今晩(2017年4月5日)配信した「メルマガ金原No.2773」を転載します。

「カジノ実施法案」作成作業が始まりました~クリーンなカジノの実現を目指して(!?)

 これまでも、カジノ解禁推進法をめぐっては、何度かこのメルマガ(ブログ)で取り上げてきましたが、いよいよカジノ実施法制定に向けて政府が具体的な活動を始めましたので、注意喚起の意味も込めて取り上げておこうと思います。
 その動きを伝える報道を引用しておきます。
 
日本経済新聞 2017/4/4 9:48
首相、カジノ「最高水準の規制導入」 推進本部初会合

(引用開始)
 
政府は4日午前、カジノを含む統合型リゾート(IR)導入に向けた推進本部の初会合を首相官邸で開いた。推進本部の本部長を務める安倍晋三首相は「世界最高水準のカジノ規制を導入する」と表明。政府はカジノの運営方法や入場規制について本格的な検討を進め、秋の臨時国会にIR実施法案の提出を目指す。ギャンブル依存症対策なども議論し、詳細なルール作りを急ぐ。
 首相はIRについて「大規模な民間投資がおこなわれ、大きな経済効果・雇用創出効果をもたらすことが重要だ」と強調。カジノに関しては「国民の幅広い理解を得られるようクリーンなカジノを実現する」と述べ、法案提出へ向けた作業の加速を全閣僚に指示した。
 同本部の下に設置する推進会議の委員として美原融・大阪商業大教授や渡辺雅之・三宅法律事務所パートナー弁護士ら8人を決定。6日に初会合を開く。
 政府はIRを経済成長の起爆剤としたい考え。カジノ解禁を巡ってはマネーロンダリングなどの犯罪防止策や暴力団対策が重要課題となる。政府は法案が成立した後、内閣府の外局として「カジノ管理委員会」を設置し、入場規制のあり方や対象者について具体的な検討を進める方針だ。
 昨年末に施行されたIR整備推進法(カジノ法)は1年以内をめどに、政府に実施法案を作成して国会に提出するよう求めている。
(引用終わり)

 以上の記事をしっかり理解する前提として、昨年12月26日に公布され、第三章を除いて即日施行されたカジノ解禁推進法(特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律)の規定を復習しておきましょう。「第一章 総則」を引用します。
 
特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律(平成二十八年十二月二十六日法律第百十五号)
  
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、特定複合観光施設区域の整備の推進が、観光及び地域経済の振興に寄与するとともに、財政の改善に資するものであることに鑑み、特定複合観光施設区域の整備の推進に関する基本理念及び基本方針その地の基本となる事項を定めるとともに、特定複合観光施設区域整備推進本部を設置することにより、これを総合的かつ集中的に行うことを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「特定複合観光施設」とは、カジノ施設(別に法律で定めるところにより第十一条のカジノ管理委員会の許可を受けた民間事業者により特定複合観光施設区域において設置され、及び運営されるものに限る。以下同じ。)及び会議場施設、レクリエーション施設、展示施設、宿泊施設その他の観光の振興に寄与すると認められる施設が一体となっている施設であって、民間事業者が設置及び運営をするものをいう。
2 この法律において「特定複合観光施設区域」とは、特定複合観光施設を設置することができる区域として、別に法律で定めるところにより地方公共団体の申請に基づき国の認定を受けた区域をいう。
(基本理念)
第三条 特定複合観光施設区域の整備の推進は、地域の創意工夫及び民間の活力を生かした国際競争力の高い魅力ある滞在型観光を実現し、地域経済の振興に寄与するとともに、適切な国の監視及び管理の下で運営される健全なカジノ施設の収益が社会に還元されることを基本として行われるものとする。
(国の責務)
第四条 国は、前条の基本理念にのっとり、特定複合観光施設区域の整備を推進する責務を有する。
(法制上の措置等)
第五条 政府は、次章の規定に基づき、特定複合観光施設区域の整備の推進を行うものとし、このために必要な措置を講ずるものとする。この場合において、必要となる法制上の措置については、この法律の施行後一年以内を目途として講じなければならない。
  第二章 特定複合観光施設区域の整備の推進に関し基本となる事項
(以下略)

 ただし、上記総務省ホームページに掲載された法律は、附則第1項のただし書「ただし、第三章の規定は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。」に基づき、3月24日に施行された第三章(第14条から第23条)がまだ「未施行」のままとなっており、条文が掲載されていません。施行直後に「読めない」ということ自体は別に珍しいことではありませんが、不便には違いありません。
 そこで、首相官邸ホームページに「特定複合観光施設区域整備推進本部」の設置根拠となる法令がPDFで掲載されていますので、煩をいとわず引用しておきます。

○特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律(平成28年法律第115号(抄))
第三章 特定複合観光施設区域整備推進本部
(設置)
第十四条 特定複合観光施設区域の整備の推進を総合的かつ集中的に行うため、内閣に、特定複合観光施設区域整備推進本部(以下「本部」という。)を置く。
(所掌事務等)
第十五条 本部は、次に掲げる事務をつかさどる。
一 特定複合観光施設区域の整備の推進に関する総合調整に関すること。
二 特定複合観光施設区域の整備の推進を総合的かつ集中的に行うために必要な法律案及び政令案の立案に関すること。
三 特定複合観光施設区域の整備の推進に関する関係機関及び関係団体との連絡調整に関すること。
2 本部に係る事項については、内閣法(昭和二十二年法律第五号)にいう主任の大臣は、内閣総理大臣とする。
(組織)
第十六条 本部は、特定複合観光施設区域整備推進本部長、特定複合観光施設区域整備推進副本部長及び特定複合観光施設区域整備推進本部員をもって組織する。
(特定複合観光施設区域整備推進本部長)
第十七条 本部の長は、特定複合観光施設区域整備推進本部長(以下「本部長」という。)とし、内閣総理大臣をもって充てる。
2 本部長は、本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する。
(特定複合観光施設区域整備推進副本部長)
第十八条 本部に、特定複合観光施設区域整備推進副本部長(以下「副本部長」という。)を置き、国務大臣をもって充てる。
2 副本部長は、本部長の職務を助ける。
(特定複合観光施設区域整備推進本部員)
第十九条 本部に、特定複合観光施設区域整備推進本部員(以下「本部員」という。)を置く。
2 本部員は、本部長及び副本部長以外の全ての国務大臣をもって充てる。
(資料の提出その他の協力)
第二十条 本部は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関、地方公共団体、独立行政法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。)及び地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定する地方独立行政法人をいう。)の長並びに特殊法人(法律により直接に設立された法人又は特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人であって、総務省設置法(平成十一年法律第九十一号)第四条第一項第九号の規定の適用を受けるものをいう。)の代表者に対して、資料の提出、意見の開陳、説明その他の必要な協力を求めることができる。
2 本部は、その所掌事務を遂行するため特に必要があると認めるときは、前項に規定する者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができる。
(特定複合観光施設区域整備推進会議)
第二十一条 本部に、特定複合観光施設区域整備推進会議(以下「推進会議」という。)を置く。
2 推進会議は、学識経験を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する委員二十人以内で組織する。
3 推進会議は、特定複合観光施設区域の整備の推進のために講ぜられる施策に係る重要事項について調査審議し、本部長に意見を述べるものとする。
4 推進会議は、前項の規定により意見を述べたときは、遅滞なく、その内容を公表しなければならない。
5 本部長は、第三項の規定による意見に基づき措置を講じたときは、その旨を推進会議に通知しなければならない。
(事務局)
第二十二条 本部の事務を処理させるため、本部に、事務局を置く。
2 事務局に、事務局長のほか、所要の職員を置く。
3 事務局長は、本部長の命を受けて、局務を掌理する。
(政令への委任)
第二十三条 この法律に定めるもののほか、本部に関し必要な事項は、政令で定める。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。ただし、第三章の規定は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
 
○特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律の一部の施行期日を定める政令(平成29年政令第41号)
 特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律附則第一項ただし書に規定する規定の施行期日は、平成二十九年三月二十四日とする。

○特定複合観光施設区域整備推進本部令(平成29年政令第42号)
(特定複合観光施設区域整備推進本部長補佐)
第一条 特定複合観光施設区域整備推進本部(以下「本部」という。)に、特定複合観光施設区域整備推進本部長補佐(以下「本部長補佐」という。)五人以内を置く。
2 本部長補佐は、内閣官房副長官、内閣官房副長官補又は内閣総理大臣補佐官のうちから、内閣総理大臣が指名する者をもって充てる。
3 本部長補佐は、特定複合観光施設区域整備推進本部長(以下「本部長」という。)の命を受け、本部の事務局(以下単に「事務局」という。)の事務の総括及び事務局の職員の指揮監督に係る本部長の職務について本部長を補佐する。
(委員の任期等)
第二条 特定複合観光施設区域整備推進会議(以下「推進会議」という。)の委員の任期は、二年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 委員は、再任されることができる。
3 委員は、非常勤とする。
(議長)
第三条 推進会議に、議長を置き、委員の互選により選任する。
2 議長は、会務を総理し、推進会議を代表する。
3 議長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員が、その職務を代理する。
(議事)
第四条 推進会議は、委員の過半数が出席しなければ、会議を開き、議決することができ
ない。
2 推進会議の議事は、出席した委員の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
(事務局長)
第五条 事務局の事務局長は、関係のある他の職を占める者をもって充てられるものとする。
(事務局次長)
第六条 事務局に、事務局次長一人を置く。
2 事務局次長は、関係のある他の職を占める者をもって充てられるものとする。
3 事務局次長は、事務局長を助け、局務を整理する。
(審議官)
第七条 事務局に、審議官五人以内を置く。
2 審議官は、関係のある他の職を占める者をもって充てられるものとする。
3 審議官は、命を受けて、局務に関する重要事項についての企画及び立案に参画し、関係事務を総括整理する。
(参事官)
第八条 事務局に、参事官十人以内を置く。
2 参事官は、関係のある他の職を占める者をもって充てられるものとする。
3 参事官は 命を受けて 局務を分掌し、又は局務に関する重要事項の審議に参画する。
(本部長補佐等の勤務の形態)
第九条 本部長補佐、事務局長、事務局次長、審議官及び参事官は、その充てられる者の占める関係のある他の職が非常勤の職であるときは、非常勤とする。
(本部の組織の細目)
第十条 この政令に定めるもののほか、本部の組織に関し必要な細目は、内閣総理大臣が定める。
(本部の運営)
第十一条 この政令に定めるもののほか、本部の運営に関し必要な事項は、本部長が本部に諮って定める。
附 則
(施行期日)
1 この政令は、特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律附則第一項ただし書に規定する規定の施行の日(平成二十九年三月二十四日)から施行する。

 以上のとおり、法第三章に定める内閣総理大臣を本部長とし、全ての国務大臣を本部員とする「特定複合観光施設区域整備推進本部」が3月24日に設置され、その第1回会合が昨日(4月4日)開催されたという訳です。
 そして、法第21条に基づいて本部に設置した「特定複合観光施設区域整備推進会議」において、「特定複合観光施設区域の整備の推進のために講ぜられる施策に係る重要事項について調査審議し、本部長に意見を述べる」こととなっており、その第1回の会合が明日(4月6日)開催される予定です。
 法第5条は、「政府は、(略)必要となる法制上の措置については、この法律の施行後一年以内を目途として講じなければならない。」とあることから、リミットは今年の12月25日となっており、日本経済新聞が伝えるとおり、「秋の臨時国会にIR実施法案の提出を目指す。」のが当然のタイムスケジュールとなります。

 なお、昨日(4月4日)開催された「推進本部」の「配付資料」の中から、一部をご紹介しておきましょう。

(抜粋引用開始)
IR推進会議における検討
主な論点
・我が国が目指すべきIRの在り方(日本型IR)
・IR区域の認定制度の在り方
・カジノ規制の在り方
・カジノ管理委員会の組織の在り方
・納付金・入場料等の在り方 等

夏頃 大枠取りまとめ
更に国民的な議論
必要な法制上の措置(IR推進法第5条:「施行後一年以内を目途として講じなければならない」)

IR推進会議委員

熊谷 亮丸(㈱大和総研常務執行役員・調査本部副本部長・チーフエコノミスト)
櫻井 敬子(学習院大学法学部教授)
篠原 文也(政治解説者、ジャーナリスト)
武内 紀子( ㈱コングレ代表取締役社長)
丸田 健太郎(有限責任あずさ監査法人 パートナー公認会計士)
美原 融(大阪商業大学教授)
山内 弘隆(一橋大学大学院商学研究科教授)
渡邉 雅之(弁護士法人三宅法律事務所 パートナー弁護士)
(引用終わり)

 今日のところは、状況の確認をするのが目的なので、批判や反対運動についての考えを述べるのはまた別の機会にすることとして、最後に、昨日の推進本部の議事録から、石井啓一IR担当大臣(副本部長、国土交通大臣)の冒頭発言と、安倍晋三内閣総理大臣の発言を引用しておきます。

 ・・・と、批判は「別の機会に」と書いたばかりですが、「クリーンなカジノを実現するため、世界最高水準のカジノ規制を導入する」(安倍首相)を読んでは一言せざるを得ませんね。
 このような日本語は、いかに官僚の作文であっても、普通の廉恥心を持った者には、とても恥ずかしくて口に出来ないと思いますが、「世界最高水準の安全基準」を充たした原発を再稼働させると公言する人間にとって、「クリーンなカジノ」「世界最高水準のカジノ規制」という、何を意味するのか、実は起案した官僚にも分かっていないに違いない空虚な言葉をはき出すことなど何でもないことなのでしょう。
 このような空虚な言語にどう対峙すればよいのか、私たちの課題であり続けています。
 
 それにしても、どういう神経で議事録に「安倍内閣総理大臣御挨拶」と「御」の字を付けますかね?これも官僚の「忖度」なのでしょうか?

第1回 特定複合観光施設区域整備推進本部 会合 議事録
(抜粋引用開始)
(石井IR担当大臣)
 ただいまから、特定複合観光施設区域整備推進本部を開催いたします。議事進行を務めます、副本部長の石井です。会議の公開等については、他の本部の例にならい、議事録及び配布資料は、原則として、本部会合終了後、速やかに公開することとします。それでは議事に入ります。お手元の資料1「今後の進め方」を御覧下さい。昨年末にIR推進法が成立をいたしまして、3月24日に本部が設置されました。IR推進法には附帯決議が付されており、お手元に参考資料として配布しております。下の欄をご覧頂きたいと思いますが、明後日の六日からは、本部の下に置かれる有識者のIR推進会議において、主な論点について検討いただき、夏頃に大枠を取りまとめたいと考えております。その後に、附帯決議を踏まえ、国民的な議論を尽くした上で、IR推進法の施行後一年以内を目途として、必要な法制上の措置を講じることとなります。資料2「IRの推進体制」を御覧下さい。本部の体制については、資料の左側にあるとおりです。また、IR推進会議の委員については、本日付で、資料の右側にある8名となっております。引き続いて、関係閣僚から御発言をお願いします。はじめに、観光を所管する国土交通大臣として、私から申し上げます。IRの整備は、日本の新たな観光の魅力となり、インバウンドの促進をはじめ観光先進国の実現に大きく貢献するものと考えております。このため、国土交通省内に検討チームも設けたところであり、IRが、国際競争力のある滞在型観光を実現し、地域の特性を活かした観光地形成の中核となるよう、関係府省と連携しながら、しっかりと対応してまいります。
(略)
(安倍内閣総理大臣御挨拶)
 本日から、IRの制度設計の検討が開始されます。「日本型IR」は、家族連れで楽しめるエンターテイメント施設や、国際会議場・展示場等を一体的に運営し、また、日本の伝統・文化・芸術を生かしたコンテンツを導入することで、国際競争力の高い滞在型観光を実現するものにしていかなければなりません。また、シンガポールのような大規模な民間投資が行われ、大きな経済効果・雇用創出効果をもたらすものとすることも重要です。あわせて、IRを訪れる旅行客が全国各地を訪問できるようにして、全国で経済効果をもたらしたいと考えます。さらに、カジノ収益を幅広い公益目的に還元することにより、国民の幅広い理解を得られるようにすること、クリーンなカジノを実現するため、世界最高水準のカジノ規制を導入するとともに、それを的確に執行するための体制を整備すること、依存症やマネー・ローンダリング、青少年への影響等、IRについての様々な懸念に万全の対策を講じることも重要であります。これらを通じ、クリーンなカジノを含んだ、魅力ある「日本型IR」を創り上げたいと思います。衆・参内閣委員会の附帯決議を踏まえ、国民の理解を得つつ、石井大臣を中心に関係閣僚が協力して検討いただきますように、お願いをいたします。
(引用終わり/下線は金原による)

(弁護士・金原徹雄のブログから)
2016年12月8日
カジノ推進法案をめぐる和歌山の現状と読売新聞による徹底批判

2016年12月13日
カジノ解禁推進法案の廃案を求める大阪弁護士会・会長声明(2016年12月12日)のご紹介~付・2014年10月の和歌山弁護士会・会長声明

2017年2月27日
和歌山弁護士会「いわゆる「カジノ解禁推進法」の成立に抗議し、同法の廃止を求める会長声明」(2017年2月27日)と和歌山でのカジノ誘致の動き
2017年3月10日
「カジノで観光・まちづくり!?ちょっと、おかしいんとちゃうか!緊急トーク集会」3/13@プラザホープのご案内と4月・5月の「予告編」