今晩(2016年10月19日)配信した「メルマガ金原No.2604」を転載します。

12/3シンポジウム「シングルマザーの権利擁護―養育費算定表の問題点と履行確保の方策について―」(和歌山弁護士会)のご案内

 今日は、私が所属する和歌山弁護士会のシンポジウム「シングルマザーの権利擁護」をご案内します。

 所管の「両性の平等に関する委員会」は、和歌山弁護士会の数ある委員会の中で、災害対策委員会とともに、ごく最近設置された委員会です。
 ということで、私自身、この委員会に所属したことはなく、これまでの活動実績についても、恥ずかしながら、和歌山弁護士会ホームページの中の「委員会活動報告」を読んで初めて知ったものもあるというありさまです。
 引用してみます。

(引用開始)
両性の平等に関する委員会 2016年(平成28年)度
委員長 松原 敏美
副委員長 足立 聖子、岡  正人

1 委員会の設置目的

 両性の平等を実現するために活動を行うことを目的とし、社会における両性の平等の実現状況、現行法制に関する調査及び研究をする他、国、地方公共団体、その他の関係団体と両性の平等実現のための連絡協議活動を行う委員会です。

2 活動実績
両性の平等実現状況の把握

 平成27年5月19日「和歌山県における男女共同参画の現状と課題」
  講師 和歌山県青少年共同参画課 課長 谷口恵美氏
  同 和歌山県男女共同センターりぃぶる 所長 山中浩子氏
 平成27年9月9日「和歌山県における女性労働の現状と課題」
  講師 和歌山労働局雇用均等室長 小田江里子氏

現行法制に関する意見の発表

 夫婦同姓強制及び再婚禁止期間に関する事例の最高裁大法廷回付を受けて平成27年7月10日付会長声明、及び平成27年12月16日に出された2つの最高裁大法廷判決を受けて平成28年3月16日付会長声明を各起案し、民法(家族法)の差別的規定の早期改正を求めました。

※金原注
「民法(家族法)の差別的規定の早期改正を求める会長声明」 
「民法(家族法)の差別的規定の早期改正を求める会長声明-2015年12月16日に出された2つの最高裁大法廷判決を受けて-」

男女共同参画週間に寄せて
 日弁連が全国の弁護士会に呼びかけて一斉に行う「女性の権利110番」を実施し、当会所属の女性弁護士が中心となって対応しました。

意思決定の場への男女共同参画実現に向けて

 参画率アップのために、当会所属女性弁護士にアンケートを実施し、その結果を当会から委員等を推薦する場合の参考資料としてまとめました。

委員会内研修

 「子どもの養育費の算定基準と養育保障は現状のままでよいのか」、あるいは「公平な離婚給付」の考え方、さらには「LGBTの正しい理解とあるべき法制」等々、委員会内の研修を行いました。

3 今後の活動予定

 「男性は仕事、女性は家庭」という伝統的な性別による役割分担を前提とした社会のしくみの中で、実際上性別による差別の影響を一番受けているシングルマザーについて、その現状を分析すると共に、その権利擁護のため法制度あるいは司法制度上、改善に役立つ方策を探るシンポジウムを、今年度中に開催する予定にしています。
 
(引用終わり)

 上記「今後の活動予定」で予告されていたシンポジウムが、いよいよ開催される運びになったということです。
 以下に、チラシ記載情報を転記します。

チラシから引用開始)
シンポジウム
シングルマザーの権利擁護
―養育費算定表の問題点と履行確保の方策について―

開催日時 
 2016年(平成28年)12月3日(土)
 開場:13時 開演:13時30分
開催場所
 和歌山弁護士会館 4階 講堂
  〒640-8144 和歌山市四番丁5番地


プログラム
第1部
 基調報告「和歌山のシングルマザーの現状について」
 和歌山県子ども未来課 家庭福祉班長 木村高秀(きむら・たかひで)氏
第2部
 基調講演「現行の養育費算定表の問題点と改善案」
 講師 日弁連両性の平等に関する委員会副委員長
     竹下博將(たけした・ひろゆき)弁護士(第二東京弁護士会所属)
第3部
 トーク&トーク「貧困から母子を守る養育費って?」
 出演 和歌山弁護士会 両性の平等に関する委員会委員 戸村祥子(とむら・しょうこ)
     和歌山弁護士会 両性の平等に関する委員会委員 岩橋幸誠(いわはし・こうせい)
 アドバイザー 竹下博將弁護士

入場無料★予約不要


主催 和歌山弁護士会(両性の平等に関する委員会)
お問い合わせ
 〒640-8144 和歌山市四番丁5番地(和歌山弁護士会)
 TEL:073-422-4580 FAX:073-436-5322
(引用終わり)   

 実にシンプルなチラシで、内容説明が全くない!
 まあ、弁護士や、離婚調停の当事者になった経験のある人なら、シンポのタイトルやプログラムの内容に目を通すだけで、主催者の問題意識はすぐに了解できると思いますが。

 そこで、僭越ながら、若干の補足説明を加えることにします。
 まず、第2部の講演のテーマとなっている「養育費算定表」とは何か?ですが、実際、離婚調停などの当事者になった人、特に未成年の子どもがいる場合、非常に切実な関心対象とならざるを得ないのがこの「養育費算定表」です。
 これは、インターネットでも容易に見ることができます。例えば、東京家庭裁判所のホームページには、「家庭裁判所において,養育費又は婚姻費用の算定をする際に参考として活用している資料です。」という説明付きで、「養育費・婚姻費用算定表」が掲載されており、その冒頭に、
○この算定表は,東京・大阪の裁判官の共同研究の結果,作成されたものです。
○現在,東京・大阪家庭裁判所では,この算定表が,参考資料として,広く活用されています。

と書かれているとおり、あくまでも建前上は「参考資料」なのですが、実際の調停実務では、事実上の規範性をともなって運用されているという実感を多くの弁護士は共有しているのではないかと思います。
 なお、2012年3月15日に日本弁護士連合会が「養育費・婚姻費用の簡易算定方式・簡易算定表」に対する意見書を公表しています。
 
 それから、第3部の「トーク&トーク」、「“養育費”の何が語られるのか?」チラシを見ただけではさっぱり分からないと思いますが、それを推測させるヒントを1つご紹介します。
 和歌山弁護士会館の中の事務室には、私たち会員1人1人のレターケースが設置されており、会から会員へのお知らせの文書などが入っているのですが、最近、両性の平等に関する委員会のシンポジウム実行PT座長(シンポにも登場する戸村祥子さんです)名による、会員宛の「アンケートのお願い」が入っていました。そこには、「養育費を任意に支払わない相手方に対して、「こういう手段を取ったら奏功した」という成功例や「こういう手段を取ったが、この点で限界があって取り立てできなかった」等の失敗例をご紹介いただきたいと考えています。」とあり、裏面には様々な質問項目が書かれていました。そういえば、明後日(10月21日)が締切だけど、まだ書いていなかった。
 何となくイメージがわきましたか?つまり、シンポ・サブタイトルの後半「(養育費の)履行確保の方策について」、実践例を踏まえながら語り合うということのようなのです。
 これって、とても重要な問題で、立法的手当の必要性も議論されているテーマですよね。

 以上のような様々な視点から取り組むシンポジウム「シングルマザーの権利擁護」。是非関心を持たれる多くの方にご参加いただきたく、ご案内します。

弁護士会シングルマザー・シンポ