今晩(2017年4月17日)配信した「メルマガ金原No.2785」を転載します。

提言「南スーダン自衛隊派遣を検証し、国際貢献の新しい選択肢を検討すべきだ」(4/17自衛隊を活かす会)を読む

 本日(2017年4月17日)、自衛隊を活かす会(自衛隊を活かす:21世紀の憲法と防衛を考える会)が、「南スーダン自衛隊派遣を検証し、国際貢献の新しい選択肢を検討すべきだ」との提言を公表し、5月17日に開催する円卓会議「南スーダン後の日本の国際貢献」への参加を各政党・会派に呼びかけました。この会議の傍聴者は、「自衛官(現・元)、外交関係者、メディア関係者」に限定するということです。
 いずれ、会議の模様はインターネットで動画配信されるのではないかと思いますので、公開され次第、ご紹介したいと思います。

 「提言」では、3つの選択肢が提示されています。自衛隊を活かす会をずっとフォローしてきた人なら、選択肢1と選択肢2は伊勢﨑賢治さんの、選択肢3は加藤朗さんの、かねてからの持論が色濃く反映していることにすぐ気がつかれることでしょう。
 今日のところは、この呼びかけと「提言」をじっくりとお読みください。
 
国会議員、政党関係者の皆さんへ
円卓会議「南スーダン後の日本の国際貢献」開催の呼びかけ

(引用開始)
2017.5.17(水)17:00〜19:45
衆議院第一議員会館 国際会議室
主催/自衛隊を活かす:21世紀の憲法と防衛を考える会(略称:自衛隊を活かす会)

南スーダンから自衛隊が帰ってくることになりました。私たちは それを歓迎するとともに、最後まで慎重に対応し、無事なままで帰国が実現することを願います。PKOが劇的に変貌し、日本の安保法制も変化したもとで、南スーダンは最初の経験になりました。その検証抜きに、日本の国際貢献の今後を語ることはできません。私たちは、国会議員、政党関係者の皆さんの議論に付すために、以下のような「提言」を公表しました。旺盛な議論を通じて、日本の国際貢献のあり方について、新たな選択肢を見いだしていきませんか。

円卓会議ではどなたも自由に発言できますが、政党・会派の代表のご発言は冒頭にお一人のみ10分以内でお願いします。

この円卓会議の傍聴者を募集します。 ただし、傍聴者は自衛官(現・元)、外交関係者、メディア関係者の方のみとさせて頂きます。 傍聴希望の方は肩書きを明記の上、こちらよりお申し込み下さい。


代表 柳澤協二(元内閣官房副長官補、元防衛庁運用局長)
呼びかけ人 伊勢﨑賢治(東京外国語大学教授、元国連PKO武装解除部長)
呼びかけ人 加藤朗(桜美林大学教授、同国際学研究所長)

「自衛隊を活かす:21世紀の憲法と防衛を考える会」とは
2014年6月7日発足。自衛隊を否定するのでもなく、国防軍や集団的自衛権に走るのでもなく、現行憲法の下で生まれた自衛隊の可能性を探り、活かすことを目的とし、議論の場を提供すると共に、提言活動を行う。
(引用終わり)

提言 南スーダン自衛隊派遣を検証し、国際貢献の新しい選択肢を検討すべきだ

(引用開始)
国会議員のみなさん、政党関係者のみなさん

 この5月、南スーダンに派遣されていた自衛隊が帰国します。派遣されていた施設部隊の自衛官が、南スーダンの国づくりのため道路整備などで持てる技量を発揮して努力してきたのは、大いに誇ってよいことです。最後まで慎重に対応し、無事なままで帰国することを願います。

 一方、この間の一連の経過は、国連PKOとそれを取り巻く国際環境が日本人のこれまでの常識とは異なるものになったもとで、日本は何をすべきかを問いかけています。そのためにも、南スーダンPKOへの自衛隊派遣をしっかり検証することが求められています。

 よく知られているように、かつてPKOといえば、紛争当事者の停戦合意と受け入れ合意があり、紛争当事者に中立的な立場をとることが特質でしたが、その結果、ルワンダにおける大虐殺を防げなかったことを教訓として、「住民保護」のために交戦も辞さない方向へと舵を切りました。99年に出された国連事務総長告知「国連部隊による国際人道法の遵守」は、現場のすべてのPKO部隊に対して戦時に適用される「国際人道法の遵守」を求めていますが、それは国連部隊が紛争の当事者として交戦することを想定しているものです。南スーダンPKOも、当初は紛争などとは無縁でしたが、事実上の内戦状態となり、人道上の危機的な事態が進行する中で、筆頭任務が「住民保護」となり、「迅速で効果的な交戦」を行う先制攻撃可能な部隊の派遣まで決まりました。そうした状況下で、アムネスティ・インターナショナルなどの国際人道団体も、PKOに対して「住民保護」の任務をしっかりと果たせと求めています。

 このような変化のなかで、今後も引き続きPKOに自衛隊の部隊を派遣するなら、「駆けつけ警護」どころではなく、本格的な武力行使の体制が必要となるでしょう。それなら別の選択肢を検討するべきでしょう。いずれの場合も、初めて「駆けつけ警護」任務を与えられた南スーダンの検証は不可欠です。無事に自衛隊が撤退することは大事ですが、それで何も問題がなかったということになってしまうと、今後も生き続ける新安保法制下で、教訓となるものが何も残らないということになりかねません。

国会議員のみなさん、政党関係者のみなさん

 「自衛隊を活かす会」は、日本がどういう道を進むのであれ、国民の中での旺盛な議論を通じて、進むべき道への決意と覚悟が必要だと考えます。そのため、次のような3つの選択肢を提示し、国会議員と政党関係者のみなさんの議論を呼びかけます。

選択肢1 自衛隊の部隊を今後も派遣する場合、議論と法律と部隊の整備を行う
 紛争当事者に対して武力の行使をいとわなくなった国連PKOにおいて、自衛隊が何らかの役割を果たそうとすれば、武力行使には関与しないという姿勢は通用しません。憲法9条によって海外での武力行使を禁じられ、交戦権を否定する日本の自衛隊は、現在の変貌したPKOと本質的に相容れないのです。

 日本がPKOに参加するようになって以降、その矛盾を解消するため、武器使用の権限を国際水準に近づける方向で法改正が行われてきましたが、隔たりは埋まらないどころか、自衛官はさらに大きな矛盾の中で活動することを余儀なくされています。

 例えば、自己防衛のためなどに限られていた武器使用は、警護など任務遂行のためにも可能なようになりました。しかし、「敵を倒す」ことは、国際水準と異なって正当防衛などの場合だけに限られるので、他国の兵士と比べて自衛官の危険は増しています。にもかかわらず、憲法上の制約があるため、日本による交戦権の行使ではなく、個々人による武器使用だとされるため、自衛官には国際的な交戦法規が適用されず、捕虜にもなれないとされています。さらに、国家として命令し、部隊として行動しているのに、誤って民間人を殺傷した場合、自衛官個人の刑事責任が問われることになるのです。しかも、その自衛官を裁くのは軍事法廷ではなく、軍事問題の知識も経験もない一般の裁判所です。

 このような矛盾に満ちた問題が放置されている状況下で、PKOに派遣された自衛官をめぐって万が一の事態が起きた場合、国民の中でそれを受けとめる覚悟はできていません。したがって、自衛隊を継続派遣することを選択する場合は、前記の諸問題をどう解決するのか、そのためにどんな法律と部隊の整備をするのか、交戦権を認めるか否か、憲法をどうするかも含めて徹底的に議論をするべきです。

選択肢2 自衛隊の施設隊に替わって、自衛官を国連軍事監視員として派遣する

 あまり知られていませんが、国連がPKOを軍事的な任務を付与して派遣するような場合、政治的な任務を持った丸腰・非武装の軍事監視員を国連職員の扱いで派遣することが少なくありません。軍事監視員は各国軍隊の少数の高級幹部で構成され、武器を持たずに身体を張って紛争当事者と接触することによって、停戦を守らせるのが仕事です。危険ですが大事な仕事であり、これまでも成果を上げてきました。

 日本は、戦後の平和主義のもとで、直接の武力で戦争に関わらず、世界から中立的だと思われており、紛争の多いアフリカにおける植民地主義の過去がありません。この日本から軍事監視員が派遣されれば、内戦下の国であっても、貴重な役割を果たすことができるでしょう。非武装・丸腰ですから、憲法9条が禁止する武力行使の問題は生じません。

 実は自衛隊は、2007年からの4年間、非武装の軍事監視要員6名をネパールに派遣した実績もあります。防衛省のホームページでは、「派遣隊員の高い規律心・責任感、リーダーシップ、誠実な職務遂行などは、現地の国連、諸外国の軍事監視要員などから高く評価されました」とあります。自衛官はこの分野でも経験があり、その能力が高いことは証明されているのです。

 軍事監視員が武器を持たないことは、紛争当事者にとっては軍事的な中立のあかしであり、だからこそ停戦合意を守らせる力を発揮することができるのです。自衛官を軍事監視員として派遣する場合、武器使用権限を持った自衛隊を派遣し続けることは、軍事監視の仕事に悪影響を及ぼす恐れがあります。軍事監視員を派遣する場合、自衛隊の部隊は派遣すべきではありません。

選択肢3 自衛隊に頼るのではなく、政府の外交努力と民間の貢献に徹する

 自衛隊の派遣はどんなものであれ止める選択肢もあるでしょう。その場合も、各地で進行する人道危機を防ぐため、日本は何をするかが問われます。

 まず第一に求められるのは、日本政府の外交努力です。先述したような軍事監視員の派遣が有効だという日本の立ち位置は、外交努力においても生かされるはずです。自衛隊撤退後の南スーダンで、大統領派と副大統領派の停戦合意を守らせるため、日本政府は両派にどう働きかけるかが問われます。両派に関わっている周辺諸国に対しても、武器の禁輸をはじめ紛争の拡大に関与しないよう求めるべきでしょう。
 第二に、国民の一人ひとりにもやるべきことがあります。多くの国民は日本が「平和国家」であることを誇りにしていることでしょう。それならば、「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」と憲法前文にもあるように、平和が脅かされ、虐殺と飢餓が進行する南スーダンはじめ各地で起きる事態を人ごとには思えないはずです。自衛隊を派遣しないとすれば、国民は何をするかが問われてきます。

 現在、南スーダンと周辺諸国では、日本を含む各国のNGOが、医療や食糧援助などの民生支援で活動しています。こうした活動への資金提供は誰もができることです。

 さらに、道路や橋の建設を支援するというなら、自衛隊ではなく民間のプロフェッショナルを派遣するほうが役に立つことも明白です。国はそういう取り組みを支援する仕組みをつくるべきでしょう。国民がこうした目に見える形で貢献していくことができれば、日本の軍事的な関与は不要だという世論が、日本でも世界でも形成されるに違いありません。

国会議員のみなさん、政党関係者のみなさん

 自衛隊を活かす会は、5月17日、「南スーダン後の日本の国際貢献」をテーマに、政党・会派の代表の方をお招きし、円卓会議を開催したいと考えています。自衛官の方々にも参加を呼びかける予定です。

 この会議に各政党・会派から代表(1名から4名)を派遣していただけませんか。そして、与野党が一致する選択肢を見いだすよう、ご一緒に努力しませんか。真剣なご検討をお願いします。

2017年4月17日
自衛隊を活かす会(「自衛隊を活かす:21世紀の憲法と防衛を考える会」)
代表・柳澤協二(元内閣官房副長官補)
伊勢﨑賢治(東京外国語大学教授)、加藤朗(桜美林大学教授)
(引用終わり)