弁護士・金原徹雄のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します。

森友学園スキャンダルへの向き合い方~自分自身で納得できる「時系列表」を作るのが理想

 今晩(2017年2月26日)配信した「メルマガ金原No.2735」を転載します。

森友学園スキャンダルへの向き合い方~自分自身で納得できる「時系列表」を作るのが理想

 学校法人森友学園への不明朗な国有地売却問題については、地元・豊中市議会の木村真議員による情報公開請求訴訟の提起をきっかけとしてまず朝日新聞が報じたのが2月9日。それからまだ2週間余りしか経っていないのに、いろいろな情報が出てきました。
 ただ、何日か情報収集を怠っていると、すぐに付いていけなくなってしまいそうな位に進展が早いですね。
 私が、メルマガ(ブログ)で初めてこの問題を取り上げたのは、2月15日の2つの出来事、衆議院財務金融委員会における宮本岳志議員(日本共産党)による追及と、自由法曹団京都支部、大阪支部による現地調査後の記者会見を報じたIWJの記事を紹介したものでした(森友学園への不明朗な国有地払下げを追及した宮本岳志衆議院議員(日本共産党)の質疑(テキスト)を読む(付・自由法曹団記者会見)/2017年2月17日)。
 この時点では、上記2つの記事がIWJによる「極右学校法人の闇」の第1弾・第2弾だったのですが、それから11日経過した本日(2月26日)現在、IWJの「極右学校法人の闇」シリーズは、何と第20弾に達しています。
 特集記事は以下のページから全記事にアクセスできます。
 

 参照の便宜のため、個別の記事にもリンクをはっておきます。
 

ヒ素や鉛の検出された国有地「9割引」払い下げ、軍国教育、ヘイト文書、そして安倍総理夫妻との蜜月・・・「森友学園問題」とは何なのか~「極右学校法人の闇」第6弾 2017.2.20

【国会ハイライト】「犬臭い」と園児のリュックを捨てた!? 森友学園が運営する塚本幼稚園での「児童虐待」の実態を民進・玉木雄一郎議員が追及!~「極右学校法人の闇」第13弾!

 この内、【国会ハイライト】と付いているのは、国会における野党議員の追及をテキスト(速記録)で紹介したもので、これがとてもお薦めです。
 2月15日の衆議院財務委員会での宮本岳志議員による質疑をテキストで読んだ私は、思わず「非常によく出来たミステリーを読む醍醐味に近い」と書いてしまいました。
 他の(速記録)も、日によって程度に差はあるものの、いずれもスリリングであり、まずこの【国会ハイライト】を時系列順に読まれることをお勧めしたいと思います。


2月17日・衆議院予算委員会・福島伸享議員(民進党)


2月21日・衆議院財務金融委員会・宮本岳志議員(日本共産党)


2月22日・衆議院予算委員会・玉木雄一郎議員(民進党)


 さて、ここまで色々な情報が出てくると、個々の情報の信頼度について評価しながら、それを時系列の中のしかるべき箇所に組み込み、前後の事実とのつながりを推測し、という作業を行うのがオーソドックスな手順というものです。とはいえ、それを自分自身でやるだけの時間はとてもないし、「誰か、可能な限り資料の裏付けをとりながら、信頼できる時系列表を作っている人はいないだろうか?」というまことに他力本願な希望に添うサイトを探したところ、ありました!
 と言っても、別に探すのに苦労した訳でも何でもなく、「森友学園」「時系列表」という2つのキーワードでGoogle検索したところ、トップに表示されたのがこのサイトでした。

【2/26更新】森友学園(大阪市淀川区)と大阪・豊中の国有地 情報集約

 サイト名「よどきかく」、トップには「大阪市内を中心とした、保育所・幼稚園・子育て・生活情報等を発信しています。」とあるとおり、最新の他の記事のタイトルを抜き出してみると、
 「(仮称)中心部児童急増対策プロジェクトチーム」を設置へ
 【H29新設保育所紹介】(9)ぴっころきっず谷町園(中央区)
 【ニュース・追記あり】みるく保育園の元園長・元副園長を詐欺容疑で逮捕
 【大阪市政】平成29年度から4歳児も教育費無償化へ
 【重要】大阪市保育所等1次調整の申込数・内定数・未内定数が公表されました

など、なるほど多彩です。
 
 なお、同サイトの「時系列表」ですが、これもまるまる信用するのではなく、勘違いはないか?新しい情報に基づいて訂正すべき箇所はないか?という視点から、確認していくという姿勢で読んでいく必要があります。そして、この「時系列表」の非常に優れている点として、記載した事項の裏付けとなる資料を明示しており、ネットで閲覧可能なものはリンクがはられていますので、そのような検証をしながら活用するための「時系列表」としてうってつけです。
 この時系列表を大きめのサイズの紙に印刷し、裏付資料(国会質疑などは本来二次資料ですが、国と森友学園との契約書や不動産鑑定士による鑑定書などの一次資料を簡単には読めない現状では、一次資料に準じる資料として重要です)と照らし合わせて得心すれば青ペンでチェックし、補充や訂正をすべきと判断したら赤ペンで書き込みをするということが出来たらいいなあ・・・と思いますが、なかなか現実には時間がない。

 いずれにしても、1人1人が他人の言説を鵜呑みにするのではなく、基礎資料に直接あたってみた上で、自分自身の「時系列表」を作り上げるのが理想です。
 そして、この方法論は、何も森友学園スキャンダルに限ったことではなく、あらゆる社会事象に向き合う際の基本的姿勢であるべきだということに気がつきます。
 そう何もかも理想通りにいくはずはなく、どこかで現実と折り合いをつけることになるのですが、それでも最低限、自分の立ち位置と「理想」との距離を正確に測れるように心掛けたいものです。

日本弁護士連合会「日本国憲法に緊急事態条項(国家緊急権)を創設することに反対する意見書」(2017年2月17日)を読む

 本日(2017年2月25日)配信した「メルマガ金原No.2734」を転載します。

日本弁護士連合会「日本国憲法に緊急事態条項(国家緊急権)を創設することに反対する意見書」(2017年2月17日)を読む

 一昨日(2月23日)、このメルマガ(ブログ)において、去る2017年2月17日付で日本弁護士連合会が取りまとめ、同月23日付で法務大臣と外務大臣に提出した「いわゆる共謀罪を創設する法案を国会に上程することに反対する意見書」全文転載してご紹介しました。
 ところで、日本弁護士連合会は、上記意見書と同じ2月17日、もう1つの重要な意見書を取りまとめています(同日付となっているのは、同じ日に開かれた日弁連理事会で承認されたということでしょう)。それが、今日ご紹介する「日本国憲法に緊急事態条項(国家緊急権)を創設することに反対する意見書」です。
 共謀罪についての意見書は、PDFファイルで11ページでしたが、緊急事態条項についての意見書は、本文だけで22ページ、別紙も含めれば31ページにもなるという大作で、ブログへの全文転載をするかどうか、かなり考え込みました。
 けれども、やはり「別紙も含めて全文転載しよう」と決めたのは、その作業をすることによって、私自身がこの「意見書」を熟読できるから、という理由が大きいですね。おかげで、日弁連の「校正漏れ」を2箇所発見して訂正しましたもの(末尾に注記しておきました)。

 この「日本国憲法に緊急事態条項(国家緊急権)を創設することに反対する意見書」を別紙を含めて通読したところ、これまでの議論の成果を十分に取り入れて体系化するとともに、とりわけ、武力攻撃、内乱(テロ)、大規模災害などに対処するための法体系が既に充分に整備されており、多大の弊害の発生が予想される緊急事態条項を憲法に新設しなければならない立法事実など存在しないということを、非常に丁寧に論証しているという印象を受けました。
 私自身、日弁連の会員ですから、自分が所属する団体の「意見書」を賞賛しても説得力が充分ではないでしょうから、まずは皆さんご自身で、是非この「意見書」をお読みいただきたいと思います。長いことは長いですが、理解が困難な部分はないと思いますので、丁寧に読み進めていただければ、きっと得心していただけるものと思います。

 ところで、「いわゆる共謀罪を創設する法案を国会に上程することに反対する意見書」の執行先(提出先)は法務大臣と外務大臣でしたが、この「日本国憲法に緊急事態条項(国家緊急権)を創設することに反対する意見書」の執行先は「各政党代表者」でした。
 この「意見書」の構成は、以下の目次(私が「意見書」から見出しを抜き出して作りました)をご覧いただければわかるとおり、緊急事態条項(国家緊急権)一般を論じた部分もありますが、その主眼が自民党「日本国憲法改正草案」「第9章 緊急事態」(第98条、第99条)に対する徹底批判であることは明らかです。
 私は、寡聞にして、日本弁護士連合会が、憲法改正問題に関して、一政党の改憲案に反対する意見書を取りまとめたという例を聞いたことがありません(初めてかもしれません)。もしかすると、これについては、日弁連会員の間にも色々な意見があるかもしれませんが、私自身は、日弁連執行部及び理事会の決断を支持します。
 「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の改憲推進1000万人賛同署名や全国の地方議会で続々と採択されている改憲推進意見書(例えば和歌山県議会)では、いずれも大規模災害対応のための改憲が主要改憲項目として強調されており、自民党「日本国憲法改正草案」における緊急事態条項は、その「見本」としての役割を担っています。昨年の参院選の結果、衆参両院でいわゆる改憲勢力が2/3以上の議席を保有することになった情勢下、「行政府の長」であるはずの安倍晋三内閣総理大臣自らが施政方針演説で改憲議論を呼びかけるという緊迫した状況を踏まえれば、国会両院の憲法審査会で具体的に緊急事態条項についての議論が始まる前に、日弁連としての意見書を公表する意義と必要性は大きいと思うからです。

 もしかすると、私のメルマガ(ブログ)史上「最長」の記事となるかもしれませんが、非常に重要な内容を含んでいますので、最後まで読み通してくださることを心からお願いします。
 なお、本文中で指摘されている日弁連意見書等及び別紙2~4の各「法制の概要」中の参照条文については、各意見書、報告書、声明や法律、条約などへのリンクを埋め込んでおきましたのでご活用ください。
 

(目次)
第1 意見の趣旨
第2 意見の理由
 1 はじめに
 2 日本国憲法と緊急事態条項(国家緊急権)
  (1) 立憲主義
  (2) 緊急事態条項(国家緊急権)の濫用の実例
   ① ドイツ
   ② フランス
   ③ 日本
  (3) 日本国憲法が緊急事態条項(国家緊急権)を設けていない理由
 3 緊急事態条項(国家緊急権)の憲法上の創設を検討する際の留意点
  (1) 緊急事態条項(国家緊急権)を憲法上創設する必要性が認められるか
  (2) 権限濫用防止のための有効な法制度が設けられているか
 4 自民党改正草案-対象となる緊急事態
  (1) はじめに
  (2) 対象となる緊急事態
   ① 「我が国に対する外部からの武力攻撃」
   ② 「内乱等による社会秩序の混乱」
   ③ 「地震等による大規模な自然災害」
  (3) まとめ
  (4) 解散権の制限及び議員の任期等の特例について
  (5) まとめ
 5 自民党改正草案-濫用防止の制度設計
  (1) はじめに
  (2) 緊急事態宣言の発動要件の包括的委任等
  (3) 国会の承認
  (4) 措置の期間
  (5) 法律と同一の効力を有する政令
  (6) 財政上必要な支出その他の処分
  (7) 公的機関の指示に従う義務
  (8) 国会議員の任期について
  (9) 小括
 6 結論
法律の略称
(別紙1)自由民主党憲法改正草案第9章「緊急事態」
(別紙2)安全保障法制の概要
(別紙3)治安法制の概要
(別紙4)災害法制の概要

                       2017年(平成29年)2月17日
                       日本弁護士連合会

第1 意見の趣旨

 緊急事態条項(国家緊急権)は,深刻な人権侵害を伴い,ひとたび行使されれば立憲主義が損なわれ回復が困難となるおそれがあるところ,その一例である自由民主党の日本国憲法改正草案第9章が定める緊急事態条項は,戦争,内乱等,大規模自然災害その他の法律で定める緊急事態に対処するため,内閣に法律と同一の効力を有する政令制定権,内閣総理大臣に財政上処分権及び地方自治体の長に対する指示権を与え,何人にも国その他公の機関の指示に従うべき義務を定め,衆議院の解散権を制限し,両議院の任期及び選挙期日に特例を設けること(以下「対処措置」という。)を認めている。
 しかし,戦争・内乱等・大規模自然災害に対処するために対処措置を講じる必要性は認められず,また,同草案の緊急事態条項には事前・事後の国会承認,緊急事態宣言の継続期間や解除に関する定め,基本的人権を最大限尊重すべきことなどが規定されているが,これらによっては内閣及び内閣総理大臣の権限濫用を防ぐことはできない。
 よって,当連合会は,同草案を含め,日本国憲法を改正し,戦争,内乱等,大規模自然災害に対処するため同草案が定めるような対処措置を内容とする緊急事態条項(国家緊急権)を創設することに反対する。
 
第2 意見の理由
1 はじめに
 国家緊急権とは,戦争・内乱・恐慌・大規模な自然災害など,平時の統治機構をもっては対処できない非常事態(以下「緊急事態」という。)において,国家の存立を維持するために,立憲的な憲法秩序を一時停止して非常措置を採る権限をいう。
 自由民主党(自民党)は,2012年(平成24年)4月に,「緊急事態」(第9章)を定めた日本国憲法改正草案(以下「自民党改正草案」という。)を公表した。
 自民党改正草案は,外部からの武力攻撃,内乱等による社会秩序の混乱,地震等による大規模災害その他の法律で定める緊急事態において,特に必要と認めるときは,内閣総理大臣が緊急事態の宣言を発することができ,同宣言が発せられたならば,①内閣が法律と同一の効力を有する政令を制定できること(内閣の緊急命令権限),②内閣総理大臣が財政上必要な支出その他処分を行うことができること(内閣総理大臣の財政処分権限),③内閣総理大臣が地方自治体の長に対して必要な指示をすることができること(内閣総理大臣の指示権限),④何人も法律の定めるところにより,当該宣言に係る事態において国民の生命,身体及び財産を守るために行われることに関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならないこと(国民等の服従義務),⑤緊急事態の宣言が発せられた場合においては,法律の定めるところにより衆議院は解散されないものとし,両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる(解散権の制限及び議員の任期等の特例)とされている(別紙1参照)。その内容は,戦争・内乱・恐慌・大規模な自然災害など平時の統治機構をもっては対応できない非常事態において,国家の存立を維持するために,立憲的な憲法秩序を一時停止して非常措置をとる権限(国家緊急権)を認める場合の一例といえる。
 その後,2015年(平成27年)5月7日に開催された衆議院憲法審査会において,自民党は優先的に議論すべき事項として緊急事態条項(国家緊急権)を挙げ,民主党(当時),維新の党(当時),公明党などもこれに言及した。さらに,2016年(平成28年)11月17日及び同月24日の衆議院憲法審査会においても複数の議員から改憲項目の一つとして緊急事態条項(国家緊急権)が挙げられた。
 本意見書は,緊急事態条項(国家緊急権)を憲法改正により創設する動きがあることに対し,緊急事態条項(国家緊急権)が,一時的とはいえ,立憲的な憲法秩序を停止し,人権が侵害される危険があることを踏まえ,立憲主義の理念を堅持し,国民主権,基本的人権の尊重,恒久平和主義など日本国憲法の基本原理を尊重することを求める立場(第48回人権擁護大会「立憲主義の堅持と日本国憲法の基本原理の尊重を求める宣言」〔鳥取宣言〕)から意見を述べるものである。

2 日本国憲法と緊急事態条項(国家緊急権)
(1) 立憲主義
 日本国憲法は,最高法規である憲法により国家権力を制限し,人権保障を図るという立憲主義を基本理念としている。
 すなわち,国家権力の濫用から国民の自由や権利を守るために,国民が日本国憲法を確定し(前文),その憲法には,「個人の尊重」と基本的人権の保障(11条,13条,97条)並びに権力分立を定め(41条,65条,76条1項),また「法の支配」の下,憲法の最高法規性(98条1項)を担保するために裁判所に違憲立法審査権を認めた(81条)。さらに日本国憲法は,アジア・太平洋戦争を経て得た戦争は最大の人権侵害であるという教訓のもと,全世界の国民に平和的生存権を認め(前文),武力による威嚇又は武力の行使を禁止し(9条1項),戦力不保持,交戦権否認(9条2項)という徹底した恒久平和主義を採用している。
 このように,日本国憲法の根本にある立憲主義は,「個人の尊重」と「法の支配」を中核とする理念であり,国民主権,基本的人権の尊重,恒久平和主義などの基本原理を支えるものである。そしてこの基本理念と基本原理は,人類の叡智が込められたものであり,将来の世代にわたり永続的に受け継がれるべきものである。
(2) 緊急事態条項(国家緊急権)の濫用の実例
 緊急事態条項(国家緊急権)は,立憲的な憲法秩序を停止して行政府に権限を集中し人権保障を停止させるものであるから濫用の危険があるし,現に過去において濫用されてきた。
① ドイツでは,ワイマール憲法48条の大統領非常権限に基づき,14年間に250回以上も緊急命令が発せられ,例外規定の常態化を招いた。
 1933年1月にヒンデンブルグ大統領により首相に任命されたヒトラーは,総選挙(3月5日)までの1か月間に,ナチス突撃隊等を駆使して政敵へのテロ行為を縦横無尽に行った。他方,同条に基づく大統領の緊急命令を根拠に,政敵の選挙集会の強制解散,機関誌の発禁処分,警察官の政敵への武器使用の容認などを行った。また,国会炎上事件を契機に出された大統領の緊急命令(国会炎上命令)を根拠に,多数のナチスの政敵を逮捕した。さらに,3月5日に実施された選挙の結果,ナチスは議席の過半数を確保できなかったにもかかわらず,国会炎上命令を根拠に共産党や社会民主党の国会議員を逮捕すること等により国会への登院を阻止し,「民族と国家の困難を除去するための法律」すなわち,「全権委任法(授権法)」を成立させた。
 このように,ドイツでは,政敵へのテロ行為に加えて,大統領非常権限に基づき発せられた緊急命令によりヒトラーの独裁政権が樹立され,その後ユダヤ人の大量虐殺等の重大な人権侵害が行われたのである。
② またフランスでは,1961年4月21日深夜に起きた4人のフランスの退役将軍によるアルジェリアにおける反乱に対して,同月23日にド・ゴール大統領が第5共和国憲法16条に基づき緊急権を発動した。その後反乱自体は同月25日から26日にかけて鎮圧されたにもかかわらず,大統領は根本的解決を名目として更に9月30日までの5か月間,緊急権を適用した。その間,強制収容の対象となる危険人物の範囲を拡大し,出版の自由を制限するなどの措置が行なわれた。
 なお,フランスでは,2015年11月に発生したパリ同時多発テロに対し憲法上の緊急権に基づくものではないものの,緊急事態法に基づき「緊急事態宣言」が発令され,その後4回延長され現在に至っている。そこでは,疑わしい人物の自宅軟禁やテロを称賛した宗教施設の閉鎖などが可能と報じられており,その濫用が懸念されている。
③ 日本でも1923年(大正12年)9月1日に起きた関東大震災において,戦時や事変などに軍隊に権限を集中する制度である戒厳令(明治15年太政官布告第36号)中の一部(戒厳令9条及び14条)を緊急勅令(大日本帝国憲法8条)に基づき施行するなど適用範囲が拡大される中で多数の中国人や朝鮮人が虐殺された。そこでは軍隊や自警団が朝鮮人等を虐殺し(詳細は2003年(平成15年)8月25日「関東大震災人権救済申立事件調査報告書」参照),「大杉事件」や「亀戸事件」など無政府主義者や社会主義者が憲兵や警察により殺害される事件が起きた。
(3) 日本国憲法が緊急事態条項(国家緊急権)を設けていない理由
① このように,緊急事態条項(国家緊急権)は立憲主義を破壊し,人権を侵害する大きな危険性をはらんでおり,歴史上も,緊急事態の名目の下,混乱に乗じて権力者の地位を強化するために濫用されてきた。
 そのため,日本国憲法の制定議会においても,大日本帝国憲法における緊急勅令(8条),緊急財政処分(70条),戒厳(14条),非常大権(31条)などの緊急事態条項(国家緊急権)を日本国憲法にも設けるべきかが問題とされ,審議された。
② 1946年(昭和21年)7月2日及び同月15日の衆議院帝国憲法改正案委員会において,金森徳次郎国務大臣は,大日本帝国憲法改正案(日本国憲法案)に「緊急勅令」「緊急財政処分」「非常大権」などの規定を設けていない理由について問われたのに対し,(ⅰ)民主政治を徹底させて国民の権利を充分擁護するためには,非常事態に政府の一存で行う措置は極力防止しなければならないこと,(ⅱ)非常という言葉を口実に政府の自由判断を大幅に残しておくとどの様な精緻な憲法でも破壊される可能性があること,(ⅲ)特殊の必要があれば臨時国会を召集し,衆議院が解散中であれば参議院の緊急集会を召集して対処できること,(ⅳ)特殊な事態には平常時から法令等の制定によって濫用されない形式で完備しておくことが出来ること,と答弁している。
 緊急事態において一時的とはいえ憲法上権力者に国家緊急権を授権することは,たとえその要件をいかに厳格なものにしたとしても濫用されることは避けられないという認識の下,日本国憲法は,緊急事態においても,行政府への権力の集中と人権保障の停止を本質とする国家緊急権によるのではなく,あくまでも民主政治を徹底することにより対応すべきであるし,それが可能であるとして,緊急事態条項を設けなかったのである。
③ また,日本国憲法は,過去の軍国主義の歴史と先の大戦の惨禍への深い反省に基づいて,前文に平和的生存権を謳い,9条に戦争の放棄と戦力を保持しないという徹底した恒久平和主義を定め,国家権力に縛りをかけた。
 その結果,日本は平時から周辺諸国と平和で友好な関係を構築するための外交を実践することにより有事を理由とする緊急事態の発生を防ぐべきであり,戦時に軍隊に権限を集中することを認める「戒厳」や「非常大権」という緊急事態条項(国家緊急権)を認めないこととしたのである。
④ 日本国憲法に緊急事態条項(国家緊急権)がないことについて「法の欠缺」であるとの見解があるが,上記帝国議会での審議の経過等に照らせば,憲法制定当時においては,緊急事態条項(国家緊急権)を憲法上設けることをむしろ積極的に拒否していたのである。
 
3 緊急事態条項(国家緊急権)の憲法上の創設を検討する際の留意点
(1) 緊急事態条項(国家緊急権)を憲法上創設する必要性が認められるか
 戦争,内乱,恐慌,大規模自然災害などの緊急事態に対して,国民の生命,身体の安全を守るために予め法制度を整備すべきことは当然である。その場合,憲法制定当時,日本国憲法に緊急事態条項(国家緊急権)を設けることをあえて認めなかったことに鑑みるならば,まず法律の制定・改正や運用の改善などによる対処が検討されるべきである。そして,法律の制定・改正等では対応できず憲法改正によらなければ支障が生じるという場合に初めて,緊急事態条項(国家緊急権)を憲法上創設すべき必要性が認められることになる。
 なお,災害やテロについてみると,フランス,ドイツ,イギリス,アメリカ)の4か国のうち憲法上の国家緊急権を定めているのはドイツだけで,他の3か国は法律で対処している。
(2) 権限濫用防止のための有効な法制度が設けられているか
① 緊急事態条項(国家緊急権)により特定の国家機関に権限が集中した場合,当該機関は自らの地位を強化するために,権限を濫用し,立憲主義を破壊し人権を侵害する危険性を常にはらんでいる。そのため,その濫用を防止するために憲法上法制度を設けたとしても,そこには限界がある。
 そのため,緊急事態条項(国家緊急権)を憲法上創設すべきかを検討するに当たっては,法制度上の限界を踏まえながら,国会による民主的抑制や裁判所による司法的抑制という法制度がその運用において有効に機能し得るのかを厳密かつ慎重に検討すべきである。
 衆議院及び参議院で過半数を占める与党が内閣を構成している場合における内閣に対する国会の民主的抑制機能の有効性や,司法作用は基本的に事後的な作用であり迅速な対応が期待できないこと,付随的違憲審査制の下で具体的な事件争訟がなければ司法審査ができないこと,統治行為論等を理由に司法判断を回避する可能性があることなど,現在の司法の運用を前提とした場合に裁判所の司法的抑制機能の有効性が認められるかなども考慮すべきである。
 さらに立憲主義を堅持するためには,国民の民主的抑制が有効に機能し得るのかも考慮すべきである。国民の民主的抑制の究極的なものとして国民の抵抗権がある。ドイツにおいては緊急事態条項(国家緊急権)が憲法上新設される際に,国民の抵抗権規定が付加されたが(基本法20条4項),抵抗権規定が憲法上付加されるか否かにかかわらず,緊急事態条項(国家緊急権)の濫用に対して国民が抵抗できる環境が整っていることが必要で
ある。
 このように,緊急事態条項(国家緊急権)の濫用防止のための法制度については,憲法の規定内容とともに,国会による民主的抑制や裁判所による司法的抑制,国民の民主的な抑制力などを考慮して,厳密かつ慎重に検討されるべきである。
② さらに,国会及び国民の民主的抑制に関連して秘密保護法との関係が問題となる。
 国会や国民において緊急事態条項(国家緊急権)が発動される当否を判断する際,安全保障関連情報が国会や国民に開示されることが必要である。
 ところが,秘密保護法は,当該情報を「特定秘密」として指定することから,国会や国民が緊急事態条項(国家緊急権)の発動の当否を適切に判断することができない。しかも,秘密保護法は,特定秘密の指定解除の要件も不十分であることから,緊急事態条項(国家緊急権)の発動の当否の検証が将来長きにわたり困難となる可能性が高い。このように,秘密保護法は国民の知る権利を侵害し国民主権を形骸化することから,当連合会は秘密保護法に反対を表明してきた。緊急事態条項(国家緊急権)を憲法上創設すべきかを検討するに当たっては,秘密保護法により国会及び国民の民主的抑制が有効に機能し得ない状況の下では,緊急事態条項(国家緊急権)の濫用防止が期待できないことも考慮されるべきである。
 
4 自民党改正草案-対象となる緊急事態
(1) はじめに
 このような緊急事態条項(国家緊急権)を憲法上創設することについて検討する際の留意点を踏まえた上で,今日,具体的な条項案として公表されている自民党改正草案について検討する。
 自民党改正草案第9章「緊急事態」には,「緊急事態の宣言」(98条)と「緊急事態の宣言の効果」(99条)の規定が設けられている(別紙1)。そこでは,対象となる緊急事態の類型として,「我が国に対する外部からの武力攻撃」「内乱等による社会秩序の混乱」「地震等による大規模な自然災害」の3つが挙げられている。そこで,まず,この3類型について緊急事態条項(国家緊急権)を憲法上創設する必要性が認められるのかを検討する。次に,自民党改正草案の制度について,権限濫用防止のため有効な法制度かを検討する。
(2) 対象となる緊急事態
① 「我が国に対する外部からの武力攻撃」
ア 日本国憲法は,立憲主義と徹底した恒久平和主義に基づき,外部からの武力攻撃を防ぐために平時の平和外交により周辺諸国との友好関係を構築し,紛争が生じても平和的手段により解決すべきとしている。
 また,外部からの武力攻撃又はそのおそれが生じた場合への対処については,安全保障会議設置法,自衛隊法,事態対処法,米軍等行動関連措置法,特定公共施設利用法,外国軍用品等海上輸送規制法,捕虜取扱法,国民保護法,国際人道法違反処罰法などから成る法制度が整備されている(概要は別紙2)。
 国家安全保障会議では,安全保障に関する外交・防衛政策や国防の基本方針等が審議されている。武力攻撃事態等に至った場合には,臨時に設置される事態対策本部を中心に,地方公共団体等とも連携をしながら,防衛対処基本方針に基づき対処措置を実施していく。その実施に当たり,内閣総理大臣(事態対策本部長)は,地方公共団体等を総合調整し,地方公共団体を指示し,更には自ら対処措置を実施することができるなど強力な権限が認められている。また,米軍等との連携や国民保護に関する法制度も整備されている。国民保護法では,国民は,国民の保護のための措置の実施に関する協力要請に対しては,必要な協力をするよう努めるものとされている(国民保護法4条 1 項)。また,内閣は,著しく大規模な武力攻撃災害が発生し,国の経済の秩序を維持し及び公共の福祉を確保する必要がある場合において,一定の条件の下,金銭債務の支払猶予等に関して政令を制定することができるとされている(同法130条1項)。
イ ただし,現行の安全保障法制には,武力攻撃予測事態の定義や範囲が曖昧であること,武力攻撃事態等の認定の客観性が十分に担保されていない等の問題点がある(2002年(平成14年)6月21日「「有事法制」3法案についての意見書」,2003年(平成15年)5月14日「有事法制法案の採択に対する会長声明」,2004年(平成16年)3月18日「国民保護法案」についての意見書」等)。
 また,2015年(平成25年)9月19日に採択された平和安全法制整備法により,事態対処法に新たに存立危機事態(事態対処法2条4号)が加わったが,それは集団的自衛権の行使を容認するものであり,恒久平和主義及び立憲主義に違反するものである。
 このように,現行の安全保障法制は憲法原理に抵触するおそれや憲法違反の内容が含まれていることから,それらを憲法に適合するように修正すべきである。その上で,仮に安全保障法制として不十分な点があるのであれば,法律の改正等で対応すべきである。
ウ なお,終戦直後の1946年(昭和21年)7月2日に開催された前記衆議院帝国憲法改正委員会において,日本国憲法に緊急事態条項(国家緊急権)に関する規定を設けるべきかが問われた際に,金森国務大臣が「我我過去何十年ノ日本ノ此ノ立憲政治ノ経験ニ徴シマシテ,間髪ヲ待テナイト云フ程ノ急務ハナイ」と答弁している。「過去何十年ノ日本」には当然に先の大戦が含まれているが,その先の大戦下においてすら間髪を待てないというほどの急務はなかったのである。
② 「内乱等による社会秩序の混乱」
ア 「内乱等による社会秩序の混乱」には大規模テロも含まれるが,内乱等に関しては,警察法第6章(「緊急事態の特別措置」),海上保安庁法,自衛隊法,事態対処法第三章(「緊急対処事態その他の緊急事態への対処のための措置」),国民保護法第8章(「緊急対処事態に対処するための措置」),刑法,刑事訴訟法,警察官職務執行法,出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)等の法制度がある。また,今日テロ防止対策に国際社会が取り組む必要性から「航空機内の犯罪に関する条約」(1969年)ほか多くのテロ防止対策に関連する条約が締結されている(概要は別紙3)。
 内乱等による社会秩序の混乱に関しては,警察法に基づき,内閣総理大臣が一時的に警察を統制することで,事態に対処する体制が整備されている。また,警察力だけでは不十分な場合には,自衛隊法に基づく治安出動が認められている。その場合,内閣総理大臣は海上保安庁も統制下に置くことができるのであり,警察,海上保安庁,自衛隊が一体として事態に対処するための体制が整備されている。日本の社会秩序を混乱させた者に対しては,内乱罪(刑法77条)など刑法その他の刑事法により各種刑罰規定が置かれている。また,日本の社会秩序を混乱させようとする者が外国人である場合には,入管法によりあらかじめ上陸を拒否することが可能である(入管法5条1項11号乃至14号)。
 また,原子力発電所の破壊等,化学剤の大量散布,航空機などによる自爆テロなど,武力攻撃に準ずるテロ等の事態(緊急対処事態。事態対処法22条1項)には,国や地方公共団体等は緊急対処保護措置を的確かつ迅速に実施することに万全を期す責務等を有するとされている(国民保護法172条)。そして,国民は,緊急対処保護措置の実施に関し協力を要請されたときは,必要な協力をするよう努めるものとされている(同法173条1項)。
イ このように,既に警察法,自衛隊法,入管法,刑法等により,内乱等の社会秩序の混乱に対処することができる法制度及び体制が整備されている。実際に13人の死亡被害者と数千人の傷害被害者を出した地下鉄サリン事件(1995年(平成7年))においても,破壊活動防止法の適用すら行われず,平時における警察活動で対処することができたのである。また,テロ対策としては,テロの未然防止と万一テロが発生した場合には被害を最小限にくい止め,犯人を制圧・検挙するという事態対処の両面から,上記の法制度の下,1998年(平成10年)に内閣に内閣危機管理監が新設され,2001年(平成13年)には内閣官房長官を本部長とする「国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部」が設置されるなど,内閣官房を中心に政府の緊急事態対処体制が整備されてきており,突発的な事態の態様に応じた対処の基本方針についての閣議決定やマニュアルの策定等の整備が行われてきている。また,警察庁は,2015年(平成27年)2月には「警察庁国際テロ対策推進本部」を設置し,同年6月には「警察庁国際テロ対策強化要綱」を取りまとめ,同要綱に基づき情報収集・分析,水際対策,警戒警備,事態対処,官民連携を推進している(平成28年度警察白書・特集「国際テロ対策」参照)。
ウ ただし,現行の法制度の中には,警察組織の中に外事情報部による諜報活動が国民の思想信条の自由や集会結社の自由,メディアの報道の自由への萎縮効果をもたらすことなど,警察権限の拡大に伴う問題点なども認められる(2004年(平成16年)3月18日「警察法改正案に対する意見書」)。
 それらの問題点については改善を図り,また仮に不十分な点があるのであれば,それは法律の改正等で対応すべきである。
③ 「地震等による大規模な自然災害」
ア 大地震等による大規模な自然災害については,現行の日本国憲法の下で,既に高度に整備された法制度と体制が存在している。具体的な法制度としては,災害対策基本法,大規模地震対策特別措置法,原子力災害対策特別措置法,新型インフルエンザ特別措置法,災害救助法,警察法,自衛隊法等がある(概要は別紙4参照)。
 上記の災害対策の法制度においては,宣言や布告等を行い,国会の統制下において,一定範囲で内閣に政令制定権を認め,また,内閣総理大臣に必要な権限を付与するとともに,国民の財産権の制限や労働の義務等を課して一定の範囲で人権を制約している。仮に東日本大震災と原発事故が併発したような複合災害時には現在の法制度でも未整備の部分があるとしても,それは法律の改正等で対応が可能である。その場合には,後記アンケート結果に示されているとおり,地方自治体への権限移譲,適切な役割分担という地方分権の視点から各地の実情に応じた整備を行うべきである。
イ 東日本大震災において政府が初動時に迅速に対応出来なかったことを理由に緊急事態条項(国家緊急権)を憲法上創設すべきとの見解がある。
 しかし,政府が初動時に迅速に対応できなかった原因は,高度に整備された法制度があるにもかかわらず,平時から災害に備えた事前の準備がほとんどなされていなかったことによる。
 すなわち,災害対策基本法は,国の防災基本計画に基づき,指定行政機関等の防災業務計画,都道府県等の地域防災計画を作成すべきことを定めている(同法第三章)。また,指定行政機関の長等は,防災教育の実施に務め,防災訓練の実施義務がある(同法47条の2,48条)。更には原子力事業者にも,原子力事業者防災業務計画の作成義務が課せられている(原子力災害特別措置法7条)。ところが,現実には,「原発事故は起こらない」との前提で,避難のための防災計画の作成を怠り,防災訓練等事前の準備がほとんどなされていなかった。災害対策においてなすべきことは,発生した混乱や被害の原因を検証し,その対策を策定して事前の準備を進めることである。
ウ 緊急事態条項(国家緊急権)は,中央政府に権限を集中させることが災害対策に有効であるとの考えに基づくが,自然災害に直接対応するのは都道府県,市町村などの地方自治体や各種団体である。被災地域の実情に通じているこれら地方公共団体等こそが災害へのきめ細やかな対応を行うことができるのであり,それが被災者等の人権保障につながるのである。
 このことは,当連合会が2015年(平成27年)9月に東日本大震災の被災三県の37市町村に対して実施したアンケート結果にも表れている(24市町村から回答)。
 アンケート項目のうち「災害対策・災害対応について市町村の権限は強化すべきか軽減すべきか」との質問に対しては,「権限を強化すべし」との回答は6自治体(25%)に対し,「現状維持(災害対策基本法により第一義的な災害対策の権限は市町村に委ねられている現在の制度の維持)」は17自治体(71%),「権限軽減」は1自治体(4%)であった。
 「災害対策・災害対応について市町村と国の役割分担はどうすべきか」との質問に対しては,「市町村主導」は19自治体(79%),「場合による」は3自治体(13%),「国主導」は1自治体(4%),「未回答」は1自治体(4%)であった。
 「災害対策・災害対応について憲法は障害になったか」との質問に対しては,「障害にならない」は23自治体(96%),「なった」は1自治体(4%)であった。
 この結果は,中央政府に権限を集中させるのではなく,被災者に一番近い自治体である市町村に主導的な役割を与えることの必要性を示している。また,緊急事態条項(国家緊急権)を持たない現在の日本国憲法が災害対応について障害にならなかったことも表している。
 被災経験のある各地の弁護士会からも「東日本大震災の災害対応について国家緊急権規定が存在すれば適切な対応ができたという事実は全く認められず」(仙台弁護士会),「被災者の救済と被災地の復興のために何より必要なのは,政府に権力を集中されるための法制度を新設することよりも,むしろ,事前の災害・事故対策を十分に行うとともに,既存の法制度を最大限に活用することである」(福島県弁護士会)などの意見が表明されている。
エ このように,大規模な自然災害への対応は,現行の法制度の運用・改善によるべきであり,それが可能である。自然災害を理由に日本国憲法に緊急事態条項(国家緊急権)を創設する必要性が認められないばかりか,内閣に権限を集中されることはむしろ有害である。
(3) まとめ
① 上記のとおり,自民党改正草案が非常事態として挙げている「我が国に対する外部からの武力攻撃」「内乱等による社会秩序の混乱」「地震等による大規模な自然災害」に関しては,法律に基づく制度が整備されている。
② 自民党憲法草案は,緊急事態宣言が発せられた場合,内閣の緊急命令権限を認めるべきとするが,災害対策基本法や国民保護法は,各法律の授権に基づいて内閣の政令制定権を認めている(災害対策基本法109条,国民保護法130条)。
 また,同草案は,内閣総理大臣の指示権限を認めるべきとするが,内閣総理大臣の指示権限も含めてすでに法律により内閣総理大臣に一定の権限が集中する仕組みが認められている(事態対処法14条1項,15条1項・2項,警察法72条,73条1項・2項。災害対策基本法28条の6・2項,大規模地震対策特別措置法13条1項,原子力災害対策特別措置法15条3項など)。
 さらに,同草案は,国民等への服従義務を認めるべきであるとするが,国民保護法は,国民の保護のための措置や緊急対処保護措置の実施に関し協力を要請されたときは,必要な協力をするよう努めることや(国民保護法4条1項,173条1項),災害救助法は,大規模自然災害の場合には,被災者の救助等のため,一定の者に対して業務に協力させることができること等を認めている(災害救助法7条ないし10条,災害対策基本法59条1項等。別紙3の6参照)。
 そして,それらの規定では対応できない具体的な事情は認められないし,仮にそのような事情が認められるとしても,まず法律の制定・改正や運用の改善などによる対処が検討されるべきである。その検討を経ることなく,上記3つの緊急事態において,内閣の緊急命令権限,内閣総理大臣の指示権限,国民等の服従義務を憲法上創設することを認める必要性はない。
③ また,自民党改正草案では,内閣総理大臣の財政処分権限を認めるべきであるとするが,一般には緊急事態への対応は予備費が使われ,仮に予備費では不足する場合には補正予算を組むことにより対応することが予定されている。それでは対応できないという具体的な事情は認められないし,仮にそのような事情が認められるならば,まずは予算編成の改善等を検討すべきである。その検討を経ることなく,内閣総理大臣の財政処分権限を憲法上創設することを認める必要性はない。
④ 解散権の制限及び議員の任期等の特例を設けることの必要性については,項を改めて検討する。
(4) 解散権の制限及び議員の任期等の特例について
① 自民党改正草案99条4項は,「緊急事態の宣言が発せられた場合においては,法律の定めるところにより,その宣言が効力を有する期間,衆議院は解散されないものとし,両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる。」として,内閣の衆議院の解散権行使を制限し,参議院及び衆議院の議員の任期延長等を認めている。
② 同条項が「両議院の議員」の任期等の特例を認めていることから,まず,参議院議員の任期について検討する。
 現行憲法において,「参議院議員の任期は,6年とし,3年ごとに議員の半数を改選する。」(日本国憲法46条)とされ,また,「参議院議員の通常選挙は,議員の任期が終る日の前30日以内に行う。」とされているから(公職選挙法32条1項),参議院議員が同院の定足数(総議員の3分の1。日本国憲法56条1項)を欠くことはあり得ない。自民党改正草案Q&Aも,この点に関し,「参議院議員の通常選挙は,任期満了前に行われるのが原則であり,参議院議員が大量に欠員になることは通常ありえません。」と明記している(Q42の答参照)。
 したがって,自民党改正草案99条4項には「両議院の議員」と明記されているものの,憲法上,参議院議員の期間延長の特例を設ける必要性は認められない。
③ 他方,衆議院議員の任期については,解散又は任期満了により,同院の議員全員がその資格を喪失するため,その前後に緊急事態が発生し,衆議院が組織できない場合が想定できる。
 そこで,以下,解散の場合と任期満了の場合とに分けて検討する。
④ 解散の場合
ア 内閣が解散権を行使しようとしているときに緊急事態が生じた場合,通常,任期満了が迫っている等の事情がないときには,内閣としては通常解散権の行使を差し控えると思われるし,仮に解散権を行使したとしても,その場合は衆議院解散後に緊急事態が発生した場合と同じであり,日本国憲法はそのような場面を想定して,参議院の緊急集会を設けているのであるから(日本国憲法54条2項但書),緊急事態への対応は可能である。したがって,憲法上,内閣の解散権を制限する必要性は認められない。
イ 衆議院の解散後に緊急事態が発生した場合,参議院議員は存在しているし,仮に参議院議員の任期が満了となっても半数の参議院議員は存在していることから(日本国憲法46条),参議院の緊急集会を開催することにより(同法54条2項但書),緊急事態への対応が可能である。したがって,衆議院の解散後に緊急事態が発生した場合を想定して,憲法上衆議院議員の任期に特例を設ける必要性は認められない。
 なお,日本国憲法54条1項は,「衆議院が解散されたときは,解散の日から40日以内に,衆議院議員の総選挙を行い,その選挙の日から30日以内に,国会を召集しなければならない。」と定めている。そこで,衆議院解散後総選挙前に緊急事態が発生したために総選挙や国会召集が上記期間内に実施できない場合が生じ得るとして,選挙期日の特例を設けるべきかが問題となる。
 大日本帝国憲法45条は,解散の日から5ヶ月以内に国会を召集することとしていたのに対して,日本国憲法54条1項によれば,解散の日から最長でも70日以内に国会を召集すべしとした。それは,国会が長い間存在しないことが,国民主権の原理からみて望ましくないことから,大日本帝国憲法に比べて国会召集の期間を短縮したのである。したがって,上記期間制限は厳格に解するべきであり,期間制限の特例を設けることは国民主権の原理の観点から弊害がある。しかも,自民党改正草案Q&Aは,「緊急事態下でも総選挙の施行が必要であれば,通常の方法ではできなくとも,期間を短縮するなど何らかの方法で実施すること」により上記期間内の選挙は可能であると回答している(Q42回答)。
これらのことからすれば,緊急事態であることを理由に,同条項の期間制限に特例を設けるべきではなく,あくまでも同条項の期間制限に適合するように公職選挙法の繰延選挙の規定に期間短縮等の簡易に選挙が実施できる方法を定めて,選挙や国会召集が行われるべきである。
⑤ 任期満了の場合
ア 衆議院議員の任期満了前に緊急事態が発生した場合には,緊急事態発生後から任期満了前までは衆議院議員も存在することから,国会(臨時会)を招集し(日本国憲法53条),緊急事態に対処することが可能である。そして,総選挙が予定どおり実施されるならば,選挙実施後は新たに選出された衆議院議員が存在していることから,国会を召集し緊急事態に対処することは可能である。したがって,この場合には,議員の任期の特例を設ける必要はない。
イ 衆議院議員の任期満了前に緊急事態が発生したため,予定どおり選挙を実施することができず任期満了が到来することにより,衆議院議員が存在しない事態が生じる場合があり得る。
 この場合,「衆議院が解散されたとき」に認められる参議院の緊急集会の規定は適用されない。そのため,憲法上任期延長を認めることにより,衆議院議員の不在状態を解消し,国会(臨時会)の召集を可能とすることも考えられるが,他方で,任期延長は,延長された間は選挙が実施されないことになり,その間,国民から選挙の機会を奪うことにもなる。
 任期延長を認める場合にその期間が問題となるが,緊急事態の程度や規模は千差万別であることから,その期間は事態ごとに個別的に判断せざるを得ない。しかも,その判断は内閣が行うことが想定されるが,国会がその判断の適正さを確認することができないため,必要以上に任期延長を認めてしまうおそれも否定できない。現に,1941年に衆議院議員の任期が,任期満了前に,立法措置により 1 年間延期されたことがある。その理由は,「今日のような緊迫した内外情勢下に,短期間でも国民を選挙に没頭させることは,国政について不必要にとかく議論を誘発し,不必要な摩擦競争を生じせしめて,内外外交上はなはだ面白くない結果を招くおそれがあるのみならず,挙国一致防衛国家体制の整備を邁進しようとする決意について,疑いを起こさしめぬとも限らぬので,議会の任期を延長して,今後ほぼ1年間は選挙を行わぬこととした」というものであった(法学協会「第七六帝國議會・新法律の解説」1941年有斐閣)。そして1年後には戦時下において任期満了に伴う総選挙(翼賛選挙)が施行された。それは,「議会の刷新を期し,政治力の結集を図ることがむしろ戦争遂行のため緊要であると考え,戦争の真っ最中であえて総選挙を断行した」のである(「議会制度百年史・帝国議会史・下巻」636頁)。このように,衆議院議員の任期延長が戦争遂行の国内体制整備のために行われた日本の過去の実例に照らすと,憲法上任期の特例(任期延長)が認められることにより,内閣が必要以上に任期を延長し,それにより国民の選挙の機会を失わせることにより政権与党が議会の多数を占める体制が維持され,民意が十分に反映されないまま内閣主導の下で緊急事態への国内体制が整備されていく可能性は否定できない。そのような事態は,国民主権の原理に照らして弊害が大きいと言わざるを得ない。
 以上から,緊急事態の発生により総選挙が実施されないまま衆議院議員の任期満了が到来した場合に対応するために任期延長を認めることは,内閣の権限濫用のおそれがあり,国民主権の原理に照らして弊害もあることから,憲法上任期の特例の規定を設けるべきではない。
 むしろ,日本国憲法制定当時の前記金森国務大臣の答弁にみられるように,緊急事態に対しては,あくまでも民主政治を徹底することにより対応すべきとの日本国憲法制定当時の考え方によれば,繰延投票(公職選挙法57条)により選挙を実施することにより衆議院議員不在の状況を可及的速やかに回復し,国会(特別会)を召集することで対応すべきである。そして,先の自民党改正草案Q&AのQ42の回答によれば,それが可能である。
 なお,過去に任期満了による総選挙が実施されたのは1976年(昭和51年)12月の1度だけであり,憲法施行後70年に1度しかない。
 このように過去においても極めて頻度が少ないことに加え,そのような場面で緊急事態が発生し,しかも全国のほとんどの選挙区で選挙が実施できずに衆議院議員の任期満了が到来するという事態が発生することが,どれほど現実的なのか疑問である。
 以上から,衆議院議員の任期満了前に緊急事態が発生したため衆議院の定数を欠くほど多くの選挙区において予定どおり選挙を実施できずに任期満了が到来した場合を想定して,憲法上任期の特例を設ける必要性は認められない。
⑥ 以上のとおり,緊急事態が発生した場合に,内閣の解散権の制限や,議員の任期及び選挙期日の特例を憲法上創設する必要はない。
(5) まとめ
 このように,自民党改正草案に定められているように,緊急事態が発生したときに,内閣の緊急命令権限,内閣総理大臣の財政処分権限,内閣総理大臣の指示権限,国民等の服従義務,解散権の制限及び議員の任務等の特例を設けるという緊急事態条項(国家緊急権)を憲法上創設する必要性が認められない。
 
5 自民党改正草案-濫用防止の制度設計
(1) はじめに
 自民党改正草案が想定している緊急事態において,憲法上緊急事態条項(国家緊急権)を創設すべき必要性が認められないことに加え,自民党改正草案の条項の制度設計では,以下のとおり,緊急事態条項(国家緊急権)の濫用を防ぐことはできない。
(2) 緊急事態宣言の発動要件の包括的委任等
 自民党改正草案は,緊急事態宣言を発することができる場合として,「我が国に対する外部からの武力攻撃」「内乱等による社会秩序の混乱」「地震等による大規模な自然災害」に加えて「その他の法律で定める緊急事態」を挙げているが,この規定内容では対処措置の対象となる緊急事態について憲法上の限定がなく包括的に法律に委ねられることになる。
 また,内閣総理大臣が緊急事態宣言は,「特に必要があると認めるとき」は「法律の定めるところにより」閣議にかけて発することができると定めているが,仮に法律で緊急事態宣言を発することができる要件を定めるということであれば,その要件は憲法上の限定はなく包括的に法律に委ねることになる。また,仮に法律には単に手続的要件を定めるのみであり緊急事態宣言を発することができる要件を定めない場合には,緊急事態宣言の要件としては憲法上必要性の要件のみとなり,内閣総理大臣に専断的な決定権を与えることになる。
 これらの規定内容では,緊急事態の範囲が広がり,しかも内閣総理大臣は緊急事態宣言の発動要件の判断について憲法上の歯止めがなく,内閣総理大臣に専断的な決定権を与えるものであり,立憲主義を損ないかねないものである。
 また,例示されている「我が国に対する外部からの武力攻撃」「社会秩序の混乱」「大規模な自然災害」という文言も包括的かつ広範であり,宣言を発令する要件としては不明確である。
(3) 国会の承認
 緊急事態宣言については事前又は事後の国会承認(98条2項),「政令」「その他の処分」については事後の国会承認(99条2項)が必要とされている。しかし,前記のとおり,国会が緊急事態宣言の当否を判断するに当たり安全保障関連情報の開示を求めても,当該情報は「特定秘密」に指定され国会への開示も制限されることになる。そのため,内閣に対する国会の民主的抑制機能を十分に果たすことができない。
(4) 措置の期間
 自民党改正草案では緊急事態の期間に制限を設けていない(98条3項)。国会の事前承認があればいくらでも更新することができることになる。
 また,同案は100日を超えるごとに国会の事前承認を必要としているが(98条3項),緊急事態条項(国家緊急権)は例外的措置であることからすると,100日は長すぎる。
(5) 法律と同一の効力を有する政令
① 自民党改正草案99条1項は,「緊急事態の宣言が発せられたときは,法律の定めるところにより,内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができる」と規定している。この規定によれば,制定できる政令の範囲に限定はなく,また憲法の人権規定その他の憲法規範を遵守しなければならないのかも明らかではない。憲法上,内閣に対して,政令だけで従前の法律を全て改正できる権限を与えるものと解することが可能であり,例えば,緊急事態宣言の期間中,刑事訴訟法と同一の効力を有する政令を制定することにより,令状なき身体拘束・家宅捜索・通信傍受など,平時では法律で行っても憲法違反となるようなことが認められる可能性がある。また,本来の手続を省略した土地収用,家屋・工作物の除却等の即時断行的な行政処分が行われ,これに対する行政訴訟も差止め請求も停止させられることも考えられる。このように,本条による措置はあまりに広範であり,かつ人権が制約される危険性も大きい。
② また,自民党改正草案における上記の政令の制定に関しては,「国会が閉会中又は衆議院が解散中であり,かつ,臨時会の招集を決定し,又は参議院の緊急集会を求めてその措置をまついとまがないとき」(災害対策基本法109条)というような限定がない(国民保護法130条にも同様の規定がある。なお,大日本帝国憲法の緊急勅令においても議会閉会中に限定していた(8条1項)。)。
③ 政令には事後に国会の承認を必要とするが,承認が得られない場合に効力を失う旨の規定がない(99条1項2項)(なお,大日本帝国憲法においても緊急勅令が事後に議会の承認を得られない場合は将来に向かって効力を失う旨の規定があった(8条2項))。
(6) 財政上必要な支出その他の処分
 自民党改正草案では,内閣総理大臣は「財政上必要な支出その他の処分」を行うことができると定められている(99条1項)。ここでは,財政処分を内閣総理大臣に包括的に委ねている。しかも,事後の国会承認が得られない場合に効力を失う旨の規定もない(99条2項)。
 国の財政を処理する権限は,国会の議決に基づいてこれを行使しなければならないとされている(日本国憲法83条)。これは,日本が戦前,軍事費のために無制限な財政支出を行って国家財政を破綻させたことに対する真摯な反省の下,財政民主主義を定めたものである。赤字国債を原則として禁止する財政法も同じ理念による。自民党改正草案99条1項は,この財政民主主義に抵触するものであるが,内閣総理大臣に国債発行も含めて無制限に財政を処理する権限を認めるものであり濫用を防止し得ない。
(7) 公的機関の指示に従う義務
① 自民党改正草案99条3項は,「緊急事態の宣言が発せられた場合には,何人も,法律の定めるところにより,当該宣言にかかる事態において国民の生命,身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他の公の機関の指示に従わなければならない」として国民の公的機関の指示に従う義務を規定している。
 これまでも,例えば,国民保護法において,「国民は,この法律の規定により国民の保護のための措置の実施に関し協力を要請されたときは,必要な協力をするよう努めるものとする。」との規定が置かれていた(4条1項)。しかし,文言上明らかなとおり,「協力をするよう努める」という努力義務にとどまるものであり,また,努力義務であるにもかかわらず,万が一にも強制にわたることがあってはならないという趣旨から,「前項の協力は国民の自発的な意思にゆだねられるものであって,その要請に当たって強制にわたることがあってはならない。」との規定も注意的に置かれていた(4条2項)。
 しかし,自民党改正草案99条3項は,「協力をするよう努める」ことを超えて,「指示に従わなければならない」という義務を定めるものであり,強制されることを含むものである。仮に緊急事態下であるとしても,法律の授権に基づくものではなく,現憲法下では認められていない憲法により直接定められている国その他の公の機関の指示に対する国民の順守義務について,指示の主体及び義務の内容が憲法上限定されないまま,「法律の定めるところにより」幅広く認められることになれば,基本的人権が無制限に制約されかねない。
 この点,同項は,「この場合においても,第14条,第18条,第19条,第21条その他の基本的人権に関する規定は,最大限に尊重されなければならない。」と定めている。しかし,そのような規定があったとしても,憲法に国等の指示に対する国民の順守義務の根拠が明記された上でこのような規定が置かれていることからして,人権相互の矛盾・衝突を調整する内在的制約(日本国憲法13条「公共の福祉」)とは異なり,憲法の人権保障の例外としての外在的制約が認められることとなる(自民党改正草案Q&Aにおいても,「国民の生命,身体及び財産という大きな人権を守るために,そのため必要な範囲でより小さな人権がやむなく制限されることもあり得る。」と説明されている。なお,法律レベルではあるが,事態対処法ですら,「武力攻撃事態への対処においては,日本国憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならず,これに制限が加えられる場合にあっても,その制限は当該武力攻撃事態等に対処するため必要最小限のものに限られ」とされている(事態対処法3条4項)。)。
 また,諸外国の例を見ても,フランス憲法16条にこのような条項はないし,ドイツ憲法の緊急事態条項には,例えば,防衛事態(連邦領域が武力で攻撃された,又はこのような攻撃が直接に切迫していること。ドイツ基本法115a 条1項)に関して,兵役又は代替役務の義務を負わない者に,非軍事役務の従事義務(同法12a 条3項)を,また非軍事的衛生施設,治療施設等の労働力不足のときにそれを補うために女子を徴用することができる(同条4項)など,限定された役務従事義務を規定するだけである。
② さらに,日本が1979年に批准した自由権規約(「市民的及び政治的権利に関する国際規約」)4条1項及び2項は,緊急事態の存在が公式に宣言されたときでも,人種などによる差別は許されず,思想良心の自由,奴隷・奴隷状態の禁止等の人権については侵害してはならないと定めている。
 しかし,上記のとおり,自民党改正草案99条3項は,「この場合においても,第14条,第18条,第19条,第21条その他の基本的人権に関する規定は,最大限に尊重されなければならない。」と規定するにとどまり,侵害を禁止することが端的に明記されておらず,平時では許容されない人権侵害の余地を認めるとも解されるものであるから,自由権規約4条 1 項及び2項と抵触する。
③ 以上のとおり,自民党改正草案99条3項によって,基本的人権が不当に制約されかねないという懸念は払拭されるものではなく,むしろ,この規定が憲法上明記されることによって司法による人権の事後的救済が困難になるおそれがあり,立憲主義を損なうものといわざるを得ない。
(8) 国会議員の任期について
 自民党改正草案99条4項は,「緊急事態の宣言が発せられた場合においては,法律の定めるところにより,その宣言が効力を有する期間,衆議院は解散されないものとし,両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる。」と定めている。
 前記4(4)で述べたとおり,緊急事態において特例として議員の任期が延長されることにより,本来予定されていた任期満了による総選挙が実施されなくなる。これは,国民の選挙の機会を失わせるものである。
 また,議員の任期の特例は「法律の定めるところにより」設けることができるとされており,憲法上の歯止めがない。仮に議員の任期延長について,法律により内閣総理大臣の裁量に委ねられることになれば,政権与党が多数を占める状態が継続し,緊急事態宣言時の内閣が政権を維持し続けることもあり得る。
 さらに,衆議院が解散された場合には,解散の日から40日以内に選挙を行うことが定められているが(日本国憲法54条1項),仮に選挙期日の特例について,法律により内閣総理大臣の裁量に委ねられることになれば,解散後,衆議院議員が不在のまま長期にわたり総選挙が実施されず,国会も召集されないまま,緊急事態宣言時の内閣が政権を維持し続けることもあり得る。
 これでは,国会及び国民による内閣に対する民主的抑制が十分に働かず,濫用を防止することは困難である。
(9) 小括
 そもそも,自民党改正草案が緊急事態条項(国家緊急権)を憲法上創設する理由の一つに,緊急事態条項(国家緊急権)に基づく権限の行使を憲法で縛り,その濫用を防止しようとする立憲主義が挙げられている。ところが,自民党改正草案は,緊急事態条項(国家緊急権)の全てにおいて,「法律の定めるところにより」との文言を含んでおり,重要な部分の多くを法律に委ねている。特に,98条1項は,緊急事態宣言の要件を定めるものであるが,それを「その他法律で定める緊急事態」として法律に委ねてしまえば,法律でいかようにも要件を定めることになり,憲法による縛りはなくなる。また,99条3項は,基本的人権に制限を加えることを許容するとも解される規定であるが,その内容についても法律に委ねてしまえば,平時では許容されないような人権制限が法律で可能となる。これは立憲主義を破壊するものであり,立憲主義の立場から憲法に緊急事態条項(国家緊急権)を規定すべきであるとの自らの論拠にも反する。
 以上のことから,自民党改正草案の制度設計は,立憲主義に反し,緊急事態条項(国家緊急権)の濫用を防止することはできず,基本的人権を損なう危険性が避けられない。

6 結論
 よって,意見の趣旨記載のとおり,当連合会は,自民党改正草案を含め,日本国憲法を改正し,戦争,内乱,大規模自然災害に対処するため同草案が定めるような対処措置を内容とする緊急事態条項(国家緊急権)を創設することに反対する。
                                     以 上

法律の略称
【事態対処法】
武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律
【米軍等行動関連措置法】
武力攻撃事態等及び存立危機事態におけるアメリカ合衆国等の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律
【特定公共施設利用法】
武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律
【外国軍用品等海上輸送規制法】
武力攻撃事態及び存立危機事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律
【捕虜取扱法】
武力攻撃事態及び存立危機事態における捕虜等の取扱いに関する法律
【国民保護法】
武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律
【国際人道法違反処罰法】
国際人道法の重大な違反行為の処罰に関する法律

(別紙1)自由民主党憲法改正草案第9章「緊急事態」
【第98条】
1 内閣総理大臣は,我が国に対する外部からの武力攻撃,内乱等による社会秩序の混乱,地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において,特に必要があると認めるときは,法律の定めるところにより,閣議にかけて,緊急事態の宣言を発することができる。
2 緊急事態の宣言は,法律の定めるところにより,事前又は事後に国会の承認を得なければならない。
3 内閣総理大臣は,前項の場合において不承認の議決があったとき,国会が緊急事態の宣言を解除すべき旨を議決したとき,又は事態の推移により当該宣言を継続する必要がないと認めるときは,法律の定めるところにより,閣議にかけて,当該宣言を速やかに解除しなければならない。
 また,百日を超えて緊急事態の宣言を継続しようとするときは,百日を超えるごとに,事前に国会の承認を得なければならない。
4 第2項及び前項後段の国会の承認については,第60条第2項の規定を準用する。この場合において,同項中「三十日以内」とあるのは,「五日以内」と読み替えるものとする。
【第99条】
1 緊急事態の宣言が発せられたときは,法律の定めるところにより,内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか,内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い,地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。
2 前項の政令の制定及び処分については,法律の定めるところにより,事後に国会の承認を得なければならない。
3 緊急事態の宣言が発せられた場合には,何人も,法律の定めるところにより,当該宣言に係る事態において国民の生命,身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。
 この場合においても,第14条,第18条,第19条,第21条その他の基本的人権に関する規定は,最大限に尊重されなければならない。
4 緊急事態の宣言が発せられた場合においては,法律の定めるところにより,その宣言が効力を有する期間,衆議院は解散されないものとし,両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる。

(別紙2)安全保障法制の概要
1 我が国の安全保障に関する重要事項を審議する機関として,内閣に国家安全保障会議が設置されている(国家安全保障会議設置法1条)。同会議は,武力攻撃が発生した事態又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態(以下「武力攻撃事態」という。事態対処法2条2号)及び武力攻撃事態には至っていないが,事態が緊迫し,武力攻撃が予測されるに至った事態(以下「武力攻撃予測事態」という。同法2条3号。以下,武力攻撃事態及び武力攻撃予測事態を併せて「武力攻撃事態等」という。)への対処に関する基本的な方針等について審議をする(国家安全保障会議設置法2条1項)。
2 武力攻撃事態等に至ったときは,政府は武力攻撃事態等への対処に関する基本的な方針(以下「対処基本方針」という。)を定める(事態対処法9条1項)。対処基本方針が定められたときは,内閣総理大臣は,臨時に内閣に武力攻撃事態等対策本部(以下「事態対策本部」という。)を設置し(同法10条),内閣総理大臣が対策本部長に就任する(同法11条)。
 武力攻撃事態等に至った場合,対処基本方針が定められてから廃止されるまでの間,指定行政機関等は,武力攻撃事態等の終結等のために必要な措置(以下「対処措置」という。事態対処法2条8号参照)を実施する。対策本部長は,対処措置を的確かつ迅速に実施するために,対処基本方針に基づき,指定行政機関の長等に対し,対処措置に関する総合調整を行う(同法14条1項)。また,内閣総理大臣は,上記の総合調整に基づく所要の対処措置が実施されないときは,地方公共団体の長等に当該対処処置を実施すべきことを指示し(同法15条1項),それも実施されないときは,自ら当該対処処置を実施することができる(同法15条2項)。
3 自衛隊の行動等に関しては,武力攻撃事態に至った場合,内閣総理大臣は防衛出動を命ずることができる(自衛隊法76条)。防衛出動時には,自衛隊には,武力行使権限(同法88条),公共の秩序維持のための権限(同法92条),緊急通行権限(同法92条の2)が認められている。
 また,武力攻撃予測事態に至った場合には,防衛大臣は,防衛出動の待機を命ずることができ(自衛隊法77条),その下で,防衛施設を構築することができる(同法77条の2)。それに従事する自衛官には,一定の範囲で武器使用が認められている。
4 米軍等との関係では,米軍等行動関連措置法の定めるところにより,日本が米軍等に対し,補給,輸送,修理・整備,医療,通信,空港・港湾業務等の物品や役務の提供を行うことができる(同法77条の3)。
5 国民保護に関しては,防衛大臣は,都道府県知事から自衛隊の部隊等の派遣要請を受けた場合,又は,事態対策本部長である内閣総理大臣から自衛隊の部隊等の派遣を求められた場合には,部隊等を派遣することができる(国民保護法15条1項,2項,自衛隊法77条の4)。また,「国民は,この法律の規定により国民の保護のための措置の実施に関し協力を要請されたときは,必要な協力をするよう努めるものとする。」との規定が置かれている(4条1項)。内閣は,著しく大規模な武力攻撃災害が発生し,国の経済の秩序を維持し及び公共の福祉を確保する必要がある場合において,一定の条件の下,金銭債務の支払猶予等に関して政令制定権限が認められている(同法130条1項)。
6 港湾施設,飛行場施設,道路,海域,空域及び電波(以下「特定公共施設等」という。特定公共施設利用法2条3項)の利用のうち港湾施設については,内閣総理大臣(対策本部長)は,港湾管理者に対して,優先的利用の要請をすることができ(同法7条1項),それが確保できない場合には港湾管理者に確保するよう指示し(同法9条1項),それでもなお確保できない場合には国土交通大臣を指揮して確保のための措置を行うことができる(同法9条3項)。これは,飛行場施設の利用に関しても同じである(同法11条)。
7 我が国の領海及び我が国周辺の公海における外国軍用品等(兵器・武器・弾薬等や外国軍隊の構成員)の海上輸送の規制に関しては,防衛大臣は,内閣総理大臣の承認を得て,防衛出動を命じられた海上自衛隊の部隊に対して,停船命令や船上検査などの停泊検査及び回航措置の手続を実施するよう命ずることができる(外国軍用品等海上輸送規制法4条1項)。その際,自衛官は職務の遂行に関して武器を使用することができる(同法37条,自衛隊法94条の7)。
8 このほかにも,捕虜取扱法では武力攻撃事態における捕虜等の拘束など捕虜の取扱について定めている(捕虜取扱法4条,自衛隊法94条の8)。

(別紙3)治安法制の概要
1 内閣総理大臣は,大規模な災害又は騒乱その他の緊急事態に際して,緊急事態の布告(以下別紙3において「布告」という。)を発することができる(警察法71条1項)。布告が発せられたとき,内閣総理大臣は一時的に警察を統制し,警察庁長官(以下「長官」という。)を直接に指揮監督する(同法72条)。長官は,布告に記載された区域(以下「布告区域」という。)を管轄する都道府県警察の警視総監等に対し,必要な命令・指揮をし(同法73条1項),布告区域外の都道府県警察に対して布告区域等への警察官の派遣を命じることができる(同法73条2項)。
2 また,内閣総理大臣は,間接侵略その他の緊急事態に際して,一般の警察力をもっては治安を維持することができないと認められる場合には,自衛隊の出動を命ずることができる(以下「治安出動命令」という。自衛隊法78条1項)。この場合,内閣総理大臣は,海上保安庁を防衛大臣の統制下に入れることができ(同法80条1項),防衛大臣がこれを指揮することになる(同法80条2項)。なお,防衛大臣は,治安出動命令が発せられることが予測される場合には,出動待機命令を発することができる(同法79条1項)。また,治安出動命令が発せられ,武器を所持した者が不法行為を行うことが見込まれる場合,当該武器所持者の所在場所等における情報収集を命ずることができる(同法79条の2)。
3 都道府県知事は,治安維持上重大な事態につきやむを得ない必要があると認める場合には,内閣総理大臣に対して自衛隊の出動を要請し(同法81条1項),内閣総理大臣は,事態やむを得ないと認める場合には,自衛隊の出動を命ずることができる(同法81条2項)。
4 これら治安出動の他にも,内閣総理大臣の自衛隊の施設等への警護出動命令(同法81条の2),防衛大臣の海上における警備活動命令(同法82条)などの定めが置かれている。
5 日本の社会秩序を混乱させた者に対しては,当該者が行った犯罪に応じて,刑法その他の刑事法により各種刑罰規定が定められている。
6 なお,2005年(平成17年)の自衛隊法改正により弾道ミサイル等に対する破壊措置命令に関する規定(同法82条の2)が設けられたが,政府はこれを,防衛出動命令下命前の措置であるので武力の行使ではなく武器の使用であるとして,防衛作用ではなく警察作用としている(2005年(平成17年)7月5日参議院外交防衛委員会での大野功統防衛庁長官の答弁)。政府の見解を前提とするならば,これも治安維持の制度に位置付けることができる。
7 テロ対策防止に関する条約としては,①航空機内の犯罪に関する条約(1969年),航空機不法奪取防止条約(1971年),③民間航空への不法行為防止条約(1973年),④空港での暴力行為防止議定書(1989年),⑤国家代表等への犯罪防止・処罰条約(1977年),⑥人質行為防止条約(1983年),⑦核物質防護条約(1987年),⑧海上航行不法行為防止条約(1992年),大陸棚プラットフォーム不法行為防止条約(1992年),⑨プラスチック爆弾探知条約(1998年),⑩テロ爆弾使用防止条約(2001年),⑪テロ資金供与防止条約(2002年)などがある(2003年(平成15年)2月衆議院憲法調査会事務局「「非常事態と憲法」に関する基礎的資料-安全保障及び国際協力等に関する調査小委員会(平成15年2月6日及び3月6日の参考資料)」・衆憲資第14号)。
8 政府は,武力攻撃の手段に準ずる手段を用いて多数の殺傷する行為が発生した事態又は当該行為が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態で,国家として緊急に対処することが必要なもの(緊急対処事態)に至ったときは,緊急対処事態に関する対処方針(緊急対処事態対処方針)を定めるものとされている(事態対処法22条 1 項)。ここに緊急対処事態とは,武力攻撃に準ずるテロ等の事態をいい,例えば,原子力事業所などの破壊,大規模集客施設やターミナル駅などの爆破,生物剤や化学剤の大量散布,航空機などの自爆テロなどである(内閣官房国民保護ポータルサイト)。国民保護法は,国や地方公共団体等に対して,緊急対処保護措置を的確かつ迅速に実施することに万全を期す責務を有するとされている(同法172条)。そして,国民は,緊急対処保護措置の実施に関し協力を要請されたときは,必要な協力をするよう努めるものとされている(同法173条1項)。

(別紙4)災害法制の概要
1 災害対策基本法によれば,非常災害が発生し,かつ,当該災害が国の経済及び公共の福祉に重大な影響を及ぼすべき異常かつ激甚なものである場合に,内閣総理大臣は,災害緊急事態の布告(以下別紙4において「布告」という。)を発することができる(同法105条1項)。この布告があったとき,次の措置が採られる。
(1) 内閣総理大臣は,臨時に内閣府に緊急災害対策本部を設置する(同法107条,28条の2)。緊急災害対策本部長には内閣総理大臣が就任する(同法28条の3,1項)。緊急災害対策本部には,緊急災害現地対策本部を置くことができる(同法28条の3,8項)。緊急災害対策本部長は,関係指定行政機関の長等に必要な指示をしたり(同法28条の6,2項),資料又は情報の提供,意見の表明その他必要な協力を求めたりすることができる(同条3項)。
(2) 政府は,災害緊急事態への対処に関する基本的な方針を定める(同法108条)。
(3) 内閣は,国の経済の秩序を維持する等の緊急の必要がある場合において,国会が閉会中又は衆議院が解散中であり,かつ,臨時会の招集を決定し,又は参議院の緊急集会を求めてその措置を待ついとまがないときは,緊急措置として政令を制定することができる。政令の対象は,生活必需物資の配給等の制限他合計4点である(同法109条1項,同法109条の2)。政令には刑罰を付すことができる(同法109条2項)。政令を制定したときは,内閣は直ちに国会又は参議院の緊急集会で承認を求めなければならない(同法109条4項)。政令に代わる法律が制定されないこととなったときは,制定されないこととなったときに政令の効力は失われる(同法109条5項)。
(4) 内閣総理大臣は,国民に対し,国民生活との関連性が高い物資等をみだりに購入しないこと等の協力を要求することができる(同法108条の3)。
2 大規模地震対策特別措置法によれば,内閣総理大臣は,気象庁長官から地震予知情報の報告を受けた場合において,地震防災応急対策を実施する緊急の必要があると認めるときは,地震災害に関する警戒宣言を発するとともに,住民等へ警戒態勢を執るべき旨を公示する等一定の措置を執らなければならない(同法9条1項)。
 警戒宣言を発したとき,次の措置が執られる。
(1) 内閣総理大臣は,臨時に内閣府に地震災害警戒本部(以下「警戒本部」という。)を設置する(同法10条1項)。警戒本部長には内閣総理大臣が就任する(同法11条2項)。警戒本部は,所管区域において指定行政機関の長等が実施する地震防災応急対策又は災害応急対策(以下「地震防災応急対策等」という。)の総合調整等を行う(同法12条)。
(2) 警戒本部長は,関係指定行政機関の長等に対し,必要な指示を行うことができる(同法13条1項)。
(3) 警戒本部長は,防衛大臣に対し,自衛隊の部隊の派遣を要請することができる(同法13条2項)。
3 警察法によれば,前記のとおり,大規模な災害で治安の維持のために特に必要があると認めるときは,緊急事態の布告を発することができ(警察法71条1項),内閣総理大臣が警察庁長官を直接指揮監督し,一時的に警察を統制することができる(同法72条)。
4 原子力災害対策特別措置法によれば,原子力事業者の原子炉の運転等により放射性物質又は放射線が異常な水準で当該原子力事業者の原子力事業所外へ放出された事態が発生したと認められる場合,原子力規制委員会は,内閣総理大臣に対し,その状況に関する必要な情報の報告等を行う(同法15条1項)。
 上記報告等を受けた内閣総理大臣は,直ちに原子力緊急事態宣言を公示し(同法15条2項),原子力災害対策本部を設置し(同法16条1項),内閣総理大臣がその対策本部長に就任する(同法17条1項)。
 また,内閣総理大臣は,市町村長及び都道府県知事に対し,居住者等の避難のための立退き,屋内への退避の勧告等を行うべきこと等を指示することとされている(同法15条3項)。
5 自衛隊法によれば,都道府県知事等は,天災地変その他の災害に際して,防衛大臣等に自衛隊の派遣を要請することができ(同法83条1項),要請を受けた防衛大臣等は救援のために自衛隊を派遣することができる(同法83条2項本文)。ただし,特に緊急を要し,要請を待ついとまがないと認められるときは,要請を待たないで自衛隊を派遣することができる(同法83条2項但書き)。
6 地震等の大規模な自然災害の場合,被災者の救助等のために人権制約を認めた規定がある。
 すなわち,都道府県知事は,(ⅰ)医療,土木建築工事又は輸送関係者を救助に関する業務に従事させることができる(災害救助法7条1項)。これには罰則がある(同法31条)。(ⅱ)救助を要する者及びその近隣の者を救助に関する業務に協力させることができる(同法8条)。(ⅲ)病院,診療所,旅館等を管理し,土地家屋物資を使用し,物資の生産,集荷,販売,配給,保管若しくは輸送を業とする者に物資の保管を命じ,収用できる(同法9条1項)。これには罰則がある(同法31条)。(ⅳ)職員に施設,土地,家屋,物資の所在場所,保管場所に立ち入り検査させることができる(同法10条1項)。これには罰則がある(同法33条1項)。
 市町村長は,(ⅰ)設備物件の占有者,所有者又は管理者に対して当該設備又は物件の除去,保安その他必要な措置を採ることを指示できる(災害対策基本法59条1項),(ⅱ)居住者等に対し避難のための立ち退きを勧告し,立ち退きを指示することができる(同法60条1項)。(ⅲ)居住者等に対し,屋内待避その他屋内における避難のための安全確保措置を指示できる(同法60条3項)。(ⅳ)警戒区域を設定し,立ち入りを制限,禁止,退去を命ずることができる(同法63条1項),(ⅴ)他人の土地・建物その他の工作物を一時使用し,土石竹木その他の物件を一時使用し,若しくは収用できる(同法64条1項)。(ⅵ)現場の災害を受けた工作物又は物件の除去その他必要な措置を採ることができる(同法64条2項)。(ⅶ)住民又は現場にある者を応急措置の業務に従事させることができる(同法65条1項)。

(校注/金原から)

10頁 28行目 「~という地方分権に視点から」を「~という地方分権の視点から」に訂正した。
31頁 5行目 文末に句点(。)を付加した。
 

(弁護士・金原徹雄のブログから)
2016年1月26日
水島朝穂教授による自民党改憲案「緊急事態条項」批判論文(2013年)がネットで公開されました
2016年2月3日
自民党改憲案・緊急事態条項はナチス授権法の再来か?~海渡雄一弁護士の論考を読む

2016年2月6日
立憲デモクラシーの会・公開シンポジウム「緊急事態条項は必要か」を視聴する

2016年4月11日
立憲デモクラシー講座第8回(4/8)「大震災と憲法―議員任期延長は必要か?(高見勝利氏)」のご紹介(付・『新憲法の解説』と緊急事態条項)
2016年5月29日
金森徳次郎国務大臣答弁と『新憲法の解説』を読む~災害を理由とした緊急事態条項は不要!
2016年10月24日
動画とレジュメで振り返る講演「参院選後の改憲の動きと私たちの課題」(2016年10月22日/講師:金原徹雄/主催:憲法を生かす会 和歌山)


(付録)
『これがボクらの道なのか』
『時代は変わる』
『遠い世界に』
『花をください』
『Hard Times Come Again No More』
『血まみれの鳩』
演奏:長野たかし&森川あやこ

※2013年10月5日@京都市御池地下街 ゼスト御池

「安倍政権の横暴を許すな!」連続企画@和歌山市のご案内~3/3共謀罪学習会&3/25映画『高江―森が泣いている 2』上映と講演

 今晩(2017年2月24日)配信した「メルマガ金原No.2733」を転載します。

「安倍政権の横暴を許すな!」連続企画@和歌山市のご案内~3/3共謀罪学習会&3/25映画『高江―森が泣いている 2』上映と講演

【第1部 「安倍政権の横暴を許すな!」連続企画@和歌山市のご案内】
 あと1週間に迫った、私が講師を頼まれている3月3日(金)の学習会のチラシが主催者(和歌山県平和フォーラム)から届きましたので、ご紹介します。
 このチラシは、和歌山県平和フォーラムなど3団体が3月中に行う2つの企画の共同チラシとなっており、3月3日は共謀罪についての学習会、そして3月25日(土)が、講演と映画で「沖縄の今」を考える集会です。
 以下に、チラシから2つの企画の概要を転記します。

 前半(3月3日)の企画は、私の講演はともかくとして、参加者には、『一(いち)からわかる共謀罪
 話し合うことが罪になる』(2017年1月発行/頒価200円)という、分かりやすくてためになる冊子が無償配布されるはずですから、それだけでも参加していただく価値があると思います。何しろ、■「秘密保護法」廃止へ!実行委員会(平和フォーラム 新聞労連ほか)、■解釈で憲法9条を壊す!実行委員会(許すな!憲法改悪・市民連絡会 憲法会議)、■盗聴法廃止ネットワーク(盗聴法に反対する市民連絡会 日本国民救援会)の3団体が共同で編集・発行したものですから。
 同書には、海渡雄一弁護士(日弁連共謀罪法案対策本部副本部長)による2本の論考、「共謀罪って何?自由を奪う監視社会の到来」と「戦争準備法制としての治安維持法と共謀罪」も収録されており、とてもよくまとまっていて参考になります(ということで、私は自分のレジュメは作らずに、海渡弁護士の論考をレジュメ代わりにすることにしました)。

 また、後半(3月25日)は、自治労沖縄県本部書記長の大嶺克志さんによる講演「沖縄で今、何が起きているのか」と、藤本幸久・影山あさ子共同監督作品『高江―森が泣いている 2』の上映が行われます。
 明後日(2月26日)、和歌山県平和委員会が中心になった実行委員会の主催によるドキュメンタリー映画『いのちの森 高江』(謝名元慶福監督)の上映会が予定されていますし、是非両作とも観たいのですが、どちらも拠ん所ない所用が・・・(困った)。 

チラシから概要を引用開始)
安倍政権の横暴を許すな!
 
安倍政権は憲法・沖縄・原発・共謀罪など様々な分野で暴走を続けています。
 沖縄では辺野古新基地建設の強行。欠陥機オスプレイの飛行と県民の意見や法さえも無視する暴挙が繰
り返されています。
 共謀罪法案はその危険性ゆえに、世論の強い反対で三度の廃案に追い込まれましたが、安倍政権は四たび国会に提出し、成立を狙っています。テロへの不安に便乗した権力の横暴を許してはなりません。
 こうした状況をふまえ、運動を深化させるため、2つの学習、映画・講演会を企画致しました。参加をお待ちしています。
2017年3月3日(金)
時間/18:30~20:30
場所/和歌山市勤労者総合センター(ふくふくセンター)6階文化ホール
      和歌山市西汀丁34 TEL:073-433-1800
“共謀罪”とは何か?・その狙いとは
講師 金原徹雄 氏(弁護士・憲法9条を守る和歌山弁護士の会 前事務局長)
2017年3月25日(土)
時間/14:00~16:30
場所/男女共生推進センターホール(和歌山市あいあいセンター内)
      和歌山市小人町29 TEL:073-432-4702
第1部 講演「沖縄で今、何が起きているのか」
     講師 大嶺克志 氏(自治労沖縄県本部書記長)
第2部 映画『高江―森が泣いている 2』(上映63分)
     藤本幸久・影山あさ子共同監督作品
(引用終わり)

(参考動画)
2016/12/17 映画『高江:森が泣いている2』初日トークイベント

※昨年12月17日のポレポレ東中野における公開初日トークイベント(藤本幸久監督、鎌田慧氏)の模様です。

【第2部 共謀罪をめぐる最新ニュース、動画、声明のご紹介vol.2】

 今日の後半(第2部)は、共謀罪シリーズの第7回として、2月21日に続き、「共謀罪をめぐる最新ニュース、動画、声明のご紹介」のvol.2をお届けします。

(その1 ニュースの部)
東京新聞 2017年2月22日 朝刊
「共謀罪」拡大解釈の懸念 準備行為、条文に「その他」

(抜粋引用開始)
 共謀罪法案は、犯罪に合意しただけで罰するのは内心の処罰につながるといった批判を受け、過去三度も廃案になってきた。安倍晋三首相や金田勝年法相らは今回、新たな共謀罪法案について「準備行為があって初めて処罰の対象とする」と過去の法案よりも適用範囲を限定する方針を説明。一方でハイジャックテロや化学薬品テロでは、現行法の準備罪や予備罪よりも前段階での処罰が可能になるとして、テロ対策
での必要性を強調してきた。
 新たに明らかになった条文では「犯罪を行うことを計画をした者のいずれか」によって「計画に基づき
資金または物品の手配、関係場所の下見その他」の準備行為が行われた場合、処罰対象となる。ただ、準備行為はそれ自体が犯罪である必要がない。
 例えば、基地建設に反対する市民団体が工事車両を止めようと座り込みを決めた場合、捜査機関が裁量で組織的威力業務妨害が目的の組織的犯罪集団だと判断し、仲間への連絡が準備行為と認定される可能性
がある。
 また、政府への抗議活動をしている労組が「社長の譲歩が得られるまで徹夜も辞さない」と決めれば、組織的強要を目的とする組織的犯罪集団と認定され、誰か一人が弁当の買い出しに行けば、それが準備行
為とされる可能性がある。
 米国の共謀罪に詳しい小早川義則・名城大名誉教授(刑事訴訟法)は「米国では、顕示行為(準備行為)は非常に曖昧で、ほんのわずかな行為や状況証拠からの推認で共謀が立証される」と説明。「日本の法
体系と全くの異質のものを取り入れる必要性があるのか」と疑問を呈した。
 また、「その他」は無制限に解釈が広がる恐れがある。新屋(しんや)達之・福岡大教授(刑事法)は「何でも当てはめることができ、限定にはならない。結局、犯罪計画と関係ある準備行為かどうかは、捜
査側の判断になる」と述べた。
(引用終わり)
 
(その2 動画の部)
20170221 UPLAN 共謀罪を廃案にしよう!!安倍政治を終らせよう(1時間07分)

 2月21日(火)に行われた立憲フォーラムと戦争をさせない1000人委員会が主催する「安倍政治を終わらそう!2月21日集会」の模様です。
 この日のメイン講師は平岡秀夫さん(弁護士、元法務大臣、日本弁護士連合会共謀罪法案対策本部委員)、演題は「共謀罪と監視社会について考える」でした(動画の16分~1時間05分)。
 なお、平岡さんの講演後、1時間06分から山尾志桜里衆議院議員(民進党)が、衆議院予算委委員会での審議状況について報告しています。ところで、山尾さんて、立憲フォーラムのメンバーだったんだろうか?(聞いたことなかったけど)。

(その3 声明の部)
MIC声明:「共謀罪」の国会提出に反対する
(引用開始)
                   
2017年2月24日
                   日本マスコミ文化情報労組会議
                   議長 小林 基秀
 国会で過去3度廃案になった「共謀罪」を「テロ等準備罪」と名称を変えた関連法案が、来月上旬に閣議
決定され、国会に提出されると報道されている。
 犯罪の実行行為がなくても相談をしただけで罪に問える「共謀罪」は、人々の思想・信条を処罰の対象
にするものであり、戦前の治安維持法にも通底する危険な法律だ。
 「共謀」(計画)を立証するために、電話や会議の盗聴や私信メールのチェックなどの捜査が将来的に導入されれば、プライバシーを著しく侵害する。民主主義社会の根幹である内心の自由、表現の自由、集
会・結社の自由などの基本的人権を軽視する「共謀罪」は、日本国憲法の理念と相容れないと考える。
 政府は、対象となる犯罪の数を300未満に絞り込むとともに、テロを引き起こす可能性のある「組織的犯罪集団」のみを適用対象とすると説明し、さらに、計画だけでなく「準備行為」も要件にするとしている。しかし、組織的犯罪集団や準備行為の定義はあいまいなままだ。捜査当局の恣意的な判断により、政府に批判的な市民団体や労働組合などにも「テロ集団」のレッテルを貼り、摘発の対象にすることを私たち
は懸念する。
 古今東西、政府が、自らに批判的な勢力やメディアを恣意的な法の運用で弾圧した事例に枚挙にいとまがない。日常的な取材・報道活動や、労働組合の正当な活動まで犯罪とされかねないこの法案を、私たち
マスコミの現場で働く者は認めることはできない。
 これまでの国会審議をみても、法相が何度も答弁に窮して立ち往生し、実質的な議論がなされていない。これは政府が準備している法案が、体系立てて論理的に説明できないほど不備が多いことの表れではな
いか。その上、国会での質問封じの文書を配布するなど、拙劣な対応が非難の的となっている。
 民主主義社会にとって弊害が大きすぎる「共謀罪」関連法案の国会提出に、私たちは強く反対する。
                                     以 上
日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)
(新聞労連、民放労連、出版労連、全印総連、映演労連、映演共闘、広告労協、音楽ユニオン、電算労)
この件に関する問い合わせは事務局・山下(070-5010-7156)までお願いします。

(引用終わり)
 
(弁護士・金原徹雄のブログから)
2017年1月25日
映画『いのちの森 高江』上映会@2/26和歌山市勤労者総合センターへのお誘い
2017年2月6日
レファレンス掲載論文「共謀罪をめぐる議論」(2016年9月号)を読む
2017年2月7日
日弁連パンフレット「合意したら犯罪?合意だけで処罰?―日弁連は共謀罪に反対します!!―」(五訂版2015年9月)を読む
2017年2月8日
「共謀罪法案の提出に反対する刑事法研究者の声明」(2017年2月1日)を読む
2017年2月10日
海渡雄一弁護士with福島みずほ議員による新春(1/8)共謀罪レクチャーを視聴する

2017年2月21日
共謀罪をめぐる最新ニュース、動画、声明のご紹介

2017年2月23日
日本弁護士連合会「いわゆる共謀罪を創設する法案を国会に上程することに反対する意見書」(2017年2月17日)を読む


(付録)
『辺野古節』『満月の夕(ゆうべ)』『踊れ、踊らされる前に』 演奏:中川敬withリクオ

※2015年11月14日@新宿アルタ前

共謀罪(金原)チラシ一からわかる共謀罪(表)一からわかる共謀罪(裏) 

日本弁護士連合会「いわゆる共謀罪を創設する法案を国会に上程することに反対する意見書」(2017年2月17日)を読む

 今晩(2017年2月23日)配信した「メルマガ金原No.2732」を転載します。

日本弁護士連合会「いわゆる共謀罪を創設する法案を国会に上程することに反対する意見書」(2017年2月17日)を読む

 共謀罪シリーズの第6回として、去る2月17日に日本弁護士会連合会が公表した「いわゆる共謀罪を創設する法案を国会に上程することに反対する意見書」をご紹介します。
 日弁連による同趣旨の意見書としては、2012年4月13日付「共謀罪の創設に反対する意見書」がありましたが、今通常国会に間もなく上程されるのではという緊迫した情勢の下、最新情勢を取り込むアップツーデートを行った新たな意見書を公表する必要があるという判断に基づくものでしょう。
 
 一読したところ、本意見書は、「テロ等組織犯罪準備罪」という新たな名称をまとった共謀罪法案が、①犯罪主体を「組織的犯罪集団」に限定、②「計画」の存在、③「準備行為」を処罰条件とするという3要件を規定しており、人権の侵害や恣意的な取締りにはつながらないという触れ込みに対して理論的な反駁を行うことに重点が置かれており、大いに参考にしていただけるのではないかと思います。

 なお、同じ2月17日、日本弁護士連合会は、「日本国憲法に緊急事態条項(国家緊急権)を創設することに反対する意見書」も公表しており、こちらの方も近くご紹介したいと思います。
(引用開始)
                          2017年(平成29年)2月17日
                          日本弁護士連合会

第1 意見の趣旨
 当連合会は,いわゆる共謀罪を創設する法案を国会に上程することに反対する。

第2 意見の理由
1 共謀罪法案の国会への再提出

 政府は,2000年に署名され,2003年に発効した国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(以下「国連越境組織犯罪防止条約」という。)締結のために必要であるとして,2003年,2004年,2005年の3回にわたって共謀罪法案を国会に提出したが,いずれも廃案となった。
 ところが,2015年11月フランスでのテロ事件の発生を機に,政府関係者から,テロ対策のために共謀罪の創設が必要であるとの発言がなされるようになった。そして,2016年8月以降,政府が「共謀罪」を「テロ等組織犯罪準備罪」と名称を改めて取りまとめ,臨時国会に提出することを検討している旨報じられた。その後臨時国会への法案提出は見送られたものの,報道によれば,2017年1月に召集された通常国会に共謀罪に関する新たな法案の提出が確実視されており,現時点において,法定刑が懲役4年以上である600を超える犯罪について共謀罪が新設されようとしている。
 当連合会は,共謀罪に関して,これまで,直近では,2012年4月13日付け「共謀罪の創設に反対する意見書」を提出しているが,以上の状況を踏まえ,当連合会の見解を改めて表明するために本意見書を取りまとめた。
 
2 共謀罪法案の概要
 これまでの報道及び本国会における審議を踏まえ,本国会に提出されることが想定される法案(以下「共謀罪法案」という。)は,現行の「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」(以下「組織的犯罪処罰法」という。)の第6条の2に「テロ等準備罪」を創設し,組織的犯罪集団の活動として,組織により行われる重大な犯罪の遂行を2名以上で計画した場合で,計画に係る犯罪の実行のための資金又は物品の取得等の準備行為が行われたときに処罰するとされている。
 そして,共謀罪法案は,3つの厳しい要件(①犯罪主体を「組織的犯罪集団」に限定,②「計画」の存在,③「準備行為」を処罰条件とする)を規定しており,人権の侵害や恣意的な取締りにはつながらず,これまでの批判は回避されているとしている。
 
3 共謀罪法案の基本的な問題点
(1)共謀罪法案は,現行刑法の体系を根底から変容させるものとなること

 現行刑法は,犯罪行為の結果発生に至った「既遂」の処罰を原則としつつ,例外的に,犯罪の実行行為には着手されたが結果発生に至らなかった「未遂」について処罰する(刑法第44条)という体系から構成されている。「未遂」の前段階である「予備」(犯罪の実行行為には至らない準備行為のこと),さらにその前段階である「陰謀」(2人以上の者が犯罪の実行を合意すること)が処罰の対象とされる場合もあるが,これら「予備」や「陰謀」は各罪の中でごく例外的に処罰対象とされているにとどまる。この点は,現行刑法典だけでも,「既遂」が200余り規定されているのに対して,「未遂」は60余り,「予備」は10余り,「陰謀」はわずか数罪にとどまることからも明らかである(なお,共謀罪法案の対象となる犯罪は刑法典に規定された犯罪に限定されるものではないが,刑法典が刑罰の基本法規であることから,ここでは,刑法典に規定されている犯罪類型を例に挙げて検討している。)。
 しかし,共謀罪法案の構成要件である「計画」は,現行刑法でみると「陰謀」とほぼ同義であると解されるので,共謀罪法案が成立すると,長期4年以上の刑が定められた犯罪については,「未遂」はおろか,「予備」にすら到っていない「陰謀」の段階で,犯罪が一律に成立することになる。現行刑法典でみると,長期4年以上の刑が定められた犯罪が100近くあることから,「陰謀」の段階において処罰の対象とされる犯罪が100近く出てくることになるが,これは「未遂」の60余りを優に超えている。しかも,これら100近くの犯罪の中には,その「未遂」が処罰されないものが約半数含まれており,「未遂」が処罰されないにもかかわらず,「陰謀」の段階で処罰されることとなる犯罪が約半数出てくることになる。
 このように,「計画」を要件とする共謀罪法案が成立した場合には,「既遂」の前々々段階において国家による刑罰権の発動がなされることとなる。しかし,「陰謀」の段階における法益侵害の危険性は,犯罪の実行に着手したが結果が発生しなかった「未遂」の場合に比すれば類型的にはるかに低く,それゆえに現行刑法上は「内乱」,「外患誘致・援助」,「私戦」等ごく限られた結果が極めて重大な犯罪についてのみ「陰謀」を処罰することとしているのであって,「陰謀」と同様の意味を有する「計画」について「未遂」の場合と同程度の(処罰の対象となる個数から言えば,それ以上の)刑罰権の発動が正当化されるとは考えられない。
(2)共謀罪法案においても,犯罪を共同して実行しようとする意思を処罰の対象とする基本的性格は変わらないと見るべきこと
 上述のとおり,共謀罪法案は,前述のとおり3つの厳しい要件を規定しており,恣意的な取締りにはつながらないと説明されている。
 しかし,これらの構成要件ないし処罰条件は,犯罪の対象を限定する機能を適切に果たすことができないおそれがあり,共謀罪法案は,依然として,犯罪を共同して実行する意思を処罰の対象とするものと評価されてもやむを得ないものである。以下,理由を述べる。
①「組織的犯罪集団」と規定しても犯罪主体が適切に限定されないこと
 共謀罪法案は,犯罪主体を「組織的犯罪集団」(団体のうち,その結合関係の基礎としての共同の目的が「重大な犯罪」(長期4年以上の自由を剥奪する刑又はこれより重い刑を科することができる犯罪)又は国連越境組織犯罪防止条約が定める犯罪を実行することにあるもの)と規定し,それらの行為を実行するための組織により行われるものの遂行を二人以上で計画した者を処罰するとするものである。したがって,犯罪主体となり得るのは,テロ組織,暴力団,薬物密売組織,振り込め詐欺集団等に限定され,通常の市民団体や労働組合等の活動が処罰の対象となることはない,と説明されている。
 しかしながら,例えば,組織的犯罪処罰法は,「団体」について「共同の目的を有する多人数の継続的結合体であって,その目的又はその意思を実現する行為の全部又は一部が組織により反復継続して行われるもの」(同法第2条第1項)と規定する。また,暴力団員の行う暴力的要求行為等の規制を目的として制定された「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」は,「暴力団」について,「その団体の構成員(その団体の構成団体の構成員も含む。)が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体」(同法第2条第2号)と規定する。
 さらに,「破壊活動防止法」は,「団体」について,「特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体」とそれぞれ定義している(同法第4条第3項)。
 このように,主体を暴力団員等に限定したいのであれば,「組織的犯罪集団」の定義において,これらの法律に準じて,「常習性」,「反復継続性」等の要件が付加,明記されてしかるべきである。しかしながら,共謀罪法案の主体についてこのような要件の縛りはなく,主体がテロ組織,暴力団,薬物密売組織,振り込め詐欺集団等の構成員に限定されている趣旨を読み取ることはできない。
 また,「組織的犯罪集団」かどうかが問題となるのは,あくまで犯罪の共謀を行った時である。したがって,もともと適法な活動を目的とする市民団体や労働組合等がある時点で違法行為を計画した場合も,その時点で法の定義する「組織的犯罪集団」となったと解釈できる余地を残している。
 そして,共謀罪の適用が問題となるのは,団体が組織として犯罪行為実行することを共謀(共謀罪法案では「計画」)した時点であるから,もともと適法な活動を目的とする団体であったとしても,共謀の時点では「組織的犯罪集団」と認定され,共謀罪の対象とされる危険性が十分ある。現に,最高裁平成27年9月15日決定は,組織的犯罪処罰法に定める「団体」について,当初は適法な活動を行っていた会社であっても,その後の活動によっては要件を充足することを認め,さらに,当該会社の従業員の中に犯罪行為に加担していないものがいたからといって別異に解する理由はないとしている。
 このように,「組織的犯罪集団」を「共同の目的が犯罪を実行することにある団体」と定義しても,テロ組織,暴力団,薬物密売組織,振り込め詐欺集団等に限定される保証はなく,通常の市民団体や労働組合が処罰の対象とされる可能性があり,主体の限定は政府が言うように有効に機能するとは期待できない。
②「計画」の要件が存在しても犯罪の成立が適切に限定されないこと
 共謀罪法案は,「計画」という要件により,処罰の対象となるのは,犯罪の実行を目的とする合意が具体的・現実的になった段階に限定され,そのような段階に達成していない合意は処罰の対象とされないものとされている。
 しかし,「計画」とは,目的を達成するためにあらかじめ考えた方法・手段・手順等をさす用語とされているが,実質的には合意を言い換えたものであり,この文言だけからは,合意の具体性・現実性までが要求される趣旨は読み取れず,犯罪の成否を分かつ分水嶺として機能するとは思われない。
③「準備行為」の要件は適切に機能しないこと
 共謀罪法案は,計画(合意)のみならず,当該犯罪の実行の「準備行為」がなされることを処罰条件として付加されており,内心や思想を処罰するものではない,とされている。
 しかしながら,今回,「準備行為」の例として,資金又は物品の取得が例示されていることから分かるように,準備行為自体は,予備罪や準備罪における予備行為又は準備行為のように,その行為自体が結果発生の危険性を帯びる行為とはされておらず,計画に基づく行為(その行為は,我々が日常生活において通常行っている行為でも構わない。)が外部に現れれば,処罰条件は具備されたことになると理解される。
 また,「準備行為」は処罰条件に過ぎないため,「計画」の時点から犯罪の嫌疑がありとして犯罪捜査の対象となり得る。
 そうすると,「準備行為」がなされたことを処罰条件とするとしても,共謀罪法案は,依然として,犯罪を共同して実行する意思を処罰の対象としていることと実質的には変わらないと言わざるを得ない。
④構成要件の人権保障機能が阻害されるおそれがあること
 現行刑法は,法律において構成要件を明記し,構成要件に該当しない行為については処罰の対象とせず国家の刑罰権の発動を抑制することによって,構成要件に人権保障機能を持たせている。現行刑法体系における構成要件は,外部に現れた人の「行為」のうち,法益侵害又はその危険性のあるものを個別・具体的に抽出して規定し,処罰の対象となる行為とそうでない行為が明確に区分されることから,構成要件は人権保障機能を果たしているとされる。ところが,共謀罪法案が成立すれば,「犯罪を実行する意思」の合致にほかならない「計画」が構成要件となり,しかも,これは外部から伺い知ることは困難であるから,犯罪の成否を区別するための構成要件の人権保障機能が十分に機能しないこととなりかねない。
⑤まとめ
 以上のとおりであって,共謀罪法案において3つの要件が付加されたとしても,従前の共謀罪法案と同じく,犯罪を実行しようとする意思を処罰の対象とする姿勢に変化はないものと見るべきである。
(3)罪名を「テロ等準備罪」と改めても,監視社会を招くおそれがあること
 共謀罪法案は,その呼称が「テロ等準備罪」とされていることから(さらに,上記(2)に記載の要件を付加することによって),この罪がテロその他の組織犯罪にしか適用されず,市民運動,労働組合活動等には適用されない,と説明されている。
 しかし,共謀罪法案の構成要件は上述のとおりであるところ,この構成要件から,共謀罪法案がテロ等に対してのみ適用される犯罪類型であることは読み取れない。
 加えて,共謀罪法案が成立すれば,犯罪を共同して実行する意思の合致である「計画」が重要な構成要件となるところ,人と人とが犯罪を遂行する合意をしたかどうかや,その合意の内容が実際に犯罪に向けられたものか否かの判断は,犯罪の実行が着手されていない段階では,事柄の性質からして極めて困難である。したがって,犯罪の成否を明確にし,人権保障を担っている構成要件が機能せず,検挙しようとする捜査機関の恣意的な判断を容れる余地が出てくる。
 また,「計画」(合意)は人と人との意思の合致によって成立する。したがって,その捜査手法は,会話,電話,メール等の人の意思を表明する手段及び人の位置情報等を収集することとなる。既に通信傍受やGPS(グローバル・ポジショニング・システム)による捜査が行われているところ,共謀罪の捜査のためとして,新たな立法により,更なる通信傍受の範囲の拡大,会話傍受,更には行政盗聴まで認めるべきであるとの議論につながるおそれがある。このような捜査手法が認められたなら,市民団体や労働組合等の活動を警察が日常的に監視し,行き過ぎた行動に対して,共謀罪であるとして立件するおそれもあり,市民の人権に少なからぬ影響を及ぼしかねない。
 
4 国連越境組織犯罪防止条約との関係
(1)
政府は,共謀罪法案を制定する理由として,国連越境組織犯罪防止条約を締結するために国内法の整備が必要であることを挙げている。国連越境組織犯罪防止条約では,締結国に対して,重大な犯罪を行うことの合意の犯罪化等を求めているところ(第5条第1項),重大な犯罪とは,長期4年以上の刑が科される犯罪とされていることから(第2条(b)),長期4年以上の刑が定められた犯罪を実行する計画を立案したことを処罰の対象とする共謀罪法案の創設が不可欠としている。
 もとより当連合会においても,国連越境組織犯罪防止条約の締結について反対するものではないが,我が国においては国連越境組織犯罪防止条約との関係でも当然に共謀罪の創設を必要とするものではない。以下,その理由を述べる。
(2)「予備」,「陰謀」,「準備」の段階の処罰立法が既になされていること
 我が国においては,主要な暴力犯罪について,「未遂」以前の「予備」,「陰謀」,「準備」段階の行為を処罰の対象とする規定が相当程度存在している。
 まず,生命・身体・財産等を保護法益とするものとしては,殺人(刑法第201条,組織的犯罪処罰法第6条第1項),強盗(刑法第237条),身の代金目的略取(刑法第228条の3),営利目的等略取及び誘拐(組織的犯罪処罰法第6条第2項),いわゆるハイジャック(航空機の強取等の処罰に関する法律第3条)等について,「予備」の段階を処罰の対象とし,治安を妨げ,身体財産を害することを目的としての爆発物の使用(爆発物取締罰則第4条),他人の身体に対して害を加えることの「共謀」への参加(ただし,その一部の者が予備行為をした場合に限る。)(軽犯罪法第1条第29号)等について,処罰の対象とされている。
 次に,公共の安全を保護法益とするものとしては,現住建造物等放火(刑法第113条),激発物破裂(同法第117条),化学兵器を使用して毒性物質を発散させる化学兵器等使用(化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律第40条),病原体等を発散させて公共の危険を生じさせる行為(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第67条第3項),サリン等を発散させて公共の危険を生じさせる行為(サリン等による人身被害の防止に関する法律第5条第3項),放射線を発散させる行為(放射線を発散させて人の生命等に危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律第3条第3項),けん銃等の輸入罪(銃砲刀剣類所持等取締法第31条の12),核物質の輸入罪(放射線を発散させて人の生命等に危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律第6条第3項),麻薬等,覚せい剤,大麻の輸入・輸出等(麻薬及び向精神薬取締法第67条,第69条の2,覚せい剤取締法第41条の6,大麻取締法第24条の4),犯罪収益等に関する事実の仮装,隠匿(組織的犯罪処罰法第10条第3項)等について,「予備」の段階を処罰の対象としている。さらに,2人以上の者が他人の生命等に対して共同して害を加える目的で凶器を準備して集合する行為等(刑法第208条の2)について,「準備」の段階を処罰の対象としている。また,公衆等脅迫目的の犯罪を実行しようとする者が武器を購入するために資金を集める行為,これらの者を援助する目的で資金,土地,建物,物品,役務を提供する行為が処罰の対象とされているが(公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金等の提供等の処罰に関する法律第2条から第5条),これは公衆等脅迫行為の「準備」と言えるものである。
 さらに,国家を保護法益とするものとしては,内乱(同法第78条),外患誘致,外患援助(同法第88条),私戦予備及び陰謀(同法第93条)等について,「予備」,「陰謀」の段階で,処罰の対象とされている。自衛隊員(治安出動命令を受け,防衛出動命令を受けた者を含む。)が上官の職務命令に対して多数共同して反抗等する行為(自衛隊法第119条,同法第120条,第122条),特定秘密の取扱いの業務に従事する者がその業務により知得した特定秘密を漏らす行為,法令の規定により特定秘密の提供を受けた者がこれを漏らす行為(特定秘密の保護に関する法律第25条)等について,「陰謀」の段階を処罰の対象としている。
 以上のとおり,我が国には,「予備」,「陰謀」,「準備」の段階を処罰の対象とする立法が既になされており,「陰謀」段階を処罰する新たな立法をする必要性は乏しい。
(3)テロ対策のための立法がなされてきたこと
 国連は,国連越境組織犯罪防止条約とテロ関係の条約を明確に区別した上で,テロ対策のための条約を多数制定している。例えば,ハイジャック防止のためのハーグ条約(1970年),核物質防護条約(1980年),シージャック防止条約(1988年),プラスチック爆薬探知条約(1991年)等のテロ防止関連13条約がそれである。
 また,2002年には,国連のテロ資金供与防止条約が締結され,我が国では,(2)記載のとおり,国内法としてテロ資金提供処罰法(公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金等の提供等の処罰に関する法律)が制定された。この法律は,公衆等脅迫目的の犯罪を実行しようとする者を援助する目的で資金等を提供する行為である「準備」行為についても,処罰の対象とし,処罰対象者の範囲も,実行者に直接利益を提供する協力者だけでなく,間接的に支援する協力者にまで拡大している。
 2007年には,(2)記載のとおり,放射線を発散させて人の生命等に危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律が成立し,この法律においても,放射線を発散させる行為について「予備」を処罰することとされている。
(4)条約の一部留保を行う余地があること
 政府は,国連越境組織犯罪防止条約第5条が,「重大な犯罪」を共謀罪の対象犯罪とすることを義務付けていることから,共謀罪の対象犯罪を限定することはできず,限定すれば同条約に反するとともにその趣旨及び目的に反すると説明している。
 しかし,条約法に関するウィーン条約では,条約の趣旨及び目的と両立すれば,留保を付して条約を批准することができることとされており(第19条(C)),国連越境組織犯罪防止条約第5条については一部留保してもこの条約の趣旨及び目的と両立させることができ,したがって,一部留保してこの条約を締結することが可能と考えられる。以下理由を述べる。
 外務省の説明によれば,国際社会における法の抜け穴をなくし,国際的な組織犯罪の防止のための国際協力を促進することを通じて,深刻化する国際的な組織犯罪に対する国際的な取組の強化に寄与することができることから,早期に国連越境組織犯罪防止条約を締結することが我が国の責務である,としている。
 まず,上述において述べたとおり,テロ等対策のための主要な犯罪については,「未遂」の前段階を処罰する立法が既に存在しており,また,「予備」罪についても共謀共同正犯が認められ,予備行為の謀議に加わった者も処罰の対象とできることとされていることを踏まえれば,新たな立法をすることなく,国連越境組織犯罪防止条約を締結しても同条約の趣旨及び目的に反しないものと考えられる。
 また,従前の共謀罪審議において,当時の民主党が長期5年の刑期を超える犯罪を対象とした修正案を当時の自民党が受け入れる方針を明らかにしたことがあったことに加え,今般も,与党から「重大な犯罪」に該当する罪であっても,性質上対象になり得ない罪(過失犯等)や組織犯罪と関連性が低い罪(公職選挙法等)が除外されることが議論されていることからして,政府の条約解釈においても,条約上の「重大な犯罪」を全て共謀罪として立法する必要がないことが裏付けられている。そして,後述するように,個別にテロ等対策のための犯罪化が必要かどうかを検討した上で,どうしても必要なものに限り立法化を図るということによっても,国連越境組織犯罪防止条約の要求を満たすとして同条約を締結する,あるいは少なくとも同条約の趣旨及び目的と両立する範囲内で同条約を一部留保して締結することが可能なはずである。
 さらに,国連越境組織犯罪防止条約を締結するために,新たに共謀罪を設けたのは,外務省によれば,ノルウェーとブルガリアの2か国にとどまっている。そのノルウェーやブルガリアを含め,これまで共謀罪を設けて国連越境組織犯罪防止条約を締結した国・地域の全てが,「重大な犯罪」に該当する罪の全てについて共謀罪を制定していたのかについては不明のままである。
 また,上述のとおり,我が国においては,「予備」,「陰謀」,「準備」の段階を処罰の対象とする立法が既になされており,もしその水準では国連越境組織犯罪防止条約を締結できないというのであれば,これまで同条約を締結するために共謀罪を制定した国・地域の全てにおいて,我が国の水準以上に共謀罪が存在していることが明らかにされなければならないが,現時点でその説明がなされていないままである。
 したがって,国連越境組織犯罪防止条約の締結のためには,「重大な犯罪」全てについて共謀罪の新設が必要とする政府の主張は厳密に裏付けられておらず,むしろ,同条約を締結した国・地域が,この条約が要求する全ての犯罪について処罰できるように国内法を整備したか否かは明確ではなく,実質的に見て一部留保して締結した国・地域も少なくないと思われる。
 なお,人種差別撤廃条約を批准する際に,人種差別に関わる扇動や団体への参加を処罰すべきとする同条約第4条について,「日本国憲法の下における集会,結社及び表現の自由その他の権利の保障と抵触しない限度において,これらの規定に基づく義務を履行する」と留保を付した例も存する。
 以上のとおり,国連越境組織犯罪防止条約についても,同条約の趣旨及び目的との両立を維持しながら,同条約第5条を部分的に留保することにより,同条約を締結することは可能である。
(5)テロ等対策の必要性があれば,個別・具体的な立法で対応すべきであること
 仮に我が国におけるテロ等対策について,上記(2)及び(3)で挙げた現行の立法では不十分である場合であっても,「未遂」の前段階の「予備」の段階で処罰する必要性のある犯罪行為,さらにその前の「陰謀」の段階,あるいは「準備」の段階での処罰が必要とされる犯罪行為をそれぞれ抽出した上で,処罰の対象行為を特定し,個別・具体的に立法を検討することが可能である(その立法の過程において,立法の必要性,構成要件の明確性等について,審議される。)。もとより,この場合であっても,現行刑法の体系を大きく損なうことがないよう,「未遂」の処罰規定がない犯罪について,共謀罪を創設すべきではないし,共謀罪が処罰される犯罪の個数は,「未遂」が処罰される犯罪の個数を大幅に下回る必要があるであろう。共謀罪法案のように,長期4年以上の刑が定められた犯罪について,一律に,犯罪とする必要性はない。
 
5 結論
 以上述べたとおり,テロ対策自体についても既に十分国内法上の手当はなされており,テロ対策のために政府・与党が検討・提案していたような広範な共謀罪の新設が必要なわけではない。また,国内法の整備状況を踏まえると,共謀罪法案を立法することなく,国連越境組織犯罪防止条約について一部留保して締結することは可能である。
 もし,テロ対策や組織犯罪対策のために新たな立法が必要であるとしても,政府は個別の立法事実を明らかにした上で,個別に,未遂以前の行為の処罰をすることが必要なのか,それが国民の権利自由を侵害するおそれがないかという点を踏まえて,それに対応する個別立法の可否を検討すべきであり,個別の立法事実を一切問わずに,法定刑で一律に多数の共謀罪を新設する共謀罪法案を立法すべきではない。
 よって,当連合会は,いわゆる共謀罪を創設する法案を国会に上程することに反対する。
(引用終わり)

(付録)
『辺野古節』『満月の夕(ゆうべ)』『踊れ、踊らされる前に』 演奏:中川敬withリクオ

※2015年11月14日@新宿アルタ前

国連「平和への権利宣言」(2016年12月19日総会にて採択)を読む

 今晩(2017年2月22日)配信した「メルマガ金原No.2731」を転載します。

国連「平和への権利宣言」(2016年12月19日総会にて採択)を読む

 日本国憲法前文は4つの段落で構成されていますが、そのうちの第2段落は、「恒久の平和を念願」するとともに、「全世界の国民が」「平和のうちに生存する権利を有することを確認する」と宣言しています。

 日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
 
 日本国憲法施行の翌年(1948年)、第3回国際連合総会は、「世界人権宣言」を採択し、世界人権法発展の画期をなしましたが、そこに「平和のうちに生存する権利」を認めた明確な規定はありませんでした。
 「世界人権宣言」は、その後、1966年の第21回国連総会で、2つの国際人権規約(いわゆる社会権規約自由権規約)として採択され、締約国に法的義務が課されるとになりましたが、「平和のうちに生存する権利」あるいは「平和への権利」が保障されることはなく、その実現は、2016年12月19日、「平和への権利宣言」(Declaration on the Right to Peace)が国連総会全体会合で採択されるのを待たねばなりませんでした。
 昨年12月の国連総会での採択に際しては、賛否が分かれ、賛成多数での採択となりました。2月19日付の東京新聞が報じたところによると、主な賛成国、反対国、棄権国は以下のとおりだったとのことです。
 
賛成(131カ国) 
 中国、ロシア、インド、ブラジル、キューバ、インドネシア、北朝鮮、シリアなど
反対(34カ国)
 米国、英国、フランス、ドイツ、日本、カナダ、スペイン、韓国など
棄権(19カ国)
 イタリア、トルコ、ポルトガルなど
 
 東京新聞の記事の一部を引用します。

東京新聞 2017年2月19日 朝刊
「平和に生きる権利」日本、採決反対 戦争を「人権侵害」と反対する根拠 国連総会で宣言

(抜粋引用開始)
 
平和に生きる権利をすべての人に認める「平和への権利宣言」が国連総会で採択された。国家が関与する戦争や紛争に、個人が「人権侵害」と反対できる根拠となる宣言。日本の非政府組織(NGO)も深く関与し、日本国憲法の理念も反映された。NGOは宣言を具体化する国際条約をつくるよう各国に働きかけていく。(清水俊介)
 日本のNGO「平和への権利国際キャンペーン・日本実行委員会」によると、きっかけは二〇〇三年のイラク戦争。多くの市民が巻き込まれたことをスペインのNGOが疑問視し「平和に対する人権規定があれば戦争を止められたのでは」と動き始めた。賛同が広がり、NGOも出席できる国連人権理事会での議論を経て、昨年十二月の国連総会で宣言を採択した。
(略)
 立案段階で日本実行委は「全世界の国民が、平和のうちに生存する権利を有する」との日本国憲法前文を伝え、宣言に生かされる形に。憲法施行七十年となる今年、各国のNGOとともに、国際条約をつくって批准するよう働き掛けを強めていきたい考え。
 ただ、国連総会では、米英などイラク戦争の有志連合の多くが反対。日本も反対に回った。日本外務省人権人道課の担当者は「理念は賛成だが、各国で意見が一致しておらず議論が熟していない」と説明する。
(引用終わり)
 
 東京新聞も伝えるとおり、このたびの国連総会における「平和への権利宣言」の採択に至る道のりでは、世界各国のNGOが主導的な役割を演じ、我が国においても、「平和への権利国際キャンペーン・日本実行委員会」が中心となって活発な活動を行ってきました。今後は、さらに「宣言から条約へ」を目指していくとのことです。

 私としては、「平和への権利宣言」の採択に勇気付けられる一方、欧米諸国の「反対」の真の理由が知りたいという気持ちもぬぐえません。日本が「反対」した理由?別に外務省に教えてもらわなくても、「反対」している諸国を見れば推測はつこうというものです。

 「平和への権利宣言」に対してどのような評価をするにしても、この宣言の採択に至った経緯を知り、さらに何よりも「宣言」そのものを熟読するのが前提であることはいうまでもありません。
 そのように考え、「平和への権利宣言」を日本語で読めるサイトを探したのですが、やはり「平和への権利国際キャンペーン」ホームページに載っている(仮訳)しかないようです。
 そこで、同キャンペーン・日本実行委員会事務局長の笹本潤弁護士のご了解をいただき、同キャンペーン・ホームページの中の「平和への権利とは」というコーナーに掲載された経過と(仮訳)のほぼ全文を転載させていただくことにしました。
 私も、じっくりと読み、「平和への権利」について考えをめぐらしたいと思います。
 皆さまも是非ご一読ください。

平和への権利国際キャンペーン 平和への権利とは
(引用開始)
平和への権利のあゆみ
はじまりは、戦争で“生きること”を奪われた人々を守りたい想い
スペイン市民から成る団体(スペイン国際人権法協会)が、2005年、ひとつの権利を国際人権として認めてもらうために運動を始めました。この権利こそが平和への権利です。
2003年からイラク戦争が国連の承認を得ぬまま始められました。
“もしこのときに、世界に「平和への権利」があれば、戦争を止め、“生きること”で苦しむ人々を救えるのではないか“
 
市民一人ひとりが導いた平和への権利
スペインからはじまった平和のための一滴は、世界中のNGOを巻き込み大きな波へと成長を遂げます。
世界各地で国際NGO会議を開き、専門家や市民の声を集め世界の市民による平和への声として宣言を出しました。
2006年スペインでは、「ルアルカ宣言」の採択を機に、「ビルバオ宣言」、「バルセロナ宣言」の採択へと継きました。そして、アジア、アフリカ、南北アメリカでも市民一人ひとりがNGOとして30回以上の議論を経て、2010年12月には、世界900ものNGOが集結し、多くの専門家や各NGOの平和への考えを人権として反映させた「サンティアゴ宣言」が採択されました。
 
平和を人権として謳うサンティアゴ宣言
サンティアゴ宣言は、「平和」の意味の多義性を人権という視点から実現させようとしています。
それは、戦争や軍事的行動の否定だけでなく、貧困などの構造的暴力や差別や偏見を生みだす文化的暴力の否定も含まれています。
 
市民から国連へ「平和への権利」のお届け物
NGOによってつくられた「サンティアゴ宣言」が2011年に正式に国連に提出されたことにより、平和への権利は、議論の場を国連に移しました。平和への権利を国連人権理事会で国際宣言として採択するため、サンティアゴ宣言は国連の諮問委員会草案として「国連宣言案を検討するための作業部会」で、2013年から2015年にかけてNGOと政府によって議論がなされました。
 
平和への権利宣言の誕生へ
2016年7月1日、平和への権利宣言がキューバ政府の提案により、国連人権理事会32会期で正式に採択され、国連総会に提出されました、これには、世界中のNGOが驚かされました。そして遂に同年12月、国連総会31会期において平和への権利は国際宣言として採択されました。
 
これからの平和への権利宣言――あなたにできること
平和への権利は、国際宣言として採択されましたが、一人ひとりの平和を権利として保障するためにはここからが正念場です。国際宣言が国際条約として各国に批准され、平和が人権として市民の手に戻ってくるためにも、あなたの協力が必要です。平和への権利がより良い人権として、平和のうちに生きることを私たち自身の手で実現していきましょう。署名にご協力を宜しくお願いします。

   
平和への権利宣言(仮訳)

国連総会は、

国連憲章の目的及び原則に導かれ、

世界人権宣言、市民的及び政治的権利に関する国際規約、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約、ウィーン宣言及び行動計画を想起し、

また、発展の権利に関する宣言、持続可能な開発目標を含む国連ミレニアム宣言、2005年世界サミット成果文書をも想起し、

さらに、平和的生存のための社会の準備に関する宣言、平和に対する人民の権利宣言及び平和の文化に関する宣言と行動計画、かつ、この宣言に関連する他の国際文書を想起し、

植民地独立付与宣言を想起し、

諸国家は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならないという原則、諸国家は、その国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決しなければならないという原則、国連憲章に従って、いずれかの国の国内管轄権内にある事項にも干渉しない義務、国連憲章に従って、協力し合う諸国家の義務、人民の同権及び自決の原則、諸国家の主権平等の原則及び諸国家は、国連憲章に従って負っている義務を誠実に履行しなければならないという原則を、国連憲章に従った諸国間の友好関係及び協力についての国際法の原則に関する宣言が、厳粛に宣言したことを想起し、

その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、又は、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎み、かつ、その国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決するための、国連憲章に掲げられているすべての加盟国の義務を再確認し、

平和の文化の十分な発展は、外国の支配又は占領という植民地的あるいは他の形態のもとで生きる人々を含む、国連憲章に掲げられ、かつ、国際人権規約、並びに、1960年12月14日国際連合総会決議1514(XV)に盛り込まれている「植民地及びその人民の独立を認める宣言」に具体化されている自己決定に対するすべての人民の権利の実現と一体的に結びついていること(integrally linked)を確認し、

1970年10月24日国際連合総会決議2625(XXV)に具体化されている「国際連合憲章に従った諸国間の友好関係及び協力についての国際法の原則に関する宣言」に規定されているように、国又は領域の国民的統一及び領土保全の部分的又は全体的破壊に対して、又はその政治的独立に対して行われるいかなる試みも、国際連合憲章の目的及び原則に矛盾することを確信して、

平和的手段による紛争又は争議の解決の重要性を認め、

テロリズムの行為、方法及び実行が、国際連合の目的及び原則の重大な侵害を引き起こすものであり、かつ、国際の平和及び安全に対して脅威となり、諸国の友好関係を害し、諸国の領土保全及び安全を脅かし、国際協力を妨げ、人権、基本的自由及び社会の民主的基盤の破壊を目的とするものであることを認め、国際テロリズムに関する廃絶措置宣言を想起し、テロリズムのいかなる行為も、行われたとき及び行った者のいかんを問わず、犯罪であり、かつ、正当化することのできないものであることを再確認し、

テロリズムとの闘いにおけるあらゆる方途は、国連憲章に掲げられているものと同様に、国際人権法、難民法及び国際人道法を含む、国際法のもとでの義務に従わなければならないことを強調し、

テロリズムにかかわる国際条約の当事国となっていないすべての諸国に、当事国になることを優先事項として考慮することを要請し、

万人のための人権促進と保護及び法の支配は、テロリズムとの闘いに必要不可欠であることを再確認し、効果的なテロ対策措置と人権の保護は矛盾する目標ではなく、補完及び相互補強であることを認め、

戦争の惨害から将来の世代を救い、基本的人権に関する信念をあらためて確認し、一層大きな自由の中で社会的進歩と生活水準とを促進し、かつ、寛容を実行し、また、善良な隣人として互いに平和に生活するため国連憲章前文に掲げられているとおり連合国の人民の決定を再確認し、

平和と安全、開発と人権は、国連システムの柱であり、集団的安全と福祉のための基盤であることを想起し、開発、平和及び安全、人権は関連しあうものであり、相互に補強するものであること認め、

平和とは、紛争のない状態だけでなく、対話が奨励され紛争が相互理解及び相互協力の精神で解決される、また、社会経済的発展が確保される積極的で動的な参加型プロセスを追求するものであることを認め、

人類社会すべての構成員の固有の尊厳と平等で譲ることのできない権利とを承認することは、世界における自由、正義及び平和の基礎であることを想起し、平和が人間の固有の尊厳に由来する不可譲の権利の完全な享受により促進されることを認め、

すべての人は、世界人権宣言に掲げる権利及び自由が完全に実現される社会的及び国際的秩序に対する権利を有することをも想起し、

さらに、貧困を根絶し、万人のための持続的経済成長、持続可能な開発及び世界の繁栄を促進する世界的な取り組み、かつ、各国内及び各国間の不平等を是正する必要性を想起し、

国連憲章の目的及び原則に従った武力紛争予防、かつ、世界中の人民が直面する相互連関的な安全及び開発課題に効果的に対処する手段として武力紛争予防の文化を促進する取り組みの重要性を想起し、

国の十分かつ完全な開発、世界の福祉及び平和の目的は、あらゆる分野における男性と対等な条件での最大限の女性参加を追求することをも想起し、

戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならないことを再確認し、平和的な手段による争議や紛争を解決する重要性を想起し、

人権及び宗教と信念の多様性の尊重を基礎とし、あらゆるレベルで寛容及び平和の文化を促進する世界対話を発展させる国際的な努力を強化する必要性を想起し、

紛争後の状況における国家オーナーシップ原則を基礎とした開発援助及び能力強化は、携わるすべての者を含む社会復帰、社会再統合及び和解の過程を通じて平和を回復すべきであることをも想起し、かつ、平和及び安全の地球的規模の追求のために国際連合の平和創造、平和維持及び平和構築活動の重要性を認め、

さらに、平和の文化及び正義、自由、平和のための人類の教育とは、人間の尊厳に欠くことのできないものであり、かつ、すべての国民が相互の援助及び相互の関心の精神を持って果たされなければならない義務であることを想起し、

平和の文化は、平和の文化に関する宣言で確認されるように、価値観、考え、行動の伝統及び様式、かつ、生き方から成る一連のものであり、このすべてのことは、平和への寄与を可能にする国内的及び国際的環境によって育まれるべきであることを再確認し、

平和及び安全の促進に貢献する価値観として緩和及び寛容の重要性を認め、

市民社会組織が、強化された平和の文化をもたらし得ることと同様に、平和構築及び平和維持をもたらし得るという重要な貢献を認め、

諸国家、国際連合及び他の関連ある国際機構が、平和の文化を強化し、かつ、訓練、指導、教育を通じて人権意識を保つことを目的としたプログラムへの資源を分配するための必要性を強調し、

さらに、平和の文化の促進に対する人権教育・研修に関する国際宣言の貢献の重要性も強調し、

相互の信頼と理解を根底にして、文化の多様性、寛容、対話、協力を重んじることが世界の平和と安全を保証する最善策のひとつであることを想起し、

平和を可能にし、平和の文化に貢献する美徳と同様に、寛容とは、我々の世界的文化、表現形態及び人間の在り方の豊かな多様性の尊重、受容及び理解であることを想起し、

さらに、法の支配を基礎とした社会全体及び民主的枠組みのなかでの発展における不可分なものとして、民族的または種族的、宗教的及び言語少数者に属する人々の権利の継続的な促進及び実現は、人民及び諸国家間の友好、協調、平和を強化することに対する貢献であろうことを想起し、

国家、地域及び国際レベルで戦略、計画、政策及び特別な積極的措置を含む適切な立法を立案し、促進し、実施し、平等な社会発展を進め、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連ある不寛容の犠牲者すべての市民、政治、経済、社会、文化的権利を実現することを想起し、

人種主義、人種差別、外国人排斥及び関連ある不寛容は、それが人種主義及び人種差別に等しい場合、人民と諸国の間の友好で平和な関係の障害となり、武力紛争を含む多くの国内紛争や国際紛争の根因となることを認め、

平和を推進する手段として、全人類、世界の人民及び諸国の間の寛容、対話、協力及び連帯を実践することが非常に重要であると認めることにより、自らをこれらの活動へと導くよう、そのためにも、現在及び将来の世代の双方が、将来の世代を戦争の惨害から免かれるという最高の願望で、平和のうちに共に生きることを学ぶことを現在の世代が確保すべきであり、関係者らに厳粛に招請し、

以下のとおり宣言する。
 
Article 1
Everyone has the right to enjoy peace such that all human rights are promoted and protected and development is fully realized.

第1条
すべての人は、すべての人権が促進及び保障され、並びに、発展が十分に実現されるような平和を享受する権利を有する。

Article 2
States should respect, implement and promote equality and non-discrimination, justice and the rule of law and guarantee freedom from fear and want as a means to build peace within and between societies.

第2条
国家は、平等及び無差別、正義及び法の支配を尊重、実施及び促進し、社会内及び社会間の平和を構築する手段として、恐怖と欠乏からの自由を保障すべきである。
 
Article 3
States, the United Nations and specialized agencies should take appropriate sustainable measures to implement the present Declaration, in particular the United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization. International, regional, national and local organizations and civil society are encouraged to support and assist in the implementation of the present Declaration.

第3条
国家、国際連合及び専門機関、特に国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)は、この宣言を実施するために適切で持続可能な手段を取るべきである。国際機関、地域機関、国家機関、地方機関及び市民社会は、この宣言の実施において支援し、援助することを奨励される。
 
Article 4
International and national institutions of education for peace shall be promoted in order to strengthen among all human beings the spirit of tolerance, dialogue, cooperation and solidarity. To this end, the University for Peace should contribute to the great universal task of educating for peace by engaging in teaching, research, post-graduate training and dissemination of knowledge.

第4条
平和のための教育の国際及び国家機関は、寛容、対話、協力及び連帯の精神をすべての人間の間で強化するために促進されるものである。このため平和大学は、教育、研究、卒後研修及び知識の普及に取り組むことにより、平和のために教育するという重大で普遍的な任務に貢献すべきである。
 
Article 5
Nothing in the present Declaration shall be construed as being contrary to the purposes and principles of the United Nations. The provisions included in the present Declaration are to be understood in line with the Charter of the United Nations, the Universal Declaration of Human Rights and relevant international and regional instruments ratified by States.

第5条
この宣言のいかなる内容も国連の目的及び原則に反すると解釈してはならないものとする。この宣言の諸規定は、国連憲章、世界人権宣言及び諸国によって批准される関係する国際及び地域文書に沿って理解される。

​​(翻訳:本庄未佳)
(引用終わり)

共謀罪をめぐる最新ニュース、動画、声明のご紹介

 今晩(2017年2月21日)配信した「メルマガ金原No.2730」を転載します。

共謀罪をめぐる最新ニュース、動画、声明のご紹介

 学習会の講師を頼まれたのを機に始めた共謀罪シリーズも、第4回までは順調に(?)来たものの、和歌山での企画案内や森友学園スキャンダルなど、他の記事の配信に忙しく、気がつけば、3月3日の学習会まであと10日となり、さすがに焦ってきました。
 レジュメについては、主催者が配布してくれることになっている『一からわかる共謀罪 話し合うことが罪になる』の中の、特に海渡雄一弁護士が書かれた「共謀罪って何?自由を奪う監視社会の到来」をレジュメ代わりにしようと開き直っているので、まあいいのですが、何が困るといって、肝心の法案が、閣議決定されるまでは、インターネットで閲覧できるようにならないことです。
 2年前の「安保法案」の時も、2015年5月14日の法案閣議決定までは、批判する対象が確定しないのですから、非常に困ったものでした。
 けれども、学習会の準備をするために、「早く閣議決定してくれ」と言う訳にもいきませんしね(法案
の国会上程絶対阻止!と主張しているのですから)。
 ということで、一体どんなことになるやら講師自身が一番不安ですが、3月3日の学習会の概要を再掲しておきます。
 
学習会「共謀罪とは何か?その狙いとは」
講師 金原徹雄(弁護士)
日時 2017年3月3日(金)午後6時30分~
場所 和歌山市勤労者総合センター6階文化ホール
主催 和歌山県平和フォーラム、戦争をさせない和歌山委員会
入場無料 参加者には『一からわかる共謀罪 話し合うことが罪になる』(2017年1月発行/頒価200円)を配布予定

 なにしろ、条文の本体が一般市民の前には姿をあらわさないので、報道機関の伝えるところに目配せしておくしかないでしょうか。
 最新のニュースにこういうものがありました。

時事ドットコム(2017/02/21-20:50)
資金手配や下見、条文で例示へ=「共謀罪」の準備行為-法務省

(引用開始)
 法務省は21日、「共謀罪」の構成要件を改め「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案の条文に、処罰の前提となる準備行為の具体例を盛り込む方針を固めた。「資金や物品の手配」「関係場所の
下見」などと例示する方向で、3月上旬にも国会に提出することを目指す。
 同省はまた、テロ等準備罪の法定刑について、殺人など「懲役・禁錮10年超の罪」を未然に検挙した場合は「同5年以下」、大麻密輸など「懲役・禁錮4年以上10年以下の罪」の場合には「同2年以下」
とそれぞれ設定する方針も固めた。
 計画段階での処罰を可能にする同法案をめぐっては、「犯罪のことを話題にしただけで罰せられるのではないか」との懸念が出ていた。同省は、具体的な準備行為を伴った場合に限って処罰対象とする方針を
示してきたが、不安解消に向け、条文でも例示する必要があると判断した。
(引用終わり)

 ただ、こういうニュースに接しても、条文自体を読んでみないことには、適切な評価をくだすことは不可能ですね。まあ、「例示」というからには、必ず「等」というマジックワードがもらさず付いてくるのだろうなあ、ということ位は想像がつきますが。

 あと、2月16日に行われた共謀罪を考える超党派の議員と市民の勉強会(第2回)「私は共謀罪の国会提出に反対です」の動画(NPJとUPLAN)をご紹介しておきます。共謀罪そのものの問題点については、特に立命館大学の松宮孝明教授のスピーチに耳を傾けていただければと思います。
 
NPJ 「私は共謀罪の国会提出に反対です」(1時間37分)

司会:福島みずほ参議院議員(社民党)
発言(発言順)
冒頭~ 佐々木隆博衆議院議員(民進党)
1分~ 真山勇一参議院議員(民進党)
3分~ 逢坂誠二衆議院議員(民進党)
8分~ 小宮山泰子衆議院議員(民進党)
9分~ 藤野保史衆議院議員(共産党)    
10分~ 泉 健太衆議院議員(民進党)
12分~ 初鹿明博衆議院議員(民進党)
13分~ 郡 和子衆議院議員(民進党)
15分~ 鎌田 慧氏(ルポライター)
22分~ 糸数慶子参議院議員(沖縄の風)
24分~ 杉尾秀哉参議院議員(民進党)
26分~ 森 裕子参議院議員(自由党)
28分~ 近藤昭一衆議院議員(民進党)
31分~ 佐高 信氏(評論家)
36分~ 井上哲士参議院議員(共産党)
37分~ 川田龍平参議院議員(無所属)
40分~ 孫崎 享氏(評論家)
44分~ 中野晃一氏(上智大学教授)
49分~ 飯島滋明氏(名古屋学院大学教授)
54分~ 松宮孝明氏(立命館大学教授)
1時間08分~ 山田健太氏(日本ペンクラブ)
1時間15分~ 太田啓子氏(明日の自由を守る若手弁護士の会)
1時間22分~ 小林基秀氏(新聞労連委員長)
1時間28分~ 岩崎貞明氏(日本マスコミ文化情報労組会議事務局長)
1時間31分~ 樋口 聡氏(出版労連 出版・産業対策事務局長)
1時間33分~ 福島みずほ参議院議員(社民党)
 
20170216 UPLAN「私は共謀罪の国会提出に反対です」(共謀罪を考える超党派の議員と市民の勉強会第2回(1時間32分)


(日本ペンクラブの声明)
日本ペンクラブ声明 「共謀罪に反対する」
(引用開始)
共謀罪によってあなたの生活は監視され、
共謀罪によってあなたがテロリストに仕立てられる。
私たちは共謀罪の新設に反対します。

 私たち日本ペンクラブは、いま国会で審議が進む「共謀罪(「テロ等組織犯罪準備罪」)」の新設に強く反対する。過去の法案に対しても、全く不要であるばかりか、社会の基盤を壊すものとして私たちは反
対してきたが、法案の本質が全く変わらない以上、その姿勢に微塵の違いもない。
 過去に3度国会に上程され、いずれも廃案となった法案同様、いま準備されている共謀罪は、事前に相談すると見なされただけでも処罰するとしている。これは、人の心の中に手を突っ込み、憲法で絶対的に保障されている「内心の自由(思想信条の自由)」を侵害するものに他ならない。結果として、表現の自由
、集会・結社の自由など自分の意思を表明する、あるいは表明しない自由が根本から奪われてしまう。
 しかも、現行法で、十分なテロ対策が可能であるにもかかわらず、共謀罪を新設しなければ東京オリンピックを開催できないというのは、オリンピックを人質にとった詭弁であり、オリンピックの政治的利用
である。
 このような法案を強引に成立させようとする政府の姿勢を許すわけにはいかない。  
 法案の成立を断固阻止すべきである。

  2017年2月15日

   一般社団法人日本ペンクラブ
     会長 浅田次郎
     言論表現委員長 山田健太
(引用終わり)

シンポジウム「障害者差別解消法と弁護士の役割」(3/18@和歌山ビッグ愛/和歌山弁護士会主催)のご案内

 今晩(2017年2月20日)配信した「メルマガ金原No.2729」を転載します。

シンポジウム「障害者差別解消法と弁護士の役割」(3/18@和歌山ビッグ愛/和歌山弁護士会主催)のご案内
 
 年度末の1~3月に集中する傾向のある和歌山弁護士会主催シンポジウムですが(憲法問題など、日弁連が重点活動分野に指定して共催分担金を出してくれる緊急企画は別です)、今年度の掉尾を飾るのは、高齢者・障害者支援センター運営委員会が準備してきたシンポジウム「障害者差別解消法と弁護士の役割」です。
 同委員会が3月にシンポを計画しているという話はだいぶ以前から耳に入っていましたが、昨日、長岡健太郎委員長が、近弁連管内の弁護士が登録している某MLに、チラシのデータなどを添付して内容を紹介した上で、「拡散歓迎です。」「盛りだくさんの内容です。」「3/18は和歌山ビッグ愛へ!」「皆様ぜひご予定ください!」という熱烈参加要請の投稿を行っているのに気付き、それで初めてシンポの内容を知りました。

 以下に、チラシ記載情報を転記しておきますが、委員長自身が「盛りだくさん」と言うとおり、基調講演が2人(岡山理科大学、和歌山大学)、基調報告が3人(和歌山県、和歌山市、障害者本人)、それにパネルディスカッション(明石市、沖縄県ほか)を行い、トータル4時間を予定するというのですから、そのゲストの多彩さと併せて、「これは近弁連(近畿弁護士会連合会)のシンポか?」と見まがうばかりであり、担当委員会の気合いの入り方も尋常ではないようです。

 ということで、私も和歌山弁護士会の会員として、シンポに参加するだけではなく、広報に一役買うくらいの協力はしなければならないだろうと思い、まだ会員に対してチラシを添付した参加要請書も届いていないにもかかわらず、弁護士会事務局からチラシを1枚入手して本稿を書いているという次第です。

 なお、障害者差別解消法については、2015年12月17日に、私のメルマガ(ブログ)で「障害者差別解消法(2016年4月1日施行)を学習するための資料のご紹介」という記事を書き、基礎的な法令等にはリンクしておきましたので、ご参照いただければと思います。
 ここでは、障害者差別解消法そのものにだけリンクしておきます。

 それでは、チラシに記載された内容を転記します。

チラシから引用開始)

シンポジウム 
障害者差別解消法と弁護士の役割

2017年3月18日(土)
午後0時30分~午後4時30分(午後0時 開場)
和歌山ビッグ愛 1F 大ホール

入場無料・予約不要
手話通訳、要約筆記、ユーストリーム中継あり

 平成28年4月1日、障害者差別解消法が施行され、和歌山市では障害者差別解消推進条例も施行されました。
 本シンポジウムでは、何が「差別」に当たるのか、「合理的配慮」とは何かについて、具体的事例も交えながら理解を深めるとともに、障害当事者、市民、行政、そして弁護士・社会福祉士等の専門職が広く連携して、障害の有無を問わず共に暮らせる社会を作っていくためにどのようなことが必要か、そのための具体的な相談体制や解決のための仕組みについて考えていきたいと思います。

基調講演
①川島 聡氏(岡山理科大学 総合情報学部 社会情報学科 准教授)
 「合理的配慮とは何か」
②西倉実季氏(和歌山大学 教育学部 准教授)
 「合理的配慮をめぐるプライバシーの問題」

基調報告
①和歌山県の取組状況(和歌山県障害福祉 課長 中林憲一氏)
②和歌山市の取組状況(和歌山市障害者支援課 課長 坂下雅朗氏)
③和歌山での具体的事例を元に(石田雅俊氏=和歌山市内の障害当事者)

パネルディスカッション
【コーディネーター】
長岡健太郎(和歌山弁護士会高齢者・障害者支援センター運営委員会委員長)
【登壇者】
石田雅俊氏
山田 賢氏(明石市 福祉部 福祉総務課 障害者施策担当係長)
上間清香氏(沖縄県 広域相談専門員)
森脇大介(弁護士・和歌山弁護士会)

主催 和歌山弁護士会(担当:高齢者・障害者支援センター運営委員会)
共催 障害と人権全国弁護士ネット
後援 和歌山県、和歌山市、和歌山県社会福祉士会
お問い合わせ 和歌山弁護士会 TEL:073-422-4580 FAX :073-436-5322
(引用終わり)

 それから、チラシに記載されているとおり、昨年4月の法律の施行に合わせ、和歌山市では、和歌山市障害者差別解消推進条例が施行されたのですが、その際、和歌山市手話言語条例も同時に施行されたということを、今日、このメルマガ(ブログ)を書くために和歌山市のホームページを閲覧して初めて知りました。
 和歌山市民でも知らない人が多いと思いますので、最後に、この2つの条例を(少し長くなりますが)全文引用します。
 
和歌山市障害者差別解消推進条例
(目的)
第1条 この条例は、障害を理由とする差別の解消について、基本理念を定め、市の責務並びに市民及び事業者の役割を明らかにするとともに、障害を理由とする差別の解消を推進するために基本となる事項を定めることにより、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「障害者差別解消法」という。)による施策と相まって、障害のある人もない人も共に安心して暮らしやすい和歌山市の実現に寄与することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(1)障害 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害をいう。
(2)障害者 障害がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
(3)社会的障壁 障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。
(4)障害を理由とする差別 障害を理由とするあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のあらゆる分野において、他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するものをいう。
(基本理念)
第3条 障害者に対する障害を理由とする差別の解消は、次に掲げる事項を旨として図られなければならない。
(1)全ての障害者は、自ら選択した場所に居住し、その地域社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されること。
(2)全ての障害者が、必要かつ合理的な配慮が的確に行われることにより、障害者でない者と等しく、権利を行使し、機会を得、又は待遇を受けることができること。
(3)全ての障害者は、言語(手話を含む。)、文字の表示、点字、触手話、指点字、拡大文字、音声、平易な言葉、朗読その他の補助的及び代替的な意思疎通の形態、手段及び様式(次条及び第5条において「意思疎通手段」という。)であって、当該障害者が選択したものによる情報の取得又は利用するための支援が保障されること。
(市による意思疎通支援の実施)
第4条 市は、前条の基本理念にのっとり、障害者に対し、情報の取得又は利用のための支援を行うものとする。
2 前項の規定による支援は、障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じ、適切に行われなければならない。
3 市は、第1項の規定による支援について、情報処理に関する技術を活用して行うよう努めるものとする。
(市の責務)
第5条 市は、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明(障害者の保護者、後見人その他の関係者(以下「保護者等」という。)が当該障害者の代理人として行ったもの及びこれらの者が当該障害者の補佐人として行ったものを含む。)があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないと認めるときは、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮を行わなければならない。
2 市は、第3条に定める基本理念にのっとり、障害及び障害者に対する理解を深め、障害を理由とする差別を解消するために必要な施策を策定し、及び実施する責務を有する。
3 市は、第3条第3号に規定する支援を行うため、次に掲げる施策を行うものとする。
(1)障害者の意思疎通手段に対する市民の理解の増進及び当該意思疎通手段の普及を図るための施策
(2)手話通訳者、要約筆記者、点訳者、朗読者その他の意思疎通支援(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号。次項及び第7条第3項において「障害者総合支援法」という。)第77条第1項第6号に規定する意思疎通支援をいう。)を行う者の配置の拡充
(3)その他障害者の円滑な情報の取得又は利用に資する施策
4 市は、前項各号に掲げる施策を障害者基本法(昭和45年法律第84号)第11条第3項の規定に基づく和歌山市障害者計画及び障害者総合支援法第88条第1項の規定に基づく和歌山市障害福祉計画との整合性を図りながら、総合的かつ計画的に実施するものとする。
(市民等の役割)
第6条 市民及び事業者は、障害及び障害者に対する理解を深めるとともに、市が実施する施策に協力するよう努めるものとする。
(障害を理由とする差別に関する相談)
第7条 障害者又は障害者の保護者等は、当該障害者が障害を理由とする差別を受けたと認めるときは、当該障害を理由とする差別について、市長に相談することができる。
2 市長は、前項の規定による相談があったときは、次に掲げる事務を行うものとする。
(1)障害者又は障害者の保護者等への事実の確認を行う事務
(2)障害者又は障害者の保護者等に必要な助言及び情報提供を行う事務
(3)関係行政機関への紹介を行う事務
3 市長は、市が障害者総合支援法第77条第3号に掲げる事業の実施を委託している者に、前項各号に掲げる事務の全部又は一部を委託することができる。
(助言又はあっせんの求め)
第8条 障害者は、障害を理由とする差別を受けたと認めるときは、市長に申し出て、当該障害を理由とする差別に該当する事案(以下「差別事案」という。)を解決するため、市長が障害者、障害者の保護者等又は障害を理由とする差別をしたとされる者(市を除く。)(以下「当事者等」と総称する。)に必要な助言をすること又は当事者等の間に立ち、差別事案の解決に資するあっせん案の提示を行うことを求めることができる。
2 障害者の保護者等は、前項の規定による申出をすることができる。ただし、当該申出が当該障害者の意思に反することが明らかであると認められるときは、この限りでない。
3 前2項の申出は、次の各号のいずれかに該当すると市長が認めるときは、することができない。
(1)行政不服審査法(平成26年法律第68号)その他の法令により審査請求その他の不服申立てをすることができるとき。
(2)申出の原因となる差別事案が発生した日(継続的な行為にあっては、その行為の終了した日)から3年を経過しているとき(その期間内に申出ができなかったことにつきやむを得ない理由があるときを除く。)。
(3)現に犯罪の捜査の対象となっているとき。
(調査)
第9条 市長は、前条第1項又は第2項の規定による申出があったときは、当該申出に係る事実について調査を行わなければならない。
(助言又はあっせん)
第10条 市長は、前条の規定による調査の結果、必要があると認めるときは、当事者等に対し、必要な助言をし、又は当事者等の間に立ち、差別事案の解決に資するあっせん案の提示を行うことができる。
2 市長は、前項の規定による助言又はあっせん案の提示を行うかどうかの判断に資するため、又は前項の助言又はあっせん案の内容について意見を求めるため、第14条の規定により置く和歌山市障害者差別解消調整委員会(以下「調整委員会」という。)に諮問することができる。
3 市長は、第1項のあっせん案を作成しようとするときは、当事者等の意見の聴取を行わなければならない。
4 当事者等は、第1項のあっせん案を受諾したときは、その旨を記載し、記名押印又は署名した書面を市長に提出しなければならない。
(勧告)
第11条 市長は、前条第1項の規定により助言をし、又はあっせん案を提示した場合において、障害を理由とする差別をしたと認められる者が正当な理由がなく当該助言に従わず、又は当該あっせん案を受諾しないときは、当該障害を理由とする差別をしたと認められる者に対して当該助言に従うこと又は当該あっせん案を受諾するよう勧告することができる。
(公表)
第12条 市長は、前条の勧告を受けた者が、正当な理由がなく、当該勧告に従わないときは、当該者が受けた勧告の内容を公表することができる。この場合において、当該勧告の内容に個人又は法人(法人でない団体を含む。以下この条において同じ。)に関する情報であって、特定の個人又は法人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより特定の個人又は法人を識別することができることとなるものを含む。)が含まれているときは、当該情報を除いて公表しなければならない。
(意見の聴取)
第13条 市長は、第11条の勧告又は前条の公表をしようとする場合には、あらかじめ、期日、場所及び差別事案の内容を示して、公表の対象となる者その他差別事案に関係する者又はその代理人の出席を求めて、意見の聴取を行わなければならない。ただし、当該公表の対象となる者その他差別事案に関係する者又はその代理人が正当な理由がなく意見の聴取に応じる意思がないと認められるときは、意見の聴取を行わないで勧告し、又は公表することができる。
(和歌山市障害者差別解消調整委員会の設置等)
第14条 本市に障害を理由とする差別を解消するための取組を推進するため、調整委員会を置く。
2 調整委員会は、次に掲げる事項について調査審議し、市長に意見を述べるものとする。
(1)市長が諮問する差別事案に対する助言又はあっせん案の提示に関する事項
(2)障害を理由とする差別の解消の推進に関する事項
(3)障害者の意思疎通支援に関する施策の実施状況等に関する事項
(4)その他障害を理由とする差別の解消の推進に関して市長が必要と認める事項
3 調整委員会は、委員35人以内で組織する。
4 委員は、次に掲げる者のうちから、市長が委嘱し、又は任命する。
(1)国又は地方公共団体の機関の職員であって、福祉、保健、医療、介護、教育その他の障害者の自立と社会参加に関連する分野の事務に従事するもの
(2)特定非営利活動法人促進法(平成10年法律第7号)第2条第2項に規定する特定非営利活動法人その他障害者に係る公益の増進に資することを目的とした団体に属する者
(3)障害者又はその介護若しくは支援をする者に関する団体が推薦する者
(4)障害者に係る福祉又は保健に関する学識経験者
5 委員の任期は、2年とする。ただし、委員が欠けた場合における補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
6 委員は、再任されることができる。
7 調整委員会に委員長を置き、委員の互選により選任する。委員長は、会務を総理し、調整委員会を代表する。
8 委員長に事故があるとき、又は委員長が欠けたときは、あらかじめ委員長が指名する委員がその職務を代理する。
9 調整委員会の会議(以下この条において単に「会議」という。)は、委員長が招集する。ただし、委員の全員が新たに委嘱され、又は任命された後最初に招集すべき会議は、市長が招集する。
10 委員長は、会議の議長となる。
11 調整委員会は、委員の過半数の出席がなければ、会議を開くことができない。
12 調整委員会の議事は、出席委員の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
13 調整委員会は、必要があると認めるときは、委員以外の者に対して会議への出席を求め、その意見若しくは説明を聴き、又は必要な資料の提供を求めることができる。
14 委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とす
る。
15 調整委員会の庶務は、福祉局社会福祉部において処理する。
16 この条例に定めるもののほか、調整委員会の運営に関し必要な事項は、委員長が調整委員会に諮って定める。
   
附 則
(施行期日)
1 この条例は、平成28年4月1日から施行する。ただし、第8条から第14条までの規定は、同年7月1日から施行する。
(検討)
2 市長は、この条例の施行後3年を経過した場合において、条例の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の見直しを行うものとする。

和歌山市手話言語条例
(目的)
第1条 この条例は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話を普及させ、かつ、地域において手話が使用されやすい環境を整備するための市の責務並びに市民及び事業者の役割を明らかにすることにより、ろう者とろう者以外の者が共生することのできる地域社会の実現に資することを目的とする。
(基本理念)
第2条 手話は、独自の言語体系を有する文化的所産であり、ろう者が大切に伝承し、かつ、育んできたものであるということに鑑み、手話についての理解及び手話の普及は、手話を必要とする市民が手話により意思の疎通を円滑に行う権利を有しており、その権利は最大限尊重されるべきであるという認識に基づいて行われなければならない。
(市の責務)
第3条 市は、市民及び事業者の手話についての理解の促進を図り、手話が使用されやすい環境を整備するために、次に掲げる施策を推進するものとする。
(1)手話についての理解の推進及び手話の普及に関する施策
(2)市民の手話の獲得及び習得に関する施策
(3)前2号に掲げるもののほか、市長が必要と認める施策
(市民等の役割)
第4条 市民及び事業者は、第2条に定める基本理念に対する理解を深め、前条各号に掲げる施策に協力するよう努めるものとする。
(施策を推進するための方針)
第5条 市長は、第3条各号に掲げる施策を推進するための方針を定めるものとする。
2 市長は、前項の方針を定めようとするときは、ろう者、手話通訳者その他の関係者の意見を聴かなければならない。
   附 則
 この条例は、平成28年4月1日から施行する。

(弁護士・金原徹雄のブログから)
2015年12月17日
障害者差別解消法(2016年4月1日施行)を学習するための資料のご紹介

2016年6月5日
緊急予告!6/19市民集会「緊急事態条項と日本国憲法(講師:伊藤真弁護士)」(和歌山弁護士会)のご案内
2016年10月19日
12/3シンポジウム「シングルマザーの権利擁護―養育費算定表の問題点と履行確保の方策について―」(和歌山弁護士会)のご案内
2016年12月26日
1/21「シンポジウム 実りある面会交流~子どもの健やかな成長のために~」(和歌山弁護士会)のご案内
2017年1月20日
2/15「低周波音問題について考える」シンポジウム(和歌山弁護士会)のご案内

障害者差別解消法シンポ・チラシ 

放送予告3/10&3/11原発事故被災地への「帰還」をテーマとした2本のNHKスペシャル

 今晩(2017年2月19日)配信した「メルマガ金原No.2728」を転載します。

放送予告3/10&3/11原発事故被災地への「帰還」をテーマとした2本のNHKスペシャル

 間もなく6回目の3.11がやって来ます。例年、この時期には、震災関連のドキュメンタリー番組が
各局で放送されます。
 けれども、東京電力福島第一原発事故による被災者、避難者、被災自治体にとって、6年目の春は、4年目や5年目とは大きく異なった意味を持っています。
 
平成27年6月12日 原子力災害対策本部
「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」改訂

(抜粋引用開始)
 こうした観点から、事故から6年を超えて避難指示の継続が見込まれる帰還困難区域以外の区域、すなわち避難指示解除準備区域・居住制限区域については、各市町村の復興計画等も踏まえ遅くとも事故から6年後(平成29年3月)までに避難指示を解除し、住民の方々の帰還を可能にしていけるよう、除染の
十分な実施はもとより、インフラや生活に密着したサービスの復旧などの加速に取り組む。
(引用終わり)

 東京電力福島第一原発が立地する大熊町、双葉町は、帰還困難区域以外の区域を含めて全町避難指示が続くものの、それ以外は上記方針通り、浪江町、富岡町、飯舘村の帰還困難区域を除く全域と、川俣町山木屋地区の避難指示を解除する方針であると伝えられています(河北新報)。
 福島県等からの自主避難者に対する災害救助法に基づく住宅支援の今年3月末での打ち切りが、上記方針と一体のものであることは言うまでもありません。

 6回目の3.11をどう切り取るか、各局のドキュメンタリー番組の制作スタッフは色々と悩んだことと思いますが、どう考えても、6年目の今年、国の「帰還」政策を抜きにした番組は作れないでしょう。
 先日、ご紹介した関西ローカルの番組、MBSドキュメンタリー映像'17『消去される自主避難者(仮)』もその一例でしたが、今日ご紹介するNHKスペシャル2本も「帰還」がテーマです。
 そのうち、3月11日放送分の番組案内に書かれた一節「放射能で汚染された広大な地域を除染し、人が戻るという世界でも先例のない“帰還政策”」を念頭に置きながら、今年の3.11ドキュメンタリーに注目したいと思います。
 
「原発事故後、福島の若者の間で広まったある行為がある。15歳の誕生日を迎えた記念に、震災以来帰ることのなかった故郷を初めて訪ねるというものだ。安全への配慮から今も避難指示区域への一時帰宅は大人しか認められず、子どもは一切許されていない。許可が下りるボーダーラインとなるのが「15歳」なのだ。その年齢になるのを待ちすでに多くの若者が故郷へと向かってきた。今も時間がとまったままの街。毎日通った学校、馴染みのお菓子屋、友人と遊んだ公園、そして自宅。それぞれの場所に立ち止まって言葉をなくす者もいれば、歩いているうちに自然に涙があふれてきたという者もいる。未曾有の原発事故により尋常ならざる生活を送ることになった彼らにとって、短い故郷への旅は、失われた時間を見つめ、自分が歩んできた道のりを整理しこれからの生き方に思いを馳せる、いわば大人へと成長する旅でもある。
 番組では、故郷を目指す福島の若者たちに密着する。この6年はいったいどんな歳月だったのか。帰郷により、彼らのなかで何が変わり、どう新しい1歩を踏み出してゆくのか。困難を乗り越え懸命に生きてきた福島の10代の姿を通して、人間の普遍的な成長の物語を描く。」
 
「福島第一原発事故から6年。避難指示が出されていた地域は大きな転機を迎える。“帰還困難区域”を除く大部分の地域で、避難指示が一斉に解除される計画なのだ。「住民が帰るための環境が整った」と国が判断したためで、これにより原発事故で立ち入りが制限された区域の7割が地図上から消えることになる。
 しかし、現場では様々な問題が取り残されたままだ。今回、避難指示が解除されるのは、これまでと比べて格段に放射線量が高かった地域。未だ点在するホットスポット、営農再開を阻む除染廃棄物の山、にも関わらず打ち切られていく東京電力からの賠償・・・。帰る条件が整っていないと訴える住民も少なくない。一方の自治体は、これ以上避難が続くと帰還意欲が失われ、町が消滅するという危機感から避難指示解
除を急いでおり、両者の溝が深まっている。
 また、既に避難指示が解除された自治体も復興への道は見通せていない。住民の帰還は思うように進まず、コンパクトタウン建設など、復興の切り札としてきた事業も大幅に遅延している。その原因を探ると
、原発に依存してきた地域が抱える構造的な問題が見えてきた。
 放射能で汚染された広大な地域を除染し、人が戻るという世界でも先例のない“帰還政策”。いま現地
で何が起きているのか。原発事故からの復興に苦闘する現場を見つめる。」

安倍内閣は「憲法99条は内閣総理大臣が憲法改正を主張することを禁止する趣旨のものではない」と断定した

 今晩(2017年2月18日)配信した「メルマガ金原No.2727」を転載します。

安倍内閣は「憲法99条は内閣総理大臣が憲法改正を主張することを禁止する趣旨のものではない」と断定した

 私が憲法問題についての学習会講師を頼まれるようになったのは、「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」の2代目事務局長となった2006年1月以降のことですから、もう10年以上が経っていますが、その中で、「立憲主義」をどう説明したものかということについては試行錯誤の連続でした。
 その10年間の紆余曲折の末にたどりついた現在の説明の見本を、(長くなりますが)末尾に掲載しておきます。これは、2016年6月15日(水)、「憲法をまもりくらしに活かす田辺・西牟婁会議」主催の学習会用に書いたレジュメからの抜粋です(自民党「日本国憲法改正草案」批判レジュメ~2016年参院選直前ヴァージョン)。
 そこに書きましたように、日本国憲法「第10章 最高法規」を構成する第97条~第99条は、緊密な論理的つながりをもって、我が国が「立憲主義」の原理に立つことを宣明した諸規定であり、公務員の憲法尊重擁護義務を定めた第99条は、単なる訓示規定にとどまるようなものではなく、日本国憲法の骨格をなす重要条文の1つなのです。
 
日本国憲法(昭和二十一年十一月三日憲法)
第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

 その「国務大臣」全体を首長として統括する内閣総理大臣が、国会における施政方針演説で、「憲法施行七十年の節目に当たり、私たちの子や孫、未来を生きる世代のため、次なる七十年に向かって、日本をどのような国にしていくのか。その案を国民に提示するため、憲法審査会で具体的な議論を深めようではありませんか。」(2017年1月20日・第193回国会・衆議院本会議における安倍晋三内閣総理大臣の施政方針演説より)と国会議員に呼びかけることは、三権分立や立憲主義、何より日本国憲法第99条によって課された憲法尊重擁護義務に違反するのではないのか?ということは当然いだかれる疑問です。

 そして、今国会で、この点を直截に質す質問主意書を提出した議員がいるということを、マガジン9に南部義典さんが連載している「立憲政治の道しるべ 第112回 「憲法改正論議の呼びかけは、憲法違反ではない」異例の政府答弁書を読む」を読んで知りました。

 その議員とは、逢坂誠二衆議院議員(民進党・無所属クラブ)です。
 逢坂議員の質問主意書(2回行われています)と、それに対する内閣の答弁書を以下に全文ご紹介しようと思いますが、まずその前に、南部義典さんが、安倍首相による改憲呼びかけ演説をどう評価しているかをご紹介しておきましょう。私も全く同感です。

(抜粋引用開始)
 内閣総理大臣は、国会の慣例によって毎年1月に召集される通常国会の冒頭、その1年の取り組み方針を政策項目ごとに述べます。これを施政方針演説といいます。施政方針演説は、召集の日に行われること
が多く、衆議院、参議院それぞれの本会議場で、同一の演説内容で行われます。
 安倍総理はこれまで6回、施政方針演説を行っています。過去の演説を改めて検証してみると、2013年を
除く計5回、憲法改正に関して言及しています。
 2013年、「言及なし」が一度だけあります。この年は、7月に参議院議員選挙が控えていたため、いわゆる「安倍(的保守)色」を封印して、安全運転の政権運営を以て、選挙の勝利を導こうとした思惑があったと言われています(⇒選挙の結果、自由民主党は31議席増となり、歴史的大勝を収めました)。しかし
、翌2014年以降になると態度が一変し、その後一貫して、憲法改正論議を堂々と呼びかけているのです。
 何より着目すべきは、ことし(2017年)の発言です。「憲法審査会」という衆議院、参議院の常設機関を直接、名指ししているからです。内閣総理大臣は憲法上、行政権を司る内閣の首長であることは間違いありませんが(66条1項)、立法権を司る国会、つまり衆議院、参議院の運営等に関して、内閣、内閣総理大臣には何の権限も認めていません(権力分立の原則)。「憲法審査会」をどのように運営していくかは
専ら、各議院の裁量に属する事項です。
 憲法改正に対する安倍総理の執着心は、すべての議員が知るところであり、特段珍しくもないというのが率直な受け止めかも知れません。しかし、憲法改正論議の呼びかけは、年々自制が利かなくなり、露骨さを増してきています。今や、一人の政治家としての意見の表明を超えた「悪しき容喙(ようかい)=口
出し」であり、国会の権限を侵害する(憲法違反)に至っているというのが私の認識です。
(引用終わり)

 それでは、以下に、逢坂誠二衆議院議員(民進党・無所属クラブ)による質問主意書とそれに対する内閣答弁書を引用します。

平成二十九年一月二十三日提出 質問第一六号
内閣総理大臣が国会に対して憲法改正の議論を促すことのできる根拠に関する質問主意書
提出者 逢坂誠二

(引用開始)
 安倍総理は、平成二十九年一月二十日の第百九十三回国会の施政方針演説の中で、「憲法施行七十年の節目に当たり、私たちの子や孫、未来を生きる世代のため、次なる七十年に向かって、日本をどのような国にしていくのか。その案を国民に提示するため、憲法審査会で具体的な議論を深めようではありませんか」(「本発言」という。)と述べ、憲法改正に関する国会議論を促すような発言を行っているが、この発言に限らない一般論として、内閣総理大臣と憲法及び国会の関係に関して疑義があるので、以下質問す
る。
一 内閣総理大臣が、国会に対してどのような根拠によって憲法改正に関する議論を促す権限を有してい
るのか。根拠法とともに、その権限を持つ理由について具体的に示されたい。
二 内閣総理大臣は、行政府の長であり、何らかの国会の議論のあり方を促すのは、三権分立の観点から
適切ではないと思われるが、政府はどのような見解を持っているのか。具体的に示されたい。
三 本発言は、内閣総理大臣としての安倍晋三氏の立場で行われたのか。あるいは、平成二十八年十月五日の参議院予算委員会でいうところの「自民党の総裁の立場としては、既にこの憲法改正草案が、これは谷垣総裁当時に自民党で議論を重ねた末取りまとめられたわけでございますが、自民党に対しましては総裁として、この草案の下にまとまってしっかりと憲法審査会において議論してもらいたいということは話をしております」と表明しているところの、自民党総裁である安倍晋三氏の立場で行われたのか。政府の
見解を示されたい。
四 安倍総理は、平成二十八年十月五日の参議院予算委員会で、「憲法審査会はなぜつくられたかということでございますが、まさに憲法を審議する場において、これはつくられたわけでございます。私は、ここに立っておりますのは、行政府の長として、今回政府として提出をした補正予算、そして、あるいはまたこの補正予算に関わる法案等々についてここで答弁をする義務を果たしていくわけでございまして、憲法につきましてはまさに国会において議論をしていく、衆議院、参議院で発議をする、責任と誇りを持って発議をされる」と答弁しているが、行政府の長である内閣総理大臣が本発言で「憲法審査会で具体的な議論を深めようではありませんか」と促すことは、「衆議院、参議院で発議をする、責任と誇り」を傷つ
け、「行政府の長として」「答弁をする義務を果たすこと」に反しないか。政府の見解を示されたい。
五 憲法は、国家権力の監視と抑制を行う規範であり、改正発議は議会がその自由意思で「責任と誇りをもって発議」するべきものであり、行政府の長である内閣総理大臣が議論を促すべきものではない。憲法は国家権力の濫用を縛るものであり、縛られる対象である行政府の長が自らその内閣総理大臣としての施政方針演説の中で規範の改変を促すことは、明らかに則を越え、三権分立に反するものであると考えるが
、政府の見解を示されたい。
 右質問する。
(引用終わり)
 
平成二十九年一月三十一日受領 答弁第一六号
内閣衆質一九三第一六号 平成二十九年一月三十一日
内閣総理大臣 安倍晋三
衆議院議員逢坂誠二君提出内閣総理大臣が国会に対して憲法改正の議論を促すことのできる根拠に関する
質問に対する答弁書

(引用開始)
一及び二について
 御指摘の「憲法改正に関する議論を促す権限」及び「何らかの国会の議論のあり方を促す」の意味する
ところが必ずしも明らかではないが、内閣総理大臣は、憲法第六十三条の規定に基づき議院に出席することができ、また、国会法(昭和二十二年法律第七十九号)第七十条の規定に基づき、内閣総理大臣が議院の会議又は委員会において発言しようとするときは、議長又は委員長に通告した上で行うものとされてい
る。
 議院の会議又は委員会において、憲法第六十七条の規定に基づき国会議員の中から指名された内閣総理大臣が、憲法に関する事柄を含め、政治上の見解、行政上の事項等について説明を行い、国会に対して議論を呼び掛けることは禁じられているものではなく、三権分立の趣旨に反するものではないと考えている

三から五までについて
 御指摘の「内閣総理大臣が本発言で「憲法審査会で具体的な議論を深めようではありませんか」と促すことは、「衆議院、参議院で発議をする、責任と誇り」を傷つけ、「行政府の長として」「答弁する義務を果たすこと」に反しないか」及び「規範の改変を促す」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の施政方針演説は安倍内閣総理大臣が行ったものであり、一及び二についてでお答えしたとおり、議院の会議又は委員会において、憲法第六十七条の規定に基づき国会議員の中から指名された内閣総理大臣が、憲法に関する事柄を含め、政治上の見解、行政上の事項等について説明を行い、国会に対して議論を呼び掛けることは禁じられているものではなく、三権分立の趣旨に反するものではないと考えている

(引用終わり)

 質問されたことにまともに答えずにはぐらかすというのは安倍晋三首相の得意の答弁パターンですが、この質問主意書に対する答弁も全く同断です。
 この点については、南部義典さんがマガジン9に書かれた批判を引用しておきましょう。

(抜粋引用開始)
 国会議員の中から指名された内閣総理大臣が(憲法67条1項)、衆議院、参議院の要求に応じて委員会等に出席し、答弁している限りでの話であるから(同63条)、憲法上問題はない。これが、答弁書に示され
た、内閣の言い分です。
 しかし、逢坂議員の質問とは、論点がズレてしまっていて、きわめて不明瞭です。そもそも、63条、67条1項は、権力分立に関する総括的な規定ではありません。それぞれ、国務大臣等の議院出席・答弁義務、内閣総理大臣の指名議決の件を定めているにすぎず、国会と内閣の関係性を解くための一般法理を導くことはできないのです。どう寝転んでも、63条、67条1項の解釈から、内閣総理大臣が衆議院、参議院の委員
会、本会議で憲法改正論議の呼びかけを行うことの「合憲性」は引き出せません。
 仮に、この「論理」を用いるならば、「各地の高等裁判所は、一票の較差問題に関して、違憲無効判決を下すべきではない」「沖縄県が辺野古の埋め立て承認を取り消した件につき、処分を撤回するよう、裁判所は毅然と判断すべきである」といった意見を、裁判所に対して呼びかけることも憲法上問題ないとい
うことになってしまうでしょう。
(引用開始)

 南部さんが「仮に」以降で書かれたことは、本来であれば、実際に起こるはずのない事例ですが、「安倍政権ならやりかねない」と思いませんか?
 この答弁に納得できない逢坂誠二議員は、再度の質問主意書を提出しました。
 
平成二十九年二月一日提出 質問第四三号
内閣総理大臣が国会に対して憲法改正の議論を促すことのできる根拠に関する再質問主意書
提出者 逢坂誠二

(引用開始)
 先般提出した「内閣総理大臣が国会に対して憲法改正の議論を促すことのできる根拠に関する質問主意書」(質問第一六号)に対する答弁書(内閣衆質一九三第一六号。以下「答弁書」という。)の内容に疑
義があるので、以下質問する。
一 平成二十九年一月二十日の第百九十三回国会の施政方針演説における安倍総理の発言は、答弁書でいう「国会に対して議論を呼び掛ける」のではなく、さらに踏み込んだ「憲法審査会で具体的な議論を深めようではありませんか」と行政府の長である内閣総理大臣が立法府に対して憲法改正に関する議論を促す
ものであると受け止めているが、この点、政府はどのような認識を持っているのか。見解を示されたい。
二 答弁書でいう「国会に対して議論を呼び掛けることは禁じられているものではなく、三権分立の趣旨に反するものではないと考えている」ということの意味は、安倍総理の当該発言には何ら政治的な拘束力はなく、「政治上の見解」の「説明を行」ったに過ぎず、一定の効果を持つ政治意思の表明ではなかった
と理解して良いか。
三 二に関連して、安倍総理の当該発言は「国会議員の中から指名された内閣総理大臣」の発言であること、「三権分立の趣旨に反するものではない」ことが答弁書で明示されており、一定の政治上の効果を国
会に与えることを意図しているものではないのか。見解を示されたい。
四 日本国憲法第九十九条「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」との規定によって、総理大臣には日本国憲法を遵守し尊重する義務がある
と認識しているが、政府の見解を明らかにされたい。
五 総理大臣が憲法改正を主張するのは、日本国憲法第九十九条の規定に反すると思われるが、政府の見
解を示されたい。
六 総理大臣が国会に対して、単に憲法に関する議論を促すのではなく、憲法の改正についての議論を促
すことは、日本国憲法第九十九条の義務に反すると思われるが、政府の見解を示されたい。
 右質問する。
(引用終わり)
 
(引用開始)
一について
 御指摘の「さらに踏み込んだ」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の発言は、先の
答弁書(平成二十九年一月三十一日内閣衆質一九三第一六号。以下「前回答弁書」という。)一及び二に
ついてでお答えしたとおり、国会に対して議論を呼び掛けたものと認識している。
二及び三について
 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難である。いずれにしても政府としては、前回答弁書一及び二についてでお答えしたとおり、議院の会議又は委員会において、憲法第六十七条の規定に基づき国会議員の中から指名された内閣総理大臣が、憲法に関する事柄を含め、政治上の見解、行政上の事項等について説明を行い、国会に対して議論を呼び掛けることは禁じられているものではな
いと認識している。
四から六までについて
 政府としては、憲法第九十九条は、日本国憲法が最高法規であることに鑑み、国務大臣その他の公務員は、憲法の規定を遵守するとともに、その完全な実施に努力しなければならない趣旨を定めたものであって、憲法の定める改正手続による憲法改正について検討し、あるいは主張することを禁止する趣旨のもの
ではないと考えている。
(引用終わり)
 
 この再度の質問趣旨書に対する内閣答弁で最も重要な部分は、質問と照らし合わせて考えると、「憲法第九十九条は、(内閣総理大臣が)憲法の定める改正手続による憲法改正について検討し、あるいは主張することを禁止する趣旨のものではない」と言い切ったことにあると言うべきでしょう。
 この答弁書の作成には、当然内閣法制局が関与しているはずですが、集団的自衛権行使を容認して以降、「毒を食らわば皿までも」という投げやりな心境なのでしょうかね。
 2015年9月15日の中央公聴会で濱田邦夫元最高裁判事が「今は亡き内閣法制局」と発言した時には、「そこまで言わなくても」と思ったものでしたが、今となってはまことに的確な評言であったと感じ入るばかりです。
 
(参考レジュメ)
2016年6月15日(水) 西牟婁教育会館にて
憲法をまもりくらしに活かす田辺・西牟婁会議
「自民党改憲案を斬る~いま主権者がなすべきこと~」用レジュメ
から
(抜粋引用開始)
5 憲法は誰が守るべきものか(立憲主義とは何か)
 問題続出の自民党改憲案の中でも、とりわけ重大な肝となる条文は、樋口陽一先生、小林節先生が語られているとおり、現行13条「すべて国民は、個人として尊重される。」が「全て国民は、人として尊重される。」に変更され、「個人」が消滅していることでしょう。
 この点については後ほど触れられればと思いますが、以下には、2012年4月27日に自民党改憲案が発表された後、私自身が自民党ホームページに掲載された改憲案をざっと通読した時に最も衝撃を受けた条文「102条1項 全て国民は、この憲法を尊重しなければならない。」を中心に、やや詳細に自民党改憲案の反立憲主義ぶりをご紹介しようと思います。

 さて、この改憲案を最初の前文から読み始めた人は、「なんて義務規定が多いんだ」と思われるでしょう。ざっと目に付く規定を抜き出してみます。

3条2項 日本国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない。
9条の3 国は、主権と独立を守るため、国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、その資源を確
保しなければならない。
12条後文 国民は、これを濫用してはならず、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常
に公益及び公の秩序に反してはならない。
19条の2 何人も、個人に関する情報を不当に取得し、保有し、又は利用してはならない。
21条2項 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びに
それを目的として結社をすることは、認められない。
24条1項後文 家族は、互いに助け合わなければならない。
25条の2 国は、国民と協力して、国民が良好な環境を享受することができるようにその保全に努めなければならない。
28条2項前文 公務員については、全体の奉仕者であることに鑑み、法律の定めるところにより、前項
に規定する権利の全部又は一部を制限することができる。
92条2項 住民は、その属する地方自治体の役務の提供を等しく受ける権利を有し、その負担を公平に
分担する義務を負う。
99条3項 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。この場合においても、第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条そ
の他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない。
102条1項 全て国民は、この憲法を尊重しなければならない。

 この一々にコメントを付すことも可能ですが、それをやり出すときりがありません。ただ、12条後文は、まず日本語になっていません。改憲派は、現行憲法が翻訳憲法であって日本語としておかしいと批判しますが、十分意味は伝わります。これに対し、自民党改憲案の12条後文はそもそも文法的に成り立ちません。

 それはそれとして、私は、この自民党改憲案を、発表されてから遅くとも6日以内には読んでいます。なぜはっきりそう言えるかと言うと、2012年5月3日に配信した「メルマガ金原」で「憲法記念日に考える(立憲主義ということ)」という記事を書いているからです。
  ブログに転載した前編
  ブログに転載した後編
 それは、改憲案102条1項「全て国民は、この憲法を尊重しなければならない。」を読んだ衝撃によって一気に書き上げたものでした。
 私が言わんとしたのはこういうことです。やや長くなりますが、この部分が今日のお話のポイントなので、我慢してお付き合いください。

 現行の日本国憲法は、97条から99条までの3箇条で「第10章 最高法規」という章を設けています。引用してみます。

第97条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の
権利として信託されたものである。
第98条 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するそ
の他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。
第99条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

 「第1章 天皇」「第2章 戦争の放棄」「第3章 国民の権利及び義務」「第4章 国会」「第5章 内閣」「第6章 司法」「第7章 財政」「第8章 地方自治」「第9章 改正」までは、どういうことが規定されているのか、章の標題だけからでも、ある程度は推測がつくと思いますが、「最高法規」という第10章の標題を読んだだけで何らかのイメージがわく人がどれほどいるでしょうか?実際に3箇条の条文を読んでみたらどうでしょう?
 「どうやら憲法が一番偉い規定であって、他の法律などは憲法に違反すると効力がないということを定めたのかな」位のことは(98条にそう書いてあるのですから)誰でも分かると思いますが、最高法規性を定めた98条と、その前後の97条、99条との関係、何故この3箇条で一つの章をわざわざ設けているのか、ということは少し説明を加える必要があります。
 実は、今日のお話は、この第10章の意義とこれをなきものにしようとしている自民党改憲案の対比を説明すれば、ほぼそれで尽きると言ってもよい位なのです(というか、他にも重要な論点はあるのですが、多分お話している時間がありません)。
 私自身、日本国憲法の条文を初めて通読したのは、大学の1回生として教養課程の「憲法」を受講した時だったから相当昔のことですが、その時は、「第10章 最高法規」の本当の意義は全然分かっていませんでした。
 学生時代の私が何より疑問に思ったのは97条でした。基本的人権の重要性を強調するのであれば、「第3章 国民の権利及び義務」の最初の方に置けば良いし、実際、第3章には既に以下のような条文が置かれています。

第11条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は
、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
第12条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

 大学に入ったばかりの私には97条の存在意義が理解できず、「11条や12条と無駄に重複しているのではないか」などと考えていたものです。97条や99条の重要性を理解するまで、相当時間がかかったように記憶しています。
 ここで、97条及び99条の意義を理解するためのこれ以上ない「反面教師」として、自民党改憲案「第11章 最高法規」を読んでおきましょう。

現行の第97条 → 全文削除
(憲法の最高法規性等)
第101条 この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関する
その他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。
(憲法尊重擁護義務)
第102条 全て国民は、この憲法を尊重しなければならない。
2 国会議員、国務大臣、裁判官その他の公務員は、この憲法を擁護する義務を負う。
 
 どこをどう変えようとしているのかを確認しましょう。
 97条はどうなったか?「全面削除」です。これについて、自民党「Q&A(増補版)」は、「我が党の憲法改正草案では、基本的人権の本質について定める現行憲法 97条を削除しましたが、これは、現行憲法 11 条と内容的に重複していると考えたために削除したものであり、「人権が生まれながらにして当然に有するものである」ことを否定したものではありません。」としています。
 けれども、そらなら何故11条ではなく97条の方を削除したのかについては一言も触れられていません。
 現行98条は、ほぼそのまま101条となっていますが、現行99条の憲法尊重擁護義務はどうなったか?
 まず、現行規定にはなかった「国民」の憲法尊重義務なるものが102条1項として規定されています。
 102条2項には、現行の99条からあえて「天皇又は摂政」を削除した上で、公務員の憲法擁護義務を残しています。

 ここで、「立憲主義」とは何かを考えるために、迂遠なようではありますが、日本で最初の近代的「憲法」として制定された「大日本帝国憲法」を振り返っておきたいと思います。
 1888年(明治21年)6月22日(大日本帝国憲法公布の約8か月前)、憲法草案を審議していた枢密院において、議長である伊藤博文が述べた以下の発言は非常に著名なものです。

「そもそも、憲法を創設するの精神は、第一君権を制限し、第二臣民の権利を保護するにあり。ゆえに、
もし憲法において臣民の権利を列記せず、ただ責任のみを記載せば、憲法を設くるの必要なし」(原文は旧字・カタカナ・句読点なしなので、読みやすくしました)

 そして、大日本帝国憲法「第2章 臣民権利義務」の中で、臣民に直接義務を課す規定は、兵役の義務(20条)と納税の義務(21条)を定めた2箇条だけにとどめられていました。
 伊藤博文が正しく指摘しているように、そもそもなぜ憲法を定めるかと言えば、それは国民の権利・自由を保障する(臣民の権利を保護する)ためであって、そのために国家権力に制限を加える(君権を制限し)必要があるからです。つまり、「憲法を守らなければならない」という規範の名宛人は国家であって国民ではない、というのが大原則なのであって、これが「立憲主義」の本質です。
※伊藤博文の発言の淵源の1つが、1789年~大日本帝国憲法発布のちょうど100年前~フランス人権宣言(人及び市民の権利の宣言)16条「権利の保障が確保されず、権力の分立が規定されないすべての社会は、憲法をもつものでない。」(岩波文庫「人権宣言集」の訳による)にあることは言うまでもありません。

 ここまで書けば、現行憲法の「第10章 最高法規」において、憲法の形式的最高法規性を明示した98条に先立ち、基本的人権の不可侵性を強調した97条がなぜその直前に置かれねばならなかったかが理解されるでしょう。
 97条は、憲法が最高法規でなければならないその根拠を明示した規定なのです。
 そして、99条の憲法尊重擁護義務に列挙された「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員」は、正に最高法規である憲法規範の名宛人である国家を実際に運営する主体であるがゆえに、明示的に「憲法尊重擁護義務」が課せられているのです。
 以上のとおり、97条-98条-99条という第10章の3箇条は、非常に論理的なつながりをもって
構成されており、最も根本的な憲法の基本原理である「立憲主義」を明らかにした章なのです。

 さて、自民党改憲案です。
 97条が全面削除されることにより、伊藤博文の言う「臣民の権利を保護する」という憲法の最も重要な目的が消えてなくなっています。
 98条の形式的最高法規性はそのまま残っていますが、現行の第10章において、真に重要な規定は97条と99条であり、98条はこれらの条文の存在理由を論理的に明らかにするために必要であったため、97条と99条の間に置かれた規定です。
 考えてもみましょう。憲法が形式的に法律等の規範より上位にあるなどということは、規定があろうが
なかろうが「当たり前」でしょう?
 そしてとどめは99条です。自民党は新102条で、あろうことか国民の憲法尊重義務をまず規定しました。
 実はこの規定に限らず、先に列挙したとおり、自民党改憲案には国民に義務を課す規定が目白押しです。数え方にもよりますが、新たな義務規定が少なくとも10箇所はあります。
 自民党改憲案は、国際標準で言えば「憲法」の名に値しません。
 もちろん、世界には様々な国家があり、それぞれ憲法を持っているのですから、伊藤博文が述べたような意味での「立憲主義」に立脚した憲法ばかりではなく、国民の自由・権利よりも「公益や公の秩序」を重しとする全体主義国家の憲法もあるでしょう(特定のファミリーが三代にわたって強権的に国民を支配している国も近隣にありますしね)。
 しかし、そのような「立憲主義」に立脚しない「憲法」は、「近代的意義の憲法」とは言いません。自
民党は、「立憲主義」を捨て去ることによって、日本を全体主義国家にしようと提唱していると言わざるを得ません。
(引用終わり)
 

森友学園への不明朗な国有地払下げを追及した宮本岳志衆議院議員(日本共産党)の質疑(テキスト)を読む(付・自由法曹団記者会見)

 今晩(2017年2月17日)配信した「メルマガ金原No.2726」を転載します。

森友学園への不明朗な国有地払下げを追及した宮本岳志衆議院議員(日本共産党)の質疑(テキスト)を読む(付・自由法曹団記者会見)

 財務省近畿財務局が、大阪府豊中市内の国有地を学校法人森友学園に異常な廉価で売却したのではないか?という第一報を朝日新聞が報じたのは2月9日のことでした。
 

 この第一報では、「財務局が森友学園に売った土地の東側にも、国有地(9492平方メートル)があった。財務局が10年に公共随契で豊中市に売ったが、価格は約14億2300万円。森友学園への売却額の約10倍とみられる。ここは公園として整備された。」という部分が最も注目されたと思われます。
 この時点では、近畿財務局は売却金額を公表しておらず、隣地との売却価格の著しい落差に目が行ったのも無理はありません。

 しかし、近畿財務局が価格の公表に転じたものの、疑惑は深まるばかりという状況であり、朝日新聞以外の大手メディアによる報道も見られるようになりました。まだ一切報じていない大手新聞やTVもあるようですが、共産党や民進党が国会で重点的に追及することになれば、いつまでも頬被りという訳にはいかなくなるでしょう。実際、NHKも今日になってようやくニュースで取り上げたようです。
 
東京新聞-共同通信 2017年2月15日 20時44分
小学校建設の国有地問題、解明へ 売却の真相、弁護士団体が表明

(引用開始)
 大阪府豊中市で私立小学校建設を計画する学校法人「森友学園」(大阪市淀川区)に、評価額の14%で払い下げた国有地の売却額を国が非開示にした問題で、弁護士団体「自由法曹団」が15日、大阪市内で記者会見し、「売却経緯の真相を解明したい」と表明した。
 会見で村山晃弁護士は、「売り払う過程に不自然な点が多い」と強調。国が地下のごみ撤去に8億円余りかかると見積もり、評価額9億5600万円から差し引いたことについて「費用の算定根拠が示されていない」などと疑問を示した。
 小学校は4月開校予定で、名誉校長は安倍晋三首相の夫人昭恵さん。

(引用終わり)
毎日新聞 2017年02月16日 22時08分
国有地:格安の謎…査定9億円、学校法人へ1億円で売却

(抜粋引用開始)
 国が売却した土地(約8770平方メートル)は豊中市野田町にある。取得したのは、大阪市淀川区で幼稚園を運営する学校法人「森友学園」で、今春、小学校が開校する。名誉校長には安倍晋三首相の妻昭恵さんが就くといい、注目度は更に高まった。
 元々、この地区は近くにある伊丹空港の騒音対策区域だったため、国土交通省大阪航空局が土地を買い進めてきた。航空機の性能が上がり、1989年に区域解除されたことに伴って区画整理が始まり、一つに集約された広い土地が生まれた。
 国はこの土地が不要になり、大阪航空局の依頼を受けた近畿財務局が2013年に売却先を公募。森友学園が手を挙げた。
 森友学園は15年5月、土地を借り受ける契約を結び、校舎建設に着手。ただ、地中からガラス片や木くずなどのごみが見つかった。学園側は「国に撤去を任せると時間がかかる」との理由で土地の購入を希望し、近畿財務局は昨年6月に随意契約で売却した。
 ここで問題になったのが、近畿財務局がとった売却額の非開示の措置。国の通達により公表が原則だが、学園側が地下ごみの風評被害を懸念し、開示に同意しなかった。これを問題視した豊中市議が、開示を求めて大阪地裁に提訴した。
 提訴から2日後、学園側が開示に同意し、売却額は1億3400万円と判明した。学園は「公表しないことで、不当に安く取得したと誤解を受ける恐れがある」と考えたという。
 ただ、開示だけで事態は収束しなかった。近畿財務局から依頼を受けた不動産鑑定士は、土地を9億5600万円と評価したことが明らかになり、売却額との開きに注目が集まった。財務省によると、大阪航空局は地下に埋まったごみの撤去・処分費を約8億円とはじき出しており、これが差額の根拠となったという。
(引用終わり)
 
NHK NEWS WEB 2月17日 18時38分
鑑定価格より低く売却の国有地 財務省は適正価格と説明

(抜粋引用開始)
 大阪・豊中市にあった国有地が、学校法人に鑑定価格より低く売却されたことをめぐり、財務省は衆議院予算委員会で、土地で発見された大量のゴミの撤去費用として8億円余りを差し引いたもので、適正な価格だったと説明しました。
 この問題は、大阪・豊中市にあったおよそ8800平方メートルの国有地を、国が去年、大阪・淀川区の学校法人「森友学園」に、鑑定価格よりも低く売却したものです。
 これについて、17日の衆議院予算委員会で財務省の佐川宣寿理財局長は、学園側に貸し付けていた国有地に小学校を建設中、地中から大量のゴミが発見され、学園側が1年後のことし4月に開校が迫る中、ゴミを撤去する意向を示したと説明しました。そして佐川理財局長は、鑑定価格の9億5600万円から8億円余りをゴミの撤去費用などとして差し引き、1億3400万円で売却したとしたうえで、「適正な価格で売り渡した」と述べました。
 一方、民進党側は「不動産鑑定の評価額より値下げされたのはなぜなのか。学校設置の認可とも関連したのではないか」と指摘しました。
 これに対し、安倍総理大臣は「妻の昭恵が小学校の名誉校長になっていることは承知している。私や妻が、この認可あるいは国有地払い下げに、事務所も含めて、一切関わっていないということは明確にさせていただきたい」と述べました。そのうえで、安倍総理大臣は「私や妻が関係しているということなれば、間違いなく総理大臣も国会議員も辞めるということは、はっきり申し上げておきたい。全く関係ない」と述べました。
(引用終わり)
 
 今日は、IWJの記事を2本、テキストと動画をご紹介したいと思います。
 1つは、一昨日(2月15日)の衆議院財務委員会における宮本岳志議員(日本共産党)による質疑のテキストです。
 いずれ、正式な会議録が衆議院のホームページにアップされると思いますが、これはおそらく会議録確定前の速記録(未定稿)でしょう。
 ざっと通読しましたが、日本共産党の調査能力の高さに感心しましたね。この質疑の模様は衆議院インターネット審議中継で見られますし、そこから切り取ったYouTube動画もありますが(1つ紹介します)、これまで朝日新聞の第一報を読んだだけで憤慨していた人に、是非このテキストを熟読して欲しいですね。動画も併せて視聴されると良いとは思いますが、私としてはテキストをまずお読みになることをお勧めします。非常によく出来たミステリーを読む醍醐味に近い、と言っては不謹慎でしょうが、どこに問題の所在があったのかという目の付け所が非常に的確であると思いますし、私としても非常に参考になりました。
 今日(2月17日)の衆議院予算委員会でもこの問題が取り上げられたようであり、さらに新しい疑惑が出てきているかもしれませんが、15日の宮本岳志議員(と日本共産党タクスフォース)によって明らかにされた点を出発点とし、これを多くの国民の共通認識にする努力をしなければならないと思います(ということで、私もメルマガ&ブログで取り上げたのですが)。
 
IWJ 【国会ハイライト】国有地が9割引の1億3000万円で払い下げ!次々と明らかになる「森友学園」をめぐる国ぐるみの疑惑!共産党・宮本岳志議員の追及を全文掲載!「極右学校法人の闇」第2弾! 2017.2.17

「森友学園」国有地払い下げ問題 国会で追及へ! 宮本岳志(共産)2/15 衆院・財務金融委員会(32分40秒)


 なお、上記の宮本議員による質疑をより良く理解するために、以下の文書は目を通しておかれた方が良いと思います。

大阪府私立学校審議会 平成27年1月30日答申
大私審第15号 小学校の設置について(答申)

(抜粋引用開始)
 平成26年12月9日け私第2826号で諮問のあった事項については、平成27年1月27日開催の大阪府私立学校審議会臨時会において、下記のとおり結論を得たので答申します。
                    記
第4号議案  瑞穂の國記念小學院の設置の件
 慎重審議の結果、上記の件について以下の条件を附して認可適当と認める。
 小学校建設に係る工事請負契約の締結状況、寄附金の受入れ状況、詳細なカリキュラム及び入学志願者の出願状況等、開校に向けた進捗状況を、次回以降の当審議会定例会において報告すること。
(引用終わり)
 
国有財産近畿地方審議会 第123回(平成27年2月10日) 議事録
(抜粋引用開始)
【藪野委員(弁護士(藪野・藤田法律事務所))】 売買予約契約を予め結んでおかれるということだったのですが、価格ですね。通常は、価格をフィックスして、予約完結権を行使したときに、それで売買が成立するということになるかと思うのですが、今回違いますね。
 先ほどその年度ごとに相続税路線価格を示して協議するというお話もありましたけれども、価格の設定はどのようにされているんですか。
【立川管財部次長】 これは一般的に不動産鑑定士に評価をお願いしてそれを使うと。それを買い受けが可能となった時期にタイムリーに鑑定評価に出しまして、その有効期限内に買っていただくという形でやらせていただこうと思っています。
 ですから、売買予約契約書には時価で買いましょうと、借地権も見ませんというふうなことを特約で盛り込んでいるところでございます。
(略)
【平井委員(㈱読売新聞大阪本社編集局 管理部長)】 今回の件は、当審議会よりもむしろ私学審で議論があり、たぶんその議論の決着が着いたから今回の審議会に持ち込まれたのだと思います。その上でまず、この少子化の中で、「私立の小学校を作るのでその運営主体に土地を売却する」ということですが、私学の小学校経営というのは本当に大丈夫なのでしょうか。それから、10年間まず借地として貸して、その後に時価で売るとのことですが、今後10年間の地価の推移がどうなるか、また、今後10年で私立の小学校の経営環境というのはそれほど改善しないと思われますが、いざ、売却する段になって、地価が上がっていて、買い手が「その価格では買えません」と言い出すリスクはないのでしょうか。
【立川管財部次長】 リスクはあるといいますか、一般的に同様の事案全てに当てはまることだと思うのですけれども、リスクは一定程度あるのだというふうに思っています。
(略)
【角野委員(関西学院大学総合政策学部教授)】 今の件の確認ですけども、だいたい学校法人の背景というのは普通の企業会計とは全然違っていまして、かなりリスクヘッジがかかっているということは理解しているのです。それでも、今のお話で10年の期限で、10年経ったときに売買契約が結べない、恐らく在学生の利益のためには引き続き、その定借期間を延長せざるを得ないということが見えていると思うのですけどね。その上で、なおかつさらに経営が行き詰まったときには、想定されるのはまず募集停止にして、その上で現在そのときに在学中の児童が卒業するまでは面倒見ますと。そのお金はちゃんと内部留保させられているはずなのですよね。
 ということで、そこまでの安全はきっと私学審議会でチェックされているとは思いますが、その上で10年経って定借延長します。しかし、さらに経営が改善される見込みがなくて募集停止になりましたというような最悪の際には、こういう土地は定借の期間をあるところで打ち切って国に戻すというような流れになるのでしょうか。
【立川管財部次長】 そうですね。事業用定期借地契約の中に、我々、先ほども説明しましたが、用途指定制度を特約として盛り込んでおりまして、まず入り口ではきちんと期日までに小学校が実際にできるかどうかというところでまず、もしできなければ事業予定者とはいえ、その時点でできないのであればもう打ち切りますよと。土地を更地にして返してくださいよということを義務付けています。
(略)
【今井委員(奈良女子大学 名誉教授)】 先ほどから出ているご意見のとおり、そういうふうに考えますけれども、私学審でどのくらい短期間の間に認可されるのかというのが、まずかなり条件が付いているのは少し気になるところではあります。
【立川管財部次長】 私学審の附帯条件、あくまでといいますか、答申は認可適当ということで、いずれ要件が整えば認可をするというふうなことで答申がなされておりまして、それをより現実的なものにするために、森友学園に対して一定のことをしなさいと、それを私学審のほうでグリップするので定例的に報告をしなさいと、進行管理をするというふうなことで、認可に向けての条件でございますので、この条件を淡々と履行していけば学校もできますし寄附も来るでしょうしと。工事契約なども今、収支計算に盛り込んでいる請負代金の金額でやっていくんだということを、一つ一つつぶしていくということの趣旨を踏まえて、こういった附帯条件ということとされておりますので、我々もそういった条件が履行された上で認可を得られることを前提として処理を今、進めていこうというふうに考えておりまして、こういった形で諮問させていただいているところなのでございますけれども、今の段階でそういったことが確定的にできないというふうなことでもあれば、そもそもこうやって諮問すらしませんし、こういった申請自体もあり得ないと思うのですけれども、一応こういったことをきちんと履行することということで先方から申請を受けて、進めるということでやってきておりますので、ここはスタートするべきなのだろうというふうに考えているところでございます。
(略)
【中野会長(京阪神ビルディング㈱代表取締役社長(元三井住友銀行副会長))】 いろんなご意見が出る中で、基本的にやっぱり安定的なところにお貸しをして、かつ購入してもらうということが国有財産は前提ですよね。学校法人ですから悪いわけではありませんが。したがって、附帯条件が付いて認可適当というのは条件が満たされて認可適当になりますので、それが満たされるという前提の中でこの審議会としては了というような形でまとめていったらどうかと思うのですが、そういう形でよろしゅうございますか。私学審議会において、附帯条件が極めて明確に付いていますので、こういう前提の中で進めさせていただくということでよろしゅうございますか。(「はい」の声あり
それでは、そういうことでご了承いただいということで。
(引用終わり)
 
 もう1つのIWJの記事は、宮本議員が国会で国を追及していた同じ2月15日、自由法曹団大阪支部と京都支部の弁護士が、豊中市の現地調査を行った後、大阪地裁本館1階記者室で行った記者会見の動画です。全編(40分14秒)視聴しましたが、少なくとも私には非常に有益でした。
 私は、この自由法曹団の記者会見動画を視聴してから宮本岳志議員の質疑のテキストを読みましたので、それでよりよく理解できたのかもしれません。
 もちろん、「売買予約」とか「予約完結権の行使」とかの法律用語が出てきますので、民法の基礎知識の有無で理解度に差が出るのはある程度致し方ないとは思いますが、それでも、記者会見の動画を視聴し、それから宮本議員の質疑をテキストで読むというのが、一番のお勧めの方法です。

関西ローカルだけど見て欲しい!~2/26『自主避難者はどこへ~迫られる「帰還」か「定住」か』(MBSドキュメンタリー映像'17)付・2/10「ちちんぷいぷい」も良かった

 今晩(2017年2月16日)配信した「メルマガ金原No.2725」を転載します。

関西ローカルだけど見て欲しい!~2/26『自主避難者はどこへ~迫られる「帰還」か「定住」か』(MBSドキュメンタリー映像'17)付・2/10「ちちんぷいぷい」も良かった

 「関西ローカルでの放送であることがまことに残念な」と多くの視聴者が口にする大阪・毎日放送のMBSドキュメンタリー映像(今年は「'17」が最後に付きます)は、原則として、毎月最終日曜日の24時50分~25時50分に放送されます。
 先月(1月29日)放送された『沖縄 さまよう木霊~基地反対運動の素顔~』(ディレクター:斉加尚代さん)も素晴らしい作品でしたが、今月(26日)放送される番組も見逃せません。

2017年2月26日(日)24時50分~25時50分(27日・0時50分~)
毎日放送 MBSドキュメンタリー映像'17
『自主避難者はどこへ~迫られる「帰還」か「定住)」か』

「東日本大震災とそれにともなう原発事故からまもなくまる6年。この3月末で、国が設定した避難指示区域外から避難している“自主避難者”への住宅無償提供が終了する。これにより自主避難者は「帰還」か「定住」かの選択を、否応なく迫られる。国や福島県は、避難指示区域外は放射線量も低く、「避難する状況にない」とするが、本当にそうなのか。「このままでは避難者が消去され、原発事故がなかったことにされてしまう」・・・被災地から日本各地に離散した自主避難者を訪ね、早期の避難終了へのさまざまな思いと、制度の問題点について考える。」

 この番組についての紹介は、今のところ以上で全てですが、今後、「取材ディレクターより」が追加掲
載されることもありますので、気がついたら(ブログ版だけですが)補充紹介しようと思います。

(追記/2017年2月26日)
取材ディレクターより
福島県からの自主避難者への住宅無償提供打ち切りは、今から2年前の2015年6月に福島県と国が協議して、決まった。住宅の提供がほぼ唯一の公的支援だった自主避難者にとっては、国や福島県から“最後通牒”を受けたようなモノで、福島への「帰還」か避難先での「定住」かを、否応なく迫られることになった。
住宅無償提供の打ち切りまで、あとひと月あまりとなった今月23日、福島県は、打ち切り対象となる世帯全体の9割超にあたる1万1300世帯で4月以降の住む家が決まった、と発表した。しかし、これは「住むところがなくなったら、どうしよう」と考えた自主避難者たちの「苦渋の選択」の結果であって、決して国や福島県のやり方が是認されたということではないだろう。
国や県など大きな組織機構に対して、声を上げられる人など、ほんのわずかだ。今回の番組の登場人物たちも、止むに止まれぬ思いで、声にならない声を代弁しているのだと思う。「誰も声を上げなければ、認めたのと同じになってしまう」と。
では、われわれメディアはどうだろう。やはり、そうした声を伝えることをしなければ、メディアとしても国や福島県のやり方を認めたことになってしまう。原子力災害からの復興には、長い時間がかかる。なのに、事故の原因究明も充分進んでいない中、全国各地でまたぞろ原発の再稼働が進められている。
今の福島県んの姿が、未来のどこかの姿であってはならない・・・。そんな思いで取材を進めた」

 
 ところで、もしかしたら上記番組のための取材ソースを利用してだったかもしれないのですが(多分そうでしょう)、同じMBS(毎日放送)が、月曜日から金曜日までの毎日、13:55~17:50という時間枠で放送している「ちちんぷいぷい」という情報番組の中の「石田ジャーナル」というコーナーで、去る2月10日(金)、「故郷に帰るか、それとも・・・きょうのテーマは原発事故による避難者の話」という特集が放送されました。
 ・・・と書いたものの、毎日放送が昼間から夕方にかけて、何と4時間近い長時間の情報番組を放送しているなどとは全然知らず、もちろん見たこともありませんでした。このことは、森松明希子さんが
Facebookで自主避難者仲間の田中里子さんが上記番組の放送内容をFBでレポートした文章をシェアしていたので気がついたのです。
 そして、田中里子さんのレポートを読み始めてから、私自身、「そういえば田中さんともFacebook友達になっていた!」ことを思い出したのでした。
 その田中里子さんのFacebookでのレポートは、まもなく「東日本大震災避難者の会 Thanks & Dream(サンドリ)」ブログに転載されており、サンドリ代表の森松さんも、FBで「各種mlでも情報拡散、お願いしますm(._.)m」と書かれていましたので、私のブログに全文転載しても差し支えないでしょう(田中さんのFBでの元記事も公開設定だったし)。
 
【3.11避難者のレポート】MBS ちちんぷいぷい「原発自主避難者住宅支援問題」(2017年2月10日・毎日放送を見て)
(引用開始)
昨日、たまたまTVをつけたら、MBSの「ちちんぷいぷい」という情報番組だった。
そこで特集されてたのが、原発自主避難者。
今年3月で打ち切られる住宅支援問題を絡めた話。(ちちんぷいぷい動画
なかなかの良質な内容だったと思うので、一日遅れですが紹介します(長いです)。

まず、映されたのが2011年12月に文科省が計測した航空モニタリングでのセシウム134と137の土壌沈着量
のマップ。
これを見せながら、『放射線管理区域』にしなければならないようなレベルの醜い汚染が福島だけでなく、他の県――――宮城、茨城、栃木、群馬、千葉、東京などにも広がっている、と。

おお!これは。。。決して関東方面では報道されないことじゃないか。
私、東京→三島→大阪の避難者だけど、三島にいたときも聞かなかったな。

ここで、『放射線管理区域』の説明が入る。
「例えば、レントゲン室。飲食も禁止。寝ることも禁止。子どもは立ち入り禁止の場所です」と。
「でも政府から避難指示が出たのはこの地域のみ。」と赤く塗られた地域を指す。
これは原発から20km以内の場所、また年間20ミリシーベルトを超える地域。

ここ以外の地域でも。。。お子さん、いてはったら。。。。逃げるでしょ?(一同、大きく頷く)
でもそうした人たちは自主避難者にされてしまうんです。」

「居ても寝てもあかん場所やのに!?」という声が入る。

その住宅支援が今年3月で終了する事が決まっており、
避難者達は『帰還』か『定住』かの苦渋の選択を迫られている。

ここで入ったのが茨城と福島から大阪に自主避難されているお二人のインタビュー。
避難に伴う苦しい暮らしぶりが伝わってくる。

「困ってます、本当に。。。」
「避難した時と状況は変わらない。とてもじゃないけど戻れる気持ちにはなれない。」と答える避難者の
女性。

住宅は誰にとっても暮らしの基盤だ。それをもとに仕事が決まり、学校生活が始まり、生活のためのネットワークが築かれていくのに。

避難者が住宅支援の延長を求めても、頑なに退け、寄り添う気を全く見せない国と福島県。

大阪府も大阪市も「災害救助法の適用が終了する中、
独自の被災者支援の実施は予定しておりません。」
という紋切り型の返答を繰り返すばかり、全く呆れる。

避難者女性の悲痛な訴え、
「じゃあ、私たちはどこに訴えたら寄り添った制度に変えていただけるようにお願いできるんですかね?

これには、あの人達、どう答えたのだろう。。。

そのあと、住宅支援に関する井戸謙一弁護士のコメント。
「原発事故は長期にわたって被曝が続きます。自然災害を想定した災害救助法の枠組みで住宅支援をする
のは問題です。」
「原発を推進してきた国は責任を取っていません。加害者として被災者の住居を確保する責任から新たな
制度を立ち上げる必要があったと思います。」

本当にそうだ、原子力惨禍は普通のいわゆる自然災害とは違うってのは誰でもわかることなんじゃないの

一度汚染された土地は長い年月をかけても元に戻らない。これまで体験したことのない桁外れの被害を生
んだ、あるいは今も進行形で生んでいる『人災』なのに。
なのに、加害者である国はどうして新しい法律を作って被害者住民を救済しようとしないんだ?

「とにかく、今、国は戻したくってしょうがないんです。除染したって言ってますけどね、山や細かい所
まではしてない。避難者の人たちが自宅に戻って実際に測っても『むっちゃ高いやん』ってことがあった
りする。」
(こういう説明ってメディアであまり聞かなかった気がするから意外だった。原発イジメはどこも取り上
げたけど、実際問題、なぜ帰れないのか、避難元の汚染&除染の事態はどうなのか、は触れてなかったよ
うに思う。これ、ちゃんと言ってくれないと、自分のワガママで帰らない人、っていう誤解は解けないよね。)

何が何でも帰還させたい国と自治体。
彼らが返答にもならない返答を繰り返すのを聞いてて、先日、日テレの深夜番組でおしどりマコさんが話
してた言葉が頭をよぎった。
とある専門家が言ってたという驚愕の言葉。
「世界で既に50基の原発を作ることが決まっている。今までは原発は事故を起こさない、というセール
ストークをしていたが、福島で原発事故が起こってしまった以上、住民たちが除染し、住み続けることが出来る、事故が起こっても大丈夫、というモデルケースをつくっていくことが重要。」というもの。
はぁ!?人の命を賭しても作りたいモデルケースって何なんだ。。。もはや憤りを通り越して、こういう
ことを真面目に考え付く人たちと交わし合える言葉って私達にはあるんだろうか、と思ってしまう。
ま、自分なりにやれることをやっていくしかない、っていつもこれで終わるんだけど。

最後に、自主避難者の問題を分かり易く、丁寧に説明し、かつ事実を歪曲することなく伝えてくださった
この番組に感謝したい。
その中でも紹介してたけど、自主避難者にフォーカスし、取材した番組が今月放送されるそうで。
絶対見ないとねって思う。
皆さんもぜひ!
(東京→三島→大阪・田中里子 20170211)

2月26日(日)深夜0時50分~ MBS『映像’17 消去される自主避難者』(関西地区のみ放送)

(引用終わり)  

 なお、この約17分のコーナーでは、何人かのコメンテーターというかレギュラー出演者というかが、石田英司さんの解説に肯いたり、間(あい)の手を入れたりするのですが、その中で最も適切で納得ので
きる発言をしていたのは桂吉弥さんでしたね(なぜ私がそう言えるかはあえて書かない方が良いでしょうけど)。

(付記)
 ところで、サンドリ・ブログを閲覧していると、「『3.11避難者の声~当事者自身がアーカイブ~』表紙決定しました!東日本大震災避難者の会 Thanks & Dream 通称:サンドリ」という、ほぼ写真だけの記事が目につきました。
『3.11避難者の声~当事者自身がアーカイブ~』(サンドリ)表紙 代表の森松さんがにこやかに微笑み、「チラ見せ!」「絶賛準備中」という吹き出しがついた写真から分かることは、サンドリが発行する避難者の声を集めた新しい冊子が刊行間近ということですね。そういえば、この前大阪で森松さんに会った時にそんな話が出ていたような。
 と思ったら、原発賠償関西訴訟弁護団のMLに、Y弁護士から、「東日本大震災避難者の会Thanks & Dream(サンドリ)が新冊子「3.11避難者の声」を発行しました。(略)避難者の生の声が詰まっています。私の事務所に多数お預かりしています。」という投稿が。つまりもう出来上がったのですね。
 Y弁護士からは、「一部につき〇〇〇円のカンパをお願いします。これが、サンドリの活動に活かされ
ていきます。」と要請されていますが、これは弁護団メンバーに対してなので、サンドリ自体が一般に頒布する場合にどうするかは、公式ブログでの発表をお待ちください。

(追記/2016年2月26日)
 ご購入方法は、サンドリ公式ブログのこのページをご覧ください。 

詳報・内容確定!“フクシマを忘れない!原発ゼロへ 和歌山アクション2017”(2017年3月12日@和歌山城西の丸広場)

 今晩(2017年2月15日)配信した「メルマガ金原No.2724」を転載します。

詳報・内容確定!“フクシマを忘れない!原発ゼロへ 和歌山アクション2017”(2017年3月12日@和歌山城西の丸広場)

 以下のとおり、昨年12月に「速報」を、先月(1月)末に「続報」をお届けした“フクシマを忘れない!原発ゼロへ 和歌山アクション2017”(2017年3月12日@和歌山城西の丸広場)の正式チラシがようやく届きましたので、予告通り「詳報」をお伝えします。
 ただし、「詳報」だからこれまでで一番詳しい記事になるということではなく、より正確に言えば、最終的に決定した内容をお伝えするということですから、「確報」とでもした方が適切なのかもしれません。
 

 それでは、早速、チラシ記載情報をご紹介します。
 ただし、チラシの表面と裏面には、重複箇所も結構ありますので、私の責任で適当にシャッフルして整理したハイブリッド版をお送りします。オリジナルのチラシは、PDFファイルでご確認ください。
 
チラシ記載情報から引用開始)
フクシマを忘れない!
原発ゼロへ
和歌山アクション2017

2017年3月12日(日)10:00~15:00
和歌山城西の丸広場

参加無料
小雨決行

内容盛りだくさん!
ミニSLが走るよ!

主催 「フクシマを忘れない!原発ゼロへ 和歌山アクション2017」実行委員会
連絡先 実行委員会事務局 
 TEL:073-436-3520 FAX:073-436-3554 
 E-mail:w-gezero@naxnet.or.jp
実行委員(会構成)団体
楠見子連れ9条の会、原水爆禁止和歌山県協議会、原発をゼロにする和歌山県民の会、憲法を生かす会和歌山、子どもたちの未来と被ばくを考える会、原発を止めよう和歌山市民の会
  

「フクシマを忘れない!原発ゼロへ 和歌山アクション2017」は、原発ゼロ、再稼働反対をアピールするつどいです。どなたでも参加できます。気軽にお寄りください。
 
全体集会 10:00~11:00
・オープニング
  バンド演奏:紀州五十五万石
・実行委員会挨拶
・福島からの報告
  元双葉高校教員 松本佳充(よしみつ)さん
  3.11原発事故当時、双葉高校に勤務。(自宅は帰宅困難区域)
・集会アピール

アピールパレード 11:10~12:10
パレードコース
西の丸広場→砂の丸広場横→追廻門→県庁前交差点→(左折して三年坂通り)→屋形町交差点(この交差点角に関西電力和歌山支店がある)→(左折して屋形通り)→三木町交差点→(左折してけやき大通り)→西の丸広場
たいこ、コスプレ、ぬいぐるみなど、大歓迎です。プラカードや横断幕など用意して参加いただければうれしいです。

ブース企画 12:00~14:30
・模擬店 飲食物など
・展示(福島原発被災地パネル)
・子ども向けブース(プラバン、エコカルタ、絵本の読み聞かせなど)
★ミニSLが走ります

ステージ企画 12:30~14:45
・紀北農芸高校(和太鼓)
・円香(まどか)(歌うたい・アーティスト)
・子どもたちの未来と被ばくを考える会(コント)
・ナツオ(ウクレレ弾き語り)
・実行委員団体(1分間アピール)

県内の3.11関連企画
●那賀●「フクシマを忘れない原発ゼロ那賀2017」 原発再稼働反対スタンディング
 3月12日(日)10:00~10:30 岩出市・紀の川市
●西牟婁●「フクシマを忘れない!原発ゼロ紀南アクション」 パレード
 3月11日(土)16:20 田辺市
(引用終わり) 

 以下、アトランダムにいくつか補足説明をしておきます。

〇全体集会のオープニングを飾るユニット「紀州五十五万石」の演奏に初めて接したのは、2015年3月8日に開催された“フクシマを忘れない!原発ゼロへ 和歌山アクション2015”でのことでした(あの時は、ただの「五十五万石」といったと思うけど、いつから「紀州」がついたのだろう?)。リードボーカルの歌舞さんを支える男性2人は、実名を公表しているかどうか未確認のため、お名前を紹介するのは控えます(みんな知ってるでしょうけど)。
CIMG3221 おそらくこのユニットでの最新の演奏が2月12日(日)にポポロハスマーケット(和歌山市中ぶらくり丁)で行われたようで、12時からのステージ出演者に「紀州五十五万石」の名前が見えます。
 ところで、3月12日のオープニングで紀州五十五万石が歌う曲が何か?ということは(他の出演者もそうですが)チラシには何も書かれていませんので、当日のお楽しみなのですが、本メルマガ(ブログ)の読者にだけそっと(でもないか)お知らせすると、スリーマイル島原発事故発生の半年後、1979年9月に開かれた“NO NUKES コンサート”のテーマ曲としてジョン・ホールが作った“Power”を日本語詞で歌うのではないかという噂を耳にしました。当たるも八卦当たらぬも八卦ということで、お楽しみに。

〇全体集会のメインゲストは、3.11当時、福島県立双葉高校で教員をされていた松本佳充(まつもと・よしみつ)さんです。浪江町のご自宅は帰還困難区域と指定されています。私たち実行委員が会議の際に読ませてもらった資料の中に、松本さんが書かれた「迷犬タロの物語」という一文がありました。福島県立高等学校教職員組合女性部が編集した『福島から伝えたいこと 第3集 希望は闘いの中に』に収録されています。
 長年共に暮らしてきた犬(雑種のタロ)を、3.11原発事故による避難指示によって心ならずも置き去りにして大量被ばくさせてしまったこと、一時帰宅して生き延びていたタロと2度にわたって再会できたものの、避難先に連れて行けるか分からず、車で立ち去る松本さんをどこまでも走って追いかけてきたタロの姿、3たび一時帰宅したものの行方が分からなくなっていたタロと埼玉県の動物保護団体の施設で奇跡的に再会し、再び一緒に暮らせるようになったこと、しかし、やがて元気をなくして病死したタロ。たんたんとした叙述であり、ことさら原発事故を呪うような表現はありませんが、かえって胸に迫るものがあります。
 その冊子の表紙が掲載されたサイトがありましたが、その表紙に描かれた絵は、松本さんの「迷犬タロの物語」をモチーフにして描かれたのではないかと思います。
 今年の“フクシマを忘れない!原発ゼロへ 和歌山アクション2017”のチラシのために奥野亮平さんが描いてくれた原発イランウータンが犬と一緒にいるイラストも、「迷犬タロの物語」にインスパイアされての図柄だと推測します。

〇今年は、2013年以来4年ぶりに、ミニSLが西の丸広場にやって来ます。4年前の写真を掲載した私のブログ(「福島を忘れない!原発ゼロ 和歌山3・10フェスティバル」写真集)をご覧ください。
 2013年もミニ蒸気機関車がやって来る!と宣伝し、たしか原発イランウータンもSLにまたがっていたと思います。たしかにミニSLは西の丸広場にやって来たのですが、私のブログの写真のとおり、実際に子どもたちを乗せて喜ばせてくれたのはミニ新幹線でした。ミニSLが動かなかったのは、何らかの技術上の問題があったためと聞いています。
 そして今年2017年、万全の準備の上、再びミニSLがやって来ます。ここでは、今度こそ無事西の丸広場をミニSLが疾走することを祈りつつ、愛好者のメッカ、ミニトレインパークを走るミニSLの勇姿を、小谷英治さんのYouTubeチャンネルからご紹介します(ここに映っているミニSLがやって来るという訳ではないでしょうが?)。


〇今年のステージ企画では、新趣向として、子どもたちの未来と被ばくを考える会によるコントが上演されます。同会共同代表の松永久視子さん(司会も担当されます)の話によると、ごく短時間のコントのようなのですが、中身については見てのお楽しみとさせていただきます。

〇ステージ企画には、紀北農芸高校の皆さんによる和太鼓演奏もあるというのが楽しみですね。なお、円香(まどか)さんとナツオさんについては、「続報」で詳しくご紹介しましたので、そちらをご参照ください。

〇全体集会終了後のアピールパレード、やはり関電前を通らない訳にはいかないだろうということで、今年も和歌山城周辺の大回りコース(約1時間)で行います。是非多くの方のご参加をお願いします。
 

(付録)
紀北農芸高校和太鼓部 『鼓風
華』
 
紀北農芸高校和太鼓部 『農芸流れ太鼓』

※第46回和歌山県高等学校総合文化祭邦楽部門発表会より

フクシマを忘れない!2017(表)フクシマを忘れない!2017(裏) 

司法に安保法制の違憲を訴える意義(10)~東京地裁「女の会」訴訟(第1回口頭弁論)における原告・原告代理人による意見陳述

 今晩(2017年2月14日)配信した「メルマガ金原No.2723」を転載します。

司法に安保法制の違憲を訴える意義(10)~東京地裁「女の会」訴訟(第1回口頭弁論)における原告・原告代理人による意見陳述

 2016年8月15日、全国の女性106人が原告となり、違憲な安保法制の制定によって被った損害の賠償を求め、東京地方裁判所に国家賠償請求訴訟を提起しました。いわゆる「女の会」訴訟です。
 その第1回口頭弁論が、去る2月10日(金)午後3時から、東京地方裁判所103号法廷で開かれました。当日は、原告代理人2名(中野麻美、角田由紀子両弁護士)と原告2名(池田恵理子さん、高里鈴代さん)による意見陳述が行われましたが、その陳述用原稿を本メルマガ(ブログ)に転載するご許可をいただきましたのでご紹介します。是非1人でも多くの方にお読みいただきたいと思います。

 ご案内のとおり、東京地裁には、既に「安保法制違憲訴訟の会」による差止訴訟と国賠訴訟が提起(2016年4月26日提訴)されており、その他にも、全国各地で多くの違憲訴訟が提起されています。もちろん、それらの訴訟には数多くの女性が参加されています。
 それにもかかわらず、何故女性だけの訴訟提起が必要だったのか?について、疑問を持たれる方がおられるかもしれません。
 幸い、第1回口頭弁論前に発行された「違憲訴訟の会ニュース 第3号(2017年1月25日発行)」に、安保法違憲訴訟「女の会」事務局・亀永能布子さんによる文章が掲載されていましたので、その一部を引用させていただきます。

女たちの安保法制違憲訴訟 2 月10日、第1回口頭弁論 
傍聴へのご支援をお願いします

(抜粋引用開始)
(略)
 
私たちが女性たちだけで違憲訴訟を起こした理由の一端が、この裁判長の態度に示されています。国の違憲・違法な新安保法制の制定・施行によって、憲法に保障された私たちの権利が侵害されました。その権利とは、憲法制定権・平和的生存権・人格権ですが、特に、私たちの裁判では、法の成立過程でも、法の内容においても、女性の代表権が奪われ、女性の権利が侵害されたと訴えています。
 女性にとって、戦争は特別な影響と被害をもたらします。戦争は女性の身体と性を道具にします。戦時性暴力(日本軍「慰安婦」制度)や、今なお世界の戦争で支配の手段として行われている女性への集団レイプ、米軍基地周辺で繰り返される女性に対する性暴力犯罪や殺人事件。女性に対する暴力は、戦争・軍隊と一体化してその装置として組み込まれています。それだけではありません。戦時体制への国民の動員は、過去に経験したように、性別役割分業と家父長制による女性支配を強めます。しかし、国会では、女性にかかわる問題は一切審議されませんでした。唯一、女性と子どもが登場したのは、安倍首相が、アメリカの軍艦に女性と子どもが乗っているフリップを使って、「日本の女性と子どもを守るために自衛隊が米艦船を護衛しなければならない」と、強弁した時だけです。これは嘘で、アメリカの軍艦が他国の民間人を乗せて救護することはありえません。安倍首相は、戦争加担を正当化するために、女性と子どもを利用したのです。
 「女・子どもを守るために」という論理は、たとえば、沖縄戦で起きた悲惨な「集団自決」が「生きて米軍の捕虜になれば女は強かんされ殺される」と住民を脅し、「玉砕」に追い込んだ構造と同じものであることを思い起こさねばなりません。
 また、私たちはこの裁判で、「武力による紛争解決モデル」が社会的に承認されることによって暴力と差別が蔓延し、平和と民主主義、基本的人権の尊重という憲法で守られた生活の土台が掘り崩されていくことも訴えていきます。みなさまのご支援と、第1回口頭弁論の傍聴をよろしくお願いします。

(引用終わり)

 私がこれに付け加えることはありません。ただ、引用部分の冒頭で「この裁判長の態度」と述べられた内容を知りたい方は、リンク先で原文をお読みください。裁判官も口が滑るということはあるでしょうが、それも元来の心掛けが自然に発露するものですからね。
 もっとも、報告集会冒頭での中野麻美弁護士の報告によると、事前協議から第1回弁論までの間に裁判長が交代したようです(事前協議での不適切発言が交代の原因か否かは不明です)。
 なお、その中野弁護士の報告で語られた(法廷でも陳述された)キャッチフレーズ「平和なくして男女平等なし 男女平等なくして平和なし」が端的にこの訴訟の意義を語っていることを申し添えます。

 当日、裁判終了後に行われた記者会見と報告集会の模様については、UPLANによって動画がアップされていますのでご紹介します。

20170210 UPLAN【記者会見・報告集会】女たちの安保法制違憲訴訟(1時間32分)


冒頭~ 開廷前の東京地裁前街頭宣伝
5分~ 第1回口頭弁論終了後の記者会見

 6分~ 中野麻美弁護士
 9分~ 原告・池田恵理子さん(元NHKディレクター)
 14分~ 原告・高里鈴代さん(元那覇市議会議員)
 17分~ 角田由紀子弁護士
 19分~ 経過報告
 20分~ 質疑応答
32分~ 報告集会
 33分~ 第1回口頭弁論の報告 中野麻美弁護士
 44分~ 原告・福島瑞穂さん(弁護士、参議院議員)
 47分~ 原告・池田恵理子さん
 54分~ 原告・高里鈴代さん
 1時間07分~ 角田由紀子弁護士
 1時間14分~ 全国の訴訟の取組から 杉浦ひとみ弁護士
 1時間22分~ 質疑応答
 

原告ら代理人 弁護士 中野麻美

1「平和なくして男女平等なし」「男女平等なくして平和なし」
 これは、女性の参政権と地位向上に尽力した市川房枝が先の戦争から得た教訓です。
 日本国憲法は、個人の尊厳のうえに差別のない社会を実現することを国家の使命とし、軍隊をもたず戦争を放棄することを誓いました。この憲法をもったことは、原告らの誇りであり、粉骨砕身、差別や暴力のなかから人生を切り開き、行動する支えになってきたものでした。

2 戦争は人間を目的化・道具化・序列化します。個人こそ社会の主人公であって、自由にして平等であるという基本原理にたったときには、戦争は放棄されるべきです。また、戦争と軍隊は、女性の性を道具として支配の対象にしてきました。憲法が男女平等の本質的かつ普遍的な権利を保障する以上、戦争放棄条項も永久普遍の原理として守られるべきものです。

3 私たちがこの訴訟で問題にしている安全保障法制は、その制定過程から重大な憲法違反を重ねるものでした。
 憲法学者のほとんど全員が憲法違反だというのに、政府は、これまでの解釈をクーデタのように変えてこの法律を国会に上程し、武力による紛争解決を法的に承認してしまいました。
 世論が注目する国会などの場面では、何度も「女性と子どもを護る」というフリップを用いて武力行使の必要性を説明し、家父長制と戦争の正当性を繰り返し人々にイメージさせました。
 世界各地で、女性に対する性暴力・性虐待が戦争の手段にされたくさんの人たちを傷つけています。日本軍性奴隷制や米軍による性暴力がいまだに女性たちを傷つけていて、戦争は終わっていないのです。そして、戦争の正当化が日常の生活における女性に対する暴力や差別を強化することが告発されてきました。
 安全保障法制は、生活のあらゆる場面において女性の権利を脅かします。
 それなのに、これらのことは何一つとして議論・検討されないまま、この法律は強行採決されました。いったい、どうしてそれが「積極的安全保障」に資するもので、「国民の人権を守る」ことになるのか、国際紛争への軍事介入や日本の軍事化は女性たちの人権を侵害するものではないのか、私たちはきちんとした説明を受けていないのです。
 にもかかわらず数を頼んでこの法律を強行採決するのは、デモクラシーの理念の否定であると同時に、女性たちの政治的権利を否定するものです。

4 立法やその制定過程が憲法に違反し、正当性もなく、民主的代表制を完全に無視して制定されたとき、そのような法律は廃止されるべきであり、この国と社会の主人公としてその効力を認めるわけにはいきません。立法府と異なる立場からそれを判断するのが裁判所に与えられた使命です。裁判の公開の原則のもとに立法過程をすべて明らかにし、検証しなければならず、私たちにはそれを求める権利があります。
 被告国は、私たちの主張は、単なる不安や危惧を抽象的に述べるにとどまるものであるから国賠法上の要件を満たさないといっています。そして、安保法制の違法性を裏付ける重要な事実について、「認否に値しない」として回答を拒否しています。このような姿勢は、国民から信託を受けた政府の対応としても、訴訟当事者としても許されるべきではありません。

5 原告ら各人の権利侵害はそれぞれ多様です。そして、政府や国会議員の違法行為は、既に原告らそれぞれの権利利益を現実に侵害しています。被告国には、このような訴訟態度を直ちに撤回してきちんと認否反論して証拠を提出するよう求めます。また裁判所には、違憲審査権を行使するにふさわしく、訴訟指揮権を行使されるよう強く求めるものです。
                                        以上
 

原告 池田恵理子

 私は1950年、大空襲で多数の犠牲者を出した東京・江東区に生まれ育ち、高校時代にはベトナム戦争での惨たらしい戦場報道に接して戦争は絶対嫌だと思ってきました。中国に出征した父に戦争体験を聞いても、住民虐殺や強かんには沈黙するだけだったので、「加害兵士の娘である私」を自覚するようにもなりました。1973年にNHKのディレクターになってからは、大空襲や原爆、中国残留孤児など、戦争体験を語り継ぐ番組を数多く作りました。「慰安婦」の番組も1991年から96年までに8本は作りましたが、97年以降は企画が全く通らなくなり、一市民として「慰安婦」被害者や元兵士の証言を記録する活動を始めました。「慰安婦」制度を裁いた2000年の女性国際戦犯法廷には主催団体の一員として取り組み、2010年にNHKを定年退職した後は、日本で唯一の「慰安婦」資料館、アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)の館長となって今に至っています。
 こうした経験から、憲法改正をライフワークと公言する安倍晋三首相が、日本を「普通に戦争ができる国」にしようと強行した安保法制の制定・施行を許すことができません。首相はこの20年余り、「慰安婦」の記録と記憶を抹殺しようと躍起になってきました。これは、戦争と性暴力をなくすために勇気をふるって凄惨な被害体験を語ってくれた女性たちを再び傷つけるものです。

●日本軍は戦争中、アジア各地に慰安所を作りましたが、そのきっかけは日本兵の強かんが頻発した南京大虐殺でした。慰安所は強かん防止と性病予防のため中国各地に設置され、戦域が東南アジアに広がると、現地女性を拉致・監禁・輪かんする「強かん所」も増え続けました。しかし厳しい報道規制によって慰安所の存在は国民には知らされず、敗戦直前には戦犯裁判を恐れた軍上層部が関連文書を焼却させました。兵士たちは「慰安婦」を“戦場の売春婦”と思い込まされ、加害の意識はありませんでした。
 「慰安婦」制度が性奴隷制であり、女性への人権侵害で重大な戦争犯罪だと知られるようになったのは、1991年に韓国の金学順さんが名乗り出てからです。彼女は日本政府が「慰安婦は民間業者が連れ歩いた」と答弁したことに憤り、立ちあがりました。それを機に、韓国、フィリピン、中国、台湾、オランダなど各国の女性が名乗り出て、日本政府に謝罪と賠償を求める裁判を起こしました。これら10件の裁判は最高裁で原告敗訴となりましたが、8件の裁判では事実認定がされています。また審理過程で綿密な聞き取りや資料発掘が行われ、「慰安婦」制度の実態と全貌がわかってきました。
 この事実は国際社会に大きな衝撃を与えます。旧ユーゴやルワンダでの集団強かんが問題となった時代です。1993年の国連の世界人権会議は「女性に対する暴力は人権侵害」と決議し、国連総会では「女性への暴力撤廃宣言」を採択しました。
 対応を迫られた日本政府は「慰安婦」調査を行い、93年には河野官房長官が「慰安婦」の強制を認めてお詫びと反省を発表しました。しかし政府は「法的責任はない」と「賠償」は行わず、国民からの募金で「女性のためのアジア平和国民基金」を推進したので、被害女性からは批判や受け取り拒否が起こりました。

●こうした国内外の動きに危機感をつのらせたのが、歴史修正主義の政治家やメディアでした。彼らは「慰安婦」を“戦場の売春婦”として、90年代後半から激しいバッシングに乗り出します。1997年度版の中学歴史教科書の全てに「慰安婦」が記述されたために教科書会社への攻撃が始まり、やがて教科書から「慰安婦」は削除され、2012年度版では遂にゼロになってしまいました。
 報道現場でも、90年代後半から「慰安婦」報道を抑える動きが強まりました。2000年の「女性法廷」を取り上げたNHKの番組が政治介入による改竄が暴露されて、その一端が明るみに出ました。「女性法廷」は右翼の猛攻撃を受けながら開催されましたが、各国から被害女性64人が参加し、海外メディアは95社、200名が取材に訪れて世界中に報じ、今では現代史に残る出来事となっています。ところが国内での報道は低調で、とりわけNHKが放送した「女性法廷」の番組は異常でした。法廷の起訴状も判決も主催団体もカットされ、出演者のコメントは脈絡なく編集され、「女性法廷」を否定するトーンになっていたのです。あまりのことに主催団体はNHKや制作会社を提訴したところ、その審理中にNHK職員の内部告発によって、安倍晋三官房副長官(当時)ら自民党の政治家たちの介入で、放送直前に番組が改竄されたことが明らかになりました。東京高裁では政治による番組改竄を認めて原告は勝訴、被告NHKらに200万円の賠償支払いを命じました。この事件は報道への政治介入が克明に暴かれた、放送史上稀にみる事件になりました。

●ここまで徹底して「慰安婦」がなきものにされるのは何故か。安倍首相は1993年に国会議員になってから一貫して、あの戦争は「アジア解放の正しい戦争」だったと言っています。しかし女性たちを性奴隷にした「慰安婦」制度は明らかな戦争犯罪であり、「正しい戦争」とは相いれません。そこで「慰安婦」は民間業者が連れ歩いたもので、日本軍に責任はなかったことにしたい…つまり日本軍が犯した加害事実に向き合う勇気がないのです。
 安倍首相は第1次安倍政権の時から「慰安婦の強制の証拠はない」と主張し続け、メディアは政権に同調して「慰安婦」を否定するか、報道を自粛してタブー扱いしてきました。2015年12月末に日韓両政府が「慰安婦」問題は「最終的・不可逆的解決」に達したとする日韓「合意」を発表し、日本のメディアの多くが「一件落着」と報じ、大方の世論もそう受け止めました。ところが、韓国の被害女性も世論も日本とは真逆で、日韓両政府への批判を強めており、この落差は大きくなるばかりです。このような日本国内の世論形成は、安倍首相たちが20年余りかけて「慰安婦」の報道と教育を管理・統制してきた結果だと言えましょう。
 昨年5月末には日本を含むアジア8ヵ国の民間団体がユネスコの世界記憶遺産に「日本軍『慰安婦』の声」の登録を共同申請しました。右派のメディアや日本政府はこの登録を阻止しようと、官「民」一体で取り組んでいます。日本の登録団体の中心にいるwamへの攻撃は激化し、爆破予告の脅迫状まで送られてきました。こうした不穏な動きは、安保法制下での出来事です。「慰安婦」問題を訴える輩は”敵“として攻撃してもいいのだ…と思う者たちがうごめき出したのです。

●安保法案をめぐる国会審議では、「慰安婦」制度に関する国連の勧告も、南スーダンやアフガニスタン、イラクなど紛争下での戦時性暴力についても、何ひとつ取り上げませんでした。私に参考人として意見を述べたり、公聴会で発言する機会を与えてほしかったと痛切に思います。国会審議で戦争遂行の装置だった「慰安婦」問題を議論できず、法案を廃案にできなかったことは、日本人としての戦後責任を果たせなかったという点で、慚愧の念に堪えません。「慰安婦」問題の真の解決を目指してきた被害女性や国内外の女たちの努力を無にすることだからです。
 私はジャーナリストとしての仕事も、「慰安婦」支援や資料館の運営に取り組んできたこれまでの人生も全て否定されたような衝撃と苦痛に襲われています。安保法制は、加害国だった日本がやってはならないことなのです。戦争と性暴力のない世界を築くためにも、違憲である安保法制を何としても廃止しなければなりません。
                                        以上
 

原告 高里鈴代

1 5歳で終戦を迎え、台湾から宮古島へ、そして那覇へ
 私は、現在76歳です。1940年に台湾で生まれました。父は東京農大卒業と同時に、台湾総督府農林省に勤務しました。私の家族は、米軍の爆撃を避けて防空壕で終戦を迎え、終戦の混乱の中をかいくぐって郷里の沖縄・宮古島に引き揚げてきました。そのとき私は5歳でした。
 私が小学校4年生の2学期に父の転職で那覇市に移りました。家庭の経済は、宮古島でそうであったように、那覇でも厳しく、母親の着物は下駄の鼻緒となって売られました。

2 フィリッピン留学が私の人生を決めた
 私は沖縄の短大卒業後、フィリッピン・マニラにあるハリス・メモリアル・大学へ留学しました。そこでの2年間が私の生き方を方向づけました。
 第1は、アジア・太平洋戦争で日本軍がフィリッピンの人々への残忍な戦争行為をした事実とそれが犠牲者に深い痛みをもたらしていたことを、現地の人々の口から繰り返し聞いて知ったことでした。
 もう1つは、クリスマス休暇で訪ねた友人の住んでいる町が、実は米軍基地の町であったことの衝撃でした。友人の町は、沖縄のコザに来ているのかと錯覚するほど、沖縄の基地の街そのものの姿でした。その街は、アジア最大の米海軍スービック基地のオロンガポ市でした。沖縄に基地があるのではなく、基地の一部に沖縄があると強く実感しました。

3 売春防止法の制定が遅れた背景
 本土では、1956年に売春防止法が制定されていたのですが、沖縄にはありませんでした。1967年に、本土で売防法制定のために奔走していた矯風会の高橋喜久江さんが、沖縄での売防法成立の遅れを調査するために、来沖されました。私は高橋さんに同行し、沖縄の現状を学びました。立法院議会へ再三の立法要請がなされても、法律が成立しなかったのには2つ理由がありました。
 第1は、もし、売防法が成立したら、米軍兵士たちの暴力のはけ口は、かつてのようにまた地域社会に戻って来るのではないかという恐れが、議員たち及び地域社会の中に強くあったということでした。軍事支配を背景に、そこでは圧倒的なむき出しの暴力が日常的に存在していたのです。日本の敗戦により、沖縄の女性の身体は米軍兵士たちに文字通り踏み荒らされ続けてきたのです。米兵の容赦ない暴力から一般の人が逃れるために、沖縄に集娼地区が作られたのです。これが廃止されると、それ以前のように米兵が民家に踏み込んだり、歩いている女性を掴まえたりして手当たり次第に強姦をするようになるという心配でした。
 もう一つは、売防法が成立すると、女性たちが米兵から日々稼ぐドルはどこへ行ってしまうのかという心配でした。当時の沖縄の女性たちは、厳しい強制管理売春の中で生きて、沖縄経済を支えるドルをかせいでいたのです。私は、この女性の状況と彼女たちの心身をむさぼりつくすとでもいうしかない売買春の実態に触れて、女性の人権侵害であると強く思いました。

4 ベトナムの狂気は基地の街で
 そのような状況の中で、施行は2年後の復帰時として、1970年には売防法が成立しましたが、その同じ日にもうひとつの決議があります。それは当時前原高校3年の女子生徒がレイプの被害から逃れるために抵抗し体中をナイフで切られ重傷を負う事件を受けてのものです。沖縄は米兵からの暴力を防ぐための集娼地帯のはずだったのですが、実際はそういうものを越えて暴力が起こり続けていたわけです。70年の売防法制定日には、この女子高校生の被害に対する抗議声明が出されたのです。
 ベトナム戦争中、米兵は沖縄から出撃し、休暇になれば沖縄に戻ってきました。ベトナムに送られれば命の保障はないことを米兵たちは知っていましたし、殺戮の現場から戻ってきた兵隊は荒れており、売春女性たちが彼らの不安や怒りなどの受け皿とされていました。
 私は高橋さんに同行しての見聞で、沖縄の女性の問題に深く関わりたいと考え、その後は、まず、売春に関する新聞資料の収集を始め、売防法の問題に関心を持つようになっていきました。

5 婦人相談員に
 私は、婦人相談員の仕事を知って勉強をし直して、1977年4月、東京都婦人相談センターの電話相談員第一号に採用され、女性が女性であるが故に受ける暴力、理不尽な差別扱いなどの相談に携わるようになりました。1981年4月に沖縄へ帰り、1年間、うるま婦人寮(婦人保護施設)でボランティアの後、那覇市の婦人相談員として1982年から7年間働きました。

6 那覇市議会での活動
 私は、1989年、那覇市議会議員へ立候補し当選しました。以後、市議会議員を4期務めました。婦人相談員としての仕事は、女性を人権の回復へ支援する意義ある仕事だと思っていましたが、婦人相談員の仕事と司法の限界を思い知らされ、社会の性差別意識を変えたいという思いから選挙に出ることを決意し、女性たちと共に当選を勝ち取ったのです。

7 北京女性会議へ
 日本への復帰後も米軍の削減はなく、米軍の演習による事故・事件は続き、女性に対する暴力も後を絶ちませんでした。1995年、国連の世界女性会議(北京会議)への参加準備の中で、沖縄は直接の紛争状態の中にあるのではないけれども、戦後から50年にわたり、大規模の米軍が駐留し、人権侵害、生命の危機、暴力が起こり続けており、「長期軍隊駐留下における性暴力」を戦争犯罪として捉えるべきではないかと、「軍隊・その構造的暴力と女性」のワークショップを北京会議の一角で開きました。

8 北京会議の最中に3米兵による少女強姦事件が起こった
 北京会議のさなか、1995年9月に起こった3米兵による少女強姦事件は、復帰後の米軍人の特徴を現した事件です。事件に抗議する県民大会には、沖縄の人々の積年の怒り、痛み、そしてこれ以上の人権侵害を許さないと8万5千人の県民が結集しました。
 この県民大会の会場で、私は、女性たちと一緒に立ち上げた「強姦救援センター・沖縄、REICO」を10月25日に開設するとのチラシを配り続けていました。性暴力相談活動は、今も継続しています。
 同時にその県民大会直後に結成されたのが、女性たちによる「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」です。早速に政府に対して、日米地位協定を北京行動綱領(日本政府は署名しています)の精神に則して改正することを求めました。
 
9 私が原告になった理由・私の被害
 私は、沖縄で米兵による女性の人権侵害をつぶさに近距離でみてきました。沖縄は71年間軍隊の支配下にあります。
 婦人相談員として、あるいは那覇市の市議会議員として、常に女性たちの苦しい現実に寄り添い、解決に力を尽くしてきました。沖縄ではいまも毎日軍隊との共存を強いられているのです。軍隊が女性にとってどのようなものであるかを身に沁みて知りました。
 軍隊の本質は、家父長制に基づく力による支配を強行する組織です。沖縄では特に、米軍人の女性に対するレイプ、絞殺事件は、9ケ月の乳児から5歳の幼児を含めあらゆる年齢に及んでおり、ベトナム戦当時には、年間2~4人の女性が絞殺されました。
 沖縄の戦後71年を軍隊の女性への性暴力、殺害などを通して振り返る中で、その人権侵害性を声を大にして訴えます。軍隊の駐留によってもたらされる暴力、それによって傷つき、苦しむ女性たちの存在、その回復支援に取り組んできた者として、訴えます。
 私は、少しでも性差別のない、暴力のない社会を作ろうと働いてきました。沈黙を強いられている女性たちと共に、暴力の元凶である米軍の撤退、削減を求め、声を上げてきました。しかし、安保法制法は、その全く真逆なところにあり、私の、私たちの声を完全にかき消すものです。戦後71年経って、再び振り出しに押し戻されたような屈辱感と怒りを強く感じます。私は、安保法制法の撤回を求めます。
                                        以上
 

原告ら代理人 弁護士 角田由紀子

1 戦争被害の現在性
 日本において、戦争が一般の人々に与えた被害の悲惨な事実は、アジア・太平洋戦争の時期を通じて、多くの人々の体験の中に刻印されています。女性や子どもはその被害の中心にありましたが、今日に至るも被害は癒されることなく、人々の心身の深いところで存在し続けております。今回の安全保障法制は、それらの深い傷を呼び起し、再体験を迫るものです。安全保障法制の制定過程そのものが、女性の存在を無視し、女性の声に一度たりとも耳を傾けることなく、文字通り、暴力的なものでした。その内容と制定過程に直面して、原告たちは、深い苦痛と不安に曝されています。その苦痛や不安は、漠たるものではなく、現実に女性たちの心身に深い打撃を与えるものです。

2 戦争と女性の性的被害について
 戦争がその本質において、女性への性的加害行為を伴うものであることは、過去世界中の様々な戦争で、十二分に証明されております。そのことは、沖縄では戦争中に始まり敗戦後から今日まで、常に現在進行形であり、どれだけ多くの女性が命を奪われ、人としての尊厳を奪われたかを、特に注目しなければなりません。この事実は、私たちに戦争と女性の関係の本質をはっきりと示すものです。
 日本軍「性奴隷制」の問題の真摯な解決を置き去りにした政権による安全保障法制に、原告たちは「安全保障」という言葉とは裏腹に極めて大きな危険を感じております。安全保障法制は、次の戦争を確実に準備するものとして、目に見える形であるいは見えない形で、既に女性たちの生活の安全を脅かしております。原告たちの多くは、女性への性暴力を含む暴力と闘ってきております。この社会を女性や子どもなど権力を持たない人々にとってできるだけ安全なものにしたいと、日々努力をしてきました。それが、戦争という究極の暴力を肯定する法制がとられたことで、これまでの努力が根こそぎ否定されてしまいました。それは、そのことに力を尽くしてきた原告たちの生き方そのものの否定であります。原告たちの努力を支えてきた根幹にあるのは、日本国憲法です。
 憲法の平和主義、個人の尊重などを明確に否定する今回の法制は、原告たちから将来への希望を奪い、打ちのめしました。言うまでもないことですが、女性への暴力の加害者の多くは、男性であり、男性のそのような暴力にいわば「お墨付き」を与えるのが、今回の法制です。その法制は、昨年3月29日に施行され、昨年11月から南スーダンに派遣されている自衛隊には、武力行使を容認する新任務が与えられました。南スーダンでは、性暴力が頻繁に起きていることは、新聞等で報道されており、国民の多くが知っております。このことは、国内での女性の安全に大きく悪影響を与えるものといわざるを得ません。
 いかに近代化された戦争であっても、戦争はそれに従事する人間を必要とします。かつての戦争の時代に国を挙げて「産めよ増やせよ」がとなえられ、その実現が強要されました。病弱な女性が子どもを産むことに耐えられず、堕胎をした例がありましたが、その女性は堕胎罪で逮捕されました。堕胎罪は、今でも刑法に規定されており、戦争に向かう社会が、女性の性にどのように敵対的であるかの例です。少子化対策という言葉でさまざまに行われている政策は、「産めよ増やせよ」政策と無関係ではありません。

3 個人としての女性の否定
 戦争とそれに伴う戦時性暴力の基盤になっているのは、日常生活の隅々までを支配している家父長制です。今日では「家父長制」という言葉が使われることは少なくなりましたが、社会の仕組みとしてのそれは生き続けております。
 家父長制の仕組みがむき出しであった社会において、憲法は女性に人間解放をもたらしました。戦争肯定社会は、憲法が女性にもたらした個人としての権利を否定するものです。多くの原告たちは、憲法13条、14条及び24条等によって保障された人権をしっかりと手にして戦後の人生を築いてきました。戦前には閉ざされていた多くの場所で女性たちは、羽ばたいてきたのです。もちろん、彼女たちの生き方の骨格は憲法です。しかし、安全保障法制は、それらを否定するものです。原告たちが体験させられた苦痛や恐怖や不安は、彼女たちが生きることの根幹にかかわるものです。
 ある原告は、教育者や研究者として、憲法に導かれて新しい社会を作ることに尽力してきました。ある原告は、政治家として国会等で奮闘してきましたが、安保法制法は、女性政治家からその本来の活動の場を奪い、大きな被害を与えました。ジャーナリストや公務員等の原告たちも、その自由な活動を制約されたり、不本意な活動を強制される危機に瀕しており、これらの原告たちが具体的に受けた苦痛に対して、被告が損害賠償をするべきであります。原告たちが現に被っている被害及び損害が正当に償われるべきです。そのために、司法が憲法によって付与されている責務を果たさねばなりません。
 私は原告の女性たちが、既に被っている被害について、その一部を指摘しました。詳細は、今後原告本人尋問等で立証する予定です。 
                                        以上
 

(弁護士・金原徹雄のブログから)
2016年9月3日
東京・安保法制違憲訴訟(国賠請求)が始まりました(2016年9月2日)
※過去の安保法制違憲訴訟関連のブログ記事にリンクしています。
2016年9月6日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(1)~東京・国家賠償請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告訴訟代理人による意見陳述
2016年9月10日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(2)~東京・国家賠償請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告による意見陳述
2016年10月4日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(3)~東京・差止請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告訴訟代理人による意見陳述
2016年10月5日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(4)~東京・差止請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告による意見陳述

2016年12月9日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(5)~東京・国家賠償請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告代理人による意見陳述

2016年12月10日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(6)~東京・国家賠償請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告による意見陳述

2017年1月5日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(7)~寺井一弘弁護士(長崎国賠訴訟)と吉岡康祐弁護士(岡山国賠訴訟)の第1回口頭弁論における意見陳述

2017年1月7日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(8)~東京・差止請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告訴訟代理人による陳述
2017年1月8日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(9)~東京・差止請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告(田中煕巳さんと小倉志郎さん)による意見陳述


(付録)
「女の平和」1.17国会ヒューマンチェーンのテーマ~弱いものいじめをするな
 

予告・田中優氏講演会「健全な農地と地球環境を未来につなぐ~奇跡の黒い土「テラ・プレタ」をヒントに」2/22@和歌山市

 今晩(2017年月13日)配信した「メルマガ金原No.2722」を転載します。

予告・田中優氏講演会「健全な農地と地球環境を未来につなぐ~奇跡の黒い土「テラ・プレタ」をヒントに」2/22@和歌山市

 巻末リストのとおり、メルマガ(ブログ)でたびたび取り上げてきた田中優さんですが、何故かかけ違って一度も直接お話を伺ったことがなかったのですが、来週、ようやくその講演をうかがえるようです。
 来る2月22日(水)、JR和歌山駅前のJAビル2階「和(なごみ)ホール」において、NPO法人和歌山有機認証協会が総会を開いた後の午後7時から、田中優さんの講演会が開かれるとのご案内(チラシ同封)が、共催団体の1つであるNPO法人わかやま環境ネットワークから届きました。
 聴講するためには事前申込が必要なので、早速、申込先である和歌山有機認証協会に電話して参加を申し込みましたが、まだ申込み可能ということでしたので、今日のメルマガ(ブログ)でご案内することとしました。
 
 田中優さんは、チラシ記載の紹介文に書かれているとおり、様々な分野で活躍されていますが、巻末リストのとおり、私はそのうちの、電力会社に頼らない「オフグリッド生活」の実践者・先駆者としての田中優さんに特に注目してきました。
 22日の講演のテーマは、「健全な農地と地球環境を未来につなぐ~奇跡の黒い土「テラ・プレタ」をヒントに」というもので、「オフグリッド」とは直接の関係はありません。何しろ、和歌山有機認証協会の総会終了後に行う講演会ですからね。
 けれども、「健全な農地」も「オフグリッド」も、地球環境という大きなくくりの中ではもちろん密接な関連がある訳で、多くの方に参加をお勧めしたい講演会です。
 以下に、チラシ記載情報を転記します。

チラシ文字情報から引用開始)
チラシ表面-
~健全な農地と地球環境を未来につなぐ~
奇跡の黒い土
「テラ・プレタ」をヒントに

講師 田中 優
    環境・経済・平和をキーワードに活動する実践的リーダー
日時 2017年2月22日(水)19:00~21:00
場所 JAビル2F 和(なごみ)ホールAB
    (JR和歌山駅徒歩2分:和歌山市美園町5-1-1)
参加費 無料
申込 要事前申込
    和歌山有機認証協会
TEL 073-499-4736
FAX 073-499-4735
Mail 
woca@vaw.ne.jp

奇跡の黒い土「テラ・プレタ」
それは、遙か昔南米アマゾン流域で作物を作っていた痕跡。近年、各分野において、古いモノから新しいコトが発見される事例が相次いでいますが、「テラ・プレタ」もそのひとつ。
多くの農家さんの関心事である「理想の土づくり」と、現代を生きるわたしたち全員に関わる「地球温暖化」、この2つの課題解決になる大きなヒントがあるようです。

主催:NPO法人 和歌山有機認証協会・NPO法人 わかやま環境ネットワーク(WeNET)・和歌山県地球温暖化防止活動推進センター
協力:サスティナブルライフスタイル研究会ofわかやま(SLOW)・NPO法人 市民の力わかやま・サ行研究所

チラシ裏面-
持続可能な社会を目指したい人、
農家さん、炭焼き職人さん、地主さん
山主さん、食・農・環境関連の行政さん、
温暖化防止活動推進員さん、お越しください。

講演会後の懇親会

予約が必要となります。お名前、ご連絡先を明記のうえ、下記までお送りください。場所は、和歌山駅東口近くです。定員20名(〆切は、定員に達し次第)
FAX  073-499-4735
e-mail
 
woca@vaw.ne.jp

18:15より同会場にて、第18回 和歌山有機認証協会通常総会を開催します。OPEN形式ですので、どなたでもお気楽にご来場ください。

田中優さんプロフィール

1957年東京都生まれ。
地域での脱原発やリサイクルの運動を出発点に、環境、経済、平和などの、さまざまなNGO活動に関わる。2012年末に岡山に移住。
2013年5月、自宅では電力会社との電線をカットし電力会社に頼らない太陽パネルと独立電源システムの生活、「オフグリッド生活」を始めた。
現在「未来バンク事業組合」「天然住宅バンク」理事長、「日本国際ボランティアセンター」理事、「ap bank」監事、「一般社団法人 天然住宅」共同代表、「自エネ組」相談役を務める。横浜市立大学、恵泉女学園大学の非常勤講師。
公式HP 田中優の持続する志
http://www.tanakayu.com/

著書

『未来のあたりまえシリーズ1-電気は自給があたりまえオフグリッドで原発のいらない暮らしへ-』合同出版、『放射能下の日本で暮らすには?食の安全対策から、がれき処理問題まで』筑摩書房、『子どもたちの未来を創るエネルギー』子どもの未来社、『シリーズいますぐ考えよう!未来につなぐ資源・環境・エネルギー①~③』岩崎書店、『地宝論』子どもの未来社、『原発に頼らない社会へ』武田ランダムハウス、『幸せを届けるボランティア 不幸を招くボランティア』河出書房新社、『環境教育 善意の落とし穴』大月書店、『おカネが変われば世界が変わる』コモンズ、『今すぐ考えよう地球温暖化1~3』岩崎書店、子ども向け→『世界から貧しさをなくす30の方法』合同出版、『おカネで世界を変える30の方法』合同出版、『天然住宅から社会を変える30の方法』合同出版、『地球温暖化/人類滅亡のシナリオは回避できるか』扶桑社新書、『戦争って環境問題と関係ないと思ってた』岩波書店、『非戦』幻冬舎(以上、共著含む)
ほか多数!!
 
田中優さんのスゴイところ!
データ収集力
高い分析力
豊かな発想力
発想を形にする行動力
ネットワーク構築力
聴く人に希望を与える滑らかな話術
幅広い人に分かり易く伝える文章力

会員随時募集しています!
主催者連絡先
NPO法人 和歌山有機認証協会
 〒641-0014 和歌山市毛見996-2
 TEL:073-499-4736
e-mail:
woca@vaw.ne.jp
NPO法人 わかやま環境ネットワーク
(和歌山県地球温暖化防止活動推進センター) 
 〒641-0014 和歌山市毛見996-2
 TEL:073-499-4734
e-mail:
wenet@vaw.ne.jp
(引用終わり)

 なお、私のところに封書で届いた講演会の案内文書には、主催3団体(といっても、事務所は同じところにありますが)の紹介文が掲載されていましたので、ご参考までに、これも転記します。

(引用開始)
~主催団体について~
NPO法人 和歌山有機認証協会(理事長:小林民憲)
 エネルギーと食料の地域自給をめざして活動していた市民団体「和歌山環境ネットワーク」(現・わかやま環境ネットワーク(WeNET)の前身)を母胎として、2000年1月設立、JAS法改定を県内農業の発展に生かそうと、同年10月、登録認定機関として農林水産大臣の認可を受け、以来、認証事業を通じて生産と消費を信頼という絆で結ぶ活動を続けてきた。
 〒641-0014 和歌山市毛見996-2
 TEL:073-499-4736 FAX:073-499-4735
 URL:
http://woca.jpn.org/w/

NPO法人 わかやま環境ネットワーク(代表理事:中島敦司)
 地球規模の環境危機を乗り越えるため、エネルギーと食料を自給できる地域作りをめざし1998年設立。2005年7月NPO法人格取得、同年9月和歌山県地球温暖化防止活動推進センター指定。現在約60の団体や企業が参加し、地球温暖化、生物多様性、循環型社会、環境保全型農業など、環境全般に関する地域の協働の軸として活動している。
 〒641-0014 和歌山市毛見996-2
 TEL:073-499-4734 FAX:073-499-4735
 URL:
http://wenet.info/

和歌山県地球温暖化防止活動推進センター
 地域内で地球温暖化対策に関する普及啓発を行うこと等により地球温暖化の防止に寄与する活動の促進を図ることを目的に、「地球温暖化対策の推進に関する法律」(平成10年10月9日法律第117号・温対法)第24条に基づき地道府県知事等が、地域内で1団体を指定する。和歌山県は2005年7月にNPOわかやま環境ネットワークを指定。
(引用終わり)

 ところで、講演会のテーマである「テラ・プレタ」って何?という方が(私を含めて)大半であろうと思いますが、田中優さんの無料メルマガの記事が優さんのブログに転載されていましたので、その一部をご紹介しておきます。
 なお、さらに詳しい情報は、「田中優有料・活動支援版メルマガ」に掲載されているそうです。

田中優の持続する志(ブログ) 2017年2月10日
『荒野の知性』~アマゾン奇跡の黒い土「テラ・プレタ」~(2016.11.29発行 田中優無料メルマガより)
(抜粋引用開始)
■奇跡の「テラ・プレタ(黒い土)」
 ところがそのアマゾンに、「テラプレタ(黒い土)」と呼ばれる不思議な土が見つかった。最初は日系移民ぐらいしか注目しなかったものだが、連作障害を起こさず、何度も豊かな作物を収穫でき、過酷な熱帯の条件の中でも劣化していかない土なのだ。この「奇跡の土」は一体何なのか。
 西暦2002年になって、ある研究者が発表した。「テラプレタは人が作り出したもので、6000年、あるいはもっと以前から作られていたものだ」と。それは大きな衝撃だった。アマゾンの過酷な気象の中で、誰も手入れしないままに数千年の時を経て、未だに豊かな養分を維持していたのだ。
 そのテラプレタは、ゴミ捨て場のようなものだったと考える人もいる。土に200度程度の低温で焼いた未熟な炭と、炭を作るときに取れる木酢液を混ぜ、骨や陶器の破片、排泄物などが混ぜられたものだったからだ。しかしその考えもまた、かつて住んでいたアマゾンの人々を見くびった考えかもしれない。今、同様の土を作ろうと実験されているが成功しないのだ。大地から養分を集めて、維持される土を作るのは簡単ではない上、数千年も耐えるかどうかは年数を経ないと実証できないからだ。
 しかも驚かされるのはテラプレタの分布する広さだ。集めるとイギリス二つ分、フランス一国分の面積に匹敵するのだ。これだけの広さがあれば多くの人を養い、都市を形成するほどの収穫量も得られる。今では「エルドラドは実在したかもしれない」と考えられている。あまりにも多くの陶器片や埋蔵物は、点在する集落で使うには多すぎるのだ。
(略)
 ところがテラプレタの炭素吸収量は、これまで考えられていた「炭素吸収農法」よりけた外れに大きいのだ。実にその5倍から20倍も吸収できる。もし炭素源が足りるなら、たった1年で解決できてしまうのだ。
 そもそも炭は、人間が作ることのできる唯一の化石燃料だ。木材の8割の炭素を炭の中に固定し、燃やさない限りそのまま固定することができる。多孔質の空隙は微生物のマンションとなり、微生物は土壌から溶け出した微量元素を貯め混んでいく。
 そのおかげで長年経っても肥沃さが失われないのだと考えられている。この炭の技術では日本は群を抜いている。しかしその日本の技術もまた洗練されすぎたのかもしれない。白炭と呼ばれる高温で焼いた炭と、黒炭と呼ばれる中温の炭はあるが、200度という低温で焼く「半生の炭」などはない。
 私たちは、そろそろ「科学技術が高度に発達した現在が最も優れている」と思い込みを捨ててはどうだろうか。「科学の知性」はさまざまなものの説明には役立し、それぞれの原因を調べるには必要不可欠だ。しかし、それが新たなものを作るわけではない。新たな方策はいつも長年の「経験知」が作り上げている。
 これを荒野の知性と呼んだとすると、今新たに生まれつつある方策は荒野の知性が作っているではないか。
 第七の栄養素と呼ばれる「ファイトケミカル」にしても、ずっと生活の中に生かされてきた調理法はそれを活かしきっている方法だし、「乳酸菌」と呼ばれるまでもなく漬物などたくさんの利用がなされてきた。
 私たちの「科学的慢心」は、もう捨てたらどうだろうか。新たな知性は荒野から生まれる。それを学ぶことで、もしかしたら地球人は温暖化防止の方策を得られるかもしれない。しかしそれは科学が見出したものではない。荒野の知性を科学が説明したに過ぎないのだ。
-☆---★-より詳しくは田中優有料・活動支援版メルマガをご覧ください。-☆---★

(引用終わり)

(弁護士・金原徹雄のブログから)
2013年2月24日
再生可能エネルギー固定価格買取制度と「オフグリッド」生活

2013年7月28日
「女性自身」のレポートと映像で知る田中優さんの“オフグリッド生活”
2013年10月5日

木村俊雄氏が語る“メルトダウンの真実“、田中優氏と語る“エネルギーの自給自足”
2014年6月22日
田中優さんが先導する“静かな革命”
2014年10月12日
再生可能エネルギー固定価格買い取り制度の曲がり角から考える「オフグリッド生活」~田中優さん宅取材動画を視る
2014年12月20日 
「日刊SPA!」で読む“オフグリッド生活”の新展開
2016年4月10日
電力自由化とオフグリッドの未来~田中優さんの無料メルマガを読む

田中優・奇跡の黒い土(表)田中優・奇跡の黒い土(裏) 

和歌山・演劇大学リーディング公演『空の村号』(3月4日・5日@和歌の浦アート・キューブ/演出・加納朋之)のご案内

 今晩(2017年2月12日)配信した「メルマガ金原No.2721」を転載します。

和歌山・演劇大学リーディング公演『空の村号』(3月4日・5日@和歌の浦アート・キューブ/演出・加納朋之)のご案内

 今年の和歌山「演劇大学」公演を知らせるチラシを偶然入手しました。正直言って、私は演劇の良き鑑賞者では全然ありませんし、「演劇大学」の発表公演を観たことも一度もありません。
 それにもかかわらず、偶然貰った1枚のチラシをじっくりと読み通し、その上、メルマガ(ブログ)で紹介までしようと思い立ったのは、劇の内容に引かれてのことに違いありません。
 興味深いテーマを取り上げているということが、その劇の質を保証するものでないことは言うまでもありませんが、何かしらのインスピレーションに導かれるまま、この「空の村号」リーディング公演をご紹介することとしました。
 このお知らせをきっかけに鑑賞し、「素晴らしかった」と言ってくださる方が1人でもおられれば良いのですが。

 以下に、チラシ記載情報を転記してご紹介しますが、その前に1つだけ補足を。
 それは「リーディング公演って何だ?」ということについてです。何より、私自身がそういう疑問を抱いてネット検索を試みたところ、「リーディング=朗読」と説明するサイトもあれば(Wikipediaほか)、明確に違うと主張するサイトもあったりします。以下には、後者の立場で「リーディング公演」を説明したブログに2つほどリンクしておきます。
 

チラシ文字情報から引用開始)
チラシ表面-
演劇大学 リーディング公演

脚本・篠原久美子 構成/演出・加納朋之(文学座) 制作・佐藤尚子(青年劇場)
出演・和歌山演劇大学受講生

平成29年
3月4日(土)14:00開演 / 17:00開演
3月5日(日)11:00開演 / 14:00開演

会場:和歌の浦アート・キューブ キューブA 地図

空の村号

この村の一番高い山の上に鯉のぼりの旗を掲げて、
  この村が、村ごと空に浮かび上がって、
 放射能も汚染もなにも届かない、どこかの青い青い空を、
どこまでも飛んでいく絵が見えた。
          宇宙海賊船・空の村号だ!

一般/1,500円
小中高生/1,000円
全席自由(当日各200円増)
(開場は開演の30分前です)

主催/公益財団法人和歌山市文化スポーツ振興財団・和歌山市芸術創造発信フェスティバル実行委員会
後援/(株)テレビ和歌山・(株)和歌山放送・ニュース和歌山(株)・(株)和歌山リビング新聞社・(株)和歌山新報社・(有)アガサス

チラシ裏面-
演劇大学 リーディング公演
 
空の村号

福島の美しい山里に暮らす酪農一家の長男、空(そら)は小学5年生。
畑仕事や牛の世話にいまいち気乗りしないアニメ好きの少年は、将来、映画監督になることを夢想している。そんな空のことを暖かく見守る家族や村の人たち。
のどかな当たり前の日常がいつまでも続くはずだった。けれどあの日。
2011年3月11日午後2時46分、東日本を未曾有の激震が襲った。
原発事故による目に見えない放射能汚染のために変わっていく村や家族を前にして、
空はホームビデオで映画を撮ることを思い立つ。タイトルは「宇宙海賊船・空号の冒険」。現実に抗うかのように「本当のことはひとつもない」夢と希望に溢れたファンタジーを作ろうとするのだが・・・。
時が経てばまるで何も無かったかのようにいろんなことが忘れられていく。
けれど、決して忘れてはいけないこともあるのだ。
子どもたちの目を通して描かれる、可笑しくて切ない物語。
子どもから大人まであらゆる世代の方に楽しんでいただける作品です。

脚本・篠原久美子
構成/演出・加納朋之(文学座)
製作・佐藤尚子(青年劇場)
演出協力・岡崎義章(劇団ノスタルジア)
宣伝美術・北出千佳(劇団ノスタルジア)

出演
 今西 勇、宇都宮喜久子、熊本 緑、小切伊知子、杉末紀代美、對馬亜矢子、中西裕子、堀  颯、宮本英和、山下夢乃、岡崎義章、川崎ゆかり
特別出演
 加納朋之
ピアノ演奏
 川瀬名帆子

演劇大学とは
和歌山における演劇文化のレベル向上を目的として、東京からプロの演出家、俳優を招き、地域の学生や社会人を対象に演劇の基礎を学ぶワークショップを開催しています。
平成19年から始まったこの散り組みは今年で10年目を迎え、その成果を発表する公演は好評をいただいています。
9作品目となる今回は、初のリーディング公演にチャレンジします。ご期待ください。

ACCESS
バス 和歌山市駅かJR和歌山駅より「新和歌浦」行き「不老橋」下車
お車のお客様は、方男波公園有料駐車場をご利用ください(1日400円)

入場券販売場所
和歌山市民会館  073-432-1212
和歌の浦アート・キューブ  073-445-1188
中央コミュニティ・センター  073-402-2678
河南コミュニティ・センター  073-477-6522
河西コミュニティ・センター  073-480-1171
河北コミュニティ・センター  073-480-3610
東部コミュニティ・センター  073-475-0020
北コミュニティ・センター  073-464-3031

お問い合わせ:和歌山市民会館内和歌山市芸術創造発信フェスティバル実行委員会【演劇大学】係 TEL:073-432-1212
引用終わり)

 最後に、「空の村号」の練習風景が2つ(2013年・大阪公演、2016年・川崎市公演)YouTubeにアップされていましたのでご紹介します。

空の村号練習風景20130428(大阪・2分50秒)

0903空の村号練習風景(川崎・0分48秒)


空の村号(表)空の村号(裏)
 

杉尾秀哉参議院議員と中野晃一氏が語る長野の闘いと野党共闘の今後(2017年2月7日@東京)

 今晩(2017年2月11日)配信した「メルマガ金原No.2720」を転載します。

杉尾秀哉参議院議員と中野晃一氏が語る長野の闘いと野党共闘の今後(2017年2月7日@東京)

 ちょうど1週間前の2月4日(土)、参議院議員の森ゆうこ氏(自由党)を和歌山にお招きし、昨年の「新潟選挙でのたたかい」を熱く語っていただいたばかりですが、今日は、2月7日(火)に、マスコミ
9条の会と日本ジャーナリスト会議が共催した「現代の「市民革命」でアベ政治のペテンにとどめを。」(※チラシに、昨年の参議院長野県選挙区で野党統一候補として見事議席を勝ち取った元TBSニュースキャスターの杉尾秀哉さん(民進党)がゲストとして招かれ、「長野でのたたかい」について語っておられる動画(2種類)がありましたので、これをご紹介することとしました。
 
自由メディアFmATVch 現代の「市民革命」で安アベ政治のペテンにとどめを(2時間06分)

3分~ 杉尾秀哉氏(参議院議員、元TBSニュースキャスター)
56分~ 中野晃一氏(上智大学教授)vs杉尾秀哉氏
 57分~ 中野晃一氏
 1時間22分~ 中野氏と杉尾氏の対談
 
20170207 UPLAN 杉尾秀哉・中野晃一「現代の市民革命でアベ政治のペテンにとどめを」(2時間07分)


 第2部では、「市民連合」呼びかけ人である中野晃一さんから、まず25分ほど、「野党共闘」に至る道程が回顧されており、この部分は頭の整理に役立ちます。そして、第2部の後半、中野さんと杉尾さん
から、それぞれ今後の展望が語られます。
 これを視聴する人たちは、それぞれ自分の地元の状況に引き直しながら、肯いたり、これは無理だなとつぶやいたり、色々あるでしょうが、参考となることが多い動画だと思います。

 最後にお知らせを(主に和歌山の方にですが)一つ。
 今回ご紹介した企画に出演されていた中野晃一さんを、青年法律家協会和歌山支部が、今年の「憲法記念の夕」の講師としてお招きすることになりました。4月28日(金)午後6時から、和歌山県民文化会館小ホール(入場無料)です。是非、今から日程をご予定ください。

海渡雄一弁護士with福島みずほ議員による新春(1/8)共謀罪レクチャーを視聴する

 今晩(2017年2月10日)配信した「メルマガ金原No.2719」を転載します。

海渡雄一弁護士with福島みずほ議員による新春(1/8)共謀罪レクチャーを視聴する

 共謀罪シリーズ、昨日1日休んで今日お送りするのが第4回となります。今日は、海渡雄一弁護士(日本弁護士連合会共謀罪対策本部副本部長)によるレクチャー動画(お相手はパートナーの福島みずほ参議院議員・弁護士)とパワポ資料をご紹介します。
 これは、今年の1月8日、福島みずほさんのFacebookタイムラインで配信されたライブ動画とその時使われた資料です。動画では、海渡弁護士の解説に合わせて福島みずほさんが、紙芝居さながら、1枚1枚カメラの前で資料をめくっていますが、後日、資料をPDFファイルにしたものがネットにアップされています

 以下に、2本に分かれた動画と併せ、資料の中からその項目(一部は本文も)を抜き出して転記してお
きますので、視聴の参考にしてください。
 ただし、残念ながら音声レベルがいささか低いため、聴き取りにくいと思いますが、資料のPDFファイルにざっと目を通した上で視聴すれば、ほぼ聴き取れるだろうと思いますし、この資料「テロ等組織犯罪準備罪と名を変えた共謀罪法案の国会提出に反対する!」自体、共謀罪早分かりレジュメとなっていますので、大いに活用できるだろうと思います。
 
政府は2017年通常国会に法案提出を予定している
1.共謀罪法案の危険性
共謀罪法案とは
2003年旧政府案の定めていた共謀罪の成立要件
共謀が処罰されることの意味
日本の刑法の原則
重大犯罪すべての共謀罪処罰は国内法の原則に反するとしていた政府
イギリス・アメリカの共謀罪
我々はなぜ共謀罪に反対してきたのか
・伝統的に犯罪とは,人の生命,身体,財産などの法益が侵害され,被害が発生することと考えられてきた。そして,法益の侵害又はその危険性が生じて初めて事後的に国家権力が発動するというシステムが,
近代的で自由主義的な刑事司法制度の基本であるとされてきた。
・刑事法が「悪い意思」を処罰するのではなく,法益侵害の現実的危険性がある「行為」を処罰する法益
保護主義に基づくものである。
・犯罪構成要件に当たるような行為をしない限り、人は処罰されることはない。犯罪構成要件は、国家が
刑事司法を通じて市民社会に介入するときの境界線を画すものといえる。
・人は,様々な悪い考えを心に抱き,口にもすることがあるかもしれない。しかし,大多数の人は,自ら
の良心や倫理感から,これを実行に移すことはなく,悪いことを考えとしても、実行しなければ処罰しな
いことが、社会の健全な秩序となってきた。
犯罪の手前で思いとどまり引き返してくる黄金の橋を焼き捨ててよいのか
・我が国の刑事法体系では,実行に着手した犯罪であっても,自らの意思で中止すれば,中止未遂として
刑を減免してきたし,犯罪実行の着手前に放棄された犯罪の意図は,原則として犯罪とはみなされなかっ
たのである。
・1999年1月の国連条約起草会合に日本政府が提出した提案ペーパーには,次のように述べていた。「5.(前略)このように,すべての重大犯罪の共謀と準備の行為を犯罪化することは我々の法原則と両立しない。さらに,我々の法制度は具体的な犯罪への関与と無関係に,一定の犯罪集団への参加そのものを犯
罪化する如何なる規定も持っていない。」(A/AC.254/5/Add.3)。
・ところが,条約起草後に政府が策定した政府案では,長期4年以上の刑を定める600以上の犯罪について共謀罪を新設するものとなった。この中には,組織犯罪との関連が疑わしく,未遂犯も処罰対象とな
っていない犯罪が数多く含まれている。
盗聴捜査の大幅な拡大を招く危険
・人と人とが犯罪を遂行する合意をしたかどうかや,その合意の内容が実際に犯罪に向けられたものか,
実行を伴わない口先だけのものかどうかの判断は,犯罪の実行が着手されていない段階では,事柄の性質か
らして極めて困難である。
・そして,検挙しようとする捜査機関の恣意的な判断を容れる余地がある。また,共謀罪は人と人との意思の合致によって成立する。したがって,その捜査は,会話,電話,メールなど人の意思を表明する手段を収集することとなる。そのため,捜査機関の恣意的な検挙が行われたり,日常的に市民のプライバシーに立ち入って監視したりするような捜査がなされるようになる可能性があり,市民の人権に及ぼす影響が
計り知れないものがある。
・既に産経新聞は8月31日の「主張」において、「(共謀罪)法案の創設だけでは効力を十分に発揮することはできない。刑事司法改革で導入された司法取引や対象罪種が拡大された通信傍受の対象にも共謀
罪を加えるべきだ。テロを防ぐための、あらゆる手立てを検討してほしい。」とまで述べている。
監視する者は支配者 監視される者は被支配者 その関係は権力関係
密告を奨励する 自首の必要的減免も復活
 
隣組は戦争に非協力的な者を密告し、排除するシステムでもあった
秘密保護法には既に共謀罪が導入されている
国会議員の選挙事務所が警察の監視下に
・2016年7月の参議院選挙で、大分の野党統一候補と社民党党首の選挙拠点である平和運動センター
事務所の出入りを監視するため、警察が監視カメラを設置していたことが判明。
・ 実行警官らは書類送検されたが、建造物侵入容疑。
・警察は選挙違反の摘発目的としているが、与党の選挙事務所には、このような監視はなされておらず、合理的な説明といえない。このような捜査手法は不適切としつつ、指示した警察官などの処分も見送られ
ている。
監視社会と民主主義
・政府は、憲法の改正を国会に提起しようとしている。
・既に安全保障法制が制定され、国際紛争が武力紛争化する危険性が高まっている。
・秘密保護法によって、武力行使の根拠となる政府の情報が秘密とされ、メディア・市民による表現の自
由が制約されている。
・共謀罪や盗聴捜査の拡大は監視社会を生み出し、市民は萎縮し、内部告発も困難となる。
・市民が、国の内実を知ることができず、監視を恐れて沈黙する社会では、民主主義は崩壊してしまう。
どんな行為が取り締まりの対象に?
こんな行為まで処罰が可能に
2.条約批准のために共謀罪制定は不可欠なのか?
条約批准前に国内法をどこまで整備するか
テロと組織犯罪を防ぐには
条約は各国の国内法原則の尊重を認めている
日本の組織犯罪対策とテロ対策
秘密保護法×共謀罪×盗聴拡大は民主主義の死
・秘密保護法と共謀罪、そして盗聴の拡大は、セットとなって、監視社会をもたらし、市民の知る権利を
侵害して、ひいては、民主主義的な政治プロセスの崩壊を招きかねない。
・政府は、10年前に成立させられなかった修正案よりも、さらに後退した法案を出してこようとしてい
る。私たちは、共謀罪法案の国会への提出に強く反対しなければならない。
 

(参考冊子)
 上記の海渡弁護士作成資料の冒頭で紹介されている48ページの小冊子『一(いち)からわかる共謀罪 話し合うことが罪になる』(2017年1月発行/頒価200円)が、今日の午前中に、私の事務所に
1冊届いていました。
 届けてくださったのは、3月3日(金)午後6時30分から、和歌山市勤労者総合センター6階文化ホールで開かれる学習会「共謀罪とは何か?その狙いとは」(主催:和歌山県平和フォーラム、戦争をさせない和歌山委員会)の講師を私に依頼するという大胆な(!?)決断をしたFさんでした。ありがとうご
ざいました。
 ところで、3月3日の学習会ではこの冊子を参加者に配ってくれるということなので、「これでレジュメを書かずにすむ」と私は一安心しているのです。それというのも、上記冊子の4頁~11頁に、海渡雄一さんが書かれた「共謀罪って何?自由を奪う監視社会の到来」という論考が掲載されているからで、いわば、これがレジュメのようなものなので、私がこれに上塗りするような拙いレジュメを書いても仕方がないでしょ
うから(と、一応今のところは考えています)。
 ところで、私は、この『一(いち)からわかる共謀罪 話し合うことが罪になる』という冊子では、海渡弁護士の論考と並んで、その奥書にも注目しました。特にそこに記載された「■編集・発行」者の表記
にです。書き写してみます。
 
一(いち)からわかる共謀罪 話し合うことが罪になる  頒価200円
■編集・発行
「秘密保護法」廃止へ!実行委員会(平和フォーラム 新聞労連 ほか)
解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会(許すな!憲法改悪・市民連絡会 憲法会議)
盗聴法廃止ネットワーク(盗聴法に反対する市民連絡会 日本国民救援会)
■連絡先
日本消費者連盟

 編集・発行に名前を連ねた団体の枠組というのは、安保法制に反対する「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」の共謀罪版のようなものですよね?ということは、共謀罪反対の闘いでも、総がかり行動での共闘の経験や成果が活かされようとしているのだと勇気づけられたのです
(後述の1月20日院内集会もこの流れですね)。
 ということで、私が何を言いたいかというと、3月3日の学習会に、平和フォーラム系の労組員の方た
ちだけではなく、様々な立場の方にご参加いただけると嬉しいなということです(『一(いち)からわかる共謀罪 話し合うことが罪になる』も貰えるようだし)。

(参考動画)
 今日のメインは海渡雄一弁護士による共謀罪についてのレクチャー動画のご紹介ですが、福島みずほさんとの掛け合いは面白くてためになるとはいえ、もう少し音声レベルの聴き取りやすい動画を見たいですよね?ということで探してみました。

20170118 UPLAN「共謀罪」なんていらない?!これってホントに「テロ対策」?(58分)

※1月18日に行われた『「共謀罪」なんていらない?!これってホントにテロ対策?』(合同出版/2016年12月刊)の出版記念イベントの動画であり、海渡弁護士は共著者の1人として
発言しています(10分~16分)。

 
20170120 UPLAN 秘密保護法、戦争法と一体 話し合うことが罪になる共謀罪の国会提出を許さない院内集会(2時間14分)

※1月20日に行われた「秘密保護法・戦争法と一体「話し合うことが罪になる共謀罪」新設に反対する
院内集会」の中継動画です。海渡雄一弁護士のミニ講演「平成の治安維持法・共謀罪法案の国会提出に反対しよう!」は1時間04分~1時間32分ですが、その前に、平岡秀夫元法務大臣(弁護士)による「共謀罪(テロ等準備罪)の問題点」という演題によるミニ講演が行われています(11分~41分)。

一からわかる共謀罪(表)一からわかる共謀罪(裏) 

「自由なラジオ LIGHT UP!」最新アーカイブを聴く(042~045)~YouTubeトラブルは解決していないけれど

 今晩(2017年2月9日)配信した「メルマガ金原No.2718」を転載します。

「自由なラジオ LIGHT UP!」最新アーカイブを聴く(042~045)~YouTubeトラブルは解決していないけれど

 「ラジオフォーラム」の事実上の後継番組として、昨年の4月からスタートした「自由なラジオ LIGHT 
UP!」のアーカイブがYouTubeとポッドキャスト(PODCAST)の両方で聴取することができるということで、これまでアーカイが3~4回分たまったところでご紹介してきました。
 ところが、今年に入って、「YouTubeでアーカイブが開けない!」というトラブル発生。やがて、「jiyunaradio funclu」という新アカウントで順次古い番組も再アップされましたので、私も、過去のメルマガ(ブログ)で配信した紹介記事を、YouTubeへのリンクをやり直した上
で、順次再配信し始めたのです。
 しかし、何ということか、またしても、この再アップされたアーカイブを聴くためにYouTubeを開けようとしても、真っ黒な画面に「この動画は再生できません。申し訳ありません。」という無情な文字が出て
くるだけになってしまいました。
 そのうち、また復旧するかと思ってチェックしているのですが、「第39回 選挙戦から撤退した前新潟県知事の英断 原子力ムラの圧力と地元新聞社の『総合的判断』とは?」以降のアーカイブだけは何とかYouTubeで聴けますが、第1回~第38回のアーカイブを視聴しようとすれば、ポッドキャスト(PODCAST)で聴くしかないようです。iTunesをダウンロードした上で「関連付け」などの作業を行えば、無料でアーカイブを聴くことができますが、若い人には何でもなくても、そういう作業は苦手という人もいるだろ
うなあ。
 ということで、YouTubeで全てのアーカイブを再び聴けるようになることを願いつつ、とりあえず今日は、未紹介の第42回~第45回の4本をご紹介します。

「ヒップホップグループのMCという異色の経歴をもつ松戸市議会議員のDELIさんに、3.11以降、政
治そして音楽にかけた思いをたっぷりと伺いました。
 メジャーレーベルからCDデビューもしているDELIさんですが、東日本大震災で福島第一原発が爆
発してから、意識がどんどんと変わっていったといいます。きっかけとなったのは、地元千葉県松戸市に、南相馬の人たちが避難してきたこと。その中にDJ仲間の親御さんもいて、その仲間の誘いで原発5キロ圏内近くまで、ガイガーカウンターをもって放射線量を測りに行ったことがありました。その結果、場所によっては、南相馬より地元松戸の方が線量が高い場所もあることを知ったといいます。他人事ではない、自分たちの問題なんだと気づかされたのだといいます。
 まずは、被ばく被害を真っ先に受ける子どもたちを守らなければならないと、SNSなどを駆使して仲
間を募り、札幌など安全な場所に子どもたちを逃がす運動「オペレーション・コドモタチ」を立ち上げます。
 これが原点となって、ひとりのミュージシャンが世の中を変えようと動きはじめます。松戸市議会議員へも「脱被ばく、脱カスタマー」だけをスローガンに出馬し、見事当選。脱カスタマーとは、他人事でいるな、ヒーローは待っていても来ない、ひとりひとりが主人公にならなければならないというお考えだそうです。「ミュージシャンだからとか、わかってないとか馬鹿にするならすればいいけど、俺の考えに投票して当選させた人たちがいる。それを馬鹿にするな!」という主張は、民主主義の的を射ているといえ
ますね。拍手です。
 そして、今、松戸市議会議員として精力的に活動しながら、「プラネット・ロック」という政治団体を立ち上げて、さらに人々の「無関心」と闘っておられます。「俺みたいなのが立ち上がらなければならない世の中なんだなと思って、気が付いてくれればいい」と自虐的に表現されていましたが、強面のヒップ
ホッパーの心は、熱く、限りなく愛に満ちていました。どうぞお聞き逃しなく!!
DELIさん公式ホームページ
 
http://www.planetrock.jp/
■LIGHT?UPジャーナル:廃炉が決まった「もんじゅ」と高速炉の行方
「今回は大阪のスタジオから、新聞うずみ火の矢野宏が、京都大学原子炉実験所研究員の今中哲二さんに、廃炉が決まった「もんじゅ」と、さらに研究が進むという高速炉の行方について伺いました。こちらもたいへんわかりやすい解説です。どうぞお楽しみに!」

「2015年9月19日の安保法制強行採決から早1年4ヶ月。当時、抗議行動の波は全国各地に広がり、学生団体
SEALDs(シールズ)などが一躍注目を集めました。そんな反対行動の中心になった団体のひとつに、子どもを持つお母さんたちの会がいたことをご存知でしょうか?安保関連法に反対するママの会(通称ママの会)。今回は、この会の発起人である西郷南海子さんをゲストに迎え、ママたちが安保法反対に立ち上がった理由、経緯から、今後、市民が政治を変えるためにはどのような方法が適切だと考えるかなどについ
て、ジャーナリストの西谷文和がインタビューします。
※お知らせ:西郷南海子さんと絵本作家浜田桂子さんの共著「だれのこどももころさせない」が3月に刊行
されます。是非、チェックしてみて下さい。」
LIGHT?UPジャーナル:小出裕章さん電話インタビューat LOFT9 Shibuya
「昨年末12月29日に東京渋谷の「LOFT9 Shibuya」で、当番組のイベントが開催されました(市民のための自由なラジオ“Light Up!”大忘年会)。今回の「Light-Upジャーナル」は、会場から小出裕章さん(元京都大学原子炉実験所)に電話インタビューを行った模様をお届けします。舞台上の進行は、今西憲之。出演はパーソナリティの木内みどり、おしどりマコ・ケン、ゲストは、山本太郎参議院議員、映画監督で弁護士の河合弘之さん、元東京電力社員の蓮池透さんでした。」
ニュースの歩き方:西谷文和・12月のイラク取材報告
「昨年12月、入国拒否によりイラク取材を断念した西谷文和が改めて入国に成功。IS掃討作戦が展開され
たモスルの街を取材しました。現地は名目上ISからの奪還はすでに成功し解放されていますが、街はゴーストタウンのまま。未だに住民の帰還は叶っていません。なぜ帰れないのか。モスルの現状について解説
します。」
※金原注 「イラクの子どもを救う会」ブログに掲載された昨年12月25日付の西谷文和さんのレポー
「前線へ」を是非お読みください。

「1995年7月22日、大阪市東住吉区の住宅の建物に組み込まれたシャッター付き駐車場で火災が発生。住人
である内縁の夫、母親、長男は脱出して助かるも、駐車場に隣接する浴室で入浴中だった長女が焼死しま
した。
 母親と内縁の夫が死亡した長女に1500万円の生命保険をかけていたことなどから、警察はこれを保険金詐取目的の殺人との疑いを持ち逮捕。取り調べの末に自供を得たとして起訴。最高裁まで争うも、内縁の夫と母親には無期懲役という判決が下りました。しかしこれは、取調べの際に拷問による自白の強要があったとして、二人は無罪を主張。多くの支援者にも支えられて、昨年再審が認められ仮釈放。そして昨年8
月10日に無罪を勝ち取りました。
 今回は、この「東住吉放火冤罪事件」の被害者のひとりである青木惠子さんをゲストに迎え、なぜこの事件が起こったのか?再審無罪までの道のりはどのようなものだったのか? 問題の警察取調べとは実際
にどのようなものだったのか?などについて今西憲之が聞きます。」
■Light-Upジャーナル:「柏崎刈羽原発 新潟知事、東電に表明」について
「昨年12月には、泉田裕彦前新潟県知事をゲストにお招きしたばかりですが、今回も引き続き、東京電力柏崎刈羽原発に関連した話題をお届けします。1月5日、新潟県の米山隆一知事は、県庁で東京電力のトップと面会し、福島第一原発事故の原因究明など県独自の検証を最優先する考えを伝えました。今回はこの「柏崎刈羽原発再稼働より3つの検証」を巡って、小出裕章さんが解説します。」

「今回のお客様は、インドネシア・パプア州で株式会社オルター・トレード・ジャパンの現地駐在員とし
てお仕事をされている津留歴子さんです。世界で2番目に大きな島、赤道直下にあるニューギニア島。その西半分が、インドネシア領パプアです。日本とほぼ同じ面積ですが、人口約400万人といますから人口密度はとても低い、自然豊かなところです。
 1885年にニューギニア島は、オランダ、ドイツ、イギリス領に分割され、西側がオランダ領となったのですが、戦時中は日本が占領していた歴史もあるところ。その後1969年にインドネシアに併合されました。
そこに住む先住民の血を引くパプアの人たちは、まつ毛が長く褐色の肌、ちりぢりの髪と、とても特徴的です。「パプア」はマレー語で「縮れ毛」を意味する「プア・プア」から来ているといいます。そんなパプアに昨年、パーソナリティ・木内みどりが訪れたときに出会ったのが津留歴子さんです。自然への畏敬の念を忘れず、現地に生きる人々の日々の営みを大切にしながら、カカオ農園などでの生産活動を後押しする活動をされています。
 手つかずの自然も多く残るこの島は、農作物の宝庫。放っておいてもどんどん育つという環境の中で、人々は欲にまみれることもなく、素朴で穏やかな心をつないで暮らしています。都留さんは、現地の人々との交流の中で、良質なチョコレートの原料となるパプアのカカオを、日本をはじめとする世界に紹介しています。アメリカのボストンで暮らし、グリーンカードまでもっていた津留さんが、なぜ保証された将
来を捨てて現地NGOに加わったのか?
 そこまで津留さんを魅きつけたものとは?高度に成長したとされる先進国の文明の中に生きる私たちが、もはや望んでも手に入らない本当の「豊かさ」がそこにはあるといいます。番組で紹介したチョコレー
ト「パラダイス・パプア」を口にすれば、その素朴な味が、あなたに何かを伝えてくれることでしょう。
 http://altertrade.jp/cacao
LIGHT-UPジャーナル:私たちはどんな心構えで「情報」と向き合うべきか
「落合恵子さんにお電話をおつなぎします。今回のテーマは、落合さんはどうやって情報をとっているのか?です。ご自宅では新聞2紙をとり、外出先ではその他の新聞もチェックするという落合さん。情報があふれる今、私たちはどんな心構えで情報と向き合うべきなのでしょう?資本と報道が深いつながりがある日本のメディアだからこそ、流されてはいけない。騙されてはいけない。自分自身でしっかりと社会を見つめなければ。そんなことを改めて考えさせられるインタビューとなりました。」
 

(付録)
『スナメリ泳ぐ海』 作詞・作曲:笠松美奈 
演奏:なつおmeets南風

※2015年9月23日ライブ@ララ・ロカレ
※参考ブログ「『スナメリ泳ぐ海』から世界を見たら」(弁護士・金原徹雄のブログ)

「共謀罪法案の提出に反対する刑事法研究者の声明」(2017年2月1日)を読む

 今晩(2017年2月8日)配信した「メルマガ金原No.2717」を転載します。

「共謀罪法案の提出に反対する刑事法研究者の声明」(2017年2月1日)を読む

 3日連続の共謀罪シリーズ第3回は、去る2月1日に発表された刑事法研究者による反対声明です。
 刑事法研究者有志による声明といえば、最近何か読んだ記憶があるな」という方もきっとおられるでしょう。昨年12月28日に発表された「山城博治氏の釈放を求める刑事法研究者の緊急声明」であり、私のブログ(巻末参照)でもご紹介しました。
 上記緊急声明の呼びかけ人・賛同人は、本年1月18日現在で64人。これに対し、2月1日に発表された「共謀罪法案の提出に反対する刑事法研究者の声明」の呼びかけ人・賛同者は、昨日(2月7日)現在、149名に達しています。
 数が多ければ偉いというものでもありませんが、憲法研究者にとっての安保法案と同様、刑事法研究者にとっての共謀罪法案が、自らが人生をかけて取り組んでいる研究対象の基本原理を踏みにじろうとしていることが許せない、ここは立ち上がる時だ、という認識を多くの研究者が共有している証ではないかと思われます。
 そのことを示すため、呼びかけ人の1人である高山可奈子京都大学教授のブログを引用します。

2017年2月 1日 (水)
共謀罪法案の提出に反対する刑事法研究者の声明

(引用開始)
 
本日、呼びかけ人7名と賛同者130名の計137名で、
  共謀罪法案の提出に反対する刑事法研究者の声明
を公表いたしました。
 大きく次の5点の理由で反対しています。

1.テロ対策立法はすでに完結しています。
2.国連国際組織犯罪防止条約の締結に、このような立法は不要です。
3.極めて広い範囲にわたって捜査権限が濫用されるおそれがあります。
4.日本.日本は組織犯罪も含めた犯罪情勢を改善してきており、治安の悪い国のまねをする必要はありません。
5.武力行使をせずに、交渉によって平和的に物事を解決していく姿勢を示すことが、有効なテロ対策です。

 
 全文もそれほど長くありませんので、よろしければご覧ください。
 
PDFファイルはこちらです。

 
このために日夜時間を割いてくださった呼びかけ人の先生方(全員、日本刑法学会の現役理事です)、短い時間にご協力くださいました賛同者のみなさまに心より御礼申し上げます。
 刑事法研究者の賛同をなお募集中です。

 故・平野龍一先生が私の年齢だったら、やはり反対なさっていただろうと信じます。

 今回、刑事法研究者以外の方にはご参加いただいていませんが、一般市民の方々にもご参加いただける次のようなアクションが始められています。
法律家・労働団体などが1万9500筆を超える反対署名を提出
共謀罪法案提出に反対するハガキアクション
(「安全保障関連法に反対する学者の会」や市民連合のプラカードを作成された和田裕一氏の行動提起です)
(引用終わり)

 故・平野龍一先生(1920~2004)のお名前が出てくるので、東大出身かなと思って調べたところ、そのとおりでした。けれど、平野先生が東大を定年退官された1985年、高山さんはまだ高校生だったようですが。
※追記(2017年2月9日)
 平野龍一先生の刑法総論を東大で受講した友人の弁護士から、平野先生の定年退官は1981年であり、その後、1985年までの4年間は東大総長を務められたとの指摘がありましたので、謹んで訂正します。

 それでは、以下に声明全文を引用します。
 反対の論拠が分かりやすく整理されており、中でも、「捜査法」の分野への致命的な悪影響を指摘した3項がとりわけ重要ではないかと思います。
 もっとも、この声明に対しても、自説に固執して批判する者もあるようですが、今はそんな時ではないでしょうに。

(引用開始)
共謀罪法案の提出に反対する刑事法研究者の声明

2017年2月1日

 政府は、これまでに何度も廃案となっている共謀罪を、「テロ等準備罪」の呼び名のもとに新設する法案を国会に提出する予定であると報道されています。しかし、この立法は以下に述べるように、犯罪対策にとって不要であるばかりでなく、市民生活の重大な制約をもたらします。

1. テロ対策立法はすでに完結しています。

 テロ対策の国際的枠組みとして、「爆弾テロ防止条約」や「テロ資金供与防止条約」を始めとする5つの国連条約、および、その他8つの国際条約が採択されています。日本は2001年9月11日の同時多発テロ後に採択された条約への対応も含め、早期に国内立法を行って、これらをすべて締結しています。

2. 国連国際組織犯罪防止条約の締結に、このような立法は不要です。

 2000年に採択された国連国際組織犯罪防止条約は、国際的な組織犯罪への対策を目的とし、組織的な犯罪集団に参加する「参加罪」か、4年以上の自由刑を法定刑に含む犯罪の「共謀罪」のいずれかの処罰を締約国に義務づけているとされます。しかし、条約は、形式的にこの法定刑に該当するすべての罪の共謀罪の処罰を求めるものではありません。本条約についての国連の「立法ガイド」第51項は、もともと共謀罪や参加罪の概念を持っていなかった国が、それらを導入せずに、組織犯罪集団に対して有効な措置を講ずることも条約上認められるとしています。
 政府は、同条約の締約国の中で、形式的な基準をそのまま適用する共謀罪立法を行った国として、ノルウェーとブルガリアを挙げています。しかし、これらの国は従来、予備行為の処罰を大幅に制限していたり、捜査・訴追権限の濫用を防止する各種の制度を充実させたりするなど、その立法の背景は日本とは相当に異なっています。ほとんどすべての締約国はこのような立法を行わず、条約の目的に沿った形で、自国の法制度に適合する法改正をしています。国内法で共謀罪を処罰してきた米国でさえ、共謀罪の処罰範囲を制限する留保を付した上で条約に参加しているのです。このような留保は、国会で留保なしに条約を承認した後でも可能です。
 日本の法制度は、もともと「予備罪」や「準備罪」を極めて広く処罰してきた点に、他国とは異なる特徴があります。上記のテロ対策で一連の立法が実現したほか、従来から、刑法上の殺人予備罪・放火予備罪・内乱予備陰謀罪・凶器準備集合罪などのほか、爆発物取締罰則や破壊活動防止法などの特別法による予備罪・陰謀罪・教唆罪・せん動罪の処罰が広く法定されており、それらの数は70以上にも及びます。
 一方、今般検討されている法案で「共謀罪」が新設される予定の犯罪の中には、大麻栽培罪など、テロとは関係のない内容のものが多数あります。そもそも、本条約はテロ対策のために採択されたものではなく、「共謀罪」の基準もテロとは全く関連づけられていません。本条約は、国境を越える経済犯罪への対処を主眼とし、「組織的な犯罪集団」の定義においても「直接又は間接に金銭的利益その他の物質的利益を得る」目的を要件としています。

3. 極めて広い範囲にわたって捜査権限が濫用されるおそれがあります。
 政府は、現在検討している法案で、(1)適用対象の「組織的犯罪集団」を4年以上の自由刑にあたる罪の実行を目的とする団体とするとともに、共謀罪の処罰に(2)具体的・現実的な「合意」と(3)「準備行為」の実行を要件とすることで、範囲を限定すると主張しています。しかし、(1)「目的」を客観的に認定しようとすれば、結局、集団で対象犯罪を行おうとしているか、また、これまで行ってきたかというところから導かざるをえなくなり、さしたる限定の意味がなく、(2)概括的・黙示的・順次的な「合意」が排除されておらず、(3)「準備行為」の範囲も無限定です。
 また、「共謀罪」の新設は、共謀の疑いを理由とする早期からの捜査を可能にします。およそ犯罪とは考えられない行為までが捜査の対象とされ、人が集まって話しているだけで容疑者とされてしまうかもしれません。大分県警別府署違法盗撮事件のような、警察による捜査権限の行使の現状を見ると、共謀罪の新設による捜査権限の前倒しは、捜査の公正性に対するさらに強い懸念を生みます。これまで基本的に許されないと解されてきた、犯罪の実行に着手する前の逮捕・勾留、捜索・差押えなどの強制捜査が可能になるためです。とりわけ、通信傍受(盗聴)の対象犯罪が大幅に拡大された現在、共謀罪が新設されれば、両者が相まって、電子メールも含めた市民の日常的な通信がたやすく傍受されかねません。将来的に、共謀罪の摘発の必要性を名目とする会話盗聴や身分秘匿捜査官の投入といった、歯止めのない捜査権限の拡大につながるおそれもあります。実行前の準備行為を犯罪化することには、捜査法の観点からも極めて慎重でなければなりません。

4. 日本は組織犯罪も含めた犯罪情勢を改善してきており、治安の悪い国のまねをする必要はありません。
 公式統計によれば、組織犯罪を含む日本の過去15年間の犯罪情勢は大きく改善されています。日本は依然として世界で最も治安の良い国の1つであり、膨大な数の共謀罪を創設しなければならないような状況にはありません。今後犯罪情勢が変化するかもしれませんが、具体的な事実をふまえなければ、どのような対応が有効かつ適切なのかも吟味できないはずです。具体的な必要性もないのに、条約締結を口実として非常に多くの犯罪類型を一気に増やすべきではありません。
 そればかりでなく、広範囲にわたる「共謀罪」の新設は、内心や思想ではなく行為を処罰するとする行為主義、現実的結果を発生させた既遂の処罰が原則であって既遂に至らない未遂・予備の処罰は例外であること、処罰が真に必要な場合に市民の自由を過度に脅かさない範囲でのみ処罰が許されることなどの、日本の刑事司法と刑法理論の伝統を破壊してしまうものです。

5. 武力行使をせずに、交渉によって平和的に物事を解決していく姿勢を示すことが、有効なテロ対策です。
 イスラム国などの過激派組織は、米国と共に武力を行使する国を敵とみなします。すでに、バングラデシュでは日本人農業家暗殺事件と、日本人をも被害者とする飲食店のテロ事件がありました。シリアではジャーナリストの拘束がありました。安保法制を廃止し、武力行使をしない国であると内外に示すことこそが、安全につながる方策です。

 こうした多くの問題にかんがみ、私たちは、「テロ等準備罪」処罰を名目とする今般の法案の提出に反対します。

呼びかけ人(五十音順)
葛野尋之(一橋大学教授)
高山佳奈子(京都大学教授)
田淵浩二(九州大学教授)
本庄武(一橋大学教授)
松宮孝明(立命館大学教授)
三島聡(大阪市立大学教授)
水谷規男(大阪大学教授)

賛同者
赤池一将(龍谷大学教授)、浅田和茂(立命館大学教授)、足立昌勝(関東学院大学名誉教授)、安達光治(立命館大学教授)、雨宮敬博(宮崎産業経営大学准教授)、荒川雅行(関西学院大学教授)、荒木伸怡(立教大学名誉教授)、生田勝義(立命館大学名誉教授)、石川友佳子(福岡大学准教授)、石田倫識(愛知学院大学准教授)、石塚伸一(龍谷大学教授)、石松竹雄(大阪弁護士会)、一原亜貴子(岡山大学准教授)、伊藤睦(三重大学教授)、稲田朗子(高知大学准教授)、稲田隆司(新潟大学教授)、指宿信(成城大学教授)、上田寛(立命館大学名誉教授)、上田信太郎(北海道大学教授)、上野達彦(三重大学名誉教授)、内山真由美(佐賀大学准教授)、内山安夫(東海大学教授)、梅田豊(愛知学院大学教授)、大貝葵(金沢大学准教授)、大久保哲(宮崎産業経営大学教授)、大出良知(東京経済大学教授)、大場史朗(大阪経済法科大学准教授)、大薮志保子(久留米大学准教授)、岡田行雄(熊本大学教授)、岡本洋一(熊本大学准教授)、小田中聰樹(東北大学名誉教授)、海渡雄一(第二東京弁護士会)、香川達夫(学習院大学名誉教授)、春日勉(神戸学院大学教授)、門田(秋野)成人(広島大学教授)、金澤文雄(広島大学名誉教授・岡山商科大学名誉教授)、金澤真理(大阪市立大学教授)、神山敏雄(岡山大学名誉教授)、嘉門優(立命館大学教授)、川崎英明(関西学院大学教授)、川口浩一(関西大学教授)、神例康博(岡山大学教授)、木谷明(元裁判官、元法政大学法科大学院教授、第二東京弁護士会)、北野通世(福岡大学教授・山形大学名誉教授)、金尚均(龍谷大学教授)、楠本孝(三重短期大学教授)、公文孝佳(神奈川大学准教授)、黒川亨子(宇都宮大学専任講師)、小浦美保(岡山大学准教授)、古川原明子(龍谷大学准教授)、後藤昭(青山学院大学教授)、小山雅亀(西南学院大学教授)、斎藤司(龍谷大学教授)、斉藤豊治(甲南大学名誉教授、大阪弁護士会)、坂本学史(神戸学院大学准教授)、佐川友佳子(香川大学准教授)、櫻庭総(山口大学准教授)、佐々木光明(神戸学院大学教授)、笹倉香奈(甲南大学教授)、佐藤博史(元東京大学客員教授・元早稲田大学教授、第二東京弁護士会)、佐藤元治(岡山理科大学准教授)、塩谷毅(岡山大学教授)、島岡まな(大阪大学教授)、白井諭(岡山商科大学准教授)、白取祐司(神奈川大学教授・北海道大学名誉教授)、新屋達之(福岡大学教授)、鈴木博康(九州国際大学教授)、末道康之(南山大学教授)、陶山二郎(茨城大学准教授)、関哲夫(國學院大学教授)、関口和徳(愛媛大学准教授)、園田寿(甲南大学教授、大阪弁護士会)、高倉新喜(山形大学教授)、高田昭正(立命館大学教授)、高橋有紀(福島大学准教授)、高平奇恵(九州大学助教)、武内謙治(九州大学教授)、多田庶弘(神奈川工科大学非常勤講師)、辰井聡子(立教大学教授)、田中輝和(東北学院大学名誉教授)、恒光徹(大阪市立大学教授)、寺中誠(東京経済大学非常勤講師)、土井政和(九州大学教授)、戸浦雄史(大阪学院大学准教授)、徳永光(獨協大学教授)、冨田真(東北学院大学)、友田博之(立正大学准教授)、豊崎七絵(九州大学教授)、豊田兼彦(関西学院大学教授)、内藤大海(熊本大学法学部准教授)、長井圓(中央大学教授)、永井善之(金沢大学教授)、中川孝博(國學院大學教授)、中島洋樹(関西大学教授)、中島宏(鹿児島大学教授)、中村悠人(東京経済大学准教授)、名和鐵郎(静岡大学名誉教授)、新倉修(青山学院大学教授)、新村繁文(福島大学特任教授)、庭山英雄(元専修大学教授、東京弁護士会)、朴元奎(北九州市立大学教授)、東澤靖(明治学院大学教授、第二東京弁護士会)、玄守道(龍谷大学教授)、平井佐和子(西南学院大学准教授)、平川宗信(名古屋大学名誉教授・中京大学名誉教授)、平田元(熊本大学教授)、福井厚(京都女子大学教授)、福島至(龍谷大学教授)、福永俊輔(西南学院大学准教授)、渕野貴生(立命館大学教授)、本田稔(立命館大学教授)、前田朗(東京造形大学教授)、前野育三(関西学院大学名誉教授、兵庫県弁護士会)、前原宏一(札幌大学教授)、正木祐史(静岡大学教授)、松倉治代(大阪市立大学准教授)、松本英俊(駒澤大学教授)、丸山泰弘(立正大学准教授)、水野陽一(北九州市立大学専任講師)、緑大輔(一橋大学准教授)、光藤景皎(大阪市立大学名誉教授)、三宅孝之(島根大学名誉教授)、宮澤節生(神戸大学名誉教授・カリフォルニア大学ヘイスティングス・ロースクール教授)、宮本弘典(関東学院大学教授)、村井敏邦(一橋大学名誉教授)、村岡啓一(白鴎大学教授)、村田和宏(立正大学准教授)、森尾亮(久留米大学教授)、森川恭剛(琉球大学教授)、森下忠(広島大学名誉教授)、森久智江(立命館大学准教授)、守屋克彦(元東北学院法科大学院教授)、安田恵美(國學院大學専任講師)、山口直也(立命館大学教授)、山﨑俊恵(広島修道大学准教授)、山名京子(関西大学教授)、山中友理(関西大学准教授)、吉弘光男(久留米大学教授)、吉村真性(九州国際大学教授)、その他氏名非公開賛同者 3名

呼びかけ人・賛同者合計149名(2017年2月7日現在)
呼びかけ人・賛同者合計148名(2017年2月6日現在)
呼びかけ人・賛同者合計147名(2017年2月5日現在)
呼びかけ人・賛同者合計146名(2017年2月3日現在)
呼びかけ人・賛同者合計143名(2017年2月2日現在)
呼びかけ人・賛同者合計137名(2017年2月1日現在) 
(引用終わり)

(付録)
『ひかりのわ』 作詞・作曲:嶋田奈津子 
演奏:なつおmeets南風
 
※2015年9月23日ライブ@ララ・ロカレ

日弁連パンフレット「合意したら犯罪?合意だけで処罰?―日弁連は共謀罪に反対します!!―」(五訂版2015年9月)を読む

 今晩(2017年2月7日)配信した「メルマガ金原No.2716」を転載します。

日弁連パンフレット「合意したら犯罪?合意だけで処罰?―日弁連は共謀罪に反対します!!―」(五訂版2015年9月)を読む

 昨日に引き続き、共謀罪シリーズをお届けします。
 今日は、日本弁護士連合会が発行して配布しているパンフレット「合意したら犯罪?合意だけで処罰?―日弁連は共謀罪に反対します!!―」をご紹介します。
 昨日ご紹介した月刊レファレンス(国立国会図書館)掲載論文「共謀罪をめぐる議論」でも説明されていたとおり、いわゆる共謀罪法案は、2003年から2005年にかけて3度国会に上程されながらいずれも廃案(最終は2009年7月の衆院解散により)となっていたのですが、日弁連のパンフレットも都度都度改訂され、現在の版は、2015年9月発行の五訂版です。
 当然、現在開会中の第193回国会(常会)に提出されると言われている「テロ等準備罪」法案には対応していません。そもそもまだ法案も確定・公表されていないのですから(閣議決定が必要でしょう)、六訂版を発行する訳にはいきません。ただし、法案が確定次第、間をおかずに六訂版を発行できるよう、日弁連共謀罪法案対策本部では、急ピッチで予定稿を準備中だと思います(単なる想像ですが)。
日弁連・共謀罪パンフレット ということで、現時点までの日弁連としての見解は、2012年4月に発表された「共謀罪の創設に反対する意見書」にまとめられており、その内容を市民向けに分かりやすくアピールするために発行されたのがパンフレット五訂版(2015年9月)ですから、間もなく六訂版に差し替えられるかもしれませんが、これまでの議論の結果を日弁連の立場から振り返るため、パンフレット五訂版全文をご紹介したいと思います。
 なお、日弁連ホームページには、「日弁連は共謀罪に反対します」という特設コーナーが設けられており、上記の意見書やパンフレットの他、共謀罪に関する法務省や外務省の見解に対する反論を含め、日弁連が公表した意見書、声明等が網羅されており、大いに参考になると思います。
 
パンフレット「合意したら犯罪?合意だけで処罰?―日弁連は共謀罪に反対します!!―」(五訂版2015年9月)(PDFファイル4ページ)
(引用開始)
共謀罪とはなにか?
 共謀罪とは、具体的な犯罪について、2人以上の者が話し合って合意することだけで処罰することができる犯罪のことです。
 政府がこれまで提案していた共謀罪法案は、長期4年以上の懲役・禁固等を定める600を超える罪を対象とする広範なものです。

【共謀罪の骨子】
① 長期4年以上の刑を定める犯罪について(合計で600以上)
② 団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの(組織犯罪集団の関与までは求められていない)
③ 遂行を共謀(合意)した者は
④ 原則として懲役2年以下の刑に処される。
⑤ 死刑、無期、長期10年以上の処罰が科せられた犯罪の共謀については懲役5年以下の刑に処される。
⑥ 犯罪の実行の着手より前に自首したときは、刑を減免される。

法案は条約締結に必要な範囲を越えています
 日本政府は、すでに締結した国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約が「重大な犯罪」について共謀罪を設けることなどを求めていることから、この条約を批准するために必要だとして、共謀罪法案を国会に提出しようとしていると報道されています。
 この条約は、もともとマフィアなど経済的利益を目的とする組織犯罪を対象にしていましたが、2001年の9・11のテロ事件を契機に、テロ対策のために利用しようという動きが出てきました。
 2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、政府は、テロ対策として共謀罪制定が必要であると説明することが予想されます。しかし、この条約の本来の目的は、国際的な組織犯罪の防止ですから、テロ対策とは直接関係ありません。
 しかも、政府がこれまで提案してきた共謀罪の規定は、国際的な組織犯罪やテロ行為の共謀だけを対象とするのではなく、600を超える重大とはいえないものを含む犯罪を合意の段階で処罰しようとするものであり、市民の自由な生活を大きく脅かすおそれがあります。
(注)国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約:国連越境組織犯罪防止条約またはパレルモ条約とも呼ばれています。日弁連は、この条約が国境を越える組織犯罪への対処を求める条約であることから、「越境組織犯罪防止条約」と訳してきました。この条約はイタリアのパレルモで署名されたことから「パレルモ条約」と呼ばれることもあります。

既遂行為を処罰するのが日本国内の基本原則であり、それ以前の行為を処罰するのは例外
 犯罪は、人の内心で生まれ、共犯の場合は共犯者との合意を経て、準備され(「予備」段階)、実行に着手され(「未遂」段階)、そして、実行されて結果が生じます(「既遂」段階)。
 我が国の刑法は、「既遂」処罰を原則としています。法律で保護された利益(法益)を現実に侵害して、結果が発生した場合に処罰することとしているわけです。
 「未遂」は、特に法律で定められた場合に処罰されるのであり、例外的なものといえます。このように未遂を例外扱いし、刑罰の減軽を認めていることから、「罪を犯そうとす
る危険な意思」を処罰するのではなく、「法益侵害の危険性を発生させたこと」を処罰すると考えられています。
 「予備」の処罰は、未遂よりも更に例外的で、殺人・強盗・放火などの重大な犯罪に限って規定されています。現在、「予備」の一種である「共謀」の処罰は、いわば「危険な意思」の処罰といえますが、このような処罰の対象となっているのは、内乱の陰謀罪・私戦陰謀罪など極めて特別な場合に限られています。

一挙に600を超える共謀罪を新設するのは我が国の刑法の基本原則を否定
 このように我が国の国内法の基本原則は、「既遂」の処罰を原則とし、「未遂」は例外的、「予備」は更に例外的、「共謀」に至っては極めて特別な重大な法益侵害に関するものに限って処罰するというものです。
 しかし、共謀罪法案で一挙に新設して処罰しようとしている犯罪の数は600を超えています。この中には、窃盗罪の中の万引きや詐欺罪の中の釣り銭詐欺やキセル乗車などのように犯罪の態様としては決して重大とは言えないような犯罪も含まれます。建造物損壊罪のように、未遂も予備も処罰されていないのに、共謀罪だけが新設される犯罪もあるのです。
 これは、「未遂」「予備」「共謀」を例外とする我が国の刑法の原則に合致しません。国際的な組織犯罪の防止のために「重大な犯罪」について共謀罪を設けるという条約締結の目的からみても広すぎるでしょう。
 また、共謀罪の規定には別の弊害もあります。そもそも、人と人とが犯罪を遂行する合意をしたかどうか、合意の内容が犯罪にあたるかどうかの判断はたいへん難しいといえます。人と人との合意の有無は、その場にいない第三者から見て、すぐに分かるものではないからです。
 このように第三者から見て分かりにくい段階から処罰することにすると、捜査機関の判断によって恣意的な検挙が行われたり、日常的に市民のプライバシーに立ち入って監視するような捜査がなされるようになるかもしれません。これでは市民の人権に及ぼす弊害が余りにも大きいと考えられます。

(注)日本では、犯罪の法定刑の幅が非常に広いので、それほど重大ではない犯罪でも長期4年以上の懲役・禁固刑の犯罪として共謀罪の対象となってしまうのです。

市民運動団体や労働組合、会社などの団体の活動も処罰が可能に
 過去に国会に提出され、3度廃案となった政府の共謀罪法案では、「団体の活動」の共謀の処罰が可能でした。
 団体には、市民運動団体や労働組合、会社組織なども含まれます。例えば、労働団体が、ストライキをして、その際に工場のロックアウトを計画したりすれば、逮捕監禁罪の共謀罪が成立し得ることになります。
 そうすると、捜査機関が、市民運動団体や労働組合などについて、共謀罪の容疑があるとしてその構成員を検挙するなど、恣意的に運用される事態も予想されます。

共謀罪のために室内盗聴、潜入捜査等の新たな捜査手法が導入される可能性も
 共謀罪は、人と人とのコミュニケーションそのものが犯罪行為となるので、共謀罪を検挙し、立証するためには、通信傍受(盗聴)が有効と考えられることも予想されます。
 また、通信傍受に限らず、共謀罪を検挙・立証するために、会話傍受(室内盗聴)が導入されたり、警察官が組織の中に入って情報収集する潜入捜査などが導入されるおそれもあります。
 さらに、政府がこれまで提出していた共謀罪法案には、自首すれば自首した者の刑を減軽または免除する規定があり、警察の捜査の在り方が根本から変わる可能性もあります。

共謀罪法案がなくても条約は批准できます
 国境を越えた組織犯罪への対応は必要であり、本条約は早期に批准されるべきでしょう。先進国では、日本と大韓民国だけが批准していないのも事実です。
 この点、政府は、共謀罪法案を成立させなければ本条約を批准できないと説明してきましたが、そのようなことはありません。
 日弁連が調査した限りでは、この条約を批准した各国とも、その国の法制度で既に条約を満たしているとするか、多少の法整備をするなどして批准している国がほとんどです。つまり、各国の国内法の原則に合わせた立法がなされればよく、それは日本でも同じです。
 さらに、この条約については、共謀罪を制定することなく、条約の一部について留保をしたり、解釈宣言(自国による条約の解釈を示す一方的な宣言)をするなどの柔軟な対応によって、批准が可能であると考えられ、現にそのようにしている国もあります。
 日本には、すでに、重大な法益を侵害する犯罪などに、例外的に、陰謀罪が8、共謀罪が15、予備罪が40、準備罪が9存在しており、判例上も一定の要件を満たした場合に共謀共同正犯として犯罪に共謀した者を処罰することも認められています。それだけでなく、我が国においては、テロ関連条約のうち 「核によるテロリズムの行為の防止に関する国際条約」を除く全てを批准しており、条約上の行為を国内法で犯罪と規定しており、そこでも未遂以前の段階から処罰できる体制が整っています。例えば、アメリカ合衆国では適法に銃を所持することが可能ですが、我が国では、銃砲刀剣類所持等取締法により、銃砲や刀剣の所持自体が厳しく規制されています。これらにより、実質的には、組織犯罪集団による重大な犯罪については、未遂以前に処罰することができ、条約の批准は十分に可能となっています。
 さらに600を超える共謀罪を新設する必要はないのです。

共謀罪法案の制定に反対します
 特定秘密の保護に関する法律(特定秘密保護法)には、共謀罪法案を先取りする形で、既に3種類の共謀罪が規定されてしまいました。そして、2015年の通常国会以降、共謀罪法案がいつ国会に上程されてもおかしくない情勢にあります。
 日弁連は、共謀罪法案は、我が国の国内法の基本原則に反するものであり、捜査機関による恣意的な運用により、私たち市民の人権が脅かされるおそれがあると考えて、一貫して反対してきました。この条約の批准は必要ですが、600を越える共謀罪を新設する共謀罪法案が国会で可決されることがあってはなりません。
 市民の皆さんと一緒に、問題点の多い共謀罪法案の国会への制定には強く反対していきたいと思います。

【共謀罪法案提出の経緯】
2002年 法制審議会で検討
2003年  3月 第156回通常国会に法案提出(廃案)
2004年  2月 第159回通常国会に法案再提出(継続)
2005年  8月 衆議院解散に伴い廃案
2005年10月 第163回特別国会に法案提出(継続)
2009年  7月 衆議院解散により廃案

※日弁連の意見については、次の各意見書をご覧ください。
■共謀罪新設に関する意見書(2006年(平成18年)9月14日)
 
http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/060914.pdf
■共謀罪の創設に反対する意見書(2012年(平成24年)4月13日)
 
http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/2012/opinion_120413_4.pdf

発行年月 2015年9月 (五訂版)
編集・発行者 日本弁護士連合会
〒100-0013 東京都千代田区霞が関1-1-3
TEL. 03-3580-9841(代表)
http://www.nichibenren.or.jp/
(引用終わり)

(弁護士・金原徹雄のブログから)
2017年2月6日
レファレンス掲載論文「共謀罪をめぐる議論」(2016年9月号)を読む


(付録)
『そろそろ』 作詞・作曲:嶋田奈津子 
演奏:なつおmeets南風

※2015年9月23日ライブ@ララ・ロカレ
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