今晩(2014年6月21日)配信した「メルマガ金原No.1764」を転載します。

“原発事故子ども・被災者支援法”施行から2年 東京から 和歌山から

 福島第一原発事故から1年3ヵ月が経過した2012年6月21日(ちょうど2年前の今日ですね)、超党派の議員が提案した1つの法案が衆議院を通過して成立し、同月27日に公布され、即日施行されました。
 

 この法律については、過去、本メルマガ(ブログ)でも何度か取り上げてきました。

(参考ブログ)
2012年12月2日(ブログには2013年8月24日に転載)
2013年8月22日
2013年9月23日

 あまりに長いので略して呼ばれるのは当然ですが、これまで私自身、メルマガ(ブログ)で使ってきた「子ども・被災者支援法」というのは、本文の中でならともかく、見出しに使う場合には、少々長くなっても「原発事故」を頭に冠して「原発事故子ども・被災者支援法」とすべきなのでしょうね。
 ・・・と考えて、今日のメルマガ(ブログ)のタイトルに「原発事故」を付けることにしたのは、今日和歌山市で講演された うのさえこ さんから、マスメディアの一部で、略称から意図的に「原発事故」を外す動きがあるのではというお話を伺い、確かにそういうこともあるかもしれないと思ったからです。

 さて、本文19条という短い法律ですが、しっかり通して読んだ人がどれだけいるでしょうか?法律の文章というのは、決して分かりやすいものではありませんが、原発事故子ども・被災者支援法については、そんなに難しくはなく、ゆっくりと読み進めば、立法者の意図したことがかなり正確に読み手に伝わると思います(議員立法という事情にもよるでしょう)。
 とりわけ重要な部分を1箇所だけ選ぶとすれば2条2項だと思います。

 (基本理念)
第二条 
2 被災者生活支援等施策は、被災者一人一人が第八条第一項の支援対象地域における居住、他の地域への移動及び移動前の地域への帰還についての選択を自らの意思によって行うことができるよう、被災者がそのいずれを選択した場合であっても適切に支援するものでなければならない。

 ①「支援対象地域」にとどまる(居住)
 ②「支援対象地域」から避難する(他の地域への移動)
 ③「支援対象地域」へ帰還する(移動前の地域への帰還)
のいずれを選択するかについての被災者一人一人の自己決定権が尊重されなければならず、そのいずれを選択した場合であっても、国は適切な支援を行わなければならないことを定めたこの2条2項が、基本理念の中の基本理念というべき重要な条項です。

 そして、この2条2項に定められた理念が具体化され、実際に被災者に適切な支援が行われるためには、少なくとも2つの前提がクリアされる必要があります。
 1つは、その「支援」の内容を具体化する施策が、現実の被災者の需要に合致するものであること、もう1つは、「支援対象地域」の範囲が適切に定められることです。
 この2つの前提については、政府が「基本方針」で定めることとされています。

 
(基本方針)
第五条 政府は、第二条の基本理念にのっとり、被災者生活支援等施策の推進に関
する基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。
2 基本方針には、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 被災者生活支援等施策の推進に関する基本的方向
二 第八条第一項の支援対象地域に関する事項
三 被災者生活支援等施策に関する基本的な事項(被災者生活支援等施策の推進
に関し必要な計画に関する事項を含む。)
四 前三号に掲げるもののほか、被災者生活支援等施策の推進に関する重要事項
(後略)
 
 この「基本方針」が法律施行後「店晒し」となり、業を煮やした被災者から訴訟を提起されるや否や、やっつけ仕事の「基本方針案」が公表され、2013年10月11日に閣議決定されました。

 「被災者生活支援等施策」の具体的内容がはなはだ不十分なものであることについては、以下にご紹介する、昨日、参議院議員会館で開かれた「『原発事故子ども・被災者支援法』制定から2年記念集会~どうなる?どうする?被災者支援と子どもたちの未来~」の中継映像をご覧いただきたいと思うのですが、ここでは、「支援対象地域」の定め方がおかしい、という点を述べておきます。
 まず、条文とそれを受けた「基本方針」をお読みください。
 
 (支援対象地域で生活する被災者への支援)
第八条 国は、支援対象地域(その地域における放射線量が政府による避難に係る指
示が行われるべき基準を下回っているが一定の基準以上である地域をいう。以下同じ。)で生活する被災者を支援するため、医療の確保に関する施策、子どもの就学等の援助に関する施策、家庭、学校等における食の安全及び安心の確保に関する施策、放射線
量の低減及び生活上の負担の軽減のための地域における取組の支援に関する施策、自然体験活動等を通じた心身の健康の保持に関する施策、家族と離れて暮らすこととなった子どもに対する支援に関する施策その他の必要な施策を講ずるものとする。
(後略) ※下線は金原による。
 
「被災者生活支援等施策の推進に関する基本的な方針」より
「被災者の置かれた状況は多様であり、必要な支援内容を一律に定めることは容易でないが、原発事故発生後、年間積算線量が20ミリシーベルトに達するおそれのある地域と連続しながら、20ミリシーベルトを下回るが相当な線量が広がっていた地域においては、居住者等に特に強い健康不安が生じたと言え、地域の社会的・経済的一体性等も踏まえ、当該地域では、支援施策を網羅的に行うべきものと考えられる。
 このため、法第8条に規定する「支援対象地域」は、福島県中通り及び浜通りの市町
(避難指示区域等を除く。)とする」

 これがいかにおかしいかについては、私が「基本方針案」についてのパブコメに送信した文章の一部を再掲します。

「2 基本方針案については数々の問題がありますが、私がとりわけ問題だと考えているのは、「支援対象地域」を「福島県中通り及び浜通りの市町村(避難指示区域等を除く)」と定めていることです。基本方針案はその理由として、「地域の社会的・経済的一体性等も踏まえ、当該地域では、支援施策を網羅的に行うべきものと考えられる」ということを挙げ
ています。
 しかしながら、この「支援対象地域」の定め方は、妥当性を欠くのはもちろん、明らかに
「違法」です。
 子ども・被災者支援法はその8条1項において、「支援対象地域」を「その地域における放射線量が政府による避難に係る指示が行われるべき基準を下回っているが一定の基準以上である地域をいう」と明確に定義しているのであって、これ以外の「定め方」を法は予定しておらず、復興庁が示した「中通り及び浜通りの市町村」を「支援対象地域」とするという方針は、行政府が立法府から委任された範囲を明確に逸脱する「違法」な越権行
為であることはあまりにも明らかと言うべきです。
 基本方針案が掲げる「地域の社会的・経済的一体性等」を考慮する必要がないということではありませんが、このように「法」の規定を行政府が「無視」して良い根拠になり得るは
ずがありません。
 仮に、法8条1項括弧書きの「一定の基準以上である地域」とそうでない地域が「中通り・浜通りの市町村」に混在することになった場合、「一定の基準未満となった地域」にあっても、「地域の社会的・経済的一体性等」を考慮して、「準支援対象地域」(法1条の類推)とするということであれば合理性があると言えるでしょうが、基本方針案の考え方は完全に主客が転倒しており、到底容認できるものではありません」

 パブコメに送ったこの意見について、私は今でも変更の必要を認めませんが、「それではどうすれば良いのか?」と問われれば、原発事故子ども・被災者支援法の附則2項に「国は、第六条第一項の調査その他の放射線量に係る調査の結果に基づき、毎年支援対象地域等の対象となる区域を見直すものとする」と規定されていることを根拠として、本来、法が
求めている「放射線量が~一定の基準以上である地域」を具体的な数値で定めることを要求する必要があるのではないかと思っています(これがあまりに高い数値となっては逆効果ですが、それを恐れていては事態は進展しないでしょう)。

 さて先ほども少し触れましたが、施行から2年を迎えて、東京で開かれた院内集会の概要と映像をご紹介しておきます。
「原発事故子ども・被災者支援法」制定から2年 記念集会
~どうなる?どうする?被災者支援と子どもたちの未来~
日時 2014年6月20日(金) 14:00~16:00
会場 参議院議員会館 101号室
プログラム
◆「子ども・被災者支援法」の現状 (市民会議より)
◆「子ども・被災者支援法第13条に基づく新たな立法の提案」(支援議員連盟より)
◆「移り住む権利の保障」松井英介さん(岐阜環境医学研究所所長、元岐阜大学医
学部附属病院 放射線医学講座助教授)
◆【意見交換】
(発言)谷岡郁子さん(前参議院議員)、中手聖一さん(福島から札幌)、坂本建さん
(福島から神奈川)、木本さゆりさん(放射能からこどもを守ろう関東ネット)など
主催 原発事故子ども・被災者支援法 市民会議
後援 子ども被災者支援議員連盟、「原発事故子ども・被災者支援法」推進自治体議員連盟
 
 YouTube に以下の映像がアップされています。

20140620 UPLAN【前半・院内集会】「子ども・被災者支援法」制定から2年~
どうなる?どうする?被災者支援と子どもたち~

20140620 UPLAN【後半・院内集会】「子ども・被災者支援法」制定から2年~
どうなる?どうする?被災者支援と子どもたち~


 また、本日(2014年6月21日)午後2時から、和歌山市において、福島市から京田辺市に避難しておられる うのさえこ さんをお迎えして、そのお話を伺いました。
 私のメルマガ(ブログ)の予告記事は以下のとおりです。

(参考ブログ)
2014年6月9日

 うの さんは、昨日の院内集会にも参加され(後半映像1時間08分~に会場発言を求められています)、今日はまた、和歌山市までおいでいただきました。

 演題に「原発事故子ども・被災者支援法と うのさえこ さんの避難の話」とあるとおり、前半にご自身の避難体験、そして後半に子ども・被災者支援法のお話をされました。
 うの さんからは、昨日の院内集会で報告された、支援法によってある程度達成されたことと、まだまだ達成されていないことのリストが紹介されましたので、以下に転記しておきます。

達成されたこと?
○自然体験活動の充実→福島県外にも適用
○民間団体を活用した被災者への情報提供業務
 
達成されていないこと
○被災者・支援者の声を反映させる仕組み―常設の協議機関
○幅広い支援対象地域の設定
○雇用や住宅を含む避難者への支援
○抜本的・包括的な被曝低減政策 特に保養
○第13条に基づく健康管理支援 検診:地理的範囲拡大、内容充実、管理手帳 医療費減免

うのさえこさん うの さんのお話の中でやはり胸を打たれたのは、原発事故子ども・被災者支援法が出来て、その内容を避難している人たちに説明したところ(福岡でのこと、ということだったと思いますが)、2条2項で、避難するという選択も尊重されなければならないと定められていることを知って、自分たちの決断を「認めてもらえた」という思いで皆涙を流したこと、また、この理念の実現に努力することによって、被災地にとどまった人たちのためにも力になれると信じられたことなどでした。

 それから2年、基本方針が定められてから8ヵ月、実際の支援施策が到底当初の期待に添ったものではないという現実とどう折り合いをつければ良いのか、どのように将来に向かってモチベーションを高めれば良いのか、おそらく様々な葛藤があったのではないでしょうか。
 そのことは、昨日の院内集会での うの さんの短い会場発言(後半の1時間08分~)を聞いただけでも、何となく想像されます。

 原発事故子ども・被災者支援法が、日本の将来を考える上で、とても重要な基本法であり、その具体的内容を充実させていく責任が、私たち全ての大人に課せられているのだということを、うの さんのお話を伺うことによって再認識することができました。うの さん、ありがとうございました。
うのさえこさんを囲んで