今晩(2014年12月10日)配信した「メルマガ金原No.1935」を転載します。

田中三彦さんから聞く福島第一原発の現状~争点とならない原発問題をあえて取り上げたビデオニュース・ドットコム

 期日前投票や不在者投票は利用せず、12月14日に投票所に行って投票しようと考えている方も多いと思いますが(私もそうです)、棄権はしないと決めているものの、いまだに投票先を決めかねている人って、どこに、どのくらいいるんでしょうね?
 そういう人が私のブログに立ち寄ることはないかもしれませんが、万一いたと仮定して一言お伝えしたいと思っていたのと同じ内容を、早稲田大学の水島朝穂教授(憲法学)が、簡明でありながら非常に説得力豊に書かれていましたので、これをご紹介しようと思います。

水島朝穂 直言 2014年12月8日
菅原文太さんのこと――久田栄正没後25年に

(抜粋引用開始)
小選挙区制に傾いた「小選挙区比例代表偏立制」(金原注:「並立制」の書き間違いではありません)という最悪の選挙制度のもとで、国民の賢慮が作動するとすれば、比例区では支持できそうな政党に入れるとしても、小選挙区では「非安倍」の一番当選しそうな候補者に入れるしかないだろう。防波堤をつくるには必ずしも高級な土である必要はない。まともな政治は、「壊憲」に対する防波堤をつくってから考え
ることである。
(引用終わり)

 私としても、これに付け加えることは何もないのですが、ただ、このような言説は、民主主義や立憲主義を重要なものと考え、現状に危機感を抱いている人には届いても、そうでない人には通じないだろうなあ、と思わざるを得ません。
 民主主義の危機、平和主義の危機、立憲主義の危機、生命の危機(戦争、原発、食料など)・・・これらの危機感を「我がこと」として共有する人たちをどれだけ増やせたのだろうか?ということです。
 私にしても、青法協和歌山支部の会員として「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」設立の準備に関わり始めた2004年から数えればちょうど10年、それなりに憲法9条を守る運動に精力を傾注してきたつもりでしたが、その浸透力がどの程度のものであったかについて、冷酷な結果を突きつけられることになるかもしれないという虞をいだきながら14日を迎えようとしています。
 「9条の会」にしても、反原発への取組にしても、根本的に運動の再構築が必要になるかもしれないと思いつつ、ニヒリズムに陥ることなく、どうやって将来への展望を開くべきかを考えなければならないところに来ているということだと思います。

 酔余の愚痴であれば、「この期に及んで小選挙区で自民党に投票する創価学会員が日本を滅ぼす元凶」
と管を巻いても良いでしょうが(もっとも、私は酒は飲みませんが)、ことはそういうレベルの問題では
ないはずです。
 事実上、選挙期間はあと3日。とにかく今は、1人1人が、知人で「いまだに投票先を決めかねている
人」はいないだろうか?と必死に考えて働きかけることを怠らずにやり抜くしかありません。

 さて、こういう時期に、1時間を超える動画を見ている時間的余裕はないかもしれませんが、仮に選挙
後であっても、じっくり視聴すべき価値のある動画だと思い、ご紹介することとしました。
 本来であれば、他の一向に争点化されない「集団的自衛権」や「TPP」などと並び、日本の将来の国
のあり方に決定的に重要な意味を持つ「原発政策」について、ほとんど語られないことが許せないと考えた(とまでは書いていませんが)神保哲生さんが、元国会事故調委員で科学ジャーナリストの田中三彦さ
んに、福島第一原発は今どうなっているのかを聞くという好企画です。

 皆さんは、倒壊の危険がある4号基の燃料プールから、大量の使用済み燃料や未使用燃料を取り出す作
業が始まったというニュースをかなり前に聞かれたと思いますが、その作業がその後どうなったか知って
いますか?
 実は、私自身全くその点のフォローをしておらず、この番組冒頭で、12月1日現在、全部で1553
本あった燃料棒の内、既に1419本が取り出されているということを初めて知りました。
 フクイチの現場で何らかの不具合が起きたというニュースには時々接しますが(扱いは小さいけれど)
、4号基からの燃料棒の取出という非常に重要な作業が、ほぼスケジュール通りに進んでいるということ
が大きなニュースにならないということ自体、どうなんだろうと思います。
 良いことも悪いこともひっくるめ、まず福島第一原発の状況がどうなっているのか?ということが継続
的に国民の関心事であるためにどうすべきか、ということを問いかけてくる動画だと思います。
 時間ができれば是非全編視聴したいものです。

ビデオニュース・ドットコム ニュース・コメンタリー 2014年12月6日
田中三彦氏:福島第一原発は今どうなっているのか

(番組案内・引用開始)
 原発がなかなか総選挙の争点になりにくいと言われる。その理由として、有権者の多くが、目先の景気
や雇用、社会保障といった生活に直結する問題により大きな関心を寄せるためだ、と説明されることが多
い。
 しかし、同時に3年前の事故直後には原発についてあれだけ多くの情報がもたらされ、自ずと原発問題へ
の関心は高まった。ただ、事故を起こした福島第一原発も収束とは程遠い状態にあり、依然として12万人もの人々が避難生活を強いられている状況が続いているにもかかわらず、マスメディアが原発の問題を取り上げる機会は日に日に減ってきている。世論調査で総選挙の争点を問うた時、原発への関心が低いには
、ある意味で当然の結果と言えるだろう。
 そこで総選挙を約1週間後に控えた今、ビデオニュース・ドットコムではあえて「原発問題の現状」を取
り上げることにした。
 その一環として、そもそも福島第一原発が今どのような状態にあるのかを、元福島第一原発電所4号機の
原子炉圧力容器の設計者で、その後、国会事故調の委員を務めた科学ジャーナリストの田中三彦氏にジャー
ナリストの神保哲生が聞いた。
(引用終わり)

 なお、自民党の原発政策について、同党の「重点政策集2014」(公約集)にどのように書かれてい
るかについては、私が書いた以下のブログをご参照ください。