることはあると思えるはずです。

〇「生きる力」を身につけるために
 「生きる力」という言葉が中教審の答申の中ではじめて使用されたのは、「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について 中央教育審議会  第一次答申」「-子供に[生きる力]と[ゆとり]を-」(平成8年7月19日)においてであったそうです。
 たまたま、その翌年(多分)から、私は10年以上、和歌山県教育委員会の委嘱により、小中学校教員採用試験の第2次試験の面接委員を務めたのでした。
 そして、面接試験が始まる前の試験委員に対するガイダンスの際、受験者に対する質問例が配布されるのですが、そこに書かれた「生きる力」という見慣れぬ用語をどう理解したら良いのか?私は一緒の組となる他の試験委員(皆さん教員)に質問したものでした。先生方からどのような説明を伺ったかは完全に忘れてしまいましたが、おそらくは、中教審答申に書かれた以下の記述をコンパクトに要約したようなことだったのだろうと思います。

「我々はこれからの子供たちに必要となるのは、いかに社会が変化しようと、自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力であり、また、自らを律しつつ、他人とともに協調し、他人を思いやる心や感動する心など、豊かな人間性であると考えた。たくましく生きるための健康や体力が不可欠であることは言うまでもない。我々は、こうした資質や能力を、変化の激しいこれからの社会を[生きる力]と称することとし、これらをバランスよくはぐくんでいくことが重要であると考えた。」(「-子供に[生きる力]と[ゆとり]を-」、「第1部 今後における教育の在り方」、「(3) 今後における教育の在り方の基本的な方向」)

 私は、当初数年の間、自信がないので「生きる力」についての質問は他の面接委員の先生方にお任せしていましたが、受験者の回答も手探りのようで、体験に裏打ちされ、自信をもった意見や抱負を聞いた記憶はあまりありません。
 私が教員採用試験の面接委員を務めていたころから既に相当の年月が過ぎ去りましたが、今本書を通読し、「生きる力」の全体像がようやく見えてきたという感慨がひとしおです。あの頃この本を読んでいれば、もっと適切な質問が出来たのに、と言ってもあとのまつりですが。
 若い高校生ら以外にどのような人に本書を読んでもらいたいかを考えた結果、少なくとも、将来教員を目ざす人には自信をもってお薦め出来るということに思い至りました。

〇もしも私が今高校生だったら
 私が何度も前書きに戻り、本書冒頭から順を追って第9章まで読み終えることにこだわったのは、編者による助言もありましたが、「もしも私が今高校生だったら」という仮定のもとに読んでみたら、どのような人生があり得るだろうか?、という不可能と言うしかない設定が、常に頭の片隅にあったからでした。
 誰しも、「私には別の人生があり得たのではないか」という夢想を抱く瞬間があると思うのですが、本書には、「10代からの」というタイトルからして、そのような夢想を促進してくれる要素がふんだんに盛り込まれています。
 もちろん、60代半ばの私が10代に戻って実際に人生をやり直すことは出来ませんが、様々な気付きが示唆してくれる方向は、1人1人の年代に即した応用が可能です。そのような観点からは、特に、第4章「いろいろな学びの形―生涯学習/キャリア教育」(竹村修文さん・名嶋義直さん)、第5章「仕事って?」(後藤玲子さん)などが有用でしょう。
 もちろん、現実の高校生なら、第1章「校則(ルール)って?」(寺川直樹さん)や第2章「いじめって?」(田中俊亮さん)は、切実な問題として身近に感じられるでしょう。
 全ての人に本書のご一読をお薦めします。

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東京高等検察庁検事長定年延長問題について(10)~検察官OBによる2通の意見書を読む

 2020530日配信(予定)のメルマガ金原No.3468を転載します。

東京高等検察庁検事長定年延長問題について(10)~検察官OBによる2通の意見書を読む

 本年(2020年)1月31日、検察庁法第22条に基づき、2月8日に満63歳の定年を迎えて退職するはずであった黒川弘務東京高等検察庁検事長につき、内閣が、国家公務員法第81条の3第1項に基づき半年間の勤務延長を行うという「破天荒な」というか「無茶苦茶な」閣議決定を行ってから、明日(5月31日)でちょうど4ヶ月が経過しようとしています。
 長いようで短い、短いようで長い4ヶ月でした。当初は、単に違法な検事長定年延長という1つの特殊事例だったはずが(それだけでも大問題ですが)、国家公務員法とともに定年引き上げのための改正案を用意していた検察庁法を、突然、内閣が恣意的に役職定年を延長することができるいう、1月31日の違法な閣議決定を事後的に糊塗するかのようなとんでもない改正案に改変し、国公法などに紛れ込ませた束ね法案として国会に上程、そして、数をたのんで採決を強行かという緊迫した事態となりました。
 新型コロナウイルス感染症対策のために国民に不自由な自粛を強いながら、政権にとってのみ都合の良い悪法の成立を強行しようとする政府与党の姿勢に国民の多数が反発して立ち上がった中にも、とりわけ検事総長や東京地検特捜部長などを務めた有力検察官OBから法務大臣宛の意見書が、5月15日(金)と同月18日(月)に相次いで提出されたことは、情勢を変化させるについて大きな力を持ったと考えられます。

 2つの意見書は、いずれもマスメディアによって全文紹介されましたが、メディアのインターネット無料配信記事は、時期が来れば閲覧できなくなる可能性がありますので、記録にとどめるため、私のブログでも全文を紹介させていただくことにしました。
 あらためて、熟読玩味したいと思います。

2020年5月15日(金) 法務大臣に提出された元検察官14名からの意見書 
(引用開始)
      東京高検検事長の定年延長についての元検察官有志による意見書

1 東京高検検事長黒川弘務氏は、本年2月8日に定年の63歳に達し退官の予定であったが、直前の1月31日、その定年を8月7日まで半年間延長する閣議決定が行われ、同氏は定年を過ぎて今なお現職に止(とど)まっている。

 検察庁法によれば、定年は検事総長が65歳、その他の検察官は63歳とされており(同法22条)、定年延長を可能とする規定はない。従って検察官の定年を延長するためには検察庁法を改正するしかない。しかるに内閣は同法改正の手続きを経ずに閣議決定のみで黒川氏の定年延長を決定した。これは内閣が現検事総長稲田伸夫氏の後任として黒川氏を予定しており、そのために稲田氏を遅くとも総長の通例の在職期間である2年が終了する8月初旬までに勇退させてその後任に黒川氏を充てるための措置だというのがもっぱらの観測である。一説によると、本年4月20日に京都で開催される予定であった国連犯罪防止刑事司法会議で開催国を代表して稲田氏が開会の演説を行うことを花道として稲田氏が勇退し黒川氏が引き継ぐという筋書きであったが、新型コロナウイルスの流行を理由に会議が中止されたためにこの筋書きは消えたとも言われている。

 いずれにせよ、この閣議決定による黒川氏の定年延長は検察庁法に基づかないものであり、黒川氏の留任には法的根拠はない。この点については、日弁連会長以下全国35を超える弁護士会の会長が反対声明を出したが、内閣はこの閣議決定を撤回せず、黒川氏の定年を超えての留任という異常な状態が現在も続いている。

2 一般の国家公務員については、一定の要件の下に定年延長が認められており(国家公務員法81条の3)、内閣はこれを根拠に黒川氏の定年延長を閣議決定したものであるが、検察庁法は国家公務員に対する通則である国家公務員法に対して特別法の関係にある。従って「特別法は一般法に優先する」との法理に従い、検察庁法に規定がないものについては通則としての国家公務員法が適用されるが、検察庁法に規定があるものについては同法が優先適用される。定年に関しては検察庁法に規定があるので、国家公務員法の定年関係規定は検察官には適用されない。これは従来の政府の見解でもあった。例えば昭和56年(1981年)4月28日、衆議院内閣委員会において所管の人事院事務総局斧任用局長は、「検察官には国家公務員法の定年延長規定は適用されない」旨明言しており、これに反する運用はこれまで1回も行われて来なかった。すなわちこの解釈と運用が定着している。

 検察官は起訴不起訴の決定権すなわち公訴権を独占し、併せて捜査権も有する。捜査権の範囲は広く、政財界の不正事犯も当然捜査の対象となる。捜査権をもつ公訴官としてその責任は広く重い。時の政権の圧力によって起訴に値する事件が不起訴とされたり、起訴に値しないような事件が起訴されるような事態が発生するようなことがあれば日本の刑事司法は適正公平という基本理念を失って崩壊することになりかねない。検察官の責務は極めて重大であり、検察官は自ら捜査によって収集した証拠等の資料に基づいて起訴すべき事件か否かを判定する役割を担っている。その意味で検察官は準司法官とも言われ、司法の前衛たる役割を担っていると言える。

 こうした検察官の責任の特殊性、重大性から一般の国家公務員を対象とした国家公務員法とは別に検察庁法という特別法を制定し、例えば検察官は検察官適格審査会によらなければその意に反して罷免(ひめん)されない(検察庁法23条)などの身分保障規定を設けている。検察官も一般の国家公務員であるから国家公務員法が適用されるというような皮相的な解釈は成り立たないのである。

3 本年2月13日衆議院本会議で、安倍総理大臣は「検察官にも国家公務員法の適用があると従来の解釈を変更することにした」旨述べた。これは、本来国会の権限である法律改正の手続きを経ずに内閣による解釈だけで法律の解釈運用を変更したという宣言であって、フランスの絶対王制を確立し君臨したルイ14世の言葉として伝えられる「朕(ちん)は国家である」との中世の亡霊のような言葉を彷彿(ほうふつ)とさせるような姿勢であり、近代国家の基本理念である三権分立主義の否定にもつながりかねない危険性を含んでいる。

 時代背景は異なるが17世紀の高名な政治思想家ジョン・ロックはその著「統治二論」(加藤節訳、岩波文庫)の中で「法が終わるところ、暴政が始まる」と警告している。心すべき言葉である。

 ところで仮に安倍総理の解釈のように国家公務員法による定年延長規定が検察官にも適用されると解釈しても、同法81条の3に規定する「その職員の職務の特殊性またはその職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分の理由があるとき」という定年延長の要件に該当しないことは明らかである。

 加えて人事院規則11―8第7条には「勤務延長は、職員が定年退職をすべきこととなる場合において、次の各号の1に該当するときに行うことができる」として、①職務が高度の専門的な知識、熟練した技能または豊富な経験を必要とするものであるため後任を容易に得ることができないとき、②勤務環境その他の勤務条件に特殊性があるため、その職員の退職により生ずる欠員を容易に補充することができず、業務の遂行に重大な障害が生ずるとき、③業務の性質上、その職員の退職による担当者の交替が当該業務の継続的遂行に重大な障害を生ずるとき、という場合を定年延長の要件に挙げている。

 これは要するに、余人をもって代えがたいということであって、現在であれば新型コロナウイルスの流行を収束させるために必死に調査研究を続けている専門家チームのリーダーで後継者がすぐには見付からないというような場合が想定される。

 現在、検察には黒川氏でなければ対応できないというほどの事案が係属しているのかどうか。引き合いに出される(会社法違反などの罪で起訴された日産自動車前会長の)ゴーン被告逃亡事件についても黒川氏でなければ、言い換えれば後任の検事長では解決できないという特別な理由があるのであろうか。法律によって厳然と決められている役職定年を延長してまで検事長に留任させるべき法律上の要件に合致する理由は認め難い。

4 4月16日、国家公務員の定年を60歳から65歳に段階的に引き上げる国家公務員法改正案と抱き合わせる形で検察官の定年も63歳から65歳に引き上げる検察庁法改正案が衆議院本会議で審議入りした。野党側が前記閣議決定の撤回を求めたのに対し菅義偉官房長官は必要なしと突っぱねて既に閣議決定した黒川氏の定年延長を維持する方針を示した。こうして同氏の定年延長問題の決着が着かないまま検察庁法改正案の審議が開始されたのである。

 この改正案中重要な問題点は、検事長を含む上級検察官の役職定年延長に関する改正についてである。すなわち同改正案には「内閣は(中略)年齢が63年に達した次長検事または検事長について、当該次長検事または検事長の職務の遂行上の特別の事情を勘案して、当該次長検事または検事長を検事に任命することにより公務の運営に著しい支障が生ずると認められる事由として内閣が定める事由があると認めるときは、当該次長検事または検事長が年齢63年に達した日の翌日から起算して1年を超えない範囲内で期限を定め、引き続き当該次長検事または検事長が年齢63年に達した日において占めていた官及び職を占めたまま勤務をさせることができる(後略)」と記載されている。

 難解な条文であるが、要するに次長検事および検事長は63歳の職務定年に達しても内閣が必要と認める一定の理由があれば1年以内の範囲で定年延長ができるということである。

 注意すべきは、この規定は内閣の裁量で次長検事および検事長の定年延長が可能とする内容であり、前記の閣僚会議によって黒川検事長の定年延長を決定した違法な決議を後追いで容認しようとするものである。これまで政界と検察との両者間には検察官の人事に政治は介入しないという確立した慣例があり、その慣例がきちんと守られてきた。これは「検察を政治の影響から切りはなすための知恵」とされている(元検事総長伊藤栄樹著「だまされる検事」)。検察庁法は、組織の長に事故があるときまたは欠けたときに備えて臨時職務代行の制度(同法13条)を設けており、定年延長によって対応することは毫(ごう)も想定していなかったし、これからも同様であろうと思われる。

 今回の法改正は、検察の人事に政治権力が介入することを正当化し、政権の意に沿わない検察の動きを封じ込め、検察の力を殺(そ)ぐことを意図していると考えられる。

5 かつてロッキード世代と呼ばれる世代があったように思われる。ロッキード事件の捜査、公判に関与した検察官や検察事務官ばかりでなく、捜査、公判の推移に一喜一憂しつつ見守っていた多くの関係者、広くは国民大多数であった。

 振り返ると、昭和51年(1976年)2月5日、某紙夕刊1面トップに「ロッキード社がワイロ商法 エアバスにからみ48億円 児玉誉士夫氏に21億円 日本政府にも流れる」との記事が掲載され、翌日から新聞もテレビもロッキード関連の報道一色に塗りつぶされて日本列島は興奮の渦に巻き込まれた。

 当時特捜部にいた若手検事の間では、この降って湧いたような事件に対して、特捜部として必ず捜査に着手するという積極派や、着手すると言っても贈賄の被疑者は国外在住のロッキード社の幹部が中心だし、証拠もほとんど海外にある、いくら特捜部でも手が届かないのではないかという懐疑派、苦労して捜査しても(1954年に犬養健法相が指揮権を発動し、与党幹事長だった佐藤栄作氏の逮捕中止を検事総長に指示した)造船疑獄事件のように指揮権発動でおしまいだという悲観派が入り乱れていた。

 事件の第一報が掲載されてから13日後の2月18日検察首脳会議が開かれ、席上、東京高検検事長の神谷尚男氏が「いまこの事件の疑惑解明に着手しなければ検察は今後20年間国民の信頼を失う」と発言したことが報道されるやロッキード世代は歓喜した。後日談だが事件終了後しばらくして若手検事何名かで神谷氏のご自宅にお邪魔したときにこの発言をされた時の神谷氏の心境を聞いた。「(八方塞がりの中で)進むも地獄、退くも地獄なら、進むしかないではないか」という答えであった。

 この神谷検事長の国民信頼発言でロッキード事件の方針が決定し、あとは田中角栄氏ら政財界の大物逮捕に至るご存じの展開となった。時の検事総長は布施健氏、法務大臣は稲葉修氏、法務事務次官は塩野宜慶(やすよし)氏(後に最高裁判事)、内閣総理大臣は三木武夫氏であった。

 特捜部が造船疑獄事件の時のように指揮権発動に怯(おび)えることなくのびのびと事件の解明に全力を傾注できたのは検察上層部の不退転の姿勢、それに国民の熱い支持と、捜査への政治的介入に抑制的な政治家たちの存在であった。

 国会で捜査の進展状況や疑惑を持たれている政治家の名前を明らかにせよと迫る国会議員に対して捜査の秘密を楯(たて)に断固拒否し続けた安原美穂刑事局長の姿が思い出される。

 しかし検察の歴史には、(大阪地検特捜部の)捜査幹部が押収資料を改ざんするという天を仰ぎたくなるような恥ずべき事件もあった。後輩たちがこの事件がトラウマとなって弱体化し、きちんと育っていないのではないかという思いもある。それが今回のように政治権力につけ込まれる隙を与えてしまったのではないかとの懸念もある。検察は強い権力を持つ組織としてあくまで謙虚でなくてはならない。

 しかしながら、検察が萎縮して人事権まで政権側に握られ、起訴・不起訴の決定など公訴権の行使にまで掣肘(せいちゅう)を受けるようになったら検察は国民の信託に応えられない。

 正しいことが正しく行われる国家社会でなくてはならない。

 黒川検事長の定年延長閣議決定、今回の検察庁法改正案提出と続く一連の動きは、検察の組織を弱体化して時の政権の意のままに動く組織に改変させようとする動きであり、ロッキード世代として看過し得ないものである。関係者がこの検察庁法改正の問題を賢察され、内閣が潔くこの改正法案中、検察幹部の定年延長を認める規定は撤回することを期待し、あくまで維持するというのであれば、与党野党の境界を超えて多くの国会議員と法曹人、そして心ある国民すべてがこの検察庁法改正案に断固反対の声を上げてこれを阻止する行動に出ることを期待してやまない。

【追記】この意見書は、本来は広く心ある元検察官多数に呼びかけて協議を重ねてまとめ上げるべきところ、既に問題の検察庁法一部改正法案が国会に提出され審議が開始されるという差し迫った状況下にあり、意見のとりまとめに当たる私(清水勇男)は既に85歳の高齢に加えて疾病により身体の自由を大きく失っている事情にあることから思うに任せず、やむなくごく少数の親しい先輩知友のみに呼びかけて起案したものであり、更に広く呼びかければ賛同者も多く参集し連名者も多岐に上るものと確実に予想されるので、残念の極みであるが、上記のような事情を了とせられ、意のあるところをなにとぞお酌み取り頂きたい。

 令和2年5月15日

 元仙台高検検事長・平田胤明(たねあき)
 元法務省官房長・堀田力
 元東京高検検事長・村山弘義
 元大阪高検検事長・杉原弘泰
 元最高検検事・土屋守
 同・清水勇男
 同・久保裕
 同・五十嵐紀男
 元検事総長・松尾邦弘
 元最高検公判部長・本江威憙(ほんごうたけよし)
 元最高検検事・町田幸雄
 同・池田茂穂
 同・加藤康栄
 同・吉田博視
 (本意見書とりまとめ担当・文責)清水勇男

 法務大臣 森まさこ殿
(引用終わり)

 松尾邦弘元検事総長と、意見書のとりまとめにあたった清水勇男元最高検検事により、上記意見書が法務省に提出された後、司法記者クラブで行われたお2人の記者会見の模様が動画で視聴できます。

LIVE】検察庁法改正案 元検事総長ら反対を表明(FNNプライムオンライン)(50分)  


 また、清水勇男氏に対する単独インタビューも公開されています。

【インタビュー】ロッキード捜査の清水勇男元最高検検事に聞く。なぜ検察庁法改正案に反対の声をあげたのか?(45分)
 


 ちなみに、動画の3分頃で清水さんがジョン・ロックを「13世紀」の人と言い間違っている部分がありますが、もちろん意見書に正しく書かれているとおり、ロックは「17世紀」の人です(16321704)。

2020年5月18日(月) 法務大臣に提出された元検察官38名(後に2名追加)からの意見書 
(引用開始)
                                          令和2年5月18日
法務大臣 森 まさこ 殿

             検察庁法改正案の御再考を求める意見書

 私たちは、贈収賄事件などの捜査・訴追を重要な任務の一つとする東京地検特捜部で仕事をした検事として、このたびの検察庁法改正案の性急な審議により、検察の独立性・政治的中立性と検察に対する国民の信頼が損なわれかねないと、深く憂慮しています。
 独立検察官などの制度がない我が国において、準司法機関である検察がよく機能するためには、民主的統制の下で独立性・政治的中立性を確保し、厳正公平・不偏不党の検察権行使によって、国民の信頼を維持することが極めて重要です。
 検察官は、内閣または法務大臣により任命されますが、任命に当たって検察の意見を尊重する人事慣行と任命後の法的な身分保障により、これまで長年にわたって民主的統制の下で、その独立性・政治的中立性が確保されてきました。国民や政治からのご批判に対して謙虚に耳を傾けることは当然ですが、厳正公平・不偏不党の検察権行使に対しては、これまで皆様方からご理解とご支持をいただいてきたものと受けとめています。

 ところが、現在国会で審議中の検察庁法改正案のうち、幹部検察官の定年および役職定年の延長規定は、これまで任命時に限られていた政治の関与を任期終了時にまで拡大するものです。その程度も、検事総長を例にとると、1年以内のサイクルで定年延長の要否を判断し、最長3年までの延長を可能とするもので、通例2年程度の任期が5年程度になり得る大幅な制度変更といえます。これは、民主的統制と検察の独立性・政治的中立性確保のバランスを大きく変動させかねないものであり、検察権行使に政治的な影響が及ぶことが強く懸念されます。
 もっとも、検察官にも定年延長に関する国家公務員法の現行規定が適用されるとの政府の新解釈によれば、検察庁法改正を待たずにそのような問題が生ずることになりますが、この解釈の正当性には議論があります。検察庁法の改正に当たっては、慎重かつ十分な吟味が不可欠であり、再考していただきたく存じます。

 そもそも、これまで多種多様な事件処理などの過程で、幹部検察官の定年延長の具体的必要性が顕在化した例は一度もありません。先週の衆院内閣委員会でのご審議も含め、これまで国会でも具体的な法改正の必要性は明らかにされていません。今、これを性急に法制化する必要は全く見当たらず、今回の法改正は、失礼ながら、不要不急のものと言わざるを得ないのではないでしょうか。法制化は、何とぞ考え直していただきたく存じます。
 さらに、先般の東京高検検事長の定年延長によって、幹部検察官任命に当たり、政府が検察の意向を尊重してきた人事慣行が今後どうなっていくのか、検察現場に無用な萎縮を招き、検察権行使に政治的影響が及ぶのではないかなど、検察の独立性・政治的中立性に係る国民の疑念が高まっています。
 このような中、今回の法改正を急ぐことは、検察に対する国民の信頼をも損ないかねないと案じています。
 検察は、現場を中心とする組織であり、法と証拠に基づき堅実に職務を遂行する有為の人材に支えられています。万一、幹部検察官人事に政治的関与が強まったとしても、少々のことで検察権行使に大きく影響することはないと、私たちは後輩を信じています。しかしながら、事柄の重要性に思いをいたすとき、将来に禍根を残しかねない今回の改正を看過できないと考え、私たち有志は、あえて声を上げることとしました。
 私たちの心中を何とぞご理解いただければ幸甚です。

 縷々申し述べましたように、このたびの検察庁法改正案は、その内容においても審議のタイミングにおいても、検察の独立性・政治的中立性と検察に対する国民の信頼を損ないかねないものです。
 法務大臣はじめ関係諸賢におかれては、私たちの意見をお聴きとどけいただき、周辺諸状況が沈静化し落ち着いた環境の下、国民主権に基づく民主的統制と検察の独立性・政治的中立性確保との適切な均衡という視座から、改めて吟味、再考いただくことを切に要望いたします。

   元・特捜検事有志
   (氏名は別紙記載のとおり) 

(別紙)熊崎勝彦(司法修習第24期)中井憲治(同上)横田尤孝(同上)加藤康榮(司法修習第25期)神垣清水(同上)栃木庄太郎(同上)有田知徳(司法修習第26期)千葉倬男(同上)小高雅夫(同上)小西敏美(司法修習第27期)坂井靖(同上)三浦正晴(同上)足立敏彦(同上)山本修三(司法修習第28期)鈴木和宏(同上)北田幹直(同上)長井博美(司法修習第29期)梶木壽(同上)井内顕策(司法修習第30期)内尾武博(同上)勝丸充啓(同上)松島道博(同上)吉田統宏(司法修習第31期)中村明(同上)大鶴基成(司法修習第32期)松井巖(同上)八木宏幸(司法修習第33期)佐久間達哉(司法修習第35期)稲川龍也(同上)若狭勝(同上)平尾雅世(同上)米村俊郎(司法修習第36期)山田賀規(同上)奥村淳―(同上)小尾仁(司法修習第37期)中村周司(司法修習第39期)千葉雄一郎(同上)中村信雄(司法修習第45期)以上38名(世話人)熊崎勝彦 中井憲治 山本修三
20日までに追加された賛同者)
五木田彬(司法修習第30期)粂原研二(司法修習第32期)
(引用終わり)


(弁護士・金原徹雄のブログから~東京高等検察庁検事長定年延長問題)
2020年2月8日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について~法律の規定は読み間違えようがない 
2020年2月11日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(2)~政府の解釈はこういうことだろうか? 
2020年2月16日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(3)~論点は出そろった(渡辺輝人氏、園田寿氏、海渡雄一氏の論考を読んで) 
2020年2月22日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(4)~「国家的悲劇」を象徴する痛ましい姿(小田嶋隆さんのコラムを読む) 
2020年2月23日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(5)~立憲デモクラシーの会の声明と文理解釈再び 
2020年3月4日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(6)~静岡県弁護士会「黒川弘務東京高検検事長の定年延長に強い懸念を表明する会長声明」を読む 
2020年3月6日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(7)~法律家9団体共同声明を読む 
2020年3月15日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(8)~「違法」だからこそ辻褄が合わなくなる 
2020年3月28日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(9)~全国の弁護士会から出された会長声明のご紹介(3/27まで) 
2020年4月18日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(9)の2~全国の弁護士会から出された会長声明のご紹介・補訂版(4/17まで) 
2020年4月29日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(9)の3~全国の弁護士会から出された会長声明のご紹介・三訂版(4/28まで) 
2020年5月2日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について・番外編~福島県出身の弁護士・法務大臣(司法大臣・法務総裁)の身の処し方を思う 
2020年5月3日 
(続報)東京高等検察庁検事長定年延長問題について・番外編~ETV特集「義男さんと憲法誕生」を視聴して制憲議会の審議を思う 
2020年5月23日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(9)の4~全ての弁護士会から会長声明が出ました(5/20時点)

「守ろう9条 紀の川 市民の会」第16回総会(2020年)議案書

 2020524日配信(予定)のメルマガ金原No.3467を転載します。

「守ろう9条 紀の川 市民の会」第16回総会(2020年)議案書

 紀の川北岸に居住する和歌山市民によって結成された地域9条の会「守ろう9条 紀の川 市民の会」は、2005年1月24日の結成総会以来、これまで途絶えることなく、概ね春に総会を、秋に憲法フェスタを開催してきました。
 私も、創設以来、運営委員に名を連ね、微力ながらその運営に関わってきました。

 当会の、他の地域9条の会と比較しての著しい特色の1つは、このような小さな地方の地域9条の会にしては「贅沢な」とも思える講師陣に記念講演をお願いしてきたことです。 とりわけ、多くの憲法研究者の先生方にご講演をお願いできたことは、私たちの誇りとするところです。
 過去ご講演いただいた憲法研究者は、以下の方々です。

吉田栄司関西大学教授(2012年憲法フェスタ)
森 英樹名古屋大学名誉教授(2014年総会)
 ※2020年4月 ご逝去
清水雅彦日本体育大学教授(2014年憲法フェスタ)
高作正博関西大学教授(2015年憲法フェスタ)
石埼 学龍谷大学教授(2016年総会)
植松健一立命館大学教授(2017年総会)
本 秀紀名古屋大学大学院教授(2017年憲法フェスタ)
三宅裕一郎三重短期大学教授(2018年総会)
 ※現・日本福祉大学教授
飯島滋明名古屋学院大学教授(2018年憲法フェスタ)
長峯信彦愛知大学教授(2019年総会)
長岡徹関西学院大学教授(2019年憲法フェスタ)

 今年(2020年)も、3月14日(土)に第16回総会を開催することとし、立命館大学教授の君島東彦(きみじま・あきひこ)先生に、「激変する東アジアで憲法9条を考える」と題した記念講演をお願いすることになっていました。

2020年2月9日 
君島東彦立命館大学教授(憲法学・平和学)講演会のご案内(2020年3月14日@和歌山市河北コミセン/守ろう9条紀の川市民の会 第16回 総会) 
※上記ブログの巻末に【付録・11人の憲法研究者の講演録を読む~「守ろう9条 紀の川 市民の会」で語られたこと】として、上記11人の先生方の講演要旨を紹介したサイトにリンクしています。

 ところが、そこに降って湧いた新型コロナウイルス感染症の蔓延という事態の直撃を受け、まことに残念ながら上記総会は中止のやむなきに至りました。

2020年3月2日 
講演会中止のお知らせ・3/14君島東彦立命館大学教授講演会を中止します(守ろう9条 紀の川市民の会)

 早期の収束を期待して、6月中旬に延期することなども検討しましたが、これも困難と考えざるを得ず、最終的に第16回総会の開催は断念することになりました。
 とはいえ、過去1年間の活動報告や決算の承認、向こう1年間の活動方針や予算案、役員案などの承認をどうするのか?ということが問題となります。
 そこで、いったん作成が中断していた「第16回総会 議案書」を、運営委員が手分けして完成させ、会員全世帯に配布(役員が配達もしくは郵送)するとともに、私のブログに掲載し、期限を定めて会員からの意見を求めることになりました。
 そして、特段のご異論がなければ、運営委員会からの提案通り承認されたものとさせていただくというもので、いわば書面決議の簡略版のようなものです。
 決算書と予算書はさすがに掲載を省略しますが、その他の「2019年度の活動報告」や「2020年度の活動方針」については、他の9条の会の皆さまにとっても、何ほどかご参考になる点もあるのではないかと思います。
 ちなみに、私は議案書のうち「私たちを取り巻く情勢」を担当しましたが、検察庁法「改正」問題については、5月20日までの情報に基づいて書いていますので、黒川検事長の賭け麻雀問題と辞職についてはフォローできていません。
 それでは、以下に、「守ろう9条 紀の川 市民の会」第16回総会(2020年)議案書を掲載します。 

PDF「守ろう9条 紀の川 市民の会」第16回総会(2020年)議案書」 

「守ろう9条 紀の川 市民の会」2020年度 第16回総会 議案書
【開催予定】2020年3月14日(土) 13:30~16:20
※新型コロナウイルス感染症の蔓延を考慮し中止

Ⅰ.2019年度の活動報告

(1)【第15回総会】
■2019年6月2日(日)14:00~16:40 河北コミュニティセンター多目的ホール 参加者61名
●講演 長峯信彦氏(愛知大学教授・憲法学)
演題「安倍改憲のトリックを斬る~憲法制定過程の真実と平和憲法を守る歴史的責任~」
○「日本国憲法はアメリカが作った」「9条では日本は守れない」という市民の頭にこびり付いている2大迷信がある。私たちはこうした考えを持つ市民にどのように話していくかが非常に大事だ。憲法は、空気や水のような、私たちにとって必要不可欠な存在。国や社会のあるべき姿を定める基本的な法規範。「憲法学や法律学ほど、人の心を必要とする『血の通った学問』はない」(渡辺洋三)
DSCN4678 (2)○「アメリカが作った」のトリックは、天皇を護る避雷針として、日本の権力者がGHQ草案を選択したというのが事実だ。鈴木安蔵らの憲法研究会の案がGHQ草案の下敷きになったことは客観的事実と言える。日本国憲法制定時の最大の争点は天皇だった。当時の保守的な権力者たちの行動原理は如何に天皇を護るかだけだった。マッカーサーは日本統治を成功させるためには天皇を利用した方がいい、天皇が権力を持たないようにして、利用出来る時には天皇に登場してもらうということを考えた。これらの総合結果が日本国憲法だった。
○ベアテ・シロタは当時22歳で日本国憲法の14条と24条の原案を起草した。
○憲法制定の国会審議では、非常に重要な修正が行われた。「国民主権の明記」「生存権の明記」「無償義務教育は中学校段階まで含む」の3つだ。
○戦争法が憲法違反であることは自明だが、重要影響事態法の新設があまり知られていないように思う。集団的自衛権の行使や戦争行為ができることを規定している。
○憲法に自衛隊を書くと、自衛隊だけでなく、「自衛の措置」が付いてくるので、日本が集団的自衛権を発動して、アメリカの軍事紛争に首を突っ込むことが憲法上可能になる。日本国憲法は世界に先駆けて進んでいる。後は我々が本質をきちんと直視し、真に人類にとって必要な価値は何か、真に未来に向けた責任ある選択は何かという≪正解≫を実現していくだけではないだろうか。
●総会議事(以下を確認しました)
①「総会」と「憲法フェスタ」の一層の充実を図り、多くの参加者で成功出来るよう取り組む。
②9条改憲の国会発議を許さない取り組みを行う。「3000万人署名」に積極的に取り組み、周りの人たちと意識的に改憲問題を語り合っていく。街頭宣伝活動、デモなどを行い、広く市民に訴える。
③DVD上映会や学習会などに取り組み、様々な形での意見交流の場を作る。
④会員を拡大する。
⑤運営委員会・フェスタ実行委員会の定期的な開催。事務局活動の充実。ニュース発行の強化。
⑥財政の充実。
⑦9条を守る他団体との連携。

(2)【第16回憲法フェスタ】
■2019年11月3日(日)河北コミュニティセンター、参加者約80名
■午前は、「展示の部屋」「映像の部屋」「リサイクル広場」の3つの催しが行われました。(10:00~13:15)
■午後は、「メイン会場」で次の3つが行われました。(14:00~16:30)
●和歌山のフォルクローレ・グループ「MAYAHUACA(マヤウァカ)」の演奏。演奏された曲は「コンドルは飛んでいく」「エスペランサス」「ブルヒタ」「もらい泣き」「ジェガステアミ」「花まつり」のアンデスと日本の歌6曲でした。
●当会会員・江川治邦さん(日本エスペラント協会会員)の「第100回世界エスペラント大会」(フランス・リール市)での「9条分科会」の活動報告。
●講演「戦場へ行く自衛隊~改めて安保法制の違憲性を考える~」
講師 長岡徹氏(関西学院大学教授・憲法学)
DSCN5081 (2)○参院選の結果をどう見るか。改憲勢力の3分の2を覆し、改憲策動の加速化を防いだが、安倍改憲を断念させるほどの結果でもなく、対決は新局面に入った。
○国会議論が進まないのは、憲法審査会の自民党メンバーが生ぬるいと安倍側近を憲法改正推進本部に入れた。安倍首相は憲法審査会でどんどん議論させ、改憲を進めようとしたが動かない。世論調査を見ると性急な安倍改憲には慎重な方がいいという世論が増えている。
○安倍首相は、①自民党全党を挙げて改憲を進める体制を作る。②野党を分断して改憲論議に持ち込む。③自民党は草の根の改憲運動をする必要がある。と言い出した。10月18日、早速和歌山で実行した。
○安倍首相の任期は21年9月までなので、もう一度衆院を解散する。3分の2を確保し、次の国会で発議するということを多分考えているのだろう。
DSCN5073 (2)○そこで我々はどうするか。まず、草の根の世論形成が必要だ。2つ目は安倍改憲の危険性をもっと知らせていかなければならない。3つ目に実質的改憲を阻止する、戦争法を廃止する、自衛隊の中東派遣に反対することなどが重要だ。
○自民党改憲案4項目については、教育は法律で十分対応出来る。「合区解消」は、これは参議院をどうするかということを含めて考えなければならない。「緊急事態条項」は、危険な上に必要がない。9条については、2項が死文化する。今、自衛隊は軍部ではなく行政の組織で、内閣の下にある。自衛隊を憲法に書くと行政から独立した組織になる。自衛隊は軍部という内閣と並ぶ組織になる。
○実質的な改憲を阻止することも我々の課題だ。自衛隊の海外派兵の常態化、財政の軍事化、産業の軍事化、科学の軍事化など。
○自民党の古賀誠氏の『憲法9条は世界遺産』には、「9条を大事だと考える人は立場の違いを超えて協力し合う必要がある。平和というのは革新だ保守だというような理念や政策を超えたものだ。そこだけは一緒にやっていけるという信念が私にはある」とある。私たちの運動も、9条が必要だという人たちと、もっともっと広く手を繋げることをしていかなければならない。

(3)【会員の拡大とニュースの発行】
■この1年間の会員拡大は、+25名(増員33名、減員8名)です。現在(2020年3月末)の会員数は599名です。2019年の3~5月に引き続き、9~11月と2020年1~3月に会員拡大活動が取り組まれました。引き続き意識的な会員拡大が必要です。
■この間、「総会開催案内」「憲法フェスタへの参加の呼びかけ(案内)」を会員宛に発送しました。また、会のニュース第19号を9月9日に、第20号を2月10日に発行しました。

(4)「3000万人署名」と新しい「改憲発議に反対する全国緊急署名」
「3000万人署名」は、2019年4月28日に楠見・東洋台で、6月9日に園部地域で署名活動を行いました。2020年1月から2月にかけて、今まで集めた署名を集約して届けました。2020年になり、「安倍9条改憲反対!改憲発議に反対する全国緊急署名」が呼びかけられ、和歌山市では3月1日にスタート集会が開かれました。知人、友人に訴えを付けて署名用紙を送る取り組みも始まっています。

(5)【各地域の宣伝行動】
憲法フェスタに向けて10月下旬から11月初旬にかけて宣伝カーで市内各地域を回り、街頭宣伝に取り組みました。また、河北コミュニティセンターの周辺を中心に憲法フェスタの案内ビラを全戸配布しました。

(6)【その他の活動報告】
■和歌山市内で行われた以下の行事・行動などに会員それぞれが参加しました。
●憲法の破壊を許さないランチタイムデモ(19/4/2658回~20/3/1169回)
●青年法律家協会「憲法を考える夕べ」(望月衣塑子氏講演)(19/4/26
●HAPPY BIRHDAY 憲法 in Wakayama 2019(19/5/3
●We Love 憲法~5月の風に~・県民のつどい(稲嶺進氏講演)(19/5/18
●平和のための戦争展わかやま2019(19/7/2728
●宝田明さんと考える「平和」(『ゴジラ』第1作上映)(19/8/25
●強行採決から4年「わかちか広場でミニコンサートとスピーチ」(19/9/18
●安倍改憲NO!秋の憲法学習会(長峯信彦氏講演)(19/11/9
●憲法改正問題シンポジウム(和歌山弁護士会)(19/12/7

(7)【会計報告】(別紙) ※掲載省略

Ⅱ.2020年度の活動方針

1.【私たちを取り巻く情勢】(情勢は2020年5月20日現在)
(1)参院選後の国会議席状況
 2019年7月21日に実施された第25回参議院議員通常選挙では、3年前と同様、32の1人区において野党共闘が実現し、10選挙区で野党が勝利した(前回は11選挙区で勝利)。
 どこまでを改憲勢力と見るかは難しいが、自民党・公明党の与党に、改憲に積極的な日本維新の会を合算した議員数では、非改選と併せ、3分の2を割り込むことになった。
 もっとも、維新の会以外の野党内にも、改憲に前向きな議員が少なからずおり、改憲の危機が遠のいたとの観測は禁物である。
(2)安倍晋三首相のあくなき改憲への執念
 従前は、改憲への意欲を明らかにする場合には、「自民党総裁として」というエクスキューズが一応存在したが、2019年9月召集の臨時国会における所信表明演説、2020年元旦の年頭所感などにおいては、「内閣総理大臣として」「憲法改正への意欲」を明言するに至っている。
 とりわけ、12月9日の国会閉会日に行われた記者会見において、「憲法改正というのは、決してたやすい道ではありませんが、必ずや、私自身として、私の手でなし遂げていきたいと、こう考えています」と言い切ったことは肝に銘ずる必要がある。
(3)改憲に向けた自民党の動き
 2019年10月以降、二階幹事長、岸田政調会長、森山国対委員長ら党の要人があいついで大規模な改憲集会の開催に取り組み、あたかも改憲への貢献度を競うかのような状況となっている。
 特に先陣を切った和歌山集会の場合、主催「憲法改正県民会議」、共催「自民党和歌山県連『憲法改正推進本部』」、「美しい日本の憲法をつくる和歌山県民の会」、「日本会議和歌山」とあるとおり、自民党が改憲を主唱する団体と公式に共闘していることを忘れてはならない。
(4)憲法審査会(主に衆議院)における攻防
 第196回国会(平成30年常会)に「日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案」(公職選挙法で行われた改正を国民投票に反映させるもの)が与党から提出されたものの、実質的な審議入りができず今日に至っている。
 立憲民主党、共産党などの野党側は、テレビ等のメディアを利用した有料広告規制をはじめ、実際の国民投票実施前に処理すべき改正項目をまず優先的に議論すべきと主張し、与党提出の改憲手続法改正案の審議を進めさせないという状況が続いている。
 改憲手続法の改正のためには、憲法審査会での審議を省略できないため、状況次第では、強行審議・採決という可能性も念頭に置いておく必要がある。
(5)中東に自衛隊を「調査・研究」名目で派遣
 国は、中東情勢が緊迫する中、2020年1月、護衛艦1隻とP3C哨戒機2機を、防衛省設置法第4条の「調査・研究」の規定に基づき、オマーン湾などの中東海域に派遣する旨決定した。
 場合によれば、第三国の軍隊と軍事衝突する可能性を秘めた地域に、国会承認を要しない「調査・研究」名目で自衛隊を派遣することに強い非難が集まったが、安倍政権はこれを無視して派遣命令を発令した。
 このような、派遣がなし崩し的に常態化することのないよう、批判・警戒を怠ってはならない。
(6)「改憲発議に反対する全国緊急署名」の開始
 2017年秋以来、安倍首相による9条改憲を阻止するため、「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」が結成され、3000万人を目標に「安倍9条改憲NO!憲法を生かす全国統一署名」が展開され、一定の成果が収められた。
 安倍改憲スケジュールにとって決定的な山場である2020年を迎えるにあたり、国会での改憲発議を何としても阻止するため、新たに「改憲発議に反対する全国緊急署名」への取り組みが始まった。
(7)IR疑獄、「桜を見る会」疑惑、東京高検検事長定年延長問題などの展開
 2019年12月、カジノを含む統合型リゾート(IR)事業への参入を目指していた中国企業から賄賂を受け取った容疑で自民党の秋元司衆院議員が逮捕され、翌月起訴された。
 また、「桜を見る会」とその前日に開催された安倍晋三後援会の前夜祭をめぐる公職選挙法違反、政治資金規正法違反が強く疑われる問題について、とりわけ2020年1月召集の第201回国会(常会)において、野党から厳しい追及がなされた。
 さらに、安倍政権は、2020年2月7日に定年を迎えるはずだった黒川弘務東京高検検事長の勤務を半年間延長する旨の閣議決定を1月31日に行ったが、これは、検察官には適用されないことが公定解釈として確立していた国家公務員法の定年延長の規定を適用できると「解釈変更」したことによるものであり、この違法な決定に対し、全国の弁護士会を始め、広汎な国民各層からの大きな反発を招いた。
 これらの様々な疑惑をさらに追及すべき時期に、世界的な新型コロナウイルス感染症の蔓延という、全く予期せぬ事態が到来した。
(8)新型コロナウイルス感染症の拡大と緊急事態宣言
 我が国において、新型コロナウイルス感染症の最初の感染者が確認されたのは2020年1月15日のことであったが、徐々に感染が拡がり、4月7日には、新型インフルエンザ等対策特別措置法第32条に基づく緊急事態宣言が発令されることとなり、様々な講演会、イベント等も次々と中止のやむなきに至った。5月14日には、東京・大阪など8都道府県を除く39県は緊急事態宣言の対象地域から外れたものの、いつから以前のような活動を再開できるのか、正確なところを予想することは難しい。
(9)検察庁法「改正」案に反対する運動とこれからの民主主義
 国民がこのような不自由な生活を余儀なくされている事態に乗じ、安倍政権は、検察官人事を内閣が恣意的に左右することを可能とする検察庁法「改正」案を含む束ね法案(国家公務員法等の一部を改正する法律案)を国会に提出し、多くの国民、野党の反対を押し切り、その成立を強行しようとした。
 これに対し、自粛を余儀なくされ、デモや集会も自由に開けぬ状況の中、「♯検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグを付けてTwitterで意見を発信する国民(有名人も含めて)が一気に膨れ上がり、たちまち数百万件にも達するtweetが発信される事態となっている。
 このような世論の盛り上がりを背景に、元検事総長を始めとする検察官OBからも検事長定年延長を非とし、検察庁法「改正」案に反対する意見書が提出される異例の事態となり、ついに5月18日、政府与党は通常国会での法案の成立を断念するに至った。
 新型コロナウイルス感染症対応のため、従来型の活動が思うにまかせぬ状況にもかかわらず、明らかに従来の枠を超えた「物言う国民」の登場は、決して一時的なものと考えるべきではなく、コロナ以後の社会のあり方を見通す上で、非常に重要な気づきを与えてくれるムーブメントであった。
 新型コロナウイルス感染症の拡大という危機的な局面において、安倍晋三という指導者に、その地位に相応しい能力も識見もないことは、今度こそ相当広範囲な国民の知るところとなったと考えられる。
 さらに、東京高検検事長定年延長と、それを糊塗するために急遽内容を変更した検察庁法「改正」案は、あまりといえばあまりに常軌を逸した暴挙であり、これまで反政権の立場ではなかった国民の中にも、「さすがにこれは駄目だ」という意識を芽生えさせていると思われる。
 打倒安倍政権まではあと少しである。そして、我々の「憲法9条を守り、その理念を活かす」という目標を実現するための活動は、「安倍以後」も視野に入れた息の長いものであることを、あらためて確認する必要がある。

2.【2020年度の取り組み課題】
(1)今年度の重点活動
①春の「総会」と秋の「憲法フェスタ」の内容の一層の充実を図り、会員を始め多くの参加者で成功できるように取り組む。
②9条改憲の国会発議を許さない取り組みをねばり強く行う。
・新たに「安倍9条改憲NO!改憲発議に反対する全国緊急署名」を、これまで署名に協力してくれた人たちとともに、まだ署名をしてもらったことのない人たちにもしっかりと働きかける。
・その他、街頭宣伝活動、デモなども行い、広く市民に訴える。
③DVD上映会や学習会などに取り組み、様々な形での意見交流の場を作る。
・改憲の意味をしっかりと認識できる場を、たとえ小さくても作っていく。
④会員の拡大について、みんなで主体的に取り組んでいく。
⑤事務局活動の充実を図る。
・運営委員会、フェスタ実行委員会の効果的な開催に努める。
・ニュースの発行に努め、総会や憲法フェスタの案内時には発行できるようにする。
・会員のメールアドレスを収集し、メールによるニュースや情報の送信や、会員の意見・希望などの収集に活用する。
⑥財政の充実を図る。
⑦9条を守る他団体との連携を強化する。

(2)2020年度予算案(別紙) ※掲載省略

3.【運営委員候補】
原通範(代表)、金原徹雄、阪口康悟、萩田信吾、馬場潔子、牧野ひとみ、南本勲、山﨑和友
【参考】憲法フェスタ実行委員
宇田ともえ、小野原典子、菅道子、雑賀敏樹、白井春樹、田中和子、西本真弓、深谷登
                                            以上

東京高等検察庁検事長定年延長問題について(9)の4~全ての弁護士会から会長声明が出ました(5/20時点)

 2020523日配信(予定)のメルマガ金原No.3466を転載します。

東京高等検察庁検事長定年延長問題について(9)の4~全ての弁護士会から会長声明が出ました(5/20時点)

 私のブログに不定期連載してきた「東京高等検察庁検事長定年延長問題について」(巻末に全てリンクしています)の最新版は、憲法記念日(5月3日)に配信した「(続報)東京高等検察庁検事長定年延長問題について・番外編~ETV特集「義男さんと憲法誕生」を視聴して制憲議会の審議を思う」でした。

 それから今日までの20日間、状況はめまぐるしく変転しました。
 しかも、私たちが問題としてきた2つのテーマ、すなわち「黒川弘務東京高検検事長の定年が『違法に』半年間延長されたこと」と「内閣が恣意的に役職検察官の定年を延長できる検察庁法『改正』案が国会に上程されたこと」が一挙に、想像もしていなかった方向でとりあえずの中締めを迎えそうなのです(もちろん決着などまだ全然ついていません)。
 とりあえず、記憶にとどめるため、簡単に経過を振り返っておきます。

5月8日(金)
 衆議院内閣委員会で、検察庁法「改正」案を含む束ね法案「国家公務員法等の一部を改正する法律案」が審議入り。法務委員会との連合審査とし、森雅子法務大臣の出席を求めた野党の要求を政府・与党が拒否。
 またこの日から始まった「#検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグを付したメッセージがTwitter上で瞬く間に広がり、多くの著名な芸能人も参加していたことが大きな社会的反響を呼んだ。

5月11日(月)
 日本弁護士連合会が4月6日に続き「改めて検察庁法の一部改正に反対する会長声明」を発出。短期間のうちに2度の声明は異例。

5月15日(金)
 衆議院内閣委員会での審議にようやく森雅子法相が出席して答弁に立つ。野党は、同日中の委員会採決を阻止するため、武田良太国家公務員制度担当相の不信任決議案を提出。採決は早くとも週明けとの観測が流れる。
 同日午後、検察庁法「改正」に反対する松尾邦弘・元検事総長ら検察OB14名の連名による「東京高検検事長の定年延長についての元検察官有志による意見書」が法務大臣に提出され、松尾元検事総長及び意見書の取りまとめにあたった清水勇男元最高検検事による記者会見が行われた。

 この15日だけで全国9つの弁護士会から検察庁法「改正」に反対する会長声明が出された(この時点で残すはあと2会のみとなった)。

5月18日(月)
 熊崎勝彦元東京地検特捜部長など特捜部長経験者6名を含む特捜部OB有志38名の連名による「検察庁法改正案の御再考を求める意見書」が法務省に提出される。
 同日、政府・与党は、検察庁法解散を含む国家公務員法等の一部を改正する法律案の今国会での成立を断念する旨決定。

5月19日(火)
 一部メディア(デイリー新潮)が、黒川弘務東京高検検事長が「記者とカケ麻雀をしていた」のではないかと取材をかけているメディア(後に週刊文春と判明)があると報道。

5月20日(水)
 文春オンラインが、東京高検検事長の黒川弘務氏が、5月1日と13日の両日、産経新聞社会部記者や朝日新聞の元検察担当記者らと賭けマージャンをしていたことが、「週刊文春」の取材で判明したと報じる。
 この日、長崎県弁護士会が「検察庁法の一部改正法案の撤回及び違法な定年延長の閣議決定の撤回を求める会長声明」を発表。これで全国52全ての弁護士会の会長声明が出揃った。

5月21日(木)
 「週刊文春(5月28日号)」発売。グラビア(モノクロ)3頁、本文6頁の巻頭特集「黒川弘務検事長は接待賭けマージャン常習犯」が掲載される。
 黒川氏は法務省の調査に対し、賭け麻雀の事実を認め辞意を伝えたと報道される。
 同日、森雅子法相は黒川氏を訓告処分(懲戒処分ではない)としたと発表。

5月22日(金)
 内閣は、持ち回りの閣議により、黒川弘務東京高検検事長の辞職を承認し、即日、天皇の認証を得て(検事長は認証官)同氏は辞職した。
 一方、当初継続審議の方針と言われていた検察庁法「改正」案を含む国公法等改正案について、政府は廃案に方向を転換と報じられる。公務員労組の支持を受ける野党に対する揺さぶりではないかとの観測もある。

 1月31日の閣議決定に端を発した「東京高等検察庁検事長定年延長問題」の第1ラウンドはとりあえず終了し、来たるべき第2ラウンドに備えて力を一層蓄えるべき時期に入ったというべきでしょうか。
 そこで、3月2日の静岡県弁護士会から、5月20日の長崎県弁護士会まで、全国52の全弁護士会(他に東北弁護士会連合会、関東弁護士会連合会、日本弁護士連合会)の会長声明にリンクをはって記録に留めておくことにします。
 ただし、複数回声明を出した弁護士会もかなりの数に上りますので(福岡県弁護士会など3回も出している)、2回目の声明を見落としているところがあるかもしれませんので、その節は何卒ご容赦願います。

 なお、これら弁護士会の公式な声明以外にも、多くの弁護士が個々に声を上げたことは言うまでもありませんが、それらの声を集約し、対外的なアピールの力をより強力なものにするについて、福井弁護士会の島田広弁護士が果たされた貢献は、いくら強調しても強調し過ぎるということはありません。

 まず、「法務省が法無省になる日」というFacebookページ及びブログを独力で立ち上げて精力的に情報発信されました。

 さらに4月の半ば過ぎからは、「検察官勤務延長問題弁護士共同アピール」への賛同を全国の弁護士から募る「法の支配の危機を憂う弁護士の会」を急遽立ち上げ、島田先生自ら事務局長を引き受けて大奮闘されました。

 「賛同人」の他、日弁連の役職経験者や各地の弁護士会会長経験者らに「呼びかけ人」への就任を要請した結果(元日弁連会長、副会長でも「賛同人」とされた方々もおられます)、5月21日現在、
  呼びかけ人:221名
  賛同人:2766名
の合計2987名に達しています(日弁連会員は現在4万2200名余り)。
 呼びかけに気が付いた弁護士からその周辺の弁護士に口コミ的な連絡で広がっていった地域が多かったと思いますので(全弁護士にFAXを一斉送信するような費用はない)、日本の全ての弁護士の約7%が賛同というのは凄いパーセンテージだと思います。多分、「知っていれば賛同したのに」という弁護士もまだまだたくさんいると思います。
 まだまだ島田先生の奮闘は続くことになりそうです。

  さて、国公法等改正案が廃案となるのか、継続審議となるのか、はたまた第三の選択肢があり得るのか、会期末までの間にまだまだ情勢が転回する可能性は十分にありますが、とりあえず、出揃った全国の弁護士会の会長声明にリンクしてご紹介することにします。
 以前にも書いたことですが、これまでも、日本弁護士連合会が主唱して全国の弁護士会に声明を出すなり何らかのアピールをするように呼びかけたテーマはいくつもありました(共謀罪反対とか)。そのようなテーマであれば、全国の大半の弁護士会が同種の会長声明を出すことも珍しくありませんでした。
 しかし、今回は違います。当初、日弁連からは全くこの問題についての意見が出て来ず、多くの会員がもどかしい思いをしたものです。日弁連の会長は2年任期であり、激戦の会長選挙を勝ち抜いた荒中(あら・ただし)新会長が4月1日に就任してまもない同月6日、ようやく日弁連からも会長声明が出てほっとしたという状況です。
 日弁連から会長声明が出るまでの間に、3月2日の静岡県弁護士会をトップランナーとして、全国23の弁護士会(及び1ブロック連合会)が会長声明を公表していました。
 1番目の静岡県弁護士会から52番目の鳥取県弁護士会まで、日弁連が音頭を取った訳でも何でもなく、各地弁護士会の執行部、憲法委員会、常議員会、一般会員などが「この問題を見過ごすことは絶対にできない」と自ら決断して出した会長声明の積み重ねによって全52会全ての弁護士会の声明が揃ったということなのです。
 以下、各地の弁護士会の会長声明を(最初の声明の)日付順でご紹介します。

[日本弁護士連合会]
4/6「検事長の勤務延長に関する閣議決定の撤回を求め、国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明」
5/11「改めて検察庁法の一部改正に反対する会長声明」 

[ブロック連合会]
東北弁護士会連合会
3/14「東京高検黒川弘務検事長の定年延長を行った閣議決定を直ちに撤回することを求める会長声明」5/15「東京高検黒川弘務検事長の定年延長を行った閣議決定の撤回を改めて求めるとともに、国家公務員法等の一部を改正する法律案のうち検察庁法改正案に反対する会長声明」 

関東弁護士会連合会
5/11「東京高等検察庁黒川弘務検事長の勤務延長閣議決定の撤回を求め,国家公務員法等の一部を改正する法律案のうち検察庁法改正案に反対する緊急理事長声明」 

[弁護士会]
静岡県弁護士会
3/2「黒川弘務東京高検検事長の定年延長に強い懸念を表明する会長声明」 
5/12「検察庁法の一部改正に反対する会長声明」 

京都弁護士会
3/5「検察庁法に違反する定年延長をした閣議決定に抗議し、撤回を求める会長声明」 
4/2「検察庁法改正案に反対する会長声明」 

滋賀弁護士会
3/10「検察官に関する不当な人事権の行使に抗議する会長声明」 

仙台弁護士会
3/12「東京高検黒川弘務検事長の定年延長を行った閣議決定を直ちに撤回することを求める会長声明」

4/28「東京高検黒川弘務検事長の定年延長を行った閣議決定の撤回を改めて求めるとともに,国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明」 

千葉県弁護士会
3/13「東京高等検察庁検事長の勤務延長に対する会長声明」 
4/24「検察庁法改正を含む国家公務員法の一部改正法案の廃案等を求める会長声明」 

大阪弁護士会
3/13「検事長の定年延長に関する閣議決定の撤回を求める会長声明」 
4/16「検察庁法改正を含む国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明」 

三重弁護士会
3/16「東京高等検察庁検事長の定年延長閣議決定の撤回を求める会長声明」 

東京弁護士会
3/17「検察庁法に反する閣議決定及び国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対し、検察制度の独立性維持を求める会長声明」 
5/11「あらためて検察庁法の一部改正のうち検察官の定年ないし勤務延長にかかる「特例措置」を設ける部分に反対し、「国家公務員法等の一部を改正する法律案」から当該部分を削除することを強く求める会長声明」 

奈良弁護士会
3/23「東京高等検察庁検事長の勤務(定年)延長に強く抗議し検察庁法改正案に反対する会長声明」 

山形県弁護士会
3/24「東京高等検察庁黒川弘務検事長の定年延長を行った閣議決定の撤回を求める会長声明」 
5/1「検察庁法改正案に反対する会長声明」 

兵庫県弁護士会
3/25「東京高等検察庁検事長の定年延長の閣議決定の撤回を求める会長声明」 
5/18「検察庁法の改正法案に反対する会長声明」 

福井弁護士会
3/25「検察官について違法に勤務延長した閣議決定に抗議し撤回を求める会長声明」 

富山県弁護士会
3/25「検察庁法に違反する検事長の定年延長をした閣議決定に抗議し、撤回を求める会長声明」 

神奈川県弁護士会
3/26「検事長の定年延長をした閣議決定に強く抗議し撤回を求め、国家公務員法等の一部を改正する法律案中の検察庁法改正案に反対する会長声明」 

栃木県弁護士会
3/26「東京高検検事長の勤務延長をした閣議決定に強く抗議し、速やかな撤回を求める会長声」 
4
/23「検察庁法改正案に反対する会長声明」 

岐阜県弁護士会
3/27「検事長の定年延長に関する閣議決定の撤回を求める会長声明」 
5/19「国家公務員法等の一部を改正する法律案のうち、検察官の勤務延長の特例措置に関する部分の改正に反対する会長声明」 

福岡県弁護士会
3/27「検察官の定年後に勤務を延長する旨の閣議決定の撤回を求める会長声明」 
4/24「検察庁法の改正の一部に反対する会長声明」 
5/14「検察庁法改正等による検察官の独立性の侵害等に反対する意見書」 

鹿児島県弁護士会
3/27「検察官の定年延長に関する閣議決定の撤回を求め、国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明」

広島弁護士会
3/30「検察庁法に違反する定年延長をした閣議決定に抗議し、撤回を求める会長声明」 
5/13「検察庁法改正案中,いわゆる「役職定年制」の例外を規定する改正に反対し,撤回を求める会長声明」

宮崎県弁護士会
3/30「東京高検検事長の勤務延長に関する閣議決定に抗議し撤回を求める会長声明」 
4/23「検察官の定年ないし勤務延長に関する国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明」 

山梨県弁護士会

3/31「検察庁法に反する閣議決定の撤回を求めるとともに、国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明」 

沖縄弁護士会
4/1「検事長の定年延長をした閣議決定の撤回を求める会長声明」 
5/15「検察庁法の一部改正に反対する会長声明」 

岡山弁護士会
4/3「東京高等検察庁検事長の勤務延長に関する閣議決定に強く抗議すると共に国公法及び検察庁法改正案に反対する会長声明」 

茨城県弁護士会
4/7「東京高検黒川弘務検事長の定年延長を行った閣議決定を直ちに撤回することを求め、国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明」 

長野県弁護士会
4/13「検察官の定年延長に関する閣議決定の撤回を求め,国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明」 

徳島弁護士会
4/17「検察庁法に違反する定年延長の閣議決定の撤回を求め、国家公務員法等の一部を改正する法律案反対する会長声明」 

愛知県弁護士会
4/23「検察官の定年延長に関する閣議決定の撤回を求め、国家公務員法等の一部を改正する法律案のうち検察官の勤務延長の特例措置に関する部分に反対する会長声明」 

山口県弁護士会
4/23「検察官の独立性に対する尊重を求めるとともに、検事長の勤務を延長させる閣議決定の撤回を求め、国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明」 

群馬弁護士会
4/24「東京高等検察庁検事長の定年延長を行った閣議決定に抗議し,速やかな撤回を求めるとともに,検察庁法改正案に反対する会長声明」 

和歌山弁護士会
4/24「東京高検検事長の定年延長をした閣議決定の撤回を求め、検察庁法改正案に反対する会長声明」

大分県弁護士会
4/24「検事長の勤務延長に関する閣議決定の撤回を求め、国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する声明」 

秋田弁護士会
4/27「検事長の勤務延長に関する閣議決定の撤回を求めるとともに、国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明」 

旭川弁護士会
4/27「検事長の勤務延長に関する閣議決定の撤回を求め、国家公務員法等の一部を改正する法律に反対する会長声明」 

鳥取県弁護士会
4/28「検事長の勤務延長に関する閣議決定の撤回を求め,国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明」 

札幌弁護士会
5/1「東京高検検事長の勤務延長に関する閣議決定の速やかな撤回を求め、内閣による検察官の人事への介入を許すことになる検察庁法の改正に反対する会長声明」 

釧路弁護士会
5/8「検事長の勤務延長に関する閣議決定の撤回を求め、国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明」 

埼玉弁護士会
5/11「検事長の勤務延長に関する閣議決定の撤回を求め、国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明」 

新潟県弁護士会
5/12「検事長の勤務延長に関する閣議決定の撤回を求めるとともに、国家公務員法等の一部を改正する法律案中の検察庁法改正案に反対する会長声明」 

香川県弁護士会
5/12「検察官の定年延長に関する閣議決定の撤回を求め、国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明」 

島根県弁護士会
5/13「検事長の勤務延長に関する閣議決定の撤回を求め,国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明」 

熊本県弁護士会
5/14「検察官の定年延長に関する閣議決定の撤回を求め、検察庁法の一部改正に反対する会長声明」 

函館弁護士会
5/15「検事長の勤務延長に関する閣議決定の撤回を求め、検察庁法の一部改正に反対する会長声明」 

青森県弁護士会
5/15「検事長の勤務延長に関する閣議決定の撤回を求めるとともに、検察庁法改正案に反対する会長声明」 

岩手弁護士会
5/15「検事長の勤務延長に関する閣議決定の撤回を求めるとともに、検察庁法改正案に反対する会長声明」 

福島県弁護士会
5/15「現東京高等検察庁検事長の違法な定年延長を行った閣議決定の撤回を求め,国家公務員法等の一部を改正する法律案のうち検察役職者の定年等に裁量的例外を設ける部分に反対する会長声明」 

第二東京弁護士会
5/15「検察庁法の一部改正案中の検察官の勤務延長及び定年の特例措置に反対する会長声明」 

金沢弁護士会
5/15「検察官の定年ないし勤務延長に関する閣議決定の撤回を求めるとともに検察庁法の一部改正に反対する会長声明」 

愛媛弁護士会
5/15「検察庁法の一部改正案に反対する会長声明」 

高知弁護士会
5/15「ホームページ未掲載のため表題不明」 ※NHK高知の報道 

佐賀県弁護士会
5/15「検察官の定年ないし勤務延長に関する国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対し、同法案の拙速な審議に抗議する会長声明」 

第一東京弁護士会
5/18「検察庁法改正案等の拙速な審議・採決に反対する会長声明」 

長崎県弁護士会
5/20「検察庁法の一部改正法案の撤回及び違法な定年延長の閣議決定の撤回を求める会長声明」 


(弁護士・金原徹雄のブログから~東京高等検察庁検事長定年延長問題)
2020年2月8日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について~法律の規定は読み間違えようがない 
2020年2月11日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(2)~政府の解釈はこういうことだろうか? 
2020年2月16日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(3)~論点は出そろった(渡辺輝人氏、園田寿氏、海渡雄一氏の論考を読んで) 
2020年2月22日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(4)~「国家的悲劇」を象徴する痛ましい姿(小田嶋隆さんのコラムを読む) 
2020年2月23日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(5)~立憲デモクラシーの会の声明と文理解釈再び 
2020年3月4日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(6)~静岡県弁護士会「黒川弘務東京高検検事長の定年延長に強い懸念を表明する会長声明」を読む 
2020年3月6日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(7)~法律家9団体共同声明を読む 
2020年3月15日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(8)~「違法」だからこそ辻褄が合わなくなる 
2020年3月28日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(9)~全国の弁護士会から出された会長声明のご紹介(3/27まで) 
2020年4月18日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(9)の2~全国の弁護士会から出された会長声明のご紹介・補訂版(4/17まで) 
2020年4月29日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(9)の3~全国の弁護士会から出された会長声明のご紹介・三訂版(4/28まで) 
2020年5月2日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について・番外編~福島県出身の弁護士・法務大臣(司法大臣・法務総裁)の身の処し方を思う 
2020年5月3日 
(続報)東京高等検察庁検事長定年延長問題について・番外編~ETV特集「義男さんと憲法誕生」を視聴して制憲議会の審議を思う

[再配信]憲法記念日に考える(立憲主義ということ)

 2020512日配信(予定)のメルマガ金原No.3465を転載します。

[再配信]憲法記念日に考える(立憲主義ということ)

 以下に配信する文章は、メルマガ金原No.929「憲法記念日に考える(立憲主義ということ)」として、2012年5月3日、約200人の読者に向けてメールで送信したものでした。
 もともと、3.11と福島第一原発事故に大きな衝撃を受け、2011年3月28日から、友人・知人に配信を始めたささやかな個人メルマガでしたから、記事の大半は原発関連のものでした。
 しかし、配信開始から1年余り経ったこの頃から、憲法関連の記事の比重が大きくなっていったように記憶しており、その象徴的な記事がこの「憲法記念日に考える(立憲主義ということ)」でした。
 自民党が憲法記念日の直前に公表した「日本国憲法改正草案」を批判的に紹介する記事でなぜ「立憲主義ということ」を考えねばならなかったのかはお読みいただければ明らかです。
 とにかく、自民党草案の「全て国民は、この憲法を尊重しなければならない。」(第102条1項)を読んだ時は目が点になりました。まさか、21世紀の憲法草案でこういう条項を読むことになるとは夢にも思っていなかったからです。

 その後、2013年1月24日から、メルマガ金原で配信した記事をそのまま転載する「弁護士・金原徹雄のブログ」を始め、同月26日にアーカイブとして同ブログでも配信したのですが、当時はライブドア・ブログの1本の記事に費やせる容量がかなり少なく、やむなく前後編に分割してアップしました。

2013年1月26日 
憲法記念日に考える(立憲主義ということ) 前編 
2013年1月26日 
憲法記念日に考える(立憲主義ということ) 後編 

 その後も、折々アクセスしてくださる方もある息の長い記事になっているのですが、前後編に別れていては何かと不便でもあり、当初の記事でリンクしていたサイトが閉鎖されてしまった枢密院会議録について、新たに国立公文書館デジタルアーカイブスにリンクを貼り直すなどの手直しをした上で再配信することにしました。
 8年も前に書いた文章ですが、読み返すたびに、ありきたりではありますが「初心忘るべからず」と気持ちが引き締められます。
 ご一読いただけると幸いです。


憲法記念日に考える(立憲主義ということ)

 今日(2012年5月3日)は、日本国憲法が施行されてからちょうど65年目の節目の憲法記念日でした。
 「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」が呼びかけて2007年から始まった、憲法9条「改正」に反対する統一街頭署名行動に今年も参加してきました。天候が心配されましたが、JR和歌山駅前は、終始曇り空ではあったものの、午前11時から予定していた1時間半の間、何とか雨に見舞われずにすみました。

 さて、憲法といえば、先月末に、めぼしいものだけでも、
  4月25日 たちあがれ日本 自主憲法大綱「案」 公表
  4月27日 自由民主党 日本国憲法改正草案 公表
  同日 衆参対等統合一院制国会実現議員連盟メンバー 憲法改正原案を衆議院議長に提出 
などの「改憲案」が公表もしくは提案されています。

 このうち、やはり最も影響力が大きいのは、自民党の「日本国憲法改正草案」でしょう。
 これは、2005年10月に公表された同党の「新憲法草案」をブラッシュアップしたというか、グレードアップしたというか、より一層反動的になったというか、要するにそういうものですが、その問題点についてはじっくりと検討し、批判を加えていく必要があると思います。
 時代錯誤としか思えない空疎な「前文」、戦力不保持条項を削除して国防軍を設け、海外派兵も思いのままという「9条、9条の2」、内閣総理大臣に緊急事態宣言を発してオールマイティな力を行使できる権限を付与する「98条、99条」、憲法改正発議のために要する両院の賛成を3分の2から過半数に緩和する「100条」などは、中でも要注意条項ですから、是非、原文でお読みいただきたいと思います。
自由民主党「日本国憲法改正草案Q&A(増補版)」 

 ところで、今日ここで取り上げるのは、別の条項です。
 私の見るところ、自民党の「日本国憲法改正草案」の本質が、最も端的に現れているのはこの条項だと思います。
 まずは、自民党の「改正草案」からの抜粋をお読みください。

(憲法尊重擁護義務)
第102条 全て国民は、この憲法を尊重しなければならない。
2 国会議員、国務大臣、裁判官その他の公務員は、この憲法を擁護する義務を負う。

 皆さんは、以上の条項を読んで何らかの「違和感」を感じませんでしたか?もしも、感じたとすれば、「憲法」の本質についての正しい感覚の持ち主であると自負されて良いでしょう。
 上記条項に対応する現行規定は以下のとおりです。

第99条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

 現行規定には、憲法尊重擁護義務を負う主体として「国民」は挙げられていません。起草者や帝国議会議員(日本国憲法案を審議したのは第90回帝国議会)がうっかり忘れていたのでしょうか?とんでもない。明確に、かつ意図的に、「国民」を主体から除いていると解釈するのが、近代憲法史を少しでも学んだことのある者にとっての常識です。

 このことを理解するためには、近代立憲主義の幕開け(の最も有力なものの1つ)となったフランス革命(1789年/ちなみに、このちょうど100年後に大日本帝国憲法が発布されています)の際、国民議会によって採択された「人及び市民の権利の宣言」(フランス人権宣言/1789年人権宣言)の特に以下の条項を想起する必要があります。

第16条 権利の保障が確保されず、権力の分立が規定されないすべての社会は、憲法をもつものでない。(岩波文庫「人権宣言集」の訳による) 

 講学上「近代的意義の憲法」といわれる概念の定義を学ぶ学生は、まずフランス人権宣言16条を教えられるという訳です。
 「権力の分立」というのは「権力の制限」と読み替えてもよいので、(国家)権力に制限を加え、国民の権利(基本的人権)を保障するためにこそ憲法が存在する、という思想によって制定された憲法だけが「近代的意義の憲法」というに値する、というのが通説的理解です。
 私が司法試験の受験勉強をしていたのは昭和の時代ですから、最近の憲法学説には疎くなっていますが、憲法の基本理念に大転換があったとも聞いていないので、多分今でも通説でしょう。
 そして、「立憲主義」という概念が使われる時、そこでいう「憲法」とは、上記の「近代的意義の憲法」であることが当然の前提とされているのです。

 ところで、フランス人権宣言のちょうど100年後の1889年に制定された「大日本帝国憲法」(いわゆる「明治憲法」)は、元勲・伊藤博文らが中心となって立案された欽定憲法ですが、その制定過程の中で、立憲主義の本質をめぐる議論が闘わされたことは明治憲法制定史上、非常に著名なエピソードです(昨日の朝日新聞に掲載された憲法学者・樋口陽一氏へのインタビューでも言及されていました)。

 それは、明治憲法制定の前年(明治21年・1888年)6月22日、憲法草案を審議していた枢密院での、文部大臣・森有礼(もりありのり)と枢密院議長・伊藤博文との議論です。
国立公文書館 アジア歴史資料センター デジタルアーカイブス 
  枢密院会議筆記・一、憲法草案・明治二十一年自六月十八日至七月十三日 

 以下に該当箇所を引用します(枢密院会議録より)。

(引用開始)
十四番() 本章ノ臣民權利義務ヲ改メテ臣民ノ分際ト修正セン。今其理由ヲ略述スレハ、權利義務ナル字ハ、法律ニ於テハ記載スヘキモノナレトモ、憲法ニハ之ヲ記載スルコト頗ル穩當ナラサルカ如シ。何トナレハ、臣民トハ英語ニテ「サブゼクト」ト云フモノニシテ、天皇ニ對スルノ語ナリ。臣民ハ天皇ニ對シテハ獨リ分限ヲ有シ、責任ヲ有スルモノニシテ、權利ニアラサルナリ。故ニ憲法ノ如キ重大ナル法典ニハ、只人民ノ天皇ニ對スル分際ヲ書クノミニテ足ルモノニシテ、其他ノ事ヲ記載スルノ要用ナシ。
番外(井上) 分際トハ英語ニテ如何ナル文字ナルカ。
十四番() 分際トハ「レスポンシビリテー」、即チ責任ナリ。分ノミニテ可ナリ。
議長 十四番ノ説ハ憲法及國法學ニ退去ヲ命シタルノ説ト云フヘシ。抑憲法ヲ創設スルノ精神ハ、第一君權ヲ制限シ、第二臣民ノ權利ヲ保護スルニアリ。故ニ若シ憲法ニ於テ臣民ノ權理ヲ列記セス、只責任ノミヲ記載セハ、憲法ヲ設クルノ必要ナシ。又如何ナル國ト雖モ、臣民ノ權理ヲ保護セス、又君主權ヲ制限セサルトキニハ、臣民ニハ無限ノ責任アリ、君主ニハ無限ノ權力アリ。是レ之ヲ稱シテ君主專制國ト云フ。故ニ君主權ヲ制限シ、又臣民ハ如何ナル義務ヲ有シ、如何ナル權理ヲ有ス、ト憲法ニ列記シテ、始テ憲法ノ骨子備ハルモノナリ。又分ノ字ハ支那、日本ニ於テ頻ニ唱ヘル所ナレトモ、本章ニアル憲法上ノ事件ニ相當スル文字ニアラサルナリ。何トナレハ、臣民ノ分トシテ兵役ニ就キ租税ヲ納ムルトハ云ヒ得ヘキモ、臣民ノ分トシテ財産ヲ有シ言論集會ノ自由ヲ有スルトハ云ヒ難シ。一ハ義務ニシテ一ハ權理ナリ。是レ即チ權理ト義務トヲ分別スル所以ナリ。且ツ維新以來今日ニ至ルマテ、本邦ノ法律ハ皆ナ臣民ノ權理義務ニ關係ヲ有シ、現ニ政府ハ之ニ依テ以テ政治ヲ施行シタルニアラスヤ。然ルニ今全ク之ニ反シタル政治ヲ施行スル事ハ如何ナル意ナルカ。森氏ノ修正説ハ憲法ニ反對スル説ト云フヘキナリ。蓋シ憲法ヨリ權理義務ヲ除クトキニハ、憲法ハ人民ノ保護者タル事能ハサルナリ。
(引用終わり/原文には句読点なし)

 漢字が読めさえすれば、特に注釈を施す必要もないでしょうが、念のために、青地とした部分のみ、現行の漢字及び仮名使いで書き直してみましょう。

「そもそも、憲法を創設するの精神は、第一君権を制限し、第二臣民の権利を保護するにあり。ゆえに、もし憲法において臣民の権利を列記せず、ただ責任のみを記載せば、憲法を設くるの必要なし」

 伊藤博文が、「近代的意義の憲法」の本質を十分にわきまえた上で、明治憲法の制定に携わっていたことは明らかです。

 伊藤は、また、この議論があった日の4日前(1888年6月18日)の枢密院での審議においても次のように述べていました(枢密院会議録より)。

(引用開始)
抑立憲政體ヲ創定シテ國政ヲ施行セント欲セハ、立憲政體ノ本意ヲ熟知スル事必要ナリ。假令ヒ承認ノ文字ヲ嫌テ議會ニ承認ノ權ヲ與ヘル事ヲ厭忌スルモ、法律制定ナリ豫算ナリ、議會ニ於テ承知スル丈ケノ一點ハ到底此憲法ノ上ニ缺クコト能ハサラントス。議會ノ承認ヲ經スシテ國政ヲ施行スルハ立憲政體ニアラサルナリ。已ニ議會ニ承認ノ權ヲ與ヘタル以上ハ、其承認セサル事件ハ政府ト雖トモ之ヲ施行スルコト能ハサルモノトス。歐州立憲國ノ景況ヲ見ルニ、獨逸風ノ立憲政體アリ、英國風ノ立憲政體アリテ、其權限ノ解釋或ハ其組織ノ構成ニ至テハ多少差異アルモ、其大體要領ニ至テハ毫モ異ルコトナシ。又立憲政體ヲ創定シテ責任宰相ヲ置クトキハ、宰相ハ一方ニ向テハ君主ニ對シ政治ノ責任ヲ有シ、他ノ一方ニ向テハ議會ニ對シテ同ジク責任ヲ有ス。此二ツノ責任ヲシテ宰相ニ負ハシムルトキニハ、假令ヒ君主ト雖モ宰相外ノ人ヲシテ政治ニ參與シ、又ハ之ヲ施行セシムルコト能ハサルモノナリ。故ニ立憲政體ニ於テハ、君主ニシテ責任宰相ヲ置ク以上ハ、其人ヲ措テ他ニ謀ルコト能ハス。悉ク其人ノ奏問ヲ聞クヘキモノトス。是ニ由テ之ヲ觀レハ、立憲政體ヲ創定スルトキニハ、天皇ハ行政部ニ於テハ責任宰相ヲ置テ、君主行政ノ權モ幾分カ制限サレ、立法部ニ於テハ、議會ノ承認ヲ經サレハ法律ヲ制定スル事能ハス。此二ツノ制限ヲ設クルコト、是レ立憲政體ノ本意ナリ。此二點ヲ缺クハ、立憲政體ニアラス。又此二點ヲ憲法ノ上ニ於テ巧ニ假裝スルモ、亦均シク立憲政體ノ本義ニアラサルナリ。
(引用終わり/原文には句読点なし)

 もっとも、先の「臣民權利義務」をめぐる論争だけを読むと、森有礼文部大臣は、とんでもない守旧派だったと誤解する人がいるかもしれないので、若干の補注を加えると、森は、幕末、薩摩藩の命によってイギリスに留学し(その後アメリカにも渡る)、明治維新後に帰国してからは、福沢諭吉らと「明六社」を結成するなど、開明的な啓蒙主義思想の持ち主とみなされており、その意見は時に急進的ですらあったようです(英語を国語にすべきという意見など)。
 森が初代文部大臣に就任したのは第一次伊藤博文内閣(日本初の「内閣」ですね)の時であったことからも伺えるように、伊藤との関係も良好であったようです。
 実際、「臣民權利義務」についての森の発言の真意は、財産の自由や言論の自由などの権利は、そもそも憲法で規定するか否かに関わらず、人民の固有の権利として天賦に保有しているものであり、それをわざわざ憲法で規定するということは、人民の権利は憲法の制定によって初めて生じる、ということになってしまい、逆に憲法によって制限されたり認められなくなってしまう可能性を生み出してしまう、というところにあったという説もあるようです。
 ちなみに、森有礼は、明治22年(1889年)211日、大日本帝国憲法発布式典の日に国粋主義者の襲撃に遭い、翌日死去しています。

 さて、以上の日本憲法史上のエピソードを踏まえた上で、もう一度、「憲法尊重擁護義務」についての現行規定と自民党「改正草案」を読み比べてみましょう。

現行規定
第99条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

自民党「改正草案」
(憲法尊重擁護義務)
第102条 全て国民は、この憲法を尊重しなければならない。
2 国会議員、国務大臣、裁判官その他の公務員は、この憲法を擁護する義務を負う。

 「憲法尊重擁護義務」という見出しを付けながら(現行憲法に条文ごとの「見出し」はありません)、いきなり「国民」の憲法尊重義務が出てくること自体が理解できません。
 そもそも、憲法は、国民に何らかの義務を課すための法規範ではありません。国民は、社会に存在する法律、政令、省令、条例、規則などの様々な法規範によって幾重にも義務を課されています。
 国民に新たな義務を課すのであれば、法律を制定すれば十分です。
 憲法は、法律以下の諸規範によっても奪うことのできない権利を保障するためにこそ存在するのです。
 明治21年当時の伊藤博文には自明であったこの原理が、今や曖昧模糊となり、自民党の「日本国憲法改正草案」に至ってついに雲散霧消したと言うべきでしょう。
 なお、憲法の擁護義務を負う主体から「天皇又は摂政」が削除された真意はまた別のところにあるのかもしれません。
 「改正草案」第1条において、天皇を「元首」とし、第3条で「国旗は日章旗とし、国家は君が代とする。2項 日本国民は、国旗及び国家を尊重しなければならない」(第3条で早くも「国民の義務」が出てきます!)としたことと符節を合わせ、天皇を別格化しようということなのでしょう。
 それでいて、「天皇の権能」(「改正草案」4条)については、現行憲法をそのまま踏襲しているのですから、要するに、「天皇」という意匠を利用できるだけ利用しようという底意が透けて見える、というのが私の感想です。
 豊下楢彦関西学院大学教授(名著『安保条約の成立』『集団的自衛権とは何か』『昭和天皇・マッカーサー会見』の著者)が「日本国憲法の申し子」と評した明仁天皇がこの「改正草案」を読めば、一体どう思われるでしょうか。

 自民党「改正草案」における憲法尊重擁護義務条項と伊藤博文の立憲主義についての認識は、昨日の「9条ネットわかやま」MLに投稿したものがやや舌足らずであったため、本日のメルマガで詳しく敷衍したものです。
 読者の中には、もっぱら原発関連の情報を獲得するために読んでくださっている方もおられるでしょうが、原発を推進する勢力も改憲を推進する勢力も根っこは繋がっているという認識を持たれた上で、「放射能の危機」とともに、「憲法の危機」についても関心を持っていただけることを切望します。

(付記)
 余談ですが、大日本帝国憲法制定過程を振り返る時、枢密院会議録は必読の資料ですが、また「よくぞ残してくれていた」と明治の先人に対する感謝の念がしきりです。
 重要な議事録を「作っていない」と言って何ら恥じない現在の政治家・官僚の姿を思い浮かべるたびに、戦前の方が何もかもすぐれていたなどと言うつもりは毛頭ないものの、「明治は遠くなりにけり」という感慨を催さずにはいられません

映画『太陽の蓋』(90分版)を鑑賞した~5/6までYouTubeで無料公開中

 20205月4日配信(予定)のメルマガ金原No.3464を転載します。

Facebookから転載します。

映画『太陽の蓋』(90分版)を鑑賞した~5/6までYouTubeで無料公開中

 3.11からの5日間を、原発事故の真相を追う記者を中心に、当時の政権や官邸内部、東京や福島で暮らす市井の人の姿を対比させて描いた映画『太陽の蓋』(2016年/佐藤太監督)の90分版が、明後日(5月6日)までの期間限定でYouTubeで無料公開されていることを、寺脇研さんのFacebookへの投稿で知りました。私は、今日は国選弁護待機日だったのですが、法テラスから指名打診の電話がかかってくるかもしれないと思いつつ、パソコンでじっくり鑑賞しました(結局、16時までの待機時間中に法テラスからの電話はありませんでした)。


映画「太陽の蓋」-90分版-
 https://www.youtube.com/watch?v=x29d7YMhmm8 

【動画】映画『太陽の蓋』予告編
 


 これは十分に観るべき価値のある映画だと思いました。無料視聴できるのもあと2日とちょっとですが、是非1人でも多くの方に観ていただきたいと思いました。

 『Fukushima50』と対比してあれこれ評する人がいるかもしれませんが、私は何しろまだ『Fukushima50』を観ておらず、比較はできません。ただ、実名で登場する官邸の政治家に対し、特別肩入れする訳ではなく、とてもフェアな扱い方だという印象を受けました。

※ご参考までに、『太陽の蓋』と『Fukushima50』を論じた増當竜也さんの文章をご紹介しておきます。

 それと、主役の記者(内閣記者会所属の官邸記者)鍋島亮役を演じた北村有起哉さんがいいですね。ちなみにこの役者さんは、昨年の『新聞記者』では、シム・ウンギョンさんの上司の役でも好演していましたが、『太陽の蓋』の鍋島記者の8年後の姿ではないのかと、2本の作品を両方観た人はそう思ったのでは・・・(北村有起哉さんて、北村和夫さんの息子さんだったんですね、知らなかった)。
 ちなみに北村さんがご自身のブログで『新聞記者』について以下のような文章を書かれていました。

 しかし、映画を見終わって思うことは、この映画の主人公は官邸詰めの記者ですが、これは民主党政権時であればこそ成り立つ設定であり、第二次安倍政権時に原発事故が起きていたら、官邸記者を主人公にしても、とてもストーリーが転がらないでしょうね。質問をいちいち事前通告しなければまともな回答が出てこないのですから。

 ちなみに、90分版の他に、オリジナルの130分版があるようなのですが、その関係については、以下のような説明がありました。

3.11事故当時の官邸の様子を、福島や東京での人間ドラマも含めて描き出したオリジナルの130分版。その内容を凝縮した90分版が出来ました。各地の自主上映会場などで、専門家の講演やトークショーなどをセットにしたいが、それだと130分は長すぎるというお声を多数頂戴していました。そのため、本編を再編集し90分版を誕生させました。」

(続報)東京高等検察庁検事長定年延長問題について・番外編~ETV特集「義男さんと憲法誕生」を視聴して制憲議会の審議を思う

 202053日配信(予定)のメルマガ金原No.3463を転載します。

(続報)東京高等検察庁検事長定年延長問題について・番外編~ETV特集「義男さんと憲法誕生」を視聴して制憲議会の審議を思う

 私にとって、日本国憲法が1947年(昭和22年)5月3日に施行されたことを記念する祝日の過ごし方は、2007年以降、それまでとは大きく様変わりすることになりました。
 2005年に和歌山弁護士会の会員有志が「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」を結成し、様々な活動を行ってきた内の1つに、県下の様々な団体に呼びかけて始めた9条改憲に反対する署名集めがあるのですが、2007年以降、毎年5月3日の憲法記念日には、JR和歌山駅前で統一署名行動が大規模に行われる例となったのです。
 当時、憲法9条を守る和歌山弁護士の会の2代目事務局長(在任:2006年1月~2012年1月)を務めていた私は、当然ながら、毎年JR和歌山駅前での署名活動に参加し、その場で集約して獲得署名数を発表したりしていました。

 そして、2013年には、署名活動を終えた後、JR和歌山駅前から和歌山城西の丸広場先までの行程で「憲法9条を守り生かそう わかやまアピール行進」を実施しました(第1回「憲法9条を守り生かそう わかやまアピール行進」実施/2013年5月4日)。
 ブログに書いたレポートを読み返してみると、第二次安倍政権の最初の改憲目標が96条の改正要件引き下げだったことを思い出しました。
 ところで、この「憲法9条を守り生かそう わかやまアピール行進」は「第1回」と称して開催したものの、いまだに「第2回」は実施されていません。
 その理由は概ね2つあります。
 1つは、翌年(2014年)から、憲法記念日には、和歌山城西の丸広場を会場として“HAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama”が開催されるようになったことであり、もう1つの理由は、同年6月23日を第1回として、憲法9条を守る和歌山弁護士の会が呼びかける「憲法の破壊を許さないランチTIMEデモ」を毎月行うようになったことです。

 以上のとおり、2007年~2013年はJR和歌山駅前で署名行動、2014年~2019年は和歌山城西の丸広場で“HAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama”に参加というのが私の憲法記念日の行動パターンでした。
 ところが、今年の新型コロナウイルス感染症の蔓延により、他の講演会等のイベントと同様、準備を重ねていた“HAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama 2020”も中止のやむなきに至りました(“HAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama 2020”中止のお知らせと“2014~2019”回顧/2020年4月5日)。 

 そこで、今年の憲法記念日をどう過ごすか、各地で中止となった憲法イベントの代替としてのネット配信も様々にアップされているようで、いずれ視聴しようとは思うものの、とりあえずそれらは後回しとさせていただき、今日は、このブログを書くことに集中しようと思います。
 タイトルからお分かりかと思いますが、本稿は、昨日配信したブログ「東京高等検察庁検事長定年延長問題について・番外編~福島県出身の弁護士・法務大臣(司法大臣・法務総裁)の身の処し方を思う」(2020年5月2日)の続報です。

 昨日のブログでご紹介したとおり、私は、昨晩午後11時から放送されたETV特集「義男(ぎだん)さんと憲法誕生」に注目し、視聴しました。
 番組案内を再掲します。

NHK・Eテレ
本放送 2020年5月2日(土)午後11時00分~12時00分
再放送 2020年5月7日(木)午前0時00分~1時00分(6日深夜) 
ETV特集「義男さんと憲法誕生」 
(番組案内)
「日本国憲法の制定にかかわった人物の再評価が始まっている。ギダンさんの愛称で親しまれた福島県の法学者・鈴木義男(すずきよしお)。東北大の教授時代、軍事教練に反対して教壇を追われた義男さん。弁護士となり治安維持法違反者の弁護に尽力。敗戦後、衆議院議員になると9条の平和主義や25条の生存権だけでなく国家賠償請求権や刑事補償請求権の追加を求め、三権分立の確立を目指す。その波乱の生涯を新資料をもとに描く。」

 Wikipediaによる鈴木義男氏紹介も再掲しておきます。

(引用開始)
 1894年(明治27年)117日に福島県白河市で生まれる。東京帝国大学を卒業後に学者(教授)となり、東京女子大学教授・東北帝国大学教授・法政大学教授を歴任する。退職後は弁護士業を開業して、帝国弁護士会理事となった。
 第二次世界大戦後、日本社会党の結成に関わり憲法草案の作成に関与。また、海野晋吉・尾崎行雄らの憲法懇話会にも関わって、ここでも憲法草案作成に携わる。1946年衆議院選挙で福島全県区に日本社会党より出馬、初当選。中選挙区制では福島2区に転じ、衆議院議員7期(所属政党は日本社会党→社会党右派→日本社会党→民主社会党)。この間、1947年(昭和22年)から1948年(昭和23年)まで片山内閣・芦田内閣で司法大臣・法務総裁を務めた。日本国憲法第25条の生存権規定成立には、鈴木義男の果たした役割が大きかったことが最近の研究で指摘されている。194681日、帝国憲法改正案小委員会の第7回審議において、「それならば生存権は最も重要な人権です」という鈴木の気迫のこもった一言で、委員会の流れが生存権承認の方向に変わった。その後、専修大学学長・東北学院院長にもなった。
(引用終わり)

 私は、以上の記事を読み、「福島県(白河市)出身⇒弁護士⇒国会議員⇒司法大臣・法務総裁」という鈴木義男氏の経歴が、森雅子現法務大臣の経歴(福島県(いわき市)出身⇒弁護士⇒国会議員⇒法務大臣)とあまりにそっくりであることに驚き、ETV特集「義男さんと憲法誕生」に注目し、ブログで取り上げるととも、昨晩しっかりと視聴した結果、今日も続報を書こうと決意した次第です。

 昨日の番組では、鈴木義男氏の業績を、主に2点に絞って紹介するという構成をとっていました。
 1つは、大学における軍事教練を批判した言動をとがめられ、東北帝国大学の教壇を追われた後に弁護士となり、治安維持法で検挙された被告人(有澤広巳、宇野弘蔵、宮本百合子、李光洙(イ・グァンス)など多数)の弁護を積極的に引き受けるとともに、新進女優・志賀暁子が堕胎罪で起訴された事件では、新約聖書の有名なイエスのことば「なんぢらの中(うち)、罪なき者まづ石を擲(なげう)て」を引用して寛典を望む弁論を行ったことなどが紹介されていました。
 そして、もう1つが、1946年(昭和21年)4月に行われた戦後初の衆議院議員総選挙において、日本社会党から立候補して当選した鈴木義男氏が、制憲議会となった第90回帝国議会での憲法改正案の審議にあたり、とりわけ帝国憲法改正案委員会小委員会委員として、憲法の条項の修正・追加などに重要な役割を果たしたことです。

 番組では、主に、以下の諸点についての鈴木氏の主張とその成果を紹介していました。
 なお、分かりやすくするため、帝国議会の議に付された「帝国憲法改正案」と成立した「日本国憲法」の条項を対比して紹介し、主な修正(追加)部分にアンダーラインを施します。

〇平和条項
(帝国憲法改正案)
第九条 国の主権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、他国との間の紛争の解決の手段としては、永久にこれを抛棄する。
2 陸海空軍その他の戦力は、これを保持してはならない。国の交戦権は、これを認めない。
(日本国憲法)
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

〇生存権
(帝国憲法改正案)
第二十三条 法律は、すべての生活部面について、社会の福祉、生活の保障及び公衆衛生の向上及び増進のために立案されなければならない。
(日本国憲法)
第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

〇国家賠償請求権
(帝国憲法改正案)
規定なし
(日本国憲法)
第十七条 何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。

〇刑事補償請求権
(帝国憲法改正案)
規定なし
(日本国憲法)
第四十条 何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。

〇三権分立(司法権の地位向上)
(帝国憲法改正案)
第六条 天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。
(日本国憲法)
第六条 天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。
2 天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。

 帝国議会、とりわけ衆議院での憲法改正案審議の経過をまとめた「日本国憲法の誕生」(国立国会図書館)の解説を引用しておきます。

(引用開始)
総選挙と衆議院における審議
 1946410日、女性の選挙権を認めた新選挙法のもとで衆議院総選挙が実施され、516日、第90回帝国議会が召集された。開会日の前日には、金森徳次郎が憲法担当の国務大臣に任命された。
 620日、「帝国憲法改正案」は、明治憲法第73条の規定により勅書をもって議会に提出された。625日、衆議院本会議に上程、628日、芦田均を委員長とする帝国憲法改正案委員会に付託された。
 委員会での審議は71日から開始され、723日には修正案作成のため小委員会が設けられた。小委員会は、725日から820日まで非公開のもと懇談会形式で進められた。820日、小委員会は各派共同により、第9条第2項冒頭に「前項の目的を達するため」という文言を追加する、いわゆる「芦田修正」などを含む修正案を作成した。翌21日、共同修正案は委員会に報告され、修正案どおり可決された。
 824日には、衆議院本会議において賛成421票、反対8票という圧倒的多数で可決され、同日貴族院に送られた。
(引用終わり)

 上の解説にあるとおり、修正案作成のために設置された小委員会(ここで鈴木義男議員も大活躍したのですが)は「非公開」で行われ、その会議録が公開されたのは、後にご紹介する古関彰一氏の論考(平和憲法の成立と鈴木義男)によれば、何と「1995年(平成7年)」のことであり、小委員会の審議から49年も経っていたということです。
  その小委員会会議録を、現在では、衆議院憲法審査会ホームページ」関係会議録」で誰でも読むことができます。

 ETV特集で指摘された5項目のそれぞれについて、鈴木議員の小委員会での主要な発言を引用できれば良いのですが、そのためには連休の残り3日半を全部費やすほどの覚悟が必要なので、「平和条項」については、鈴木義男氏の母校でもあり、また後年院長も務められた東北学院が2度にわたって開催したシンポジウムの報告が「東北学院史資料センター年報」に詳しく掲載されていますので、それをご紹介することにします。

東北学院史資料センター年報 Vol.4(2019.3.1) 
2017年度公開シンポジウム「平和憲法と鈴木義男」から 
「平和憲法の成立と鈴木義男」 古関 彰一(和光学園理事長)
「第一次世界大戦以降の平和思想と日本国憲法第9条」 油井大三郎(一橋大学名誉教授・東京大学名誉教授)
「鈴木義男の生涯」 仁昌寺正一(東北学院史資料センター調査研究員、東北学院大学経済学部教授)

東北学院史資料センター年報 Vol.5(2020.3.1) 
2018年度公開シンポジウム「戦後平和主義と鈴木義男」から
「「平和国家」と鈴木義男」  塩田  純(NHKエデュケーショナル特集文化部 制作主幹)
「日本社会党史における鈴木義男」 岡田 一郎(日本大学非常勤講師)
GHQの仙台占領と鈴木義男 ── 米国国立公文書館での調査報告」 松谷 基和(東北学院史資料センター調査研究員、東北学院大学教養学部准教授)

 以上の充実した諸論考の内、制憲議会における「9条・平和条項」審議で鈴木義男氏の果たした役割については、特に小関彰一氏と塩田純氏の論考をご参照ください。

 また、「生存権(日本国憲法第25条1項)」については、上記古関論文の他、昨日のブログでご紹介した「小委員会昭和21年8月1日(第7回)」会議録などをご参照ください。

(引用開始)
鈴木(義)委員 ソレナラバ打切リニ願ヒタイノデス、原委員ノ御意見カラ言ヘバ、婚姻ハ両性ノ合意デヤルトカ、相続ハドウスル、住居ノ選定ハドウスル、令状ヲ持ツテ来ナケレバ縛レナイ、コンナコトハ皆刑事訴訟法ヤ民法ニ規定スベキモノデ、何ノ必要ガアツテ此処ニ規定シタモノカ分ラヌ
(略)
鈴木(義)委員 ソレナラバ生存権ハ最モ重要ナ人権デス、結局十九世紀マデノ憲法ノ体裁ダト御考ヘニナルカ、二十世紀ニナツテカラ出来テ居ル各国ノ憲法ノヤウナ憲法ヲ作ルコトガ差支ヘナイカト云フコトニ帰着スルノデス、「フランス」ノ憲法デモ、「ソ」連ノ憲法デモ、労働者ノ権利トカ色々ナコトヲモツト詳シク書イテアリマスヨ
(略)
鈴木(義)委員 「アメリカ」ノ憲法ニ書イテアルコトナラ黙ツテ通スガ、「フランス」ヤ「ソ」連ヤ「ドイツ」ノ憲法ニ書イテアルノハ通サナイト云フヤウナ意見ガ非常ニ強イノデ、我々心外ニ思ツテ居ルノデス
(略)
鈴木(義)委員 其ノ講義ハ宜シウゴザイマス……、結局立場ガ違ツテ居ルノデ、解決出来ナケレバ討論ヲ打切ツテ他ノ判断ニ委ネルヨリ外ナイ、デスカラソンナコトヲ言フノハヤメマセウ
(引用終わり)

 ちなみに、昨日のETV特集の上の発言を再現したドラマ部分では、鈴木氏(を演じた俳優)は、至極冷静な態度で確信を披瀝していましたが、会議録から受ける印象では、この時の鈴木氏は「切れて」しまっていた気配が濃厚ですけどね。

 残る3項目については、「小委員会昭和21年7月31日(第6回)」会議録から該当部分の発言を引用しておきます。

〇国家賠償請求権
(引用開始)
鈴木(義)委員 略々サウ云フコトハ承知致シテ居リマス、唯日本国民ハオ上ノヤツタコトニ対シテ訴ヘヲ起スナドト云フコトハ出来ルコトデハナイ、サウ云フコトハ不届千万デアルト云フ観念ガアリマシテ、現在行政裁判法ト云フモノガアツテモ、成タケ利用シナイ、況シテヤ憲法ノ上デ普通裁判所ガ行政訴訟ヲ扱フコトニ今度ハナルノデ、行政訴訟其ノモノヲ抹殺シテ居ル訳デハナイノデス
芦田委員長 サウヂヤナイノデスネ
鈴木(義)委員 行政裁判所ト云フ特別ノ裁判所ヲ設ケナイト云フコトデ、サウ云フ訴ヘヲ起スコトハ出来ルノダゾト云フコトヲ国民ニ理解サセテ置クコトハ、国民ノ権利保障ノ上ニ非常ニ大事ナコトデアリマス、ソレハ条文ノ解釈デ行ケバ、二十九条ニ「何人も、裁判所において裁判を受ける權利を奪はれない」トアルノデ、当然予定サレテ居ル所デハアリマスガ、是ダケデハ迚モ日本国民ニハ分ラヌ、行政訴訟モ起スコトガ出来ルゾト云フコトヲ念ノ為メ規定シテ置ク方ガ宜シイ、斯ウ云フ趣旨カラ来テ居リマス
(引用終わり)

〇刑事補償請求権
(引用開始)
鈴木(義)委員 私共ノ考ヘハ、出来ルダケ立法ノ省略ト云フコトヲ致シタイノデスケレドモ、冤罪者賠償ノ方ハ公法上ノ不法行為ト言ハレ得ナイ、正当ナル行為ニ依ツテヤラレル裁判官ガ、正シイ裁判ヲシタ積リデ、又客観的ニ見テモソレハ正当行為、ソレニ対シテ賠償ヲ払フノデスカラ……
○芦田委員長 御趣意ハ能ク分ルノデス、ソコデ例ヘバ――是ハ私限リノ私案デスガ、後ノ方ノ条項ノ「何人も公務員の公法上の不法行爲」ト云フ所ヘ「行爲竝びに冤罪者」、一寸ソコヘ付ケテハ工合ガ悪イカモ知レナイガ、何カ冤罪ニ対シテ賠償ヲ求メルコトガ出来ル、斯ウ云フ風ニ……
○鈴木(義)委員 裁判ノ誤判ニ対シテトシタラドウデスカ、尤モ誤判ト云ツテモヲカシイ、誤判ニアラザル裁判ナシダカラ……
○佐藤(達)政府委員 今ノ二ツヲ一本ニスルト云フ其ノ点ハ一応努力シテモ宜イト思ヒマスケレドモ、唯一寸鈴木サンノ仰シヤイマシタヤウニ、片方ハ一応正当ナ行為トシテナサレタモノニ付テデスカラ、言葉モ補償ト云フ言葉ニナル、モウ一ツハ不法行為デスカラ賠償ト云フ言葉ヲ使ハナケレバナラヌ、サウ云フ点ノ文字ヲ使ヒ分ケナケレバナラヌト云フコトガ出テ来マスカラ、一ツノ書流シニスルコトガ出来ルカドウカ
(引用終わり)

〇三権分立(司法権の地位向上)
(引用開始)
鈴木(義)委員 三権分立ノ建前カラ言ヒマシテモ、又実際上カラ見マシテモ、最高裁判所ノ長官ノ地位ト云フモノハ、此ノ憲法ニ於テハ将来非常ニ重大ナ意味ヲ持ツ、又持タスベキデアルト私共ハ見テ居ル、従来ノ憲法上デモ、大審院長ヤソレ以下ノ裁判官ト云フモノガ不当ニ低イ地位ニ置カレタ、ソレガ一ツハ裁判ト云フモノニ権威ヲ持タセナカツタ理由デ、此ノ憲法ノ建前カラ見テモ、是非トモ此ノ最高裁判所長官ハ内閣総理大臣ト対等ノ地位ニ置ク、サウシテ法律、政令ガ憲法ニ違反スルヤ否ヤト云フコトマデ審査スル権限ヲ持ツモノデスカラ、実際上対等ノ地位ニアルコトハ疑ヒナイト思フ、ソレ位ナラバ最高裁判所長官ハ内閣総理大臣ト同ジ任命形式ヲ執ル、是ガ天皇ト云フモノノナイ国ナラバ別ダケレドモ、日本ハ天皇ガアルノダカラ、内閣総理大臣ガ天皇ニ依ツテ任命サレルモノナラ、最高裁判所長官モ天皇ニ依ツテ任命サレルト云フコトガ正ニアルベキ姿デハナイカ、ソレニ依ツテ此ノ裁判官ノ地位ト云フモノガ非常ニ権威付ケラレル、又権威付ケルコトガ必要デアルト考ヘルカラ、斯ウ云フ提案ヲスル訳デス
(引用終わり)

 以上で、“HAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama 2020”の代わりに“STAY HOME”しながらブログを書く作業を一段落としようと思います。
 このブログを読んでくれる人が果たしてどれほどいるのか、まことに心許ない次第ですが、私自身の憲法記念日の過ごし方としては、非常に充実していたと思います。

 鈴木義男氏は、もちろん日本社会党を代表して小委員会委員となり、党の考え方を背景としながら意見を述べているのですが、それでも、それまでに学者、弁護士として培った経験に裏打ちされた信念をもって、憲法の制定(形式上は「改正」)という一大国家事業に全身全霊を傾けて力を尽くしたことが、会議録の端々からうかがえます。
  それは、法学を学んだ者にとって、望んでも得られない貴重な機会だったでしょうし、他面から見れば、この時期、日本社会党に鈴木義男氏のような優れた議員が在籍していたことは(福島県民によって選出されていた)、日本にとって実に幸運だったと言うべきでしょう。

 他方、司法権の地位向上のために奮闘した鈴木義男氏の郷里のはるかな後輩である森雅子法務大臣が、今年に入ってから国会で繰り返した答弁の数々が、後世どのような歴史の審判を受けるか、誰しも予想はつくと思いますが、その言行を決して忘れぬようにしたいものです。

 なお、ETV特集「義男(ぎだん)さんと憲法誕生」は、5月6日(水)深夜24時00分から再放送されますので、是非多くの方に視聴していただきたいと思います。

(弁護士・金原徹雄のブログから~東京高等検察庁検事長定年延長問題)
2020年2月8日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について~法律の規定は読み間違えようがない 
2020年2月11日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(2)~政府の解釈はこういうことだろうか? 
2020年2月16日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(3)~論点は出そろった(渡辺輝人氏、園田寿氏、海渡雄一氏の論考を読んで) 
2020年2月22日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(4)~「国家的悲劇」を象徴する痛ましい姿(小田嶋隆さんのコラムを読む) 
2020年2月23日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(5)~立憲デモクラシーの会の声明と文理解釈再び 
2020年3月4日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(6)~静岡県弁護士会「黒川弘務東京高検検事長の定年延長に強い懸念を表明する会長声明」を読む 
2020年3月6日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(7)~法律家9団体共同声明を読む 
2020年3月15日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(8)~「違法」だからこそ辻褄が合わなくなる 
2020年3月28日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(9)~全国の弁護士会から出された会長声明のご紹介(3/27まで) 
2020年4月18日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(9)の2~全国の弁護士会から出された会長声明のご紹介・補訂版(4/17まで) 
2020年4月29日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(9)の3~全国の弁護士会から出された会長声明のご紹介・三訂版(4/28まで) 
2020年5月2日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について・番外編~福島県出身の弁護士・法務大臣(司法大臣・法務総裁)の身の処し方を思う 

(付録)
ヒポポフォークゲリラ 『世界』 作詞作曲:ヒポポ田

東京高等検察庁検事長定年延長問題について・番外編~福島県出身の弁護士・法務大臣(司法大臣・法務総裁)の身の処し方を思う

 202052日配信(予定)のメルマガ金原No.3462を転載します。

東京高等検察庁検事長定年延長問題について・番外編~福島県出身の弁護士・法務大臣(司法大臣・法務総裁)の身の処し方を思う

 常に興味深いドキュメンタリー番組を送り出してくれる地上波の放送枠として、民放のNNNドキュメント、テレメンタリー、MBS映像などと並び、NHK・EテレのETV特集には常に注目してきました。私がNHKに受信料を支払っている小さくない理由の1つがETV特集の存在にあるのは間違いありません。
 最近でも、先月(4月)、「緊急対談 パンデミックが変える世界」シリーズを3回放送して話題を集めました。
  ①4月4日「歴史から何を学ぶか」 
  ②4月11日「海外の知性が語る展望」 
  ③4月25日「ユヴァル・ノア・ハラリとの60分」 
 以上の3本は、連休中にBS1で再放送されますので(いずれも10:00~11:00)、見逃した方にお薦めです。
  5月4日(月)「歴史から何を学ぶか」 
  5月5日(火)「海外の知性が語る展望」 
  5月6日(水)「ユヴァル・ノア・ハラリとの60分」 
 なお、①と②は、今日の午後地上波で再放送されたのですが、ご紹介が間に合いませんでした。好評であれば、今後も地方波での再放送があるかもしれません。

 ところで、ETV特集のレギュラー放送枠は毎週土曜日の午後11時00分~12時00分なのですが、今晩初回放送される番組も、是非視聴したいと思っています。

本放送 2020年5月2日(土)午後11時00分~12時00分
再放送 2020年5月7日(木)午前0時00分~1時00分(6日深夜) 
ETV特集「義男さんと憲法誕生」 
(番組案内)
「日本国憲法の制定にかかわった人物の再評価が始まっている。ギダンさんの愛称で親しまれた福島県の法学者・鈴木義男(すずきよしお)。東北大の教授時代、軍事教練に反対して教壇を追われた義男さん。弁護士となり治安維持法違反者の弁護に尽力。敗戦後、衆議院議員になると9条の平和主義や25条の生存権だけでなく国家賠償請求権や刑事補償請求権の追加を求め、三権分立の確立を目指す。その波乱の生涯を新資料をもとに描く。」

 まことに恥ずかしながら、私は鈴木義男という方のことを全然存じ上げませんでしたので、そのアウトラインなり知ろうと思いWikipediaを参照しました。

(引用開始)
 1894年(明治27年)117日に福島県白河市で生まれる。東京帝国大学を卒業後に学者(教授)となり、東京女子大学教授・東北帝国大学教授・法政大学教授を歴任する。退職後は弁護士業を開業して、帝国弁護士会理事となった。
 第二次世界大戦後、日本社会党の結成に関わり憲法草案の作成に関与。また、海野晋吉・尾崎行雄らの憲法懇話会にも関わって、ここでも憲法草案作成に携わる。1946年衆議院選挙で福島全県区に日本社会党より出馬、初当選。中選挙区制では福島2区に転じ、衆議院議員7期(所属政党は日本社会党→社会党右派→日本社会党→民主社会党)。この間、1947年(昭和22年)から1948年(昭和23年)まで片山内閣・芦田内閣で司法大臣・法務総裁を務めた。日本国憲法第25条の生存権規定成立には、鈴木義男の果たした役割が大きかったことが最近の研究で指摘されている。194681日、帝国憲法改正案小委員会の第7回審議において、「それならば生存権は最も重要な人権です」という鈴木の気迫のこもった一言で、委員会の流れが生存権承認の方向に変わった。その後、専修大学学長・東北学院院長にもなった。
(引用終わり)

 以上を読み、もう少し詳しく知りたくなりました。
 まず、片山哲内閣、芦田均内閣で相次いで閣僚(司法大臣・法務総裁)に就任したとのことなので、その就任期間を調べてみました(こういうい時はWikipedia「法務大臣」の項を見るとすぐ分かります)。
 片山哲内閣 1947年6月1日~ 司法大臣
 片山哲内閣 1948年2月15日~ 法務総裁
 芦田均内閣 1948年3月10日~ 法務総裁(同年10月、第2次吉田茂内閣成立により辞任)
 なお、法務総裁というのは、司法省などを改組して出来た法務庁(後に法務府)の長官で国務大臣を充てることになっており、米国の司法長官をモデルにしたものらしいのですが、その後(1952年)、内閣法制局が分離され、現在の法務省となりました。

 Wikipediaで紹介されている「194681日、帝国憲法改正案小委員会の第7回審議」での発言は、衆議院憲法審査会ホームページ」関係会議録」小委員会 昭和2181日(第7回)」で確認することができます。

 この日の審議では、まず「前文」に続き、第2章(第9条)についての芦田均委員長による修正案(いわゆる「芦田修正」)が細かく検討されており、現在の9条の文言が確定していった経緯(の最終段階)を読むことができます。
 それに続いて第3章についての審議が始まり、社会党の森戸辰男議員(憲法研究会のメンバーですね)が独自の具体的な生存権規定の必要性を強調するのに対し、芦田委員長の消極的意見が対立します。社会党の修正意見に対し、委員から無理解な否定的意見が出ると、鈴木義男議員はついに我慢できなくなったのか、以下のような発言を行いました(何カ所か抜粋します)。

(引用開始)
ソレナラバ打切リニ願ヒタイノデス、原委員ノ御意見カラ言ヘバ、婚姻ハ両性ノ合意デヤルトカ、相続ハドウスル、住居ノ選定ハドウスル、令状ヲ持ツテ来ナケレバ縛レナイ、コンナコトハ皆刑事訴訟法ヤ民法ニ規定スベキモノデ、何ノ必要ガアツテ此処ニ規定シタモノカ分ラヌ
(略)
ソレナラバ生存権ハ最モ重要ナ人権デス、結局十九世紀マデノ憲法ノ体裁ダト御考ヘニナルカ、二十世紀ニナツテカラ出来テ居ル各国ノ憲法ノヤウナ憲法ヲ作ルコトガ差支ヘナイカト云フコトニ帰着スルノデス、「フランス」ノ憲法デモ、「ソ」連ノ憲法デモ、労働者ノ権利トカ色々ナコトヲモツト詳シク書イテアリマスヨ
(略)
「アメリカ」ノ憲法ニ書イテアルコトナラ黙ツテ通スガ、「フランス」ヤ「ソ」連ヤ「ドイツ」ノ憲法ニ書イテアルノハ通サナイト云フヤウナ意見ガ非常ニ強イノデ、我々心外ニ思ツテ居ルノデス
(略)
其ノ講義ハ宜シウゴザイマス……、結局立場ガ違ツテ居ルノデ、解決出来ナケレバ討論ヲ打切ツテ他ノ判断ニ委ネルヨリ外ナイ、デスカラソンナコトヲ言フノハヤメマセウ
(引用終わり)

 鈴木議員の剣幕に恐れをなしたのか(?)、社会党の修正案を容認する雰囲気が出てきた後は、森戸議員が主になってとりまとめていった様子がうかがえます。巧まざる連携プレーというべきでしょうか。

 ETV特集の番組案内で言及された「国家賠償請求権や刑事補償請求権の追加を求め、三権分立の確立を目指す。」という部分も、おそらくこれらの会議録を子細に読み込めばその足跡をたどることができると思うのですが、今はそこまでの時間的余裕がありません。

 ただ、何の気なしに、上にご紹介した昭和21年8月1日の第7回小委員会に先立つこと2日前の7月30日(第5回)の小委員会会議録を流し読みしていたところ、日本社会党は、高等教育無償化に道を開く規定を憲法に盛り込むべく提案していたことが分かりました(結局、義務教育無償化だけが書かれることになりましたが)。

小委員会 昭和21730日(第5回) 
(引用開始)
〇芦田委員長 二十四条ニ付テハ、(略)社会党ノ修正案ハ、御覧ノ通リニ社会党ノ提案五枚目ノ裏ノ「才能あつて資力なき青年の高等教育は國費を以てする」ト云フコトト、「教育の根本方針はこの憲法の精神による」ト云フ二ツノ案ダト諒解シマスガ、ソレニ付テ御意見ヲ伺ヒタイト思ヒマス、第二十四条ノ第四項ニ挿入スベキ資力ノナイ青年ノ高等教育ヲ国費デヤラセル、此ノ条項ハ如何デスカ
○江藤委員 是ハ大学マデ全部含ムノデスカ
○鈴木(義)委員 エエ大学マデデス、是ト同ジ条文ガ「フランス」ノ今度ノ人民戦線ノ憲法ニアルノデス
○犬養委員 是ハ寧ロ鈴木サンニ伺フノデスガ、私トシテハ多年ノ念願デアツテ、非常ニ望ムコトナンデス、ガ実際問題トシテ大体ドノ位ノ幅ノ形デ大事ナ青年ヲ教育スルトカ何トカ、凡ソノ枠ヲ持ツテ居ラレマスカ、更ニ経費ノ予想トカ……
○鈴木(義)委員 今具体的ニハ持ツテ居リマセヌガ、結局ハ国家財政ト相談シテヤラナケレバナリマセヌ、憲法トシテハ此ノ原則ヲ先ヅ置イテ、実行シ得ル限リ段々拡大シテ行ク、文部大臣モ趣旨ハ賛成ダ、今ノ育英会ト云フヤウナモノヲ土台ニシテ段々ト拡大強化シテ行クト云フコトヲ答弁サレテ居リマスガ、サウ云フ方針デ行キタイト思ツテ居リマス
(引用終わり)

 制憲議会(第90回帝国議会)における議論の経過を会議録でたどるのはまことに興味深く、意義あることですが、この程度にとどめます。

 ところで、私がETV特集の番組案内に触発され、どうしてここまで鈴木義男氏のことを調べる気になったか、お分かりになりますか?
 それは、同氏が福島県出身で、弁護士から国会議員となり、さらに司法大臣・法務総裁(後の法務大臣に相当)まで努めた方であることを知ったからです。
 そう、現在の法務大臣である森雅子氏も、福島県(いわき市)の出身。東北大学法学部を経て弁護士となり、2007年から参議院議員。2019年10月31日、河合克行前大臣の辞任に伴い後任として法務大臣に就任という経歴の持ち主です。
 福島県出身⇒弁護士⇒国会議員⇒法務大臣という経歴の人が他にいるとも思えず、森法相にとって、鈴木義男氏は尊敬すべき郷土の先輩なのです(と主観的に思っているかどうかは別として)。

 黒川弘務東京高検検事長の定年延長問題から、その違法性を糊塗・上塗りしようとする検察庁法「改正」問題に至るまで、法による支配、三権分立などの憲法を支える基本原則を掘り崩す大罪を率先して犯さねばならない立場になった森法相に対し、いささかの同情の念を覚えないではありません。
 就任早々に妻の参院選にからむ公選法違反の疑惑を報じられて辞任するような者が法務大臣に任命されていなければ、森氏も歴史に拭いきれない汚名を残すようなことにはならなかったのに、ということなのですが、結局は、自らの地位を捨ててでも守るべきものがあるという倫理観と決断力の欠如が全てということです。

 検察庁法「改正」案を含む国家公務員法等改正案が連休明けにも成立か?と懸念される今、福島県出身で、日本国憲法制定時に、日本の将来のためにより良い憲法にしようと力を尽くした鈴木義男氏を取り上げる番組が放送されることは、意義深いと思う一方、何という皮肉か、とため息をつかざるを得ません。

 なお、今晩(5月2日)11時からの放送までにこのブログを読んでくださる方は少ないかもしれませんが、5月6日(水)深夜24時からの再放送もありますので、是非多くの方に視聴していただきたいと思います。

(弁護士・金原徹雄のブログから~東京高等検察庁検事長定年延長問題)
2020年2月8日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について~法律の規定は読み間違えようがない 
2020年2月11日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(2)~政府の解釈はこういうことだろうか? 
2020年2月16日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(3)~論点は出そろった(渡辺輝人氏、園田寿氏、海渡雄一氏の論考を読んで) 
2020年2月22日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(4)~「国家的悲劇」を象徴する痛ましい姿(小田嶋隆さんのコラムを読む) 
2020年2月23日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(5)~立憲デモクラシーの会の声明と文理解釈再び 
2020年3月4日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(6)~静岡県弁護士会「黒川弘務東京高検検事長の定年延長に強い懸念を表明する会長声明」を読む 
2020年3月6日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(7)~法律家9団体共同声明を読む 
2020年3月15日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(8)~「違法」だからこそ辻褄が合わなくなる 
2020年3月28日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(9)~全国の弁護士会から出された会長声明のご紹介(3/27まで) 
2020年4月18日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(9)の2~全国の弁護士会から出された会長声明のご紹介・補訂版(4/17まで) 
2020年4月29日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(9)の3~全国の弁護士会から出された会長声明のご紹介・三訂版(4/28まで) 

(付録)
中川五郎 『ピーター・ノーマンを知っているかい』 作詞作曲:中川五郎 イットクフェス2018

参考
弁護士・金原徹雄のブログから
2018年10月10日 
中川五郎さんの『ピーター・ノーマンを知っているかい?』を聴いて考える~自分もピーターになれるだろうか?


2020年のゴールデンウイークに自宅で読む本~読めるかな?

 2020430日配信(予定)のメルマガ金原No.3461を転載します。

2020年のゴールデンウイークに自宅で読む本~読めるかな?

 4月7日に東京、大阪など7都府県を対象に発令された緊急事態宣言(新型インフルエンザ等対策特別措置法第32条に基づく)が同月16日に全国に拡大されてから2週間、最も長いところでは、4月25日(土)から5月10日(日)までの16連休に入っている事業所もあるようですが、コロナ問題発生前には暦通りの営業を予定していた事業所でも、今日(4/30)・明日(5/1)の2日間を休みとして、4月29日から5月6日までの8連休としたところも多いのではないでしょうか。

 昨年は、天皇家代替わりということで特別に10連休となりましたが、今年は全く想定外の新型コロナウイルス感染症対策のために、思わぬ長期休暇ということになってしまいました。
 もちろん、医療関係者、保健所等感染症対策の最前線を担う機関で働く人々の他、生活必需物資の製造、販売、物流に携わる方など、大型連休どころではないという多くの皆様がおられることは決して忘れてはならないことです。

 とにかく、極力対人接触を避けるのが至上命題ということなので、行楽地に出かける訳にもいかず、好むと好まざるとにかかわらず、誰もが自宅で長い時間を過ごすことになるはずの今年のゴールデンウイークです。

 そもそも、ゴールデンウイークという言葉自体、日本の映画業界が編み出した宣伝用の和製英語だそうですが、その肝心の映画を観るための映画館が全国的にほぼ休館状態となっており、否応なく自宅での鑑賞を余儀なくされます。
 コロナ禍とは関係なく、普段からの延長でTV放映(地上派、BSなどを含む)やネット配信、レンタルビデオなどで映画を楽しむことができるのは当然ですが、休業を余儀なくされて経済的に苦境にある全国のミニシアターにも参加してもらい、映画館、配給、製作の当事者に「金が回るシステム」を構築するための「仮設の映画館」という試みがスタートしており、早速私も、ドキュメンタリー映画『春を告げる町』(島田隆一監督)を鑑賞したということは、このブログでご報告したとおりです(「仮設の映画館」がオープンしました!~まずは『春を告げる町』(島田隆一監督)を鑑賞/2020年4月26日)。
 このシステムの提唱者である想田和弘監督の新作『精神0』も、明後日5月2日から「仮設の映画館」での上映が始まりますので、私も出来れば5月6日までの間に時間を見つけ、鑑賞したいと思っています。

 ところで、本稿は、「これから読もう(出来ればゴールデンウイーク中に)」と思っている本のご紹介です。
 私は、これまで、自分が読んだ本の感想をブログに書き留めることもしてきましたが(数は多くありません)、「これから読む本」の紹介(というか、「読むつもりで買ってきた本」の紹介)を書いたことも、思い出す限りで2回あります。それぞれどんな本を紹介したかというと、

2016年6月27日 
文庫本を3冊買った、みんな素晴らしい本に違いない~『立憲非立憲』『音楽入門』『山之口貘詩集』 
(購入した本)
佐々木惣一 著 『立憲非立憲』(講談社学術文庫)
伊福部 昭 著 『音楽入門』(角川ソフィア文庫)
高良勉 編 『山之口貘詩集』(岩波文庫)

2018年4月25日 
「憲法」についての新書を2冊買った、これから読むけどお薦めします~『五日市憲法』『広告が憲法を殺す日 国民投票とプロパガンダCM』 
(購入した本)
本間龍・南部義典 著 『広告が憲法を殺す日 国民投票とプロパガンダCM』(集英社新書)
新井勝紘 著 『五日市憲法』(岩波新書)

 それで、上記5冊は「全部読んだのか?」という質問への答えは、まあ言わぬが花ということにしておきましょう。

 ところで、当初の私のゴールデンウイーク読書計画(?)では、新しく購入するのではなく、既に購入済みだがまだ読んでいな本を考えており、4月27日の昼休みにはFacebook以下のような投稿をしていました。

(引用開始)
連休中に旅行するのもはばかられるし、自宅で読書でもと考えておられる方も多いことでしょう。私も、未読の本なら自宅にいくらでもある(あり過ぎる)ので「どれにしようか」と目移りがします。漱石全集(岩波の一つ前の版)のうち、まだ読んだことのない巻にするか(『文学論』&『文学評論』など?)、あるいはダニエル・キイスの一連の小説も悪くないとか色々考えますが、今のご時世、みんなが読み始めたという『ペスト』(カミュ)を引っ張り出すか(昔読んだか、買っただけか記憶があやふや)、それともヨーロッパの古典『デカメロン』(ボッカッチョ)にするかとも考えています。14世紀に書かれた『デカメロン』については、ちくま文庫(全3巻 柏熊達生訳)で買って、全然読んでいなかったのですが、数年前に受講した放送大学の講義の中で取り上げられたのを機に冒頭の2~3話(全部で100話ある)を読んだことがあるだけです。西洋の艶笑物語集とだけ捉えられがちな『デカメロン』が、「1348年に大流行したペストから逃れるためフィレンツェ郊外に引きこもった男3人、女7人の10人が退屈しのぎの話をするという趣向」という枠組みであることはその時知りましたが、この状況から考えれば、今が『デカメロン』を読むのに最も相応しい時期なのかもしれません。
Wikipedia「デカメロン」

(引用終わり)

 そこで、5月6日までの休みを利用して、『デカメロン』を読むことを考えていたのですが、昨日(4/29)、ある雑誌を求めて大型書店を訪れたついでに、文庫本の新刊コーナーに立ち寄ったところ、どうしても買いたい本が3種類見つかり、全部購入してしまいました。これにより、『デカメロン』読書計画は頓挫し、以下の本(冊数では4冊)がこのゴールデンウイーク中に読破すべき目標となりました。
 早速、版元のホームページから内容紹介の文章を引用してみましょう。

ルース・ベネディクト著/岡部大樹 訳 『レイシズム』 
講談社学術文庫 2020年4月8日 第1刷発行 920円(+税)
「日本人論の「古典」として読み継がれる『菊と刀』の著者で、アメリカの文化人類学者、ルース・ベネディクトが、1940年に発表し、今もロングセラーとなっている RACE AND RACISMの新訳。

ヨーロッパではナチスが台頭し、ファシズムが世界に吹き荒れる中で、「人種とは何か」「レイシズム(人種主義)には根拠はあるのか」と鋭く問いかけ、その迷妄を明らかにしていく。「レイシズム」という語は、本書によって広く知られ、現代まで使われるようになった。
「白人」「黒人」「黄色人種」といった「人種」にとどまらず、国家や言語、宗教など、出生地や遺伝、さらに文化による「人間のまとまり」にも優劣があるかのように宣伝するレイシストたちの言説を、一つ一つ論破してみせる本書は、70年以上を経た現在の私たちへの警鐘にもなっている。
訳者は、今年30歳の精神科医で、自らの診療体験などから本書の価値を再発見し、現代の読者に広く読まれるよう、平易な言葉で新たに訳し下ろした。グローバル化が急速に進み、社会の断絶と不寛容がますます深刻になりつつある現在、あらためて読みなおすべきベネディクトの代表作。」

レイシズム (講談社学術文庫)
ルース・ベネディクト
講談社
2020-04-10


浅見雅男 著 『もうひとつの天皇家 伏見宮』
 
ちくま文庫 2020年4月10日 第1刷発行 1200円(+税)
「第二次世界大戦後、皇籍を離脱した11の宮家――。その全ての源流となった伏見宮家とは、一体どのような存在だったのか?どのようにして誕生したのか?皇位継承問題で揺れる昨今。「旧宮家の復活」を求める声も聴こえてくるが、消滅に至るまでの歴史や事実を知らぬまま、易々と論じることはできないはずだ。南北朝時代にまでさかのぼる伏見宮の始まりから、明治・大正・昭和天皇との関係性までを網羅した、天皇・皇室研究に必携の一冊。」(ホームページの紹介文が簡単過ぎたので、文庫本のカバー裏記載の文章を転記しました)
※単行本は2012年刊行(講談社)。



ジョン・ロールズ 著/サミュエル・フリーマン編/齋藤純一・佐藤正志・山岡龍一・谷澤正嗣・髙山裕二・小田川大典 訳 
『ロールズ 政治哲学史講義Ⅰ』
 
岩波現代文庫 2020年4月16日 第1刷発行 1880円(+税)


ジョン・ロールズ 著/サミュエル・フリーマン編/齋藤純一・佐藤正志・山岡龍一・谷澤正嗣・髙山裕二・小田川大典 訳

『ロールズ 政治哲学史講義Ⅱ』 

岩波現代文庫 2020年4月16日 第1刷発行 1820円(+税)

ロールズ政治哲学史講義 II (岩波現代文庫)
ジョン・ロールズ
岩波書店
2020-04-17

「ロールズが退職するまで三十年間ハーバード大学で行った「近代政治哲学」講座の講義録。自らの〈公正としての正義〉という構想に照らして、リベラリズムの伝統をつくった八人の理論家(ホッブズ、ロック、ヒューム、ルソー、ミル、マルクス、シジウィック、バトラー)を取り上げて解説する。『正義論』読解に不可欠の書。」

 『レイシズム』と『もうひとつの天皇家 伏見宮』については、ネット情報で刊行されたこと自体は知っており、そのテーマに興味を引かれていたのですが、昨日実際に手に取ってみて購入を決意しました。やはり、全てをネット通販でという訳にはいきませんよね。
 『ロールズ 政治哲学史講義』は、2011年に岩波書店から単行本が刊行された際に書店で手に取り、購入するかどうか相当に迷ったのですが、買っても積んだままになりそうであり、値段も高かったので結局断念したものでした。それが9年経って文庫化され、衝動的に買ってしまいました。一つには、先月、同じく岩波現代文庫から刊行されたロールズの『公正としての正義  再説』を買ったばかりだった(まだ序文しか読んでいないけれど)からということもあります。
 ロールズの主著『正義論』はまだ未購入ですが、まずはその周辺の講義録から読んでいければと思って購入しました。けれども、2冊合計で1000ページ近くもあり、ゴールデンウイーク中に読めるだろうか?・・・多分難しいでしょうね。


(付録)
よしだよしこ『She said NO !』(よしだよしこ DVD 2016 Season I より)
作詞作曲:よしだよしこ

※現代リベラリズムの代表的論者であるジョン・ロールズ(1921~2002)を読もうというブログの(付録)としては、ローザ・パークスを歌ったよしだよしこさんのこの曲が相応しいと思いました。
※よしだよしこさんの「オリジナル・エコバッグ」(1500円+税)が好評発売中です。私も公式サイトの通販「注文フォーム」から申し込んで入手しました。素敵なデザインで縫製もしっかりしていますよ。今年の7月からはレジ袋が有料化されますので、是非お買い求めください。 
CDやDVDもご一緒に。私のお薦めは、『「She said NO!」フツウノコトバたち』が売り切れなので、やはり『笑って唄って』(CD/2500円)かな。歌詞カードは付いていませんが、ホームページからダウンロードできます。

東京高等検察庁検事長定年延長問題について(9)の3~全国の弁護士会から出された会長声明のご紹介・三訂版(4/28まで)

 2020429日配信(予定)のメルマガ金原No.3460を転載します。

東京高等検察庁検事長定年延長問題について(9)の3~全国の弁護士会から出された会長声明のご紹介・三訂版(4/28まで)

 私のブログに不定期連載(?)してきた「東京高等検察庁検事長定年延長問題について」の(6)において、全国の弁護士会の先陣を切った静岡県弁護士会による「黒川弘務東京高検検事長の定年延長に強い懸念を表明する会長声明」をご紹介しました。
 同会は、最初の声明ということもあってか、「黒川弘務氏の定年延長を閣議決定したことは,検察庁法に違反する疑いが強い。」ので「ここに強い懸念を表明する。」という表現にとどまっていました。

 そして、静岡に続いて3月5日に会長声明を出した京都弁護士会は、「検察庁法に違反する定年延長をした閣議決定に抗議し、撤回を求める会長声明」という表題から明らかなように、躊躇なく「違法」と断じており、その後に出た各地弁護士会の会長声明も、私の見た範囲では、全て「違法」であると主張していました。

 しかしながら、まだどこの弁護士会も声明を出していない段階で、会長声明の発出に踏み切った静岡県弁護士会の先見性は明らかである上に、その緻密な論証は、今なおこれまで出された各種声明(弁護士会以外の団体からのものも含めて)の中で、最高レベルの説得力を備えていると私は考えています。
 もちろん、後に続いた多くの弁護士会の声明も、個々に独自の論点に言及したり、力点の置き所を工夫するなど、それぞれ読み応えのある声明が多いことは言うまでもありません。

 また、内閣が3月13日に国会に提出した束ね法案「国家公務員法等の一部を改正する法律案」中の検察庁法「改正」案に断固反対することを併せて主張する声明も、増えつつありますし、いったん東京高検検事長定年延長に抗議する会長声明を発出した会でも、あらためて国公法等改正案中の検察庁法「改正」に反対する会長声明を出すところも出てきています。

 そのような中、私も登録している法律家団体のメーリングリストに福井弁護士会の島田広弁護士から、3月27日までに検事長定年延長に(会によっては検察庁法「改正」案にも)反対する会長声明を出している弁護士会が(ホームページで確認できたところだけですが)、全国52会の内17会に達しており、全国に8会あるブロック連合会の内、1会(東北弁護士会連合会)も同様の声明を出している旨、一覧リンク付きで投稿があり、これに触発され、私自身も、島田先生の投稿を少し手直しして(地域順ではなく日付順にした)、これまでに会長声明を発出した弁護士会一覧を「東京高等検察庁検事長定年延長問題について(9)」としてご紹介しました。

 けれども、その後も会長声明を出す弁護士会が増え、4月28日現在、会長声明をホームページで公開した単位会は34会に達した上(ほぼ2/3に到達)、4月6日には、新会長(荒中-あら・ただし-会長)就任早々、日本弁護士連合会が待望の会長声明を出しました。

 上にもご紹介した島田広弁護士は、まず3月28日に「法務省が法無省になる日」というFacebookページを立ち上げられ、多くの人にこの問題を訴えるための情報発信に努めておられますが、4月16日には、同じタイトルのホームページも開設されました。
 島田先生がその立ち上げにあたって表明された「思い」は、心ある全ての法曹が共有するものだと思いますので、全文引用します。

(引用開始)
私も法律家の端くれである。
ホントの端くれ,吹けば飛ぶような端くれだが。

それでも法律家である以上,検察官にもたくさん知人・友人がいるし,彼らがこのページを目にしたときの気持ちを想像するに,少々つらいものはある。

しかし,どうしてもこの不正義は放置できない。
いま,私たち法律家の目の前に展開されているのは,法治国家としてのこの国の根幹を揺るがす重大事態である。
法の支配の崩壊の危機である。

政権によって,司法の重要な一翼を担う検察の人事が勝手にいじられる。
検察のトップが政権の都合のよい人によって占められる。
そんなことで,検察が正義を守れるわけがない。
政権の中枢に迫る,重大汚職事件や政権の様々な不正に,正義のメスを入れられるはずがない。

端くれである私の力など,本当に吹けば飛ぶようなものに過ぎないけれど,それでも,絶対に,この政権による検察支配は許せない。
それを止めるために,端くれなりにできることをしたい。

それが,検察に対する,司法に対する,市民の信頼を守る道なのだ。
私たち法律家は,法と正義のためにたたかうんだと,市民に信じてもらいたいのだ。

法務省が法無省になる日,それは,政権が法を曲げて勤務延長した1人の検察官が,検察のトップになる日だ。
そのディストピアだけは,何としても避けなければならない。
(引用終わり)

 さらに、4月22日には、上記の島田広弁護士を事務局長とする「法の支配を憂う弁護士の会」が立ち上げられ、「検事長勤務延長閣議決定の撤回を求め,検察官の勤務延長制度導入に反対する弁護士共同アピール」への賛同を全国の弁護士に呼びかける運動がスタートし、1週間後の4月28日の時点で賛同した弁護士は1,000人を超え(呼びかけ人を含む)、さらに賛同の輪を広げるべく呼びかけが強化されています。

 先に述べたとおり、昨日(4月28日)現在、「法務省が法無省になる日」サイト調べによれば、全国52の弁護士会のうち、約2/3にあたる34会が、検事長の定年延長を決定した閣議決定の撤回を求め、あるいはその違法を上塗りする検察庁法「改正」に反対する会長声明を出しました。この34会(約2/3)が声明を出したということは、(業界的には)驚異的な数字なのです。
 これまでも、日本弁護士連合会が主唱して全国の弁護士会に声明を出すなり何らかのアピールをするように呼びかけたテーマはいくつもありました(共謀罪反対とか)。そのようなテーマであれば、全国の大半の弁護士会が同種の会長声明を出すことも珍しくありません。
 しかし、今回は違います。当初、日弁連からは全くこの問題についての意見が出て来ず、多くの会員がもどかしい思いをしたものです。日弁連の会長は2年任期であり、激戦の会長選挙を勝ち抜いた荒中(あら・ただし)新会長が4月1日に就任してまもない同月6日、ようやく日弁連からも会長声明が出てほっとしたという状況です。
 日弁連から会長声明が出るまでの間に、3月2日の静岡県弁護士会をトップランナーとして、全国23の弁護士会(及び1ブロック連合会)が会長声明を公表していました。
 1番目の静岡県弁護士会から34番目の鳥取県弁護士会まで、日弁連が音頭を取った訳でも何でもなく、各地弁護士会の執行部、憲法委員会、常議員会、一般会員などが「この問題を見過ごすことは絶対にできない」と自ら決断して出した会長声明の積み重ねが2/3に到達したということなのです。
 全国の法曹(現役の裁判官や検察官で声を出している人は私の知る限り各1人ですが、心ある裁判官や検察官は全て各地の弁護士会が表明する意見に賛同してくれていると信じます)がこの検察官定年延長問題に対して抱く危機感を是非理解していただければと思います。

 以下、これまでに公表された弁護士会の会長声明にリンクします。
 もちろん、会長声明は既に出しているけれどホームページへの掲載がまだというところがあるかもしれませんし、既にホームページに掲載されているものが漏れている可能性もないとはいえませんので、悪しからずご了承ください。

 なお、巻末に掲載した白地図は「法務省が法無省になる日」サイトのものを転載させていただきました。若干補足説明すると、
〇北海道には札幌、函館、釧路、旭川という4つの地方裁判所に対応して4つの弁護士会がありますが、そのうち会長声明を出しているのは旭川弁護士会だけです。北海道全体が緑となっているのは、白地図アプリの性能不足(?)によるそうです。
〇東京には、歴史的経緯から、東京弁護士会、第一東京弁護士会、第二東京弁護士会という3つの弁護士会がありますが、今のところ会長声明を出しているのは東京弁護士会(日本最大の会員数)だけです。

[日本弁護士連合会]
4/6「検事長の勤務延長に関する閣議決定の撤回を求め、国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明」 

[ブロック連合会]
東北弁護士会連合会
3/14「東京高検黒川弘務検事長の定年延長を行った閣議決定を直ちに撤回することを求める会長声明」 

[弁護士会]
静岡県弁護士会
3/2「黒川弘務東京高検検事長の定年延長に強い懸念を表明する会長声明」 

京都弁護士会
3/5「検察庁法に違反する定年延長をした閣議決定に抗議し、撤回を求める会長声明」 

滋賀弁護士会
3/10「検察官に関する不当な人事権の行使に抗議する会長声明」 

仙台弁護士会
3/12「東京高検黒川弘務検事長の定年延長を行った閣議決定を直ちに撤回することを求める会長声明」 

千葉県弁護士会
3/13「東京高等検察庁検事長の勤務延長に対する会長声明」 

大阪弁護士会
3/13「検事長の定年延長に関する閣議決定の撤回を求める会長声明」 

三重弁護士会
3/16「東京高等検察庁検事長の定年延長閣議決定の撤回を求める会長声明」 

東京弁護士会
3/17「検察庁法に反する閣議決定及び国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対し、検察制度の独立性維持を求める会長声明」 

奈良弁護士会
3/23「東京高等検察庁検事長の勤務(定年)延長に強く抗議し検察庁法改正案に反対する会長声明」 

山形県弁護士会
3/24「東京高等検察庁黒川弘務検事長の定年延長を行った閣議決定の撤回を求める会長声明」 

兵庫県弁護士会
3/25「東京高等検察庁検事長の定年延長の閣議決定の撤回を求める会長声明」 

福井弁護士会
3/25「検察官について違法に勤務延長した閣議決定に抗議し撤回を求める会長声明」 

富山県弁護士会
3/25「検察庁法に違反する検事長の定年延長をした閣議決定に抗議し、撤回を求める会長声明」 

神奈川県弁護士会
3/26「検事長の定年延長をした閣議決定に強く抗議し撤回を求め、国家公務員法等の一部を改正する法律案中の検察庁法改正案に反対する会長声明」 

栃木県弁護士会
3/26「東京高検検事長の勤務延長をした閣議決定に強く抗議し、速やかな撤回を求める会長声明」 

岐阜県弁護士会
3/27「検事長の定年延長に関する閣議決定の撤回を求める会長声明」 

福岡県弁護士会
3/27「検察官の定年後に勤務を延長する旨の閣議決定の撤回を求める会長声明」 

鹿児島県弁護士会
3/27「検察官の定年延長に関する閣議決定の撤回を求め、国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明」 

広島弁護士会
3/30「検察庁法に違反する定年延長をした閣議決定に抗議し、撤回を求める会長声明」 

宮崎県弁護士会
3/30「東京高検検事長の勤務延長に関する閣議決定に抗議し撤回を求める会長声明」 

山梨県弁護士会
3/31「検察庁法に反する閣議決定の撤回を求めるとともに、国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明」 

沖縄弁護士会
4/1「検事長の定年延長をした閣議決定の撤回を求める会長声明」 

岡山弁護士会
4/3「東京高等検察庁検事長の勤務延長に関する閣議決定に強く抗議すると共に国公法及び検察庁法改正案に反対する会長声明」 

茨城県弁護士会
4/7「東京高検黒川弘務検事長の定年延長を行った閣議決定を直ちに撤回することを求め、国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明」 

長野県弁護士会
4/13「検察官の定年延長に関する閣議決定の撤回を求め,国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明」 

徳島弁護士会
4/17「検察庁法に違反する定年延長の閣議決定の撤回を求め、国家公務員法等の一部を改正する法律案反対する会長声明」 

愛知県弁護士会
4/23「検察官の定年延長に関する閣議決定の撤回を求め、国家公務員法等の一部を改正する法律案のうち検察官の勤務延長の特例措置に関する部分に反対する会長声明」 

山口県弁護士会
4/23「検察官の独立性に対する尊重を求めるとともに、検事長の勤務を延長させる閣議決定の撤回を求め、国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明」 

群馬弁護士会
4/24「東京高等検察庁検事長の定年延長を行った閣議決定に抗議し,速やかな撤回を求めるとともに,検察庁法改正案に反対する会長声明」 

和歌山弁護士会
4/24「東京高検検事長の定年延長をした閣議決定の撤回を求め、検察庁法改正案に反対する会長声明」

大分県弁護士会
4/24「検事長の勤務延長に関する閣議決定の撤回を求め、国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する声明」 

旭川弁護士会
4/27「検事長の勤務延長に関する閣議決定の撤回を求め、国家公務員法等の一部を改正する法律に反対する会長声明」 

秋田弁護士会
4/27「検事長の勤務延長に関する閣議決定の撤回を求めるとともに、国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明」 

鳥取県弁護士会
4/28「検事長の勤務延長に関する閣議決定の撤回を求め,国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明」 

[弁護士会・検察庁法改正案に反対する会長声明]
京都弁護士会
4/2「検察庁法改正案に反対する会長声明」 

大阪弁護士会
4/16「検察庁法改正を含む国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明」 

千葉県弁護士会
4/24「検察庁法改正を含む国家公務員法の一部改正法案の廃案等を求める会長声明」 

福岡県弁護士会
4/24「検察庁法の改正の一部に反対する会長声明」 

(弁護士・金原徹雄のブログから~東京高等検察庁検事長定年延長問題)
2020年2月8日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について~法律の規定は読み間違えようがない 
2020年2月11日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(2)~政府の解釈はこういうことだろうか? 
2020年2月16日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(3)~論点は出そろった(渡辺輝人氏、園田寿氏、海渡雄一氏の論考を読んで) 
2020年2月22日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(4)~「国家的悲劇」を象徴する痛ましい姿(小田嶋隆さんのコラムを読む) 
2020年2月23日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(5)~立憲デモクラシーの会の声明と文理解釈再び 
2020年3月4日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(6)~静岡県弁護士会「黒川弘務東京高検検事長の定年延長に強い懸念を表明する会長声明」を読む 
2020年3月6日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(7)~法律家9団体共同声明を読む 
2020年3月15日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(8)~「違法」だからこそ辻褄が合わなくなる 
2020年3月28日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(9)~全国の弁護士会から出された会長声明のご紹介(3/27まで) 
2020年4月18日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(9)の2~全国の弁護士会から出された会長声明のご紹介・補訂版(4/17まで) 

4月28日現在

「仮設の映画館」がオープンしました!~まずは『春を告げる町』(島田隆一監督)を鑑賞

 2020426日配信(予定)のメルマガ金原No.3459を転載します。

「仮設の映画館」がオープンしました!~まずは『春を告げる町』(島田隆一監督)を鑑賞

 4月16日に新型インフルエンザ等対策特別措置法第32条に基づく緊急事態宣言の対象地域が7都府県から全国全ての都道府県に拡大された際には、「東京、大阪とはフェーズが違う」ということで、特措法に基づく休業要請はしないとしていた仁坂吉伸和歌山県知事でしたが、「県外からの感染移入が多いことを踏まえ」、4月23日、特措法第24条9項に基づき、同月25日から5月6日までの休業要請に踏み切りました(「緊急事態宣言が発出されたことに伴う県民の皆様へのお願い(第4弾)~施設の休業要請について~」)。
 そして、その「休業要請の対象となる施設一覧」の中には、ナイトクラブなどの遊興施設やパチンコ屋などの遊戯施設の他、映画館も含まれていました。

 私は、和泉山脈に沿って東西に流れる紀の川の北岸、和歌山市の北東部に住んでいるのですが、自宅から車で10分も南下すれば、10スクリーンを持つ「ジストシネマ和歌山」があり、逆方向にやはり10分も北進すれば、同じく10スクリーンを持つ「イオンシネマ和歌山」があるという具合で、もしも私が週末ごとに劇場に足を運ぶ映画愛好者であるとすれば(地方在住者としては)夢のような環境であり、あとは、ミニシアターが近くにあれば申し分なしというところでしょう。
 残念ながら、私自身、年に数えるほどしか映画館で映画を観ることがありませんので、このような良好な鑑賞環境も宝の持ち腐れでした。

 そして、今度の緊急事態宣言です。「イオンシネマ和歌山」は、既に4月18日から(全国的に)臨時休業に入っており、「ジストシネマ和歌山」も、和歌山県からの休業要請に応える形で、4月25日から5月6日までの臨時休業に入りました。

 休業が長引けば、大手シネコンにも影響が及ぶことが懸念されますが、それよりもまず真っ先に大きな打撃を受けるのが単館系ミニシアターと呼ばれる映画館です。
 シネコンでの上映が難しい良質なドキュメンタリー映画や海外作品、実験的な作品などは、これらのミニシアターを「場」として観客と出会うことにより、その価値が社会において「共有」されます。
 ところが、そのような「場」を提供してきたミニシアターが生き残れないのではないかという危機的状況を何とか打開したいと、「観察映画」で名高い想田和弘監督と配給会社の東風が話し合い、「仮設の映画館」をオープンさせることになりました。
 昨日(4月25日)、東日本大震災直後に全町避難を余儀なくされ、東京電力や自衛隊の前線基地となった福島県双葉郡広野町の人びとの現在を追ったドキュメンタリー映画『春を告げる町』(島田隆一監督)の「仮設の映画館」でのWEB公開が始まり、5月2日からは想田和弘監督の『精神0』他、多くの作品の公開が予定されています。

 「仮設の映画館 Temporary CINEMA」で映画を鑑賞したい人は、このサイトを訪れることになります。

 まず始めに、「仮設の映画館とは?」と「想田和弘監督のメッセージ」を読んでみましょう。

観客が映画館へ足を運べない状況に対して
合同会社 東風
(抜粋引用開始)
 ご承知のように新型コロナウイルスの影響は、映画にとっても甚大です。劇場が休館を余儀なくされたり、たとえ上映を続けていても観客が安心して鑑賞することができなければ、いずれは劇場だけでなく配給会社も製作者も閉館や廃業ということになりかねません。いま脅威にさらされているのは、観客、劇場、配給、製作者によってまわっている「映画の経済」です。では、新作映画を楽しみにしている観客、劇場、配給、製作者、みんなにとって何かよいことができないか。新作『精神0』の公開を控えた想田和弘監督と配給会社東風のスタッフで相談しました。
 そこで予定していた劇場公開と並行して、インターネット上に「仮設の映画館」をつくってみることにしました。ここには賛同してくれた全国各地の劇場が軒を連ねています。観客は、どの映画館で作品を鑑賞するのかを選ぶことができます。そして、その鑑賞料金は「本物の映画館」の興行収入と同じく、それぞれの劇場と配給会社、製作者に分配される仕組みです。
 これは、新型コロナウイルスの脅威によって停滞している「映画の経済」を回復させるための試みの一つです。そして、この認識と方法とを全国の劇場、配給会社、製作者、そして映画ファンのみなさんと広く共有することによってはじめて「仮設の映画館」は有効かつ持続可能な施策となり、ともにこの状況を乗り切ることができるのではないか。そのように考えています。
 さてまずは最寄りの劇場へ。そして、たまには懐かしい街の劇場を訪ねてみてください。もちろん状況が改善したら、ぜひ「本物の映画館」に足をお運びください。ここはあくまで「仮設の映画館」です。

「仮設の映画館」概要
鑑賞方法
 作品ごとに配信期間・鑑賞期限/方法は異なりますので、詳しくは各上映作品のページをご覧ください。
鑑賞料金の分配
 プラットフォームの使用料等を差引後、一般的な興行収入と同様に、劇場と配給とで5:5で分配。さらに配給会社と製作者とで分配します。なお上映を予定していた劇場がそれぞれの事情により休映・休館した場合も「仮設の映画館」では続映し、その収益の分配の対象となります。
(以下略)
(引用終わり)

映画がコロナ禍を生き延びるために『精神0』を“仮設の映画館”で公開します
座して死を待つよりは
想田和弘
(抜粋引用開始)
 新型コロナウイルス禍が深刻化するなか、映画を劇場で観て下さる方の数が激減し、全国の映画館が存続の危機に立たされています。
 特に拙作が上映されるような、単館系ミニシアターの窮状には、のっぴきならないものがあります。「封切ったばかりの新作なのにお客さんが1日で0だった」「このままでは劇場の家賃や人件費も払えないので廃業するしかない」といった悲鳴が聞こえてきます。
 だからといって、「皆さん、ぜひ映画館へ足を運んで応援を!」と積極的にお勧めできないのが、今回の危機の辛いところです。もちろん、厳しい換気基準をクリアした映画館で映画を鑑賞する行為は、消毒の徹底やマスクの着用、人数制限などを徹底すれば比較的感染リスクは低いと言われています。それでも、映画館とご自宅の移動中のリスクなども考え合わせると、推奨しにくいのが現実です。
 52日から僕の新作『精神0』も全国順次公開予定なのですが、正直、家族や友達にさえ「映画館に来てね!」とは言いづらい自分がいます。それが本当に辛い。特に高齢の親には言い淀んでしまいます。
(略)
 しかし公開を延期する方法には、大きな問題があります。
 もしすべての映画製作者が作品の延期を決めてしまったら、映画館は当面、いったいどうなってしまうのか。急場をしのぐために旧作を慌ててかき集めて上映を細々と続けるか、休館するしかなくなるでしょう。コロナ禍が長引けば、ほとんどのミニシアターは廃業せざるをえなくなるのではないか。つまり1年後に『精神0』の公開を延期したとしても、そのときには上映できる映画館が全滅した「焼け野原」になっている可能性すらあるのです。
(略)
 そこで浮上したのが、52日から『精神0』を“仮設の映画館”で上映するというアイデアです。つまりデジタル配信です。
 といっても、これは劇場公開の後に行われる通常の配信とは仕組みが異なります。
 観客の皆さんには、最寄りの映画館の特設ページに行っていただきます(東京圏の方は渋谷シアター・イメージフォーラムのページへ、岡山の方は岡山シネマクレールのページへ)。
 そして映画館で映画を観ていただく代わりに、オンラインでご鑑賞いただきます。料金は劇場で観ていただく一般的な当日料金の1800円です。お支払いいただいた1800円は、通常の劇場公開の場合と同様の割合で、映画館と配給会社、製作者に分配されます。3人のご家族でご覧いただく場合には、3回ご購入していただければ本当に助かります。
 もしこれがうまく機能すれば、映画館だけでなく、配給会社や製作者にも、通常の劇場公開を行った場合と同程度の収入が見込めます。そして『精神0』以外の作品でも同様のことが行えれば、たとえリアルな映画館が一時休館せざるをえなくなっても、収入の道が確保できます。したがってコロナ禍が過ぎた後、劇場・配給・製作の三者が生き残っている可能性が高まります。
(略)
 いずれにせよ、これは劇場、配給、製作、そして観客という「映画のエコシステム」を守るための苦肉の策です。ぜひとも趣旨をご理解いただき、積極的にご参加・拡散いただけると幸いです。
(略)
 コロナ禍が終わり、皆さんと実際に安心してお会いできる日が来ることを、楽しみにしております。みんなで一緒に乗り切っていきましょう!
(引用終わり)

 上記2つの文章は全文引用すると長過ぎるので抜粋に留めましたが、是非「仮設の映画館」公式サイトで全文お読みいただければと思います。
 省略した部分の内、特に東風さんの文章の中で、「賛同・参加配給会社」が「東風」以外にどんどん広がっていることは注目すべきだと思います。

 また、この「仮設の映画館」については、多くのメディアが好意的に取り上げてくれていますが、そのうちの2つだけご紹介しておきます。

 1つは、KSB瀬戸内海放送が放送した5分余りの映像(想田和弘監督と奥様へのインタビューを含む)です。

〈新型コロナ〉「お金の流れをそのまんま確保」ミニシアターの支援へ 映画監督が新作をデジタル配信 岡山市(5分19秒)
 


 もう1つは、4月23日に朝日新聞デジタルが運営する「&M」に掲載された想田監督へのインタビュー構成記事でとても充実しています。想田さんがFacebookに書かれたところによると「朝日新聞の石川智也記者から取材を受けました。さすが石川記者、映画の話だけでなく、文化行政や全体主義にまで射程が届いています。多くの方に今こそ読んでほしい。」だということです。

「日常と自由を手放さぬために、映画の灯を取り戻す」 想田和弘監督、ミニシアターを救う“仮設の映画館”を始動 

 この長文の記事の中から3箇所だけ抜粋で紹介させてください。

(抜粋引用開始)
トランプ米大統領はウイルスとの戦いを「戦争」になぞらえ、戦時指導者のイメージを誇示している。「有事なのだから筋論を言っている場合ではない」という風潮はいまや先進国も含め世界に広がっている。だが、想田は特に日本でこうした現象がエスカレートしかねないと危惧している。

「日本にはそもそも、個人を犠牲にしても全体を優先する思想や態度が会社や学校、家庭にまで浸透しています。民主主義のシステムを少しずつ、確実に切り崩してきた権威主義的な安倍政権が支持され続けていることと無縁ではない。僕は『熱狂なきファシズム』と名付けていますが、それは主権者の無関心と黙認のなか、低温やけどのようにじわじわと進む全体主義のことです」

「こういう社会は、自民党が改憲案で盛り込んだ『公益』『公の秩序』という超越的価値に飛びつきやすい。『いまは非常時なんだ』『人が死んでいるんだ』という掛け声とともに、一気に『人権が制約されるのも仕方ない』という方向に行きそうで怖い」

大仰な言い方かもしれないが、1940年代の日本も、ある日突然爆弾が降ってきたわけではない。物資が手に入らなくなり、すぐに戻ると思っていた人が帰らず、社会の雰囲気が変わり、段々と状況が悪くなっていった。日常と非日常との境目はおそらく、一目でそれと分かるようには訪れないものだ。

「制限や制約のある生活に慣れ、大事なものを手放したことに気づかぬまま、ちょっとずつ日常の風景が変わっていく。すべてが終わった時にはもう後戻りできない遠いところに来てしまっていた――そんなことにならないか、非常に危惧しています」

(略)

「仮設の映画館」というネーミングについて「東風」の担当者、渡辺祐一はこう解説する。

「災害などの非常時には、生活に必要なものは必ず仮設でつくられます。例えば、仮設のトイレ、仮設のシャワー、仮設の住居……。同じように、人々に喜びや笑いや感動を届ける映画館というものは、なにか非常事態があった時でも仮設で建てられるくらい必要とされるものであってほしい。そういう思いも込めています」

(略)

最近にわかに増刷を重ねているというアルベール・カミュ著『ペスト』の終章に、こんなシーンがある。猖獗(しょうけつ)きわめる疫病に立ち向かい、極限状態でも人間の尊厳を保ち続けた主人公のひとりは、「どういうことをいうんです、平常の生活に帰るっていうのは?」と問われ、笑って答える。

「新しいフィルムが来ることですよ、映画館に」
(引用終わり)

 さて、「仮設の映画館」で実際に映画を観る方法ですが、公式サイトを下の方にスクロールしていくと「上映作品」のポスターが並んでおり、そのうち、上映中の作品(今のところ『春を告げる町』だけですが)をクリックすると、「仮設の映画館とは」「鑑賞方法」「FAQ」が現れますので、「鑑賞方法」をクリックすることになります。
 試みに、『春を告げる町』の「鑑賞方法」は以下のようになっていました。

(抜粋引用開始)
Q.鑑賞方法を教えてください。
.まず動画共有サイトVimeoのアカウント登録(無料)が必要です。こちらから登録をお願いします。Eメールアドレスやグーグルアカウントで登録が可能です。
.登録・ログイン後、「仮設の映画館」の自分が鑑賞したい映画館の上映ページで「¥1,800でレンタル」ボタンを押すと、「お支払い情報を入力」というウィンドウが開きます。こちらで支払方法を選択・入力してください。
Vimeoは現在、VisaMastercardAmerican ExpressPayPalに対応しており、日本円でお支払できます。必要情報を入力し、「¥1,800でレンタル」ボタンを押すと、すぐに再生が可能になります。

Q.『春を告げる町』のストリーミング配信期間、鑑賞期限を教えてください。
A.『春を告げる町』のストリーミング配信期間は、2020425()1000から522()2100までとなります(延長の可能性もあります)。ダウンロードはできません。また鑑賞期限は、レンタル購入後24時間以内です(*5222100に購入した場合は、翌523()2059まで鑑賞可能です)。

Q.『春を告げる町』を字幕・音声ガイド付きで鑑賞することはできますか?
A.『春を告げる町』は『UDCast』方式による視覚障害者用日本語音声ガイド、聴覚障害者用日本語字幕に対応しています。
●日本語音声ガイド
UDCast』アプリをインストールしたスマートフォン・iPod touch 等の携帯端末で、音声ガイド付きで映画をお楽しみいただけます。
●日本語字幕ガイド
UDCast』アプリをダウンロードしたスマートフォン・iPod touch 等の携帯端末、または字幕表示用のメガネ型端末(MOVERIO)で、字幕付きで映画をお楽しみいただけます。

Q.海外からも鑑賞できますか?
A.『春を告げる町』は日本国内でのみ鑑賞可能です。
(引用終わり)

 ということで、早速、私もこの「仮設の映画館」で『春を告げる町』を鑑賞してみることにしました。
 まず、「Vimeoのアカウント登録(無料)」は簡単にできました。
 続いて「自分が鑑賞したい映画館の上映ページ」を探すことになります。『春を告げる町』の場合、関東3館、北海道・東北4館、中部4館、近畿4館、中国・四国1館の計16館の中から、自分の好きな映画館を選択します。行きつけの映画館がある人は、当然その館を選ぶのでしょうが、私の場合、そもそも和歌山にミニシアターはありませんし、近畿4館の中にも行ったことのある映画館は1つもありませんでした。
 わずかに、『朝日のあたる家』(太田隆文監督)を「シアターセブン」に観に行ったことがあったご縁から(?)「第七藝術劇場」を選択しました。
 そして、「¥1,800でレンタル」ボタンを押して「お支払い情報を入力」となりました。私はクレジットカード決済を選択したのですが、入力すべき情報の内、「MM」「YY」というのが、カード有効期限の「月(MONTH)」「年(YEAR)」のことだと気が付くまでにしばらくかかってうろうろしましたが、何とか無事入力を済ませ、鑑賞できることになりました。一度見終わっても、24時間以内であれば何度でも見直すことができます。いわば、「入れ替え制」ではなく「流し込み」の映画館だと思えば良いでしょう。
 本編の上映開始前に、以下のような「オリジナルマナーCM」が流れます。

〔仮設の映画館〕オリジナルマナーCM(1分00秒)


 この後、「仮設の映画館」で近日公開作品の予告編が何本か流れるのかと一瞬思いましたが、さすがにそれは(今のところ)ありませんでした。

 さて、本編の『春を告げる町』を最後まで(休憩を入れずに一気に)鑑賞し、エンドロールの最後に「製作 広野町、合同会社JyaJya Films」というクレジットが流れるのを読みながら、私は、福島県立ふたば未来学園高等学校演劇部の創作劇に託した「復興とは何か」という、決して大上段に振りかぶってはいないけれど、虚心に画面に向かえば誤解しようのない問いかけに、観客の1人として「どう答えようか」と今も考えているところです。

 現実の映画館や自主上映会で他の観客と一緒に観る場合と、パソコンのディスプレイに1人で向かい合った「仮設の映画館」と、どこがどう違うのか、にわかに結論を出せるだけの経験を積んではいないので、とりあえず留保としたいと思います。

 ただ、「仮設の映画館」は、あくまで「現実の映画館」に帰還するまでの仮住まいであることが前提ではあるものの、仮設が仮設でなくなる現実というのもあり得るわけで、実際、今日鑑賞した『春を告げる町』で描かれた福島県広野町の「復興した姿」も、決して「3.11」前と同じではあり得ないのと同じように、「仮設の映画館」後も、「仮設の映画館」前と全く同じ姿には戻れないと考えるべきでしょう。

 私自身は、NetflixAmazonプライムで映画を観る習慣はありませんが、時代が大きく動いているらしいという気配はさすがに感じています。
 これから「仮設の映画館」で上映が予定されているような作品群が、将来的にどのような形態で観客に相まみえることになるのか、私には予想もつきませんが、映画の作り手、送り手、受け手が、それぞれ経済的に成り立つ合理的なシステムの構築が望まれます。
 「仮設の映画館」の試みが、単なる「急場凌ぎの一時避難所」の域を超えた拡がりを持ち得るのではないか、そのような予感をいだきながら、第1回配給作品『春を告げる町』を鑑賞しました。

 以下に、現在「仮設の映画館」で上映中、及び近日公開と予告されている作品の公式サイトにリンクするとともに、予告編をご紹介しておきます。
 是非、積極的に「仮設の映画館」で映画を楽しんでいただければと思います。

4月25日(土)公開
『春を告げる町』(島田隆一監督)
配給:東風 
公式サイト 
予告編 


5月2日(土)公開
『精神0』(想田和弘監督)
配給:東風 
公式サイト 
予告編

 

5月2日公開
『巡礼の約束』(ソンタルジャ監督)
配給:ムヴィオラ 
公式サイト 
予告編


5月2日公開
『タレンタイム 優しい歌』(ヤスミン・アフマド監督)
配給:ムヴィオラ 
公式サイト 
予告編 I go ver.

予告編 Angel ver.


5月2日公開
『グリーン・ライ~エコの嘘~』(ヴェルナー・ブーテ監督)
配給:ユナイテッドピープル
公式サイト 
予告編


5月2日公開
『友川カズキ どこへ出しても恥かしい人』(佐々木育野監督)
配給:シマフィルム株式会社 
公式サイト 
予告編


5月8日(金)公開
『島にて』(大宮浩一・田中圭共同監督)
配給:東風 
公式サイト 
予告編


5月上旬公開
『タゴール・ソングス』(佐々木美佳監督)
配給:ノンデライコ 
公式サイト 
予告編


5月中旬公開
『プリズン・サークル』(坂上香監督)
配給:東風 
公式サイト 
予告編


6月6日公開
『タッチ・ミー・ノット~ローラと秘密のカウンセリング~』(アディナ・ピンティリエ監督)
配給:ニコニコフィルム 
公式サイト 
予告編


(弁護士・金原徹雄のブログから/想田和弘監督関連)
2013年6月20日 
映画『選挙2』と想田和弘監督の憲法を守るための闘い 
2014年9月17日 
極右グループが利用し尽くす「善意」~想田和弘氏が指摘する「善意」の行き着く先 
2015年1月5日 
想田和弘さんの分析枠組「消費者民主主義」の有効性はいよいよ高まっている~『日本人は民主主義を捨てたがっているのか?』再読 

緊急事態宣言下での「放送大学」視聴の勧め~寺脇研さんの呼びかけに応えたひとりの放送大学学生として

 2020419日配信(予定)のメルマガ金原.No.3458を転載します。

緊急事態宣言下での「放送大学」視聴の勧め~寺脇研さんの呼びかけに応えたひとりの放送大学学生として

 4月7日に7都府県を対象地域として新型インフルエンザ等対策特別措置法第32条に基づく新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言が発令されたのも束の間、わずか9日後の4月16日に対象地域が全都道府県に拡大されました。

 小学校、中学校、高校などの学校現場における休校の長期化が現実のものとなり、子どもの学習権をどう保障するのかが緊急の課題となる中、大学においても、多くのキャンパスが閉鎖され、既に前期の講義を全てWEB配信で実施するという方針を公表した大学もあるようです。

 登校することなく、基本的に遠隔送信の方法で授業を行う大学といえば、我が国でまっさきに思い浮かぶのは放送大学(The Open University of Japan)です。
 放送大学は、放送大学学園法(平成十四年法律第百五十六号)に基づいて設立された放送大学学園という学校法人が設置する大学です。形式的には、私立学校法第3条の学校法人が設置した私立大学ですが、設置主体たる法人(放送大学学園)は特別法によって設立され、基本的に国費(補助金)によって運営されますので、事実上の国立大学と考える見方もあります。

 授業の提供方法は様々な変遷があったようですが、現在は、
①放送授業・テレビ(BS232、231チャンネルで放送/非学生も視聴可)
②放送授業・ラジオ(BS531チャンネルで放送/非学生も聴取可)
※①・②について、学生は専用サイトで随時インターネット配信を視聴可能。
③オンライン授業(学生専用サイトで配信)
④面接授業(各地の学習センターで開講/基本は土日の2日間で1単位)
が提供されており、所定の単位を取得することにより、大学卒業資格(学位)が授与されます(大学院もあります)。
 詳しくは放送大学のホームページをご覧ください。
 また、大学の沿革については以下のページをご覧ください。

 私自身、弁護士業務のかたわら、放送大学の学生でもあることは、過去何度もこのブログに書いてきたとおりです。
 振り返ってみると、放送大学の学生になってもう12年も経ったのでした。

2008年4月~2009年3月 選科履修生(1年間在籍)
2009年4月~2019年3月 全科履修生(在籍年限いっぱいの10年間で教養学部・社会と産業コースを卒業)
2019年4月~現在 全科履修生(教養学部・生活と福祉コースに再入学)

 さて、その放送大学も、新型コロナウイルス感染症の蔓延と無縁でいる訳にはいきません。学生が学習センター、あるいは別の場所に集まってスクーリングを受ける面接授業について、緊急事態宣言発令の翌4月8日、「(1)4月および5月1日(金)・2日(土)開講の面接授業については、全国一律閉講(中止)します。※日程変更(延期)は行いません。(2)5月7日(木)以降の面接授業を開講するか否かは、新型コロナウイルス感染症の今後の状況に応じて、各月ごとに逐次判断しお知らせします。」という発表がなされました

 私は、対象期間の直後である5月9日(土)・10日(日)の両日、和歌山学習センターで行われる「高野山とその文学」(下西忠高野山大学名誉教授)を申し込んでおり、はたして開講されるかどうか心配しています。
 私は、過去3回、下西先生の面接授業を受講しており、特に2017年5月の「中世の紀行文学を鑑賞する」を受講したことをきっかけに、「山部赤人はどこから富士を眺めたのか?~「名歌「田子の浦ゆ・・・」を解釈する」という、我ながら気合いの入った(?)ブログを書き、今でも時々アクセスがあるという印象深い出来事もありましたので、今年の「高野山とその文学」はとても楽しみにしていたのです。実際、シラバスを読んだ上で、少し予習を始めたりしていたのですが、それも今のところ中断してしまっています。

 心配といえば、7月の単位認定試験について、今のところ「7月に実施する方向で調整しております。」と告知されてはいますが、状況次第ではどうなることか。仮に、和歌山では実施可能でも、全国何カ所かで実施不可能な学習センターがあれば、学生間の公平を保つため、全国的に単位認定試験を取りやめ、代替措置を考えざるを得ないのではないかと思います。

 ところで、元文部官僚で、映画評論家、プロデューサーとしても高名な寺脇研さんには、2年前の2018年4月27日、青年法律家協会和歌山支部主催の憲法記念行事「これからの日本 憲法と教育の危機」で、前川喜平さんとのダブル講演をお願いし、大変お世話になったのですが、その寺脇さんには、「生涯学習原理主義者」(寺脇さんの自称)という側面もあります。
 若手官僚として放送大学の創設にもかかわったその寺脇さんが、最近(4月13日)、Facebookで以下のような呼びかけをされているのに気がつき、私もシェアしました。
 以下に、寺脇さんのアピールを引用させていただきます。

(引用開始)
主に大学生、高校生、特にせっかく大学生活を始めるはずだったのに大学開始がコロナのために遅れて待機している大学1年生の皆さんへ 【周囲にそういう学生、生徒がいる方々は、このことを伝えてください。もちろん、中学生、小学生でこの内容に関心のある子どもたちにも。】

放送大学という大学があるのを知っていますか?
放送やネットを通じて授業をする大学です。ぜひ、このホームページを見てください。
ほとんどの大学が授業を始められない状況にある中、この大学では4月1日から広い分野のたくさんの講義が始まっています。というのも、ここはもともと対面式の授業ではないからです。
ホームページの「番組表」を見てください。BSテレビとBSラジオで誰でも視聴、聴取できます。正規の学生になって単位や卒業資格を得るためには、入学料や授業料(とても安いんですよ。卒業資格を取るまでに必要な総額は約70万円)が要りますが、テレビ、ラジオで講義を視たり聴いたりするのは無料で、いつでも誰でも自由にできます(個人的に行うなら録画、録音も)。
つまり、大学の授業を誰でもが自由に覗けるのです(1回だけ覗くのでもいいし、15回ずっとでもいい)。

大学と高校では、授業の形態や内容が大きく違います。大学1年生の皆さんは、合格通知を受けて以来、「大学の授業ってどんなものだろう」と楽しみにしていたと思います。でも、なかなか始まらない。
それなら、待機している間に放送大学の講義を覗いてみてはどうですか?自分が興味のある講座を選べばいいのです。出席を取られるわけでもないし、試験を受ける必要もない。純粋に講義を楽しめばいいのです。いわば「大学の授業」体験です。
自分の大学が始まったとき、どの講義を選択するかの「お試し」にもなるでしょう。

また、2年生以上の学生も、学びに飢えている人がいるでしょう。講義を聴きたい!という声も聞こえます。では、放送大学の講義はどうですか?自分の大学では開講されていない科目もあるかもしれません。

休校中の高校生にもお勧めします。いや、中学生、小学生だっていい。大学っていうところが、どんな授業をしているのか覗くチャンスです。それは、将来大学進学を目指し、大学でどんな学びの目標を立てるかのヒントにもなるでしょう。

最後に、私が放送大学「覗き」を勧める理由を告白しましょう。この大学は、私が文部科学省に勤めている頃進めてきた「生涯学習」の切り札として、「いつでも、どこでも、誰でも」学べる大学を目指したものです。1979年に設立作業が始まったときの担当係員だったときから40年近く肩入れしてきました。その放送大学が、コロナのために大学での学びを制限されている学生の皆さんのお役に立つなら、とてもうれしいです。
(引用終わり)

 以下に書くことは、寺脇研さんの呼びかけの趣旨に賛同した一人の放送大学学生からの補足説明です。

[お試し授業の選び方1~シラバスから]
 いきなりBSの番組表を眺め、授業のタイトルだけから「あたりをつける」のは難しいかもしれません。
 そこで、正攻法としてお薦めなのは、シラバスに目を通してみることです。
 各放送授業のシラバスは、「トップページ⇒大学(教養学部)⇒授業科目⇒授業科目案内(教養学部、大学院修士課程、大学院博士後期課程のいずれかを選択)⇒コースを選択⇒科目名を選択」で読むことができます。
 ただ、これで選ぶのもなかなか大変かもしれませんね。

[お試し授業の選び方2~番組表から]
 そこで、やはり寺脇さんお薦めの番組表から行ってみましょうか。
 授業期間(4月1日~7月14日)については、各科目とも、週に1回(45分授業)が15回(週)放送されます。もう3週目に入っていますから、今から7月までに全15回を見るのは無理かもしれませんが、夏期学習期間(7月15日~9月30日)に、全科目ではありませんが、15回の集中放送が行われますので、それを視聴(録画)するのも良いと思います。

[お試し授業の選び方3~YouTubeから]
 放送大学YouTubeチャンネルでは、テレビ科目については約7分半の科目紹介の動画をアップしています(現在90科目を公開)。なお、オンライン科目紹介の動画もありますが、残念ながら、放送大学の学生ですら、科目登録しないと実際の授業用の動画などは視聴できまません。
 ホーム 
 プレイリスト(テレビ科目案内) 

[オープンコースウエア1~授業の第1回だけネットで視聴]
 放送大学では、放送授業(テレビ・ラジオ)の全科目で、第1回のみインターネットで無償配信しており、誰でも視聴することができます。 
 テレビ科目(一覧) 
 ラジオ科目(一覧) 

 これは、コロナウイルス感染症とは全く関係なく、以前からの取組です。
 現役の放送大学学生であれば、学生専用サイトにおいて、放送授業(テレビ・ラジオ)の全科目をフルに(15回全部を)いつでも(受講登録していなくても)視聴することができますが、第1回だけは、一般に開放しているのです。
 第1回だけ視聴して「続きも視聴したい(勉強したい)」と思った人はどうすれば良いかというと、BSを視聴できる環境のある方であれば、番組表から放送時間を調べて視聴していただくことになります。既に放送が終わっていたらどうすか?年に2回の集中放送期間(夏期学習期間・冬期学習期間)での再放送を視聴するか、次学期での通常放送を視聴してください。
 インターネットで随時視聴したかったらどうするか?放送大学の学生になってください。卒業を目指す全科履修生の他に、科目履修生(半年のみ在籍)、選科履修生(1年のみ在籍)もあります。

[オープンコースウエア2~全15回の授業を全てネットで視聴]
 ところで、真に「オープンコースウエア」の名に値するのは、15回の全ての授業を、いつでも誰でもインターネットで視聴できることだと思うのですが、実は、全15回を公開している放送科目(テレビ・ラジオ)もかなりあるのです。もちろん、全科目ではありませんが。

 テレビ科目(全15回公開科目一覧) 
 ラジオ科目(全15回公開科目一覧) 

 現在、テレビ科目で33科目、ラジオ科目で31科目が、全編無償公開され、インターネットを利用できる環境さえあれば、誰でもいつでも視聴できます。
 BSでは、録画しない限り、視聴できる時間が限られていますが、上記の科目であれば、授業の全てをインターネットでいつでも視聴できます(閉講されればその時点で削除されますが、開講から閉講まで、通常は4年~6年あります)。
 リストを眺めながら、授業の内容を想像してみるのも楽しいものですよ。
 私が放送大学の学生になって見つけた楽しみはいくつもありますが、「次学期どの科目を登録しようか?」とあれこれ考えるのもその一つです。

 さて、大学生や高校生の自宅学習がいつまで続くか見通せぬ状況の中、放送大学という生涯学習のための公共インフラを、多くの人が活用して、自らの「学び」に役立てていただければと心から思います。

(最後のつぶやき)
 この「視聴の勧め」に応じるためには、BSを受信できるテレビ機器かインターネットに接続したパソコンもしくはタブレットが必要でしょう。重量制限のあるスマートフォンではかなりしんどいかもしれません。書き進めながら、そのようなことが気になりました。

(追記/2020年4月23日)
 4月21日、放送大学は、
〇2020年度第1学期の当初予定の面接授業は閉講(中止)します。
〇2020年度第1学期の単位認定試験は全国の試験会場では実施は行わず、代替措置として自宅での受験に転換します。
発表しました。
 予想されたことではありますが、残念です。

(弁護士・金原徹雄のブログから/放送大学関連)
2015年1月30日 
放送大学(オープンコースウェア)受講の勧め~学ぶことは楽しい 
2015年10月22日 
放送大学「日本美術史('14)」単位認定試験にかかわる見過ごせない大学の措置について 
2015年10月24日 
放送大学長「単位認定試験問題に関する件について」を批判的に読む 
2016年1月30日 
放送大学で学ぶ“貧困”~「貧困と社会('15)」(西澤晃彦神戸大学大学院教授)受講の奨め 
2016年8月6日 
高橋和夫教授の「パレスチナ問題('16)」(放送大学)受講のすすめ 
2017年1月26日 
高橋和夫教授(放送大学)の「パレスチナ問題('16)」全15回を是非視聴して欲しい 
2017年5月1日 
IWJからの緊急メッセージと高橋和夫放送大学教授の4講義「受講」の奨め 
2017年5月23日 
山部赤人はどこから富士を眺めたのか?~「名歌「田子の浦ゆ・・・」を解釈する 
2017年8月17日 
高橋和夫教授(放送大学)の「パレスチナ問題('16)」全15回を是非視聴して欲しい(再説) 
2018年1月19日 
放送大学あれこれ~高橋和夫教授の退任と「子ども居場所づくりで子そだち子そだて支援-学びは生きる力-」(2/10和歌山学習センター) 
2019年4月2日 
初めて大学の卒業式(学位記授与式)に出席しました 
2020年2月1日 
テキスト(印刷教材)は捨てられない 
2020年2月2日 
タカ派こそ「和平」を進められる~けれどもタカ派にも色々ある 

(付録)
『Don't mind (どんまい)』 作詞・作曲:ヒポポ大王 演奏:ヒポポフォークゲリラ

東京高等検察庁検事長定年延長問題について(9)の2~全国の弁護士会から出された会長声明のご紹介・補訂版(4/17まで)

 2020418日配信(予定)のメルマガ金原No.3457を転載します。

東京高等検察庁検事長定年延長問題について(9)の2~全国の弁護士会から出された会長声明のご紹介・補訂版(4/17まで)

 私のブログに不定期連載(?)してきた「東京高等検察庁検事長定年延長問題について」の(6)において、全国の弁護士会の先陣を切った静岡県弁護士会による「黒川弘務東京高検検事長の定年延長に強い懸念を表明する会長声明」をご紹介しました。
 同会は、最初の声明ということもあってか、「黒川弘務氏の定年延長を閣議決定したことは,検察庁法に違反する疑いが強い。」ので「ここに強い懸念を表明する。」という表現にとどまっていました。

 そして、静岡に続いて3月5日に会長声明を出した京都弁護士会は、「検察庁法に違反する定年延長をした閣議決定に抗議し、撤回を求める会長声明」という表題から明らかなように、躊躇なく「違法」と断じており、その後に出た各地弁護士会の会長声明も、私の見た範囲では、全て「違法」であると主張していました。

 しかしながら、まだどこの弁護士会も声明を出していない段階で、会長声明の発出に踏み切った静岡県弁護士会の先見性は明らかである上に、その緻密な論証は、今なおこれまで出された各種声明(弁護士会以外の団体からのものも含めて)の中で、最高レベルの説得力を備えていると私は考えています。
 もちろん、後に続いた多くの弁護士会の声明も、個々に独自の論点に言及したり、力点の置き所を工夫するなど、それぞれ読み応えのある声明が多いことは言うまでもありません。
 また、内閣が3月13日に国会に提出した束ね法案「国家公務員法等の一部を改正する法律案」中の検察庁法「改正」案に断固反対することを併せて主張する声明も、増えつつありますし、いったん東京高検検事長定年延長に抗議する会長声明を発出した会でも、京都や大阪のように、あらためて検察庁法「改正」を含む国公法等改正案に反対する会長声明を出すところも出てきています。

 そのような中、私も登録している法律家団体のメーリングリストに福井弁護士会の島田広弁護士から、3月27日までに検事長定年延長に(会によっては検察庁法「改正」案にも)反対する会長声明を出している弁護士会が(ホームページで確認できたところだけですが)、全国52会(東京に3会、北海道に4会)の内17会に達しており、全国に8会あるブロック連合会の内、1会(東北弁護士会連合会)も同様の声明を出している旨、一覧リンク付きで投稿があり、これに触発され、私自身も、島田先生の投稿を少し手直しして(地域順ではなく日付順にした)、これまでに会長声明を発出した弁護士会一覧を「東京高等検察庁検事長定年延長問題について(9)」としてご紹介しました。

 けれども、その後も会長声明を出す弁護士会が増え、4月17日現在、会長声明をホームページで公開した単位会は25会に達した上(半数突破目前)、4月6日には、新会長(荒中-あら・ただし-会長)就任早々、日本弁護士連合会が待望の会長声明を出しました。

 上にもご紹介した島田広弁護士は、まず3月28日に「法務省が法無省になる日」というFacebookページを立ち上げられ、多くの人にこの問題を訴えるための情報発信に努めておられますが、4月16日には、同じタイトルのホームページも開設されました。
 島田先生がその立ち上げにあたって表明された「思い」というか「志」は、心ある全ての法曹が共有するものだと思いますので、全文引用します。

(引用開始)
私も法律家の端くれである。
ホントの端くれ,吹けば飛ぶような端くれだが。

それでも法律家である以上,検察官にもたくさん知人・友人がいるし,彼らがこのページを目にしたときの気持ちを想像するに,少々つらいものはある。

しかし,どうしてもこの不正義は放置できない。
いま,私たち法律家の目の前に展開されているのは,法治国家としてのこの国の根幹を揺るがす重大事態である。
法の支配の崩壊の危機である。

政権によって,司法の重要な一翼を担う検察の人事が勝手にいじられる。
検察のトップが政権の都合のよい人によって占められる。
そんなことで,検察が正義を守れるわけがない。
政権の中枢に迫る,重大汚職事件や政権の様々な不正に,正義のメスを入れられるはずがない。

端くれである私の力など,本当に吹けば飛ぶようなものに過ぎないけれど,それでも,絶対に,この政権による検察支配は許せない。
それを止めるために,端くれなりにできることをしたい。

それが,検察に対する,司法に対する,市民の信頼を守る道なのだ。
私たち法律家は,法と正義のためにたたかうんだと,市民に信じてもらいたいのだ。

法務省が法無省になる日,それは,政権が法を曲げて勤務延長した1人の検察官が,検察のトップになる日だ。
そのディストピアだけは,何としても避けなければならない。
(引用終わり)

 以下、これまでに公表された弁護士会の会長声明にリンクします。
 もちろん、会長声明は既に出しているけれどホームページへの掲載がまだというところがあるかもしれませんし、既にホームページに掲載されているものが漏れている可能性もないとはいえませんので、悪しからずご了承ください。
 なお、巻末に掲載した「白地図」は、「法務省が法無省になる日」Facebookから転載させていただきました(4月17日現在のもの)。

[日本弁護士連合会]
4/6「検事長の勤務延長に関する閣議決定の撤回を求め、国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明」 
(引用開始)
検事長の勤務延長に関する閣議決定の撤回を求め、国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明
 政府は、本年1月31日の閣議において、2月7日付けで定年退官する予定だった東京高等検察庁検事長について、国家公務員法(以下「国公法」という。)第81条の3第1項を根拠に、その勤務を6か月(8月7日まで)延長する決定を行った(以下「本件勤務延長」という。)。
 しかし、検察官の定年退官は、検察庁法第22条に規定され、同法第32条の2において、国公法附則第13条の規定により、検察官の職務と責任の特殊性に基づいて、同法の特例を定めたものとされており、これまで、国公法第81条の3第1項は、検察官には適用されていない。
 これは、検察官が、強大な捜査権を有し、起訴権限を独占する立場にあって、準司法的作用を有しており、犯罪の嫌疑があれば政治家をも捜査の対象とするため、政治的に中立公正でなければならず、検察官の人事に政治の恣意的な介入を排除し、検察官の独立性を確保するためのものであって、憲法の基本原理である権力分立に基礎を置くものである。
 したがって、国公法の解釈変更による本件勤務延長は、解釈の範囲を逸脱するものであって、検察庁法第22条及び第32条の2に違反し、法の支配と権力分立を揺るがすものと言わざるを得ない。
 さらに政府は、本年3月13日、検察庁法改正法案を含む国公法等の一部を改正する法律案を通常国会に提出した。この改正案は、全ての検察官の定年を現行の63歳から65歳に段階的に引き上げた上で、63歳の段階でいわゆる役職定年制が適用されるとするものである。そして、内閣又は法務大臣が「職務の遂行上の特別の事情を勘案し」「公務の運営に著しい支障が生ずる」と認めるときは、役職定年を超えて、あるいは定年さえも超えて当該官職で勤務させることができるようにしている(改正法案第9条第3項ないし第5項、第10条第2項、第22条第1項、第2項、第4項ないし第7項)。
 しかし、この改正案によれば、内閣及び法務大臣の裁量によって検察官の人事に介入をすることが可能となり、検察に対する国民の信頼を失い、さらには、準司法官として職務と責任の特殊性を有する検察官の政治的中立性や独立性が脅かされる危険があまりにも大きく、憲法の基本原理である権力分立に反する。
 よって、当連合会は、違法な本件勤務延長の閣議決定の撤回を求めるとともに、国公法等の一部を改正する法律案中の検察官の定年ないし勤務延長に係る特例措置の部分に反対するものである。
 2020年(令和2年)4月6日
 日本弁護士連合会
 会長 荒   中
(引用終わり)

[ブロック連合会]
東北弁護士会連合会 
3/14「東京高検黒川弘務検事長の定年延長を行った閣議決定を直ちに撤回することを求める会長声明」 

[弁護士会]
静岡県弁護士会 
3/2「黒川弘務東京高検検事長の定年延長に強い懸念を表明する会長声明」 

京都弁護士会
3/5「検察庁法に違反する定年延長をした閣議決定に抗議し、撤回を求める会長声明」 

滋賀弁護士会 
3/10「検察官に関する不当な人事権の行使に抗議する会長声明」 

仙台弁護士会
3/12「東京高検黒川弘務検事長の定年延長を行った閣議決定を直ちに撤回することを求める会長声明」 

千葉県弁護士会
3/13「東京高等検察庁検事長の勤務延長に対する会長声明」 

大阪弁護士会 
3
/13「検事長の定年延長に関する閣議決定の撤回を求める会長声明」 

三重弁護士会 
3/16「東京高等検察庁検事長の定年延長閣議決定の撤回を求める会長声明」 

東京弁護士会 
3/17「検察庁法に反する閣議決定及び国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対し、検察制度の独立性維持を求める会長声明」 

奈良弁護士会 
3/23「東京高等検察庁検事長の勤務(定年)延長に強く抗議し検察庁法改正案に反対する会長声明」 

山形県弁護士会
3/24「東京高等検察庁黒川弘務検事長の定年延長を行った閣議決定の撤回を求める会長声明」 

兵庫県弁護士会 
3/25「東京高等検察庁検事長の定年延長の閣議決定の撤回を求める会長声明」 

福井弁護士会 
3/25「検察官について違法に勤務延長した閣議決定に抗議し撤回を求める会長声明」 

富山県弁護士会
3/25「検察庁法に違反する検事長の定年延長をした閣議決定に抗議し、撤回を求める会長声明」 

神奈川県弁護士会 
3/26「検事長の定年延長をした閣議決定に強く抗議し撤回を求め、国家公務員法等の一部を改正する法律案中の検察庁法改正案に反対する会長声明」 

栃木県弁護士会 
3/26「東京高検検事長の勤務延長をした閣議決定に強く抗議し、速やかな撤回を求める会長声明」 

岐阜県弁護士会
3/27「検事長の定年延長に関する閣議決定の撤回を求める会長声明」 

福岡県弁護士会 
3/27「検察官の定年後に勤務を延長する旨の閣議決定の撤回を求める会長声明」 

鹿児島県弁護士会 
3/27「検察官の定年延長に関する閣議決定の撤回を求め、国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明」 

広島弁護士会 
3/30「検察庁法に違反する定年延長をした閣議決定に抗議し、撤回を求める会長声明」 

宮崎県弁護士会 
3/30「東京高検検事長の勤務延長に関する閣議決定に抗議し撤回を求める会長声明」 

山梨県弁護士会 
3/31「検察庁法に反する閣議決定の撤回を求めるとともに、国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明」 

沖縄弁護士会 
4/1「検事長の定年延長をした閣議決定の撤回を求める会長声明」

岡山弁護士会 
4/3「東京高等検察庁検事長の勤務延長に関する閣議決定に強く抗議すると共に国公法及び検察庁法改正案に反対する会長声明」 

茨城県弁護士会 
4/7「東京高検黒川弘務検事長の定年延長を行った閣議決定を直ちに撤回することを求め、国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明」 

徳島弁護士会 
4/17「検察庁法に違反する定年延長の閣議決定の撤回を求め、国家公務員法等の一部を改正する法律案反対する会長声明」  

[弁護士会・検察庁法改正案に反対する会長声明]
京都弁護士会 
4/2「検察庁法改正案に反対する会長声明」 

大阪弁護士会
4/16「検察庁法改正を含む国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明」 

(弁護士・金原徹雄のブログから~東京高等検察庁検事長定年延長問題)
2020年2月8日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について~法律の規定は読み間違えようがない 
2020年2月11日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(2)~政府の解釈はこういうことだろうか? 
2020年2月16日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(3)~論点は出そろった(渡辺輝人氏、園田寿氏、海渡雄一氏の論考を読んで) 
2020年2月22日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(4)~「国家的悲劇」を象徴する痛ましい姿(小田嶋隆さんのコラムを読む) 
2020年2月23日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(5)~立憲デモクラシーの会の声明と文理解釈再び 
2020年3月4日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(6)~静岡県弁護士会「黒川弘務東京高検検事長の定年延長に強い懸念を表明する会長声明」を読む 
2020年3月6日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(7)~法律家9団体共同声明を読む 
2020年3月15日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(8)~「違法」だからこそ辻褄が合わなくなる 
2020年3月28日 
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(9)~全国の弁護士会から出された会長声明のご紹介(3/27まで) 


4月17日現在

石埼学龍谷大学教授「議院内閣制から診た安倍内閣」正・続を読む

 2020年4月12日配信(予定)のメルマガ金原.No.3456を転載します。

石埼学龍谷大学教授「議院内閣制から診た安倍内閣」正・続を読む

 龍谷大学法学部教授の石埼学(いしざき・まなぶ)先生には、2016年4月2日に、私も運営委員を務める「守ろう9条 紀の川 市民の会」総会での記念講演をお願いしたことをきっかけに、主としてFacebookを通じて交流させていただいています。
 おかげで、歴代プリキュアについてのマニアックな知識・見識に接することが出来た他、石埼先生に一命を救われた子猫のミー君の成長記録に目を細めたりしてきました。
 もちろん、そのような身辺雑記的なテーマだけではなく、石埼先生が小林武先生と共に編集された憲法の教科書『いま 日本国憲法は 原点からの検証(第6版)』(法律文化社)を入手して勉強させていただく貴重な機会を得たりということもありました。実際、入院という不測の事態があったからでもありますが、司法試験に合格した1986年以来初めて(!)憲法の教科書を通読(精読)し、ブログに感想を書き留めることが出来たのは、私にとっても得難い経験となりました。

 今日取り上げようと思うのは、その石埼先生が、日本共産党中央委員会理論政治誌と銘打たれた「前衛」5月号に発表された論考「続・議院内閣制から診た安倍内閣」及びその正編(「前衛」2019年5月号所収)です。

 そもそも、「前衛」の昨年5月号に掲載された石埼先生の論考「議院内閣制から診た安倍内閣」は、「安倍政権が、日本国憲法が採用した議院内閣制の趣旨を軽視ないし愚弄し、もって日本における国民主権原理に基づく統治の根幹部分を破壊しつつある」ことを、具体例を検討することを通じて明らかにしようとしたものでした。

 そして、そのための方法論として、安倍内閣の特徴を、
(1)国会に対して説明責任を果たしていない。
(2)国会における審議および議決の意義を軽視し、それらにおける野党の存在意義を理解していない。
(3)国会に属する立法権を形骸化し、それを実質上内閣に移譲させようとしている。
という3項目に分類した上で、それぞれについて主要な具体例を取り上げるという構成で論述が組み立てられていました。
 とはいえ、第二次安倍政権が発足した2012年12月から、同稿の執筆を終えた2019年3月までの6年余における安倍政権の「悪行」は数知れず、上記の基準に従って主要なものを選別し、内容を信頼できる出典にあたって確認するだけでも大変な手間であったと思います(私などとても根気が続かない)。

 2019年5月号の正編「議院内閣制から診た安倍内閣」に取り上げられた具体例を列挙すると以下のとおりとなります。

一 国会への内閣の説明責任
1 議院におけるヤジ
〇2015年2月19日・衆院予算委員会 玉木雄一郎議員(民主)に「日教組どうするの、日教組!」
〇2015年5月28日・衆院安保特別委員会 辻元清美議員(民主)に「早く質問しろよ」
〇2015年8月21日・参院安保特別委員会 蓮舫議員(民主)に「そんなこといいじゃないか」
 以上は安倍首相によるヤジであるが、この他にも閣僚等による不規則発言や不適切答弁が4例紹介されています。
2 不誠実な答弁

〇根拠もなく断言する。
〇質問をしている野党議員も熟知している制度や法案の条文を繰り返す。
〇質問されたことに正面から答えない。
〇言葉の意味を限定してはぐらかす。
 安保関連法案、森友学園問題、加計学園問題などに関わる不誠実答弁の実例が指摘されています。
3 公文書の偽造
〇南スーダン派遣陸上自衛隊部隊作成の「日報」隠蔽
〇労働基準法改正(裁量労働制対象拡大)のための政府(厚労省)説明資料におけるデータの異常さ
〇森友学園問題に関わる財務省決裁文書の改ざん
〇入管法改正(特定技能)のための入管資料(失踪特定技能実習生からの聞き取り調査結果)データの虚偽公表
〇「毎月勤労統計」偽装疑惑

二 議院内少数派(野党)
1 強行採決
〇2015年9月17日 参議院安保特別委員会 安保法制法案
〇2017年6月14日~15日 参議院本会議 共謀罪法案(委員会採決省略)
〇2018年12月8日 参議院本会議 入管法改正案(特定技能)等
2 質疑時間
  野党議員による質問時間の割合の減少

3 五三条要求の無視
〇2015年10月21日 野党が憲法53条に基づき臨時会の召集決定を要求⇒翌年の常会まで国会を開かなかった。
〇2017年6月22日 野党が憲法53条に基づき臨時会の召集決定を要求⇒98日経過後の9月28日に召集したが所信表明演説すらせずに衆院を解散した。

三 立法権の簒奪
1 文言の不明確な立法
〇特定秘密保護法
〇共謀罪 特に「準備行為」
2 委任立法
〇2016年 統合型リゾート実施法(カジノ規制基準を省令等に委任する授権規定あり)
〇2018年 働き方改革法(高度プロフェッショナル制度の対象となる業種や収入を省令に委任)
〇2018年 改正入管法(「特定技能」の在留期間、在留資格の有無の認定方法、受け入れ業種や分野等の根幹部分を省令等に委任)

 「どのように、どの程度、議員内閣制から逸脱しているか?」という視点から、安倍内閣を「診断」するというユニークな論考の概略をご理解いただけたでしょうか?

 そして、発売されたばかりの「前衛」2020年5月号に掲載された続編は、「安倍内閣の「政治手法」の議院内閣制からの逸脱をこの1年間(2019年3月中旬から2020年3月中旬)の出来事を振り返って明らかにする」というものであり、つまりは正編に増補する内容となっています。
 もっとも、増補といっても、ページ数は正編と同じ14ページが費やされており、それだけ「悪の種は尽きない」だけではなく、1つ1つの論点に費やす分量が多めになっており(正編は紙幅の制限から、箇条書き的にならざるを得なかった面があると思います)、それだけ読み応えがあります。

 「続・議院内閣制から診た安倍内閣」も、正編の構成を基本的に踏襲しています。
 以下には、各項目で取り上げられた問題事例の「見出し」だけご紹介しておきます。

一 国会への内閣の説明責任
1 議院におけるヤジ
〇2019年11月6日・衆院予算委員会 今井雅人議員(無所属)に対し「あなたじゃないの」
〇2020年2月12日・衆院予算委員会 辻元清美議員(立憲)に対し「意味のない質問だよ」
2 理解不能な、または虚偽の答弁
〇2019年11月~ 「桜を見る会」及び「前夜祭」関連の安倍首相答弁
〇2020年2月~ 黒川弘務東京高検検事長定年延長問題についての森雅子法相らによる一連の答弁
3 公文書の廃棄
〇「桜を見る会」招待者名簿の廃棄。過去の招待者名簿の違法な管理。一部改ざんした資料の国会への提出。

二 議会内少数派(野党)の存在意義の軽視
1 与党による予算委員会の開催拒否
野党からの開催要求があったにもかかわらず、
〇第198国会(常会) 2019年3月1日以降、衆院予算委員会を事実上開かず。
〇同 2019年3月27日以降、参院予算委員会を事実上開かず。
〇第200国会(臨時会) 2019年11月6日意向、衆院予算委員会を事実上開かず。
2 麻生大臣の答弁
〇2020年1月28日 衆院予算委員会 「マーケットに与える影響はきわめて大きいので、我々はマーケットと仕事をしていますので、野党と仕事をしているんじゃない。マーケットとやらなきゃいかぬと思う」と答弁。

三 立法権の簒奪
1 東京高検検事長定年延長問題
2 閣議決定による自衛隊の中東派遣

 以上、石埼学先生による「議院内閣制から診た安倍内閣」正編・続編で取り上げられた安倍政権による問題事例をご紹介してきました。
 一読、全ての項目について「ああそういうことがあったな」と思い出していただけた方はどれほどおられたでしょうか。
 ここ1年間の出来事を取り上げた続編ですら、与党による予算委員会の開会拒否って憶えていました?

 私は、石埼先生が取り上げた問題事例は(程度の濃淡はあれ)一応全て記憶していましたが、これは、私が2013年1月(第二次安倍政権発足の翌月です)から昨年1月までの丸6年間、「ブログ毎日更新」を続けていたという特殊事情によります。
 普通の人は、7年半近くも経てば、「安倍批判疲れ」に陥るのも無理はないし、細かなことまで一々憶えていられませんよね。

 けれども、安倍政権のひどさは度を超えているというか、あり得ないレベルのものです。最近におけるその代表例は検事長定年延長問題(及びそれに付随する検察庁法「改正」問題)ですが、そのタイミングで発生した新型コロナウイルス禍すら、政権延命に役立てようとしているかのようです。

 そのような状況の下、「安倍内閣に、国民のための政治など望むべくもない」ことを理論的に指し示すため、日本の統治機構の根幹である議院内閣制からの常軌を逸した「逸脱」という確かな視座を提供することが、「議院内閣制から診た安倍内閣」正・続の重要な役割であろうと思います。

 その上で、この論考をどう活用していくかが、今後の私たち一人一人が担うべき課題でしょう。

(余談)
 石埼先生の論考(正・続とも)では、私のブログを後注の中で参照先として紹介してくださっており、大変光栄です。

[正編]注(2) 安倍首相による「私は立法府の長」発言について    
 
http://kimbara.hatenablog.com/entry/2018/11/03/175437 (wakaben6888のブログ)
  ※弁護士・金原徹雄のブログ http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/52635022.html 
[続編]注ⅴ 東京高検検事長定年延長問題について  
 
http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/54300679.html 
 ※最新の(9) http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/54468459.html 

(弁護士・金原徹雄のブログから/石埼学氏関連)
2015年5月29日
龍谷大学・石埼学教授による日本国憲法講義「平和主義と安保法制」を受講しよう 
2016年2月10日 
石埼学(いしざきまなぶ)龍谷大学法科大学院教授(憲法学)講演会へのお誘い~4/2「守ろう9条 紀の川 市民の会」@和歌山市 
2016年4月2日 
石埼学龍谷大学法科大学院教授の講演をレジュメから振り返る~4/2「守ろう9条 紀の川 市民の会」第12回総会から 
2016年4月5日 
石埼学龍谷大学法科大学院教授の【設問】に答える~「安保法制」講師養成講座2 
2016年9月11日 
治安維持法と自民党改憲草案~石埼学龍谷大学法科大学院教授の講演レジュメで学ぶ(9/8国賠同盟近畿ブロック会議より) 
2018年8月4日 
『国会を、取り戻そう!議会制民主主義の明日のために』(石川裕一郎、石埼学、清末愛砂、志田陽子、永山茂樹共編著)を読む 
2019年3月23日 
『いま 日本国憲法は 原点からの検証(第6版)』(小林武・石埼学編)を読む~入院読書日記(1) 
2019年4月10日 
「前衛」5月号の特集「安倍内閣との対決点」に注目した


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和歌山県・高野町の取組~住民への消毒液とマスク(1人あたり50枚)の配布~から考える

 2020412日配信(予定)のメルマガ金原No.3455を転載します。

和歌山県・高野町の取組~住民への消毒液とマスク(1人あたり50枚)の配布~から考える

 新型コロナウイルス感染症による「災厄」に対し、住民・国民を守るために地方公共団体や国が何をしようと努め、何をしたかについて、日々、ものを思わない人はいないでしょう。
 その一々をブログに書き留めることに意義はあるのかもしれませんが、私自身の身辺の事情や意欲の問題もあり、これまでそのような問題を取り上げることはしてきていませんでした。

 もちろん、ワシントンポスト(アジア太平洋版)にまで、「和歌山モデル」として称揚された和歌山県におけるPCR検査の効果的な実施と感染封じ込め対策については、私自身、仁坂吉伸知事が推進するIR誘致に大反対であるという立場は立場として、それなりに評価してFacebookで関連情報をシェアなどしてきました。
 一昨日(4月10日)、東京の日本記者クラブと和歌山県庁をインターネットで結び、仁坂知事のリモート会見が行われましたので、関心のある方にはアーカイブ動画の視聴をお勧めします。

20200410「新型コロナウイルス」(8)  仁坂吉伸・和歌山県知事(57分)


 私が特にお勧めしたいのは、53分頃から、このような危機に臨んだトップのあり方について質問されたのに対し、仁坂知事が「一番大事なのは『論理』であり、しっかり議論すればよい。一番いけないのは『ええかっこしい』である」(金原による要約)と答えた部分です。

 さて、本題に戻り、「住民・国民を守るために地方公共団体や国が何をしようと努め、何をしたか」について、今日私がご紹介しようとするのは、弘法大師空海が開いた高野山金剛峯寺が所在する和歌山県伊都郡高野町(こうやちょう)の取組です。

 私が、高野町独自の取組に気が付いたのは、毎日新聞(ネット版)の以下の記事を読んだ時でした。短い記事であり、無料サイトで公開されていますので、全文引用させていただきます。

毎日新聞2020年4月7日 地方版
新型コロナ 高野町が「消毒液」配布へ 児童らに洗えるマスクも /和歌山
(引用開始)
 新型コロナウイルスの感染予防対策として、高野町は16日から、手指などの消毒に使われる次亜塩素酸水の町民への配布を始めることを明らかにした。次亜塩素酸水を生成する装置を購入し、町役場と富貴支所で毎週月曜日と木曜日の午前9時~午後6時に配布する。毎回1人500ミリリットル以内で、洗浄済みペットボトルなどの容器を持参してもらう。
 また、町内のこども園や小中学校の園児、児童、生徒計約230人を対象に、洗えるマスクを1人に付き3~4枚配布するという。
 一方、影響を受けている観光業や住民の暮らしなどに対する経済対策として、町内全域(公共施設を除く)の水道料金や下水道などの使用料の5~7月請求分を無料とする方針も固めた。対策に関係する計約1億3000万円の一般会計補正予算案を町議会に提出する予定だ。【藤原弘】
(引用終わり)

 「次亜塩素酸水」というのは聞き慣れない上に、自治体が住民を対象に消毒液を配布するというのは興味深いと思い、高野町ホームページで確認したところ、4月9日付で以下の告知がアップされていました。

安全に使える除菌水「次亜塩素酸水」を町民の皆さまに配布します(※PDF

 「次亜塩素酸水(微酸性電解水)」(じあえんそさんすい/びさんせいでんかいすい)の性質については詳しく説明されていますが、正直、私にはよく分かりません。
 ただ、一般的な消毒液の入手難を経験した人(多くの人が経験したと思いますし、当然、高野町の町民の皆さんもそうでしょう)にとっては、とてもありがたい施策だと思います。

 そして、翌4月10日に高野町のホームページにアップされたのが「町民の皆様にマスクを配布します!」というお知らせでした。
 以下に告知文を引用します。

(引用開始)
              マスクを配布します!
新型コロナウイルス感染症対策として、住民の皆さまにマスクを配布します。
〇配布場所
 ①高野町役場 9:00~18:00
 ②富貴支所   9:00~17:00
〇配布日 令和2年4月20日から
〇配布枚数 お一人あたり 1箱(50枚入り)
〇対象者 高野町に住所を有する住民すべての方
〇交換方法 郵送で届くハガキがマスク引換券です。必ずご持参ください。
※住民の皆さまのマスクについては、人数分確保しております。
〇お問い合わせ
 高野町福祉保健課 0736-56-2933
(引用終わり)

 除菌水「次亜塩素酸水」配布の案内文にはなかったエクスクラメーション・マーク「!」が付いていることからも、高野町職員の「達成感」がしのばれます。ここまでこぎ着けるには、それなりの努力が必要だったはずですものね。

 ここまで読んできて、「素晴らしい!」と思ったその次に、自分の住む自治体と思い比べながら、「高野町ではなぜこのような取組ができるのか?」という疑問がわいてくるのが普通の反応でしょう。
 「人口が少ないので、必要とするマスクの量や予算規模も少なくて済むからではないか?」ということは、一応誰でも思いつくことでしょう。
 実際、人口92万人台の和歌山県(和歌山より少ないのは7県のみ)にある30市町村の中でも、高野町の人口は下から数えて4番目(多分)の約3,000人です。

 しかし、人口の多寡が本当に問題なのでしょうか?
 「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」についての4月7日付閣議決定には、例の「1住所当たり布マスク2枚配布」という、国際的にも揶揄・嘲笑の対象となった政策が(今さら引っ込みもつかないのでしょう)以下のように掲げられていました(8頁~)。

(引用開始)
 国内でマスク・消毒液等を製造する企業に対して生産設備への投資を支援することで更なる増産に取り組み、マスクについては月7億枚を超える供給を確保するなど、例年の需要を上回る供給量を確保する。
 その上で、マスク等の衛生資材を、介護施設、障害者福祉施設、保育所及び学校等に配布する。布製マスクについては、政府による買上げにより、介護施設利用者等及び妊婦に対して、順次、必要な枚数を配布するとともに、全国の小学校・中学校・高等学校・特別支援学校・高等専修学校等の児童・生徒及び教職員に対して、4月以降、1人2枚配布する。加えて、全国で 5,000 万余りの世帯全てを対象に1住所当たり2枚配布する。
(引用終わり)

 国が全国民(というか全「住所」)に布マスクを配布できるのであれば、はるかに住民に近い立場にある基礎自治体(市町村)が、全住民にマスクを当面の必要量配布することが不可能なはずはないでしょう。当然、個々の自治体の中には「必要量のマスクが確保できない」「予算の手当がつかない」というところも出てくるはずで、それを援助するのが国の仕事でしょう。「布マスク2枚配布」について、大半の国民が呆れ返ったのは、以上のような役割も弁えず、人気取りのために400億円以上の貴重な国費を蕩尽しようとする国の底意が見え透いていたからだと思います。
 私が、一昨日の仁坂吉伸和歌山県知事の日本記者クラブ会見の中で、特に「一番大事なのは『論理』であり、しっかり議論すればよい。一番いけないのは『ええかっこしい』である」という部分に感銘を受けたのは、以上のような感慨から来たものなのです(仁坂知事の真意が奈辺にあるかは知りませんが)。

 もとより、頑張っていいる自治体は高野町だけではありません。マスクが不足しがちな医療機関や福祉機関に優先的に配布しているところも多いと聞いています。
 また、埼玉県川口市のように、経営難に陥っている小規模事業者に一律10万円を独自に支給すると発表した自治体もあります。
 これからも、「新型コロナウイルス感染症による「災厄」に対し、住民・国民を守るために地方公共団体や国が何をしようと努め、何をしたかについて」注意深く見守っていくとともに、素晴らしい取組には賞賛の声を届けたいと思います。

(追記/2020年4月13日)
 Facebookやブログで高野町のコロナウイルス感染症対策としての住民サービスをご紹介しましたが、同町では、公式ホームページの他に「高野町長室」というFacebookページを開設し、タイムリーな情報発信に努めておられるようです。以下の投稿で、消毒液やマスクの配布に要する予算規模なども分かります。
 公式ホームページにも同内容のPDFファイルが掲載されていますが、探すのはなかなか大変で、Facebookをフォローする方が断然情報を入手しやすいように思います。
 ちなみに、元投稿のコメント欄を読むと、写真に写っている町長室の椅子は自費で購入したものを持ち込んでいるのだとか。平野町長はモータースポーツ愛好家なのだろうか?
 また、平野町長は徳島文理大学薬学部卒で、20年近く薬剤師として町立高野山病院に勤務していたとか。その経歴が役立っているかもしれませんね。
 https://www.jiji.com/sp/v2?id=20140604top_interview31_36 
 http://www.yakuyukai.org/whatsnew/?p=497

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“HAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama 2020”中止のお知らせと“2014~2019”回顧

 202045日配信(予定)のメルマガ金原No.3454を転載します。

HAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama 2020”中止のお知らせと“20142019”回顧

 HAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama 2020実行委員会が、今年の中止を発表したのが3月31日のことでした。
 今年は、私自身、実行委員会での議論に全然参加できておらず、中止するかどうかについて若干の意見を述べただけですが、2014年の第1回以来、それなりに企画に関わってきた者として、ブログに記録はとどめておくべきかと思います。
 ということで、まずは実行委員会からの「中止のお知らせ」をお読みください。

(引用開始)
         “HAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama 2020”中止のお知らせ

 2014年以来、毎年5月3日の憲法記念日に、和歌山城西の丸広場を会場として開催してきた“HAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama”。今年も5月3日に、多くの皆さんと楽しく交流し、普段意識することの少ない「憲法」について、1人でも多くの人に思いをめぐらすきっかけとしていただきたいと願い、準備を重ねてまいりました。
 この間、多くの団体から様々なブース企画のお申し込みをいただくと共に、ステージで素晴らしい演奏を披露してくださるはずのバンド、学校などから出演の内諾をいただいていました。また、実行委員会構成団体の多くが講演でお世話になり、和歌山ともご縁が深かった故・中村哲医師を追慕し、その業績を振り返るためのパネル展示も、ペシャワール会のご協力を得て開催する運びとなっていました。
 しかしながら、皆様ご承知のとおり、全世界的な新型コロナウイルス感染症の蔓延という予期せぬ事態の発生のため、私たちも、企画を実施するか中止するかの選択を迫られることとなりました。
 毎年フィナーレのお約束として参加者から大好評を博していた「餅まき」については、濃厚接触、密集を避けるため「配布」に切り替える、あるいは取りやめるなどの対策を検討しました。
 その他、体調不良者に参加を自粛していただく、消毒薬やマスクを確保する、万一に備えて参加者名簿への連絡先記入をお願いするなど、中止を避けるための対策も検討してきました。
 しかしながら、限定された参加者のみの集会ではなく、広い屋外に不特定多数の方が参加されることを前提としたイベントであるという性格上、主催者として万全の対処はしきれないと判断せざるを得ませんでした。
 毎年のこの「憲法のお祭り」を楽しみにしていただいている市民の皆様、そして、出演・出展(店)を予定しておられた皆様には大変申し訳ございませんが、今年の5月3日に西の丸広場で予定していた“HAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama 2020”は中止することと致しました。
 規模を縮小してでも、秋以降に開催できないかについては、実行委員会で今後検討致しますが、関係する方々も多数おられることから、取り急ぎ「今年の5月3日は中止します」ということをお伝えすることと致しました。
 何卒事情ご賢察の上、ご了解くださいますようお願い致します。
 また皆様と、心置きなく憲法の誕生日をお祝いするために再会できることを、実行委員会一同心から願っております。
   2020年3月31日
     HAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama 2020実行委員会
引用終わり)


 中止に至った事情については、上記のお知らせに特に付け加えることはありません。もちろん、考慮した事情を全部書いてある訳ではありませんが、その必要もないでしょうし。

 「お知らせ」としては以上でおしまいなのですが、せっかくほぼ1年ぶりにこのブログで“HAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama”を取り上げたのですから、2014年から2019年まで、毎年の憲法記念日に、和歌山城西の丸広場で開催を続けてきた過去の6回分を回顧したいと思います。
 といっても、1回ごとに回顧するとなるといくら時間があっても追いつかず、今の私にはそのような余裕はありませんので、過去に書いた私のブログにリンクするという、はなはだ安直な方法でご勘弁いただきたいと思います。
 巻末に掲げたリンク集がそれですが、これらは、大別すると事前予告とレポートに分けられます。特に、ステージやブースなどの写真を中心にFacebookに投稿した記事をまとめた「写真レポートで振り返る~」シリーズは、第2回(2015年)からずっと継続してブログに掲載を続けている準「公式記録」(?)と言ってもよいようなものなので、お時間があれば、是非ご覧になっていただければと思います。

 以下には、「写真レポートで振り返る~」シリーズを始める前の2014年、第1回をレポートした「憲法記念日に届いた“西谷文和さん”と“はちようび”からのメッセージ(和歌山城西の丸広場にて)」の中から、この企画の「初心」を感じていただけるのではないかと思われる部分を引用します。

(引用開始)
 普段、憲法や平和運動などと接点のない人たちに、どうすれば私たちの声を届けることができるのか?ということは、ほとんど「永遠の課題」であり続けるかもしれないという「あきらめの気持ち」にとらわれることもしばしばでしたが、今は「あきらめる余裕などない」段階であり、「子ども連れでも楽しく過ごせる(特注風船+ヘリウムガスも用意)」、「和歌山県民の大好きな“餅まき”大会を実施(豪華景品付き)」という企画内容も、そのような問題意識からでした。
 今まで憲法について考える機会のなかった人たちに、少しでも憲法について考えてもらう機会になればということで、餅まき大会の景品にも、
 伊藤真弁護士DVD『憲法ってなあに?憲法改正ってどういうこと?』 8枚
 赤塚不二夫、永井憲一著『「日本国憲法」なのだ!』 8冊
 小学館版(「写楽」編)『日本国憲法』 15冊
などを用意しました。
 そのような所期の目標は、かなりの程度達成できたのではないかと思います。
 さらに多くの人に来て欲しかったなど、言い出せばきりがありませんが、それは来年以降の課題(来年もやるかどうかなど何も決まっていませんが)として、とにかく向こう1年間、これ以上政権の好き勝手を許さず、憲法を守り抜く覚悟が必要であることを再認識する機会にもなったと思います。
(引用終わり)

 最後に、昨年のHAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama 2019を小谷英治さんが撮影し、YouTubeにアップされた動画をご紹介します。個々のステージ企画出演者の皆さんに、YouTubeへのアップの可否を確認した上で(私が確認したのでした)、ご了解が得られた分が公開されています。
 いずれも素晴らしい演奏や踊りです。今年が中止になった代わりにはならないかもしれませんが、これらの演奏や踊りを視聴され、「心置きなく憲法の誕生日をお祝いするために再会」する日を心待ちにしていただければと思います。

Happy Birthday 憲法 in Wakayama 2019 1(22分)

冒頭~ 開会・藤井幹雄実行委員会代表挨拶
3分~ 和歌山朝鮮初中級学校・中級部

Happy Birthday 憲法 in Wakayama 2019 2(48分)

冒頭~ Halau Uilani(ハワイアンフラ)
30分~ 紀道(平和の祈りのダンス)
42分~ わかやま平和賞贈賞式

Happy Birthday 憲法 in Wakayama 2019 3(1時間12分)

3分~ 紀北農芸高校和太鼓部
34分~ Crowfield

(弁護士・金原徹雄のブログから/“HAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama”関連)
2014年4月11日 
5月3日は“HAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama”に集いましょう(和歌山城西の丸広場) 
2014年5月3日 
憲法記念日に届いた“西谷文和さん”と“はちようび”からのメッセージ(和歌山城西の丸広場にて) 
2015年4月4日 
5月3日は各地の憲法集会に!~和歌山市は“HAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama 2015” 
2015年5月3日 
右翼の街宣車を圧倒した高校生たちの演奏の力~“HAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama 2015”から」
2015年5月12日 
写真レポートで振り返る“HAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama 2015” 
2016年3月21日 
第一報“HAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama 2016”(5/3@和歌山城西の丸広場)今年もやります!
2016年5月5日 
写真レポートで振り返る“HAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama 2016” 
2017年4月30日 
今年も憲法記念日には和歌山城西の丸広場へ!~“HAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama 2017”へのお誘い 
2017年5月4日 
写真レポートで振り返る“HAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama 2017” 
2018年3月15日 
速報“HAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama 2018”(5/3@和歌山城西の丸広場)~今年は玉田玉秀斎師匠による「憲法講談」上演! 
2018年5月5日 
写真レポートで振り返る“HAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama 2018” 
2019年4月29日 
“HAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama 2019”(5/3@和歌山城西の丸広場)にご参加を!~10連休ですが今年もやります 
2019年5月4日 
写真レポートで振り返る“HAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama 2019”  

※写真は昨年(2019年)のフィナーレ、餅まきの模様です。

DSCN4650中止のお知らせ

残念なお知らせ~4/28志田陽子先生講演会(青法協和歌山支部憲法記念行事)の「中止」について

 2020331日配信(予定)のメルマガ金原No.3453を転載します。

残念なお知らせ~4/28志田陽子先生講演会(青法協和歌山支部憲法記念行事)の「中止」について

 1984年以来、毎年、憲法記念日の前後に開催してきた青年法律家協会和歌山支部主催による憲法記念行事。回を重ねて今年が37回目を迎えることになっていました。
 一昨年、前川喜平氏、寺脇研氏、堀内秀雄氏をお迎えして、「これからの日本 憲法と教育の危機」というテーマで第35回を開催するにあたり、それまでの34回分の一覧表を作っていますので、ご紹介しておきます。
 ちなみに、昨年の第36回は東京新聞の望月衣塑子記者に講演をお願いしました。

 そして、今年の第37回は、昨年の「あいちトリエンナーレ2019」中の「表現の不自由」展中止問題に端を発して続々と問題事例が浮上した「表現の自由」をメインテーマに取り上げたいということになり、武蔵野美術大学教授の志田陽子先生にお願いしてみようと衆議一決した上で、Facebook友達である私からお願いの連絡を差し上げたところ、即座にご快諾いただき、「表現の自由・2020―芸術の自由、民主主義、そして憲法改正」という欲張った(?)タイトルも決まり、着々と準備を重ねてきたという次第です。

 どれほど期待していたかということを書き出すときりがありませんので、2点だけ指摘すると、まず企画の中身についてです。
 チラシに記載するための講演要旨を講師の志田先生ご自身に書いていただきました。

(引用開始)
憲法21条「表現の自由」も「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果」(憲法97条)です。なぜ大切なのか。2019年から2020年は、芸術や映画をめぐって、日本中でこのテーマが噴出しました。その余波は、一般市民の表現にも、民主主義にも、憲法改正の議論にも・・・。この余波を、萎縮の波にするのではなく「自由」への気づきの波にしていくために。講話とスライド、そして歌で「表現の自由」の歴史と現在(2020年)を映し出します。
(引用終わり)

  「講話とスライド、そして歌で」ですからね・・・。いやが上にも期待が盛り上がります。

 そしてチラシです。私が最も信頼する地元のグラフィックデザイナーMKさんにお願いして作っていただいたチラシが素晴らしい!(巻末に掲載します)
 志田先生にもとても気に入っていただきました。

 ・・・と、ここまで期待が盛り上がりながら、「中止のおしらせ」をしなければならないのは痛恨の極みです。
 2月の中旬頃から「3月の企画をどうしよう」と話し合っていた段階では、「4月28日の青法協はまだだいぶ先なので大丈夫では?」という淡い期待もありましたが、大都市部を中心に感染拡大の傾向は止まらず、新型インフルエンザ等対策特別措置法32条に基づく緊急事態宣言の発出も取り沙汰される中、主催者として責任をもって開催に踏み切れる状況ではないと判断せざるを得ませんでした。

 以下に、昨日(3月30日)付の「中止のお知らせ」を掲載します。
 その末尾にも書きましたように、青法協和歌山支部としては、今年の4月28日こそ「中止」としましたが、志田先生の講演会は何としても開催したいと考えており、志田先生からも好意的なお返事をいただいています。もしかしたら、1年先の「憲法記念行事」としての開催となるかもしれませんが、何卒ご期待ください。皆さんと心置きなく和歌山の地で、志田先生のお話と歌(?!)に耳を傾ける「憲法を考える夕べ」を是非とも実現したいと考えています。

(引用開始)
                                   2020年3月30日
各 位

         青法協憲法記念行事(4/28 志田陽子氏講演会)
                   中止のお知らせ
                             青年法律家協会和歌山支部
                               
 支部長 丸 山   哲

 いつも大変お世話になっております。
 さて、青年法律家協会和歌山支部では、1984年以来、毎年憲法記念日の前後に、憲法の理念について市民の皆様と共に考えるための憲法記念行事を開催しており、37回目となる今年も、来る4月28日(火)午後6時00分から、和歌山県民文化会館小ホールにおいて、武蔵野美術大学教授の志田陽子氏に「表現の自由・2020~芸術の自由、民主主義、そして憲法改正」というテーマでご講演いただくことになっておりました。
 講師の志田先生は、憲法研究者として、とりわけ表現の自由と芸術法の分野で顕著な業績を重ねてこられ、昨年の「あいちトリエンナーレ2019」をきっかけとして噴出した「表現の不自由」現象につき、活発に意見表明されているばかりか、「歌う憲法学者」としても著名な方であり、当支部の講演会でも何曲かご披露いただけるということで、私たちも非常に楽しみにしておりました。
 しかしながら、皆様ご承知のとおり、COVID-19(いわゆる新型コロナウイルス感染症)の蔓延は、現時点では収束のめどもつかず、国内各地において、市民への外出自粛の要請などが行われているという状況です。

 本行事も、300人規模の密閉された会場に不特定の方が参加される企画であり、感染予防のための手段にも限りがあることから、期待してくださっている皆様にはまことに申し訳ありませんが、4月28日に予定していた憲法記念行事(志田陽子氏講演会)はいったん中止とさせていただきます。
 ただ、主催者としては、志田先生に是非当地でご講演いただきたいという希望は持ち続けており、新型コロナウイルス感染症をめぐる情勢を勘案しながら、いずれかの時期に企画を実現したいと考えております。そのような新企画を1日も早くお知らせできることを願っております。
(引用終わり)

開催を告知したブログ

(弁護士・金原徹雄のブログから/志田陽子さん関連)
2016年8月21日
響け!歌声 自由のために 歌と映画と憲法と~予告8/28志田陽子教授(武蔵野美術大学・憲法学)がおくる歌と講演(平和を育てる大泉9条の会)
2017年6月9日
「九条の会・小平12周年の集い」(星美智子さんの歌と志田陽子さんの講演)を視聴する
2018年7月11日
志田陽子さん(武蔵野美術大学教授)が歌い、語る「楽しく聴いて知るコンサート」を視聴しましょう
 ※リンク先の動画は削除されています。
2018年12月20日
志田陽子さん(武蔵野美術大学教授)講演「安保法制違憲訴訟における平和的生存権・人格権」と『虚空(そら)の名前』など3曲の演奏を聴く
2019年1月20日
志田陽子さん(武蔵野美術大学教授)公演「歌でつなぐ憲法の話~憲法に託された夢と希求」(2019年1月14日@新宿区角筈区民ホール)を視聴する
 ※リンク先の動画は削除されています。
2019年4月30日
『「表現の自由」の明日へ 一人ひとりのために、共存社会のために』(志田陽子著)を読む~入院読書日記(2)

(弁護士・金原徹雄のブログから/青法協和歌山支部憲法記念行事関連)
2013年3月31日
予告4/26&5/11・孫崎享氏“連続”講演会(in和歌山市)
2014年4月26日
半田滋さんの講演から学んだこと(付・半田滋さんの論説『首相の奇妙な状況認識』を読む)
2015年3月25日
山本健慈和歌山大学学長 最後の卒業式式辞(付・予告4/29山本健慈氏講演会「学び続ける自由と民主主義~不安の時代に抗して」)
2016年3月18日
開催予告4/30青井未帆氏講演会「違憲無効な安保法制にどう立ち向かうか~法律施行という状況をふまえて~」(青法協和歌山支部)のご案内
2017年4月28日
中野晃一氏講演会「市民の力で立憲民主主義を創る~他者性を踏まえた連帯の可能性~」@和歌山市(4/28)の動画紹介
2018年4月28日
前川喜平氏、寺脇研氏、堀内秀雄氏「これからの日本 憲法と教育の危機」(青年法律家協会和歌山支部)に1,500人!~天の時・地の利・人の和
2019年4月6日
望月衣塑子さん(東京新聞記者)が和歌山で講演されます~2019年4月26日@和歌山県民文化会館小ホール(青法協・憲法を考える夕べ)

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東京高等検察庁検事長定年延長問題について(9)~全国の弁護士会から出された会長声明のご紹介(3/27まで)

 2020328日配信(予定)のメルマガ金原No.3452を転載します。

東京高等検察庁検事長定年延長問題について(9)~全国の弁護士会から出された会長声明のご紹介(3/27まで)

 私のブログに不定期連載(?)してきた「東京高等検察庁検事長定年延長問題について」の(6)において、全国の弁護士会の先陣を切った静岡県弁護士会による「黒川弘務東京高検検事長の定年延長に強い懸念を表明する会長声明」をご紹介しました。
 同会は、最初の声明ということもあってか、「黒川弘務氏の定年延長を閣議決定したことは,検察庁法に違反する疑いが強い。」ので「ここに強い懸念を表明する。」という表現にとどまっていました。

 そして、静岡に続いて3月5日に会長声明を出した京都弁護士会は、「検察庁法に違反する定年延長をした閣議決定に抗議し、撤回を求める会長声明」という表題から明らかなように、躊躇なく「違法」と断じており、その後に出た各地弁護士会の会長声明も、私の見た範囲では、全て「違法」であると主張していました。

 しかしながら、まだどこの弁護士会も声明を出していない段階で、会長声明の発出に踏み切った静岡県弁護士会の先見性は明らかである上に、その緻密な論証は、今なおこれまで出された各種声明(弁護士会以外の団体からのものも含めて)の中で、最高レベルの説得性を持っていると私は考えています。
 もちろん、後に続いた多くの弁護士会の声明も、個々に独自の論点に言及したり、力点の置き所を工夫するなど、それぞれ読み応えのある声明が多いことは言うまでもありません。
 また、内閣が3月13日に国会に提出した束ね法案「国家公務員法等の一部を改正する法律案」中の検察庁法「改正」案に断固反対することを併せて主張する声明も、増えつつあります。

 そのような中、私も登録している法律家団体のメーリングリストに福井弁護士会の島田広弁護士から、3月27日までに検事長定年延長に(会によっては検察庁法「改正」案にも)反対する会長声明を出している弁護士会が(ホームページで確認できたところだけですが)、全国52会(東京に3会、北海道に4会)の内17会に達しており、全国に8会あるブロック連合会の内、1会(東北弁護士会連合会)も同様の声明を出している旨、一覧リンク付きで投稿がありました。
 これまでも、気が付くたびにFacebookでこれらの会長声明をご紹介してきましたが、以下に、島田先生の投稿を少し手直しして(地域順ではなく日付順にした)、これまでに会長声明を発出した弁護士会一覧をご紹介します。
 もちろん、会長声明は既に出しているけれどホームページへの掲載がまだというところがあるかもしれませんし、既にホームページに掲載されているものが漏れている可能性もないとはいえませんので、悪しからずご了承ください。

[ブロック連合会]
東北弁護士会連合会
3/14「東京高検黒川弘務検事長の定年延長を行った閣議決定を直ちに撤回することを求める会長声明」

[弁護士会]
静岡県弁護士会
3/2「黒川弘務東京高検検事長の定年延長に強い懸念を表明する会長声明」

京都弁護士会
3/5「検察庁法に違反する定年延長をした閣議決定に抗議し、撤回を求める会長声明」

滋賀弁護士会
3/10「検察官に関する不当な人事権の行使に抗議する会長声明」

仙台弁護士会
3/12「東京高検黒川弘務検事長の定年延長を行った閣議決定を直ちに撤回することを求める会長声明」

千葉県弁護士会
3/13「東京高等検察庁検事長の勤務延長に対する会長声明」

大阪弁護士会
3/13「検事長の定年延長に関する閣議決定の撤回を求める会長声明」

三重弁護士会
3/16「東京高等検察庁検事長の定年延長閣議決定の撤回を求める会長声明」

東京弁護士会
3/17「検察庁法に反する閣議決定及び国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対し、検察制度の独立性維持を求める会長声明」

奈良弁護士会
3/23「東京高等検察庁検事長の勤務(定年)延長に強く抗議し検察庁法改正案に反対する会長声明」

山形県弁護士会
3/24「東京高等検察庁黒川弘務検事長の定年延長を行った閣議決定の撤回を求める会長声明」

兵庫県弁護士会
3/25「東京高等検察庁検事長の定年延長の閣議決定の撤回を求める会長声明」

福井弁護士会
3/25「検察官について違法に勤務延長した閣議決定に抗議し撤回を求める会長声明」

神奈川県弁護士会
3/26「検事長の定年延長をした閣議決定に強く抗議し撤回を求め、国家公務員法等の一部を改正する法律案中の検察庁法改正案に反対する会長声明」

栃木県弁護士会
3/26「東京高検検事長の勤務延長をした閣議決定に強く抗議し、速やかな撤回を求める会長声明」

岐阜県弁護士会
3/27「検事長の定年延長に関する閣議決定の撤回を求める会長声明」

福岡県弁護士会
3/27「検察官の定年後に勤務を延長する旨の閣議決定の撤回を求める会長声明」

鹿児島県弁護士会
3/27「検察官の定年延長に関する閣議決定の撤回を求め、国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明」

(弁護士・金原徹雄のブログから~東京高等検察庁検事長定年延長問題)
2020年2月8日
東京高等検察庁検事長定年延長問題について~法律の規定は読み間違えようがない
2020年2月11日
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(2)~政府の解釈はこういうことだろうか?
2020年2月16日
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(3)~論点は出そろった(渡辺輝人氏、園田寿氏、海渡雄一氏の論考を読んで)
2020年2月22日
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(4)~「国家的悲劇」を象徴する痛ましい姿(小田嶋隆さんのコラムを読む)
2020年2月23日
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(5)~立憲デモクラシーの会の声明と文理解釈再び
2020年3月4日
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(6)~静岡県弁護士会「黒川弘務東京高検検事長の定年延長に強い懸念を表明する会長声明」を読む
2020年3月6日
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(7)~法律家9団体共同声明を読む
2020年3月15日
東京高等検察庁検事長定年延長問題について(8)~「違法」だからこそ辻褄が合わなくなる

拡散大希望!週刊文春があの森友特集記事を全文無料公開

 メルマガ金原・号外(2020年3月25日)を配信します。

Facebookから転載します。

【拡散大希望!週刊文春があの森友特集記事を全文無料公開】

 週刊文春が、完売して入手不能となっていた「3月26日号」の中の森友記事を今日(3/25)から全文無料公開したと執筆者の相澤冬樹記者(大阪日日新聞)自身がYahoo!ニュースで紹介しています(4分割されてアップされています)。

 森友記事を含む「3月26日号」そのものは、Kindle版(電子書籍)として税込400円で発売中にもかかわらず、全文無料公開に踏み切った文春の心意気に感謝し、是非周りに広めてくだるようお願いします。

週刊文春 2020年3月26日号[雑誌]
桜玉吉
文藝春秋
2020-03-18


週刊文春編集部から
「「週刊文春」2020326日号に掲載された大阪日日新聞記者・相澤冬樹氏による記事「森友自殺〈財務省〉職員遺書全文公開 『すべて佐川局長の指示です』」が大きな反響を呼んでいる。「週刊文春」編集部は完売により記事が読めない状況を鑑み、文春オンラインで全文公開する。真面目な公務員だった赤木俊夫さんに何が起きていたのか。森友問題の「真実」がここにある。」

「すべて佐川局長の指示です」――森友問題で自殺した財務省職員が遺した改ざんの経緯【森友スクープ全文公開#1】

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