今晩(2016年2月1日)配信した「メルマガ金原No.2353」を転載します。

中筋 純 写真展「The Silent Views. 流転 福島&チェルノブイリ」へのお誘い

 私が、2011年3月28日から毎日配信している「メルマガ金原」は、2013年1月以降、その日のうちに「弁護士・金原徹雄のブログ」(と「wakaben6888のブログ」)に転載するようになったのですが、原則として、各記事ごとに2つのカテゴリーに関連づけるようにしています。
 カテゴリーの種類は自分でいくらでも増やせるのですが、何の気なしに漢字2字で統一したら格好が良いのでは(?)という思いつきで始めてしまったため、今さらカタカナや3字以上の熟語を使いかね、カテゴライズの作業がやや窮屈になっています。
 というようなことはどうでも良いのですが、ブログ右サイドバーのカテゴリー欄を見ていただければ、非常に記事の多いカテゴリーと、対照的に少ないカテゴリーがあることがお分かりと思います。
 「弁護士・金原徹雄のブログ」の場合、昨日(1月31日)現在、
   憲法 493
   原発 328
   政治 327
   行事 162
   平和 135
というのがベスト5です。
 まあ、この分類も結構いい加減なもので、同じような記事が、その日の気分で「憲法」になったり、「政治」になったり、「平和」になったりすることも珍しくありません。

 他方、カテゴリー分けに悩まない記事は、あまり数が伸びない傾向にあり、昨日時点では、
   美術 1
   哲学 1
   事件 4
   経済 7
   宗教 8
というのが1桁台であり、自分でもこんなカテゴリーを作ったことを忘れていた、というのもあります。

 今日書こうというのは、1桁でこそありませんが、過去14記事だけカテゴライズした「写真」の15本目の記事です。
 過去14本の記事は巻末にまとめてリンクしておきましたが、これを見返してみて、私自身、2013年までは、結構「写真」カテゴリーにも注意を払っていたものが、2014年以降、その努力を怠りがちになっていたのだということに改めて気がつきました。
 今日ご紹介する和歌山での「福島&チェルノブイリ写真展」を機に、「写真」についてもっと注目しなければと思いました。

 という長い前置きの後でご紹介するのは、和歌山県出身の写真家・中筋純さんによる写真展「The Silent Views. 流転 福島&チェルノブイリ」です。
 中筋さんとは、和歌山在住の知人の女性のお兄さんであり、またFacebook友達であるというご縁から、3月2日(水)~7日(月)に和歌山市で開催される写真展のご案内を送って戴き、その内容紹介のチラシを拝見したところ、これは是非1人でも多くの方に来て戴きたい写真展だと確信しましたので、メルマガ(ブログ)でご紹介することとしたものです。
 とはいえ、私自身、中筋さんとまだ直接の面識はなく(3月の展覧会でお会いできるのではと期待していますが)、チラシに記載されたこと以上の情報を持っているわけではありません。
 そこで、以下には、写真展のチラシから主要事項を転記したいと思います。

チラシ文字情報から引用開始)
中筋 純 写真展 
The Silent Views. 流転 福島&チェルノブイリ
2016年度 全国巡回

2016年3月2日(水)~7日(月) 9時~17時(最終日15時)
和歌山県民文化会館/中展示室
(和歌山市小松原通一丁目1番地 TEL:073-436-1331)

作者紹介
中筋 純(なかすじじゅん)
 写真家。1966年和歌山県生まれ。東京外国語大学中国語学科卒業後、出版社勤務を経てフリー写真家となる。
ファッション、オートバイ、舞台、映画スチールなどの商業撮影の傍ら、廃墟/産業遺構の撮影を継続。
2007年よりチェルノブイリ原発のその後を記録し続け、2011年以降福島浜通りに通い続けている。

著書
『廃墟チェルノブイリ』(二見書房)

『チェルノブイリ 春』(二見書房)
チェルノブイリ 春
中筋 純
二見書房
2011-04-19

『流転チェルノブイリ 2007-2014』(二見書房)

『流転 緑の廃墟』(アスペクト)


共著

『廃墟 その光と陰』『愛という廃墟』(東邦出版)
『廃墟本1~4』(ミリオン出版)他多数

個展
「黙示録 チェルノブイリ」(2009年 キャノンギャラリー全国巡回)
「黙示録 チェルノブイリ 再生の春」(2011年 新宿ニコンサロン)
「流転 チェルノブイリ」(2014年 新宿西口プロムナードギャラリー)
「流転 福島」(2015年 新宿西口プロムナードギャラリー)

見よ!沈黙と胎動の光景を!

今年は福島事故5年、チェルノブイリ事故30年の節目の年です。
四半世紀の時と、8500キロの距離を隔てた両地は原発事故という望まぬキーワードで奇しくも繋がれることになりました。人間不在となった空間にどのような時間が流れるのか、そこにあるのは死か生か?防護服を身に纏う人間を尻目に野生動物は跋扈し、植物は眠りから覚めその生命を謳歌するかのごとく、「汚染」された大地を覆い尽くして行きます。それはある意味、形而上学的光景かもしれません。
この「沈黙」と「胎動」の光景が発するメッセージは何を意味するのでしょうか?
我々は「対自」して真の「明るい未来を」考察する必要があるような気がします。
そんな節目の年に福島&チェルノブイリの風景が全国を廻ります。 
   2016年2月吉日  中筋 純
(引用終わり)

 中筋さんから戴いたお手紙によると、今回の和歌山での展覧会は、故郷和歌山での初めての個展だそうです。
 3月2日~7日の和歌山を皮切りとして、全国を巡回する写真展となるようで、その開催地については、チラシの裏面をご覧いただきたいのですが、和歌山に引き続き行われる東京都多摩市(3月)及び広島市(4月)での展覧会の日程だけ転記しておきます。言うまでもないと思いますが、多摩市の初日は福島事故5周年の日、広島市の最終日はチェルノブイリ30周年の日です。

2016年3月11日(金)~16日(水)
パルテノン多摩市民ギャラリー
(東京都多摩市落合2-35 TEL:042-375-1414)

2016年4月15日(金)~26日(火)
旧日本銀行広島支店1F
(広島市中区袋町5番21号 TEL:082-504-2500広島市文化振興課)

 中筋さんからお送り戴いた手紙の中には、写真展のチラシの他に、パルテノン多摩市民ギャラリーでの写真展開催を告知する案内の文書も同封されており、そこでは、チラシよりもさらに詳しく、この写真展で展示される写真の成り立ちや中筋さんの思いが語られていましたので、その一部をお読みいただきたいと思います。

(引用開始)
 人間の記憶の風化は避けようがないものだと思います。私が20歳の頃チェルノブイリ事故が発生し恐怖を覚えた感覚がどれほど薄れていたのか、、、私は2007年の秋に初めてチェルノブイリの廃墟と化した原発都市のマンションの屋上に立って初めて認識しました。辺りの光景は人々の記憶に反比例するかのごとく力強い野生が萌芽し埋め尽くさんばかりでした。それから時節を変え幾度もその地を訪問し、静かに移り往く時の流れを記録することになったのです。
 そして初取材から4年後の福島原発事故。「絆」「節電」、、、いろいろな麗句が世を席巻し、災禍をもたらす原発の存在、その犠牲になった福島の原発被災地を多くの方が注視したのも束の間、「経済」というアメにそんな記憶が薄れつつあるのは紛れもなき趨勢といえます。
 そんな人々の趨勢とは裏腹に、なりを潜めていた止めどない野生の萌芽はこの地でも起こっています。アスファルトを割る名もなき草に、街を覆う千手の蔓草に、路地を我が物顔に跋扈するイノシシの群れ、、、。白装束を着なければ立ち入れない人間の大地は、地球の始原の姿にゆっくりと戻りつつあります。福島とチェルノブイリは事故が起こった時も、物理的な距離もかくも離れているのに同じような時を歩みつつあるような気がしました。
 「風景」とは黙して語るものです。
 この展示を通じて一人でも多くの方に原発事故の災禍を想像していただき、そして現在推進され始めた日本での原発再稼働に一石を投じられればと願っております。
(引用終わり)

 物言わぬ写真だからこそ、観る者をして、無限の言葉を汲み取らせることもあるのだと思います。そのような作品との出会いを期待して、私も和歌山会場を訪れたいと思います。
 是非多くの方々に、和歌山市、多摩市、広島市、そして全国で開催される中筋純さんの写真展に足を運んでいただきたくご案内します。

(参考サイト)
 2011年の中筋純写真展「黙示録 チェルノブイリ 再生の春」開催時の中筋さんへのインタビューが読めるサイトがあります。

(追記 2016年2月2日)
 全国巡回展である「The Silent Views. 流転 福島&チェルノブイリ」に先立ち、明日・2月3日から16日まで、銀座ニコンサロンにおいて、中筋純さんの下記写真展が開かれます。巡回展とは相当内容が異なるのかもしれず、その一端が
中筋さんのFacebookへの投稿から推測されます。東京方面の方は是非立ち寄ってみられてはどうでしょうか。
 以下、ニコンサロンのWEBサイトから引用します。
(引用開始)
「中筋 純写真展 The Street View. -Chernobyl to Fukushima-」
2/3 (水) ~2/16 (火) 10:30~18:30(最終日は15:00まで)
休館:2/6(土)・7(日)

写真展内容
「二年経て 浪江の町を散歩する Googleストリートビューを駆使して」(三原由起子)
これは、福島県浜通り、浪江町出身の女流歌人が詠んだ短歌の一首である。原発事故でふるさとが無機質なバリケードで囲われ、帰省という行為が強制的にスマートフォンの小さな液晶パネルというバーチャルな空間に閉じ込められる。つのる思い出に、湧き上がる悔しさ、もどかしさ、やるせなさ……。
その歌を思い出しながら、作者は無人となった浜通りの街々の写真をここ数年撮り続けてきた。車窓を流れるストリートビューは、悲喜こもごものロードムービーだ。故郷を愛した人々の記憶、太古からの歴史を刻んだ大地の記憶が変幻する。「地球の傷」を癒やすかのように湧き上がる緑の胎動に未来への僅かな光を作者は感じるものの、うずたかき「汚染物」なる黒いフレコンバッグに、いまだ必死に抗おうとする人間のおろかな現実を垣間見る。
来年は福島原発事故5年、チェルノブイリ事故30年を迎える。
25年と8,500キロを隔てた両地で、人類を震撼させた原発事故は発生した。核を封印した地球46億年の記憶を望まずして覚醒させた原発事故という災禍は、人智を超越した奇妙な光景を作り出す。「失楽園」から見える静かなるメッセージを私たちはどうキャッチしていくべきなのか……。沈黙の大地と静寂の街角が語りかける。
(引用終わり)

(弁護士・金原徹雄のブログ「写真」カテゴリーから)
2015年10月19日
福島菊次郎さんが遺したもの~「闘え」「菊」(『証言と遺言』より)
2015年10月17日
10/20~10/28和歌山市役所で原爆写真展~是非立ち寄ってください
2015年1月21日
開催予告2/6~2/8被曝70年「原爆と人間」写真展(NHK和歌山放送局にて)
2015年1月8日
殺すな!殺されるな!~福島菊次郎さんとアーサー・ビナードさんの対話(in多摩市)
2014年3月19日
広河隆一さんの大きな懸念と『自発的隷従論』
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(閲覧注意)語れなかった“戦争体験”と『はだしのゲン』~「父のアルバムが語る日中戦争」を閲覧して
2013年1月23日(同年1月24日に再配信)
長谷川健一さん(飯舘村)が伝えたいこと
2013年1月19日(同年1月30日に再配信)
報道写真家・福島菊次郎さん91歳
2013年1月12日(同年2月20日に再配信)
「豊田直巳フォト語り・3.11後のフクシマを歩く。」(週刊通販生活)
2013年1月8日(同年3月9日に再配信)
「100人の母たち」スライドショー&トークセッション(in北九州市)


(付録)
『Don't mind (どんまい)』 作詞・作曲:ヒポポ大王 演奏:ヒポポフォークゲリラ
 

中筋純写真展チラシ表中筋純写真展チラシ裏