今晩(2017年5月3日)配信した「メルマガ金原No.2801」を転載します。

「九条の会」新アピール「日本国憲法施行70周年にあたって」を憲法記念日に読む

 2004年6月9日、9人の識者を呼びかけ人として発表された「九条の会」アピールは、その後の9条を中核とした憲法を守る運動に多大な影響力を発揮しました。その後、全国各地で続々と創設された「9条の会」とは、上下の関係などない別個独立の組織でありつつ、「九条の会」は、重要な節目に際して発表する声明などにより、運動の方向性についての指針を示すという重要な役割を果たしてきました。
 日本国憲法施行70年(今日がまさにその日です)を迎えるに際し、「九条の会」が発表した新たなアピール「日本国憲法施行70周年にあたって」をご紹介するに先立ち、13年前の「九条の会」アピールを振り返っておきうことにも十分な意義があると思います。
 
「九条の会」アピール
(引用開始)
 日本国憲法は、いま、大きな試練にさらされています。
 ヒロシマ・ナガサキの原爆にいたる残虐な兵器によって、五千万を越える人命を奪った第二次世界大戦。この戦争から、世界の市民は、国際紛争の解決のためであっても、武力を使うことを選択肢にすべきではないという教訓を導きだしました。
 侵略戦争をしつづけることで、この戦争に多大な責任を負った日本は、戦争放棄と戦力を持たないことを規定した九条を含む憲法を制定し、こうした世界の市民の意思を実現しようと決心しました。
 しかるに憲法制定から半世紀以上を経たいま、九条を中心に日本国憲法を「改正」しようとする動きが、かつてない規模と強さで台頭しています。その意図は、日本を、アメリカに従って「戦争をする国」に変えるところにあります。そのために、集団的自衛権の容認、自衛隊の海外派兵と武力の行使など、憲法上の拘束を実際上破ってきています。また、非核三原則や武器輸出の禁止などの重要施策を無きものにしようとしています。そして、子どもたちを「戦争をする国」を担う者にするために、教育基本法をも変えようとしています。これは、日本国憲法が実現しようとしてきた、武力によらない紛争解決をめざす国の在り方を根本的に転換し、軍事優先の国家へ向かう道を歩むものです。私たちは、この転換を許すことはできません。
 アメリカのイラク攻撃と占領の泥沼状態は、紛争の武力による解決が、いかに非現実的であるかを、日々明らかにしています。なにより武力の行使は、その国と地域の民衆の生活と幸福を奪うことでしかありません。一九九〇年代以降の地域紛争への大国による軍事介入も、紛争の有効な解決にはつながりませんでした。だからこそ、東南アジアやヨーロッパ等では、紛争を、外交と話し合いによって解決するための、地域的枠組みを作る努力が強められています。
 二〇世紀の教訓をふまえ、二一世紀の進路が問われているいま、あらためて憲法九条を外交の基本にすえることの大切さがはっきりしてきています。相手国が歓迎しない自衛隊の派兵を「国際貢献」などと言うのは、思い上がりでしかありません。
 憲法九条に基づき、アジアをはじめとする諸国民との友好と協力関係を発展させ、アメリカとの軍事同盟だけを優先する外交を転換し、世界の歴史の流れに、自主性を発揮して現実的にかかわっていくことが求められています。憲法九条をもつこの国だからこそ、相手国の立場を尊重した、平和的外交と、経済、文化、科学技術などの面からの協力ができるのです。
 私たちは、平和を求める世界の市民と手をつなぐために、あらためて憲法九条を激動する世界に輝かせたいと考えます。そのためには、この国の主権者である国民一人ひとりが、九条を持つ日本国憲法を、自分のものとして選び直し、日々行使していくことが必要です。それは、国の未来の在り方に対する、主権者の責任です。日本と世界の平和な未来のために、日本国憲法を守るという一点で手をつなぎ、「改憲」のくわだてを阻むため、一人ひとりができる、あらゆる努力を、いますぐ始めることを訴えます。

2004年6月10日

井上 ひさし(作家)  梅原 猛(哲学者)  大江 健三郎(作家)
奥平 康弘(憲法研究者)  小田 実(作家)  加藤 周一(評論家)
澤地 久枝(作家)  鶴見 俊輔(哲学者)  三木 睦子(国連婦人会)
(引用終わり)

 あらためて2004年アピールを読めば、そこで懸念されていた事態の大半が既に現実のものとなっており、わずかに憲法9条の明文改憲を阻んでいるだけ(といういのは言い過ぎかもしれませんが)であることに気がつきます。
 
 「九条の会」も、呼びかけ人の多くが逝去されるという事態を承け、体制強化のため、2016年9月、新たに12人からなる世話人会を設置しました。
 世話人会の構成メンバーは以下の方々です。
  愛敬浩二氏(名古屋大教授、憲法学)     
  浅倉むつ子氏(早稲田大教授、労働法)
  池内  了氏(名古屋大名誉教授、宇宙物理学)
  池田香代子氏(ドイツ文学翻訳家)
  伊藤千尋氏(元朝日新聞記者)
  伊藤  真氏(日弁連憲法問題対策本部副本部長)
  内橋克人氏(経済評論家)
  清水雅彦氏(日本体育大教授、憲法学)
  高遠菜穂子氏(ボランティア活動家)
  高良鉄美氏(琉球大教授、憲法学)
  田中優子氏(法政大総長、江戸文化研究家)
  山内敏弘氏(一橋大名誉教授、憲法学)

 そして、日本国憲法施行70周年を目前に控えた本年4月27日、「九条の会」は新たなアピールを発表しました。その文案の作成過程には、世話人会メンバーの意見も盛り込まれているといことでしょう。
 以下に、全文引用しますが、必ずや賛同いただける内容だと思います。あとは、これを読んだ人各自が、具体的に何を出来るかでしょう。
 
「日本国憲法施行70周年にあたって」
(引用開始)
                                   九条の会
 日本国憲法は今年、施行70年を迎えました。この70年、この憲法を「改正」しようとする攻撃が絶え間なくおこなわれてきたにもかかわらず、「再び戦争をしない」と決意した私たちは「9条守れ」の運動をねばり強く展開し、これをはねかえしてきました。
 しかしいま安倍政権は、アメリカに付き従った軍事同盟を背景に、「国益」、「安全」の口実のもと、集団的自衛権容認の閣議決定をおこなうとともに、秘密保護法制定、武器輸出三原則の撤廃、国家安全保障会議の設置、日米ガイドラインの締結、そして戦争法制定などを強行してきました。さらに通常国会冒頭の施政方針演説では「次なる70年に向かって」憲法「改正」を提案すると明言するなど、歴史逆行の暴走をエスカレートさせています。
 いま、アメリカではトランブ政権が誕生し、アジアでも大国主義的行動や軍事的挑発が繰り返され、20世紀以来の世界がめざしてきた戦争違法化の流れに逆行する軽視できない動きが強まっています。
 安倍政権の暴走は、こうした世界の逆流に便乗し、軍事力や恫喝が幅をきかす世界の中で、強国の一員としての座を占めたいという野望に基づいています。4月7日のトランブ政権によるシリア攻撃に対しても安倍首相はいち早く「米国政府の決意を支持する」ことを表明しています。こうした安倍政権の政治がアジアの緊張を高め、戦争と武力衝突の危険を拡大するものであることは明白です。
 こうした流れに対して、世界でも、武力や恫喝による解決に反対する市民の声が、当のアメリカも含めて噴出しています。9条を掲げる私たちの運動は、平和な世界の構築に向けて、その先頭に立って積極的な役割を果たすべき立場にあります。
 同時に、戦争法を廃止すること、南スーダンから自衛隊を即時撤退させること、沖縄辺野古、高江の基地建設を阻むこと、共謀罪法案の成立を許さないこと、何より明文改憲に「NO」をつきつけることは、日本国民を強権で統治して物言わぬ存在にしてしまおうとする安倍政権の企みを打破し、現状に危惧をもつ世界とりわけアジアの人々、国々に対して、9条をもつ日本の私たちに課せられた責任です。
 戦争法廃止の運動のなかでは、立憲主義擁護の一致点にもとづいてかつてない共同が実現しました。南スーダンからの自衛隊施設部隊の撤退決定もその運動の成果です。安倍政権の暴走にストップをかけるのはこの共同をさらに大きく、強固なものにしていく以外にありません。そして安倍政権を退陣においこむことです。
 13年前、九条の会の出発に際して発表した「アピール」の言葉を、いま、あらためて掲げます。「日本と世界の平和な未来のために、日本国憲法を守るという一点で手をつなぎ、『改憲』のくわだてを阻むため、一人ひとりができる、あらゆる努力を、いますぐ始めることを訴えます。」
                                                    2017年4月27日
(引用終わり)
 

(付録)『この島~憲法9条の歌』 演奏:Crowfield

※2014年5月3日開催の“HAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama”にて