弁護士・金原徹雄のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します。

和歌山弁護士会憲法学習集会9/20「安倍首相の新たな改憲提言について―自衛隊を憲法に書き込む改憲は何をもたらすか―」(講師:青井未帆氏)のご案内

 2017年8月23日配信(予定)のメルマガ金原.No.2913を転載します。
 
和歌山弁護士会憲法学習集会9/20「安倍首相の新たな改憲提言について―自衛隊を憲法に書き込む改憲は何をもたらすか―」(講師:青井未帆氏)のご案内
 
 今日は、和歌山での行事のご案内です。
 昨年(2016年)の4月30日、青年法律家協会和歌山支部が主催する憲法記念講演会において、「違憲無効な安保法制にどう立ち向かうか~法律施行という状況をふまえて~」と題してお話いただいた青井未帆さん(学習院大学大学院法務研究科教授)が、再び和歌山市で講演されます。来る9月20日(水)、和歌山弁護士会の主催(共催:日本弁護士連合会)による「安倍首相の新たな改憲提言について-自衛隊を憲法に書き込む改憲は何をもたらすか-」という講演会で講師を務められます。
 青井先生は、5月22日に立憲デモクラシーの会が発表した「安倍晋三首相による改憲メッセージに対する見解」においても、長谷部恭男早稲田大学教授、石川健治東京大学教授とともに、「見解」取りまとめを担われたのだと想像されます(「見解」発表記者会見にも出席して発言されています)。
 その後も、この問題について各地で講演されているようで、去る8月5日には、兵庫県弁護士9条の会の招きにより、「憲法に自衛隊を明記することの意味を考える」と題して講演されています(巻末リンク参照)。
 以下に、9月20日の講演会チラシから文字情報を転記します。
 
チラシから引用開始)
憲法学習集会
安倍首相の新たな改憲提言について
―自衛隊を憲法に書き込む改憲は何をもたらすか―
 
本年5月3日に安倍首相は、「憲法9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」「高等教育を無償化する」ことなどを内容とする憲法改正を実現し、2020年の施行を目指すと提言しました。そこで、この改憲案の内容を、憲法学的にどのように理解し、解釈することになるのか憲法学者に解説いただき、学習したいと思います。
 
講師 学習院大学大学院 法務研究科 青井 未帆 教授

日時 
201720日(水)
    開演 午後6時30分(~午後8時30分予定) 開場 午後6時
場所 華月殿 5階 八州(やしま)
     和歌山市屋形町2丁目10 (※アクセス
入場無料・予約不要
 
主催 和歌山弁護士会
共催 日本弁護士連合会
お問い合わせ 和歌山弁護士会
〒640-8144 和歌山市四番丁5番地
TEL:073-422-4580 FAX:073-436-5322
(引用終わり) 
 
 華月殿という(昔は結婚式場でした)、和歌山市での講演会会場としてあまりポピュラーとは言えないところでの開催となったのは、日程の都合でやむなくということでしょう。私は、事務所から徒歩約2分という至近の距離でとても便利ですけど。
 
 是非1人でも多くの方にご参加いただき、青井教授によるシャープな分析に耳を傾けていただきたいと願っています。
 
 最後に、5月22日に行われた立憲デモクラシーの会「見解」発表記者会見での青井未帆教授の発言の一部を引用します。
 
(引用開始)
青井未帆(学習院大学・憲法学)
 学習院大学の青井と申します。憲法学を専攻しております。少しお時間をいただいて、私のほうからは9条を中心に意見を申し上げたいと思います。一言で今日申し上げたいことを表すならば、それは軍、軍事力といったものを扱う態度として危険極まりないということでございます。二点に絞ります。一つ目としましては「9条1項、2項を残した状態で自衛隊を書き加えるだけ」という説明がされておりますけれども、もたらされるであろう効果、結果というのは一見するよりも大きい。この点について、まず述べたいと思います。それから二つ目につきましては、軍、軍事力というものをどう制御するかということは、我が国が明治の開国以来ずっと課題としてきたであろうこと。これに鑑みるならば、今の憲法をめぐる態度というのはあまりにも恥ずかしい内容ではないか。こういう内容を二点目として申し上げます。
 まず一点目でございますけれども、「すでに存在する自衛隊を書き込むだけであるといったような言説」が報道等でもされている。一部の報道等では、これを積極的に評価する論者も紹介しておりますけれども、しかしながら、2014年、2015年に9条、集団的自衛権を認めないというような解釈を変更したことで、わたくしは箍(たが)がはずれたと思っておりますけれども、箍(たが)がはずされたとはいえ、現在においてもなお条文としてそこに存在しているからこそこれはじゃまになっているわけで。別の言い方をすると、9条1項、2項というのは、まだ法としてみなされている。この法であったものが、法であるにふさわしいような規範としての力を持たなくなる。論理破綻をするというのが、自衛隊を書き込むことの意味です。なぜかというと、これまでの2014年の政府解釈の変更を含めてもなお、今なおある9条の解釈というのは、武力行使は原則できないということです。政府解釈は二つのラインからなっています。一つは、例外的にできる武力行使があるということと、もう一つは、武力行使に当たらないからできるという、これら二つの理屈で政府解釈というのは作られております。自衛隊がその例外的な「武力行使できる」組織としてあり、武力行使でないからできるという理屈で、例えば海外での活動など枠づけられてきました。こういう面倒な説明が必要になる根本的な理由をなくすのが、憲法に「自衛隊」を書き込むことの意味です。「例外的にできる」ということを消去して、自衛の活動ができるということが原則になるに他ならないわけですので、結局これまでの二本柱、「大原則ができないけれども、武力行使ができる場合がある。それとは別に武力行使に当たらないからできる活動がある」等々の説明が破たんするということになります。
 このことは実は、米艦防護などにおいて非常にクリティカルな問題を提起しておりまして、安保法制懇の報告書では、「あれは集団的自衛権になる」との批判があったわけですけれども、結局、「武力行使に当たらないからできる。警察権の行使だ」と説明されているわけです。このようにぐちゃぐちゃっとなったところで、さらに自衛隊について書き込むとなると、武力行使の違法化、限界がもともとなくなったものとして、戦力不保持について定める2項も無効化すると言わざるを得ないと考えます。
 そしてまた二つ目ですけれども、改めてここで私たちが考えなくてはならないのは、近代国家成立以来、軍、軍事力の統制というのが、私たちにとって大変大きな課題であったはずである点です。薩長の兵権を統制するということから始まりまして、統帥権の独立、軍人勅諭による動員を経て、最終的には軍の統制に失敗してしまった。その失敗したことが日本国憲法の出発点である。この点に鑑みたときに、今の扱い、9条1項2項に加えて3項を加えるというのは、あまりにも軽い扱いなのではないか。基本的に軍の論理というのは、市民社会に最終的にはぶつかりあう部分があります。だからこそ、細心の注意を持って制度設計しなければならないはずである。私はこの9条というのは、そういう意味で非常に斬新な方法であり、今なお邪魔になっているということからも、この規定を設けることによる軍事力の統制というのはなかなか評価に値する試みであると思っておりますが、仮にこれを変えるべきであるとしても、たくさんの命が失われたという過去を背負いながら、これを真面目に議論するべきであって、書き込むならば、9条1項、2項に3項を加えるだけではなく、統治機構全般にわたる一つのパッケージとして議論を真面目にするべきであると、このように考えております。先ほども申し上げましたけれども、一言で申し上げるならば、もっと真面目に、この軍について取り扱わなくてはいけないところ、「軽すぎる」という点を、大変危機感を持って申し上げたいと思います。
(引用終わり)
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/安倍改憲メッセージ関連)
2017年5月24日
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2017年8月2日
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(弁護士・金原徹雄のブログから/青井未帆氏関連)
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2017年3月11日
2017年8月9日

島田広弁護団長が語る「大飯原発訴訟控訴審現状報告」(13分)へのアクセス数を飛躍的に高めよう

 2017年8月22日配信(予定)のメルマガ金原.No.2912を転載します。
 
島田広弁護団長が語る「大飯原発訴訟控訴審現状報告」(13分)へのアクセス数を飛躍的に高めよう
 
 私も登録しているあるメーリングリストに、「170820大飯原発訴訟控訴審現状報告「福島事故の反省はどこへ 崖っぷちの関電を救済する名古屋高裁金沢支部」」という約13分の動画(YouTubeにアップされています)を是非視聴して欲しいというアピールが流れてきました。
 すぐに視聴してみたところ、このビデオは、大飯原発福井訴訟弁護団団長の島田広弁護士(福井弁護士会)が、自ら訴訟の争点や審理の結果明らかになったことを分かりやすく解説し、訴訟への支援を訴えるというものでした。
 
170820大飯原発訴訟控訴審現状報告(12分59秒)

(冒頭及び末尾の部分を文字起こししました)
「皆さん。こんにちは。弁護士の島田です。大飯原発の運転差し止めを求める大飯原発福井訴訟の弁護団長です。今日は、今名古屋高裁金沢支部で進行している裁判がどうなっているかをお話します。ご存知のとおり、樋口判決は、多くの人々の命と生活とふるさとを奪い去ったあの福島第一原発事故の被害と向き合い、原発災害は、憲法上最も重要な価値を持つ人々の命と生活という人格権という権利の中核的部分を大規模に奪うものであり、その危険が万が一でもあれば、原発の運転を差し止めるのは当然と判断し、経済性優先、安全軽視の関西電力の姿勢を厳しく批判しました。」
(略)
「ここまで色々お話してきました。最後に私がどうしても皆さんにお伝えしたいことは、樋口判決を守る力が私たち一人一人の中にある、ということです。二度とフクシマを繰り返さないで欲しい、裁判所は住民の人権を守って欲しいという思い、皆さんがお持ちの当然の気持ちを、もう一度いろんな形で繋ぎながら、力を合わせようではありませんか。そして、真実から逃げ回り、不当に証拠調べを拒否してまで、関西電力に助け船を出すような今の不公正な裁判のやり方を改めさせ、樋口判決を守り抜きましょう。私からの報告とお願いは以上です。皆さん、お付き合いいただきありがとうございました。」
 
 以上の書き起こしでお分かりのとおり、現在、島田先生が弁護団長を務めておられる裁判は、2014年5月21日に、福井地方裁判所民事第2部(樋口英明裁判長)が言い渡した、大飯原発3、4号機の運転差止めを認めた画期的な判決(いわゆる「樋口判決」)の控訴審(名古屋高等裁判所金沢支部)です。
 ここで、「樋口判決」のうち、人口に膾炙し、多くの人に感動を与えた部分を振り返っておきましょう。
 
福井地方裁判所 民事第2部
平成24(ワ)第394号 大飯原発3、4号機運転差止請求事件
平成26年5月21日 判決
(抜粋引用開始)
第4 当裁判所の判断
1 はじめに
 ひとたび深刻な事故が起これば多くの人の生命,身体やその生活基盤に重大な被害を及ぼす事業に関わる組織には,その被害の大きさ,程度に応じた安全性と高度の信頼性が求められて然るべきである。このことは,当然の社会的要請であるとともに,生存を基礎とする人格権が公法,私法を問わず,すべての法分野において,最高の価値を持つとされている以上,本件訴訟においてもよって立つべき解釈上の指針である。
 個人の生命,身体,精神及び生活に関する利益は,各人の人格に本質的なものであって,その総体が人格権であるということができる。人格権は憲法上の権利であり(13条,25条),また人の生命を基礎とするものであるがゆえに,我が国の法制下においてはこれを超える価値を他に見出すことはできない。したがって,この人格権とりわけ生命を守り生活を維持するという人格権の根幹部分に対する具体的侵害のおそれがあるときは,その侵害の理由,根拠,侵害者の過失の有無や差止めによって受ける不利益の大きさを問うことなく,人格権そのものに基づいて侵害行為の差止めを請求できることになる。人格権は各個人に由来するものであるが,その侵害形態が多数人の人格権を同時に侵害する性質を有するとき,その差止めの要請が強く働くのは理の当然である。
7 本件原発の現在の安全性と差止めの必要性について
 以上にみたように,国民の生存を基礎とする人格権を放射性物質の危険から守るという観点からみると,本件原発に係る安全技術及び設備は,万全ではないのではないかという疑いが残るというにとどまらず,むしろ,確たる根拠のない楽観的な見通しのもとに初めて成り立ち得る脆弱なものであると認めざるを得ない。
 前記4に摘示した事実からすると,本件原子炉及び本件使用済み核燃料プール内の使用済み核燃料の危険性は運転差止めによって直ちに消失するものではない。しかし,本件原子炉内の核燃料はその運転開始によって膨大なエネルギーを発出することになる一方,運転停止後においては時の経過に従って確実にエネルギーを失っていくのであって,時間単位の電源喪失で重大な事故に至るようなことはなくなり,破滅的な被害をもたらす可能性がある使用済み核燃料も時の経過に従って崩壊熱を失っていき,また運転停止によってその増加を防ぐことができる。そうすると,本件原子炉の運転差止めは上記具体的危険性を軽減する適切で有効な手段であると認められる。
 現在,新規制基準が策定され各地の原発で様々な施策が採られようとしているが,新規制基準には外部電源と主給水の双方について基準地震動に耐えられるまで強度を上げる,基準地震動を大幅に引き上げこれに合わせて設備の強度を高める工事を施工する,使用済み核燃料を堅固な施設で囲い込む等の措置は盛り込まれていない(別紙4参照)。したがって,被告の再稼動申請に基づき,5,6に摘示した問題点が解消されることがないまま新規制基準の審査を通過し本件原発が稼動に至る可能性がある。こうした場合,本件原発の安全技術及び設備の脆弱性は継続することとなる。
9 被告のその余の主張について
 他方,被告は本件原発の稼動が電力供給の安定性,コストの低減につながると主張するが(第3の5),当裁判所は,極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いの問題等とを並べて論じるような議論に加わったり,その議論の当否を判断すること自体,法的には許されないことであると考えている。我が国における原子力発電への依存率等に照らすと,本件原発の稼動停止によって電力供給が停止し,これに伴なって人の生命,身体が危険にさらされるという因果の流れはこれを考慮する必要のない状況であるといえる。
 被告の主張においても,本件原発の稼動停止による不都合は電力供給の安定性,コストの問題にとどまっている。このコストの問題に関連して国富の流出や喪失の議論があるが,たとえ本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても,これを国富の流出や喪失というべきではなく,豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり,これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失であると当裁判所は考えている。
 また,被告は,原子力発電所の稼動がCO2(二酸化炭素)排出削減に資するもので環境面で優れている旨主張するが(第3の6),原子力発電所でひとたび深刻事故が起こった場合の環境汚染はすさまじいものであって,福島原発事故は我が国始まって以来最大の公害,環境汚染であることに照らすと,環境問題を原子力発電所の運転継続の根拠とすることは甚だしい筋違いである。
(引用終わり)
 
 なお、樋口裁判長は、福井地裁の部総括判事として、翌年(2015年)4月14日、高浜原発3号機、4号機の運転差止めを命じる仮処分決定を置き土産に(というか、この時点で既に転勤していましたが)名古屋家庭裁判所部総括判事として転勤していったのでした。
 これを「左遷」「飛ばされた」という評価が専らでしたが、それに異を唱える訳ではないものの、自分なりの考えをブログに書いたことがありました(年末雑感 「左遷人事」ということ/2015年12月31日)。
 調べてみると、その樋口裁判官も、今年の8月11日をもって定年退官されたようです。
 「ありがとうございました。」という御礼の言葉をお贈りしたいと思います。
 
 さて、控訴審(名古屋高裁金沢支部)の状況です。
 島田広弁護団長の解説でも強調されていましたが、今年の4月24日に開かれた第11回口頭弁論において、島崎邦彦氏(東京大学名誉教授、前原子力規制委員会委員長代理)の画期的な(原告・被控訴人らにとって)証人尋問が行われたのでした。
 「福井から原発を止める裁判の会」ホームページの中の「大飯差止訴訟」のコーナーに訴訟関係資料が豊富に掲載されている中に、島崎邦彦氏の証人尋問調書がありました。
 これは貴重な証言の記録なので、時間を作ってじっくり読んでみたいと思います。
 
 なお、島崎証言については、脱原発弁護団全国連絡会事務局長の只野靖弁護士が解説してくれている動画がありますのでご紹介しておきます。
 
そこが知りたい!脱原発裁判~大飯控訴審・島崎証言の意義(30分)

※上記レクチャー動画で使われたボードが読めます。
 
 ここで、島田広弁護団長による訴えに戻りましょう。
 「福井から原発を止める裁判の会」ホームページを閲覧していたら、島田弁護団長からのアピールの文書を見つけました。
 現在、毎月20日に行なわれている「高裁金沢支部 包囲行動」への参加・協力を呼びかけるものでした。
 
島崎証言を無視し,関電に助け船を出し,樋口判決を葬ろうとする裁判所に抗議を
~基準地震動は過小評価,安全審査は欠陥だらけ,なのに裁判所は審理打ち切り??~
(抜粋引用開始)
 ところが,大変残念なことに,内藤正之裁判長をはじめとした名古屋高裁金沢支部の裁判官らは,島崎証言には何ら関心を示さず,関西電力による地盤調査の杜撰さなど島崎氏の証言を裏付ける重要な事実に関する住民側の証人申請をすべて却下し,11月20日の口頭弁論期日で控訴審の審理を終結して樋口判決を葬り去ろうとしています。真実から目を背け,必要な証拠調べを打ち切って関西電力に助け船を出すような,不公正な裁判所に対し,住民側は同裁判官らの忌避を申し立てましたが,却下され,現在,最高裁に特別抗告中です。
 こうした裁判所の異常な動きは,決して金沢だけで起こっているのではありません。全国各地の裁判所で,行政追随を続けて福島原発事故を防げなかったことに対する「司法の責任」は忘れ去られ,規制委員会による問題だらけの安全審査をそのまま追認する,異常な裁判が続いています。そこには,行政に追随せず安全重視を貫いた樋口判決を敵視し,原発裁判を福島第一原発事故以前の「行政追随型」に戻そうとする最高裁の意図が働いています。
(引用終わり)
 
 ここまで読んできて(冒頭でご紹介した動画の原稿は、ほぼこのアピールを踏襲したものです)、弁護団長が自ら裁判の現状を解説する動画を作成して公開するという、前例があるのかどうかよく分からない珍しい行動に踏み切ったのも、上に引用した危機感がそうさせたのだということがよく分かりました。
 高裁も最高裁も、既にこの動画の存在に気がついて、毎日どれだけアクセスが伸びているかチェックしているかもしれません。
 8月19日に公開されてから4日目、総アクセス数は、私がこのブログの下書ををしている時点でまだ150にも達していませんでした。
 原発の廃絶を願う全ての市民が連帯し、声をかけ合い、この動画へのアクセス数を、最高裁の当局者が瞠目するほどのレベルまで押し上げましょう。
 ご協力をよろしくお願いします。
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/島崎邦彦氏関連)
2016年7月18日
2016年7月20日
2016年7月24日
2016年7月29日

放送予告8/27『宮武外骨と安倍政治~政治とジャーナリズムを問う(仮)』(MBSドキュメンタリー映像'17)

 2017年8月21日配信(予定)のメルマガ金原.No.2911を転載します。
 
放送予告8/27『宮武外骨と安倍政治~政治とジャーナリズムを問う(仮)』(MBSドキュメンタリー映像'17)
 
 今年1月放送の『沖縄さまよう木霊~基地反対運動の素顔』、先月(7月)放送の『教育と愛国~いま教科書で何が起きているのか』など、月に1度深夜の放送、しかも関西ローカルという放送条件から通常考えられる枠をはるかに超えた反響を呼び起こす番組を次々と放つ毎日放送「MBSドキュメンタリー映像’17」。今月(8月)の放送予定は、ジャーナリスト、新聞史研究家、世相風俗研究家など、多彩な顔を持つ宮武外骨(みやたけがいこつ/幼名:亀四郎/1867年~1955年)が取り上げられます。
 私が有する同氏についての知識は、『予は危険人物なり─宮武外骨自叙伝』(1992年/ちくま文庫/品切れ)で読んで得たものが全てです(もう20年以上も前のことで、あらかた忘れていますが)。
 
 けれど、政治とジャーナリズムの関係を一から考え直さなければならない時代状況を踏まえ、その歴史を遡ろうとすると、明治大正時代に権力に抗って論陣を張り続けた宮武外骨を取り上げることに大きな意義があると目を付けた「映像」制作スタッフは鋭い!と思わざるを得ません。
 以下に番組案内を引用します。
 なお、上に書いたように「映像」は関西ローカルです。テレビで見られない地域にお住まいの方は、しかるべき方法で視聴する方法を探していただくしかありません。
 
毎日放送 2017年8月28日(月)午前0時50分~(日曜深夜1時間枠)
MBSドキュメンタリー映像’17『宮武外骨と安倍政治~政治とジャーナリズムを問う(仮)』
(番組案内から引用開始)
宮武外骨(みやたけがいこつ)。明治・大正・昭和の時代を通じて活躍した反骨のジャーナリストで、大阪で創刊した「滑稽新聞」などを通して、政治家や官僚、行政といった権力を言論により徹底的に追及した。また返す刀で政権に擦り寄る御用新聞も容赦しなかった。その生誕150年を機に、外骨を現代に甦らせようと試みる。
「平民主義」を信条とした外骨は明治22年に発刊した「頓知協会雑誌」で大日本帝国憲法をパロディ化し、不敬罪で東京の石川島監獄に投獄された。以来、入獄3回。発禁処分は数知れず。しかし懲りずに、薩長の藩閥政治を忌み嫌って山県有朋らの元老たちをおちょくりまくった。
「武威に屈せず富貴に淫せず、ユスリもハッタリもせず、天下独特の癇癪(かんしゃく)を経(たていと)とし色気を緯(よこいと)とす。過激にして愛嬌あり」-外骨はこれをモットーに、時事批評だけでなく下世話な世相の話題まで扱い、「滑稽新聞」は現代の週刊誌に相当する内容を持っていた。当局の圧力で潰されるたび、装いを変えては新たな雑誌を作り続けた。
翻って現在の安倍政権は「秘密保護法」「安保法制」「共謀罪」などを、詭弁や奇論、頓珍漢な答弁などを駆使して実現してきた。その一方で、「森友・加計問題」ではその場しのぎのごまかしの論理で、正論に対して聞く耳を持たない。番組では、ユーモアや頓知、皮肉や諧謔を用いてすべてを笑い飛ばす、そんな外骨流ジャーナリズムがいま求められているのではないか。そんな視点から政治とジャーナリズムのあるべき関係を問い直します。
(引用終わり)

「私たちは戦争を許さない-安保法制の憲法違反を訴える」市民大集会(2017年9月28日/日本教育会館)へのご参加のお願い

 2017年8月20日配信(予定)のメルマガ金原.No.2910を転載します。
 
「私たちは戦争を許さない-安保法制の憲法違反を訴える」市民大集会(2017年9月28日/日本教育会館)へのご参加のお願い
 
 昨年4月26日に東京地方裁判所に提訴された2件の安保法制違憲訴訟のうち、国家賠償請求訴訟については、来る9月28日(木)15時から第5回口頭弁論期日が開かれますが、どうやらこの日の弁論で、証拠決定(証人尋問や原告本人尋問)が行われるようです。
 いつもなら、弁論が終わった後、記者会見、そして報告集会を行うところですが、9月28日は報告集会に代えて、同日18時30分から、「原告のみなさんと弁護団と、気持ちを一つにして、新たな闘いに進む決意を再確認すべく」、日本教育会館で「市民大集会」(資料代500円)を開催することが告知されています
 日本教育会館ホールのキャパシティは802名、「安保法制違憲訴訟の会」事務局から、情報拡散への協力要請が届いており、ご紹介することとしました。
 特に、東京方面にお知り合いのおられる方は、是非「拡散」にご協力いただければと思います。
 
(市民大集会の内容/チラシ文字情報から引用開始)
-チラシ表面-
私たちは戦争を許さない
安保法制の憲法違反を訴える
 
2017年9月28日(木)18時30分
日本教育会館にて市民大集会
 
基調講演 伊藤 真(弁護士・安保法制違憲訴訟共同代表)
特別報告 山城博治(沖縄平和運動センター議長)
原告意見陳述 戦争体験者・被爆者・元自衛官・外国航路船員
関係者証言
 濱田邦夫(元最高裁判所判事)
 青井未帆(学習院大学教授)
 柚木康子(安保法制違憲訴訟女の会)
 
主催 安保法制違憲訴訟の会
協賛 戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会
 
-チラシ裏面-
私たちは戦争を許さない
―安保法制の憲法違反を訴える
2017年9月28日(木)18:30 日本教育会館にて市民大集会
(資料代500円)
 
日本教育会館
●地下鉄都営新宿線・東京メトロ半蔵門線神保町駅(A1出口)下車徒歩3分 
●地下鉄都営三田線神保町駅(A1出口)下車徒歩5分
●東京メトロ東西線竹橋駅(北の丸公園側出口)下車徒歩5分 
●東京メトロ東西線九段下駅(6番出口)下車徒歩7分
●JR総武線水道橋駅(西口出口)下車徒歩15分
 
 2016年4月26日、安保法制違憲国家賠償請求訴訟、及び差止請求訴訟が東京地裁に提起されました。私たちの自由と権利、そして平和憲法を不断の努力によって保持しなければならないと、弁護団は決意を固めたのです。これに応えて、再び戦争の惨禍が起こることを恐れる戦争体験者が、また、政府の行為によってこどもや孫が戦争の被害に遭うかもしれないと危惧する市民が、原告になりました。私たちは、歴史的な責務を果たすために立ち上がったのです。
 平和的生存権、被害論、立法不法行為、憲法改正・決定権、人格権、PKO、魂を削って書き上げた準備書面と学者意見書の数々。この8月には、国賠の第3次提訴、差止の追加提訴をそれぞれ行いました。そして、9月28日に行われる第5回国賠口頭弁論では、いよいよ証拠決定が行われようとしています。
 この日、原告のみなさんと弁護団と、気持ちを一つにして、新たな闘いに進む決意を再確認すべく、「私たちは戦争を許さない-安保法制の憲法違反を訴える」を開催します。このタイトルは、8月に岩波書店から出版された書籍と同じタイトルです。
 安保法制違憲訴訟は、現在、6500名を超える原告が、北海道から沖縄まで20地裁で23の裁判を提起しています。この裁判を勝訴に導くため、より多くのみなさんのご協力が必要です。原告の方も、この裁判を応援しようという方も、ぜひ、この集会に足を運んでください。
 
【安保法制違憲訴訟の会 共同代表・弁護士】
伊藤 真(法学館憲法研究所所長)
内田雅敏(戦争をさせない1000人委員会事務局長)
黒岩哲彦(東京大空襲弁護団事務局長)
杉浦ひとみ(コスタリカに学ぶ会事務局長)
田村洋三(名古屋高等裁判所元裁判官)
角田由紀子(一票で変える女たちの会呼びかけ人)
寺井一弘(日本弁護士連合会元事務総長)
福田 護(厚木基地訴訟副弁護団長)
 
【安保法制違憲訴訟を支える会 よびかけ人】
落合恵子(作家)
奥田愛基(元SEALDs)
鎌田 慧(ルポライター)
香山リカ(精神科医)
佐高 信(評論家)
澤地久枝(作家)
清水雅彦(憲法学者)
中野晃一(政治学者)
山口二郎(政治学者)
 
安保法制違憲訴訟の会
〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町17-6  渋谷協栄ビル2階
TEL:03-3780-1260 FAX:03-3780-1287
E-Mail: office@anpoiken.jp
 
東京地裁
安保法制違憲訴訟
第5回国賠期日
2017年9月28日(木)15時00分)
東京地裁
丸の内線・日比谷線・千代田線「霞ヶ関駅」A1出口から徒歩1分
有楽町線「桜田門駅」5番出口から徒歩約3分
 
9月28日 第5回国賠期日のスケジュール
14:00 東京地裁前集合 アピール行動開始!
14:20 入廷行進 
14:30 傍聴席の抽選に並ぶ
15:00 開廷 
18:30 市民大集会(日本教育会館)
(引用終わり)
 
 なお、8月4日に岩波書店から刊行された『私たちは戦争を許さない 安保法制の憲法違反を訴える』(安保法制違憲訴訟の会 編/四六・並製・カバー・208頁/1,300円+税)は、発売5日にして初版4,000部を完売し、直ちに2刷に入ったとか。
 岩波書店サイトで冒頭24頁分が「立ち読み」できます。
 是非お手にとってお読みいただきたいと思います。

 
(弁護士・金原徹雄のブログから/安保法制違憲訴訟関連)
2016年9月3日
東京・安保法制違憲訴訟(国賠請求)が始まりました(2016年9月2日)
※過去の安保法制違憲訴訟関連のブログ記事にリンクしています。
2016年9月6日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(1)~東京・国家賠償請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告訴訟代理人による意見陳述
2016年9月10日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(2)~東京・国家賠償請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告による意見陳述
2016年10月4日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(3)~東京・差止請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告訴訟代理人による意見陳述
2016年10月5日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(4)~東京・差止請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告による意見陳述
2016年12月9日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(5)~東京・国家賠償請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告代理人による意見陳述

2016年12月10日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(6)~東京・国家賠償請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告による意見陳述
2017年1月5日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(7)~寺井一弘弁護士(長崎国賠訴訟)と吉岡康祐弁護士(岡山国賠訴訟)の第1回口頭弁論における意見陳述
2017年1月7日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(8)~東京・差止請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告訴訟代理人による陳述
2017年1月8日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(9)~東京・差止請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告(田中煕巳さんと小倉志郎さん)による意見陳述

2017年2月14日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(10)~東京「女の会」訴訟(第1回口頭弁論)における原告・原告代理人による意見陳述

2017年3月15日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(11)~東京・国家賠償請求訴訟(第3回口頭弁論)における原告代理人による陳述 
2017年3月16日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(12)~東京・国家賠償請求訴訟(第3回口頭弁論)における原告(田島諦氏ほか)による意見陳述
2017年4月21日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(13)~東京・差止請求訴訟(第3回口頭弁論)における原告代理人による陳述

2017年4月22日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(14)~東京・差止請求訴訟(第3回口頭弁論)における原告による意見陳述(様々な立場から)

2017年6月23日
2017年8月7日
2017年8月8日

「特定複合観光施設区域整備推進会議取りまとめ~「観光先進国」の実現に向けて~」パブコメ募集にカジノ反対の圧倒的世論の結集を!(本編)

 2017年8月19日配信(予定)のメルマガ金原.No.2909を転載します。
 
「特定複合観光施設区域整備推進会議取りまとめ~「観光先進国」の実現に向けて~」パブコメ募集にカジノ反対の圧倒的世論の結集を!(本編)
 
 表題に掲げたパブコメへの意見送付をお奨めする前提として、少しおさらいをしておこうと思います。わずらわしいかもしれませんが、少し我慢してください。
 まず、昨年(2016年)12月15日に成立し(議員立法)、同月26日、公布と同時に施行(第3章を除く)された、いわゆるカジノ解禁推進法(カジノ推進派はおおむねIR推進法と呼称/正式名称「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」)の第5条は以下のように規定しています。
 
(法制上の措置等)
第五条 政府は、次章の規定に基づき、特定複合観光施設区域の整備の推進を行うものとし、このために必要な措置を講ずるものとする。この場合において、必要となる法制上の措置については、この法律の施行後一年以内を目途として講じなければならない。
 
 なお、この条文の意味を理解するためには、第2条の定義規定も併せて読む必要があります。
 
(定義)
第二条 この法律において「特定複合観光施設」とは、カジノ施設(別に法律で定めるところにより第十一条のカジノ管理委員会の許可を受けた民間事業者により特定複合観光施設区域において設置され、及び運営されるものに限る。以下同じ。)及び会議場施設、レクリエーション施設、展示施設、宿泊施設その他の観光の振興に寄与すると認められる施設が一体となっている施設であって、民間事業者が設置及び運営をするものをいう。
2 この法律において「特定複合観光施設区域」とは、特定複合観光施設を設置することができる区域として、別に法律で定めるところにより地方公共団体の申請に基づき国の認定を受けた区域をいう。
 
 要するに、カジノを中核とする「特定複合観光施設」を設置できる区域として、地方公共団体が申請して国が認定した「特定複合観光施設区域」を整備するために必要となる法制は、カジノ解禁推進法の施行後1年以内(つまり今年の年末まで)を目途として制定するということです。まだ法案という形で公表されていませんが、いわゆるカジノ実施法案が次の臨時国会に上程されるものと思われます(そういえば、民進、共産、自由、社民の野党4党が憲法53条に基づいて臨時国会の召集を要求したのが6月22日でしたから、そろそろ2ヶ月にるのですね。あれ、どうなったんでしょう?これほど憲法の規定を守る気のない内閣って、昭和22年5月3日の憲法施行以来、他にありましたっけ?)。
 
 カジノ実施法の内容を固めるための作業を実質的に担ってきたのが「特定複合観光施設区域整備推進会議」であり、同会議が7月31日に「特定複合観光施設区域整備推進会議取りまとめ~「観光先進国」の実現に向けて~」を公表したことをうけ、政府は、8月1日、同日~同月31日、上記取りまとめに関するパブリックコメントを募集するとともに、全国9箇所で説明・公聴会を開催する方針を明らかにしました
 
 まず、パブリックコメントです。
 首相官邸ホームページから、「意見募集について」を(少し長くなりますが)引用します。
 
「特定複合観光施設区域整備推進会議取りまとめ~「観光先進国」の実現に向けて~」
に対する意見募集について(平成29年8月1日 特定複合観光施設区域整備推進本部事務局)
(引用開始)
 「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(平成28年法律第115号)第5条において、政府は、特定複合観光施設区域の整備の推進を行うために必要となる法制上の措置について、同法の施行(平成28年12月26日)後1年以内を目途として講じなければならないこととされております。
 このため、本年4月以降、有識者会議である「特定複合観光施設区域整備推進会議」において制度設計の大枠の検討を進めてまいりましたところ、このたび、同会議の議論の取りまとめが行われました。
 つきましては、「観光先進国」の実現に向け、今後の制度設計の検討に当たっての参考とさせていただくため、当該「取りまとめ」について以下の要領で広く国民の皆様からの御意見を募集いたします。
なお、頂いた御意見に対する個別の回答はいたしかねますので、予めその旨ご了承願います。
1.意見募集対象
 特定複合観光施設区域整備推進会議取りまとめ~「観光先進国」の実現に向けて~
2.意見募集期間
 平成29年8月1日(火)から平成29年8月31日(木)まで
 (電子メール及びFAXの場合は午後5時まで、郵便の場合は終了日必着。)
3.意見提出方法
 氏名、所属(会社名、役職等)、住所、電話番号、FAX番号(FAXでの応募の場合のみ)及び電子メールアドレス(応募フォームでの応募の場合のみ)を必ず明記の上、以下のいずれかの方法でご提出願います。提出いただく意見等につきましては、日本語に限ります。なお、本要領に基づかない応募や電話による意見の受付は対応しかねますので、あらかじめ御了承下さい。
(1)応募フォームの場合
   こちらから意見を記載下さい。
(2)FAXの場合
   FAX番号:03-3504-1282
   特定複合観光施設区域整備推進本部事務局 宛て
(3)郵送の場合
   〒100-6012
   東京都千代田区霞が関3-2-5 霞が関ビルディング12階
   特定複合観光施設区域整備推進本部事務局 宛て
   ※封書に「パブリックコメント意見」と赤字で御記入下さい。
 また、電子政府の総合窓口e-GOVでも8月1日から意見を募集しております。(8月2日追記)
※金原注 e-GOVに掲載された「意見募集要領」には、電子名-ルによっても意見を送れるとの説明がありましたので、その部分を追記します。
(4)電子メールの場合
   電子メールアドレス:ir-ikenbosyu@cas.go.jp
   特定複合観光施設区域整備推進本部事務局 宛て
    ※件名には、必ず「パブリックコメント意見」とご記入下さい。
      ※ファイル形式をテキスト形式にして送付して下さい。 
※金原注 e-GOVの意見提出フォームで送る場合には、2000文字以内という制限があります。
4.意見の公開について
 御提出いただきました御意見については、氏名、住所、電話番号、FAX番号及びメールアドレスを除き、すべて公開される可能性があることを、あらかじめ御承知おき下さい。ただし、御意見中に個人に関する情報であって特定の個人を識別しうる記述がある場合及び個人・法人等の財産権等を害するおそれがあると判断される場合には、公表の際に当該箇所を伏せさせていただきます。
 御意見に附記された氏名、連絡先等の個人情報につきましては、適正に管理し、御意見の内容に不明な点があった場合等の連絡・確認といった、本案に対する意見公募に関する業務にのみ利用させていただきます。
(引用終わり)
 
 以上で、パブコメへの応募方法はご理解いただけたかと思います。
 「パブコメに自分の意見を送ったところで何が変わるということもない」と思って何もしなければ、結局、既定路線を支持する結果になるだけです。重要な政策課題に主権者として意思表示することは、自分なりの責任を果たすということですよね。
 まだ10日以上あります。まだまだ間に合います。自分だけではなく、周りの人にも「パブコメに意見を送ろう」と是非呼びかけてください。
 問題は意見の中身です。もちろん、ご自身の思うところを率直に書けば良いのですし、130頁もある「取りまとめ」に目を通さなければ書けないなどということはありません。
 そもそも、カジノを解禁すること自体に反対だという人にとって、カジノ解禁を前提とした「取りまとめ」を読まなければ意見が書けないはずはないですからね。
 ただ、そうは言っても、「何から書けば良いのか分からない」、「何か参考になる意見を読んでみたい」と思われる方もおられるでしょうから、参考サイトをいくつかご紹介しておきます。
 
※金原コメント
 釜井英法弁護士(日弁連カジノ・ギャンブル問題検討WG委員)が「拡散要請」とともに流した文章がNPJに取り上げられたということのようですが、読みどころは「カジノ反対パブコメ例」でしょう。全く手直しなしでコピペして使うのはどうかと思いますが、「参考にする」のは一向に構わないでしょう。その部分を引用します。
(引用開始)
■■カジノ反対パブコメ例■■
*自分の感覚に合う文案をコピーして使ってください。
*いろいろなところで出ているカジノ反対の意見をつまみ食いさせていただきました。
■意見
私は、「特定複合観光施設区域整備推進」にかかるカジノ賭博解禁に反対します。
■理由
○観光先進国としての日本を実現するためにカジノを合法化することについて
・カジノ頼みの国際会議や観光はまともではない。
・観光先進国の実現を賭博解禁で実現する発想が貧困である。
・安倍政権の新たな「賭け問題」である。
・世界の人々を引きつける観光資源の創造はカジノなしで行うことができる。日本のすばらしい観光資源を見つめることなく賭博で「観光客」を集めることは「美しい国日本」のすることではない。
・ハワイにはカジノは無いが世界の人々を惹きつけている。
・人を不幸にしたお金を収益源にすることは許されない。
・カジノに依存しないクリーンな観光立国を目指すべき。
○ギャンブル依存症対策について
・依存症対策はカジノをつくらないことが一番の対策である。
・入場回数制限など、いくつかの対策を掲げているが、発足当初の数年間はそれらの規制が守られても、やがて入場者数の減少などに伴い、そうした規制が徐々に緩和されて行く可能性がある。
○地域の経済振興に寄与するということについて
・カジノ賭博解禁を含む「特定複合観光施設区域整備推進」の目的の一つとして、地域経済の振興があげられている。しかしIRに客足を奪われ、周辺の商店街が衰退した海外の前例がある。人を不幸にし、地域の環境を破壊することで事業者(胴元)は利益をあげても、政府並びに関係者が期待する「地域経済の振興」に寄与するとは考えられない。
○カジノによる経済的効果について
・カジノを導入した韓国では、利益よりも依存症問題など負の影響の方が大きいと指摘されている。
・また、カジノ賭博場周辺の市民生活における環境汚染も社会問題になっている。
・依存症対策や、そうした社会的環境汚染対策にかかる経費などを考慮すれば、カジノによる経済的効果はほとんどないとみるべきである。
○「反社会的団体」との関係について
・人を不幸にすることで金を稼ぐ方法は、古来、戦争・麻薬・売春そして賭博だった。かつ、戦争以外は例外なく反社会的団体と深く結びついてきた。
・カジノは、やがてその道のプロである暴力団が絡め取って仕切ることになることが容易に推測できる。
○「世界最高水準のカジノ規制」に対する意見
・賭博を解禁しないことが世界最高水準のカジノ規制である。
・報告書にある「世界最高水準のカジノ規制」には、さまざまな規制が掲げられており、それだけでもカジノがいかに危険な施設であるかが読み取れる。そのような危険な施設は日本にはいらない。
(引用終わり)
  
※金原コメント 日弁連が2014年5月9日に発表した意見書で、カジノ解禁推進法成立前のものではありますが、カジノ反対の論拠は、今でもそのまま通用します。
 
◎大門実紀参議院議員(日本共産党)賭博、カジノ解禁法案反対討論

※金原コメント 昨年12月14日参議院本会議における反対討論です。この日の本会議では、神本美恵子議員(民進党・新緑風会)と大門議員が反対討論を、上月良祐議員(自由民主党)と清水貴之議員(日本維新の会)が賛成討論を行っていますが、ここでは大門議員の反対討論を取り上げます。参議院会議録から主要部分を引用します。「明治天皇も雲の上で怒っておられます。共産党頑張れと言っているんではないでしょうか。」というのがいいですね。
(引用開始)
 明治四十二年、公営賭博法案である競馬法が初めて我が国の議会に提出されました。衆議院では圧倒的多数で通過しましたが、社会的悪影響を懸念した貴族院では見事否決をされました。今や貴族院の面影はありませんが、参議院が本当に良識の府と呼ばれたいのであれば、数々の懸念が示され、国民多数も反対している本法案をきっぱり廃案にすべきであります。
 このカジノ解禁法案に反対する最大の理由は、この法案が、刑法で禁じられた犯罪行為である賭博を日本の歴史上初めて民営賭博という形で合法化しようというものだからであります。なぜ賭博が刑法で禁じられてきたのか。法務省の説明によれば、その理由は、賭博は人々を依存症に陥れ、仕事を怠けさせ、賭けるお金欲しさに窃盗、横領などの犯罪まで誘発して公序良俗を害するから、また、賭博が横行すればまともな経済活動も阻害されるからとしております。
 賭博は、歴史的に多くの事件やたくさんの人々の不幸を招いてまいりました。それは、対策を取れば防げるというような類いの問題ではなく、行為そのものを禁じるしかない、そういう立法事実があったからこそ禁止されてきたのであります。解禁してから対策を取ればいいというような軽い問題ではないということを発議者も安倍内閣もきちんと認識すべきであります。
 実際、賭博を解禁しておいてギャンブル依存症を増やさない方法など、どこにもありません。カジノを解禁している世界のどの国を見ても、あるのは依存症になった後の事後処置だけ、カウンセリングや病院での治療だけです。
 委員会の審議で発議者は、依存症対策としてシンガポールが行っている自己排除制度を挙げました。自己排除制度というのは、本人が私をカジノに入れないでくれ、家族がうちのお父さんをカジノに入れないでください、そういう申告を基に入れないようにしてもらう制度でありますけれども、そんな制度を使わなければならないこと自体、既に本人が相当重症の依存症になっている証拠であります。カジノを解禁しておいて依存症を増やさない対策など、どこにもありません。依存症を増やさない唯一の方法は、カジノ、賭博そのものを解禁しないことであります。
 今回の法案の核心である民営賭博の解禁が、刑法に照らして本当に許されるものなのか。従来、法務省は厳しい要件を示し、公的主体のものに限り、競馬法や競輪法など特別法を定めて賭博を認めてまいりました。民間主体の賭博を認めた例はありませんでした。本法案のように、完全民営の賭博を認めることは、今までの法務省の刑法解釈からすれば不可能であります。にもかかわらず、万が一それを認めるということになれば、憲法の解釈を勝手に変えて安保法制、戦争法を強行したと同じように、刑法そのものの趣旨を踏みにじる暴挙となることを厳しく指摘しておきます。
 発議者は一貫して、カジノが経済成長の起爆剤とか目玉だと言ってきました。しかし、賭博は新たな付加価値を生むものではありません。人のお金を巻き上げるだけの所業であり、経済対策に挙げるような話ではそもそもありません。雇用が増えると言いますが、増えた雇用の何倍もの人生が台なしにされることを忘れてはなりません。
 そもそも賭博が禁じられてきた理由の一つは、さきに述べたように、賭博が勤労の美風を損ない、経済活動を阻害することにあります。その立法事実は、江戸時代末期に遡ります。天保改革町触史料などによれば、江戸後期から末期にかけて、世相は乱れ、町のつじつじで昼間からばくちが行われ、博徒がはびこっていた。明治維新になって、新しい日本の建設、経済発展のためには、まず賭博撲滅、風俗矯正だということになり、明治天皇の下で定められた刑法において厳しく賭博を禁止することになったのです。
 こういう最初の立法時の趣旨を知った上で自民党の皆さんはカジノが経済の目玉などとのんきなことを言っているんでしょうか。明治天皇も雲の上で怒っておられます。共産党頑張れと言っているんではないでしょうか。
 大体、IRの目的は本当に観光立国なんでしょうか。カジノ推進のシンクタンクである大阪商業大学の谷岡一郎学長は、カジノによって高齢者のたんす預金など世の中に出にくいお金が回り始めることが期待される、カジノはギャンブラーだけを相手にしていては経営が安定しない、一定の所得と貯蓄を持つ中間層がいる日本の大都市圏が魅力ある市場、マーケットだ、そう言い放ちました。つまり、ターゲットは外国人観光客ではなく、お年寄りを含む日本人の貯蓄、金融資産だということであります。
 この間、ラスベガスやマカオなどの海外資本が日本のカジノへの投資意欲を示しておりますけれども、彼らもまた、日本の個人金融資産は魅力的な対象であると公言をしております。
 このIR、カジノ解禁法案の本質は、観光立国でも成長戦略でもありません。日本人の貯蓄を特に海外のカジノ資本に差し出すことにほかなりません。TPP同様、売国的な法案だということを厳しく指摘して、反対討論といたします。(拍手)
(引用終わり)
 
※金原コメント 皆さんは、カジノ解禁について、読売新聞が大々的に反対の論陣を張っていたことを記憶されているでしょうか?大変話題を呼んだ昨年12月2日付社説の一部を私のブログで抜粋引用していましたので(カジノ推進法案をめぐる和歌山の現状と読売新聞による徹底批判/2016年12月8日)、以下に再掲します。それにしても、「そもそもカジノは、賭博客の負け分が収益の柱となる。ギャンブルにはまった人や外国人観光客らの“散財”に期待し、他人の不幸や不運を踏み台にするような成長戦略は極めて不健全である。」というのは至言だと思いませんか?(しんぶん赤旗も見出しを引用したとか)
(引用開始)
 カジノの合法化は、多くの重大な副作用が指摘されている。十分な審議もせずに採決するのは、国会の責任放棄だ。
(略)
 自民党は、観光や地域経済の振興といったカジノ解禁の効用を強調している。しかし、海外でも、カジノが一時的なブームに終わったり、周辺の商業が衰退したりするなど、地域振興策としては失敗した例が少なくない。
 そもそもカジノは、賭博客の負け分が収益の柱となる。ギャンブルにはまった人や外国人観光客らの“散財”に期待し、他人の不幸や不運を踏み台にするような成長戦略は極めて不健全である。
 さらに問題なのは、自民党などがカジノの様々な「負の側面」に目をつぶり、その具体的な対策を政府に丸投げしていることだ。
(略)
 カジノは、競馬など公営ギャンブルより賭け金が高額になりがちとされる。客が借金を負って犯罪に走り、家族が崩壊するといった悲惨な例も生もう。こうした社会的コストは軽視できない。
 与野党がカジノの弊害について正面から議論すれば、法案を慎重に審議せざるを得ないだろう。
(引用終わり)
 
 あと、パブリックコメントとともに、政府が8月中に行うもう1つの企画が「説明・公聴会」です。首相官邸ホームページに掲載された概要によると、以下の日時・場所で行われます(意見表明及び傍聴の申込は終了していいますが、当日傍聴受付が行われる会場もいくつかあるようです)。
1.関東ブロック
・日時:平成29年8月17日(木)14時00分~16時00分
・会場:中央合同庁舎8号館1階講堂(東京都千代田区永田町1-6-1)
 ※当日はインターネットにて生中継いたします(ニコニコ動画)。
2.関西ブロック
・日時:平成29年8月18日(金)14時00分~16時00分
・会場:大阪合同庁舎第4号館(大阪市中央区大手前4-1-76)
3.中国ブロック
・日時:平成29年8月21日(月)14時00分~16時00分
・会場:広島合同庁舎4号館(広島市中区上八丁堀6番30号)
4.九州・沖縄ブロック
・日時:平成29年8月22日(火)12時30分~14時30分
・会場:福岡合同庁舎新館(福岡市博多区博多駅東2-11-1)
5.東北ブロック
・日時:平成29年8月23日(水)12時30分~14時30分
・会場:仙台第4合同庁舎(仙台市宮城野区鉄砲町1)
6.四国ブロック
・日時:平成29年8月24日(木)12時30分~14時30分
・会場:高松港湾合同庁舎(高松市朝日新町1-30)
7.北海道ブロック
・日時:平成29年8月25日(金)14時00分~16時00分
・会場:札幌第二合同庁舎(札幌市中央区大通西10丁目)
8.東海ブロック
・日時:平成29年8月28日(月)14時00分~16時00分
・会場:名古屋合同庁舎第1号館(名古屋市中区三の丸2-2-1)
9.北陸信越ブロック
・日時:平成29年8月29日(火)14時00分~16時00分
・会場:富山地方合同庁舎(富山県富山市牛島新町11-7)
 
 第1回の東京会場はニコニコで生中継されたそうですが、今さらプレミアム会員登録してまでタイムシフト視聴する気にもなりませんしね。第一、これほど公開の必要性が高い企画のネット配信がニコニコ生放送だけってどうなの?と思います。
 なお、「【考えよう、日本型IR!】IRに関する説明・公聴会」で動画検索をかけると、YouTubeにアップされている3分割の動画がヒットしますが、オリジナル動画の権利保有者との関係が判然としないので、リンクは控えておきます。
 昨日(18日)大阪で行われた説明・公聴会を報じた記事がいくつかある中で、「娯楽産業協会」というパチンコ業界を代表するメディア(?)に載っていたレポートの一部を引用しておきます。
 
(引用開始)
 意見表明者は、一般参加4名、団体参加12名。その内団体からは、大阪府・大阪市IR推進局、泉佐野市、和歌山県、関西広域連合広域観光・文化・スポーツ局、関西経済同友会、泉佐野青年会議所など、自治体関係者など活発な意見表明となった。その中で、自治体のIR誘致の申請に対しての公正な選考による国の認定要望についての意見があった。これに対しては、申請主体である自治体の治安対策、ギャンブル依存症対策など、しっかりと対応できる事が要件となるとして、「法律に則り、地方自治(議会)の議決により、地方公共団体の同意をどこまで、書き込めるのかが課題となります。IR推進会議の議論では、誘致申請する地方自治体は、地元の同意をきちんととられて、広く同意が得られ、納得をえられているという事が第一。今後、検討を深めて、法案を練っていきたい」とした。IR実現の目処(いつごろ法案が成立するのか等)ついては、まだ取りまとめの段階で未定(立法の立場にない)としているが、具体的にスケジュールを示して欲しいとの要望が強いとして、行政の立場では「法律案を早急に準備して、IR実施法案が成立する際には、可及的速やかに(示せるよう)準備を進めていく事を念頭にしている」と答えていた。
 一般質問も受付けたが、その中、主婦から、「大阪に住んでいますと破綻した事業ばかりを見続けてきた。これまでの事業では、良い話ばかりで、破綻した時の話は聞いた事がなかったが、IR施設が破綻した場合は、誰が責任をとるのですか」と質問があり、今回の取りまとめの規定では原則「民間事業者です」と答えていた。その他の質問では、カジノへの入場規制を厳正に規定しているというが、国会議員、公務員など、入場禁止にすべきとの意見があった。
(引用終わり)
 
 ところで、首相官邸ホームページを調べていると、「説明・公聴会の配布資料等について」というページがありました。
 そこに掲載された資料のうち、参考になりそうなものを2点ばかりご紹介しておきます。
 
※金原コメント 「取りまとめ」の本文は130頁、「概要」は多くの文字を詰め込んだ1頁で、いずれにしてもあまり「読もう」という気を起こさせませんが、この「説明・公聴会」でのプレゼン資料として作ったものは、PDF換算で34頁であり、手頃というにしてはなお多めですが、まだしも読んでみる気になるかもしれません。
 
※金原コメント 賛否双方からの意見の概要をまとめたものですが、日本司法書士会連合会の秋山淳氏が反対意見を述べておられましたので引用します。
(引用開始)
1 意見の趣旨
 「特定複合観光施設区域整備推進会議取りまとめ~『観光先進国』の実現に向けて~」で提案された規制を施しても、ギャンブル依存症対策など実効的な効果を上げられるか検証がされておらず不十分であり、カジノ賭博合法化推進のための法制上の措置を講じるべきではない。
2 意見の理由
(1)日本司法書士会連合会は、2016年(平成28年)12月15日付で、「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(「カジノ解禁法案」)の法制定に関し会長談話を発し、遺憾の意を表明している。
(2)カジノ解禁法案は、刑法で禁止されたカジノとホテル・商業施設等の複合施設が、観光及び地域経済振興に寄与し、財政の改善に資するとの考えのもと、カジノ解禁を目的とする。
 本法案ではその経済的効果のみを謳っているが、日本のギャンブル依存症患者は、厚生労働省研究班報告では成人人口4.8%に当たる536万人以上であり、カジノ先進国である欧米諸国の罹患率、成人人口1~2%と比べ、日本の罹患率は世界的に際立った数字である。日本は既に公営ギャンブルやパチンコが身近にあり、容易にアクセスできる点が主な要因である。
(3)ギャンブル依存症の問題点として、依存症患者はギャンブルに費やす金銭や時間を自分自身でコントロールできなくなり、借金を重ねた挙句多重債務に陥り、犯罪、自殺、離婚等一家離散につながることが既に起こっており、自身だけでなくその家族や親族、関係者への悪影響も計り知れず、依存症患者を完治させる方策も見つからない状況下で、その経済的効果のみを優先させることは妥当でない。また、経済効果による財政改善効果を依存症・犯罪対策に充てる必要が生じ、カジノ解禁が有効な施策となりうるか、深い懸念を抱かずにはいられない。
(4)カジノ解禁の弊害として、前述のギャンブル依存の蔓延の他、マネーロンダリング、治安悪化、多重債務問題再燃の危険等が懸念される。本取りまとめには、上記の弊害対策は用意されている。しかし、いずれも検証がされておらず不十分であり、カジノ被害を抑止すべき対策たりえるか甚だ疑問である。
(引用終わり)
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/カジノ関連)
2016年12月8日
カジノ推進法案をめぐる和歌山の現状と読売新聞による徹底批判
2017年2月27日
和歌山弁護士会「いわゆる「カジノ解禁推進法」の成立に抗議し、同法の廃止を求める会長声明」(2017年2月27日)と和歌山でのカジノ誘致の動き
2017年3月10日
「カジノで観光・まちづくり!?ちょっと、おかしいんとちゃうか!緊急トーク集会」3/13@プラザホープのご案内と4月・5月の「予告編」
2017年3月26日
「カジノあかん3・25大阪集会」動画のご紹介と12/12参議院内閣委員会での新里宏二弁護士と鳥畑与一静岡大教授の反カジノ意見陳述
2017年4月5日
「カジノ実施法案」作成作業が始まりました~クリーンなカジノの実現を目指して(!?)
2017年6月21日
和歌山でのカジノ誘致に反対する動き~和歌山弁護士会「会長声明」(6/16)とカジノ問題を考える和歌山ネットワーク準備会「市民集会」(7/19)
2017年7月5日
2017年8月18日

予告編・「特定複合観光施設区域整備推進会議取りまとめ~「観光先進国」の実現に向けて~」パブコメ募集にカジノ反対の圧倒的世論の結集を!

 2017年8月18日配信(予定)のメルマガ金原.No.2908を転載します。
 
予告編・「特定複合観光施設区域整備推進会議取りまとめ~「観光先進国」の実現に向けて~」パブコメ募集にカジノ反対の圧倒的世論の結集を!
 
 明日ブログに書く予定のテーマを予告編的にご紹介します。それは、「「特定複合観光施設区域整備推進会議取りまとめ~「観光先進国」の実現に向けて~」に対する意見募集について」というパブコメです。
 早い話が、昨年議員立法で成立したカジノ解禁推進法(特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律)第5条「政府は、次章の規定に基づき、特定複合観光施設区域の整備の推進を行うものとし、このために必要な措置を講ずるものとする。この場合において、必要となる法制上の措置については、この法律の施行後一年以内を目途として講じなければならない。」に基づき政府が準備中のカジノ実施法案の骨子を推進会議が取りまとめたので、その報告書についてパブコメを募集しているのです。
 我ながらうかつなことに、8月1日からパブコメが募集されていたことに、昨日になってようやく気がつきました。
 締切は8月31日なので、もう2週間もありませんが、今からでも何とか圧倒的多数の反対の民意をパブコメに反映させるべく頑張ろうと思いますので、同じ志を持たれる方のご協力をよろしくお願いします。
 
 今日は、本格的にブログを書いている時間がないので、今朝、速報的にFacebookで訴えた内容をそのまま以下に転載します。
 
【拡散大希望!】
 昨年議員立法であっという間にカジノ解禁推進法が成立してしまいましたが、実際にカジノを運営するためには、カジノ実施法を作らねばならず、解禁推進法の施行後1年以内(つまり今年末)をめどに実施法を整備することになっています。現在、「特定複合観光施設区域整備推進会議取りまとめ」結果についてのパブコメが募集されています(8月1日~8月31日)。まだ間に合います。圧倒的な反対の世論をパブコメに集中しましょう。
 実は、私も昨日ようやくパブコメに気がついたといううかつさでした。今日か明日のブログで取り上げるつもりですが、とりあえずFBで速報します。なお、パブコメ文案も載っている以下のサイト(NPJ【緊急のお願い】カジノ賭博解禁についてのパブコメ:10万通の反対意見を!)などを参考にしてください。

 なお、もう1つの参考資料として、昨年12月2日付の読売新聞社説を紹介しておきます。残念ながら、読売のWEBサイトではもう読めませんが、私がブログで一部引用していました(カジノ推進法案をめぐる和歌山の現状と読売新聞による徹底批判/2016年12月8日)。
 それにしても、「そもそもカジノは、賭博客の負け分が収益の柱となる。ギャンブルにはまった人や外国人観光客らの“散財”に期待し、他人の不幸や不運を踏み台にするような成長戦略は極めて不健全である。」というのは至言だと思いませんか?(赤旗も引用したとか)

(2016年12月2日付読売新聞社説から一部引用開始)
「カジノ法案審議 人の不幸を踏み台にするのか」
 カジノの合法化は、多くの重大な副作用が指摘されている。十分な審議もせずに採決するのは、国会の責任放棄だ。
(略)
 自民党は、観光や地域経済の振興といったカジノ解禁の効用を強調している。しかし、海外でも、カジノが一時的なブームに終わったり、周辺の商業が衰退したりするなど、地域振興策としては失敗した例が少なくない。
 そもそもカジノは、賭博客の負け分が収益の柱となる。ギャンブルにはまった人や外国人観光客らの“散財”に期待し、他人の不幸や不運を踏み台にするような成長戦略は極めて不健全である。
 さらに問題なのは、自民党などがカジノの様々な「負の側面」に目をつぶり、その具体的な対策を政府に丸投げしていることだ。
(略)
 カジノは、競馬など公営ギャンブルより賭け金が高額になりがちとされる。客が借金を負って犯罪に走り、家族が崩壊するといった悲惨な例も生もう。こうした社会的コストは軽視できない。
 与野党がカジノの弊害について正面から議論すれば、法案を慎重に審議せざるを得ないだろう。
(引用終わり) 

高橋和夫教授(放送大学)の「パレスチナ問題('16)」全15回を是非視聴して欲しい(再説)

 2017年8月17日配信(予定)のメルマガ金原.No.2907を転載します。
 
高橋和夫教授(放送大学)の「パレスチナ問題('16)」全15回を是非視聴して欲しい(再説)
 
-はじめに-
 以下の記事は、今年(2017年)1月26日に配信した「高橋和夫教授(放送大学)の「パレスチナ問題('16)」全15回を是非視聴して欲しい」を基に、現状に合わせて最低限の手直しを加え、再配信するものです。BS放送を受信できる環境にある方(もしくはケーブルテレビで放送大学を視聴できる方)に、是非「パレスチナ問題('16)」の視聴をお奨めしたいと思います。(金原徹雄)
 
 日本を代表する中東ウォッチャーの1人である高橋和夫放送大学教授(国際政治・中東研究)の存在は、私が放送大学(教養学部)に在学して勉強を続けている理由の1つ、それも小さくない理由の1つです。
 高橋教授が単独で主任講師を務めておられる科目の単位認定試験は全て記述式であり(しかもテキスト持込不可)、付け焼き刃の試験勉強では歯が立たないということで知られています。
 例えば、私が受講した「パレスチナ問題('16)」の平成28年度第2学期単位認定試験(平成29年1月22日実施)の問題は次のようなものでした。
 
【設問】以下のうちから1問を選び750字以上800字以内で答えなさい。
問1 ラビンについて論じなさい。
問2 エルサレム公開大学について論じなさい。 
 
 このうちのどちらかを選び、印刷教材(テキスト)もノートもなく、800字詰解答用紙に750字分以上の分量で答案を(50分以内で)書かなければならないのですから大変です。特に、問1はテキストをしっかり読み込んでいれば何とかなりますが、問2は放送教材(テレビ授業)を真剣に視聴していなければ(出来れば繰り返し)お手上げです。
 私がどちらを選択して解答したかを書くのは控えておきましょう。
 けれども、「パレスチナ問題('16)」を履修し、放送教材を繰り返し視聴し、印刷教材も熟読したおかげで、以下のようなニュースに接した際の理解度が格段に深まったことは間違いないでしょう。
 
NHK NEWS WEB 2017年1月23日 10時55分
トランプ大統領 来月イスラエル首相と首脳会談へ
(抜粋引用開始)
 アメリカのトランプ大統領は22日、イスラエルのネタニヤフ首相と電話で会談し、イスラエルが最大の脅威と位置づけるイランへの対応などで緊密に連携することで一致し、来月上旬、ホワイトハウスで首脳会談を行うことを明らかにしました。
(略)
 トランプ大統領は、オバマ前大統領と比べてイスラエル寄りの姿勢が鮮明で、国際社会が首都と認めていないエルサレムにアメリカ大使館を移転すると公言しているほか、次のイスラエル大使にはイスラエルの入植活動を支持する人物を指名しています。イランに対しても核合意の破棄を示唆するなど、アメリカのこれまでの中東政策を大きく変える可能性もあり、ネタニヤフ首相との直接会談が注目されます。
(略)
 エルサレムには、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地があり、イスラエルは首都だと主張していますが、パレスチナ暫定自治政府も将来の国家の首都だとしていて、帰属をめぐる対立が続いています。このため、国際社会はエルサレムをイスラエルの首都とは認めず、各国ともエルサレムに大使館を置いていません。
 一方、トランプ大統領は、オバマ前大統領と比べてイスラエル寄りの姿勢を鮮明にしていて、「アメリカ大使館をエルサレムに移転する」と選挙期間中に公言しました。また、トランプ大統領が次のイスラエル大使に起用したフリードマン氏も「イスラエルの永遠の首都エルサレムで任務につくことを楽しみにしている」とコメントするなど、強硬姿勢で知られています。
 アメリカでは1995年に議会が、エルサレムをイスラエルの首都と定め、大使館を移転することを盛り込んだ法案を可決しています。しかし、当時のクリントン大統領以降、歴代の政権はアメリカの安全保障上の利益を守るためとして、大統領の権限で半年ごとにこれを先送りしていて、オバマ前大統領も先月1日、先送りを指示しました。
 アメリカ大使館の移転は中東和平を根底から覆す懸念があり、現実的ではないという見方が強い中、今度の半年の期限を迎えることし5月までにトランプ大統領がどう判断するか注目されます。
(引用終わり)
 
 なお、「5月までにトランプ大統領がどう判断するか注目」されていたアメリカ大使館のエルサレム移転問題について、とりあえずは、歴代大統領と同様、半年間先送りすることになりました(2017年5月31日ロイター「米大統領、在イスラエル大使館のエルサレム移設を延期へ=関係筋」)。
 
 以上のニュースを読むだけでも、ネタニヤフという指導者、オバマ大統領とネタニヤフ首相との冷え切った関係、エルサレム帰属問題、占領地へのイスラエルによる入植、イランと「P5+1」(国連常任理事国+ドイツ)による2015年の核合意など、「パレスチナ問題('16)」で学んだ様々なことが頭の中を駆け巡ります。
 是非1人でも多くの方に「パレスチナ問題('16)」を受講していただきたいのですが、それが無理でも、BSを視聴できる環境があれば放送教材(45分授業×15回)を誰でも視聴できますし、印刷教材も市販されています。
 おりしも、放送大学では、9月末までの集中放送授業期間に入っており、幸い、「パレスチナ問題('16)」全15回もこれから放送されます。
 
 
テレビ科目(BS 231ch)
「パレスチナ問題('16)」
 第1回~第14回
  2017年8月31日(木)~9月6日(水)20:45~22:15
 第15回
    2017年9月7日(木)20:45~21:30
   
 昨年、履修前の段階で「高橋和夫教授の「パレスチナ問題('16)」(放送大学)受講のすすめ」(2016年8月6日)という記事を書き、シラバスなどもご紹介していますが、ここでもう一度、シラバスを引用したいと思います。
 
(引用開始)
主任講師 高橋 和夫(放送大学教授)
放送メディア テレビ
放送時間(平成29年度)
 第2学期:(日曜)14時30分~15時15分(2017年10月~)
講義概要
パレスチナ問題の起源から説き起こし現状を解説し、この問題の展開を跡付ける。そして、その将来を展望する。パレスチナ地域の情勢の記述を縦糸に、周辺諸国や地域外の大国の動きを横糸にして、陰影の深いパレスチナ問題のタペストリーを編み上げる。
「現代の国際政治('13)」や「国際理解のために('13)」などの関連科目にも目配りしつつ勉強していただきたい。
 
シラバス
第1回 パレスチナ問題以前のパレスチナ
パレスチナ問題はイスラムとユダヤの二千年の対立として語られる例が多いが、それは事実に反している。なぜならばイスラムには1400年ほどの歴史しかないからだ。そのイスラムが二千年も争っているはずがない。またパレスチナ人にはキリスト教徒も多い。こうした基礎的な事実を踏まえながら、パレスチナ問題が起こる以前のパレスチナの歴史を概観する。
【キーワード】バビロン捕囚、十字軍、オスマン帝国、キリスト教、イスラム教、アラブ人、パレスチナ人
 
第2回 ポグロムとシオニズム
ヨーロッパにおける民族主義の高揚がポグロムの背景にあった。そして、それがシオニズムを生みだすことになった。シオニズムの背景にあった帝国主義的な発想や社会主義の思潮にも言及しつつ、パレスチナをめぐる国際情勢を紹介する。
【キーワード】民族主義、ポグロム、ヘルツル、ユダヤ人国家、シオニズム、フセイン・マクマホン書簡、バルフォア宣言、委任統治
 
第3回 夢と悪夢
イスラエルの成立時に発生したパレスチナ難民の問題をめぐる議論を振り返る。また大国の関与について語る。
【キーワード】イスラエルの成立、ナクバ、豊穣なる記憶、元兵士たちの証言、11分後の承認、トルーマン大統領
 
第4回 スエズのかなたへ
スエズ運河をめぐる国際政治を振り返る。1956年戦争とアラブ民族主義の高まり、そして1967年戦争のアラブ統一運動の挫折が、そのテーマとなる。
【キーワード】スエズ運河、ムスリム同胞団、スエズ動乱、ハンガリー動乱、アイゼンハワーの決断、6日戦争
 
第5回 アラブ世界の反撃
1967年の戦争での敗北が、パレスチナ解放闘争の指導者アラファトの台頭を準備した。そしてエジプトとシリアは1973年10月イスラエルを奇襲して、中東情勢に新しい局面を開いた。
【キーワード】カラメの戦い、ファタハ、サダト、ミサイルの森、石油危機、キャンプ・デービッド合意
 
第6回 変わるイスラエル
イスラエルは、中東系の人々の流入により、ヨーロッパ的な国家から中東的な雰囲気の国家へと変貌しつつある。また経済的に豊かになったイスラエルは、世界各地からの「ユダヤ教徒」の流入に直面している。変化するイスラエルの姿を描く。
【キーワード】アシュケナジム、セファルディム、イスラエル市民権を持つアラブ人、三階建ての家、ユダヤ人の定義問題
 
第7回 レバノン戦争
平和条約によってエジプトからの圧力から解放されたイスラエルは、その軍事力をレバノンに拠点を置いていたPLOへの攻撃に向けた。イスラエル史上初の「選択による戦争」であった。
【キーワード】生きた宗教の博物館、レバノン内戦、選択による戦争、チュニスへ、サブラとシャティーラ
 
第8回 ペレストロイカと冷戦の終結
1985年3月にゴルバチョフがソ連の最高権力者になると冷戦が終わり始めた。それは国際政治における地殻変動を意味していた。対米関係の改善を目指したゴルバチョフはユダヤ人のソ連からの出国を認めた。洪水のように移民がソ連からイスラエルに押し寄せ中東情勢に大きな影響を与えた。
【キーワード】ゴルバチョフ、ペレストロイカ、新思考、ユダヤ人出国問題
 
第9回 インティファーダ
1987年パレスチナのヨルダン川西岸とガザ地区で民衆のインティファーダ(一斉蜂起)が開始された。武器を使わずに石を投げたりタイヤを燃やしたりの抗議行動がイスラエルの占領政策を揺さぶった。
【キーワード】石の戦い、「腕を折れ」、折れないパレスチナ人、ハマスの登場
 
第10回 オスロ合意
冷戦の終結と湾岸戦争でのイラクの敗北が、PLOを決定的に不利な状況に追い込んだ。その状況下でノルウェーがイスラエルとPLOの間のオスロ合意で大きな役割を果たしたのは、中立的であったからではない。それは親イスラエル的であったからだ。30年以上の時の流れの後に、この合意の意味を考える。
【キーワード】湾岸危機、湾岸戦争、アラファト金脈の構図、ノルウェーという国、ガザ・エリコ先行自治、アラファトの足元と手の内、ノルウェーの森
 
第11回 ラビン/その栄光と暗殺
オスロ合意以降の情勢を動かした中心人物はラビンであった。その栄光に満ちた経歴を振り返る。また、その暗殺が中東和平プロセスに与えた意味を考える。
【キーワード】ネクタイを締められなかった男、1967年戦争の勝利、イスラエルの「ドゴール」、中東和平プロセス、暗殺
 
第12回 ネタニヤフとバラク
ラビンの死亡以降の情勢をネタニヤフとバラクというイスラエルの二人のライバル政治家に焦点をあてながら跡付ける。そして2期8年を務めたアメリカのビル・クリントン大統領の中東和平を仲介への努力を歴史的な文脈に位置付ける。
【キーワード】エンテベの軌跡、恐怖と希望、「ピアノを弾くゴルゴ13」、クリントンの中東和平
 
第13回 揺らぐシリアのアサド体制
イスラエルと一貫して対立してきたシリアでは、1970年代より二代にわたるアサド家の支配が続いている。両国間の懸案はイスラエル占領下にあるシリア領土のゴラン高原である。しかし、アサド体制が揺らいでいる現在、交渉は期待できない。アサド家の支配を揺るがしているのは、シリア内戦である。内戦の混乱はイラク情勢と連動して「イスラム国」という異物を生み出した。混迷するシリア情勢の地域政治への意味を考える。
【キーワード】ダマスカスのスフィンクス、眼科医、ゴラン高原、アラブの春とシリア内戦、アラウィー派、「イスラム国」、シリアという地名
 
第14回 アメリカの中東政策
アメリカの中東政策を特徴づけているのは、イスラエルへの強い支持である。なぜアメリカはイスラエルを支持するのだろうか。その背景を考えたい。
【キーワード】AIPAC、キリスト教原理主義、Jストリート、変わるアメリカのユダヤ社会
 
第15回 残された課題
クリントンの和平努力の挫折後の情勢を概観する。その特徴はアラファトの逝去とハマースの台頭である。そして最後に和平実現のために越えなければならない残された課題を語る。
【キーワード】キャンプ・デービッド、ハマース、国境、入植地、エルサレム、帰還権 
(引用終わり)
 
 印刷教材(テキスト)も市販されています。高橋教授が全15回を担当される科目では、放送教材(テレビまたはラジオ)で語られていることがそのまま印刷教材(テキスト)で文字になっているということはなく、基本的に同じテーマを取り上げていても、その内容は相当に独自性があります。多くの人へのインタビューは基本的に放送教材でしか聴けませんし、逆に印刷教材にしか書いていないこともあります。
 ですから、単にテレビを視聴しただけでは高橋教授の伝えたいことを十分に受け止めたことになりませんので、是非印刷教材もお読みいただければと思います(少し高いですけどね)。
パレスチナ問題 (放送大学教材)
高橋 和夫
放送大学教育振興会
2016-03-01

 
 この「パレスチナ問題(’16)」は、既に閉講となっているラジオ科目「第三世界の政治」の後継科目という位置付けだろうと思います。
 長らく、高橋先生が放送大学で学生に向かって、あるいは一般視聴者に向かって語り続けてきた「パレスチナ問題」について、集大成となる番組を作ろうという意気込みで制作されたのではないだろうかというのが、最初に私が全15回の講義を視聴し終えた際の感想でした。
 
 現在、放送大学で開講されている高橋和夫教授が単独で主任講師を務めておられる科目は、テレビ3科目、ラジオ1科目あります。そして、平成29年度第1学期の集中放送授業期間には、これら4科目が全て放送されます(放送されない科目も結構あるのにです)。
 このうち、テレビ科目「現代の国際政治('13)」は既に放送が終わりましたが、ラジオ科目「国際理解のために('13)」及びテレビ科目「世界の中の日本('15)」については、9月に集中放送されます。
 以上3科目の、放送予定、講義概要、印刷教材をまとめてご紹介しておきます。
 
放送メディア テレビ(BS231チャンネル)
放送時間(平成29年度)
 第2学期:(金曜)19時00分~19時45分(2017年10月~)
講義概要
国際政治の風景を太いタッチで描く。本書の二つのキーワードは、アメリカとイスラムである。アメリカという視点からイスラム世界を、イスラムという視点からアメリカを語る。両者の視点の交わった点に浮かび上がってくる風景は、アメリカの一極覇権の衰退である。
その衰退の大きな要因はイラクとアフガニスタンの戦争の負担である。イラクとアフガニスタンの経験を踏まえて、戦争の新しい形を紹介する。全体を通じて21世紀の国際政治の新しい風景を描きだす。
印刷教材
現代の国際政治 (放送大学教材)
高橋 和夫
放送大学教育振興会
2013-03-01

 
放送メディア ラジオ(BS531チャンネル)
放送時間(平成29年度)
     9月15日(金)~29日(金)21時30分~22時15分
 第2学期:(日曜)10時30分~11時15分(2017年10月~)
講義概要
高校までに世界史を勉強しなかった層を対象とする。国際理解のための基本知識を内容としている。二部構成で第一部は世界の宗教を語る。具体的にはユダヤ教、キリスト教、イスラム教、そしてゾロアスター教を紹介する。こうした宗教のつながりを強調する。さらに、それぞれが、どのような世界観を教え、どのような生活規範を求めているかを論じる。その宗教の信徒に敬意と理解をもって接触できるようにするためである。第二部では、東アジアの国際情勢を紹介する。そして領土問題とは、何なのか、なぜ発生するのか。そうした、領土問題理解の前提となる知識を提供した後に、日本の抱える領土問題について論じる。ここでも、対立する議論の優劣ではなく、どのような主張が展開されているのかを、淡々と述べる。第二部が、全体として世界の中で日本の置かれた地位を理解する背景知識となれば幸いである。
印刷教材
国際理解のために (放送大学教材)
高橋 和夫
放送大学教育振興会
2013-03-01

 
放送メディア テレビ(BS231チャンネル)
放送時間(平成29年度)
  第1回
   2017年9月22日(金)7:30~8:15
  第2回~第15回
   2017年9月23日(土)~9月29日(金)7:30~9:00
 第2学期:(日曜)9時00分~9時45分(2017年10月~)
講義概要
幕末以来、日本人が手本としてきた外国は欧米の大国であった。しかし、それが本当に国民に幸福をもたらしたのだろうか。所得ばかりでなく、教育、医療、女性の社会進出、治安、環境の保全などの指標で測った際に世界最高の生活水準とされるのは、大国ではなく北欧諸国である。日本でも、大国の地位ではなく国民の生活水準の向上を国家目的とする選択が示されても良いのではないだろうか。
そうした問題意識の下で、北欧諸国の経験を踏まえながら、外交、人口減少、外国人労働者、移民、メディアなどの面での日本の課題に光を当てる。世界の中の日本を北欧という鏡に映し出しながら語りたい。
印刷教材
 私は、過去2回、高橋先生の開講科目の最終回における学生・視聴者への最後の言葉を文字起こししてご紹介したことがあります。
 ここに、その文字起こしを再掲したいと思います。
 私が、なぜ高橋先生の科目の受講・視聴を推奨しているのか、その一端をご理解いただけるのではないかと思うからです。
 
「現代の国際政治('13)」第15回での高橋和夫教授からのメッセージ
「さてこの15回のシリーズ、見ていただきましたけれど、いかがだったでしょうか?『うん、高橋、国際政治がよく分かったぞ』とおっしゃる方がいらっしゃるかもしれません。しかし、私にとっては、分かっていただくだけでは十分ではありません。問題は、これから皆さんが、世界を良くするためにどのように行動するかということにかかっていると私は思うわけです。ですから、知識を持っているということだけでは十分ではないわけです。これから皆さんは、人生という大きな答案用紙に、生涯という時間をかけて、世界を良くするための行動という答案を書いていただきたいというのが、担当講師である高橋の切なる皆さんへのお願いです。
 知識だけでは十分ではありません。その知識をいかに行動に変えるのか、そして、この行動によって、1人1人の行動によって、世界をいかに良くしていくのかということが、今問われていると思います。知識を持つということは、責任を持つということで、最後に皆さんにとんでもなく大きな宿題を出してしまったような気がしております。15回ご静聴ありがとうございました」
 
「パレスチナ問題('16)」第15回での高橋和夫教授からのメッセージ
「最後に、皆さんに一言だけお願いしたいことがあって、このお願いは、是非この風景の中でしたいと思って、この映像を撮ってまいりました。
~スタジオからエルサレムに転換~
 このシリーズの冒頭でエルサレムをご覧いただきました。その時はひどいサンドストームに覆われたエルサレムでした。今日このシリーズを締めくくるにあたって、再び同じエルサレムをご覧いただきたいと思います。しかし、今日のエルサレムは、朝日を浴びたエルサレムです。鮮明に見えていると思います。エルサレムが鮮明に見えるように、皆さまの中東理解も、より鮮明になったものと期待いたしております。
 このシリーズを終わるにあたり、私は、1つだけ皆さまにお願いしたいと思います。シリーズは終わるんですけど、これをもって皆さまのパレスチナ問題との関わりを終わりにしていただきたくないのです。これをきっかけに、パレスチナ問題を考え続けていただきたいと思います。関心を持ち続けていただきたいと思います。そして、この問題の解決のために、国際政治は何を出来るのか、そして、日本が何を出来るのか、そして、1人1人が何をできるのかを考えていただきたいと思います。
 さらに、この問題を見つめるにあたっては、国際政治という大きな枠組から見ていただきたいんですけれど、同時に、国際政治の動きが、現地の難民キャンプのパレスチナ人、占領地のパレスチナ人、あるいは、1人のイスラエルの母親に、父親にどういうインパクトを与えるのかという、下からの視点を大切にしていただきたいと思います。
 私も皆さまとともに、この問題を見つめる新しい旅に今出発したいと思います。」
 
(弁護士・金原徹雄のブログから)
2013年8月17日
2015年1月23日
2016年8月6日
2017年1月26日

さだまさしさんが語る「風に立つライオン基金」/ナターシャ・グジーさんが歌う『防人の詩』

 2017年8月16日配信(予定)のメルマガ金原.No.2906を転載します。
 
さだまさしさんが語る「風に立つライオン基金」/ナターシャ・グジーさんが歌う『防人の詩』
 
 私のブログのタイトルページに、最初に「憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します」と表記したのは、2012年8月30日、「wakaben6888のブログ」を立ち上げ、最初の記事「中川五郎さんの新しい“We Sall Overcome”=『大きな壁が崩れる』」を配信した時でした(これが私の最初のブログでした)。
 その後、メインのブログをライブドアに乗り換えることにし、2013年1月24日、「橋本美香さん「原発、憲法…理想を現実に」」「弁護士・金原徹雄のブログ」のスタートを切った時にも、タイトルページには、そのまま「憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します。」というモットーを踏襲しました(末尾に「。」を付けただけの違いです)。
 
 もともと、3.11福島第一原発事故の衝撃からスタートした「メルマガ金原」を転載するためのブログでしたから、「原発を無くしたい」は当然でしたし、また、徐々に憲法問題について書く比重が増えてきていましたので(元来、「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」事務局長として、憲法問題こそ主たる守備範囲でしたから)、「憲法を大事にし」も当然のことでした。
 その2つとやや異質なモットー「音楽を愛し」を何故書き込んだのか?今となっては明確な記憶もありませんが、ただ、上記2つのブログの最初の配信記事のテーマが、それぞれ中川五郎さんと橋本美香さんだったというのは象徴的ですね。

 昭和42年(1967年)4月に和歌山市で中学生になった私が、その後の数年間、「関西フォーク」のシャワーを浴び続けたことが、その後の人格形成に大きな影響を及ぼしたことはほぼ間違いありません。
 今日のブログで取り上げる「さだまさし」さんの歌を私が初めて聴くことになったのは、他の人もそうではないかと思いますが、グレープという男性2人組のユニットの2曲目のシングル『精霊流し』(1974年4月リリース)の大ヒットによってでしたから、私はもう大学生となっており、関西フォークの波も引いたあとでした。
 その後、ソロとなって以降のさだまさしさんのヒット作の数々は、もちろんよく聴いていましたし、必ずしもファンということではないものの、日本を代表するアーティストとして敬意を抱いてきました。

 これまで、私のブログで直接さださんを取り上げたことはなかったかと思いますが、さださんの楽曲『防人の詩』をナターシャ・グジーさんのコンサートで聴いて感銘を受け、それを「メルマガ金原」に書き(3.11の約半年後のことでした)、後に、それを「弁護士・金原徹雄のブログ」に転載しています(
ナターシャ・グジーさんコンサートと今後の映画上映会(in和歌山市)/2011年9月3日)。少し長くなりますが、再掲したいと思います。
 
(引用開始)
ナターシャ・グジー 東日本大震災復興支援チャリティーコンサート
「ふるさとへの想い」(ホテル アバローム紀の国2F鳳凰の間)
 昨日(2011年9月3日)午後5時から、「ゆら・山﨑法律事務所 創設5周年記念企画」として、6歳の時にチェルノブイリ原発事故に遭遇し(お父さんが原発労働者)、11年前から日本で音楽活動をしているナターシャ・グジーさんのコンサートが行われ、参加してきました。
 台風12号による警報発令中にもかかわらず、満員の観客がナターシャ・グジーさんの素晴らしい演奏と歌唱を堪能しました。
 ちなみに、ウクライナの民族楽器パンドゥーラによる弾き語りでしたが、63本の弦を持つハープ族の楽器で、左手が低音部、右手が高音部のメロディーラインを受け持っているようでした。
 演奏された曲目は以下のとおりです。
   1 キエフの鳥の歌
   2 深い井戸
   3 眠りたくないの
   4 木の根
   5 いつも何度でも
   6 秋桜(コスモス)
   7 防人の詩(うた)
   8 遙かに遠い空
   9 白い翼
   10 あなたの声にこころが開く
   11 アヴェマリア(カッチーニ)
  (以下、アンコール)
   12 見上げてごらん夜の星を
   13 ふるさと(会場全員で)
 
 「いつも何度でも」はYou Tube で何度もくり返し視聴していましたが、さだまさし作の2曲、特に『防人の詩』は印象的でした。私たちの世代にとって、『防人の詩』といえば、どうしても戦争映画『二百三高地』の主題歌であって、作者の意図がどうあれ、一定のバイアスがかかった目で見てしまいがちです。
 しかし、ナターシャさんが、そのようなバイアス抜きでこの曲を取り上げていることは明らかで、あらためて『防人の詩』を、作品そのものとして味わいたいと思いました。
 
『防人の詩』の歌詞(著作権の関係で全文のコピー・ペーストができませんのでリンク先をご覧ください)
 
(『防人の詩』の)歌詩は『万葉集』第16巻第3852番に基づいて作られている。
原文:鯨魚取 海哉死為流 山哉死為流 死許曽 海者潮干而 山者枯為礼
訓読:鯨魚(いさな)取り海や死にする山や死にする死ぬれこそ海は潮干て山は枯れすれ
大意:海は死にますか 山は死にますか。死にます。死ぬからこそ潮は引き、山は枯れるのです。
 
 上記「万葉集」の歌は、短歌ではなく、「旋頭歌(せどうか)」という「五七七」を2連つらねる形式の歌です。
 手元にある「萬葉集釋注八」(伊藤博著/集英社文庫)に、以下のような解釈が載っていました。
「世に永久不変のものは何一つない、ましてや、人間がはかないのはやむを得ないのだ、と嘆く歌。海は再び満ち、山も春来りなばまた萌える、そしてさらに干て枯れて、迷いや悲しみを永久に繰り返すのだという輪廻の思想も、意識の底にあるのであろう」 
 
 さだまさしさん作の長い歌詞の最後の連はこう締めくくられています。
  海は死にますか 山は死にますか
  春は死にますか 秋は死にますか
  愛は死にますか 心は死にますか
  私の大切な故郷(ふるさと)もみんな
  逝ってしまいますか
 
 私は、ここまで聴いて、ナターシャ・グジーさんが、なぜ『防人の詩』を自分の持ち歌として歌っているのか、その一端が理解できたように思いました。
 
 なお、昨晩のコンサートで、ナターシャ・グジーさんは、チェルノブイリ事故のことには触れて、「大事なことを忘れて悲劇を繰り返すことのないように」という話はされましたが、おそらく意図的に、福島の事故には一切触れられませんでした(私はその点にも共感しました)。
(引用終わり)
 
 いかがでしょうか。私と同世代の方の中には、『防人の詩』というと右翼がかった曲という印象を持たれている方が(かつての私と同じように)少なからずおられるのではないでしょうか。このような聴き方、歌い方もあるのだということを知っていただければと思います。
 
 さて、今日ブログで取り上げる、さだまさしさんに関する話題というのは、さださんが、僻地医療、災害救援の従事者を支援するために2年前に設立した団体(一般社団法人「風に立つライオン基金」)が、公益財団法人の認定を受けたことを受け、法人の創設者として日本記者クラブで8月3日に会見された動画が公開されていますので、ご紹介することにしたものです。
 
「風に立つライオン基金」さだまさしさん 2017.8.3(1時間17分)

 
 会見はかなり長いものですから、要点をまとめた「会見リポート」を引用させていただきます。
 
(引用開始)
歌から生まれる人助けの連鎖
 「風に立つライオン」という歌を発表したのは、日本がバブル景気のただ中にあった1987年。実在の医師をモデルに、アフリカで巡回医療に従事する日本人青年の悩みや喜びを、故国に残してきた女性への手紙という形で描いた。この歌を聴き医学の道を志したという人に近年よく会うと、さだ氏は語る。海外協力隊員や商社員からも「心の支えにしている」との声が届くという。
 その歌の名を冠した「風に立つライオン基金」は2015年、僻地医療や災害救援の従事者を物心両面で支援する一般社団法人として発足した。この夏、公益財団法人の認定を受けたのを機に創設者として会見に臨んだ。
 原点は1982年に故郷を襲った長崎大水害。「日本中の人が長崎に力を貸してくれた」。自身も急きょ東京でチャリティーコンサートを開催。その後、東日本大震災や熊本地震に至るまで、ライブ会場に募金箱を置いたり、音楽仲間と歌を届けたりといった試みを重ね、援助団体などとのつながりを育ててきた。
 財団化したのは組織として支援を長く続けるため。この2年間も茨城、熊本、岩手、鳥取などの被災地を訪れ義援金を手渡してきた。公益法人として認められたのは「地道にやってきたことを、見る人は見てくれ、志をわかってくれたからでは」。その分、責任は重くなったと気を引き締める。
 海外ではケニアやスーダン、フィリピンで障害児医療などに取り組む日本人を支援してきた。医療関係者に会員登録してもらい、災害時に被災地のニーズとマッチングする仕組みも稼働させ、すでに約100人が登録済み。活動の幅を広げるため、個人や企業、団体に寄付を呼びかけていく。
 いったんは被災者になった人が、別の地域に災害があれば助ける側に回る。そんな「お返し」の自然な広がりを目の当たりにしてきた。阪神淡路大震災以降の20年間で日本人のボランティア観は大きく変わったとみる。「慈善活動や善意の運動という力みが消え、自分にできることをするのは当然と考える若者が増えた」。彼らを応援しようと昨年、高校生向けボランティア・アワードを立ち上げた。
 歌手などによる支援活動も「ひところは売名と言われるのを恐れる風潮もあったが、今はなくなった」と感じる。これらの変化を先導してきた1人が、さだ氏なのではないか。そう思わせる会見だった。
日本経済新聞社編集委員兼論説委員 石鍋 仁美 
(引用終わり)
 
 私は、会見でのさださんのお話に耳を傾けながら、「風に立つライオン基金」公式サイトの該当ページを閲覧していました。
 皆さんにもこの方法をお薦めしたいと思います。とてもよくお話の内容が理解できますよ。
 実は、私自身、日本記者クラブでの会見動画を見て、「風に立つライオン基金」の存在を初めて知りました。 
  さださんをはじめ、同基金に協力されている全ての方に敬意を表したいと思います。

全国戦没者追悼式における「おことば」(平成元年~29年)を通読して見えてくること

 2017年8月15日配信(予定)のメルマガ金原.No.2905を転載します。
 
全国戦没者追悼式における「おことば」(平成元年~29年)を通読して見えてくること
 
 今から72年前の夏、日本政府は、1945年(昭和20年)8月14日、前月26日に連合国(米国、英国、中国、後にソ連が参加)によって発せられた「ポツダム宣言」を受諾する旨、スイス及びスウェーデン駐在の日本公使館を経由して連合国に通告するとともに、天皇は、「終戦の詔書」を宣布しました。
 その上で、同年9月2日、東京湾条の米戦艦ミズーリ上において、「大日本帝国天皇陛下及日本国政府ノ命ニ依リ且其ノ名ニ於テ」重光葵外務大臣が、そして、「日本帝国大本営ノ命ニ依リ且其ノ名ニ於テ」梅津美治郎参謀総長が、それぞれ「降伏文書」に署名しました。
 以上のとおり、日本の降伏はいつか?と尋ねられれば、「1945年8月14日」(降伏の意思を対外的に明示した日であり、かつ「終戦の詔書」が宣布された日)もしくは「1945年9月2日」(法的な「降伏文書」に署名した日)のどちらかと答えることが合理的なように思われますが、我が国では長らく、「8月15日」を終戦記念日とする習わしが続いています。
 少し調べてみたところ、法律あるいは政令で定められている訳ではないものの、1982年(昭和57年)4月13日の閣議決定(鈴木善幸内閣)「『戦没者を追悼し平和を祈念する日』について」において、「先の大戦において亡くなられた方々を追悼し平和を祈念するため、『戦没者を追悼し平和を祈念する日』を設け」てその期日を8月15日とし、この日に政府は「昭和38年(1963年)以降毎年実施している全国戦没者追悼式を別紙のとおり引き続き実施する」と定めたのだそうです(まだ閣議決定そのものは探せていませんので、Wikipediaからの孫引きです)。
 その根拠は、言うまでもなく、8月14日付の「終戦の詔書」を昭和天皇自ら録音し、それを全国でラジオ放送して「連合国に降伏した」という事実を国民に知らせたのが8月15日の正午であった(いわゆる「玉音放送」)ということにあるのでしょう。
 私には、「戦没者を追悼し平和を祈念する日」が「8月15日」とされたのが良いとか悪いとか論評するつもりはありません。ただ、日本人として、上に引用した「ポツダム宣言」「終戦の詔書」「降伏文書」のような、現在の私たちが暮らす今の日本社会の基底をなす歴史的文書について、最低限の知識を持つ必要があるのではないか、ということを言いたいだけです。
 少し前になりますが、そのような問題意識から、「“平和主義と天皇制”~「戦後レジーム」の本質を復習する」(2014年8月30日)という文章を書いたことがあります。少し長めですが、ご一読いただければ幸いです。
 
 ところで、上に引用した1982年閣議決定でも触れられていますが、「8月15日」には、昭和38年(1963年)以来、毎年「全国戦没者追悼式」が開催されています。1965年以降、会場は日本武道館に固定されましたが、1963年(まだ武道館は建設中だったでしょう)は日比谷公会堂で、1964年は何と靖国神社で開催されたとか。いわゆるA級戦犯合祀前であったので、昭和天皇も参列したのでしょうけど。
 
 巻末のリンク一覧をご覧いただければ明らかなとおり、私は、2014年以来、「8月15日」には、毎年、全国戦没者追悼式での安倍晋三首相式辞と今上陛下「おことば」を精読してきました。
 ということで、今年も両方とも読んでみました。
 まずは、安倍首相式辞です。
 
(引用開始)
 天皇皇后両陛下のご臨席を仰ぎ、全国戦没者追悼式を、ここに挙行致(いた)します。
 先の大戦において、三百万余の方々が、祖国を想(おも)い、家族の行く末を案じながら、苛烈を極めた戦場に斃(たお)れ、戦禍に遭われ、あるいは戦後、遠い異郷の地で命を落とされました。いま、その御霊(みたま)の御前(おんまえ)にあって、御霊安かれと、心より、お祈り申し上げます。
 いま、私たちが享受している平和と繁栄は、かけがえのない命を捧(ささ)げられた皆様の尊い犠牲の上に築かれたものであります。私たちは、そのことを、ひとときも忘れることはありません。改めて、衷心より、敬意と感謝の念を捧げます。
 戦争の惨禍を、二度と、繰り返してはならない。
 戦後、我が国は、一貫して、戦争を憎み、平和を重んずる国として、ただひたすらに、歩んでまいりました。そして、世界の平和と繁栄に力を尽くしてきました。私たちは、歴史と謙虚に向き合いながら、どのような時代であっても、この不動の方針を貫いてまいります。
 未(いま)だ、争いが絶えることのない世界にあって、我が国は、争いの温床ともなる貧困の問題をはじめ、様々な課題に、真摯に取り組むことにより、世界の平和と繁栄に貢献してまいります。そして、今を生きる世代、明日を生きる世代のため、希望に満ちた明るい未来を切り拓いていく。そのことに、全力を尽くしてまいります。
 終わりに、いま一度、戦没者の御霊に平安を、ご遺族の皆様には、ご多幸を、心よりお祈りし、式辞といたします。
(引用終わり)
 
 首相式辞については、これまで書いてきたことに特段付け加えることもありませんので、とりあえず、昨年の記事(全国戦没者追悼式で今年も貫徹された“安倍3原則”(付・天皇陛下「おことば」を読む/2016年8月15日)の一部を引用するにとどめます。
 
(引用開始)
 結局、言っていることは2013年以来変わっていません。
 先に述べた安倍「式辞」の3大特徴、すなわち、
① アジア諸国民に対する加害についての反省と哀悼の意は絶対に表明しない。
② 「不戦の誓い」も述べない。
③ 戦没者の犠牲の上に“平和と繁栄”があることを強調しながら、“平和と繁栄”をもたらしたものが「国民のたゆまぬ努力」であるとは言わない。
については、完璧に昨年までの「式辞」を踏襲しています。今やこれを「安倍3原則」と名付けても良いでしょう。
(引用終わり)
 
 以上が昨年の感想ですが、今年の式辞を読んでも、基本的に「安倍3原則」を修正する必要は認めません。ただ、「戦後、我が国は、一貫して、戦争を憎み、平和を重んずる国として、ただひたすらに、歩んでまいりました。そして、世界の平和と繁栄に力を尽くしてきました。私たちは、歴史と謙虚に向き合いながら、どのような時代であっても、この不動の方針を貫いてまいります。」という(読んでいてよく恥ずかしくないな、と思いますけど)歯の浮くようなパラフレーズが、「安倍3原則」その③の後半「“平和と繁栄”をもたらしたものが「国民のたゆまぬ努力」であるとは言わない。」と矛盾するのでは?という疑問を持つ方がひょっとしておられるかもしれませんが、この点については、中野晃一上智大学教授のスピーチに触発されて書いた私のブログ「安倍晋三首相の“正気とは思えない”歴史認識と積極的平和主義~第13回アジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)での基調講演から」(2014年10月11日)をじっくりとお読みいただきたいと思います。
 
 首相式辞はこれくらいにして、天皇陛下「おことば」です。こちらの方も変わらないといえば変わらないのですが、来年末にも退位ということなので、この辺で、即位以降、毎年の「全国戦没者追悼式」で述べてこられた「おことば」全29回を振り返ってみようと思います。全て宮内庁ホームページに掲載されているものですが、平成元年から29年まで、一気に読めるサイトはなかなかないと思うので、少し手間ですが、やってみることにします。
 
全国戦没者追悼式
 
 「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に際し,ここに,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,尊い命を失った数多くの人々やその遺族を思い,深い悲しみを新たにいたします。
 顧みれば,終戦以来すでに44年,国民のたゆみない努力によって築きあげられた今日の平和と繁栄の中にあって,苦難にみちた往時をしのぶとき,感慨は誠につきるところを知りません。
 ここに,全国民とともに,我が国の一層の発展と世界の平和を祈り,戦陣に散り,戦禍にたおれた人々に対し,心から追悼の意を表します。
 
 本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たって,ここに,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,尊い命を失った数多くの人々やその遺族を思い,深い悲しみを新たにいたします。
 顧みれば,終戦以来すでに45年,国民のたゆみない努力により今日の平和と繁栄が築きあげられましたが,苦難にみちた往時をしのぶとき,感慨は誠につきることがありません。
 ここに,全国民とともに,我が国の一層の発展と世界の平和を祈り,戦陣に散り,戦禍にたおれた人々に対し,心から追悼の意を表します。 
 
 本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,ここに,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,尊い命を失った数多くの人々やその遺族を思い,深い悲しみを新たにいたします。
 顧みれば,終戦以来すでに46年,国民のたゆみない努力により築きあげられた平和と繁栄の中にあって,苦難にみちた往時をしのぶとき,深い感慨を禁じ得ません。
 ここに,全国民とともに,戦陣に散り,戦禍にたおれた人々を心から追悼し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。
 
 本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,ここに,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,尊い命を失った数多くの人々やその遺族を思い,つきることのない悲しみを覚えます。
 終戦以来すでに47年,国民のたゆみない努力により,我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが,苦難にみちた往時をしのぶとき,深い感慨を禁ずることができません。
 ここに,全国民とともに,戦陣に散り,戦禍にたおれた人々を心から追悼し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。
 
 本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,ここに,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,尊い命を失った数多くの人々やその遺族を思い,深い悲しみをまた新たにいたします。
 終戦以来すでに48年,国民のたゆみない努力により,我が国の平和と繁栄が築きあげられましたが,苦難にみちた往時をしのぶとき,感慨はつきることがありません。
 ここに,全国民とともに,戦陣に散り,戦禍にたおれた人々を心から追悼し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。
 
 本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,かけがえのない命を失った数多くの人々やその遺族を思い,つきることのない悲しみを覚えます。
 顧みれば,終戦以来すでに49年,今日,国民のたゆみない努力により築き上げられた平和と繁栄の中にあって,苦難にみちた往時をしのぶとき,深い感慨を禁じ得ません。
 ここに全国民とともに,戦陣に散り,戦禍にたおれた人々に対し,心から追悼の意を表し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。
 
 本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,尊い命を失った数多くの人々やその遺族を思い,深い悲しみを新たにいたします。
 終戦以来すでに50年,国民のたゆみない努力によって,今日の平和と繁栄が築き上げられましたが,苦難に満ちた往時を思い,感慨は誠に尽きるところを知りません。
 ここに歴史を顧み,戦争の惨禍が再び繰り返されぬことを切に願い,全国民とともに,戦陣に散り,戦禍にたおれた人々に対し,心から追悼の意を表し,世界の平和と我が国の発展を祈ります。
 
 本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,尊い命を失った数多くの人々とその遺族を思い,深い悲しみを新たにいたします。
 顧みれば,終戦以来既に51年,国民のたゆみない努力によって今日の平和と繁栄が築き上げられましたが,苦難に満ちた往時をしのぶとき,改めて感慨を禁じ得ません。
 ここに歴史を顧み,戦争の惨禍が再び繰り返されないことを切に願い,全国民と共に,戦陣に散り,戦禍にたおれた人々を心から追悼し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。
 
 本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い,深い悲しみを新たにいたします。
 終戦以来既に52年,国民のたゆみない努力によって今日の平和と繁栄が築き上げられましたが,苦難に満ちた往時をしのぶとき,感慨は尽きることがありません。
 ここに歴史を顧み,戦争の惨禍が再び繰り返されぬことを切に願い,全国民と共に,戦陣に散り,戦禍にたおれた人々に対し心から哀悼の意を表し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。
 
 本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,尊い命を失った数多くの人々とその遺族を思い,深い悲しみを新たにいたします。
 終戦以来既に53年,国民のたゆみない努力により,今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが,苦難に満ちた往時をしのぶとき,深い感慨を覚えます。
 ここに歴史を顧み,戦争の惨禍が再び繰り返されぬことを切に願い,全国民と共に,戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し,心から哀悼の意を表し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。
 
 本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い,深い悲しみを新たにいたします。
 終戦以来既に54年,国民のたゆみない努力により,今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが,苦難に満ちた往時をしのぶとき,深い感慨を禁じ得ません。
 ここに歴史を顧み,戦争の惨禍が再び繰り返されぬことを切に願い,全国民と共に,戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し,心から追悼の意を表し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。
 
 本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,尊い命を失った数多くの人々とその遺族を思い,深い悲しみを新たにいたします。
 終戦以来既に55年,国民のたゆみない努力により,今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが,苦難に満ちた往時をしのぶとき,感慨は尽きることがありません。
 ここに歴史を顧み,戦争の惨禍が再び繰り返されないことを切に願い,全国民と共に,戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し,心から追悼の意を表し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。
 
 本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い,深い悲しみを新たにいたします。
 終戦以来既に56年,国民のたゆみない努力により,今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが,苦難に満ちた往時をしのぶとき,感慨は今なお尽きることがありません。
 ここに歴史を顧み,戦争の惨禍が再び繰り返されないことを切に願い,全国民と共に,戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し,心から追悼の意を表し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。
 
 本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い,深い悲しみを新たにいたします。
 終戦以来既に57年,国民のたゆみない努力により,今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが,苦難に満ちた往時をしのぶとき,感慨は今なお尽きることがありません。
 ここに歴史を顧み,戦争の惨禍が再び繰り返されないことを切に願い,全国民と共に,戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し,心から追悼の意を表し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。
 
 本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い,深い悲しみを新たにいたします。
 終戦以来既に58年,国民のたゆみない努力により,今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが,苦難に満ちた往時をしのぶとき,感慨は今なお尽きることがありません。
 ここに歴史を顧み,戦争の惨禍が再び繰り返されないことを切に願い,全国民と共に,戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し,心から追悼の意を表し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。
 
 本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い,深い悲しみを新たにいたします。
 終戦以来既に59年,国民のたゆみない努力により,今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが,苦難に満ちた往時をしのぶとき,感慨は今なお尽きることがありません。
 ここに歴史を顧み,戦争の惨禍が再び繰り返されないことを切に願い,全国民と共に,戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し,心から追悼の意を表し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。
 
 本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い,深い悲しみを新たにいたします。
 終戦以来既に60年,国民のたゆみない努力により,今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが,苦難に満ちた往時をしのぶとき,感慨は今なお尽きることがありません。
 ここに歴史を顧み,戦争の惨禍が再び繰り返されないことを切に願い,全国民と共に,戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し,心から追悼の意を表し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。
 
 本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い,深い悲しみを新たにいたします。
 終戦以来既に61年,国民のたゆみない努力により,今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが,苦難に満ちた往時をしのぶとき,感慨は今なお尽きることがありません。
 ここに歴史を顧み,戦争の惨禍が再び繰り返されないことを切に願い,全国民と共に,戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し,心から追悼の意を表し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。
 
 本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い,深い悲しみを新たにいたします。
 終戦以来既に62年,国民のたゆみない努力により,今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが,苦難に満ちた往時をしのぶとき,感慨は今なお尽きることがありません。
 ここに歴史を顧み,戦争の惨禍が再び繰り返されないことを切に願い,全国民と共に,戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し,心から追悼の意を表し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。
 
 本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い,深い悲しみを新たにいたします。
 終戦以来既に63年,国民のたゆみない努力により,今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが,苦難に満ちた往時をしのぶとき,感慨は今なお尽きることがありません。
 ここに歴史を顧み,戦争の惨禍が再び繰り返されないことを切に願い,全国民と共に,戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し,心から追悼の意を表し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。
 
 本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い,深い悲しみを新たにいたします。
 終戦以来既に64年,国民のたゆみない努力により,今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが,苦難に満ちた往時をしのぶとき,感慨は今なお尽きることがありません。
 ここに歴史を顧み,戦争の惨禍が再び繰り返されないことを切に願い,全国民と共に,戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し,心から追悼の意を表し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。
 
 本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い,深い悲しみを新たにいたします。
 終戦以来既に65年,国民のたゆみない努力により,今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが,苦難に満ちた往時をしのぶとき,感慨は今なお尽きることがありません。
 ここに歴史を顧み,戦争の惨禍が再び繰り返されないことを切に願い,全国民と共に,戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し,心から追悼の意を表し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。
 
 本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い,深い悲しみを新たにいたします。
 終戦以来既に66年,国民のたゆみない努力により,今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが,苦難に満ちた往時をしのぶとき,感慨は今なお尽きることがありません。
 ここに歴史を顧み,戦争の惨禍が再び繰り返されないことを切に願い,全国民と共に,戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し,心から追悼の意を表し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。
 
 本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い,深い悲しみを新たにいたします。
 終戦以来既に67年,国民のたゆみない努力により,今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが,苦難に満ちた往時をしのぶとき,感慨は今なお尽きることがありません。
 ここに歴史を顧み,戦争の惨禍が再び繰り返されないことを切に願い,全国民と共に,戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し,心から追悼の意を表し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。
 
 本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い,深い悲しみを新たにいたします。
 終戦以来既に68年,国民のたゆみない努力により,今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが,苦難に満ちた往時をしのぶとき,感慨は今なお尽きることがありません。
 ここに歴史を顧み,戦争の惨禍が再び繰り返されないことを切に願い,全国民と共に,戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し,心から追悼の意を表し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。
 
 本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い,深い悲しみを新たにいたします。
 終戦以来既に69年,国民のたゆみない努力により,今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが,苦難に満ちた往時をしのぶとき,感慨は今なお尽きることがありません。
 ここに歴史を顧み,戦争の惨禍が再び繰り返されないことを切に願い,全国民と共に,戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し,心から追悼の意を表し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。
 
 「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い,深い悲しみを新たにいたします。
 終戦以来既に70年,戦争による荒廃からの復興,発展に向け払われた国民のたゆみない努力と,平和の存続を切望する国民の意識に支えられ,我が国は今日の平和と繁栄を築いてきました。戦後という,この長い期間における国民の尊い歩みに思いを致すとき,感慨は誠に尽きることがありません。
 ここに過去を顧み,さきの大戦に対する深い反省と共に,今後,戦争の惨禍が再び繰り返されぬことを切に願い,全国民と共に,戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し,心からなる追悼の意を表し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。
 
 本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い,深い悲しみを新たにいたします。
 終戦以来既に71年,国民のたゆみない努力により,今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが,苦難に満ちた往時をしのぶとき,感慨は今なお尽きることがありません。
 ここに過去を顧み,深い反省とともに,今後,戦争の惨禍が再び繰り返されないことを切に願い,全国民と共に,戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し,心から追悼の意を表し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。
 
 本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い,深い悲しみを新たにいたします。
 終戦以来既に72年,国民のたゆみない努力により,今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが,苦難に満ちた往時をしのぶとき,感慨は今なお尽きることがありません。
 ここに過去を顧み,深い反省とともに,今後,戦争の惨禍が再び繰り返されないことを切に願い,全国民と共に,戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対して,心から追悼の意を表し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。
 
 以上、即位以来29回の全国戦没者追悼式での「おことば」を通読すると、ほぼ3期に分類できることが分かります。
 
第1期 平成元年~平成6年
 昭和天皇が「全国戦没者追悼式」で読み上げていた「おことば」が見つからないかと思って探しているのですが、まだ見つけられていません。けれども、即位直後からいきなり内容を変えるとは思いにくいので、この第1期の文章は、前代を基本的に踏襲しているような気がします(確言できませんけど)。
 
第2期 平成7年~平成26年
 村山富市内閣が成立して1年以上が経過した平成7年の「全国戦没者追悼式」で、初めて第3節に、「歴史を顧み,戦争の惨禍が再び繰り返されぬことを切に願い,全国民とともに」という言葉が挿入され、以後、これが踏襲されています。
 
第3期 平成27年~平成29年
 政権に復帰した安倍晋三内閣と皇室の対立が外信でも(だからこそ?)報道される中、いわゆる安保法制審議中の平成27年の「おことば」には、異例とも言える表現が盛り込まれました。
 とりわけ特徴的なのは第2節であり、「終戦以来既に70年,戦争による荒廃からの復興,発展に向け払われた国民のたゆみない努力と,平和の存続を切望する国民の意識に支えられ,我が国は今日の平和と繁栄を築いてきました。戦後という,この長い期間における国民の尊い歩みに思いを致すとき,感慨は誠に尽きることがありません。」に、今上天皇の平和への思いが凝縮していると見るべきでしょう。
 残念ながら、第2節におけるこの表現は、翌年からまた元に戻ってしまいましたが、同じく平成27年「おことば」から第3節に付加された「さきの大戦に対する深い反省と共に」という部分のうち、「深い反省とともに」は生き残り、平成28年、29年の「おことば」に引き継がれています。
 
 29年分の「全国戦没者追悼式」における天皇陛下「おことば」を一気に通読することなどめったにないでしょうが、今上天皇が29年間、守り続けてきた「ことば」、新たに付け加えた「ことば」が何だったのか、じっくり考えながら読んでいただければと思います。
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/戦没者追悼関連)
2014年1月14日
2014年8月15日
2014年8月18日
2015年8月15日
2016年8月15日

「翁長知事を支え、辺野古に新基地を造らせない県民大会」(2017年8月12日)動画を視聴する

 2017年8月14日配信(予定)のメルマガ金原.No.2904を転載します。
 
「翁長知事を支え、辺野古に新基地を造らせない県民大会」(2017年8月12日)動画を視聴する
 
 昨日(8月12日)午後2時から、沖縄県那覇市の奥武山陸上競技場で、「翁長知事を支え、辺野古に新基地を造らせない県民大会」(主催:辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議)が開かれました。
 地元紙・沖縄タイムスの号外を引用しておきます。
 
沖縄タイムス+ 2017年8月12日 16:03
【号外】辺野古の海守る 新基地反対県民大会 オスプレイに抗議
(抜粋引用開始)
 政府が4月に辺野古で護岸整備に着手してから初めての数万人規模の大会。辺野古の工事差し止めを求め国を提訴した翁長雄志知事の後押しを目的に計画された。
 大会宣言では「政府は法解釈をねじ曲げ、沖縄の民意を圧殺し続けている。手続きを無視し、法をおかしてまで行う埋め立て工事は即中止すべきだ」と指摘。「私たちは翁長知事が提訴した辺野古新基地建設工事を差し止める訴訟を支持し、全力で支える」と宣言した。 
 特別決議は「米軍は事故の原因究明を行わないまま事故からわずか2日後、普天間飛行場で同型機の飛行を全面的に再開させた。沖縄県民の生命を軽視する蛮行だ」と強く抗議。普天間の即時閉鎖・撤去、オスプレイの配備撤回や自衛隊への導入撤回などを日米両政府に要求している。決議は後日、両政府の関係省庁・機関に直接提出する。
 大会では翁長知事のほか、稲嶺進名護市長、城間幹子那覇市長らが登壇。16日から米サンフランシスコなどを訪れ、市民団体や労働組合、米連邦議会議員などに辺野古反対を訴える訪米団も決意を表明した。
(引用終わり)
 
 大会の模様は、琉球新報が動画をアップしてくれていましたので、これをご紹介します。常に沖縄の状況を知ろうと努めることが、連帯のための第一歩です。是非視聴してください。
 
翁長知事を支え、辺野古に新基地を造らせない県民大会(1時間22分)

[オール沖縄会議共同代表]
3分~ 高里鈴代氏(基地・軍隊を許さない行動する女たちの会共同代表)
8分~ 玉城愛氏(元SEALDs RYUKYU)
12分~ 高良鉄美氏(琉球大学法科大学院教授)
[オール沖縄会議現地闘争部]
18分~ 山城博治氏(沖縄平和運動センター議長)
[島ぐるみ会議地域ブロック代表]
22分~ 島ぐるみ会議糸満
25分~ 辺野古新基地建設中止を求める会(八重山)
27分~ 島ぐるみ会議宮古
31分~ 島ぐるみ会議宜野湾
33分~ 島ぐるみ会議名護
[総がかり行動実行委員会共同代表挨拶]
36分~ 福山真劫氏(戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会共同代表)
39分~ [オール沖縄第2次訪米団紹介]
[米国からの連帯]
42分~ ピース・アクション
43分~ ベテランズ・フォー・ピース
[自治体首長からの挨拶]
46分~ 城間幹子氏(那覇市長)
49分~ 野国昌春氏(北谷町長)
53分~ 稲嶺進氏(名護市長)
[翁長知事挨拶]
58分~ 翁長雄志氏(沖縄県知事)(~1時間11分)
1時間12分~ [特別決議・採択]
1時間15分~ [大会宣言・採択]
1時間19分~ [メッセージボード(NO辺野古新基地)(我々はあきらめない)アピール]
 
 以上は、沖縄での県民大会の模様でしたが、これに呼応・連帯した企画が全国何箇所かで開催されたようで、そのうち、「首都圏行動」の模様を伝える動画がいくつかアップされていましたので、そのうちの1つをご紹介しておきます。
 
2017.08.12「翁長知事を支え、辺野古に新基地を造らせない沖縄県民大会」に呼応する8/12首都圏行動(1時間41分)

 
(弁護士・金原徹雄のブログから/最近の沖縄関連)
2017年6月24日
2017年7月24日

「沖縄 さまよう木霊~基地反対運動の素顔~」(MBSドキュメンタリー映像'17)上映後の斉加尚代氏ディレクターによるトークを視聴する

 2017年8月13日配信(予定)のメルマガ金原.No.2903を転載します。
 
「沖縄 さまよう木霊~基地反対運動の素顔~」(MBSドキュメンタリー映像'17)上映後の斉加尚代氏ディレクターによるトークを視聴する
 
 2016年10月18日午前9時45分頃、ヘリパッド建設工事が進む沖縄県東村高江N1表ゲート付近で撮影されたこの映像をご記憶でしょうか?
 
沖縄県民を土人呼ばわりする大阪府警の機動隊員(41秒)

 
「「ボケ、土人が」。この高江で10月、大阪府警機動隊員が工事に反対する住民に放ったこの言葉に沖縄県知事はじめ県をあげて反発がひろがった。しかし、この発言に対し「差別とは断言できない」、「差別用語かどうか、一義的に述べることは困難」という趣旨の閣議決定がなされ、その後、基地に反対する人々への冷たい非難が増幅したかに見え、むしろ基地に反対する住民たちの振る舞いこそが「問題である」との声が広がった。インターネットで検索すると沖縄の市民運動そのものを「過激」「違法」とする書き込みが続々登場。オスプレイなどこれ以上の基地負担に抵抗する声は、戦後71年を経てもなお、米軍と米軍の意向のまま動く日本政府によって、押さえつけられている。
(略)
 「土人」発言をきっかけに広がった沖縄ヘイトといえる現象。基地反対運動に関し、これまで以上に虚実が入り交じる言論空間。私たちが見つめるべき真実は、どこにあるのだろう。番組では、日本全体の100分の1にあたる沖縄の声をめぐり、インターネットを中心にデマやバッシングが広がり、沖縄の人々の1の声が、いかに消されようとしているのか、その裏側と構図に迫りたい。」
 
 以上の文章は、2017年1月30日(月)午前0時50分~(29日深夜)、大阪の毎日放送から放映された「MBSドキュメンタリー映像'17 沖縄 さまよう木霊~基地反対運動の素顔~」について、番組ホームページに掲載された事前告知の一部を引用したものです。
 事前告知を読んだ時点では、番組ディレクターは、2015年9月に「なぜペンをとるのか~沖縄の新聞記者たち」(第59回JCJ賞受賞)という優れた番組を作った斉加尚代さんではないか?と推測しているだけでしたが、やはり斉加さんでした。
 その斉加さんをお招きし、「沖縄 さまよう木霊~基地反対運動の素顔~」を上映して斉加さんのお話をうかがうという企画が、去る7月30日、池袋の立教大学で行われ、その動画が、自由メディアFmATVchからアップされていましたのでご紹介したいと思います。
 
7・30「沖縄 さまよう木霊」上映会&トークショー(1時間11分)

冒頭~ 挨拶 砂川浩慶氏(メディア総合研究所所長/立教大学社会学部メディア社会学科教授)
3分~ 挨拶 斉加尚代氏(毎日放送ディレクター)
この後、MXテレビ「ニュース女子」と「沖縄 さまよう木霊~基地反対運動の素顔~」が上映されたが、配信動画からはカットされている。
6分~ トークショー① 斉加さんへのインタビュー(聞き手は砂川教授)
24分~ 西谷修氏(立教大学特任教授・哲学)
31分~ 斉加尚代氏
35分~ 沖縄への偏見をあおる放送をゆるさない市民有志 呼びかけ人
43分~ トークショー② 斉加さんへの質疑応答
 
 会場で斉加さんのお話を伺った方は、その直前に、1月2日に放送されたMXテレビの「ニュース女子」、そして「沖縄 さまよう木霊~基地反対運動の素顔~」を視聴しており、斉加さんもそれを前提としてお話されているのですから、ちゃんと理解しようとすれば、それらを見たいですよね。
 はなはだ安直な方法としては、前者であれば、「MXテレビ/ニュース女子/1月2日」というようなキーワードで動画検索する、後者であれば、「沖縄 さまよう木霊~基地反対運動の素顔~」という番組名を入力してYouTubeDailymotionで動画検索する、という方法があることはあります(もちろん自己責任で)。
 
 斉加さんのお話を補足する意味で、以下には、「MBSドキュメンタリー映像'17」ホームページでの番組告知に掲載された「取材ディレクターより」の一部をご紹介します。これは、私がブログに書いたこの番組の予告記事(放送予告・拡散希望1/29『沖縄 さまよう木霊~基地反対運動の素顔~』(MBSドキュメンタリー映像’17/2017年1月4日)の中で引用していたものです。
 
(引用開始)
 「ほっとけなかった・・・」。沖縄で生まれ、沖縄で暮らす泰真実さん(51)が、基地反対運動に関わることになったその理由です。(略)とても優しい目をしている泰さん。ところが、インターネットで検索すると「沖縄極左」「過激派」とされています。1970年代の「成田闘争」で暗躍した人物だと告発する脅迫状が職場にも届きました。根も葉もないデマです。こうして、泰さんはネット空間で危険人物に仕立て上げられていったのです。
 「基地反対運動は県外からの活動家、過激派」。大阪府警機動隊員が東村高江のゲート前で暴言を吐いて以降、そんな言説が一気に広まりました。高江を取り囲んで建設される米軍北部訓練場のヘリ着陸帯に反対する人たちをめぐる風雪。衝撃だったのが、ネット空間に影響されてか「基地反対派は酷いねえ」と身近な人たちが語り始めたことでした。
(略)
 今回の取材では、「え、まさか」と絶句する出来事が連続しました。その極めつけが、「基地反対派は暴力集団」「危険で近寄れない」と新年早々に報じた東京の情報番組。信じる人はいないだろう、そう思う自分がいると同時に、取材を通じ「デマは大げさなほど拡散する」ことを身をもって体験した自分がいます。この言論空間で基地反対運動への虚構が作り上げられようとしているのだとしたら、一体それはなぜなのか・・。突き詰めれば、私たちの暮らしそのものにもつながっていて、沖縄だけの問題ではありません。であるならば、今こそ基地反対運動の素顔に目を向けてほしい。そんな思いで作った番組です。ずっと語り継がれてきた沖縄戦と戦後72年間を歩んできた沖縄の人々の歴史に思いを寄せることができたなら、この言論空間にさまよう木霊(こだま)のありように、これからどう向き合うべきか考えることができると思うのです。
(引用終わり)
 
 上記の私のブログでは、番組案内の枠を超え、記録に留める目的で、「土人発言」問題に関連するサイトをいくつか紹介していますので、ご参照いただければと思います。
 
 ところで、斉加尚代さんといえば、2015年11月6日(金)、きのくに志学館(和歌山県立図書館)2Fホールにおいて和歌山弁護士会が主催したシンポジウム「今、報道の自由を考える~国民の知る権利の観点から~」にパネリストの1人としてご登壇いただき(他には、毎日新聞社会部記者の福田隆さん、「「避難の権利」を求める全国避難者の会」共同代表の宇野朗子さんが登壇されました)、終了後、私は、斉加さん、宇野さんらと美味しいピザやパスタを一緒にいただいた(ぶらくり丁の「農園レストラン 石窯ポポロ」にて)という貴重な想い出があるのです。
 しかし、シンポを所管した和歌山弁護士会人権擁護委員会のメンバーが1人もおらず、弁護士は私1人だったのは何故だったんだろう?(全然記憶にない)。
 
 毎月1回(最終日曜日の深夜)の放送枠ですが、毎日放送の「MBSドキュメンタリー映像」は、関西ローカルであるのがもったいない、素晴らしい内容の番組を送り出しており、私のブログでもたびたび事前予告をさせてもらったり、関連記事を書いたりしています(最近では、「学び舎の中学歴史教科書『ともに学ぶ人間の歴史』に対する攻撃とある教育者の対応(情報共有のために)」など)。
 斉加尚代さんをはじめとする番組スタッフの皆さんの頑張りにエールを送るとともに、今後も良い番組を作り続けていただきたいと念願しています。
 
(付録)
 「メルマガ金原」では毎号(付録)として、YouTubeで聴ける音楽をご紹介していましたが、7月6日以来、メールアカウントの不調により、「メルマガ金原」を休載してから1ヶ月以上が経過しました。日々の忙しさに紛れ、復旧のための作業に取りかかれず、「メルマガ金原」の配信を休んでブログの更新だけにしたとたん、毎日の睡眠時間が1時間は増えましたので、健康のためにも、この酷暑を乗り切るまでは「メルマガ金原」の休載を続けようかと思っています。
 とはいえ、(付録)がないのも寂しいので、今日は、私がよく存じ上げている皆さんが結成した3人編成のバンド「紀州五十五万石」による『風に吹かれて(Blowin' in the Wind)』日本語ヴァージョン他の演奏をご紹介します(8月5日に収録されたものが12日に公開されました)。
 もっとも、演奏自体は動画の中のごく一部であり、全体では何と3時間12分もあります。これは、「SLOW」(Sustainable Lifestyle Of Wakayama~和歌山で持続可能なライフスタイルを研究する会)が6月から始めた(原則第2日曜日の12:30~15:30)インターネット番組の第3回目で、今回のテーマは「戦争を知らない・戦争を忘れない・戦争をしないために」というものでした。
 全体的にやや音声レベルが低くて聴き取りにくい箇所もありますが、3曲の演奏部分はあまりそういう不満は出ないと思います(PAを音楽優先にセッティングしているのかも)。それでは、「紀州五十五万石」の演奏を堪能してください。
戦争を知らない・戦争を忘れない・戦争をしないために・SLOW【3回目放送】

2分50秒~ 『風に吹かれて』(Bob Dylan)
2時間45分~ 『天国への扉』(Bob Dylan)
3時間01分~ 『パワー』(John Hall)

新しい和歌山市民図書館(2019年10月開館予定)に指定管理者制度が導入される

 2017年8月12日配信(予定)のメルマガ金原.No.2902を転載します。
 
新しい和歌山市民図書館(2019年10月開館予定)に指定管理者制度が導入される
 
 意図したわけではありませんが、ここ最近、私の地元である和歌山市の政策の方向性に疑問を抱き、それをブログで取り上げることが増えてきたような気がします。
 主要なものは、和歌山マリーナシティへのカジノ誘致、そして、家庭教育支援条例関連の2つでしたが、ここで新たに、和歌山市民図書館に指定管理者制度を導入するという問題(既に条例改正によって決定済み)が明らかとなり、とりあえず、その第一報を書いてみることにしました。
 
  現在の和歌山市民図書館(本館)は、南海和歌山市駅から徒歩約5分の場所に立地していますが、JR和歌山駅周辺に比べて衰退著しい南海和歌山市駅前再開発事業の一環として、これから建築する新駅ビル(公益施設棟)の中核施設として移転することが決定しています。
 ・・・というところまでは、私もニュースで知っていましたが、それ以上の情報の持ち合わせはありませんでした。それは、私が図書館から本を借りて読むという習慣がないので、その分関心を寄せることもなかった、ということだろうと思います。
 調べてみると、今年の5月には、新図書館の基本設計が完成し、公開されていました。
 
 さて、平成31年10月に新しい駅ビルに移転予定の和歌山市民図書館が、指定管理者制度を採用することになったということは、私の知人の女性(Kさん)から、Facebookを通じて教えていただきました。
 ちなみに、Kさんは、図書館のヘビーユーザーとのことです。
 
 もっとも、指定管理者制度自体は、何も今に始まったことではなく(2003年の地方自治法改正によって導入された)、和歌山市の場合、「指定管理者を導入している施設一覧表」を見てみると、「公募により指定管理者を選定した施設数 60施設」「公募せずに指定管理者に指定した施設数 31施設」となっています。
 現在は、「和歌山市営市駅前原動機付自転車駐車場」の管理者を公募中で、今後、さらに新駅ビルに移る「和歌山市民図書館」の管理者が公募されることになるのでしょうね。
 
 ここで、指定管理者制度の根拠条文(地方自治法)を読んでおきましょう。
 
(公の施設の設置、管理及び廃止)
第二百四十四条の二 普通地方公共団体は、法律又はこれに基づく政令に特別の定めがあるものを除くほか、公の施設の設置及びその管理に関する事項は、条例でこれを定めなければならない。
2 普通地方公共団体は、条例で定める重要な公の施設のうち条例で定める特に重要なものについて、これを廃止し、又は条例で定める長期かつ独占的な利用をさせようとするときは、議会において出席議員の三分の二以上の者の同意を得なければならない。
3 普通地方公共団体は、公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認めるときは、条例の定めるところにより、法人その他の団体であつて当該普通地方公共団体が指定するもの(以下本条及び第二百四十四条の四において「指定管理者」という。)に、当該公の施設の管理を行わせることができる。
4 前項の条例には、指定管理者の指定の手続、指定管理者が行う管理の基準及び業務の範囲その他必要な事項を定めるものとする。
5 指定管理者の指定は、期間を定めて行うものとする。
6 普通地方公共団体は、指定管理者の指定をしようとするときは、あらかじめ、当該普通地方公共団体の議会の議決を経なければならない。
7 指定管理者は、毎年度終了後、その管理する公の施設の管理の業務に関し事業報告書を作成し、当該公の施設を設置する普通地方公共団体に提出しなければならない。
8 普通地方公共団体は、適当と認めるときは、指定管理者にその管理する公の施設の利用に係る料金(次項において「利用料金」という。)を当該指定管理者の収入として収受させることができる。
9 前項の場合における利用料金は、公益上必要があると認める場合を除くほか、条例の定めるところにより、指定管理者が定めるものとする。この場合において、指定管理者は、あらかじめ当該利用料金について当該普通地方公共団体の承認を受けなければならない。
10 普通地方公共団体の長又は委員会は、指定管理者の管理する公の施設の管理の適正を期するため、指定管理者に対して、当該管理の業務又は経理の状況に関し報告を求め、実地について調査し、又は必要な指示をすることができる。
11 普通地方公共団体は、指定管理者が前項の指示に従わないときその他当該指定管理者による管理を継続することが適当でないと認めるときは、その指定を取り消し、又は期間を定めて管理の業務の全部又は一部の停止を命ずることができる。
 
 以上の規定を一読して明らかなとおり、指定管理者制度は、「官から民へ」という小泉構造改革路線の一環として導入された制度ですが、その全般的な評価をここで論じるだけの知識の持ち合わせはありません。
 ただ、「公の施設」の中でも、とりわけ公立図書館が「指定管理者に管理を行わせる」ことが適切な施設なのか?ということについては、重大な疑義が提起されているということだけは指摘しておきたいと思います。
 
 いわゆる「TSUTAYA図書館」問題については、「TSUTAYA(ツタヤ))/図書館」というキーワードでネット検索してみれば、それこそ山のように記事がヒットしますが、とりあえず「神奈川県海老名市立図書館/分類問題」、「佐賀県武雄市立図書館/選書問題」、「山口県周南市立図書館/ダミー本問題」を取り上げた記事を3本だけご紹介しておきます。
 
東洋経済ONLINE 2015年10月29日
TSUTAYA図書館に協業企業が呆れた理由 CCCとの公立図書館運営の協業見直しへ

リーガルネット 2015年11月20日
TSUTAYA図書館がもたらした指定管理者制度の功罪とは? 税金で損失補填も......
 
Business Journal 2017.03.18
ツタヤ図書館、ダミー本3万5千冊に巨額税金…CCC経営のカフェ&新刊書店入居
 
 以上は、やや特殊な問題をジャーナリスティックに報じた側面がありますが、より一般的に、公立図書館と指定管理者の問題について、事実を踏まえて検討した結果を意見書として公開している団体がいくつかあり、その代表的な存在として、公益社団法人日本図書館協会を取り上げます。日本図書館協会は、過去、2005年、2008年、2010年の3度にわたって見解を公表してきたそうですが、4度目の意見書「公立図書館の指定管理者制度についてー2016」を、昨年の9月に発表しています。
 
2016年9月30日 公益社団法人日本図書館協会
公立図書館の指定管理者制度についてー2016
 
 また、日本図書館協会では、上記意見書を踏まえ、今年の3月に以下のようなパンフレットを作成していますが、指定管理者制度の問題点が分かりやすくまとめられていますし、最新の情報(総務省の方針転換など)も掲載されていますので、重要部分を抜粋して引用します。
 
公立図書館の指定管理者制度について―2016(パンフレット)
日本図書館協会は、図書館への指定管理者制度の導入はなじまないと考えます。 
(抜粋引用開始)
★「公立図書館のあるべき姿」とは
 公立図書館は、住民が持っている基本的な権利や様々な欲求に応えるために地方公共団体が設置し運営する図書館であり、乳幼児から高齢者まで、住民すべての生涯にわたる自己教育に資するとともに、住民が情報を入手し、芸術や文学を鑑賞し、地域文化の創造に資することを目的とした教育機関です。
 そのため公立図書館は、地方公共団体の責任において直接管理運営し、住民の権利である資料要求を保障することが求められています。
(1) 公立図書館の役割
 住民一人ひとりの資料要求に対する個別対応を基本とし、住民の公平な利用の観点から、すべての住民に無料で基本的サービスを保障することを目的としています。
 さらに、公立図書館は、住民の生活・職業・生存と精神的自由に深くかかわる機関であり、地域に根ざした知の拠点として継続的に資料・情報を収集・保存し、提供すると同時に、地域コミュニティの拠点としてあらゆる地域活動と連携し地域文化の創造拠点としての役割を担っています。
(2) 公立図書館の管理運営の基本
 公立図書館は、地方公共団体が設置し、教育委員会が管理することが基本であり、運営やサービスを提供することは自治体の責務です。設置者が図書館の運営方針や事業計画を定め、図書館運営を評価します。
 図書館事業は、継続性、安定性、公平性が求められ、常に住民一人ひとりへのサービスの向上を目指しています。このようなことからも図書館の管理運営は、自治体の責任において自治体が直接行うことが基本であり、これを他の者に行わせることは望ましいことではありません。
★指定管理者制度の問題点
(1) 制度上の問題
 指定期間の設定が概ね3~5年と短く、次回も指定されるとは限らないため、職員の雇用期間も年毎に更新する場合が多く、安定した身分の確立が保障されず、サービスの維持・向上を果たす上での職員の基層における影響が避けられません。
 さらに、図書館利用の無料の原則から指定管理者側の事業収入が見込めないため、サービスの拡大発展を期待することが困難です。
(2) 手続き上の問題
 指定管理者の選定は、公正かつ透明性を確保して、住民や議会の理解や合意を得ながら複数の候補の中から行政処分として行われることが求められていますが、特別な事由で特定団体を指定することもできる制度でもあるため、しばしば指定に関して疑念が生じるケースが散見されます。住民のための図書館として、住民の意向が尊重されることが大切ですが、導入の目的や指定の合理的な理由などが明確に示されていない場合に問題となっています。
(3) 設置者にとっての問題
 図書館の政策や計画の立案、サービス評価には、専門的知識・経験を持つ現場職員の参加が不可欠です。指定管理者の職員は参加すらできません。政策決定と運営主体との分離は、図書館運営の維持発展を大きく阻害するものと考えます。人材育成の面からも図書館の専門的知識・経験を有する自治体職員の継続的な配置が必要です。
(4) 利用者にとっての問題
 公立図書館は、住民からの様々な読書相談や資料要求に対して、迅速かつ的確に提供することが求められています。そのためには所蔵資料の把握はもちろん、地域の事情にも精通し、資料に関する専門知識と経験の蓄積を持った司書が的確に対応しなければなりません。さらに、地域に根ざした様々な活動を展開するには、図書館の第一線で住民をはじめ関係機関との密接な連携を図ることが重要です。短期間の契約ではこのような専門的職員を配置することは極めて困難です。
(略)
★その他 注目すべき事項として
(1) 総務省によるトップランナー方式導入問題
 平成27年11月に総務省から歳出の効率化を推進する目的で、図書館に係る地方交付税の算定方式に関し、指定管理者制度導入の推進を狙ったトップランナー方式を検討対象とするとされましたが、平成28年11月に図書館への適用を見送ることが発表されました。
 その理由として、「教育機関としての重要性に鑑み、司書を地方団体の職員として配置することが適切であり、専門性の高い職員を長期的に育成・確保する必要がある」、「関係省(文部科学省)や関係団体(日本図書館協会等)から、業務の専門性、地域のニーズへの対応、持続的・継続的運営の観点から、各施設の機能が十分に果たせなくなることが懸念される」などの意見があったこと。さらに「実態として指定管理者制度の導入が進んでいないこと」、「社会教育法等の一部改正法(2008年)の国会審議において「社会教育施設における人材確保及びその在り方について、指定管理者制度の導入による弊害についても十分配慮し、検討すること」等の附帯決議があること」などの4点をあげています。
 総務省が、これらの具体的な理由を示して見送ったことは、当協会が総務省、文部科学省に対して「図書館に係る地方交付税算定におけるトップランナー方式導入に強く反対します。」という声明を出したことや地方団体、関係団体などからの意見等を踏まえたものと考えられます。
※金原注 上記の「声明」は以下のとおり。
 
 さて、以上は、公立図書館と指定管理者制度に関わる全国的な動向のご紹介でしたが、以下には、和歌山市の動きを簡単にご紹介しておきます(詳細は、情報収集をした上で、続報に書きたいと思います)。
 まず、マスコミ報道から。
 
朝日新聞デジタル 2017年6月3日03時00分
和歌山)和歌山市民図書館、指定管理者制度導入へ(大森浩志郎)
(抜粋引用開始)
 和歌山市民図書館を南海和歌山市駅前に移転する計画を進めている市が、新図書館に「指定管理者制度」を導入する方針を固めたことがわかった。管理運営を民間に委託することで、サービス向上と費用削減を目指す。市は制度導入のため、6月議会に市民図書館条例の改正案を提出する予定だ。導入が決まれば県内の公立図書館では初となる。
 市は市民の利用を増やすため、新図書館の開館時間の延長や開館日の拡大を検討している。蔵書は45万冊から60万冊に順次増やしていく。市直営である現在の市民図書館では正職員14人、非常勤職員23人の計37人が働く。新図書館では職員数を45~50人に増やすことも検討している。
 こうしたサービスの提供や管理運営費用の削減、さらに、駅周辺のにぎわい創出を目指すため、市は民間の運営ノウハウの導入を模索してきた。市民図書館条例の改正案が議会を通れば、事業者を公募して委託先を選定する見込みで、その指定を議会に諮ることになる。
(引用終わり)
 
 上記記事にあるとおり、「和歌山市民図書館条例」の改正案が和歌山市議会の6月定例会に提案され(議案第11号)、可決されたということは市議会のホームページで確認しましたが、和歌山市ホームページから外部サイトにリンクされている「和歌山市例規集」には、まだ改正の内容は反映されていませんでした。もっとも、改正規定の施行時期については、「この条例は、公布の日から起算して2年9月を超えない範囲内において規則で定める日から施行する。」(附則)とありますので、当分、例規集には反映しないかもしれません。
 そこで、市議会ホームページに掲載されていた議案第11号から、主要部分を引用しておきます。
 
(引用開始)
第2条の表和歌山市民図書館の項中「湊本町3丁目1番地」を「屏風丁17番地」に改める。
第3条の次に次の2条を加える。
(休館日)
第3条の2 (省略)
(開館時間)
第3条の3 (省略)
第5条中「教育委員会」を「指定管理者」に改める。(金原注:第5条は、教育委員会が一定の者の入館を拒絶したり退館を命じたりできるとした規定)
第16条を第18条とし、第15条の次に次の2条を加える。
第16条 図書館の管理は、指定管理者に行わせるものとする。
第17条 指定管理者が行う業務は、次に掲げる業務とする。ただし、市長に専属する権利及びこの条例において市長に留保されている権利を行うことはできない。
(1)法第3条に定める図書館奉仕の事業に関する業務
(2)図書館の施設の利用及びその制限に関する業務
(3)図書館の維持管理に関する業務
   附 則
 この条例は、公布の日から起算して2年9月を超えない範囲内において規則で定める日から施行する。
(引用終わり)
 
 要するに、現在、和歌山市直営で管理運営している和歌山市民図書館を、駅ビルへの移転を機に、指定管理者に管理させることにするという条例です。
 条文中、少し分かりにくいのは、第17条(1)に規定されている「法第3条に定める図書館奉仕の事業に関する業務」でしょうか。
 この「法」というのは「図書館法(昭和二十五年四月三十日法律第百十八号)」のことで、「和歌山市民図書館条例」の上位規範としての効力を持つ法律です。
 同法第2条(定義)、第3条(図書館奉仕)は、「図書館とは何か?」ということを考える場合の最も基本的な理念に関わる条項なので、全文引用しておきます。
 
(定義)
第二条 この法律において「図書館」とは、図書、記録その他必要な資料を収集し、整理し、保存して、一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーシヨン等に資することを目的とする施設で、地方公共団体、日本赤十字社又は一般社団法人若しくは一般財団法人が設置するもの(学校に附属する図書館又は図書室を除く。)をいう。
2 前項の図書館のうち、地方公共団体の設置する図書館を公立図書館といい、日本赤十字社又は一般社団法人若しくは一般財団法人の設置する図書館を私立図書館という。
(図書館奉仕)
第三条 図書館は、図書館奉仕のため、土地の事情及び一般公衆の希望に沿い、更に学校教育を援助し、及び家庭教育の向上に資することとなるように留意し、おおむね次に掲げる事項の実施に努めなければならない。
一 郷土資料、地方行政資料、美術品、レコード及びフィルムの収集にも十分留意して、図書、記録、視聴覚教育の資料その他必要な資料(電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られた記録をいう。)を含む。以下「図書館資料」という。)を収集し、一般公衆の利用に供すること。
二 図書館資料の分類排列を適切にし、及びその目録を整備すること。
三 図書館の職員が図書館資料について十分な知識を持ち、その利用のための相談に応ずるようにすること。
四 他の図書館、国立国会図書館、地方公共団体の議会に附置する図書室及び学校に附属する図書館又は図書室と緊密に連絡し、協力し、図書館資料の相互貸借を行うこと。
五 分館、閲覧所、配本所等を設置し、及び自動車文庫、貸出文庫の巡回を行うこと。
六 読書会、研究会、鑑賞会、映写会、資料展示会等を主催し、及びこれらの開催を奨励すること。
七 時事に関する情報及び参考資料を紹介し、及び提供すること。
八 社会教育における学習の機会を利用して行つた学習の成果を活用して行う教育活動その他の活動の機会を提供し、及びその提供を奨励すること。
九 学校、博物館、公民館、研究所等と緊密に連絡し、協力すること。
 
 第3条2号「図書館資料の分類排列を適切にし、及びその目録を整備すること。」を読むと、直ちに、先にご紹介した神奈川県海老名市のTSUTAYA図書館を思い出してしまいますね。多分、TSUTAYA~カルチュア・コンビニエンス・クラブの担当者は、図書館法を読んだことがなかったのでしょう。
 
 あと、本質的な問題とは言い難く、ややいちゃもんめきますが、今回の条例案の第17条にある「ただし、市長に専属する権利及びこの条例において市長に留保されている権利を行うことはできない。」という表現が気になります。私が大学や司法研修所で学んだのはもう何十年も前のことですから、私の感覚が今でも通用するか自信はありませんが、私が身につけた法学的素養に従えば、この部分は、当然「ただし、市長に専属する権限及びこの条例において市長に留保されている権限を行う(もしくは「行使する」)ことはできない。」と起案するものだと思うのですけどね。
 
 ところで、この「和歌山市民図書館条例の一部を改正する条例案」(議案第11号)についての個々の議員の賛否の状況がどうであったかも書いておきます。
 実は、この条例案の中身を読みたいと思い、和歌山市議会のホームページをあれこれと調べていて、偶然気がついたのですが、和歌山市議会では、各議案についての議員別の賛否の状況をホームページ上で公開しているのですね。知らなかった。当然のこととはいえ、素晴らしいと思います。
 議案第11号に反対したのは、共産党議員団5名(中村朝人、松坂美知子、姫田高宏、南畑幸代、森下佐知子各議員)と日本維新の会2名(林隆一、山野麻衣子両議員)の計7名で、残る至誠クラブ(議長を除く18名)、公明党議員団(8名)、誠和クラブ(4名)の計30名の賛成で可決されました。
 
 ちなみに、和歌山県議会ホームページでは、「各会派の賛否の状況」が公開されています。会派として賛成の場合は「〇」、反対の場合は「✕」、会派の中で賛否が分かれたら「△」と表記することになっています。そこまでやるなら、議員個々の賛否を明記すればいいじゃないかと思いますよね。
 
 最後に、条例が出来てしまった今、私たち市民が何をすれば良いのか?ということが問題です。
 指定管理者をいったん指定したものの、直営に戻った自治体もありますから、将来的に「廃止」という選択肢を持ち続けることは必要でしょうが、当面、行政が指定管理者制度に何を期待しているのか、住民の懸念にどう向き合おうとしているのかを知り、私たちの意見を行政、あるいは議会(議員)に伝えていくという地道なロビー活動が重要になると思われます。
 その意味から、来る8月23日(水)に市民図書館3階ホールで開かれる「第2回 図書館づくりミーティング」は貴重な機会かもしれません。市民図書館ホームページから開催案内を引用します。
 
(引用開始)
第2回 図書館づくりミーティング
開催日時 2017年8月23日(水)
       18時30分から19時30分(開場18時)
場所 市民図書館 3階 ホール
開催内容 平成31年度10月開館予定の市民図書館についての経過報告を行います。
対象者 和歌山市内にお住まいの方、市内へ通勤・通学している方
定員 30人(先着順)
問い合わせ等
〒640-8222 和歌山市湊本町3丁目1番地
和歌山市民図書館 図書館設置準備班
電話:073-432-0010
FAX:073-422-7926
メール:toshokan@city.wakayama.lg.jp
(引用開始)
 
 なお、上記案内には明確に書かれていませんが、PDFファイルの名称として「市民図書館 指定管理導入における市民説明会」という表示がパソコン上にあらわれますから、そういう趣旨の説明会なのでしょう。それなら、ホームページ本文にもそう書けば良いと思いますけどね。
 ただし、同じ日の同一時間帯、私は、和歌山県民文化会館小ホールで行われる和歌山弁護士会主催による「“公文書”は誰のもの?~あらためて国民の知る権利を考える~」(※ブログでの開催案内)に参加予定のため、市民図書館の方に行けないのは残念です。
 
 カジノ誘致問題、家庭教育支援問題など、困難な課題が続く和歌山市に、また新たな難題が・・・というのが私の現在の心境ですが、他の2案件と同様、「公立図書館と指定管理者制度」についても、これまでの自分自身の関心の薄さ、知識のなさ加減をあらためて認識し、まずは勉強から始めなければと思っており、今日はその勉強の成果をまとめた第一弾です。カジノや家庭教育支援と同様、市民図書館指定管理導入問題も、私のブログでシリーズ化しそうです。
 是非、皆さまにも、継続して関心を持っていただければと思います。
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/カジノ関連)
2016年12月8日
カジノ推進法案をめぐる和歌山の現状と読売新聞による徹底批判
2017年2月27日
和歌山弁護士会「いわゆる「カジノ解禁推進法」の成立に抗議し、同法の廃止を求める会長声明」(2017年2月27日)と和歌山でのカジノ誘致の動き
2017年3月10日
「カジノで観光・まちづくり!?ちょっと、おかしいんとちゃうか!緊急トーク集会」3/13@プラザホープのご案内と4月・5月の「予告編」
2017年3月26日
「カジノあかん3・25大阪集会」動画のご紹介と12/12参議院内閣委員会での新里宏二弁護士と鳥畑与一静岡大教授の反カジノ意見陳述
2017年4月5日
「カジノ実施法案」作成作業が始まりました~クリーンなカジノの実現を目指して(!?)
2017年6月21日
和歌山でのカジノ誘致に反対する動き~和歌山弁護士会「会長声明」(6/16)とカジノ問題を考える和歌山ネットワーク準備会「市民集会」(7/19)
2017年7月5日
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/家庭教育支援関連)
2017年3月29日
2017年6月28日
2017年7月4日
2017年7月27日
2017年8月3日
2017年8月4日
2017年8月5日

映画『日本と原発 4年後』『日本と再生』ダイジェスト版上映とトーク(河合弘之氏&飯田哲也氏)を視聴する

 2017年8月11日配信(予定)のメルマガ金原.No.2901を転載します。
 
映画『日本と原発 4年後』『日本と再生』ダイジェスト版上映とトーク(河合弘之氏&飯田哲也氏)を視聴する
 
 このブログを以前から読んでくださっている方なら、「電事連」というのが、全国10の電力会社で構成する「電気事業連合会」の略称であることなど先刻ご承知のことと思います。
 それでは、「原自連」はどうでしょうか?「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」という正式名称をすらすら言える人は、今のところそう多くはないでしょうね。公式サイトはこちらです。
 4月14日に行われた発足発表記者会見(小泉純一郎元首相も出席)をニュースで見た、という人はいるかもしれませんね。
 記者会見の動画をご紹介します。
 
[アーカイブ]「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」創設記者会見(58分)

 
 発表された「主旨」と「メンバー」を引用しておきます。
 
(引用開始)
Ⅰ.主  旨
東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故を通じて、私たち国民は、原発が人類にとって非常に危険であることを学び、事故から6年以上が経過した今もなお、全国各地で脱原発や自然エネルギー推進に向けた活動が熱心に行われておりますが、こうした活動の多くは、孤立・独立しており、相互の連携が図れていないのが現状です。
こうした中で、今後、より一層、脱原発や自然エネルギーの推進に向けた国民運動を展開していく上では、全国各地で取組んでいる活動が一致団結し、お互いに連携協力していくことが重要であると考え、今回、思想や信条を問わず、原発ゼロと自然エネルギー推進を志すすべての個人や団体が集結した「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」が創設されることとなりました。
Ⅱ.メンバー
会長   吉原 毅(城南信用金庫相談役)
顧問   小泉 純一郎(元内閣総理大臣)
      細川 護煕(元内閣総理大臣)
副会長 中川 秀直(元自由民主党幹事長、元科学技術庁長官、原子力委員会委員長)
      島田 晴雄(前千葉商科大学学長、慶應義塾大学名誉教授)
      佐藤 彌右衛門(全国ご当地エネルギー協会会長、会津電力株式会社代表取締役)
幹事長・事務局長 河合 弘之(脱原発弁護団全国連絡会共同代表)
事務局次長 木村 結(東電株主代表訴訟事務局長)
幹事  鎌田 慧(ジャーナリスト)、佐々木 寛(新潟国際情報大学教授)、香山 リカ(立教大学教授)、三上 元(元静岡県湖西市長)、永戸 祐三(ワーカーズコープ理事長)
賛同人 飯田 哲也(認定NPO法人環境エネルギー政策研究所所長)、下村 満子(元朝日ジャーナル編集長)、海渡 雄一(脱原発弁護団全国連絡会共同代表)、金子 勝(慶應義塾大学教授)、福岡 正夫(慶應義塾大学名誉教授)、古川 亨(慶應義塾大学教授・元日本マイクロソフト会長)、原田 博夫(専修大学教授)、鹿嶋 春平太(明治学院大学名誉教授・宗教社会学者)、楠 達史(Abalance株式会社独立社外取締役)、小宮 武夫(元三和銀行営業本部第一部長・元ブラデスコ投資銀行取締役・ウェルフェア株式会社代表取締役)福山 真劫(平和フォーラム共同代表)、柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)吉岡達也(ピースボート共同代表)、近江屋信広(NPO法人地域力創生プロジェクト相談役)
(引用終わり)
 
 真に「思想や信条を問わず、原発ゼロと自然エネルギー推進を志すすべての個人や団体が集結」することが出来れば素晴らしいことですし、現状がどうあれ、まだ緒に就いたばかりであれこれ言う時期でもないでしょうから、思いつきをコメントするのは控えます。
 
 その「原自連」が、去る8月6日(日)、日本科学未来館において、「原発ゼロ後、自然エネルギー100%の可能性を探る 映画「日本と原発 4年後」「日本と再生」ダイジェスト版上映とトーク(河合弘之&飯田哲也)」というイベントを開催しました。
 なお、この2本の映画のダイジェスト版を収録したDVDについて、「原自連」ホームページは、「各地で脱原発運動をしている方々と、自然エネルギー事業を展開している方々の出会いの場として今後の交流の場としてお使いいただくのにぴったりです。映画のダイジェスト版はDVD、ブルーレイ、ハードディスク用のセットになっております。2点で計67分、そこに公演(講演の変換ミスか?)や対談をセットすることで、視覚に訴える説得力のあるイベントになります。自然エネルギーが災害に強いことも証明できます。このセットは無料でお貸出し致しますので、是非ご相談ください。(木村結)」として活用を推奨しています。
 
 ダイジェスト版の上映部分も含め(主催者の了解の下)、UPLANによって中継動画が公開されていますのでご紹介します。
 
20170806 UPLAN 河合弘之&飯田哲也 映画「日本と原発 4年後」「日本と再生」ダイジェスト版上映とトーク(1時間51分)

冒頭~ 司会(木村 結)
2分~ 映画『日本と原発 4年後』ダイジェスト版上映
32分~ トーク 
      河合弘之氏(弁護士、映画監督)
      飯田哲也氏(認定NPO法人環境エネルギー政策研究所所長)
      司会 木村 結氏(東電株主代表訴訟事務局長)
1時間12分~ 映画『日本と再生 光と風のギガワット作戦』ダイジェスト版上映
1時間49分~ 終演
 
 ダイジェスト版が上映された河合弘之弁護士が監督した2作品のうち、『日本と原発 4年後』については、2016年5月22日、私も実行委員会の一員として和歌山市で上映会を開催し、多くの方にご覧いただきました(映画『日本と原発 4年後』を和歌山市で上映しました(2016/5/22)/2016年5月22日)。
 この時点で、河合監督の次回作が自然エネルギー推進にフォーカスしたものになることは分かっていましたが、「それも是非上映しよう」という声が実行委員の間でなかなか盛り上がってこなかったのは、予告編(特報)での小泉元首相のアジテーションが一因だったのではないかという気がします。
 もっとも、和歌山県下では、風力発電による低周波音被害が問題となっていたり、大規模太陽光発電施設を建設するために、深刻な自然環境破壊が懸念されているなど、自然エネルギーだからといって、そうそう礼賛ばかりもしていられないという事情もありますからね。
 ただ、これまでは、約2分の予告編を見ただけで、映画自体は未見だったので、その作品としての評価(もちろん、運動のツールとしての、という意味ですが)は下しようがなかったのですが、37分のダイジェスト版であれば、かなりの程度、内容についての判断が可能となるかもしれません。
 映画『日本と原発 4年後』和歌山上映実行委員会委員だった皆さん、ダイジェスト版をご覧になってどう思われますか?
 
 なお、8月6日に上映された映画『日本と原発 4年後』のダイジェスト版(30分)は、今年の5月27日、「法廷上映用30分版」としてネット上で公開されたものそのものだと思いますので、この部分は、以下の公式動画での視聴をお勧めします。
 
日本と原発 4年後 法廷上映版

第24回全国市民オンブズマン和歌山大会(9月2日・3日/和歌山県民文化会館)のご案内

 2017年8月10日配信(予定)のメルマガ金原.No.2900を転載します。
 
第24回全国市民オンブズマン和歌山大会(9月2日・3日/和歌山県民文化会館)のご案内
 
 来る9月2日(土)・3日(日)の両日、和歌山市の県民文化会館小ホールなどを会場として、第24回全国市民オンブズマン和歌山大会が開催されるとのご案内をいただきましたのでご紹介します。
 現地実行委員会は、事実上、「市民オンブズマンわかやま」が担っておられるのだろうと思います。
 
 いまどき「オンブズマン」という言葉を聞いたことがないという人はほとんどいないと思いますが、あらためて「オンブズマンって何?」と尋ねられて、的確・簡明な説明ができる人も多くはないかもしれません(私もそうです)。
 そこで、ここでは、「全国市民オンブズマン連絡会議」ホームページに掲載された「よくある質問」の一部を引用しておきます。
 
(引用開始)
Q:「オンブズマンombudsman」って何語?どういう意味なの?
A:「オンブズマンombudsman」とは、スウェーデン語で「代理人」を意味する言葉です。もともとは、国民の代理人として行政機関に対する苦情処理や行政活動の監視・告発などを行う職務につく人のことを指し、「オンブズマン制度」は、西欧を中心に普及しています。このように、「オンブズマン制度」とは公的なものであり、「市民オンブズマン」とは別です。(ちなみに、スウェーデン語の「オンブズマン」は、性別に関係なく使えると、スウェーデン大使館に聞きました。)
Q:諸外国では「オンブズマンombudsman」は 議会や行政から任命される「公的なもの」みたいなのですが「市民オンブズマン」っていったい何ですか?
A:1980年に日本ではじめて「市民オンブズマン」を名乗った弁護士達のグループは、“諸外国では、市民の代理人として苦情を聞いて行政を是正する「公的オンブズマン」がいるが、日本にはいないので、市民自ら「オンブズマン」として行政の不正・腐敗を追及していこう”、と考えました。その後、市民一人一人が行政の問題に関心を持って追及していこうとする「市民オンブズマン」の理念が広がり、全国各地に「市民オンブズマン」を名乗る団体が出来ました。2003年現在、「公的オンブズマン」も地方自治体レベルで徐々に出来つつあるらしいですが、あまり把握しておりません。また、行政監視分野だけでなく、福祉分野などで「オンブズ」を名乗る市民団体が出来ていますが、全ては把握しておりません。このように、「市民オンブズマン」といっても、特別な権限はありません。市民がもつ権利を最大限に活用し、「行政を市民の手に取り戻す」活動を行っております。
(引用終わり)
 
 私の地元和歌山県では、「市民オンブズマンわかやま」が以前から積極的に活動しており、特に、地方議会議員による政務活動費の不正使用問題については、一層の情報公開を請願したり、住民監査請求や住民訴訟の提起などを進めています。これらの活動は、ホームページの中の「最近の主な活動」に詳しく紹介されています。
 
 和歌山大会の参加者の多くは、全国各地で市民オンブズマン活動に携わっておられる方々でしょうが、チラシにもあるとおり、「どなたでも参加いただけます。」ということです。2日目の分科会では、和歌山県民にとって切実な問題である「カジノ・ギャンブル」も取り上げられますし、これまで市民オンブズマンの活動を外から眺めていただけの方にとっても、得難い機会ではないかと思います。
 
 現地実行委員会の事務局長(かどうか確認していませんが、多分そうでしょう)の畑中正好さんに電話して確認したところ、「懇親会参加や託児の申込みは期限(8月17日)までにお願いしたいが、2日(土)の全体会、3日(日)の分科会への参加は、事前申込みなしに当日来ていただいても大丈夫です。多くの方のご参加をお待ちしています。」とのことでした。
 畑中さんの電話での口ぶりでは、参加費1,000円(大会資料も欲しければ5,000円)というハードルもあるので、定員オーバーで会場に入りきれないのでは?という心配はあまりしていない様子でした。
 なお、分科会は、県民文化会館内の会議室を使用するとのことでしたが、まずは小ホールに設けた受付に立ち寄っていただきたいとのことでした。 
 それでは、チラシ記載情報を転記して、和歌山大会の内容をご紹介します。
 
チラシ記載情報から引用開始)
-チラシ表面-
第24回全国市民オンブズマン和歌山大会

2017年日(土)・日(日)
和歌山県民文化会館小ホール他
(詳しくは裏面をご覧ください)
 
「忖度(そんたく)」の闇に光を!!
権力のえこひいきをただす
 
 森友学園・加計学園問題は、「忖度(そんたく)」と権力のえこひいきがあった疑いが濃厚です。その闇にオンブズの手法で迫ります。
 「口利き記録制度」の調査は、その延長線です。すべての口利きが記録されれば、闇がみえてきます。みえない口利きがなくなる制度をめざします。
 官僚が業務上作成・使用したメールやメモは公文書。権力の都合で「個人メモ」とされないよう実態調査を行い公表します。
 
【参加費】
1,000円(大会資料の必要な方は5,000円)
懇親会/5,000円
 
どなたでも参加いただけます。
託児所(無料)あります。
懇親会・託児は8月17日(木)までにお申込み下さい。
分科会のみご参加の方も受付は小ホールに設けていますので、小ホールを必ずお通り下さい。
 
参加申し込み・お問合せ
第24回全国市民オンブズマン和歌山大会現地実行委員会
〒640-8158 和歌山県和歌山市十二番丁10 本山ビル3階 市民オンブズマンわかやま内
TEL:073-433-2241 FAX:073-433-2767
mail:wa_obz@naxnet.or.jp
 
-チラシ裏面-
和歌山での全国大会を成功させましょう
  現地実行委員長・弁護士 阪 本 康 文
 大会では、森友学園・加計学園問題の調査結果が発表されます。どこまで「忖度(そんたく)」の闇にせまれるか。権力のえこひいきをただすことにつなげられるか、今から楽しみです。
 チラシに用いた風景は、平成29年度の日本遺産に認定された和歌山市の「絶景の宝庫和歌の浦」です。この写真には写っていませんが左側に「和歌山マリーナシティ」があります。そこに和歌山県・和歌山市は、「カジノを含むIR施設」の誘致をすすめています。カジノ等の施設が視野に入るような景色になれば、絶景はどうなるでしょうか。絶景の宝庫をカジノから守ろうと思うのは私だけではないはずです。そういうこともあって「カジノ・ギャンブル」分科会が設けられました。
 メイン会場320人、懇親会場200人収容可能です。たくさんの皆さんのお越しをお待ちしております。
 
大会スケジュール
9月2日(土)
12:00 開場(和歌山県民文化会館 小ホール)
13:00  開会+実行委員会挨拶
13:05~13:15 基調報告
13:15~13:40 森友学園・加計学園問題情報公開結果
13:40~14:05 口利き記録制度調査結果
14:05~14:15 文書件名簿発表
14:15~14:35 政務活動費ランキング発表
14:35~14:55 休憩
14:55~15:15 寸劇
15:15~17:00 各地報告
17:00~17:20 落札率調査、電力購入・売却調査
17:20~17:40 包括外部監査の通信簿表彰 スピーチ
17:40~18:00 分科会宣伝、事務連絡
18:30~20:00 懇親会(アバローム紀の国)

9月3日(日)
 9:30~11:20 分科会・終了後移動
11:30~12:00 大会宣言、決議(和歌山県民文化会館 小ホール)
12:00 閉会
 
分科会
①「えこひいき監視」
②「政務活動費」
③「カジノ・ギャンブル」
④「自治会」
 
懇親会
アバローム紀の国(県民文化会館から徒歩3分)
(引用終わり)
 
(付記)
 和歌山県外の方が事前申込みをした上で参加しようという場合には、「全国市民オンブズマン連絡会議」ホームページの中の「全国大会」のコーナーをご参照ください。


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青井未帆氏「憲法に自衛隊を明記することの意味を考える」講演動画(8/5兵庫県弁護士9条の会)を視聴する

 2017年8月9日配信(予定)のメルマガ金原.No.2899を転載します。
 
青井未帆氏「憲法に自衛隊を明記することの意味を考える」講演動画(8/5兵庫県弁護士9条の会)を視聴する 
 
 いよいよ内容が充実してきた(?)「安倍改憲メッセージ」シリーズの最新号は、去る8月5日(土)、神戸市立総合福祉センター(神戸市中央区)で兵庫県弁護士9条の会が開催した公開講座「憲法に自衛隊を明記することの意味を考える」での学習院大学の青井未帆教授(憲法学)による講演の模様が、IWJ兵庫によって中継され、アーカイブ動画が全編無料視聴できますので、ご紹介することにしました。
 
1分~ 主催者挨拶 羽柴修氏(兵庫県弁護士9条の会事務局長、弁護士)
9分~ 青井未帆氏講演(学習院大学法科大学院教授)
1時間53分~ 質疑応答
 
 私自身、まだ羽柴修先生による主催者挨拶と青井未帆先生による講演の冒頭部分を視聴しただけなので、「これから時間を作ってしっかり勉強したいと思います」ということなのですが、羽柴先生の主催者挨拶を聞いての感想を少し。
 巻末のリンク一覧にもありますが、羽柴先生は6月18日に「憲法をめぐる情勢と国民投票を意識した取り組み」という講演をされ、その模様を中継したIWJ兵庫の動画をブログでご紹介するにあたり、私が「羽柴先生が今でも兵庫県弁護士9条の会と9条の心ネットワークの切り盛りをしておられるのか、それとも優秀な後進にバトンタッチを果たされたのかは未確認ですが、少なくとも、ご自身がなお第一線で活動されていることは確認できました。」と書いたところ、すぐに羽柴先生から、後進に道を譲ることもかなわず(?)、頑張っておられるという近況をメールでお知らせいただいたのでした。
 5日の公開講座の主催者挨拶約8分間を聞くにつけても、全国の情勢を踏まえながら、兵庫県弁護士9条の会や9条の心ネットワークを中心として、兵庫県全体の運動がどういう方向を目指すべきかというグランドデザインを描き、指導力を発揮されているのだろうなあとあらためて実感しました。
 
 それから、青井未帆先生の講演内容はこれから視聴して勉強させていただこうと思っているところですが、これも巻末のリンク一覧でご紹介している立憲デモクラシーの会が5月22日に発表した「安倍晋三首相による改憲メッセージに対する見解」起草に、おそらく青井先生も加わっておられるはず(発表記者会見にも出席されています)ということを付け加えておきます。
 また、青井先生とは、昨年の青年法律家協会和歌山支部主催の憲法記念講演会の講師をお願いした際、講演会が始まる前に会場内の会議室でお昼の弁当をご相伴したというご縁(?)があるだけではなく、近く和歌山弁護士会が講演会の講師にお招きする予定であるという話が漏れ伝わってきたり、何かとお名前を目にする機会が多いのですが、最後に、昨日読んだばかりの青井先生の文章の一部をご紹介したいと思います。
 それは、ここ2日ほど、このブログでご紹介している『私たちは戦争を許さない-安保法制の憲法違反を訴える-』(安保法制違憲訴訟の会編/岩波書店刊)の巻末に収載された青井先生による解説「安保法制違憲訴訟と原告らの置かれた立場について法的な視点から」(197~201頁)という一文です。
(引用開始)
 居ても立っても居られずに反対の声を上げた者。そして本件訴訟の原告らのように裁判所に訴えざるをえなかった人々にとって、この間の権力の暴走は、まさに身を切られるような痛みと苦しみをもたらしているのです。原告らの心の叫びは、自由侵害のおそれへの警鐘であり、私たちが決して忘れてはいけない悲しい出発点であることに、改めて思いをいたしたいと思います。
 決して戦争を許さないという日本国憲法の出発点をいま一度実現するのに、これら原告が誰よりも適切に憲法における国民を「代表」するものです。これら原告の訴える利益は、それぞれの経験に支えられた、「ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存すること」に関わる人格的利益として、いわゆる平和的生存権の内実と重なるものと考えます。政府の憲法無視・憲法軽視の政治の結果、これらの者の、法的保護に値する人格的利益が損なわれてしまったというべきです。
(引用終わり)
 
 安保法制違憲訴訟の会には、多くの憲法研究者が協力してくださっていますが、青井先生もそのお1人として、大部の意見書を書かれたとか。
 なお、青井先生は、安保法制違憲訴訟について、今年の3月10日に開催された立憲デモクラシー講座の中で詳しく語っておられますし、その講演文字起こしに加筆修正されたものが、「WEB RONZA」に掲載されていますので、以下、動画とあわせてご紹介しておきます。
 
20170310 UPLAN 青井未帆「裁判所の果たす役割」(1時間43分)

 
立憲デモクラシー講座・青井未帆教授
[1]裁判所の果たす役割 
安保法制違憲国家賠償請求訴訟を題材に
[2]市民が憲法の実現を求めることは当然できる
違憲の事態に「待った」をかけるのは司法権の役割の一つ
[3]裁判所の裁量を使って市民が訴えかける
憲法秩序の維持は動態的力学の中で考えるべきだ
[4]重要なのは司法の役割の明確化
違憲訴訟により市民が外から立憲主義を統治の内部に注入する
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/安倍改憲メッセージ関連)
2017年5月24日
2017年6月16日
2017年6月22日
2017年6月27日
2017年6月30日
2017年7月9日
2017年7月12日
2017年7月18日
2017年7月20日
2017年8月2日
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/青井未帆氏関連)
2014年10月4日
2014年10月10日
2016年3月18日
2016年4月15日
2017年3月11日

司法に安保法制の違憲を訴える意義(18)~東京・差止請求訴訟(第4回口頭弁論)において3人の原告が陳述する予定だったこと

 2017年8月8日配信(予定)のメルマガ金原.No.2898を転載します。
 
司法に安保法制の違憲を訴える意義(18)~東京・差止請求訴訟(第4回口頭弁論)において3人の原告が陳述する予定だったこと
 
 昨日に引き続き、去る7月24日に東京地方裁判所で開かれた安保法制違憲・差止請求事件の第4回口頭弁論期日についてお送りします。
 ただし、裁判自体の報告は、昨日ご紹介した「原告訴訟代理人による陳述」で尽きていると言えば尽きているのです。
 というのは、この差止請求事件においても、前回の第3回口頭弁論期日までは、訴訟代理人弁護士のみならず、原告本人による意見陳述も3人ずつ認められてきました(その内容は全て私のブログでもご紹介してきました)。
 しかし、この第4回以降は、弁論期日内で陳述するのは代理人弁護士のみということになり、原告による意見陳述は(訴訟終結時は別として)もうやらないという訴訟指揮を裁判所が行ったようです。
 もともと、原告自身の弁論期日における意見陳述というのは、民事訴訟法上、主張でもなければ証拠調べでもない、でもやりたい、というなかなか微妙な位置付けのものなので、第3回口頭弁論まで計9人の原告の意見陳述を認めてきたことが異例だったかもしれません。
 その辺の事情については、報告集会で古川(こがわ)弁護士が冒頭で説明されています(1時間26分~)。
 裁判所としては、当初から「様々な属性を持つ原告の類型ごとに1人ずつは聞く」という意向であり、第3回までで、各類型からの意見陳述は一巡したというのが裁判所の理解だったようです。
 ただ、以下にご紹介する3人の原告の皆さんは、「意見陳述できるのではないか」という見通しの中で、代理人と相談しながら「陳述書」を準備してこられたので、法廷では陳述できないことになっても、報告集会資料には、そのまま掲載し、集会でも発言されたということです。
 3人の原告が準備された陳述内容はとても読み応えのある、胸に迫るものでした。そこで、私のブログでも、「3人の原告が陳述する予定だったこと」として、全てご紹介することにしました。
 とりわけ、竹中正陽(まさはる)さんの船員の立場からの陳述「私たち海運産業で働く者の目から見れば、日本は戦争が出来る国では決してないのです。」には、とても多くのことを教えられました。
 
 なお、弁論期日での意見陳述は、訴訟の証拠とはなりませんが、正式な証拠としての「陳述書」は、おそらく全原告について作成・提出するものと思いますし、そのうちの代表的な方については、いずれ原告本人尋問が行われるのだろうと思います。原告となっている武蔵野美術大学教授の志田陽子先生(憲法学)も、原告本人尋問候補者でしょうね。
 
 それでは、今日も、東京地裁前事前集会、裁判所内司法記者クラブでの記者会見、参議院議員会館講堂での報告集会の模様を収録したUPLAN(三輪祐児さん)の動画をご紹介します。
 
20170724 UPLAN 東京地裁103号法廷を満席に!安保法制違憲訴訟 自衛隊出動差止めの第4回口頭弁論期日 & 報告集会(2時間24分)

冒頭~ 東京地裁前事前集会
23分~ 記者会見
55分~ 報告集会
55分~ 寺井一弘弁護士(共同代表)
1時間03分~ 伊藤 真弁護士
1時間14分~ 角田由紀子弁護士
1時間26分~  古川 ( こがわ ) 健三弁護士
※古川弁護士が冒頭で、今回から原告本人の意見陳述が行われなくなった事情を説明されています。
1時間40分~ 水越淑子さん(原告)「孫たちを守らなければならない」
1時間45分~ 竹中正陽 (まさはる)さん(原告)「「平和愛好国」日本のブランド」
1時間55分 大村芳昭さん(原告)「国際家族法研究者、教育者、学部長として」
2時間06分~ 福田 護弁護士「差止追加提訴について」
2時間22分~ 司会(杉浦ひとみ弁護士)
 
 以下の2点の補足は、昨日書いたことそのままですが、とても重要なことなので繰り返します。
 
〇私のブログでも事前にご紹介しましたが(近刊予告!『私たちは戦争を許さない-安保法制の憲法違反を訴える-』(8/4岩波書店刊/安保法制違憲訴訟の会 編)/2017年7月23日)、8月4日、岩波書店から、『私たちは戦争を許さない-安保法制の憲法違反を訴える-』(安保法制違憲訴訟の会編)が刊行されました(1300円+税)。
新宿・紀伊國屋3階「私たちは戦争を許さない」 「安保法制違憲訴訟の会」共同代表の寺井一弘弁護士が、早速、新宿・紀伊國屋3階まで視察に行かれた際の写真がMLにアップされ、「私としては今週から一気に販売活動を本格化したいと思っております。提訴、若しくは提訴予定の全国各地で位置付けて関係団体や市民の皆様にご購入いただけるよう働きかけくだされば大変嬉しく思います。」ということでしたので、その写真を転載させていただいても支障ないだろうと判断しました。
 それにしても、『私たちは戦争を許さない-安保法制の憲法違反を訴える-』の周りに平積みされているのが、田母神俊雄氏の著書(2冊)や『戦争がイヤなら憲法を変えなさい』(古森義久著)だったりするというのが、いやはや何というか・・・。
 是非、書店が瞠目するほど、『私たちは戦争を許さない-安保法制の憲法違反を訴える-』が売り上げを伸ばして行って欲しいと思います。「安保法制は許せない」という志を共有される皆さんに、「是非お買い求めください」と訴えたいと思います。
 
〇報告集会で、裁判の進行状況を報告した福田護弁護士のお話の最後の方で、少し気になる発言がありました。それは、この第4回口頭弁論の傍聴席に空席が見られたということです。東京地裁における安保法制違憲訴訟は、国賠請求訴訟、差止請求訴訟とも、同地裁最大の103号法廷を使って行われてきましたが、抽選なしで、傍聴席に空席が目立つことが続くようであれば、早晩もっと小さな法廷に移されることになるでしょう。「安保訴訟違憲訴訟の会」としても、訴訟に対するバックアップ力の低下を非常に懸念しているのではないかと思いました。
 名前だけ原告訴訟代理人の私が和歌山の地から気を揉んでも何の力にもなりませんが、時間的に傍聴可能な方は、是非支援のために日程を確保していただければと希望します。
裁判の日程については、「安保法制違憲訴訟の会」ホームページに、随時掲載されます。
 

原 告  水 越  淑 子
孫たちを守らなければならない
 
1 私は埼玉県に1960(昭和35)年3月9日に生まれました。中学校2年生の時に練馬に引っ越し、22歳の時に結婚して、以来中野区に住んでいます。
 私の両親は2人とも大正生まれで、父は海軍の出身だと聞いています。その父は、海軍時代には怪我や病気をしたり、階級が低いために辛かった経験があったりしたようですが、具体的なことは聞いていません。母は、戦時中は食べ物などがなくて辛かったそうです。また、母方の祖父は背が高く、関東大震災の時にたまたま東京にいて、朝鮮人と間違われて襲われそうになったと聞いていました。私が家族などから、戦争とか、人を殺すといったような殺伐とした話として接したのはこの程度でした。
 私が育った時代は、戦後10数年経ち、戦争のにおいは全くなくなっており東京オリンピックがあり、社会は高度経済成長にむけてひた走っていた時代でした。憲法もすでに既存のもので、小学校のころから戦争放棄の9条は習っていましたが、そのことの持つ意味など実感するようなことはありませんでした。戦争は遠い昔のお話しでした。
 現在、私は、介護ヘルパーの仕事をしているので、支援する高齢の方たちの中には、足を焼夷弾にやられたご高齢の利用者もおられます。しかし、父や祖父の戦争中の話を聞いたときと同じで、焼夷弾で障害があることになった話を聞いても、特に戦争のことについて考えたことはなく、戦争を想像することもない、ごくごく普通の主婦として生活をしてきました。
 
2 私たち夫婦には子どもが2人おり、長男も長女もすでに30才を過ぎ独立していますが、長男夫婦は自転車で数分の所に住んでおり、現在中2、小6、小3の3人の男の孫がいます。長男の妻が病弱で、出産後床についていることが多かったために、私は、長男宅に通ったり、自宅に連れてきたりして、この3人の孫たちを、母親代わりのようにして育ててきました。
 長男は、食べるのが大好きで小さな頃からぷっくりしてかわいらしく、でも長男として母親の病弱なことも我慢し、次男三男の面倒を見るような子でした。次男はかけっこの早い、きりっとした子ですが、母の病気のことは一番気にする神経質な子でした。三男は好き嫌いが多くやせっぽっちで、食事作りには手こづらされましたが、お母さんの暖かさが恋しいのか幼稚園の送り迎えで自転車の後ろに乗せていると、私の背中にぺったりとくっついてくるような子でした。3人をお風呂に入れたりすると、シャンプーの泡をたくさん立てて、はしゃいだり、3人を洗っててんてこ舞いの私に泡をなすりつけてくるようなやんちゃで、仲のいい孫たちでした。
 
3 私が初めて政治に関心をもつようになったのは、3.11の東京電力の原子力発電所の事故のときからです。
 私は、テレビに映し出される真っ黒い津波が町を飲み込んでいく恐ろしい様子や、東京電力の原子力発電所の建屋からモクモク白いような煙が出て、更に、爆発して原子炉建屋が破壊されボロボロになった姿になるまでの様子を毎日釘付けになって見ました。人が大勢亡くなることや、放射能で将来に関わるような健康被害がおびただしい規模で発生することを知りました。
 私が生まれる前の戦争の被害は抽象的にしか想像できませんでしたが、同じ国内に住む同時代の人が現実に、こんな悲惨な被害を受けることにショックを受けました。
 私は、あの孫たちを守らなければいけないと思いました。何も知らずに無邪気に過ごしている孫たち、「おばあちゃん、もっとおうちにいてよ」「おばあちゃんのとんかつ美味しいね」と言ってくれるあの孫たちを、私が守らなければいけないと思いました。
 私は、初めてネットで情報を見るということをするようになりました。原発の被害が実はテレビで政府が「ただちに健康に被害はない」と繰り返すのとは全く違うことを知りました。東電の幹部の人がテレビでの会見で、いかにも責任を回避するように回答をするのを見て、腹が立ちました。今では、すぐにメルトダウンになっていたことが分かっていますが、当時はそんな説明はありませんでした。また、高額の費用を費やして準備したスピーディーが使われず、多くの人が汚染された地域に移動させられてしまったことを知りました。
 それまでの私は政府や電力会社を心から信じていました。原子力は安全であること、事故はありえないこと、また、お上は決して国民を裏切らないと思っていました。
 しかし、事故は起き、お上は国民を守ってくれないことがわかりました。
 お茶の汚染など、多くの食材が汚染されていることを知り、衝撃をうけました。私は、ネットを検索して原発批判を読み、また、新聞をよく読みました。そうして知識を身につけた私は、被曝で孫たち3人の健康と命が侵されるとの恐怖心が全身をかけめぐりました。必ず孫たちを守らなければならない、自分にできることは何でもやろうと決意しました。
 私が、まず、孫たちに安全な食材を与えようと必死になりました。危険があるなら、夫が単身赴任している富山へ孫たちを連れて逃げようと思いました。次に金曜日の国会前行動に参加しました。はじめてデモに参加したときは、正直心配で、私みたいな者が行っていいのだろうかと思いました。しかし、行ってみると皆さん熱心に声をあげ、また、新顔の私に打ち解けて対応してくれました。そこで、新宿での反原発の行動などにも積極的に参加しました。私一人の力は弱いけれど、皆で力を合わせれば、世論を動かすことができるのではないかと思ったのです。
 でも原発は再稼働され、事故の収束も実現できていないにもかかわらず、政府は原発を海外に売りつけています。やがて、原発の放射能がまだまだ飛散しており、汚染水の処理もできていないのに、海外にむけて「アンダーコントロール」といい、復興のための費用と労力をオリンピックに向けてしまう政策を採ったことに、やはり政府は国民の命も生活も守らないということを、繰り返し痛感しました。
 
4 国会で、安全保障関連法案の審議が行われました。
 戦争をする国になって、アメリカの要求にNOをいうことができなくなり、若い日本人が海外に銃を持って出かけなければならなくなることが分かりました。国民が大勢殺され、また人を殺す場に出されることになるその恐怖が間近に迫っていることを感じました。国は、国民を守らないことも身をもって体験しています。あの孫たちは私が守らなければいけない、と緊張感と焦燥感で体の中が一杯になりました。
 そんなある日、私が孫の家に、食事作りに行った時、当時小学校6年生だった上の孫が、私に「安倍さんは何をしているのだろう」と言ったのです。
 私は孫が何を思っているのか不思議に思い、「どうしてそう思うの?」と聞くと、孫は「戦争はしたくないよ!戦争はしたくないから、もしそうなったらデモとかで反対する!」と孫は言いました。私はそれを聞いて、胸が痛むと同時に、大人としての責任を感じました。私たちが安保法を止められなかった故に、孫たちにそんな思いは絶対にさせたくありません。これから日本が戦争に巻き込まれたときに、戦場に送られるのは、孫たちの世代なのです。絶対に、孫や同じ世代の子どもたちを戦争の犠牲にしてはならない、殺し殺される社会にしてはならない、と心から思いました。
 この一番上の孫は、中2になり野球に夢中です。身長も160㎝を超え、体重も70キロほどあります。時々は疲れてかえってくると「おばあちゃんマッサージをして」とねだるので、私は肩をマッサージしてやったりします。
 そんなときには学校でのことを話してくれたりします。いつまでも私にとってはかわいい孫ですが、がっちりとした体格になって来ました。こういう若い人間が、戦争を知らない政治家たちに戦いの場に連れ出されるのかと思うとたまりません。
 
5 昨年、自衛隊を内乱状態にあると言われている南スーダンに派兵しました。今年5月に帰国することができましたが、次がないわけではありません。戦いに巻き込まれたら、自衛隊は今の数では足りるはずがありません。日本が戦う国になれば、テロの標的にもなります。
 私は、自分がこの手で育てた孫たちを殺し殺される場所には行かせたくありません。引き金が引かれたこの安保法制を何とか止めてください。
 「おばあちゃんはあなたたちのために闘ったよ」と最期に言えるように、そして「あなたたちを守ることが出来たよ」と最期に言えるように、安保法を止めてください。
 

原 告  竹 中  正 陽(まさはる)(船員)
「平和愛好国」日本のブランド
 
 私は、外国航路や日本沿海航路に就航する船の船員です。30年以上の間、タンカーや鉱石船で世界20数か国を回り、原油や鉄鉱石などを日本に運んできました。
 その間、戦争に遭遇することこそありませんでしたが、海賊には2度襲われ、いずれも乗組員がロープと猿ぐつわで縛られて人質になりました。2 度目の時は、日本の船ではあっても、日本人は私を含めてわずか2名、残りの20人はフィリピン人でした。10人の海賊が甲板上に乗り込み、フィリピンクルーの1人を人質にして立て籠もり、私たちもバールや斧で武装してにらみ合いが続きました。この時は「ああ、これで俺も終わりか」と肝が冷え、死を意識しました。幸いスコールがやみ、夜も明けてきたので、海賊は現地の港湾警察や軍隊が来るのを恐れて退散し、ライフラフトなどの船用品が奪われただけで済みました。
 海賊に限らず、東南アジアやアフリカの港では、言語や宗教、国民感情の違いなどから、予期せぬトラブルが絶えず発生します。積荷の量や質のクレーム、荷役の遅延、税関や検疫官の差し止め、窃盗の侵入や上陸した乗組員による官憲とのいさかい等々です。そうした時、大きな問題にならないように、現地に赴任している商社マンや代理店の人が駆けずり回って、解決してくれます。
 その時に役立つのが「平和愛好国」という日本のブランドです。日本は中立でどの国とも友好的、戦争をしない国として知られ、日本人は穏やかで優しく、お金に対してきれいな人種として通っています。
 このブランドはとりわけイスラム地域において効力を発してきました。イランイラク戦争の真只中においても、日本のタンカーや貨物船はペルシャ湾の奥深くまで入って両当事国から原油や貨物を積み出しました。上空をミサイルが飛び交い、両国の軍隊から臨検を受ける中で、私の先輩や同級生たちは、日本のブランドと政府の外交努力を信じて、甲板上と船側に大きく日の丸を描いて進みました。日本政府も1隻1隻の船について、各国の政府・現地大使館・商社・代理店と綿密に連絡を取りながら、進路や通過時間の決定に協力しました。
 イランイラク戦争では、一部の熱狂的兵士により国際法を無視した無差別爆撃が行われました。その結果、世界各国で407隻が被弾し333名の船員が死亡しましたが、日本船の被害は12隻、死亡者2名と配船数の割に極端に少なく済みました。これは、日本が両当事国ともに友好国であったことによります。
 中立国・平和愛好国という日本のブランドは、長年にわたる政府の外交姿勢の賜物です。敗戦後の再建・復興のため数十年かけて世界各国との友好・貿易促進を求めて配慮されてきた日本の外交姿勢、それを先端で担ったのが現地に赴任した大使館員や商社マン、企業の技術者・営業マンたちです。私たち船員も僅かながらそれに寄与したと思っています。
 現在、日本の海運会社が支配・運航する外航船舶は約2700隻、2千人に満たない日本人船員と6万人の外国人船員の手で運航されています。この瞬間にも2700隻の船が世界中の海や港に散らばり、昼夜を問わず稼働して、国民生活を維持するための物資を運んでいます。地球儀上に各船の位置をプロットすれば、地球儀は隙間なく埋まってしまうと言われるほどです。
 日本は、原油・石炭・鉄鉱石・ゴム・綿花・羊毛の100%、天然ガス98%、大豆93%、小麦88%、砂糖72%、木材の70%を輸入に頼り、その運航のほとんどを外国人船員に委ねているわけですが、いざ日本が参戦すれば外国人船員はどうなるでしょうか。船舶は真っ先に攻撃対象とされるので、外国人船員の大量下船が始まることは目に見えています。一家の大黒柱として大勢の家族を養うために、苦労して日本の船に「出稼ぎ」に来ている彼らにとって、笑顔で健康な姿で故郷に帰ることが悲願です。
 私は13年間、洋上で彼らと苦楽を共にして来ましたが、家族思いであると共に平和希求の強い彼らが、日本が行う戦争のために命を投げ出すことは考えられません。それが健全な姿でもあります。
 そうしたことから、外国人船員のほとんどが加入するITF(国際運輸労連)の労働協約書及び彼らの雇用契約書には、危険海域への就労拒否権(下船の自由。不利益扱いされない)が明記されています。私たち海運産業で働く者の目から見れば、日本は戦争が出来る国では決してないのです。
 昨年安保法制が施行されるに伴い、海上予備自衛官制度が発足しました。2 隻の民間大型フェリーが、防衛省が関与して新たに作られた特別目的会社に売却され、平時は通常の商業輸送を、訓練や有事の際には自衛隊の指揮命令下に入り、自衛隊や米軍の物資を運ぶことになりました。
 新会社に移籍もしくは新採用される船員は予備自衛官になることが前提とされています。有事の際に就労を拒否すれば罰則が待っており、これは徴用以外の何ものでもありません。
 先の大戦では、船舶と船員に徴用令が発せられ、1万5千隻(88%)の船と、6万人の船員が海の藻屑と消えました。陸軍(20%)・海軍(16%)の死亡率に対して、船員の死亡率は43%に上りました。
 現在私は、フェリーや大型外航船に燃料を補給する重油タンカーに乗船しています。毎年秋に行われる自衛隊の南西諸島奪還訓練の際にも、自衛隊を運ぶフェリーに燃料を補給しました。
 日本が戦争当事国になれば、燃料補給船は格好の餌食になることは疑いありません。
 私は、国民の豊かな生活を守るためにも、私自身の生命と職業を守るためにも、安保法制・集団的自衛権の発動に真っ向から反対します。
 そのため、裁判所に具体的な差し止め措置を講じるよう求めるものです。それこそが、真の国益であると信じます。
 

原 告  大 村  芳 昭(中央学院大学法学部長・教授)
国際家族法研究者、教育者、学部長として
 
 いわゆる安全保障関連法の施行によって私が被る精神的被害につき、研究者、教育者、学部長の3つの立場からそれぞれ陳述致します。
 まず、研究者の立場から申し上げます。私は1987年に大学院に進学して以来、一貫して国際家族法の研究に携わって来ました。国際家族法とは、国際結婚など複数の国にまたがる家族の関係を扱う法律の分野です。日本の国際家族法では、特別な事情がない限り、日本の法律に反するような外国の法律でも、日本の法律と同様に適用するという考え方を採用しています。
 それは、あらゆる国の社会や文化に対する尊重と、自国の価値観に必ずしも拘泥しない寛容さが国際家族法の基礎にあるからです。これは家族法に限らず、価値観が多様化・複雑化している国際社会ではごく標準的な考え方です。
 そのような観点からすると、いわゆる安全保障関連法には重大な欠陥があります。それは、日本が集団的自衛権という言い訳のもと、特定国の国家戦略に巻き込まれて後方支援や武力行使を行うことにより、徒に敵を増やし、日本をめぐる国際関係を、相互の尊重や寛容とは正反対の方向に導いてしまう点です。それは私にとって、自分の拠って立つ理念が否定されることを意味します。
 次に、教育者の立場から申し上げます。私は1997年から千葉県にある中央学院大学の専任教員をしておりますが、学生指導に際して私が最も重視しているのは、誰かの言うことに無条件に従うのではなく、自分で調べ、自分で考えて、自分なりの結論を出せる能力を養ってほしい、ということです。それは、市民一人ひとりが大切であり、学生を含む市民が国のあり方を決めるのだ、という信念に基づきます。
 ところが現政権は、日本国憲法の歴史的な土台である「天賦人権」や「民主主義」の考え方を否定して憚らない空気に満ちており、2012年の改憲草案では国民に憲法尊重義務を課したり、本来憲法レベルで議論すべき問題を閣議決定や立法で済ませてしまうなど、憲法が定めた国民と国の関係を根本から破壊しようとしているようにしか見えません。このような環境下で、個人に寄り添う教育を進めようとする多くの教員が被る精神的圧力、精神的損害には計り知れないものがあり、私もその例外ではありません。
 最後に、学部長の立場から申し上げます。
 本学は地方公務員の養成に力を入れており、中でも地元の千葉県警には多くの卒業生が就職しています。千葉県警の活動方針のひとつは「思いやり」ですが、入試の面接で警察官志望の受験生に話を聞くと、住民のためになりたいという素朴な気持ちが伝わってきて、ほほえましい気持ちになると同時に、とても頼もしく思えます。
 ところが近年、沖縄に県外から動員された警察官は、住民などの抗議活動を、時として暴力的に抑圧する業務を担わされています。その中には本学の卒業生もいるかもしれません。それが果たして、「思いやり」のある警察の姿と言えるのでしょうか。私はこのような状況には耐えられませんし、本学はそんなことのために警察官を養成しているわけではありません。そのような現状を生んでいる根源こそ、今の政権の政策、そしてその政策の重要な要である安全保障関連法です。
 私は、多くの警察官を社会に送り出している法学部の責任者として、自分の大学が4年間かけて育てた人材がそのような不当な役割を押し付けられることに大いに抵抗を覚えますし、本学で学んだ教育と現実の落差に苦悩しているに違いない教え子たちを思うと身を裂かれるような思いです。
 以上の理由により、私は安全保障関連法及びその施行により重大な精神的損害を被っていることを主張します。
 

(弁護士・金原徹雄のブログから/安保法制違憲訴訟関連)
2016年9月3日
東京・安保法制違憲訴訟(国賠請求)が始まりました(2016年9月2日)
※過去の安保法制違憲訴訟関連のブログ記事にリンクしています。
2016年9月6日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(1)~東京・国家賠償請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告訴訟代理人による意見陳述
2016年9月10日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(2)~東京・国家賠償請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告による意見陳述
2016年10月4日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(3)~東京・差止請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告訴訟代理人による意見陳述
2016年10月5日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(4)~東京・差止請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告による意見陳述
2016年12月9日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(5)~東京・国家賠償請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告代理人による意見陳述

2016年12月10日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(6)~東京・国家賠償請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告による意見陳述
2017年1月5日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(7)~寺井一弘弁護士(長崎国賠訴訟)と吉岡康祐弁護士(岡山国賠訴訟)の第1回口頭弁論における意見陳述
2017年1月7日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(8)~東京・差止請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告訴訟代理人による陳述
2017年1月8日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(9)~東京・差止請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告(田中煕巳さんと小倉志郎さん)による意見陳述

2017年2月14日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(10)~東京「女の会」訴訟(第1回口頭弁論)における原告・原告代理人による意見陳述

2017年3月15日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(11)~東京・国家賠償請求訴訟(第3回口頭弁論)における原告代理人による陳述 
2017年3月16日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(12)~東京・国家賠償請求訴訟(第3回口頭弁論)における原告(田島諦氏ほか)による意見陳述
2017年4月21日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(13)~東京・差止請求訴訟(第3回口頭弁論)における原告代理人による陳述

2017年4月22日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(14)~東京・差止請求訴訟(第3回口頭弁論)における原告による意見陳述(様々な立場から)

2017年6月23日
2017年8月7日

司法に安保法制の違憲を訴える意義(17)~東京・差止請求訴訟(第4回口頭弁論)における原告訴訟代理人による陳述

 2017年8月7日配信(予定)のメルマガ金原.No.2897を転載します。
 
司法に安保法制の違憲を訴える意義(17)~東京・差止請求訴訟(第4回口頭弁論)における原告訴訟代理人による陳述
 
 昨年の4月26日、東京地方裁判所に2件の安保法制違憲訴訟が提起されました。1つは国家賠償請求訴訟、もう1つが差止請求訴訟です。
 国賠請求訴訟は同地裁の民事第一部、差止請求訴訟は民事第二部に系属し、国賠請求訴訟がやや先行しつつ、ほぼ同じようなペースで弁論期日を重ね、今年6月2日の国賠請求事件に続き、7月24日には差止請求事件も第4回口頭弁論期日を迎えました。
 第4回における原告の主張の概要は、以下に紹介する報告集会資料(角田由紀子、古川健三、伊藤真各弁護士による陳述書)をお読みいただくとして(そういえば、「安保法制違憲訴訟の会」ホームページには、訴状以外の訴訟資料は掲載しないという方針になったようです)、今後の本件訴訟の進行予定については、報告集会における福田護弁護士による報告(UPLAN動画の2時間06分~)で説明されています。
 それによると、
〇次回第5回口頭弁論期日(10月27日)までの間に、PKO協力法によって付与された新任務の差止請求、及び自衛隊法95条の2に基づく合衆国軍隊等の武器等防護の差止請求を追加提訴する(現在継続中の訴訟の請求の追加的変更ではなく、別訴の提起とするのは、系属裁判所との協議に基づくものだとか)。
〇次回期日までで原告による基本的な法的主張は出し終わり、来年からは、立証の段階に入っていきたい(金原注:追加提訴に関わる主張はなお必要だろうと思いますが)。
ということでした。 
 
 東京地裁前事前集会、裁判所内司法記者クラブでの記者会見、参議院議員会館講堂での報告集会の模様を、UPLAN(三輪祐児さん)がYouTubeにアップしてくださっていますのでご紹介します。
 
20170724 UPLAN 東京地裁103号法廷を満席に!安保法制違憲訴訟 自衛隊出動差止めの第4回口頭弁論期日 & 報告集会(2時間24分)

冒頭~ 東京地裁前事前集会
23分~ 記者会見
55分~ 報告集会
55分~ 寺井一弘弁護士(共同代表)
1時間03分~ 伊藤 真弁護士
1時間14分~ 角田由紀子弁護士
1時間26分~  古川 ( こがわ ) 健三弁護士
※古川弁護士が冒頭で、今回から原告本人の意見陳述が行われなくなった事情を説明されています。
1時間40分~ 水越淑子さん(原告)「孫たちを守らなければならない」
1時間45分~ 竹中正陽 (まさはる)さん(原告)「「平和愛好国」日本のブランド」
1時間55分 大村芳昭さん(原告)「国際家族法研究者、教育者、学部長として」
2時間06分~ 福田 護弁護士「差止追加提訴について」
2時間22分~ 司会(杉浦ひとみ弁護士)
 
 なお、3人の弁護士による陳述内容をご紹介する前に、上記動画でも語られていたことを2点ほど取り上げてご紹介します。
 
〇私のブログでも事前にご紹介しましたが(近刊予告!『私たちは戦争を許さない-安保法制の憲法違反を訴える-』(8/4岩波書店刊/安保法制違憲訴訟の会 編)/2017年7月23日)、8月4日、岩波書店から、『私たちは戦争を許さない-安保法制の憲法違反を訴える-』(安保法制違憲訴訟の会編)が刊行されました(1300円+税)。

 版元の岩波書店ホームページから、冒頭の24頁分が「立ち読みPDF」として公開されています。
新宿・紀伊國屋3階「私たちは戦争を許さない」 「安保法制違憲訴訟の会」共同代表の寺井一弘弁護士が、早速、新宿・紀伊國屋書店3階まで視察に行かれた際の写真がMLにアップされ、「私としては今週から一気に販売活動を本格化したいと思っております。提訴、若しくは提訴予定の全国各地で位置付けて関係団体や市民の皆様にご購入いただけるよう働きかけくだされば大変嬉しく思います。」ということでしたので、その写真を転載させていただいても支障ないだろうと判断しました。
 それにしても、『私たちは戦争を許さない-安保法制の憲法違反を訴える-』の周りに平積みされているのが、田母神俊雄氏の著書(2冊)や『戦争がイヤなら憲法を変えなさい』(古森義久著)だったりするというのが、いやはや何というか・・・。
 是非、書店が瞠目するほど、『私たちは戦争を許さない-安保法制の憲法違反を訴える-』が売り上げを伸ばして行って欲しいと思います。「安保法制は許せない」という志を共有される皆さんに、「是非お買い求めください」と訴えたいと思います。
 
〇報告集会で、裁判の進行状況を報告した福田護弁護士のお話の最後の方で、少し気になる発言がありました。それは、この第4回口頭弁論の傍聴席に空席が見られたということです。東京地裁における安保法制違憲訴訟は、国賠請求訴訟、差止請求訴訟とも、同地裁最大の103号法廷を使って行われてきましたが、抽選なしで、傍聴席に空席が目立つことが続くようであれば、早晩もっと小さな法廷に移されることになるでしょう。「安保訴訟違憲訴訟の会」としても、訴訟に対するバックアップ力の低下を非常に懸念しているのではないかと思いました。
 名前だけ原告訴訟代理人の私が和歌山の地から気を揉んでも何の力にもなりませんが、時間的に傍聴可能な方は、是非支援のために日程を確保していただければと希望します。
 裁判の日程については、「安保法制違憲訴訟の会」ホームページに、随時掲載されます。
 

原告ら訴訟代理人 弁護士 角 田 由 紀 子
人格権の被侵害利益性と具体的被害について
 
1 原告らは、既に提出した準備書面(7)において、原告らの主張する人格権が差止請求等の根拠となるべきであることを詳しく論じ、これを否定する国の主張が間違っていることを論証しております。
 
2 今日においては、「人格権」と呼ばれる権利が存在し、これが何らかの意味で法的に保護されることは、わが国の判例・学説で疑問の余地なく認められております。
(1) 学説について
 人格権についての議論は、日本でも戦前に始まり今日までに多くの議論が積み重ねられてきております。今日まで、人格権議論に貢献してきたのは、主として、憲法学者と民法学者でありますが、社会の変化・進展に伴ってその内容はより豊かなものになってきています。
 人格権を専門的に研究しているある学者は、近年は、環境に関する権利・利益や情報・プライバシーに関する権利・利益などに関連して人格権に含まれる権利が新たに提唱されるなど、権利内容が多様化しており、その現代社会における重要性はさらに高まりつつあると述べております。また、別の学者は、人類はこれからも人格的価値を侵害する思わぬ事態に遭遇することであろうが、その過程で人格権の新しい側面も見出されてくるであろうと述べております。
 多くの権利がそうであるように、人格権も未だ完成されたものではなく、社会の進展・変化に対応して新しい認識を重ねてその権利に含まれるものを広げていくものです。新安保法制法のもとでの新しい人権侵害状況は、今までの学説及び判例によって築きあげられてきた人格権議論の蓄積の上に立って、さらに肯定的に考えられるべきものです。
(2) 判例について
 判例も、非常に重要な権利として人格権を認めております。以下にその一部を紹介します。いずれも、国家賠償請求を含む損害賠償請求事件あるいは差止請求事件を認める根拠として、人格権を明確にしております。
①最高裁第二小法廷平成3(1991)年12月21日判決(水俣病認定業務に関する熊本県知事の不作為違法に対する損害賠償請求事件上告審判決)は、県知事による水俣病認定が遅れており、認定を待つ患者の不安や焦りの気持ちは、「いわば内心の静謐な感情を害するものであって、その程度は決して小さいわけではない」として、それが不法行為法上の損害賠償の対象となる権利・利益であることを認めました。この判決は、最高裁として、「内心の静謐の利益」を不法行為法上の保護法益として明確に認めた最初の判決です。本件原告らの人格権侵害という主張の理解に大いに参考になるものです。
 下級審でも重大な判決がいくつも出されております。
②大阪高裁 昭和50(1975)年11月27日判決は、大阪国際空港の夜間飛行禁止等請求事件のものです。「個人の生命、身体、精神及び生活に関する利益は、各人の人格に本質的なものであって、その総体を人格権ということができる。」「人格権の内容をなす利益は人間として生存する以上当然に認められるべき本質的なものであって、これを権利として構成するのに何らの妨げはなく、実定法の規定をまたなくとも当然に承認されるべき基本的権利である」と述べました。この事件では、被告国は、学説による体系化、類型化をまたなくては人格権として裁判上採用できないと主張したのですが、大阪高裁は、その主張をはっきりと否定しました。大阪高裁のこの判断は最高裁でも肯定されています。
③福井地裁平成26(2014)年5月21日判決は、大飯原発3,4号機の運転差止を認めたものです。この判決は、人格権は憲法上(13 条、25 条)の権利であり、人の生命を基礎とするものなので、わが国の法制下では、これを超える価値を見出すことができないとして、その重要性が強調されています。これは、本件で原告たちが訴えている、戦争による生命侵害への不安、恐れの重要性に通じるものとして示唆的です。
④最近のものとしては、2017年3月17日、前橋地裁の判決があります。福島・原発被害避難者による損害賠償請求事件です。判決は、平穏生活権が自己決定権を中核とした人格権であって、放射線被ばくへの恐怖不安にさらされない利益や内心の静謐な感情を害されない利益を包摂する権利など、多くの権利を包摂するものであると述べています。
 これらの指摘は、本件原告らの多くが、憲法のもとで築いてきた今までの人生を否定されたと感じ、戦争になるのではないかとの恐怖不安にさらされるなどしていることが、人格権の深刻な侵害であると訴えていることが認められるべき論拠となるものです。
 以上のように今日までの学説・判例によれば、少なくとも人間の尊厳に伴う基本的な法益をその内容とするものであれば、人格権・人格的利益として法的保護の対象になることが明らかにされています。
 
3 終わりに
 今、原告たちに残された救済の手段は司法しかありません。多くの人々の期待が今ほど司法に寄せられたことはなかったのではないでしょうか。ぜひ、憲法が司法に託した責務を果たして下さるよう、改めて裁判所にお願いをする次第です。
 

原告ら訴訟代理人 弁護士 古川 ( こがわ ) 健三
原告らの主張する人格権の内容と人格権にもとづく差止請求権
 
 本件において、原告らが主張している人格権は、(1)生命権、身体権及び精神に関する利益としての人格権、(2)平穏生活権、(3)主権者としてないがしろにされない権利(参政権的自己決定権)の三つです。
 生命権、身体権及び精神に関する利益は、人格の本質であって、これを超える価値を見出すことはできません。原告らは、のちに述べるように、新安保法制法の制定によって、その生命・身体への侵害の危険を感じ、精神的苦痛を受けています。
 また、原告らは、戦後憲法により築かれてきた平和な生活が、新安保法制法により否定され、破壊されることにより、平穏生活権を侵害されています。新安保法制法により、日本は軍事的対立の当事国となりうることとなりました。
 2017年5月1日、新安保法制法により新設された自衛隊法95条の2にもとづく「武器等防護」として、海上自衛隊の艦船が「カール・ビンソン」の米艦防護にあたりました。このことは、新安保法制法の制定により自衛隊と米軍との一体化が進み、原告らの平和な生活が現実に脅かされていることを明らかにしました。米軍基地周辺や、原発周辺、また海外にいる日本人などの生命・安全は脅かされ、平穏生活権は明らかに侵害されています。
 ところで、人格権の本質は、自己決定権であると言われています。自己決定権が法律上保護されるべきであることは、当然です。自己決定権については、医療分野を中心に多くの判例が蓄積されています。そして、自己決定権のうちでも、参政権的自己決定権は最も重要なものであり、そのなかでも、憲法改正手続に参加し、意思表明する機会を与えられる権利は、国民主権原理に由来するもっとも重要な権利として保障されなければなりません。ところが従来の政府見解を覆して憲法改正手続を経ないで、新安保法制法を制定したことは、原告らが主権者として憲法改正手続に参加する機会を奪いました。
 このようにして原告らの参政権的自己決定権としての人格権は侵害され、さらなる侵害の危険に脅かされています。
 このような人格権の侵害の危険を除去し、さらなる侵害を予防するための差止請求は当然に認められなければなりません。人格権にもとづく妨害排除または妨害予防請求としての差止請求が認められることは、昭和50年の大阪国際空港事件大阪高裁判決が認め、最高裁も昭和61年の北方ジャーナル事件で明らかにしています。
 生命権・身体権及び精神的な利益としての人格権、平穏生活権にもとづく差止はもちろん、自己決定権にもとづく差止請求も認められるべきです。人格権にもとづく差止に関する判例としては、廃棄物処理施設の使用や操業の差止を認めたもの、暴力団事務所の使用差止を認めたもの、さらに自己情報コントロール権にもとづく個人情報削除を認めたものなどがあります。
 さらに、個別の原告らが受けている人格権侵害と侵害の危険の内容の一部を説明します。
戦争体験者は、戦争により生死の境をさまよい、肉親を失い、戦後も戦災孤児となったり、戦争のトラウマにさいなまれるなど、過酷な生活を強いられました。憲法9条は、戦争体験者である原告らにとっては、肉親の命と引き換えにようやく手に入れることができた平和であり、不戦の誓いの中に原告らは生きる希望を見出したのです。しかし新安保法制法は、戦争の現実の危険をもたらし、原告らのうちにトラウマを呼び起こし、戦時の過去の追体験を迫っています。そこにはすでに国賠法上賠償されるべき被害があり、またさらなる侵害の予防は不可欠です。一旦戦争に巻き込まれたらもはや後戻りはできないからです。
基地周辺住民の原告や原発関係者である原告の人格権侵害も、深刻です。厚木基地周辺の原告はすでに米軍機の爆音被害を受けていますが、新安保法制法のもと、軍事対立の激化により一層大きな恐怖にさらされることになります。 
 船員、航空労働者、鉄道関係者、医療従事者などの不安も甚大です。戦時中、船員は兵站を担うために徴用され、多くの命が失われました。
 戦後、幾多の国際紛争がありましたが、日本は憲法9条があり、戦争を行わないことにより日本の船員たちの命が守られていました。しかし、新安保法制法成立後、彼らを守るものは失われました。新安保法制法制定後、防衛省が民間フェリーとチャーター契約したことは、原告らに大きな危機を抱かせました。
 子をもつ母、孫を持つ祖父母たちの平穏生活権も著しく侵害され、危険にさらされています。
 ある原告の孫は、安保法制が審議されていた当時、小学校6年生でしたが「戦争はしたくないよ」と言い、その原告の胸は張り裂けそうでした。
 またある原告の子は、金魚が死んでも泣く心優しい子です。その子が新安保法制法により戦場に送られるかもしれないと考えると原告は涙が溢れます。
 このような原告らの訴えはいずれも大きく胸を打ちます。裁判所には、ぜひとも原告らの訴えに耳を傾けていただき、この国の未来のために裁判所の職責を果たしていただきたいと切望します。
 

原告ら訴訟代理人 弁護士  伊 藤  真
準備書面(8)について(立法不法行為における職務行為基準説と相関関係論)
 
第1 国賠法上の違法性の判断基準について
 原告らは、いわゆる立法不法行為に関する違法性の判断において「職務行為基準説」を採り、かつ、いわゆる「相関関係論」すなわち、侵害行為の態様・程度と被侵害利益の種類・内容との相関関係において違法性が判断されるとする立場を採用している。両者の関係について明確にした上で、「平和的生存権」、「人格権」、「憲法改正・決定権」の具体的権利性を否定する被告の主張が不当なものであることを述べ、これに反論する。
 まず、国賠法上の違法性は、厳密な行政法規違反に限定されるものではないことは、田中二郎博士など行政法の研究者や、平成25年3月26日最高裁第三小法廷判決に付された寺田逸郎裁判官及び大橋正春裁判官の補足意見などでも言及されているところである。
 被告主張のように、侵害行為の態様や被侵害利益の内容を考慮すべきでないと言えるのは、刑事手続上の検察官や裁判官の職務行為の違法性が問題となった事案における「職務行為基準説」(「公権力発動要件欠如説」とも称されるもの)についてであり、これと、一般の行政処分についての「職務行為基準説」を混同してはならない。
 行政処分に関するいくつかの裁判例においても、国賠法上の違法性を、侵害行為の態様・程度と被侵害利益の種類・内容との相関関係において判断している。
 よって、一般に「職務行為基準説」を採用することが、「相関関係論」を否定する理由にはならない。
 では、立法不法行為の場合はどうであろうか。
 立法不法行為の場合には、職務行為基準説を採用しつつも、より一層、侵害行為の態様と被侵害利益の種類・性質との相関関係を考慮するべきと考える。国会議員の職務義務違反という行為態様の違法性の質と量は、侵害行為の態様と被侵害利益の種類・性質等を考慮しなければ、判断できないものといえるからである。特に、憲法の基本原理に牴触したり、国民各人の権利や法的利益を侵害したりする可能性のある法律を制定する場合には、相当慎重に立法内容を検討する注意義務があるといえ、さらに、有識者から違憲と指摘されるような法律を制定する際には、当該立法が憲法違反とはならないことを国民に説得的に説明する法的義務が生じているといえる。このように、国会議員の職務義務の内容・レベルは、侵害行為の態様、当該立法行為によって生じる被侵害利益の種類・性質などを考慮しなければ判断できない。検察官の公訴提起・追行などの公権力発動要件のように明確な要件が予め法定されている訳ではないからである。
 
第2 「『平和的生存権』は、国賠法上保護される具体的権利ないし法的利益とは認められない」 という被告の主張は正当でないこと
 被告の立場は「平和的生存権は抽象的かつ不明確」であり、裁判上の救済の対象となる「具体的権利ないし法的利益と認められない」という論旨で一貫している。被告のこうした主張は、戦争や武力行使の現実を直視しないことから生じるものである。「平和的生存権」の権利性を正確に認識するためには、まずは具体的事実例に真摯に向き合うことが必要となる。
 原告らが、陳述書で述べ、法廷で主張している内容は、あくまでも、原告らの現実である。
 こうした現実に目を向けず、「抽象的かつ不明確」という主張を繰り返す被告の対応は、多くの国民・市民の苦しみに目を閉ざすものと言わざるを得ない。
 平和的生存権については、歴代政府が自衛隊の海外派兵を加速させることに対応して、憲法学会では、その内容も精緻化されてきたし、裁判所でも「平和的生存権」の具体的権利性を認める判決が生まれている。このように「平和的生存権」の内実も確実に進化しているのである。
 こうした時代の変化や学説・判例の進歩を考慮せず、従来どおりの旧態依然の主張を繰り返すことは許されない。被告は、自ら「我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増している」と認めている。そのような今日においても、平和的生存権という人権の進化を認める必要など全くないというのであろうか。権利ないし法的保護利益は、侵害の具体的な危険性が増加すれば、それに伴って要保護性も増していくものである。
 プライバシー権などの人格権がその最たるものであろう。個人情報が本人の意に反して拡散してしまう危険性が増している現代だからこそ、これを法的に保護する必要性が増しているのである。平和的生存権も同様である。
 付言するが、2016年12月19日、「平和的生存権」と同じような内容を有する「平和への権利宣言」が国連総会で採択された。「平和概念が曖昧」であるとか「司法上の権利となり得ない」という主張をする国も存在したが、そうした見解は国連総会で支持されなかった。平和を権利として認識することは、もはや国際標準なのである。 
 なお、違憲訴訟のあり方に関する被告の主張に対しては、さらに別途準備書面にて反論する。
 
第3 「人格権は国賠法上保護される権利ないし法的利益とは言えない」 という被告の主張は、「人格権」に関する不当な理解に基づくこと
 原告らの主張する人格権について、被告は、「漠然とした不安感を抱いたという域を出るものではなく、かかる内容をもって具体的権利性が認められると解する余地はない」などと述べている。これが誤りであることは、準備書面(7)において詳細に主張する。
 新安保法制法の成立により、基地周辺や大都市、原発周辺の住民、自衛官、海外にいる日本人、NGO関係者などの生命や安全が危険にさらされる。こうした状況はまさに「人格権」の侵害と言わざるを得ない。
 
第4 憲法改正・決定権は「『国家の主権者としての国民』という抽象的な位置づけ」 にとどまるものではなく、 具体的な権利であること
 被告も、国政選挙における選挙権に関しては「国家賠償法上保護された権利」と認めるであろう。そうだとすれば、憲法改正・決定権が問題となる投票の場合には、国政選挙以上に「国家賠償法上保護された権利が存在」すると考えざるを得ない。憲法学説でも、憲法改正・決定権こそが主権者の意見表明であると考えているし、選挙という主権者の間接的な意見表明よりも、国民投票という直接的な意見表明の方が、より強固で明確な意思表示といえるからである。
 また、被告は、「そもそも、平和安全法制関連2法は、憲法の条文自体を改正するもの」ではないことを根拠に、憲法改正手続きに関する原告らの具体的、個別的な権利ないし法的利益に何ら影響を及ぼすものではない旨を主張する(答弁書39頁)。
 しかし、この主張は、ヒトラー・ナチスによる「授権法」成立(1933年3月23日)により、ワイマール憲法が実質的に廃止されたように、法律の制定によっても憲法の意義が空洞化される事例が存在する歴史を忘れた危険な主張であり、「法の支配」や「立憲主義」の理念を体現する、日本国憲法の基本理念の空洞化を正当化するものであり決して許されるものではない。
 

(弁護士・金原徹雄のブログから/安保法制違憲訴訟関連)
2016年9月3日
東京・安保法制違憲訴訟(国賠請求)が始まりました(2016年9月2日)
※過去の安保法制違憲訴訟関連のブログ記事にリンクしています。
2016年9月6日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(1)~東京・国家賠償請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告訴訟代理人による意見陳述
2016年9月10日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(2)~東京・国家賠償請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告による意見陳述
2016年10月4日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(3)~東京・差止請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告訴訟代理人による意見陳述
2016年10月5日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(4)~東京・差止請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告による意見陳述
2016年12月9日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(5)~東京・国家賠償請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告代理人による意見陳述

2016年12月10日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(6)~東京・国家賠償請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告による意見陳述
2017年1月5日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(7)~寺井一弘弁護士(長崎国賠訴訟)と吉岡康祐弁護士(岡山国賠訴訟)の第1回口頭弁論における意見陳述
2017年1月7日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(8)~東京・差止請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告訴訟代理人による陳述
2017年1月8日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(9)~東京・差止請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告(田中煕巳さんと小倉志郎さん)による意見陳述

2017年2月14日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(10)~東京「女の会」訴訟(第1回口頭弁論)における原告・原告代理人による意見陳述

2017年3月15日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(11)~東京・国家賠償請求訴訟(第3回口頭弁論)における原告代理人による陳述 
2017年3月16日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(12)~東京・国家賠償請求訴訟(第3回口頭弁論)における原告(田島諦氏ほか)による意見陳述
2017年4月21日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(13)~東京・差止請求訴訟(第3回口頭弁論)における原告代理人による陳述

2017年4月22日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(14)~東京・差止請求訴訟(第3回口頭弁論)における原告による意見陳述(様々な立場から)

2017年6月23日

ルビ付き原文と超訳で読む「戦時家庭教育指導要項」(1942年5月) 統合版

 2017年8月6日配信(予定)のメルマガ金原.No.2896を転載します。
 
ルビ付き原文と超訳で読む「戦時家庭教育指導要項」(1942年5月) 統合版
 
 1942年(昭和17年)5月7日付で、文部次官から各地方長官に通牒された「戰時家庭教育指導ニ關スル件」(昭和十七年五月七日發一二八號)及びその別紙として一体をなしていた「戰時家庭教育指導要項」については、戦時下の国が、家庭教育に何を求めていたかを集大成したものとして、貴重な歴史的資料であり、2006年の教育基本法全部「改正」、文部科学省が主導する家庭教育支援の諸方策、全国各地の自治体で進む家庭教育支援条例の制定、国会への上程が間近と言われる家庭教育支援法案の準備などの動きを批判的に考察するために、是非とも読み込んでおくべきものだと思います。
 「要項」自体、そんなに長いものではありませんが、戦前の行政文書の通例で、難解な熟語が頻出し、原則として句読点もない漢文読み下し調の文体で書かれていますので、それだけで恐れをなし、読んでみようという意欲がわいてこないかもしれません。
 以上の問題意識から、東京の城北法律事務所に所属する大久保秀俊、久保木太一両若手弁護士が、「要項」作成の歴史的・思想的背景等も踏まえた上で、誰にも分かりやすい「超訳」を作成したことを知り、お2人のご快諾を得て私のブログに全文転載させていただくことになり、8月3日から5日まで、3回に分けて掲載させていただきました。
 また、「超訳」と対照して原文の「要項」も読んでいただきたいと思い、仲里歌織弁護士のご協力を得て、「超訳」の底本となった奥村典子著『動員される母親たち 戦時下における家庭教育振興政策』(六花出版/2014年10月刊)に掲載された原文(同書109~111頁/漢字は旧字体から新字体に改められている)を転記した上で、全ての漢字にルビを振りました(技術上の問題から、本文内に括弧書きで読み方を表示しました)。
 また、以上のブログ用草稿作成の途上で、奈良県立図書情報館ホームページに掲載されている「戰時家庭教育指導要項」を発見し、一般に流布している「要項」と明らかに版が違うものであったため、資料的価値もあろうかと思い、これも併せてブログに掲載しました。
 そして、各大項目(「通牒」、「一、我ガ国ニ於ケル家ノ特質ノ闡明並ニ其ノ使命ノ自覚」、「二、健全ナル家風ノ樹立」、「三、母ノ教養訓練」、「四、子女ノ薫陶養護」、「五、家生活ノ刷新充実」)ごとに、「超訳」、「原文」、「原文(ルビ付き)」、「奈良版・原文」、「奈良版・原文(ルビ付き)」の順番で掲載しました。
 最後に、戦前における家庭教育に対する国の方針がどう推移して「戦時家庭教育指導要項」に至ったのか、その特質がどこにあるのかをより詳しく知っていただくため、「超訳」の訳者である大久保秀俊弁護士、久保木太一弁護士にる解説「戦時家庭教育指導要項の成立とその背景」を末尾に転載させていただきました。
 
 以上のような方針で、ブログ草稿を作ったため、全体の分量が長くなり過ぎ、やむなく3回分載としたのですが、いざこの記事を多くの人に活用してもらおうと考えると、3つの記事に分かれていては何かと不便であるということに思い至りました。
 そこで、資料的価値はともかくとして、「戦時家庭教育指導要項」自体を理解するためには必要ないと思われる奈良県立図書情報館版はカットすることとし、以下の方針で「統合版」を作ることにしました。
 
1 原文は、大久保秀俊先生からブログ草稿完成後に提供いただいた資料・文部大臣官房文書課編『文部省例規類纂』昭和十七年(復刻版『文部省例規類纂』第7巻/大空社/1987年)20頁~25頁に掲載された「戰時家庭教育指導ニ關スル件」(昭和十七年五月七日發一二八號 各地方長官ヘ文部次官通牒)及びその別紙たる「戰時家庭教育指導要項」に準拠する。ただし、漢字については、読みやすさを考慮して、旧字体から新字体に書き改める。その際、『動員される母親たち 戦時下における家庭教育振興政策』所収版を参照する。
2 統合版における構成(目次)は以下のとおりとする。
 (1)ルビ付き原文と超訳で読む「戦時家庭教育指導要項」 
      ①「戦時家庭教育指導ニ関スル件」ルビ付き原文
      ②「一、我ガ国ニ於ケル家ノ特質ノ闡明並ニ其ノ使命ノ自覚」ルビ付き原文
   ③「1 日本における家の特徴と家の使命を教えます」超訳
   ④「二、健全ナル家風ノ樹立」ルビ付き原文
   ⑤「2 健全な家風を作ってください」超訳
   ⑥「三、母ノ教養訓練」ルビ付き原文
   ⑦「3 母親を教育してください」超訳
   ⑧「四、子女ノ薫陶養護」ルビ付き原文
   ⑨「4 子供を正しく育ててください」超訳
   ⑩「五、家生活ノ刷新充実」ルビ付き原文
   ⑪「5 今までの家庭生活から新しい家庭生活へ」超訳
 (2)原文で読む「戦時家庭教育指導ニ関スル件」と「戦時家庭教育指導要項」
 (3)「戦時家庭教育指導要項の成立とその背景」
 (4)参考文献
 
 なお、「戦時家庭教育指導要項」が発表された同じ年(昭和17年)、戸田貞三著『家の道 文部省戦時家庭教育指導要項解説』(中文館)という注釈書が刊行されており、国立国会図書館デジタルコレクションで読むことができます。
 
 4日にわたってお送りしてきた「ルビ付き原文と超訳で読む「戦時家庭教育指導要項」(1942年5月)」も、いよいよ今日の「統合版」で最終回を迎えました。
 家庭教育の歴史や現状の問題点について全く無知であった私に、様々な資料や情報を提供してくださり、また玉稿の転載をご了解いただいた仲里歌織先生、大久保秀俊先生、久保木太一先生に、あらためて心より御礼申し上げます。
 また、私がこの問題に関心を持つ重要なきっかけとなった某メーリングリストに熱い投稿を行い、私のやる気に火を付けていただいた漆原由香先生(岐阜県弁護士会)にも感謝します。
 3回分載時にも書きましたが、この「ルビ付き原文と超訳で読む「戦時家庭教育指導要項」(1942年5月)」が多くの人のお役に立てればと念願します。
 
 
-ルビ付き原文と超訳で読む「戦時家庭教育指導要項」-
 
       戦時家庭教育指導(せんじかていきょういくしどう)ニ関(かん)スル件(けん)

(昭和十七年五月七日 発社一二八号 各地方長官(かくちほうちょうかん)ヘ文部次官(もんぶじかん)通牒(つうちょう))

未曽有(みそう)ノ重大時局(じゅうだいじきょく)ニ際会(さいかい)シ、肇国(ちょうこく)ノ大精神(だいせいしん)ニ則(のっと)リ、国家総力(こっかそうりょく)ヲ結集(けっしゅう)シ、以テ(もって)聖業翼賛(せいぎょうよくさん)ニ邁進(まいしん)スベキ時(とき)、国運進展(こくうんしんてん)ノ根基(こんき)ニ培(つちか)フベキ家(いえ)ノ使命(しめい)愈々(いよいよ)重(おも)キヲ加(くわ)フルニ至(いた)レリ
仍テ(よって)家生活(いえせいかつ)ヲ刷新充実(さっしんじゅうじつ)シ、家族制度(かぞくせいど)ノ美風(びふう)ヲ振起(しんき)シ、皇国(こうこく)ノ重責(じゅうせき)ヲ負荷(ふか)スルニ足(た)ル健全有為(けんぜんゆうい)ナル子女(しじょ)ヲ育成薫陶(いくせいくんとう)スベキ家庭教育(かていきょういく)ノ振興(しんこう)ヲ図(はか)ルハ、正(まさ)ニ刻下(こっか)ノ急務(きゅうむ)タリ。茲(ここ)ニ戦時家庭教育指導要項(せんじかていきょういくしどうようこう)別紙(べっし)ノ通(とおり)相定(あいさだ)メラレタルニ付(つき)、之(これ)ガ徹底(てってい)ニ関(かん)シ、万(ばん)遺憾(いかん)ナキヲ期(き)セラレ度(たく)、此段(このだん)依命通牒(いめつうちょう)ス。
 
【超訳は未訳】


          戦時家庭教育指導要項(せんじかていきょういくしどうようこう)
 
【一、我ガ国ニ於ケル家ノ特質ノ闡明並ニ其ノ使命ノ自覚】
一、我(わ)ガ国(くに)ニ於(お)ケル家(いえ)ノ特質(とくしつ)ノ闡明(せんめい)並(ならび)ニ其(そ)ノ使命(しめい)ノ自覚(じかく)
我(わ)ガ国(くに)ニ於(お)ケル家(いえ)ハ
イ、祖孫一体(そそんいったい)ノ道(みち)ニ則(のっと)ル家長中心(かちょうちゅうしん)ノ結合(けつごう)ニシテ人間生活(にんげんせいかつ)ノ最(もっと)モ自然(しぜん)ナル親子(おやこ)ノ関係(かんけい)ヲ根(ね)トスル家族(かぞく)ノ生活(せいかつ)トシテ情愛敬慕(じょうあいけいぼ)ノ間(かん)ニ人倫本然(じんりんほんねん)ノ秩序(ちつじょ)ヲ長養(ちょうよう)シツツ、永遠(えいえん)ノ生命(せいめい)ヲ具現(ぐげん)シ行(ゆ)ク生活(せいかつ)ノ場(ば)ナルコト。
ロ、畏(かしこ)クモ 皇室(こうしつ)ヲ宗家(そうけ)ト仰(あお)ギ奉(たてまつ)リ恒(つね)ニ国(くに)ノ家(いえ)トシテ生成発展(せいせいはってん)シ行(ゆ)ク歴史的現実(れきしてきげんじつ)ニシテ忠孝一本(ちゅうこういっぽん)ノ大道(だいどう)ニ基(もと)ヅク子女錬成(しじょれんせい)ノ道場(どうじょう)ナルコト。
ハ、親子(おやこ)、夫婦(ふうふ)、兄妹(きょうだい)、姉妹(しまい)和合団欒(わごうだんらん)シ序(じょ)ニ従(したが)ツテ各自(かくじ)ノ分(ぶん)ヲ尽(つ)クシ老(ろう)ヲ扶(たす)ケ幼(よう)ヲ養(やしな)フ親和(しんわ)ノ生活(せいかつ)ノ裡(うち)ニ自他一如(じたいちにょ)、物心一如(ぶっしんいちにょ)ノ修錬(しゅうれん)ヲ積(つ)ミ進(すす)ンデ世界新秩序(せかいしんちつじょ)ノ建設(けんせつ)ニ参(さん)スルノ素地(そじ)ニ培(つちか)フモノナルコト
等(とう)ヲ其(そ)ノ特質(とくしつ)トスルコトヲ闡明(せんめい)シ我(わ)ガ国(にく)ニ於(お)ケル家(いえ)ノ国家的(こっかてき)並(ならび)ニ世界的意義(せかいてきいぎ)ニ徹(てっ)セシメ之(これ)ガ使命(しめい)ノ完遂(かんすい)ニ遺憾(いかん)ナカラシメンコトヲ要(よう)ス。
 
【1 日本における家の特徴と家の使命を教えます】
 日本における家は、
イ 家長が中心の結合体で、先祖も君たちもみんな一体です。
 親子関係をベースとして、愛情や尊敬に包まれながら人格を形成して、永遠に続いていく場所です。
ロ こんなこと言うとバチが当たりそうですが、皇室は君たちみんなの本家です。そうやって君たちの家は発展していきました。なので、家は、天皇への忠誠心を持った天皇のしもべとしての子供を生み出し、天皇への奉仕者としての資質を伸ばすことに全力を傾ける場にしてください。
ハ 親子、夫婦、兄弟、姉妹は仲良くしてください。上下関係といった役割にしたがってお年寄りや子供の面倒もみてください。自分も他人も一心同体です。贅沢は敵なので、誘惑に負けない訓練をつみ、大東亜戦争を遂行するためのベースを培うことが日本の家の役割です。日本のため、大東亜戦争のための使命を完璧に果たしてもらうことが必要です
 
 
【ニ、健全ナル家風ノ樹立】
ニ、健全(けんぜん)ナル家風(かふう)ノ樹立(じゅりつ)
 家風(かふう)ハ家々(いえいえ)ノ伝統(でんとう)ノ具体的表現(ぐたいてきひょうげん)ナルト共(とも)ニ不断(ふだん)ニ生成発展(せいせいはってん)スベキモノナリ。家人(かじん)ノ性格(せいかく)ハ家風(かふう)ニヨリ律(りっ)セラルルコト大(だい)ニシテ家人(かじん)ノ、従(すたが)ツテ国民(こくみん)ノ健全(けんぜん)ナルカ否(いな)カハ家風(かふう)ノ如何(いかん)ニ関(かか)ハル。家風(かふう)ハ家(いえ)ニヨリテ異(こと)ナルモノアリト雖(いえど)モ我(わ)ガ国(くに)ニ於(お)ケル家(いえ)ノ特質(とくしつ)ニ鑑(かんが)ミ健全(けんぜん)ナル家風(かふう)ノ樹立(じゅりつ)ノ為(ため)ニ特(とく)ニ左記諸項(さきしょこう)ノ徹底(てってい)ニツキ留意(りゅうい)スルヲ要(よう)ス
イ、敬神崇祖(けいしんすうそ))
 敬神崇祖(けいしんすうそ)ハ祖孫一体(そそんいったい)ノ道(みち)ノ中枢(ちゅうすう)タルベキモノナリ。敬神(けいしん)ハ実(じつ)ニ 天皇(てんのう)ニ帰一(きいつ)シ奉(たてまつ)ル所以(ゆえん)、崇祖(すうそ)ハ 天皇(てんのう)ニ仕(つか)ヘマツレル祖先(そせん)ヲ祀(まつ)リ崇(たっと)ブ所以(ゆえん)ニシテ敬神(けいしん)ト崇祖(すうそ)トハ相合致(あいがっち)シテ忠孝一本(ちゅうこういっぽん)ノ大道(だいどう)ヲ顕現(けんげん)スルモノナリ。従(したが)ツテ各戸(かくこ)必(かなら)ズ神棚(かみだな)ヲ設(もう)ケテ日常礼拝(にちじょうらいはい)ヲ怠(おこた)ラズ祭祀(さいし)ヲ行事(ぎょうじ)トシテ厳粛(げんしゅく)ニ執行(しっこう)シ敬神崇祖(けいしんすうそ)ノ精神(せいしん)ヲ具現(ぐげん)セシムルヲ要(よう)ス。
ロ、敬愛(けいあい)、親和(しんわ)、礼節(れいせつ)、謙譲(けんじょう)
 家長(かちょう)ヲ中心(ちゅうしん)トシテ親子(おやこ)、夫婦(ふうふ)、兄妹(きょうだい)ノ序(じょ)ヲ正(ただ)シクスルコトハ家生活(いえせいかつ)ノ根本(こんぽん)ナリ。家人(かじん)相互(そうご)ニ敬愛(けいあい)ノ情(じょう)ヲ尽(つ)クシ親和(しんわ)ノ間(かん)ニ礼節(れいせつ)ヲ忘(わす)レズ相互(そうご)ニ謙譲(けんじょう)シテ協力奉公(きょうりょくほうこう)ノ実践(じっせん)ニ力(つと)メテ家生活(いえせいかつ)ヲ健全(けんぜん)ナラシメ此(こ)ノ間(かん)健全(けんぜん)ナル国家(こっか)ノ基礎(きそ)ヲ確立(かくりつ)ス。
ハ、一家和楽(いっかわらく)
 家生活(いえせいかつ)ハ国家活動(こっかかつどう)ノ源泉(げんせん)ニシテ道義(どうぎ)ニ基(もと)ヅク家生活(いえせいかつ)ノ実践(じっせん)ハ自(おのず)カラ之(これ)ヲ和楽(わらく)ナラシム。勤労(きんろう)ト規律(きりつ)トヲ和(わ)スルニ寛(くつろ)ギヲ以テ(もって)シ一家団欒(いっかだんらん)ノ楽(たのし)ミヲ偕(とも)ニスルコトハ更(さら)ニ豊(ゆた)カナル生活力(せいかつりょく)ニ培(つちか)フ所以(ゆえん)ナリ。
ニ、隣保協和(りんぽきょうわ))
 血縁(けつえん)ト地縁(ちえん)トハ古来(こらい)我(わ)ガ国(くに)ニ於(お)ケル家(いえ)ト家(いえ)トノ結合(けつごう)ノ基本(きほん)ニシテ血縁(けつえん)ニヨル家(いえ)ト家(いえ)トノ親和(しんわ)ノ実(じつ)ヲ移(うつ)シテ地縁(ちえん)ニヨル隣保(りんぽ)ニ及(およ)ボシ延(ひ)イテハ国家的結合(こっかてき)けつごう)ヲ家族的(かぞくてき)ナラシムルトコロニ家(いえ)ノ日本的性格(にほんてきせいかく)ノ存(そん)スル所以(ゆえん)ヲ認識(にんしき)セシメ隣保協和(りんぽきょうわ)ノ実(じつ)ヲ挙(あ)ゲシム。
 
【2 健全な家風を作ってください】
 家風はその家の伝統であり、ずっと発展していかなければならないものです。家風は家族の性格に影響します。なので、国民が健全かどうかは家風が健全かどうかによります。家風は家によって異なっていると思いますが、日本の家の役割を考えて、健全な家風を作るために下記の点に注意してください。
イ 神と祖先をリスペクトしてください
 先祖も君たちもみんな一体となるために、これはとても大切なことです。
 神をリスペクトすることがなぜ大事かというと、神とは実は天皇だからです。
 先祖をリスペクトすることがなぜ大事かというと、先祖も君たちと同じように天皇に仕えていたからです。
 つまり、神をリスペクトすることも祖先をリスペクトすることも、全部天皇に対する忠誠心へとつながります。
 どの家も必ず神棚を設け毎日ちゃんとお祈りしましょう。祭祀も行事としてちゃんとやりましょう。そうやって神と祖先をリスペクトすることで、天皇への忠誠を示してください。
ロ 礼儀や上下関係は守った上で、家族を敬愛し、仲良くしてください
 家長が一番で、子よりは親、妻よりは夫、弟よりは兄が偉いという上下関係をしっかりすることは家族の基本です。敬愛することも大事ですが、親しき中にも礼儀はあります。自分より偉い人には奉公し、自分より偉くない人には協力してあげることによって健全な家庭を築くことが、健全な国家のベースになります。
ハ 円満な家庭を築きましょう
 家庭生活は国のベースです。家庭円満のために、道徳をちゃんと守りましょう。勤労と規律によって家族がまとまることは、豊かな生活につながります。
ニ お隣さんと仲良く協力しよう
 血縁と地縁は昔からある日本の家ぐるみの付き合いのベースです。血のつながった者同士が協力するように、お隣さん同士も協力してください。それをさらに広げて、国で一体となって協力しましょう。これが日本の家の役割です。そういうことなので、お隣さんとは仲良くしてください。
 
 
【三、母ノ教養訓練】
三、母(はは)ノ教養訓練(きょうようくんれん)
 家庭教育(かていきょういく)ハ固(もと)ヨリ父母(ふぼ)共(とも)ニ其(そ)ノ責(せめ)ニ任(にん)ズベキモノナレドモ、子女(しじょ)ノ薫陶養護(くんとうようご)ニ関(かん)シテハ特(とく)ニ母(はは)ノ責務(せきむ)ノ重大(じゅうだい)ナルニ鑑(かんが)ミ、母(はは)ノ教養訓練(きょうようくんれん)ニ力(ちから)ヲ致(いた)シ、健全(けんぜん)ニシテ豊(ゆた)カナル母(はは)ノ感化(かんか)ヲ子(こ)ニ及(およ)ボシ、次代(じだい)ノ皇国民(こうこくみん)ノ育成(いくせい)ニ遺憾(いかん)ナカラシムルト共(とも)ニ、健全(けんぜん)ニシテ明朗(めいろう)ナル家(いえ)ヲ実現(じつげん)セシメンガ為(ため)ニ特(とく)ニ左記諸項(さきしょこう)ノ徹底(てってい)ニツキ留意(りゅうい)スルヲ要(よう)ス。
イ、国家観念(こっかかんねん)ノ涵養(かんよう)
 家生活(いえせいかつ)ハ単(たん)ナル家(いえ)ノ生活(せいかつ)ニ止(とど)マラズ、常(つね)ニ国家活動(こっかかつどう)ノ源泉(げんせん)ナルコトヲ理解(りかい)セシメ、一家(いっか)ニ於(お)ケル子女(しじょ)ハ単(たん)ニ家(いえ)ノ子女(しじょ)トシテノミナラズ、実(じつ)ニ皇国(こうこく)ノ後勁(こうけい)トシテコレヲ育成(いくせい)スベキ所以(ゆえん)ヲ自覚(じかく)セシム。
ロ、日本婦道(にほんふどう)ノ修錬(しゅうれん)
 個人主義的思想(こじんしゅぎてきしそう)ヲ排(はい)シ、日本婦人(にほんふじん)本来(ほんらい)ノ従順(じゅうじゅん)、温和(おんわ)、貞淑(ていしゅく)、忍耐(にんたい)、奉公(ほうこう)等(とう)ノ美徳(びとく)ヲ涵養錬磨(かんようれんま)スルニ努(つと)メシム。
ハ、母(はは)ノ自覚(じかく)
 子女(しじょ)ノ性格(せいかく)ハ母(はは)ノ性格(せいかく)ノ反映(はんえい)ニヨルコト極(きわ)メテ大(だい)ニシテ、皇国(こうこく)ノ次代(じだい)ヲ荷(にな)フベキ人材(じんざい)ノ萌芽(ほうが)ハ今日(こんにち)ノ母(はは)ノ手(て)ニヨリテ育成(いくせい)セラルルコトヲ思(おも)ヒ、子女(しじょ)ノ薫陶養護(くんとうようご)ニ対(たい)スル母(はは)ノ責任(せきにん)ト使命(しめい)トヲ自覚(じかく)セシム。
ニ、科学的教養(かがくてききょうよう)ノ向上(こうじょう)
 国民(こくみん)ノ科学的教養(かがくてききょうよう)ハ幼少(ようしょう)ノ間(かん)ニ啓培(けいばい)スルコトヲ要(よう)シ、而(しか)モ子女(しじょ)ノ科学愛好(かがくあいこう)ノ精神(せいしん)ハ母(はは)ノ教養(きょうよう)ニ負(お)フトコロ極(きわ)メテ大(だい)ニシテ、家生活(いえせいかつ)各般(かくはん)ノ問題(もんだい)ヲ処理(しょり)スルニ科学(かがく)ノ謬(あやま)ラザル活用(かつよう)ヲ図(はか)ルコトハ国策(こくさく)ヘノ協力(きょうりょく)ニトリテ極(きわ)メテ緊要(きんよう)ナリ。仍テ(よって)特(とく)ニ母(はは)ノ科学的教養(かがくてききょうよう)ノ向上(こうじょう)ヲ図(はか)リ、子女(しじょ)ノ教養(きょうよう)ニ寄与(きよ)セシムルト共(とも)ニ国策(こくさく)ヘノ協力(きょうりょく)ヲ徹底(てってい)セシム。
ホ、健全(けんぜん)ナル趣味(しゅみ)ノ涵養(かんよう)
 母(はは)タルモノノ趣味(しゅみ)ノ向上(こうじょう)ガ家生活(いえせいかつ)ヲ豊(ゆた)カニシ之(これ)ヲ明朗(めいろう)ナラシムルト共(とも)ニ、子女(しじょ)ノ品性情操(ひんせいじょうそう)ノ陶冶(とうや)ニ影響(えいきょう)スルトコロ大(だい)ナル所以(ゆえん)ヲ認識(にんしき)セシメ、日常生活(にちじょうせいかつ)ノ間(かん)健全優美(けんぜんゆうび)ナル趣味(しゅみ)ノ涵養(かんよう)ニ努(つと)メシム。
ヘ、強健(きょうけん)ナル母体(ぼたい)ノ錬成(れんせい)
 強健(きょうけん)ナル子女(しじょ)ハ強健(きょうけん)ナル母(はは)ヨリ生(う)マル。母(はは)タルモノニ保健衛生(ほけんえいせい)ノ思想(しそう)ヲ徹底(てってい)セシメ、常(つね)ニ活動(かつどう)ト休息(きゅうそく)トニ関(かん)スル正(ただ)シキ考慮(こうりょ)ヲ払(はら)ハシムルト共(とも)ニ、積極的(せっきょくてき)ニ心身鍛錬(しんしんたんれん)ノ方途(ほうと)ヲ講(こう)ジ、以テ(もって)心身(しんしん)ノ保健(ほけん)ヲ向上維持(こうじょういじ)セシムルコトハ極(きわ)メテ肝要(かんよう)ナリ。特(とく)ニ産前産後(さんぜんさんご)ノ保健衛生(ほけんえいせい)ニハ万全(ばんぜん)ノ処置(しょち)ヲ講(こう)ゼシム。
 
【3 母親を教育してください】
 そもそも家庭教育は父親と母親が協力してやるべきものですが、子供を立派にするためには特に母親の責任が重大です。なぜなら、母親は生まれつき、子供を産み、育てる生き物だからです。なので、母親を訓練して、健全な影響を子供に及ぼす必要があります。そのためには、子供を生み、育てる母親が変わらなければなりません。そうやって母親が、子供を天皇に無条件で奉仕する者へと育て上げると同時に、健全で素晴らしい家を作り上げましょう。そのために、下記の点に注意してください。
イ 「お国のために」という考え方を徹底してください
 家庭生活は単なる家庭生活にとどまりません。常に国ベースで理解してください。あなたの家の子供は、単なるあなたの家の子供ではありません。天皇を守るための将来の精鋭部隊です。そういった人材を育成していることを自覚してください。
ロ 国が望む理想の母親像を目指してください
 まず、個人主義的思想は排除してください。そして、日本の母が本来有していた従順さ、温和さ、貞淑さ、我慢強さ、奉公精神などをちゃんと身につけるよう努力してください。
ハ この国の母親であることを自覚してください
 子供の性格は、母の性格に影響される部分がとても大きいです。なので、将来、天皇に無条件で奉仕する立派な者になるかどうかは母親にかかっています。子供が変われば国も変わります。子供を育てるというのはそういうことなので、責任と使命感を自覚してください。
ニ 科学的な教養力を向上してください
 本能的な愛情は、子供をダメにします。合理的で科学的な育児によって子供を天皇への献身者へと育てあげることこそが、真実の愛情です。今までの誤った考えは捨ててください。
 科学的素養は幼い頃に身につくものなので、子供と接する母親にちゃんとした教養があるかどうかはとても大切です。家庭の問題を科学で解決することは大東亜戦争を遂行する上でもとても大切です。なので、母親が科学をちゃんと勉強して、子供に教えるとともに、子供を大東亜戦争に協力するよう徹底してください。
ホ 健全なセンスを持ってください
 母親のセンスを向上させることが、家を豊かにし立派にするとともに、子供のセンスにも影響するところが大きいということを理解してください。だから健全なセンスを持ってください。
へ 強い子供を産むために強い身体を作ってください
 強い子供は強い母親から産まれます。なので、健康についての知識を正しく得て、適度な運動と休憩をとると同時に、心身を鍛えて心身ともに健康であることはとても重要です。特に子供を産む直前と授乳期は万全にしてください。
 
 
【四、子女の薫陶擁護】
四、子女(しじょ)ノ薫陶養護(くんとうようご)
 子女(しじょ)ノ薫陶養護(くんとうようご)ハ家庭教育(かていきょういく)ノ中核(ちゅうかく)ナリ。父母(ふぼ)ノ慈愛(じあい)ノ下(もと)、健全(けんぜん)ナル家風(かふう)ノ中(うち)ニ有為(ゆうい)ナル次代(じだい)皇国民(こうこくみん)ノ錬成(れんせい)ヲ為(な)スベク特(とく)ニ左記諸項(さきしょこう)ニ留意(りゅうい)スルヲ要(よう)ス。
イ、皇国民(こうこくみん)タルノ信念(しんねん)ノ啓培(けいばい)
 我(わ)ガ国体(こくたい)ノ万邦無比(ばんぽうむひ)ニシテ皇恩(こうおん)ノ宏大無辺(こうだいむへん)ナル所以(ゆえん)、日本人(にっぽんじん)トシテ生(せい)ヲ享(う)ケタルコトノ喜(よろこ)ビト矜(ほこり)トヲ体得(たいとく)セシメ以テ(もって)幼少(ようしょう)ノ間(かん)ニ自(おのず)カラ尽忠報国(じんちゅうほうこく)ノ信念(しんねん)ヲ固(かた)メシム。
ロ、剛健(ごうけん)ナル精神(せいしん)ノ鍛錬(たんれん)
 質実剛健(しつじつごうけん)、堅忍持久(けんにんじきゅう)、勇往邁進(ゆうおうまいしん)ノ精神(せいしん)ヲ養(やしな)ヒ気宇(きう)ヲ高大(こうだい)ナラシメ強固(きょうこ)ナル意志(いし)ヲ鍛錬(たんれん)シ其(そ)ノ実践力(じっせんりょく)ヲ培養(ばいよう)セシム。
ハ、醇乎(じゅんこ)タル情操(じょうそう)ノ陶冶(とうや)
 清雅(せいが)ニシテ醇乎(じゅんこ)タル情操(じょうそう)ヲ陶冶(とうや)シ明朗闊達(めいろうかったつ)ナル性格(せいかく)ト高潔(こうけつ)ナル品位(ひんい)トヲ涵養(かんよう)セシム。
ニ、良(よ)キ躾(しつけ)
 子女(しじょ)ノ自発的(じはつてき)活動性(かつどうせい)ヲ徒(いたずら)ニ阻止(そし)スルコトナク自立自制(じりつじせい)ノ訓練(くんれん)ヲ加(くわ)ヘ日常生活(にちじょうせいかつ)ノ間(かん)自(おのず)カラ良習慣(りょうしゅうかん)ヲ修得(しゅうとく)セシム。就中(なかんずく)剛健(ごうけん)ナル国民(こくみん)ノ基礎(きそ)ニ培(つちか)フ為(ため)ニ勤労(きんろう)、節倹(せっけん)、忍苦(にんく)ノ精神(せいしん)ヲ涵養(かんよう)シ之(これ)ガ習慣(しゅうかん)ヲ養(やしな)ハシム。
ホ、身体(しんたい)ノ養護鍛錬(ようごたんれん)
 子女(しじょ)ノ身体(しんたい)ノ発育情況(はついくじょうきょう)、健康状態(けんこうじょうたい)ニ留意(りゅうい)シ、之(これ)ガ養護(ようご)ニ力(つと)ムルト共(とも)ニ、積極的(せっきょくてき)ナル鍛錬(たんれん)ヲ重(おも)ンジ、強健(きょうけん)ナル身体(しんたい)ノ中(うち)ニ雄渾(ゆうこん)ナル気魄(きはく)ヲ培養(ばいよう)セシム。
 
【超訳 4 子供を正しく育ててください】
 子供を正しく育てることは家庭教育の中核です。父親と母親の愛情の下、健全な家風の中で、ちゃんと使い物になる、将来の天皇に無条件で奉仕する献身者を作り出してください。そのために下記のことに注意してください。
イ 天皇に献身する信念を身につけさせてください
 日本は世界で一番素晴らしい国です。それは天皇のおかげであり、あなたたちは天皇に恩返しをしなければならないのです。日本人として生まれたことの喜びと誇りをもって、幼い頃から天皇に尽くすという信念を自ら固めさせてください。
ロ 強いメンタルを鍛えさせてください
 強い身体、我慢強さ、勇敢さをきたえ、大東亜戦争への士気を高め、強い決意と戦争に協力するための力を培ってください。
ハ 素直な子に育ててください
 清らかさと素直さと明るい性格、そして高潔な品位を持った、兵隊向きの子に育てましょう。
ニ よくしつけてください
 子供の自発性をいたずらに阻止してはいけませんが、自制心を身につけさせる訓練をし、良い習慣を身につけさせてください。強い兵隊のベースとするために、勤労、節約、我慢の精神を育てて、習慣にさせてください。それを通じ、幼い頃から天皇に尽くすという信念を自ら固めさせましょう。
ホ 身体を鍛えさせてください
 子供の身体の発育状況や健康状態を気にしつつ、身体をきたえさせてください。ただ、身体が強いだけでは兵隊としては足りません。加えて、勇敢さを身につけさせてください。大東亜共栄圏における指導的な国民としての精神を育むのです。
 
 
【五、家生活ノ刷新充実】
五、家生活(いえせいかつ)ノ刷新充実(さっしんじゅうじつ)
 大東亜戦争(だいとうあせんそう)ノ目的(もくてき)ヲ完遂(かんすい)シ、皇国永遠(こうこくえいえん)ノ発展(はってん)ヲ期(き)スル為(ため)、家生活(いえせいかつ)ノ刷新充実(さっしんじゅうじつ)ヲ図(はか)ルハ正(まさ)ニ今日(こんにち)ノ急務(きゅうむ)ト謂(い)フベク、特(とく)ニ左記各項(さきかくこう)ニ留意(りゅうい)スルヲ要(よう)ス。
イ、時局認識(じきょくにんしき)
 国家活動(こっかかつどう)ノ基礎(きそ)ハ家(いえ)ヲ斉(ととの)フルニアルハ古今(ここん)ノ通則(つうそく)ニシテ、大東亜建設(だいとうあけんせつ)ノ目的完遂(もくてきかんすい)ニ家生活(いえせいかつ)ガ如何(いか)ニ大(だい)ナル関連(かんれん)ヲ有(ゆう)スルカヲ自覚(じかく)セシムルト共(とも)ニ、絶(た)エズ時局(じきょく)ニ関(かん)スル綜合的認識(そうごうてきにんしき)ヲ深(ふか)メ、時局(じきょく)ニ即応(そくおう)スル主婦(しゅふ)ノ責務(せきむ)ニ関(かん)シテ常(つね)ニ正鵠(せいこく)ナル識見(しきけん)ヲ養成(ようせい)セシム。
ロ、家庭経済(かていけいざい)ノ国策(こくさく)ヘノ協力(きょうりょく)
 国策(こくさく)ヲ理解(りかい)セシムルト共(とも)ニ、家庭経済(かていけいざい)ノ国家的意義(こっかてきいぎ)ヲ十分(じゅうぶん)自覚(じかく)セシメ、之(これ)ガ国策(こくさく)ヘノ積極的協力(せっきょくてききょうりょく)ヲ為(な)サシム。
ハ、家生活(いえせいかつ)ニ於(お)ケル科学(かがく)ノ活用(かつよう)
 家生活(いえせいかつ)ニ関(かん)スル実際(じっさい)ノ科学的知識(かがくてきちしき)ヲ与(あた)ヘ、家生活(いえせいかつ)ノ各般(かくはん)ニ亘(わた)リ、其(そ)ノ整斉(せいせい)ニ対(たい)シテ科学(かがく)ノ活用(かつよう)ヲ十分(じゅうぶん)円滑(えんかつ)ナラシメ、偏曲(へんきょく)セル生活(せいかつ)ノ科学化(かがくか)ヲ是正(ぜせい)スルト共(とも)ニ、時局(じきょく)ノ進展(しんてん)ニ即応(そくおう)スル生活態度(せいかつたいど)ヲ修得(しゅうとく)セシム。
ニ、家族皆労(かぞくかいろう)
 勤労(きんろう)ノ精神(せいしん)ガ家(いえ)二漲(みなぎ)リ、家族(かぞく)ノ全員(ぜんいん)ガ夫々(それぞれ)分(ぶん)ニ応(おう)ジテ進(すす)ンデ勤労(きんろう)ニ従(したが)フコトハ、健全(けんぜん)ナル家生活(いえせいかつ)ヲ維持(いじ)シ、延(ひ)イテハ国家(こっか)ノ興隆(こうりゅう)ヲ図(はか)ル所以(ゆえん)ナリ。戦時下(せんじか)労力不足(ろうりょくぶそく)ノ今日(こんにち)ニ在(あ)リテハ、特(とく)ニ家族全員(かぞくぜんいん)ノ協力(きょうりょく)ニヨル労力(ろうりょく)ノ補?(ほてん)並(ならび)ニ増強(ぞうきょう)ガ国家(こっか)ニ極(きわ)メテ重要(じゅうよう)ナル所以(ゆえん)ヲ強(つよ)ク自覚(じかく)セシメ、之(これ)ガ実行(じっこう)ニ力(つと)メシム。
ホ、隣保相扶(りんぽそうふ)
 家生活(いえせいかつ)ノ刷新充実(さっしんじゅうじつ)ヲ図(はか)ランガ為(ため)ニハ、各家(かくいえ)互(たがい)ニ孤立(こりつ)シテハ到底(とうてい)其(そ)ノ実現(じつげん)ヲ期(き)スベカラズ。隣保(りんぽ)相扶(あいたす)ケ有無(うむ)相通(あいつう)ジ、特(とく)ニ軍事援護(ぐんじえんご)ノ実(じつ)ヲ挙(あ)ゲ協力一致(きょうりょくいっち)以テ(もって)家(いえ)ノ内外(ないがい)ヲ通(つう)ジテ生活(せいかつ)ノ刷新充実(さっしんじゅうじつ)ニ力(ツト)メシム。
ヘ、国防訓練(こくぼうくんれん)
 国家総力戦(こっかそうりょくせん)ノ一翼(いちよく)トシテ、防空(ぼうくう)、防火(ぼうか)、防諜(ぼうちょう)ノ重要(じゅうよう)ナル所以(ゆえん)ヲ自覚(じかく)セシメ、必要(ひつよう)ニ応(おう)ジ、其(そ)ノ訓練(くんれん)ヲ実施(じっし)シテ国防(こくぼう)ノ完璧(かんぺき)ヲ期(き)セシム。
ト、家庭娯楽(かていごらく)ノ振興(しんこう)
 健全(けんぜん)ナル家庭娯楽(かていごらく)ハ家生活(いえせいかつ)ヲ明朗(めいろう)且(か)ツ豊(ゆた)カナラシムルト共(とも)ニ、子女(しじょ)ノ性格陶冶(せいかくとうや)ニ影響(えいきょう)スルトコロ甚大(じんだい)ナリ。仍テ(よって)健全(けんぜん)ナル家庭娯楽(かていごらく)ノ指導(しどう)ニ意(い)ヲ用(もち)ヒ、地方(ちほう)ノ実情(じつじょう)ニ応(おう)ジ、個々(ここ)ノ家庭(かてい)ニ適合(てきごう)スル娯楽(ごらく)ヲ奨励(しょうれい)シテ、健全(けんぜん)ナル生活(せいかつ)ノ維持増進(いじぞうしん)ニ寄与(きよ)セシム。
 
【5 今までの家庭生活から新しい家庭生活へ】
5 今までの家庭生活から新しい家庭生活へ
 大東亜戦争の目的を完遂させて、天皇の国の永遠の発展を期するためには今までの家庭生活ではダメです。新しい家庭生活へと刷新することが急務です。そのために以下のことに注意してください。
イ 情勢を認識してください
 昔から国のベースは家庭にあります。なので、大東亜戦争の目的の達成において家庭生活が密接な関連を持っていることを自覚してください。同時に、今の情勢についてちゃんと理解して、情勢に即応するために主婦にはどんな義務があるかについて、家庭がちゃんと把握してください。
ロ 倹約によって大東亜戦争に協力する
 大東亜戦争の重要性について理解するとともに、倹約することが戦争遂行に大きな意味を持つことを自覚し、積極的に戦争に協力してください。
ハ 家庭生活に科学を活用してください
 家庭生活についての科学的知識を持ち、家庭生活の隅々に科学を生かし、今までのねじ曲がった生活を是正してください。本能的な愛情は、非科学的で不合理で、真実の愛情ではありません。また、情勢に即対応できる生活態度を習得してください。
ニ 家族みんなで勤労してください
 勤労の精神が家に浸透し、家族それぞれが進んで働けば健全な家庭生活が維持でき、さらには国が栄えていきます。そして、戦時下で人材が不足している今日にあっては、特に家族全員の協力よって軍事産業などの労働力が補強されることが国にとって重要です。そのことを強く自覚し、実行に移してください。
ホ お隣さん同士で助け合ってください
 新しい家庭生活を実現するためには、それぞれの家が孤立していてはいけません。お隣さん同士での助け合いを通じて、特に軍事を援護するために協力一致して、自分の家だけではなく、人の家にも新しい家庭生活を実現してください。
へ 国を守ってください
 国で一丸となって大東亜戦争を遂行するために、防空訓練、防火訓練、スパイ対策が重要であることを自覚して、必要に応じて訓練をして国防を完璧にしてください。
ト 娯楽は健全さの範囲で行ってください
 家庭での娯楽は、それが健全なものであれば家生活を明るく豊かなものにするし、子供の性格にも影響します。だから、家庭での娯楽が健全になるようための指導に意を用いることで地方の実情にあった、個々の家庭にあった娯楽に興じて、健全な家庭生活を送ってください。
 
 
-原文で読む「戦時家庭教育指導ニ関スル件」と「戦時家庭教育指導要項」-
 
※文部大臣官房文書課編『文部省例規類纂』昭和十七年版所収のテキストに準拠した(ただし、漢字は新字体に改めた)。
 
                 戦時家庭教育指導ニ関スル件
 
(昭和十七年五月七日 発社一二八号 各地方長官ヘ文部次官通牒)

未曽有ノ重大時局ニ際会シ肇国ノ大精神ニ則リ国家総力ヲ結集シ以テ聖業翼賛ニ邁進スベキ時国運進展ノ根基ニ培フベキ家ノ使命愈々重キヲ加フルニ至レリ
仍テ家生活ヲ刷新充実シ家族制度ノ美風ヲ振起シ皇国ノ重責ヲ負荷スルニ足ル健全有為ナル子女ヲ育成薫陶スベキ家庭教育ノ振興ヲ図ルハ正ニ刻下ノ急務タリ茲ニ戦時家庭教育指導要項別紙ノ通相定メラレタルニ付之ガ徹底ニ関シ万遺憾ナキヲ期セラレ度此段依命通牒ス
 
                   戦時家庭教育指導要項
 
一、我ガ国ニ於ケル家ノ特質ノ闡明並ニ其ノ使命ノ自覚
我ガ国ニ於ケル家ハ
イ、祖孫一体ノ道ニ則ル家長中心ノ結合ニシテ人間生活ノ最モ自然ナル親子ノ関係ヲ根トスル家族ノ生活トシテ情愛敬慕ノ間ニ人倫本然ノ秩序ヲ長養シツツ永遠ノ生命ヲ具現シ行ク生活ノ場ナルコト
ロ、畏クモ 皇室ヲ宗家ト仰ギ奉リ恒ニ国ノ家トシテ生成発展シ行ク歴史的現実ニシテ忠孝一本ノ大道ニ基ヅク子女錬成ノ道場ナルコト
ハ、親子、夫婦、兄妹、姉妹和合団欒シ序ニ従ツテ各自ノ分ヲ尽クシ老ヲ扶ケ幼ヲ養フ親和ノ生活ノ裡ニ自他一如、物心一如ノ修錬ヲ積ミ進ンデ世界新秩序ノ建設ニ参スルノ素地ニ培フモノナルコト
等ヲ其ノ特質トスルコトヲ闡明シ我ガ国ニ於ケル家ノ国家的並ニ世界的意義ニ徹セシメ之ガ使命ノ完遂ニ遺憾ナカラシメンコトヲ要ス
 
ニ、健全ナル家風ノ樹立
 家風ハ家々ノ伝統ノ具体的表現ナルト共ニ不断ニ生成発展スベキモノナリ家人ノ性格ハ家風ニヨリ律セラルルコト大ニシテ家人ノ、従ツテ国民ノ健全ナルカ否カハ家風ノ如何ニ関ハル家風ハ家ニヨリテ異ナルモノアリト雖モ我ガ国ニ於ケル家ノ特質ニ鑑ミ健全ナル家風ノ樹立ノ為ニ特ニ左記諸項ノ徹底ニツキ留意スルヲ要ス
イ、敬神崇祖
 敬神崇祖ハ祖孫一体ノ道ノ中枢タルベキモノナリ敬神ハ実ニ 天皇ニ帰一シ奉ル所以崇祖ハ 天皇ニ仕ヘマツレル祖先ヲ祀リ崇ブ所以ニシテ敬神ト崇祖トハ相合致シテ忠孝一本ノ大道ヲ顕現スルモノナリ従ツテ各戸必ズ神棚ヲ設ケテ日常礼拝ヲ怠ラズ祭祀ヲ行事トシテ厳粛ニ執行シ敬神崇祖ノ精神ヲ具現セシムルヲ要ス
ロ、敬愛、親和、礼節、謙譲
 家長ヲ中心トシテ親子、夫婦、兄妹ノ序ヲ正シクスルコトハ家生活ノ根本ナリ家人相互ニ敬愛ノ情ヲ尽クシ親和ノ間ニ礼節ヲ忘レズ相互ニ謙譲シテ協力奉公ノ実践ニ力メテ家生活ヲ健全ナラシメ此ノ間健全ナル国家ノ基礎ヲ確立ス
ハ、一家和楽
 家生活ハ国家活動ノ源泉ニシテ道義ニ基ヅク家生活ノ実践ハ自カラ之ヲ和楽ナラシム勤労ト規律トヲ和スルニ寛ギヲ以テシ一家団欒ノ楽ミヲ偕ニスルコトハ更ニ豊カナル生活力ニ培フ所以ナリ
ニ、隣保協和
 血縁ト地縁トハ古来我ガ国ニ於ケル家ト家トノ結合ノ基本ニシテ血縁ニヨル家ト家トノ親和ノ実ヲ移シテ地縁ニヨル隣保ニ及ボシ延イテハ国家的結合ヲ家族的ナラシムルトコロニ家ノ日本的性格ノ存スル所以ヲ認識セシメ隣保協和ノ実ヲ挙ゲシム
 
三、母ノ教養訓練
 家庭教育ハ固ヨリ父母共ニ其ノ責ニ任ズベキモノナレドモ子女ノ薫陶養護ニ関シテハ特ニ母ノ責務ノ重大ナルニ鑑ミ母ノ教養訓練ニ力ヲ致シ健全ニシテ豊カナル母ノ感化ヲ子ニ及ボシ次代ノ皇国民ノ育成ニ遺憾ナカラシムルト共ニ健全ニシテ明朗ナル家ヲ実現セシメンガ為ニ特ニ左記諸項ノ徹底ニツキ留意スルヲ要ス
イ、国家観念ノ涵養
 家生活ハ単ナル家ノ生活ニ止マラズ常ニ国家活動ノ源泉ナルコトヲ理解セシメ一家ニ於ケル子女ハ単ニ家ノ子女トシテノミナラズ実ニ皇国ノ後勁トシテコレヲ育成スベキ所以ヲ自覚セシム
ロ、日本婦道ノ修錬
 個人主義的思想ヲ排シ日本婦人本来ノ従順、温和、貞淑、忍耐、奉公等ノ美徳ヲ涵養錬磨スルニ努メシム
ハ、母ノ自覚
 子女ノ性格ハ母ノ性格ノ反映ニヨルコト極メテ大ニシテ皇国ノ次代ヲ荷フベキ人材ノ萌芽ハ今日ノ母ノ手ニヨリテ育成セラルルコトヲ思ヒ子女ノ薫陶養護ニ対スル母ノ責任ト使命トヲ自覚セシム
ニ、科学的教養ノ向上
 国民ノ科学的教養ハ幼少ノ間ニ啓培スルコトヲ要シ而モ子女ノ科学愛好ノ精神ハ母ノ教養ニ負フトコロ極メテ大ニシテ家生活各般ノ問題ヲ処理スルニ科学ノ謬ラザル活用ヲ図ルコトハ国策ヘノ協力ニトリテ極メテ緊要ナリ仍テ特ニ母ノ科学的教養ノ向上ヲ図リ子女ノ教養ニ寄与セシムルト共ニ国策ヘノ協力ヲ徹底セシム
ホ、健全ナル趣味ノ涵養
 母タルモノノ趣味ノ向上ガ家生活ヲ豊カニシ之ヲ明朗ナラシムルト共ニ子女ノ品性情操ノ陶冶ニ影響スルトコロ大ナル所以ヲ認識セシメ日常生活ノ間健全優美ナル趣味ノ涵養ニ努メシム
ヘ、強健ナル母体ノ錬成
 強健ナル子女ハ強健ナル母ヨリ生マル母タルモノニ保健衛生ノ思想ヲ徹底セシメ常ニ活動ト休息トニ関スル正シキ考慮ヲ払ハシムルト共ニ積極的ニ心身鍛錬ノ方途ヲ講ジ以テ心身ノ保健ヲ向上維持セシムルコトハ極メテ肝要ナリ特ニ産前産後ノ保健衛生ニハ万全ノ処置ヲ講ゼシム
 
四、子女ノ薫陶養護
 子女ノ薫陶養護ハ家庭教育ノ中核ナリ父母ノ慈愛ノ下、健全ナル家風ノ中ニ有為ナル次代皇国民ノ錬成ヲ為スベク特ニ左記諸項ニ留意スルヲ要ス
イ、皇国民タルノ信念ノ啓培
 我ガ国体ノ万邦無比ニシテ皇恩ノ宏大無辺ナル所以、日本人トシテ生ヲ享ケタルコトノ喜ビト矜トヲ体得セシメ以テ幼少ノ間ニ自カラ尽忠報国ノ信念ヲ固メシム
ロ、剛健ナル精神ノ鍛錬
 質実剛健、堅忍持久、勇往邁進ノ精神ヲ養ヒ気宇ヲ高大ナラシメ強固ナル意志ヲ鍛錬シ其ノ実践力ヲ培養セシム
ハ、醇乎タル情操ノ陶冶
 清雅ニシテ醇乎タル情操ヲ陶冶シ明朗闊達ナル性格ト高潔ナル品位トヲ涵養セシム
ニ、良キ躾
 子女ノ自発的活動性ヲ徒ニ阻止スルコトナク自立自制ノ訓練ヲ加ヘ日常生活ノ間自カラ良習慣ヲ修得セシム就中剛健ナル国民ノ基礎ニ培フ為ニ勤労、節倹、忍苦ノ精神ヲ涵養シ之ガ習慣ヲ養ハシム
ホ、身体ノ養護鍛錬
 子女ノ身体ノ発育情況、健康状態ニ留意シ之ガ養護ニ力ムルト共ニ積極的ナル鍛錬ヲ重ンジ強健ナル身体ノ中ニ雄渾ナル気魄ヲ培養セシム
 
五、家生活ノ刷新充実
 大東亜戦争ノ目的ヲ完遂シ皇国永遠ノ発展ヲ期スル為家生活ノ刷新充実ヲ図ルハ正ニ今日ノ急務ト謂フベク特ニ左記各項ニ留意スルヲ要ス
イ、時局認識
 国家活動ノ基礎ハ家ヲ斉フルニアルハ古今ノ通則ニシテ大東亜建設ノ目的完遂ニ家生活ガ如何ニ大ナル関連ヲ有スルカヲ自覚セシムルト共ニ絶エズ時局ニ関スル綜合的認識ヲ深メ時局ニ即応スル主婦ノ責務ニ関シテ常ニ正鵠ナル識見ヲ養成セシム
ロ、家庭経済ノ国策ヘノ協力
 国策ヲ理解セシムルト共ニ家庭経済ノ国家的意義ヲ十分自覚セシメ之ガ国策ヘノ積極的協力ヲ為サシム
ハ、家生活ニ於ケル科学ノ活用
 家生活ニ関スル実際ノ科学的知識ヲ与ヘ家生活ノ各般ニ亘リ其ノ整斉ニ対シテ科学ノ活用ヲ十分円滑ナラシメ偏曲セル生活ノ科学化ヲ是正スルト共ニ時局ノ進展ニ即応スル生活態度ヲ修得セシム
ニ、家族皆労
 勤労ノ精神ガ家二漲リ家族ノ全員ガ夫々分ニ応ジテ進ンデ勤労ニ従フコトハ健全ナル家生活ヲ維持シ延イテハ国家ノ興隆ヲ図ル所以ナリ戦時下労力不足ノ今日ニ在リテハ特ニ家族全員ノ協力ニヨル労力ノ補?並ニ増強ガ国家ニ極メテ重要ナル所以ヲ強ク自覚セシメ之ガ実行ニ力メシム
ホ、隣保相扶
 家生活ノ刷新充実ヲ図ランガ為ニハ各家互ニ孤立シテハ到底其ノ実現ヲ期スベカラズ隣保相扶ケ有無相通ジ特ニ軍事援護ノ実ヲ挙ゲ協力一致以テ家ノ内外ヲ通ジテ生活ノ刷新充実ニ力メシム
ヘ、国防訓練
 国家総力戦ノ一翼トシテ防空、防火、防諜ノ重要ナル所以ヲ自覚セシメ必要ニ応ジ其ノ訓練ヲ実施シテ国防ノ完璧ヲ期セシム
ト、家庭娯楽ノ振興
 健全ナル家庭娯楽ハ家生活ヲ明朗且ツ豊カナラシムルト共ニ子女ノ性格陶冶ニ影響スルトコロ甚大ナリ仍テ健全ナル家庭娯楽ノ指導ニ意ヲ用ヒ地方ノ実情ニ応ジ個々ノ家庭ニ適合スル娯楽ヲ奨励シテ健全ナル生活ノ維持増進ニ寄与セシム
 
 
-背景事情の解説-
 
             戦時家庭教育指導要項の成立とその背景
 
                                   大久保秀俊(弁護士)
                                   久保木太一(弁護士)
 
第1 はじめに
 戦時家庭教育指導要項の超訳文を作成する上で、同要項の成立背景や目的が重要と考えた。訳文作成において、あえて明言していない部分について、背景や目的から言葉を補っている。
 また、3から5に出てくる「皇国民」あるいは「大東亜戦争」といったキーワードについても趣旨を補って訳している。
 重要なキーワードは「皇国民ノ錬成」であり、母親を錬成体制に巻き込んだ点に特色がある。
 なお、「錬成」とは当時の文部省によれば、練磨育成の意であり、皇国の道に則って、児童の全能力を正しい目標に集中させて、国民的性格を強化するという意味である。
 
第2 成立背景 
1 「家庭教育ニ関スル要綱」
 1937年(昭和12)年に内閣に設置された教育に関する審議会「教育審議会」により、社会教育に関する答申を構成する要綱の一つとして家庭教育の振興策「家庭教育ニ関スル要綱」が作成された。
 もともと、家庭教育は教育制度の範疇とはとらえられていなかったが、家庭教育の政策化に国家が本格的に乗り出していく戦時下の動向の起点をなす。
2 年表
1938年 文部省主催「家庭教育講座」開始。「新東亜建設」を支える家庭の樹立を目的とし、家庭を皇国民錬成の実施組織として位置づけ
1941年 文部省が家庭教育振興に関する予算を特別に計上し、教育審議会が「家庭教育ニ関スル要綱」を答申
「臣民の道」刊行。「家」における錬成のあり方が提示
以後、第5期国定教科書
1942年 「戦時家庭教育指導ニ関スル件」
 かかる文部次官通牒所収の「戦時家庭教育指導要項」に基づき、大日本婦人会との共同主催の下、以後、毎年地方別に「家庭教育指導者講習会」が開催。同会において、その指導者を中心講師として、市町村に「家庭教育講座」が開催。開設箇所は約1千か所
 文部省が直轄学校に委嘱して開催する「母の講座」や、「文部省家庭教育指導指定町村」を指定することを通じて戦時下家庭教育の研究と振興が図られた
3 「家庭教育ニ関スル要綱」から「戦時家庭教育指導要項」へ
 国民統合のイデオロギーとしての家族国家観に基づき、「家」を大東亜建設に結び付ける。
 大東亜戦争の目的完遂のために、母親を戦時下生活に奉仕させるねらいがある。母親が戦時動員体制を支えるうえで不可欠の、家庭生活固有の特質の理解とその実践に努めることが重要と考えられていた。   
4 道場型の錬成から生活型の錬成へ
(1)    家における錬成の理念の確立
(2) 家の任意に任せていた家庭教育に対し国家による根本方針の提示
 これにより家における錬成の基本的なあり方が枠付けされる。
(3) 家における錬成体制の完成
 学校における錬成は計画的かつ集団的な訓練に伴い実施される。
 他方、家においては、すべての日常生活の場面での親の無意識的な一挙手一投足に教育効果を認める「感化」という方式。
 家における錬成の特質として「健全ニシテ豊カナル母ノ感化ヲ子ニ及ボ」すこと。
 家における錬成については、学校における錬成と異なり、命令服従といった関係に基づく画一的教育は逆効果であり、子供の自発性に応じた手立てが必要となる。そのため、「子女ノ自発的活動性ヲ徒ニ阻止スルコトナク自律自制ノ訓練ヲ加ヘ日常生活ノ間カラ良習慣ヲ習得セシム」となる。
 ただし、ここで言う自発性とは幼い頃から天皇に尽くすという信念を自ら固めさせるという意味での自発性であることに注意が必要である。
        
第3 皇国民錬成と家庭教育
1 家ニ関スル調査報告書(1943(昭和18)年8月)
 「『家』ハ第二ノ国民ノ養成所ナリ。日本人ノ真ノ国民的性格ハ伝統ノ『家』に於テ養ハル。総テノ子女ハ『家』ニ於テ為人ヲ得、彼等ノ全生涯ヲ通ジテ其ノ家庭ノ感化ヨリ偉大ナルハナシ。日本精神ノ具体トシテノ『家』ハ無二ノ健兵健民ノ母胎タリ。他ニ比肩スルモノナキ好個ノ皇国民錬成ノ道場タリ」
2 家庭教育が皇国民錬成体制の根源として位置づけられた要因
(2)    「家庭ハ実ニ修養ノ道場」
 家庭という最も日常的な生活を通じての感化や、両親が模範となることこそが教育効果を有するという考え方があった。
 当時の社会教育局長関屋龍吉によれば、この時期大きな社会問題となった左傾問題といった思想悪化に関し、左傾学生を「転向」させた最も大きな要因こそが、「家庭の愛」「母の涙」であるとの指摘がある。
 司法省行刑局の統計による転向動機の調査結果によれば、家庭関係による場合が圧倒的多数である。
 ① 宗教関係 45名
 ② 家庭関係 203名
 ③ 理論的清算 46名
 ④ 国民的自覚 90名
 ⑤ 性格健康等の身上関係 33名
 ⑥ 拘禁生活に後悔 49名
 ⑦ その他 20名
 このような結果から、家庭における教育機能を国家の意図のもとに再編成することが政策課題となる。
(2) 母親の教育
 思想的な背景として、三田谷啓の母親教育構想がある。
ア 背景にある女性認識
 子供を産むという身体的機能と、子のためには母の身は棄ててもいとわないという我が子に対する母の愛に見られるような、本能ともいうべき普遍的な「女性性」という認識がある。
イ なぜ母親の教育が必要なのか
 国家の改造のためには、子供の改造から始めなければならず、そのためには、子供を生み育てる母親の改造から始めなければならないと考えた。
 また、母親の本能的な愛情はそのままでは子供を損なう危険性のある「不合理な愛」と考えられており、合理的で科学的な育児法と実践によって、子供をより善く育てることの出来る方向へと導く必要があると考えられた。
(3) 家庭教育と学校教育の接合
 児童の全生活を見通し、24時間の教育体制をどう作るのかが「錬成」における重大な課題であった。学校教育における錬成だけでは足りない。
 そこで、「家」を場とする錬成が皇国民錬成体制の根源として位置づけられることとなる。
 学校教育を中心とした道場型の錬成から生活型の錬成へと変貌していく。
 
第4 家庭教育支援法との類似性
1 「我が国の伝統」というレッテル貼り
 新しいイデオロギーを植え付ける際に、新たなものとして導入するのではなく、所与のもの、本来の意味がそうであった、現状の認識が誤っているだけという切り口で語られる。
「戦時家庭教育指導要項」における「闡明」「自覚」「本来」といった文言からも明らか。あくまで現状認識を誤っており、それを正すというスタンスが透けて見える。
2 家庭教育における私事性の否定
 当時の教育審議会委員の下村寿一の問題意識が家庭教育支援法においても妥当する。
(1) 家庭の教育力が低下しているという勝手な現状認識
 青少年の逸脱行動の責任は家庭にあるから、家庭教育の機能強化が急務だと考えられていた。
(2) 教育内容への干渉
 教育振興を図るためにその振興手段を定めるにとどまらず、実質的に教育内容について規定してしまうことになる。
 「家庭教育ニ関スル要綱」の答申の際、審議会委員であった佐々井信太朗は、個々の過程の教育に文部省が干渉することはありえないだろうと述べていたが、結局、介入を認めることになった。
3 運用による変化
 教育勅語は発布当時、特に問題視されていなかった。
 しかし、その後、利用されるに至ったように、規程自体は抽象的かつ問題のなさそうなものであっても、その後の解釈によってゆがめることは容易であることが指摘できる。
 
(注)
「子供」との表記に対しては、子どもが大人に従属するものであるかのような印象を抱かせるとの指摘がある。もっとも、同要項は、国や天皇への奉仕者としての子どもを育て上げることを目的とするものであるから、むしろその意に沿うものとして、あえて本稿では「子供」という表記で統一している。
                                            以上
 
 
-参考文献-
〇『家の道 文部省戦時家庭教育指導要項解説』
 戸田貞三著/中文館/1942年11月
※国立国会図書館デジタルコレクションで全頁の画像を閲覧できます。
〇『総力戦体制と教育 皇国民「錬成」の理念と実践』
 寺崎昌男、戦時下教育研究会編/東京大学出版会/1987年3月

〇「戦時下の家庭教育論-1930年代後半以降を中心に-」
 真橋美智子著/日本女子大学紀要.人間社会学部19巻41頁~54頁/2008年
※上記論文は以下からダウンロードできます。
〇「家庭教育の私事性否定の論理構造に関する研究-戦時体制下「教育審議会」における家庭教育振興策の議論の分析を中心にして-」
 松岡寛子・福田修著/山口大学教育学部研究論叢(第3部)芸術・体育・教育・心理第60巻239頁~253頁/2011年1月
※上記論文は以下のページからダウンロードできます。
〇『動員される母親たち 戦時下における家庭教育振興政策』
 奥村典子著/六花出版/2014年10月

※本文でお名前を挙げた仲里歌織先生、漆原由香先生、大久保秀俊先生からご教示いただいた文献を掲げました。
 
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/家庭教育支援関連)
2017年3月29日
2017年6月28日
2017年7月4日
2017年7月27日
2017年8月3日
2017年8月4日
2017年8月5日

ルビ付き原文と超訳で読む「戦時家庭教育指導要項」(1942年5月) 後編

 2017年8月5日配信(予定)のメルマガ金原.No.2895を転載します。
 
ルビ付き原文と超訳で読む「戦時家庭教育指導要項」(1942年5月) 後編
 
中編から続く
 
【超訳 5 今までの家庭生活から新しい家庭生活へ】
5 今までの家庭生活から新しい家庭生活へ
 大東亜戦争の目的を完遂させて、天皇の国の永遠の発展を期するためには今までの家庭生活ではダメです。新しい家庭生活へと刷新することが急務です。そのために以下のことに注意してください。
イ 情勢を認識してください
 昔から国のベースは家庭にあります。なので、大東亜戦争の目的の達成において家庭生活が密接な関連を持っていることを自覚してください。同時に、今の情勢についてちゃんと理解して、情勢に即応するために主婦にはどんな義務があるかについて、家庭がちゃんと把握してください。
ロ 倹約によって大東亜戦争に協力する
 大東亜戦争の重要性について理解するとともに、倹約することが戦争遂行に大きな意味を持つことを自覚し、積極的に戦争に協力してください。
ハ 家庭生活に科学を活用してください
 家庭生活についての科学的知識を持ち、家庭生活の隅々に科学を生かし、今までのねじ曲がった生活を是正してください。本能的な愛情は、非科学的で不合理で、真実の愛情ではありません。また、情勢に即対応できる生活態度を習得してください。
ニ 家族みんなで勤労してください
 勤労の精神が家に浸透し、家族それぞれが進んで働けば健全な家庭生活が維持でき、さらには国が栄えていきます。そして、戦時下で人材が不足している今日にあっては、特に家族全員の協力よって軍事産業などの労働力が補強されることが国にとって重要です。そのことを強く自覚し、実行に移してください。
ホ お隣さん同士で助け合ってください
 新しい家庭生活を実現するためには、それぞれの家が孤立していてはいけません。お隣さん同士での助け合いを通じて、特に軍事を援護するために協力一致して、自分の家だけではなく、人の家にも新しい家庭生活を実現してください。
へ 国を守ってください
 国で一丸となって大東亜戦争を遂行するために、防空訓練、防火訓練、スパイ対策が重要であることを自覚して、必要に応じて訓練をして国防を完璧にしてください。
ト 娯楽は健全さの範囲で行ってください
 家庭での娯楽は、それが健全なものであれば家生活を明るく豊かなものにするし、子供の性格にも影響します。だから、家庭での娯楽が健全になるようための指導に意を用いることで地方の実情にあった、個々の家庭にあった娯楽に興じて、健全な家庭生活を送ってください。
 
【五、家生活ノ刷新充実~『動員される母親たち 戦時下における家庭教育振興政策』所収版】
五、家生活ノ刷新充実
 大東亜戦争ノ目的ヲ完遂シ皇国永遠ノ発展ヲ期スル為家生活ノ刷新充実ヲ図ルハ正ニ今日ノ急務ト謂フベク特ニ左記各項ニ留意スルヲ要ス
イ、時局認識
 国家活動ノ基礎ハ家ヲ斉フルニアルハ古今ノ通則ニシテ大東亜建設ノ目的完遂ニ家生活ガ如何ニ大ナル関連ヲ有スルカヲ自覚セシムルト共ニ絶エズ時局ニ関スル綜合的認識ヲ深メ時局ニ即応スル主婦ノ責務ニ関シテ常ニ正鵠ナル識見ヲ養成セシム
ロ、家庭経済ノ国策ヘノ協力
 国策ヲ理解セシムルト共ニ家庭経済ノ国家的意義ヲ十分自覚セシメ之ガ国策ヘノ積極的協力ヲ為サシム
ハ、家生活ニ於ケル科学ノ活用
 家生活ニ関スル実際ノ科学的知識ヲ与ヘ家生活ノ各般ニ亘リ其ノ整斉ニ対シテ科学ノ活用ヲ十分円滑ナラシメ偏曲セル生活ノ科学化ヲ是正スルト共ニ時局ノ進展ニ即応スル生活態度ヲ修得セシム
ニ、家族皆労
 勤労ノ精神ガ家二漲リ家族ノ全員ガ夫々分ニ応ジテ進ンデ勤労ニ従フコトハ健全ナル家生活ヲ維持シ延イテハ国家ノ興隆ヲ図ル所以ナリ戦時下労力不足ノ今日ニ在リテハ特ニ家族全員ノ協力ニヨル労力ノ補塡並ニ増強ガ国家ニ極メテ重要ナル所以ヲ強ク自覚セシメ之ガ実行ニ力メシム
ホ、隣保相扶
 家生活ノ刷新充実ヲ図ランガ為ニハ各家互ニ孤立シテハ到底其ノ実現ヲ期スベカラズ隣保相扶ケ有無相通ジ特ニ軍事援護ノ実ヲ挙ゲ協力一致以テ家ノ内外ヲ通ジテ生活ノ刷新充実ニ力メシム
ヘ、国防訓練
 国家総力戦ノ一翼トシテ防空、防火、防諜ノ重要ナル所以ヲ自覚セシメ必要ニ応ジ其ノ訓練ヲ実施シテ国防ノ完璧ヲ期セシム
ト、家庭娯楽ノ振興
 健全ナル家庭娯楽ハ家生活ヲ明朗且ツ豊カナラシムルト共ニ子女ノ性格陶冶ニ影響スルトコロ甚大ナリ仍テ健全ナル家庭娯楽ノ指導ニ意ヲ用ヒ地方ノ実情ニ応ジ個々ノ家庭ニ適合スル娯楽ヲ奨励シテ健全ナル生活ノ維持増進ニ寄与セシム
 
五、家生活(いえせいかつ)ノ刷新充実(さっしんじゅうじつ)
 大東亜戦争(だいとうあせんそう)ノ目的(もくてき)ヲ完遂(かんすい)シ、皇国永遠(こうこくえいえん)ノ発展(はってん)ヲ期(き)スル為(ため)、家生活(いえせいかつ)ノ刷新充実(さっしんじゅうじつ)ヲ図(はか)ルハ正(まさ)ニ今日(こんにち)ノ急務(きゅうむ)ト謂(い)フベク、特(とく)ニ左記各項(さきかくこう)ニ留意(りゅうい)スルヲ要(よう)ス。
イ、時局認識(じきょくにんしき)
 国家活動(こっかかつどう)ノ基礎(きそ)ハ家(いえ)ヲ斉(ととの)フルニアルハ古今(ここん)ノ通則(つうそく)ニシテ、大東亜建設(だいとうあけんせつ)ノ目的完遂(もくてきかんすい)ニ家生活(いえせいかつ)ガ如何(いか)ニ大(だい)ナル関連(かんれん)ヲ有(ゆう)スルカヲ自覚(じかく)セシムルト共(とも)ニ、絶(た)エズ時局(じきょく)ニ関(かん)スル綜合的認識(そうごうてきにんしき)ヲ深(ふか)メ、時局(じきょく)ニ即応(そくおう)スル主婦(しゅふ)ノ責務(せきむ)ニ関(かん)シテ常(つね)ニ正鵠(せいこく)ナル識見(しきけん)ヲ養成(ようせい)セシム。
ロ、家庭経済(かていけいざい)ノ国策(こくさく)ヘノ協力(きょうりょく)
 国策(こくさく)ヲ理解(りかい)セシムルト共(とも)ニ、家庭経済(かていけいざい)ノ国家的意義(こっかてきいぎ)ヲ十分(じゅうぶん)自覚(じかく)セシメ、之(これ)ガ国策(こくさく)ヘノ積極的協力(せっきょくてききょうりょく)ヲ為(な)サシム。
ハ、家生活(いえせいかつ)ニ於(お)ケル科学(かがく)ノ活用(かつよう)
 家生活(いえせいかつ)ニ関(かん)スル実際(じっさい)ノ科学的知識(かがくてきちしき)ヲ与(あた)ヘ、家生活(いえせいかつ)ノ各般(かくはん)ニ亘(わた)リ、其(そ)ノ整斉(せいせい)ニ対(たい)シテ科学(かがく)ノ活用(かつよう)ヲ十分(じゅうぶん)円滑(えんかつ)ナラシメ、偏曲(へんきょく)セル生活(せいかつ)ノ科学化(かがくか)ヲ是正(ぜせい)スルト共(とも)ニ、時局(じきょく)ノ進展(しんてん)ニ即応(そくおう)スル生活態度(せいかつたいど)ヲ修得(しゅうとく)セシム。
ニ、家族皆労(かぞくかいろう)
 勤労(きんろう)ノ精神(せいしん)ガ家(いえ)二漲(みなぎ)リ、家族(かぞく)ノ全員(ぜんいん)ガ夫々(それぞれ)分(ぶん)ニ応(おう)ジテ進(すす)ンデ勤労(きんろう)ニ従(したが)フコトハ、健全(けんぜん)ナル家生活(いえせいかつ)ヲ維持(いじ)シ、延(ひ)イテハ国家(こっか)ノ興隆(こうりゅう)ヲ図(はか)ル所以(ゆえん)ナリ。戦時下(せんじか)労力不足(ろうりょくぶそく)ノ今日(こんにち)ニ在(あ)リテハ、特(とく)ニ家族全員(かぞくぜんいん)ノ協力(きょうりょく)ニヨル労力(ろうりょく)ノ補塡(ほてん)並(ならび)ニ増強(ぞうきょう)ガ国家(こっか)ニ極(きわ)メテ重要(じゅうよう)ナル所以(ゆえん)ヲ強(つよ)ク自覚(じかく)セシメ、之(これ)ガ実行(じっこう)ニ力(つと)メシム。
ホ、隣保相扶(りんぽそうふ)
 家生活(いえせいかつ)ノ刷新充実(さっしんじゅうじつ)ヲ図(はか)ランガ為(ため)ニハ、各家(かくいえ)互(たがい)ニ孤立(こりつ)シテハ到底(とうてい)其(そ)ノ実現(じつげん)ヲ期(き)スベカラズ。隣保(りんぽ)相扶(あいたす)ケ有無(うむ)相通(あいつう)ジ、特(とく)ニ軍事援護(ぐんじえんご)ノ実(じつ)ヲ挙(あ)ゲ協力一致(きょうりょくいっち)以テ(もって)家(いえ)ノ内外(ないがい)ヲ通(つう)ジテ生活(せいかつ)ノ刷新充実(さっしんじゅうじつ)ニ力(ツト)メシム。
ヘ、国防訓練(こくぼうくんれん)
 国家総力戦(こっかそうりょくせん)ノ一翼(いちよく)トシテ、防空(ぼうくう)、防火(ぼうか)、防諜(ぼうちょう)ノ重要(じゅうよう)ナル所以(ゆえん)ヲ自覚(じかく)セシメ、必要(ひつよう)ニ応(おう)ジ、其(そ)ノ訓練(くんれん)ヲ実施(じっし)シテ国防(こくぼう)ノ完璧(かんぺき)ヲ期(き)セシム。
ト、家庭娯楽(かていごらく)ノ振興(しんこう)
 健全(けんぜん)ナル家庭娯楽(かていごらく)ハ家生活(いえせいかつ)ヲ明朗(めいろう)且(か)ツ豊(ゆた)カナラシムルト共(とも)ニ、子女(しじょ)ノ性格陶冶(せいかくとうや)ニ影響(えいきょう)スルトコロ甚大(じんだい)ナリ。仍テ(よって)健全(けんぜん)ナル家庭娯楽(かていごらく)ノ指導(しどう)ニ意(い)ヲ用(もち)ヒ、地方(ちほう)ノ実情(じつじょう)ニ応(おう)ジ、個々(ここ)ノ家庭(かてい)ニ適合(てきごう)スル娯楽(ごらく)ヲ奨励(しょうれい)シテ、健全(けんぜん)ナル生活(せいかつ)ノ維持増進(いじぞうしん)ニ寄与(きよ)セシム。
 
【五、家庭生活ノ刷新充實~奈良県立図書情報館版】
五、家生活ノ刷新充實
 大東亞戰争完遂ノタメ、皇國永遠ノ發展ノタメ、家庭生活ノ刷新充實ヲ圖ルコトハ正ニ今日ノ急務ト云フベク特ニ左記各項ニ留意スルヲ要ス
イ、家庭經濟ノ國策ヘノ協力
 國策ヲ理解セシムルト共ニ家庭經濟ノ國家的意義ヲ十分自覺セシメ、コレガ國策ヘノ積極的協力ヲナサシム
ロ、家庭生活ノ科學化
 家庭科學ノ知識ヲ與ヘ、時局ノ進展ニ應スル家庭生活ノ調整並ニ合理化ヲ圖ラシム
ハ、家族皆勞
 勤勞ノ精神ガ家二漲リ家族ノ全員ガ夫々分ニ應ジテ進ンデ勤勞ニ從フコトハ健全ナル家庭ヲ維持シ延イテハ健全ナル國家ノ發達ヲ圖ル上ニ於テ最モ肝要ナリ、戰時下勞力不足ノ今日ニアツテハ特ニ家族全員ノ協力ニヨル勞力ノ補塡竝ニ增強ノ國家的重要性ヲ強ク自覺セシメコレガ實行ニ力メシム
ニ、隣保相扶
 家生活ノ刷新充實ヲ圖ルタメニモ各家互ニ孤立シテハ到底ソノ實現ヲ期スベカラズ、茲ニ於テ隣保相扶ケ有無相通ジ、協力一致以テ家ノ内外ヲ通ジテ生活ノ刷新充實ノ實ヲ擧クルニ力メシム
ホ、國防訓練
 防空、防火、防諜ノ重要ナル所以ヲ自覺セシメ、必要ニ應ジソノ訓練ヲ實施シテ國防ノ完璧ヲ期セシム
ヘ、家庭娯樂ノ振興
 健全ナル家庭娯樂ハ明朗ニシテ豊カナル家庭ヲ維持シ更ニ子女ノ性格陶冶ノ上ニモ影響スルトコロ大ナルニ鑑ミ、健全ナル家庭娯樂ノ指導ニ意ヲ用ヒ、地方ノ實情ニ應ジ個々ノ家庭ニ適合スル娯樂ヲ生活ノ間ニ加ヘ以テ健康ナル生活ノ維持增進ニ寄與セシム
 
五、家生活(いえせいかつ)ノ刷新充實(さっしんじゅうじつ)
 大東亞戰争(だいとうあせんそう)完遂(かんすい)ノタメ、皇國(こうこく)永遠(えいえん)ノ發展(はってん)ノタメ、家庭生活(かていせいかつ)ノ刷新充實(さっしんじゅうじつ)ヲ圖(はか)ルコトハ、正(まさ)ニ今日(こんにち)ノ急務(きゅうむ)ト云(い)フベク、特(とく)ニ左記各項(さきかくこう)ニ留意(りゅうい)スルヲ要(よう)ス。
イ、家庭經濟(かていけいざい)ノ國策(こくさく)ヘノ協力(きょうりょく)
 國策(こくさく)ヲ理解(りかい)セシムルト共(とも)ニ、家庭經濟(かていけいざい)ノ國家的意義(こっかてきいぎ)ヲ十分(じゅうぶん)自覺(じかく)セシメ、コレガ國策(こくさく)ヘノ積極的協力(せっきょくてききょうりょく)ヲナサシム。
ロ、家庭生活(かていせいかつ)ノ科學化(かがくか)
 家庭科學(かていかがく)ノ知識(ちしき)ヲ與(あた)ヘ、時局(じきょく)ノ進展(しんてん)ニ應(おう)スル家庭生活(かていせいかつ)ノ調整(ちょうせい)並(ならび)ニ合理化(ごうりか)ヲ圖(はか)ラシム。
ハ、家族皆勞(かぞくかいろう)
 勤勞(きんろう)ノ精神(せいしん)ガ家(いえ)二漲(みなぎ)リ、家族(かぞく)ノ全員(ぜんいん)ガ夫々(それぞれ)分(ぶん)ニ應(おう)ジテ進(すす)ンデ勤勞(きんろう)ニ從(したが)フコトハ、健全(けんぜん)ナル家庭(かてい)ヲ維持(いじ)シ、延(ひ)イテハ健全(けんぜん)ナル國家(こっか)ノ發達(はったつ)ヲ圖(はか)ル上(うえ)ニ於(おい)テ最(もっと)モ肝要(かんよう)ナリ。戰時下(せんじか)勞力不足(ろうりょくぶそく)ノ今日(こんにち)ニアツテハ、特(とく)ニ家族全員(かぞくぜんいん)ノ協力(きょうりょく)ニヨル勞力(ろうりょく)ノ補塡(ほてん)竝(ならび)ニ增強(ぞうきょう)ノ國家的重要性(こっかてきじゅうようせい)ヲ強(つよ)ク自覺(じかく)セシメ、コレガ實行(じっこう)ニ力(つと)メシム。
ニ、隣保相扶(りんぽそうふ)
 家生活(いえせいかつ)ノ刷新充實(さっしんじゅうじつ)ヲ圖(はか)ルタメニモ各家(かくいえ)互(たがい)ニ孤立(こりつ)シテハ到底(とうてい)ソノ實現(じつげん)ヲ期(き)スベカラズ。茲(ここ)ニ於(おい)テ、隣保(りんぽ)相扶(あいたす)ケ、有無相通(うむあいつう)ジ、協力一致(きょうりょくいっち)以テ(もって)家(いえ)ノ内外(ないがい)ヲ通(つう)ジテ生活(せいかつ)ノ刷新充實(さっしんじゅうじつ)ノ實(じつ)ヲ擧(あ)クルニ力(つと)メシム。
ホ、國防訓練(こくぼうくんれん)
 防空(ぼうくう)、防火(ぼうか)、防諜(ぼうちょう)ノ重要(じゅうよう)ナル所以(ゆえん)ヲ自覺(じかく)セシメ、必要(ひつよう)ニ應(おう)ジ、ソノ訓練(くんれん)ヲ實施(じっし)シテ、國防(こくぼう)ノ完璧(かんぺき)ヲ期(き)セシム。
ヘ、家庭娯樂(かていごらく)ノ振興(しんこう)
 健全(けんぜん)ナル家庭娯樂(かていごらく)ハ、明朗(めいろう)ニシテ豊(ゆた)カナル家庭(かてい)ヲ維持(いじ)シ、更(さら)ニ子女(しじょ)ノ性格陶冶(せいかくとうや)ノ上(うえ)ニモ影響(えいきょう)スルトコロ大(だい)ナルニ鑑(かんが)ミ、健全(けんぜん)ナル家庭娯樂(かていごらく)ノ指導(しどう)ニ意(い)ヲ用(もち)ヒ、地方(ちほう)ノ實情(じつじょう)ニ應(おう)ジ、個々(ここ)ノ家庭(かてい)ニ適合(てきごう)スル娯樂(ごらく)ヲ生活(せいかつ)ノ間(かん)ニ加(くわ)ヘ以テ(もって)健康(けんこう)ナル生活(せいかつ)ノ維持增進(いじぞうしん)ニ寄與(きよ)セシム。
 
 
                           戦時家庭教育指導要項の成立とその背景
 
                                                                   大久保秀俊(弁護士)
                                                                   久保木太一(弁護士
 
第1 はじめに
 戦時家庭教育指導要項の超訳文を作成する上で、同要項の成立背景や目的が重要と考えた。訳文作成において、あえて明言していない部分について、背景や目的から言葉を補っている。
 また、3から5に出てくる「皇国民」あるいは「大東亜戦争」といったキーワードについても趣旨を補って訳している。
 重要なキーワードは「皇国民ノ錬成」であり、母親を錬成体制に巻き込んだ点に特色がある。
 なお、「錬成」とは当時の文部省によれば、練磨育成の意であり、皇国の道に則って、児童の全能力を正しい目標に集中させて、国民的性格を強化するという意味である。
 
第2 成立背景 
1 「家庭教育ニ関スル要綱」
 1937年(昭和12)年に内閣に設置された教育に関する審議会「教育審議会」により、社会教育に関する答申を構成する要綱の一つとして家庭教育の振興策「家庭教育ニ関スル要綱」が作成された。
 もともと、家庭教育は教育制度の範疇とはとらえられていなかったが、家庭教育の政策化に国家が本格的に乗り出していく戦時下の動向の起点をなす。
2 年表
1938年 文部省主催「家庭教育講座」開始。「新東亜建設」を支える家庭の樹立を目的とし、家庭を皇国民錬成の実施組織として位置づけ
1941年 文部省が家庭教育振興に関する予算を特別に計上し、教育審議会が「家庭教育ニ関スル要綱」を答申
「臣民の道」刊行。「家」における錬成のあり方が提示
以後、第5期国定教科書
1942年 「戦時家庭教育指導ニ関スル件」
 かかる文部次官通牒所収の「戦時家庭教育指導要項」に基づき、大日本婦人会との共同主催の下、以後、毎年地方別に「家庭教育指導者講習会」が開催。同会において、その指導者を中心講師として、市町村に「家庭教育講座」が開催。開設箇所は約1千か所
 文部省が直轄学校に委嘱して開催する「母の講座」や、「文部省家庭教育指導指定町村」を指定することを通じて戦時下家庭教育の研究と振興が図られた
3 「家庭教育ニ関スル要綱」から「戦時家庭教育指導要項」へ
 国民統合のイデオロギーとしての家族国家観に基づき、「家」を大東亜建設に結び付ける。
 大東亜戦争の目的完遂のために、母親を戦時下生活に奉仕させるねらいがある。母親が戦時動員体制を支えるうえで不可欠の、家庭生活固有の特質の理解とその実践に努めることが重要と考えられていた。   
4 道場型の錬成から生活型の錬成へ
(1)    家における錬成の理念の確立
(2) 家の任意に任せていた家庭教育に対し国家による根本方針の提示
 これにより家における錬成の基本的なあり方が枠付けされる。
(3) 家における錬成体制の完成
 学校における錬成は計画的かつ集団的な訓練に伴い実施される。
 他方、家においては、すべての日常生活の場面での親の無意識的な一挙手一投足に教育効果を認める「感化」という方式。
 家における錬成の特質として「健全ニシテ豊カナル母ノ感化ヲ子ニ及ボ」すこと。
 家における錬成については、学校における錬成と異なり、命令服従といった関係に基づく画一的教育は逆効果であり、子供の自発性に応じた手立てが必要となる。そのため、「子女ノ自発的活動性ヲ徒ニ阻止スルコトナク自律自制ノ訓練ヲ加ヘ日常生活ノ間カラ良習慣ヲ習得セシム」となる。
 ただし、ここで言う自発性とは幼い頃から天皇に尽くすという信念を自ら固めさせるという意味での自発性であることに注意が必要である。
        
第3 皇国民錬成と家庭教育
1 家ニ関スル調査報告書(1943(昭和18)年8月)
 「『家』ハ第二ノ国民ノ養成所ナリ。日本人ノ真ノ国民的性格ハ伝統ノ『家』に於テ養ハル。総テノ子女ハ『家』ニ於テ為人ヲ得、彼等ノ全生涯ヲ通ジテ其ノ家庭ノ感化ヨリ偉大ナルハナシ。日本精神ノ具体トシテノ『家』ハ無二ノ健兵健民ノ母胎タリ。他ニ比肩スルモノナキ好個ノ皇国民錬成ノ道場タリ」
2 家庭教育が皇国民錬成体制の根源として位置づけられた要因
(2)    「家庭ハ実ニ修養ノ道場」
 家庭という最も日常的な生活を通じての感化や、両親が模範となることこそが教育効果を有するという考え方があった。
 当時の社会教育局長関屋龍吉によれば、この時期大きな社会問題となった左傾問題といった思想悪化に関し、左傾学生を「転向」させた最も大きな要因こそが、「家庭の愛」「母の涙」であるとの指摘がある。
 司法省行刑局の統計による転向動機の調査結果によれば、家庭関係による場合が圧倒的多数である。
 ① 宗教関係 45名
 ② 家庭関係 203名
 ③ 理論的清算 46名
 ④ 国民的自覚 90名
 ⑤ 性格健康等の身上関係 33名
 ⑥ 拘禁生活に後悔 49名
 ⑦ その他 20名
 このような結果から、家庭における教育機能を国家の意図のもとに再編成することが政策課題となる。
(2) 母親の教育
 思想的な背景として、三田谷啓の母親教育構想がある。
ア 背景にある女性認識
 子供を産むという身体的機能と、子のためには母の身は棄ててもいとわないという我が子に対する母の愛に見られるような、本能ともいうべき普遍的な「女性性」という認識がある。
イ なぜ母親の教育が必要なのか
 国家の改造のためには、子供の改造から始めなければならず、そのためには、子供を生み育てる母親の改造から始めなければならないと考えた。
 また、母親の本能的な愛情はそのままでは子供を損なう危険性のある「不合理な愛」と考えられており、合理的で科学的な育児法と実践によって、子供をより善く育てることの出来る方向へと導く必要があると考えられた。
(3) 家庭教育と学校教育の接合
 児童の全生活を見通し、24時間の教育体制をどう作るのかが「錬成」における重大な課題であった。学校教育における錬成だけでは足りない。
 そこで、「家」を場とする錬成が皇国民錬成体制の根源として位置づけられることとなる。
 学校教育を中心とした道場型の錬成から生活型の錬成へと変貌していく。
 
第4 家庭教育支援法との類似性
1 「我が国の伝統」というレッテル貼り
 新しいイデオロギーを植え付ける際に、新たなものとして導入するのではなく、所与のもの、本来の意味がそうであった、現状の認識が誤っているだけという切り口で語られる。
「戦時家庭教育指導要項」における「闡明」「自覚」「本来」といった文言からも明らか。あくまで現状認識を誤っており、それを正すというスタンスが透けて見える。
2 家庭教育における私事性の否定
 当時の教育審議会委員の下村寿一の問題意識が家庭教育支援法においても妥当する。
(1) 家庭の教育力が低下しているという勝手な現状認識
 青少年の逸脱行動の責任は家庭にあるから、家庭教育の機能強化が急務だと考えられていた。
(2) 教育内容への干渉
 教育振興を図るためにその振興手段を定めるにとどまらず、実質的に教育内容について規定してしまうことになる。
 「家庭教育ニ関スル要綱」の答申の際、審議会委員であった佐々井信太朗は、個々の過程の教育に文部省が干渉することはありえないだろうと述べていたが、結局、介入を認めることになった。
3 運用による変化
 教育勅語は発布当時、特に問題視されていなかった。
 しかし、その後、利用されるに至ったように、規程自体は抽象的かつ問題のなさそうなものであっても、その後の解釈によってゆがめることは容易であることが指摘できる。
                                                                            以上
 
(付記)
 上記「戦時家庭教育指導要項の成立とその背景」の執筆者の1人である大久保秀俊弁護士から、「本稿では子どものことを、あえて「子供」と記載しています。学習会において、なぜ「子供」と記載したのかとの指摘をうけましたので、下記のような注を入れることにしています。」というメールをいただきましたので、お送りいただいた「注」をそのままご紹介します。
 
(注)
「子供」との表記に対しては、子どもが大人に従属するものであるかのような印象を抱かせるとの指摘がある。もっとも、同要項は、国や天皇への奉仕者としての子どもを育て上げることを目的とするものであるから、むしろその意に沿うものとして、あえて本稿では「子供」という表記で統一している。
 
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/家庭教育支援関連)
2017年3月29日
2017年6月28日
2017年7月4日
2017年8月3日
2017年8月4日

学び舎の中学歴史教科書『ともに学ぶ人間の歴史』に対する攻撃とある教育者の対応(情報共有のために)

 以下は、昨日(2017年8月4日)、あるメーリングリストに私が投稿した文章を基に、一部加除修正を加え、情報共有のため、私の第2ブログ(「あしたの朝 目がさめたら(弁護士・金原徹雄のブログ2)」)にアップしたものを、出来るだけ多くの人に読んでいただきたいので、こちらのブログにもそのまま転載することにしたものです。
 
 和歌山の金原です。
 灘中学校・灘高等学校の学校長・和田孫博先生の「謂れのない圧力の中で-ある教科書の選定について-」は、ここ何日かの間に、主としてSNSなどを通じて広まっているようです。
 上記PDFをネットにアップしているサイトを調べてみると、
   富山大学人文学部内 人間学(松崎)研究室
   グループ帆(代表:松崎一平)編集・発行
「とい ⅩⅩⅩⅣ 2016」(2016年9月9日発行)という同人誌(?)の中の1編として収録されています。
 つまり、和田校長のこの文章は、昨年9月9日以降はネットで読める状態になっていたということですから、文中の「本校では、本年四月より使用する中学校の歴史教科書に新規参入の「学び舎」による『ともに学ぶ人間の歴史』を採択した。」とある「本年」というのは「2016年」のことでしょうね。
 ちなみに、松崎一平富山大学教授(哲学・倫理学)は、学内サイトによると、「1979年3月文学修士、京都大学」とあり、灘校の和田校長は「昭和51年(1976年)京都大学文学部卒業」ということなので、大学同窓の友人同士なのかもしれません。
 「とい」には、毎号のように和田先生も論考を寄せており、そのいくつかに目を通すだけでも、教育者としての基本的立ち位置がしのばれます。
 
 ところで、昨年9月にはネットにアップされていた和田校長の「謂れのない圧力の中で-ある教科書の選定について-」がにわかに注目されることになったきっかけは、大阪の毎日放送がこの前の日曜日(7月30日)深夜に放送した「MBSドキュメンタリー映像’17」(毎月1回の放送枠です)「教育と愛国~いま教科書で何が起きているのか」が、この問題を(も)取り上げたからでしょう(※番組Facebook)。
 番組案内にある「さらに学校現場では、特定の教科書を攻撃するハガキが殺到するような異常事態も起きています。」とあるのが灘(及びその他の「学び舎」教科書採択校)のことだったわけです
 実は、(灘中高のことは知りませんでしたが)この番組には私も注目し、ブログでも取り上げ、「録画しよう」と思っていたのですが、忙しさに取り紛れて録画予約を失念してしまい、非常に後悔しています。
 そこで、今からこの番組の内容を知る方法ですが、
「MBS動画イズム」という有料会員サイトに登録して視聴する。
〇番組内容を文字起こしした奇特な人(?)のサイトを読む。
〇誰かが動画サイトにアップするのを待つ。
〇録画した関西在住の知人にDVDを貸してもらう。
くらいですかね。
 
 この番組の反響からでしょうか、神戸新聞が、和田校長に接触した県会議員や衆議院議員に取材して記事にしています
 
 反響といえば、灘校の卒業生たちも、母校(と校長)支持の発信を始めています。例えば、
 
 ちなみに、『学び舎 中学歴史教科書 ともに学ぶ人間の歴史(増補版)』は、ネットからでも注文できます(結構高いですね)。

 
 それから、和田先生の文章の中でも触れられている産経新聞からの取材については、昨年の3月に以下のような記事となって掲載されていました。
 
産経ニュース 2016.3.19 05:00
灘、筑駒、麻布など有名校がなぜ? 唯一慰安婦記述の中学歴史教科書「学び舎」、30校超で採択

 しかし、和田校長の文章があらためて注目を集めてしまった余波で、しばらく収まっていたであろう抗議ハガキが、またぞろ灘校に届き始めていないだろうか?と心配になります。灘校や和田校長にもMBSから取材要請があったはずですが、断ったのは(少なくとも授業風景の取材を)、そういう事態を懸念したことも一因だったと思うのですが。
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