今晩(2016年10月1日)配信した「メルマガ金原No.2586」を転載します。

チェルノブイリ事故から30年目のベラルーシを訪ねた菅谷昭松本市長ほか~「自由なラジオ LIGHT UP!」最新アーカイブを聴く(023~026)

 「ラジオフォーラム」の事実上の後継番組として、今年の4月からスタートした「自由なラジオ LIGHT UP!」は、そのアーカイブをYouTubeとPODCASTで視聴することができますので、これまで2回にわたり、その全番組(22本)のアーカイブをご紹介してきました。
 けれど、何しろ週に1本ずつ放送されているのですから、アーカイブも同じペースで溜まっていく道理で、はやくも4本(023~026)が未紹介となっていました。
 以下に、公式サイトに掲載された番組案内と、YouTubeにアップされた動画をご紹介しますので、関心の高い回から聴いていただければと思います。

 私は、チェルノブイリ事故から30年目のベラルーシを訪ねた菅谷昭(すげのや・あきら)松本市長と、昨年の京大原子炉実験所定年退職を機に松本市に転居した小出裕章さんとの特別対談に注目し、番組ホームページに掲載されたテキスト(文字起こし)の一部を引用しました。
 
023 2016.9.6
主張して議論して最後に折り合う 現代ドイツ演劇が教えてくれる大切なこと

PERSONALITY 木内みどり
GUEST 原サチコさん(ハンブルク・ドイツ劇場専属女優)


「今日のスタジオのお客様は、ドイツ演劇界で活躍する舞台女優の原サチコさんです。原さんはハンブルク・ドイツ劇場の専属俳優ですが、ドイツの公立劇場に所属する唯一の日本人女優です。番組では、前衛的なドイツの現代演劇についての興味深いお話が次々と飛び出しました。
 鬼才、ルネ・ポレシュの作品をご一緒した縁で実現した今回の対談では、まずは木内みどりが、ルネ・ポレシュの舞台に参加する過程で感じたドイツ人気質について、そして前衛的なこれら舞台が最終的に一体何を産み出していたのかを、こだわりの人物設定やユニークな演出から考え、語り合いました。
 そしてそれは、先の大戦中のナチス政権への深い反省から、ひとりひとりの考えをはっきりと主張することによって、無防備に大勢に流されないようにしようとする、そして他人の考えにもしっかりと耳を貸しとことん議論しようとする、また、自分たちの意思で世の中をしっかりと見つめていようとする、そんな戦後のドイツ人が自ずと醸成していった国民性と同期するものでありました。
 翻って日本人はどうなのか?政治への無関心、失うまで自分ごとにならない希薄な危機意識、長いものに巻かれた方が楽という安定思考の下での思考停止。
 ドイツの前衛的な現代演劇界を見渡すことによって、日本人がドイツに学ぶところは大いにあると思い知らされた、ユニークなインタビューとなりました。
 そして原サチコさんは、強く訴えます。日本の若者よ、一度でいいから海外に住んでみなさい!と。日本の生ぬるい快適に浸っているだけではダメなのだと。誰もが自分の国だけではない、「世界」を考えなくてはならない時代であることは確かなのですから。」

024 2016.9.13
五輪選手に政治利用するなと言論を封鎖する。それ、政治でしょう!

PERSONALITY おしどりマコ・ケン
GUEST 佐々木明さん(アルペンスキー選手)

「今回のゲストは、ソルトレーク(2002)、トリノ(2006)、バンクーバー(2010)、ソチ(2014)と4つのオリンピックに出場してきたアルペンスキー選手、佐々木明さんです。スキーに全身全霊をかけた人生を歩む佐々木明さんですが、東日本大震災による福島第一原発の事故以来、スキーヤーズヘルプファンデーションというNPOを立ち上げ、また仲間のスキーヤーとのネットワークを活かし、大きな組織にはできない本当に困っている人たちに届く支援を続けていらっしゃいます。
 まず番組前半では、オリンピックにかける思いとともに、海外での暮らしが長かった佐々木明さんが特に感じてきた、旧態依然としたJOCや日本選手団の体質を例に、日本人特有の「かっこ悪さ」について言及しました。
 番組後半では、3.11原発事故に伴い家族を海外へ避難させたときのこと、またそれからは「俺たちのフィールドに不純物はいらない!雪を汚すな!」と、ゲレンデや山の放射能測定をして除染を勧めたりとアクティブに活動された日々のことなどをお話しいただきました。
 また継続的な支援として、子どもたちに「雪」にふれてもらいながら、命や自然の大切さを学ぶ「雪育(ゆきいく)」と称した活動を続けていらっしゃいます。放射能から逃れたい子供たちのためにとたくさんのお仲間のスキーヤーたちの温かい支援も集まっているといいます。今この時代に、世代を超えて人として大切なことをつないでいく尊くも美しいこのプロジェクトについて、じっくりと語っていただきました。
 また政治とオリンピックの関係について佐々木明さんは、国や人種やひとりの人間としてのバックグラウンドがあっての選手である以上切り離せないものがあり、スポーツを通して意志を伝えていくのもアスリートのあるべき姿という姿勢をもっておられます。その中で、スポーツだけに一生をかけて他のことには関心が向かない日本のスポーツ界の在り方に一石を投じました。
 今回は、そんな佐々木明さんの筋の通った本音が聞ける、特別なインタビューになりました。どうぞお楽しみください。」
 
025 2016.9.20
徹底追求!安倍自民党・閣僚たちの『政治とカネ』疑惑

PERSONALITY 西谷文和(ジャーナリスト)
GUEST 上脇博之さん(神戸学院大学法学部教授)

「舛添問題に甘利明元大臣の不起訴処分。そして安倍改造内閣閣僚や小池新都知事の不明朗な政治資金疑惑など、ゾロゾロ出てくる「政治とカネ」問題。その原資の殆どは国民の税金であるにもかかわらず、誠に節操が無いと言わざるをえません。今回は、「政治とカネ」追及の第一人者である上脇博之さんをゲストに、各閣僚の呆れた疑惑の中味と打開策を考えます。」

026 2016.9.27
ベラルーシで甲状腺がんを治療しつづけた医師、菅谷昭・現松本市長と小出裕章さんとの特別対談!in 松本

PERSONALITY いまにしのりゆき(ジャーナリスト)
GUEST 菅谷昭さん(長野県松本市長)、小出裕章さん(元京都大学原子炉実験所)

「今回は、普段のスタジオを飛び出しまして、長野県松本市からお送りします。
 ゲストは、松本市長の菅谷昭さん、そして今は松本市の住民でもある元京都大学原子炉実験所助教の小出裕章さん。クラシカルな松本市役所の中の一室をお借りしての放送です。
 菅谷昭さんは、もともとは甲状腺疾患を専門とされるお医者様でいらっしゃいます。チェルノブイリ原発事故後は、1991年からベラルーシに何度も足を運び、最長で5年半もの間滞在しながら、被ばくした子供たちの診療にあたってこられた方です。地位も私財を捨てて、なぜそこまでして現地の子供たちの甲状腺がん治療に奔走したのか?番組前半では、菅谷さんとチェルノブイリの関わりについて伺いました。
 そのあと番組は、小出裕章さんとの対談へと続きます。小出さんが京都大学原子炉実験所退官後、松本市を住処に選んだのは、環境の良さはもちろん、菅谷昭さんが市長でいらっしゃること、そして何よりもその素晴らしい市長を選んだ市民がいる町に魅かれたからだ、とおっしゃいます。
 そもそも二人の出会いは、菅谷さんがベラルーシ滞在中に、日本から調査に訪れた小出さんらを自宅に招き、そうめんでもてなしたことがはじまりだとか。そして二人はその後も、原子力発電所の事故から放出された放射能という、人類が決して制御しきれない危険物によって、罪もない人々が苦しんでいることに心を痛めている同志として、それぞれの立場で活動を続けて来られました。
 菅谷市長は、この夏、再びベラルーシに飛びました。30年後のチェルノブイリは、どうなっているのか?その検証から、今、日本の福島に必要な判断とは何なのか?を小出さんとともに語り合いました。緊急事態を宣言しすべてが特例として高線量地域に帰れと言われる福島の人々。菅谷さんは、チェルノブイリの悲劇を知る専門医の立場からは、放射能がこの先人々に及ぼす健康被害を強く憂いでおられます。ベラルーシでは、30年経てば子供たちの甲状腺がんはさすがに見つからない。しかし確実に体調を崩している人々が増えているのは、放射能に所以する免疫不全ではないかと疑います。低線量被ばくの問題は、福島に通じます。因果関係を検証するには、長い時間がかかる。しかしそれが証明された頃には、確実に人々の体は蝕まれている。ならば今、日本という国が向かうべき方向は明確なはずです。
 その中で、松本市では、放射能のモニタリングや学校給食への配慮、観光客の分も含んだヨウ素剤の備蓄、また近隣それぞれの原発事故を想定した避難マニュアルを完成させています。
 そして菅谷市長は、この夏、松本市の平和式典で述べた内容に関連して、公人であるのでと言葉を選びながらも、原爆も原発も、同じ「核」なのだと言及されました。原発と戦争がつながっていて、原爆の凄惨さを語るのと同じく、原子力発電所の抱える問題と大きな危険をもっと考えるべきだという主張は、小出裕章さんがいつもこの番組でおっしゃってくれていることと等しく、大切なメッセージとなりました。
 もう二度と、チェルノブイリ、福島を繰り返さないために、「原発事故の真実」を知る二人の証言は、とても貴重なものなのではないでしょうか?
 「市民のための自由なラジオ“Light Up!”in 松本」、聴き応えたっぷりの1時間、どうぞじっくりとお聴きください。」

 録音の14分から小出裕章さんが登場して特別対談となります。
 「LIGHT UP!JOURNAL」の特別編となりますので、通常の回と同様に文字起こしされたテキストが掲載されています。
 YouTubeで聴いていただいても、テキストを読んでいただいても良いのですが、ここでは、今年の夏、チェルノブイリ原発事故から30年が経過したベラルーシを訪ねた菅谷市長による感想・意見を抜き出してご紹介しようと思います。
 
(抜粋引用開始)
いまにし:今回、菅谷さん、チェルノブイリ行かれまして、なんかこういう点が今までと変わったなあとか、なんか印象深いような所がもしありましたら、教えて頂ければと思うんですけども。
菅谷市長:健康に関してですね、向こうでは保健省って言ってます、こっちでは厚生労働省みたいな所ですね。そういう所の国の役人さん、あるいはまた私のお世話になってたがんセンターのドクター達、それから、また一番汚染されてるゴメリー州の州の保健局にも行ってお話を伺いました。国の行政関係の人っていうのは、もう今は汚染の状況も影響も心配ないぐらいなことを言われるんですけども。
いまにし:なんか日本とよく似てますねえ。小出さんねえ。
菅谷市長:現地行って、そして保健局の局長さんは前から知ってるもんですから、正直なことを話してくれます。
 やっぱり、この汚染されたゴメリー州の中でいくと、例えば、大人も含めた方々の4割から6割はもう健康状態が悪いんだと。慢性的疾患があるとか。それから、またある所に行くと、子供達が大変ある意味で元気がないということで、その具体的に、例えば免疫能力が落ちちゃっているから、非常に上気道感染って風邪引きやすいとか治らないとかって、こういう事があるとか。あるいは、また周産期医療の問題、産婦人科医に聞きますと、やっぱり早産とか死産。あるいは、また先天異常も増えてるとか、こういうのの問題があるとか。
いまにし:そんな中で、ご専門の甲状腺の方はいかがでしょうか?
菅谷市長:でね、甲状腺に関しては、子供はもうないわけですよね。基本的には。放射性ヨウ素自身が8日ぐらいでもって半減期が。そうすると、半年ぐらい経つと、その影響力が無くなりますから。甲状腺がんに関しては、子供はもう影響ないと。
 ところが、今、大人が増えてるんですね。これは2通りあって、1つはもともとの自然発生ガン。我々でもなるガンはいくらでも起こりますから。自然発生がんと、もう1つが、小さい頃にわずかな被ばくを受けてる子供達が、大人になってから徐々にそれがガン化して増えてきている可能性ってあるもんですから。だから、放射線誘発性の甲状腺がんっていう表現しますけれども、それが健診対策しっかりしてくると、やっぱり見つかってくるわけですよね。だから、そういう意味でも今、大人のガンが増えてるんですね。これが、どちらかっていうのは証明できないもんですから。少なくとも甲状腺がんに関しては、子供は15歳未満の子供はないという。但し、もっと大きな今の20代、30代、40代っていうのは、こういう方々のガンが増えてきてる。ガン、甲状腺はね。
 でも、それ以外のガンは、他にもいくらもあるわけですから。そういうものが増加してる。でも、本当にこれが放射線の影響がどうかっていうのは、そこの証明がつかないから。
あとは疫学的に、今後ずっとしばらく見ていかなきゃいけない。そうすると、向こうのドクター達も言ったのが、「ナーダブレイミアって。時間が必要なんだよ」って言うんですよね。
いまにし:ナーダブレイミアっていうのはロシア語ですか?
菅谷市長:ええ。ブレイミアっていうのはタイムなんですよ。ナーダがニードなんです。ですから、時間が必要なんですよ。「これからもずーっと継続して見るしかない」って言ってますね。
(略)
いまにし:どうなんでしょうか?チェルノブイリ、ベラルーシではそういう考えはあるんでしょうか?核兵器もダメ、原子力発電もダメという。
菅谷市長:あれはやっぱり、あの国の体質としては、今そういう事あんまり声上げませんよね。ルカシェンコ大統領が、やっぱりあまり今回の原発事故のことはもう終息したっていう方向でやってるから、あまり言うなと。今回行きましたら、やっぱり原発造るんですよね。
いまにし:また新しく?
菅谷市長:ええ。だから、そういう方向ですけれども、国民も今の時点ではあまり言えないんですよね。気の毒だなあと思います。
いまにし:なんかね、日本とちょっと似たよいうな状況があるわけですよねえ。
菅谷市長:似てます。そうです。ちょっとねえ。
(引用終わり)