今晩(2017年6月28日)配信した「メルマガ金原No.2857」を転載します。

和歌山市家庭教育支援条例制定記念講演会「大人が変われば 子供も変わる」(7/1)から何が読み取れるか

 今日お送りするのは、3ヶ月前に書いた以下の記事の(特に和歌山市条例についての)続報です。

 今通常国会に議員立法として提出か?と予想されていた家庭教育支援法案は、共謀罪法案の成立を優先したからか、先送りとなったようですが、既に家庭教育支援条例を制定した地方自治体では、着々と「家庭教育支援」の実践が始まろうとしています。
 私が住む和歌山市が、政令市・中核市の先陣を切って(あとに続いたところがあるのだろうか?)家庭教育支援条例を昨年12月に制定済みであることは、3ヶ月前のメルマガ(ブログ)に書いたとおりです。
 当時は、和歌山市ホームページに掲載された条例のPDFファイルにテキストデータが埋め込まれていなかったためにコピペできず、全部私が再入力してご紹介したのですが、既にコピペ可能なファイルもアップされていました。
 

 本稿末尾に全文を掲載しておきますが、やはり一番気になるというか、おかしいだろうと思うのは、「(保護者の役割)第5条 保護者は、基本理念にのっとり、子供に愛情をもって接し、子供の基本的な生活習慣の確立並びに子供の自立心の育成及び心身の調和のとれた発達を図るとともに、自らが親として成長していくよう努めるものとする。」ですね。私が自民党「日本国憲法改正草案」の第24条1項「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない。」を読んだ時の強烈な違和感と全く同質の思想を感じます。

 ところで、この条例に基づき、和歌山市では、早速平成29年度予算に家庭教育支援関係として、78万5000円の予算を計上しました(「平成29年度 予算と主要事業の概要」(報道発表資料))。
 それによると、「・家庭教育の支援 <新規 >785 千円(生涯学習課) 条例の趣旨を市民の方に周知・啓発するための講演会開催やパンフレットの作成、担い手講座や親子食育講座等の実施」 となっています(22頁)。

 そして、上記「予算と主要事業の概要」に掲げられた「条例の趣旨を市民の方に周知・啓発するための講演会」が、3日後の7月1日(土)に開催されるのです。
 講演会の開催自体は、しばらく前から耳に入っていたのですが、これを多くの人に知らせるのが良いかどうかと迷っているうちに開催目前となってしまったのです。けれど、たとえ(私のように)批判的な視点から「家庭教育支援」を考える者にとっても、自分の住む自治体が、どういう思想をもって、具体的に何をやろうとしているのかを知っておくことは重要であるに違いないと見極めがつきましたので、遅ればせながらではありますが、ご紹介することとしました。
 講演会の開催概要を、和歌山市ホームページ及び講演会チラシを適宜ブレンドしてご紹介します。

(開催概要)
市民大学公開講座・家庭教育支援担い手講座 
和歌山市家庭教育支援条例制定 記念講演会
~大人が変われば 子供も変わる~
日時 平成29年7月1日(土)14:00~(開場13:30~)
会場 和歌山市立伏虎義務教育学校 第2体育館(校舎3階)
     和歌山市鷺ノ森南ノ丁1番地
内容
第1部 記念講演「家庭教育支援条例の意義と課題」
 講師 高橋史朗 氏(明星大学特別教授、麗澤大学道徳科学教育センター客員教授、モラロジー研究所客員研究員、一般財団法人親学推進協会会長)
第2部 パネルディスカッション
本音で語る!和歌山市の子育て
「子育てしやすいまちって どんなまち?」
 コーディネーター 辻由起子 氏(大阪府認定子ども家庭サポーター)
 パネリスト
  高橋史朗 氏(明星大学特別教授)
  原 一起 氏(和歌山市教育委員会教育長) 
  他2名
◎申込・参加費 不要
◎室内履き及び靴を入れる袋をご持参ください。      
◎自転車、バイクでお越しの方は、学校内に駐輪してください。
◎車でお越しの方は、近隣の駐車場をご利用ください。

 講演及びパネルディスカッションの2部構成であり、私もこれ以上中身について詳しい知識がある訳ではありませんが、若干補足しておいた方が良いかと思われる周辺情報を付記しておきます。

 第2部のコーディネーターを務められる辻由起子氏のホームページ(プロフィール)を拝見すると、「所属」の冒頭に「一般財団法人親学推進協会理事・親学アドバイザー・講師」とあります。
 そう、第1部で記念講演をされる高橋史朗氏が会長を務める財団法人ですね。
 一般財団法人親学推進協会ホームページのトップページに掲載されたキャッチフレーズは「親が変われば、子どもも変わる」です。和歌山市の今回の企画のタイトル「大人が変われば 子供も変わる」はそのバリエーションという訳です。

 今日は、私自身にも、「親学」についてあれこれ批評するだけの準備も時間もありませんので、ここでは、2012年4月に結成された親学推進議員連盟の初代会長が安倍晋三氏であったということをご紹介するにとどめます。
※参考資料
 私が、「親学」と聞いて真っ先に思い浮かべるのは、発達障害を伝統的子育てで予防できるというトンデモ論を唱える人がいたということですが、一般社団法人日本発達障害ネットワークから親学推進議員連盟(会長 安倍晋三氏)に対する「会員向けに周知のお願い」という文書(中身は抗議文です)がインターネットで読めます(平成24年6月26日付、この時点では、安倍氏はまだ自民党総裁にも返り咲いていませんでした)。

 そうそう、7月1日の講演会の予習の意味で、高橋史朗氏と辻由起子氏とが、2人ご一緒に出演したインターネット番組のアーカイブ動画が視聴できるので、ご紹介しておきましょう。
 2014年2月28日に放送された「君の一歩が朝(あした)を変える」という番組で、司会は櫻井よしこ氏です。
動画インデックス
1.愛情の注ぎ方が分からない母親が急増中!断絶する「子育て文化」
2.一緒に学ぼう!群れで子育てしよう!
3.母親との「愛着」が子どもの心を育てる
4.「男女間の暴力」が増えれば「児童虐待」も増える
5.子育てまでに結婚→妊娠→出産 切れ目ない支援が必要だ!
6.現代は自分の赤ちゃんを初めて抱っこする母親が過半数以上
7.ノーが言えない素直で優しい子がDVに遭う
8.「今は怒っている人を見たら、苛立ちいっぱいの困ってる人だと思う」
9.人工中絶は年間で21万件以上、1日582件。大戦以降で1千万件を超える!
10.望まぬ妊娠をし、未婚のまま未受診で産む。その時、男はすぐ逃げる
11.保育サービスの量的拡大で、無認可保育所でのゼロ歳児死亡事故が増えている
12.少子化の一番の原因は未婚化、2100年には明治維新と同じ数字に激落ち

 ちなみに、高橋史朗氏について、Wikipediaに「日本会議の役員」という記載があるのですが、裏付となる資料は発見できませんでした。
 
 さて、もう一度「和歌山市家庭教育支援条例」です。
 特に、第9条(親としての学びの支援)と第10条(親になるための学びの支援)をよくよく読み込んだ上で、本日私が提供した情報に目を通し、さらに7月1日の講演会にも参加され、この条例に基づいて和歌山市が何をしようとしているのか、しっかりと注目していっていただきたいと思います。
 最後に、もう1箇条注目しておくべき条項をご紹介しておきましょう。
 
(人材の養成)
第11条 市は、家庭教育の支援を行う人材の養成に努めるとともに、家庭教育への支援に関する人材のネットワークの構築及びその拡充に努めるものとする。

 先ほどご紹介した「親学推進協会」ホームページを読むと、「親学アドバイザーについて」というページがあります(辻由起子氏さんも親学アドバイザーでしたね)。
 そこには、「親学アドバイザーは全国で約1,300人(平成25年3月末)を数え、地域の保護者との勉強会をはじめ、保育園、幼稚園、小学校、自治体、教育委員会などと連携した勉強会、講演会などの活動を、自主的におこなっています。」とありますが、これに、今回の講演会の講師・コーディネーターの人選と、条例第11条の「家庭教育の支援を行う人材の養成に努める」という文言とを並べてみると、和歌山市における近未来が想像されませんか?私には、とても明るい未来とは思えませんけどね(単なる私の邪推なら良いのですが)。
 
(資料)
和歌山市家庭教育支援条例 平成28年12月15日 条例第72号
 家庭は、教育の根幹である人づくりの基盤であり、家庭教育は、全ての教育の出発点である。子供の基本的な生活習慣及び生活力、豊かな情操、人に対する信頼、他者への思いやり、善悪の判断等の基本的な倫理観、自立心及び自制心等は、家族のふれあいを通じて、家庭で育まれるものである。
 私たちが住む和歌山市は、四季を通じて温暖な気候及び豊かな自然環境の下で先人が育んだ伝統、文化及び技術を受け継ぎながら、家庭及びその家庭を取り巻く地域社会が一体となって子供の健やかな成長を見守り続けてきた。
 しかし、近年では、核家族化、地域社会の人間関係の希薄化等により、家庭が孤立化し、
保護者の子育てへの不安や負担感の増大とともに、家庭や地域の教育力及び子育て力の低下が指摘されている。
 本市では、これまでも「ともに学び ともに支えあい 未来につながる教育」を基本理念
とし、地域社会全体で将来の和歌山市を創造できる人を育てる教育の充実に取り組んできたが、こうした家庭、社会等の変化を踏まえ、より一層の支援を進めていくことが求められている。
 私たちは、家庭教育の意義を見直し、家庭教育における家庭の果たす役割を改めて認識するとともに、家庭を取り巻く市、学校等、地域住民、地域活動団体及び事業者が家庭教育の自主性を尊重し、それぞれ適切な役割分担を果たしつつ、連携を深め、家庭教育を支えていくことが必要である。
 ここに、家庭教育に十分な支援がなされ、家庭教育が充実することにより、子供が健やかに成長することを願い、この条例を制定する。

(目的)
第1条 この条例は、家庭教育の支援に関し、基本理念及びその実現を図るための施策の基本となる事項を定め、市、保護者(親権を行う者又は未成年後見人をいう。以下同じ。)、
学校等、地域住民、地域活動団体及び事業者の役割を明らかにするとともに、家庭教育の
ための施策を総合的に推進することにより、保護者が親として学び、成長していくこと及
び子供が将来親になることについて学ぶことを促すとともに、子供の基本的な生活習慣の
確立並びに子供の自立心の育成及び心身の調和のとれた発達に寄与することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において「家庭教育」とは、保護者がその現に監護する子供に対して行う教育をいう。
2 この条例において「子供」とは、おおむね18歳以下の者をいう。
3 この条例において「学校等」とは、学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校(大学を除く。)、児童福祉法(昭和22年法律第164号)第39条第1項に規定する保育所及び就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律
(平成18年法律第77号)第2条第6項に規定する認定こども園をいう。
4 この条例において「地域住民」とは、本市の区域内に住所を有する者をいう。
5 この条例において「地域活動団体」とは、社会教育法(昭和24年法律第207号)第10
条に規定する社会教育関係団体、地方自治法(昭和22年法律第67号)第260条の2第1項に規定する地縁による団体その他地域的な共同活動を行う団体をいう。
6 この条例において「事業者」とは、法人及び事業を行う個人をいう。
(基本理念)
第3条 家庭教育への支援は、保護者が教育基本法(平成18年法律第120号)第10条第1項に定めるところにより、子供の教育について第一義的責任を有しているとの基本的認識の下に、家庭教育の自主性を尊重しつつ、市、学校等、地域住民、地域活動団体及び事業者が、それぞれの役割を果たすとともに、相互に協力しながら一体的に行うものとする。
(市の役割)
第4条 市は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、家庭教育を支援するために必要な体制を整備するとともに、家庭教育を支援するための施策を総合的に策定し、及び実施しなければならない。
2 市は、家庭教育を支援するための施策を策定し、これを実施しようとするときは、保護者、学校等、地域住民、地域活動団体及び事業者と連携して取り組むものとする。
3 市は、家庭教育を支援するための施策を策定し、これを実施しようとするときは、保護者及び子供の障害の有無、保護者の経済状況その他の家庭の状況に配慮するものとする。
(保護者の役割)
第5条 保護者は、基本理念にのっとり、子供に愛情をもって接し、子供の基本的な生活習慣の確立並びに子供の自立心の育成及び心身の調和のとれた発達を図るとともに、自らが親として成長していくよう努めるものとする。
(学校等の役割)
第6条 学校等は、基本理念にのっとり、保護者、地域住民及び地域活動団体と連携し、子供の基本的な生活習慣の確立並びに子供の自立心の育成及び心身の調和のとれた発達を
図るよう努めるものとする。
(地域住民及び地域活動団体の役割)
第7条 地域住民は、基本理念にのっとり、保護者及び学校等と連携し、家庭教育を行うため、良好な地域環境の整備に努めるとともに、地域における行事、歴史、伝統、文化及び技術の継承を通じ、子供の健全な育成に努めるものとする。
2 地域活動団体は、基本理念にのっとり、保護者及び学校等と連携し、家庭教育を支援するための取組を行うよう努めるものとする。
3 地域住民及び地域活動団体は、市が実施する家庭教育を支援するための施策に協力するよう努めるものとする。
(事業者の役割)
第8条 事業者は、基本理念にのっとり、家庭教育における保護者の役割の重要性に鑑み、
その雇用する者の健康に配慮し、職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするため
に必要な就業環境の整備に努めるものとする。
2 事業者は、市が実施する家庭教育を支援するための施策に協力するよう努めるものとする。
(親としての学びの支援)
第9条 市は、親としての学び(保護者が子供の発達段階に応じた家庭教育に関する知識、
子育ての知識その他の親として成長するために必要なことを学ぶことをいう。以下この条
及び第14条において同じ。)を支援するための学習の方法を研究し、その研究結果に基づく普及を図るものとする。
2 市は、親としての学びを支援するための学習の機会を提供するものとする。
3 市は、学校等及び地域活動団体が親としての学びを支援するための学習の機会を提供することを支援するものとする。
(親になるための学びの支援)
第10条 市は、親になるための学び(子供が家庭の役割、子育ての意義その他の将来親になるために必要なことについて学ぶことをいう。以下この条及び第14条において同じ。)
を支援するための学習の方法を研究し、その研究結果に基づく普及を図るものとする。
2 市は、親になるための学びを支援するための学習の機会を提供するものとする。
3 市は、学校等及び地域活動団体が親になるための学びを支援するための学習の機会を提供することを支援するものとする。
(人材の養成)
第11条 市は、家庭教育の支援を行う人材の養成に努めるとともに、家庭教育への支援に関する人材のネットワークの構築及びその拡充に努めるものとする。
(連携した活動の促進)
第12条 市は、保護者、学校等、地域住民及び地域活動団体が相互に連携して取り組む家庭教育を支援するための活動を促進するものとする。
(相談体制の整備及び充実)
第13条 市は、家庭教育に関する保護者の相談に応じるため、相談体制の整備及び充実、
相談窓口の周知その他の必要な施策を実施するものとする。
(広報及び啓発活動の充実)
第14条 市は、家庭教育に関する情報の収集、整理、分析及び提供を行うものとする。
2 市は、家庭教育における家庭の果たす役割について、市民の理解を深め、意識を高めるため、親としての学び及び親になるための学びの重要性に関する研修の実施その他の必要な啓発を行うものとする。
3 市は、家庭教育の支援に関する社会的気運を醸成するため、家庭教育の支援に積極的に取り組む団体の活動を促進するための取組の実施、家庭教育の支援に関する事例の紹介その他の必要な施策を実施するものとする。
   附 則
 この条例は、公布の日から施行する。