今晩(2017年3月8日)配信した「メルマガ金原No.2745」を転載します。

共謀罪をめぐる最新ニュース、動画、声明のご紹介vol.5~「テロリズム集団その他」のまやかし

 今年の2月6日から始めた共謀罪シリーズも、回を重ねて今日が第13回となります。ほぼ2日に1回弱のペースで、「他にもっと大事なことはないのか?」という声が聞こえてきそうです。
 例えば、私自身、「森友学園」問題には重大な関心を持ち、その推移を見守っていますが、メルマガ(ブログ)では2回取り上げただけです。一つには、あまりにも事態の進展が早く、なかなか追いつけないということもありますが、いまや多くの人が競って情報をシェアし合っており、あえて私が情報発信するまでもないか、という思いもあります。
 ということで、3月3日に私自身が共謀罪に関する学習会の講師を務めなければならなくなったのを機に始めた共謀罪シリーズを、当面続けねばならないだろうなと思っています。
 
 今日は、「共謀罪をめぐる最新ニュース、動画、声明のご紹介」のvol.5です。
 2月28日に自民・公明の与党両党に示した法案の中に「テロリズム集団」の「テ」の字もないことが批判を浴び、急遽、「テロリズム集団その他の」を付け加えるという、まことに「せこい」というか、露骨な「世論誤導」のための修正案が、昨日、政府から与党に示されたということが報じられています。
 私自身、
3月4日に書いたメルマガ(ブログ)で、仮に「テロリズム集団」という用語を法案に盛り込むとすれば、ということで金原試案(?)を公表していましたが、今日、入手した修正案を読んだところ、「敵の方が一枚上手(うわて)」でした(詳しくは後述)。

(その1 ニュースの部)
東京新聞 2017年3月8日 朝刊
「共謀罪」修正案に「テロ集団その他」追加 拡大解釈の恐れ変わらず

(抜粋引用開始)
 
政府は七日、「共謀罪」の趣旨を含む組織犯罪処罰法改正案の修正案を自民、公明両党の関係部会にそれぞれ示した。本紙が入手した修正案全文によると、処罰対象となる組織的犯罪集団の例として「テロリズム集団その他の」を加えた。政府はテロ対策のために同法案が必要だと主張し、共謀罪の呼称も「テロ等準備罪」に変えたのに、法案には「テロ」の文言が全くなかったことに批判が出ていた。(大杉はるか)
 修正は処罰対象などを定めた条文三カ所と表題一カ所の計四カ所で「組織的犯罪集団」の前に「テロリズム集団その他の」との文言を加えた。法案の目的に「テロ」は追加されず、特定秘密保護法にはあるテロリズムの定義も条文に入らなかった。
 修正しても、「その他」と範囲があいまいで、捜査機関の裁量によって解釈が拡大され、内心の処罰につながる恐れや、一般市民が対象になる可能性があることは変わらない。
(略)
 対象犯罪数が六百超から二百七十七に減ったことを巡っては、「線引きが分からない」といった疑問が相次いだのに対し、法務省の担当者は「あまり論理的に切れるものではない」と基準の曖昧さを認めた。法務省は対象から外れた犯罪の一覧や絞り込んだ理由を説明する資料を議員に示したが、回収した。自民党の竹下亘国対委員長は記者会見で、自民党の法案了承時期について「十四日ぐらいかと思う」と見通しを示した。
(引用終わり)

 私は、3月4日の記事の中で、「テロリズム集団」という文言を付け加えるとすれば、以下のようにするのではないかという「金原試案」を発表しました(再掲します)。
 (実行準備行為を伴う組織的犯罪集団による重大犯罪遂行の計画)
第六条の二 次の各号に掲げる罪に当たる行為で、組織的犯罪集団(団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が別表第三に掲げる罪を実行することにあるテロリズム集団その他の団体をいう。次項において同じ。)の団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を二人以上で計画した者は、その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、当該各号に定める刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。
一 別表第四に掲げる罪のうち、死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮の刑が定められているもの 五年以下の懲役又は禁錮
二 別表第四に掲げる罪のうち、長期四年以上十年以下の懲役又は禁錮の刑が定められているもの 二年以下の懲役又は禁錮
2 前項各号に掲げる罪に当たる行為で、組織的犯罪集団に不正権益を得させ、又は組織的犯罪集団の不正権益を維持し、若しくは拡大する目的で行われるものの遂行を二人以上で計画した者も、その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、同項と同様とする。

 そして「正解」は以下のとおりでした。「金原試案」は残念ながらはずれました。

 
テロリズム集団その他の組織的犯罪集団による実行準備行為を伴う重大犯罪遂行の計画)
第六条の二 次の各号に掲げる罪に当たる行為で、テロリズム集団その他の組織的犯罪集団(団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が別表第三に掲げる罪を実行することにあるものをいう。次項において同じ。)の団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を二人以上で計画した者は、その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、当該各号に定める刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。
一 別表第四に掲げる罪のうち、死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮の刑が定められているもの 五年以下の懲役又は禁錮
二 別表第四に掲げる罪のうち、長期四年以上十年以下の懲役又は禁錮の刑が定められているもの 二年以下の懲役又は禁錮
2 前項各号に掲げる罪に当たる行為で、テロリズム集団その他の組織的犯罪集団に不正権益を得させ、又はテロリズム集団その他の組織的犯罪集団の不正権益を維持し、若しくは拡大する目的で行われるものの遂行を二人以上で計画した者も、その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、同項と同様とする。

 先ほど、私が「敵の方が一枚上手(うわて)」だったと書いた趣旨がお分かりでしょうか?
 自分で言うのも何ですが、普通の法案であれば、「金原試案」の方が「正解」だと思いますよ。わざわざ第一項本文の括弧書きで、「組織的犯罪集団」の定義規定を置いているのですから、どうしても「テロリズム集団」を例示したいのであれば、括弧書きの中で使用すれば、「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」などという長ったらしい例示付きの概念を同一条文中で何度も繰り返す必要などないのですから。
 以上のとおり、誰が考えても、この政府修正案は立法技術的に「拙劣」です。けれども、起案担当の官僚の小さな「プライド」など無視してでも優先しなければならないのは、この法案が「テロ対策のためにどうしても必要」という嘘八百をつき続けるための素材を提供することだったのですから。
 そして、このような「拙劣」なやり方をすることによって、わずか一つの条項の中で、見出しを含めれば4箇所も「テロリズム集団その他の」という文言を繰り返すことができるのですから、嘘を押し通すためには嘘をつく回数は多ければ多いほどよいという目的には見事合致している訳です。私が「敵の方が一枚上手(うわて)」だったと書いたのはそういう意味です。
 もちろん、「テロリズム集団その他の」の中で意味があるのは「その他の」の方です。共謀罪法案を批判する際には、以上の政府の思惑を踏まえ、仮に括弧付きであっても、「テロ」を含んだ略称など用いるべきではないと思います(批判の中で言及することは必要ですが)。

(その2 動画の部)
NPJ 「3.6 話し合うことが罪になる! 共謀罪の国会提出を許さない院内集会」(2時間01分)


冒頭~ 司会 米倉洋子氏(共謀罪法案に反対する法律家団体連絡会・日本民主法律家協会)
主催者挨拶
4分~ 海渡雄一氏(共謀罪NO!実行委員会)
講演「共謀罪と治安維持法」
9分~ 
内田博文氏(神戸学院大学法学部教授・九州大学名誉教授)
挨拶
1時間11分~ 藤野保史衆議院議員(日本共産党)
1時間13分~ 福島瑞穂参議院議員(社民党)
1時間20分~ 山添  拓参議院議員(日本共産党)
1時間25分~ 小林基秀氏(日本マスコミ文化情報労組会議議長・新聞労連委員長)
1時間33分~ 高田 健氏(戦争させない・9条壊すな!総がかり実行委員会)
1時間41分~ 弓仲忠昭氏(共謀罪法案に反対する法律家団体連絡会・自由法曹団)
1時間50分~ 桜井昌司氏(布川事件えん罪被害者)
今後の運動
1時間52分~ 前田能成氏(「秘密保護法」廃止へ!実行委員会)

NPJ 「共謀罪NO!実行委員会」 発足記者会見 2017.3.6(52分)

「共謀罪NO!実行委員会」の構成(呼びかけ)団体
・「秘密保護法廃止」へ!実行委員会
・解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会
・日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)
・共謀罪法案に反対する法律家団体連絡会(社会文化法律センター、自由法曹団、青年法律家協会弁護士学者合同部会、日本国際法律家協会、日本民主法律家協会、日本労働弁護団)
・盗聴法廃止ネットワーク  

 「共謀罪NO!実行委員会」が企画した最初のイベントがこの院内集会だと思いますが、これから次々といろんな企画を繰り出していくのでしょうね。
 さらに、「共謀罪NO!実行委員会」と「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」とが共同で呼びかける「「共謀罪」の創設に反対する緊急統一署名」が全国で取り組まれる予定です。

 ところで、院内集会で基調講演をされた著名な刑事法学者、内田博文先生の最近の著書として、司会者から紹介されていたのは以下の著作です。
『治安維持法の教訓-権利運動の制限と憲法改正』(みすず書房/2016年9月)

 その目次の最終章の部分を抜き書きしてみましょう。
(引用開始)
第十一章 権利運動の危機と憲法改正
1 権利運動の弾圧あるいは保障
2 日本型福祉論と法的パターナリズム
3 「公益及び公の秩序」と自民党憲法改正草案
4 共謀罪
5 治安維持法に無関係の人はいなかった
(引用終わり)

 また、上記著作とも密接な関連がある以下の著作を、その前年に刊行されています。
『刑法と戦争-戦時治安法制のつくり方』(みすず書房/2015年12月)

 版元のホームページに、同書の「おわりに」からの引用が掲載されていました。ここでも引用させていただきましょう。
「法律家の闘いの武器は「歴史的なものの理論化」という法理であり、「非合理的で非人道的な誘惑」に対する毅然とした態度である。そして、磨きぬかれた市民的公共性が大きな武器になる。」(
『刑法と戦争』「おわりに」より)

(その3 声明の部)
「テロ等組織犯罪準備罪(共謀罪)」法案提出に改めて反対する会長声明

1.当会は、今年度だけでも昨年8月、10月と、二度にわたり、最近では「テロ等組織犯罪準備罪」という名称を冠せられた「共謀罪」法案を国会に提出しないよう求めてきた。しかし、今年に入り、通常国会が始まるや否や、検討されるべき法案の中身を具体的に明らかにされることもないまま、政府は「国際(越境)組織犯罪防止条約…(中略)…の国内担保法を整備し、本条約を締結することができなければ、東京オリンピック・パラリンピックを開けないと言っても過言ではありません。」などという理由で、同法案を今国会に提出・成立させることを表明する事態となっている。

2.報道による限り、今国会に提出される見込みの共謀罪法案の内容は、①適用対象を「組織的犯罪集団」とする、②「2人以上の計画=共謀」をした場合に、計画(共謀)した者の内の誰かが「犯罪の実行のための資金又は物品の取得その他の準備行為」を行った場合に処罰する、③対象犯罪をこれまでの600以上から300にまで絞る等の内容が予想される。
 しかしながら、①「組織的犯罪集団」の定義が不明であり、適法な団体であってもその活動の評価によって組織的犯罪集団とされてしまう可能性があるうえ、その第一次的な評価を捜査機関(警察)が行うことから、適用対象限定の機能を果たさない。②についても、既存の「予備罪」とは異なり、具体的な結果発生に向けられた行為である必要がないため、単なる預金の引き出しであっても準備行為と判断されてしまう恐れがある。よって、①、②によって処罰範囲を限定する効果はなく、同法案の本質的問題点は何ら解消していない。さらに、③に関しては、「国連越境組織犯罪防止条約の批准のためには長期4年以上の罪をすべて対象にしなければならず、600余りもの犯罪類型をその対象とせざるを得ない。」というこれまでの政府答弁を覆すものであるのに、その整合性が何ら説明されていないという問題点がある。
 「実行行為があって、結果がある。」という従前の犯罪類型とは異なり、人と人の会話内容を捜査機関(警察)が吟味・評価して立件することを予定する共謀罪は、憲法が禁じた内心の自由を国家権力が侵害することを正面から許容することになる犯罪類型なのである。
 その他、これまでの会長声明で指摘したとおり、共謀罪の制定が、通信傍受(盗聴)捜査対象犯罪の更なる拡大、捜査訴追協力型司法取引制度の利用の拡大を招き、捜査機関による過度の監視社会、密告奨励社会の出現を促進する危険があるという問題、国連越境組織犯罪防止条約は、そもそも越境性のある経済犯罪(例、マフィア犯罪)を対象とするところ、越境性を犯罪構成要件要素としていない共謀罪法案は、条約の期するところを超えて広汎な処罰をもたらすという問題も解消されていない。

3.このように、非常に多くの問題点を含む法案であるが故に、国会でも連日審議され、多くの市民から法案に対する懸念の声が上がっているところである。その最中である本年2月6日、この法案の提出元となる法務省の責任者である金田勝年法務大臣が、国会審議の在り方について、報道機関向けに「法案提出後に議論を深めるべきだ」とする見解を文書で発表した。本来、本件のような国政の重要問題については、時期を問わず、国会を含めて国民的な議論がなされてしかるべきである。にもかかわらず、法務大臣が、上記のごとく、国会における議論の時期を法案提出後に限定するかのような文書を配布するのは、国権の最高機関であり国の唯一の立法機関である国会の審議に対して、行政府の都合で制限を加えたに等しい。
 法案の制定過程においてこのような異常事態も発生している今、当会は、改めて共謀罪法案の問題点を広く世論に訴えるとともに、政府に対し、共謀罪法案の提出を行わないことを強く求める。

  2017年(平成29年)2月15日
                              京都弁護士会
                                会長 浜 垣 真 也
(引用終わり)

 ご紹介したのは、今年2月15日付で公表された京都弁護士会の会長声明です。共謀罪に反対する各地の弁護士会による会長声明はいくらでもありますが、特に京都弁護士会をご紹介したのは、1月召集の通常国会が始まって以降の情勢を踏まえた比較的最近の声明であること、平成28年度だけでもこれが3回目の声明であることによります。
 1つめと2つめの声明は以下のとおりです。
「監視社会を招く共謀罪新設に反対する会長声明(2016年8月17日)」
「「テロ等組織犯罪準備罪(共謀罪)」法案提出に反対する会長声明(2016年10月21日)」
 何しろ今回の声明は第3弾ですから、シリーズ物の趣があり、金田法相筆禍事件にまで言及されていて、具体的で分かりやすいですね。

(弁護士・金原徹雄のブログから)
2017年2月6日
レファレンス掲載論文「共謀罪をめぐる議論」(2016年9月号)を読む
2017年2月7日
日弁連パンフレット「合意したら犯罪?合意だけで処罰?―日弁連は共謀罪に反対します!!―」(五訂版2015年9月)を読む
2017年2月8日
「共謀罪法案の提出に反対する刑事法研究者の声明」(2017年2月1日)を読む
2017年2月10日
海渡雄一弁護士with福島みずほ議員による新春(1/8)共謀罪レクチャーを視聴する
2017年2月21日
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2017年2月23日
日本弁護士連合会「いわゆる共謀罪を創設する法案を国会に上程することに反対する意見書」(2017年2月17日)を読む
2017年2月24日
「安倍政権の横暴を許すな!」連続企画@和歌山市のご案内~3/3共謀罪学習会&3/25映画『高江―森が泣いている 2』上映と講演
2017年2月28日
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ついに姿をあらわした共謀罪法案(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案)
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「共謀罪」阻止の闘いは“総がかり”の枠組みで~全国でも和歌山でも
2017年3月4日
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