弁護士・金原徹雄のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します。

人権

日弁連人権擁護大会プレシンポジウム「“公文書”は誰のもの?~あらためて国民の知る権利を考える~」(8/23和歌山弁護士会)のご案内

 2017年7月29日配信(予定)のメルマガ金原.No.2888を転載します。
 
日弁連人権擁護大会プレシンポジウム「“公文書”は誰のもの?~あらためて国民の知る権利を考える~」(8/23和歌山弁護士会)のご案内
 
 日本弁護士連合会の年間最大行事は人権擁護大会であり、今年の第60回大会は、10月5日(木)・6日(金)の両日、滋賀県大津市(びわ湖大津プリンスホテル)で開催されます。
 日弁連人権擁護大会では、1日目に3つの分科会(シンポジウム)を開くことが慣例化しており、今年は以下の3つの分科会が予定されています。
 
第1分科会
「あらためて問う『犯罪被害者の権利』とは
~誰もが等しく充実した支援を受けられる社会へ~」
第2分科会
第3分科会
「琵琶湖がつなぐ人と生きものたち
~市民による生物多様性の保全と地域社会の実現をめざして~」

 そして、各地の単位弁護士会では、この人権擁護大会分科会で取り上げられるテーマに関わってプレシンポジウムを開催することも多いのですが(日弁連への共催申請が認められれば補助金が出るのではなかったかな)、今年は、私の所属する和歌山弁護士会でも、第2分科会「情報は誰のもの?~監視社会と情報公開を考える~」のプレシンポとして、「公文書」に焦点を当て、この問題の第一人者である三宅弘弁護士を講師にお迎えした講演会を開催することになりました(プレシンポと言っても、内容は講演会のようです)。
 森友学園問題や加計学園問題、自衛隊スーダン派遣部隊日報問題などに関心を持つ国民は、「公文書は誰のもの?」という疑問を持たざるを得ないでしょう。
 関心を持つ多くの市民の参加をお待ちしています。
 以下に、チラシ記載情報を転記します。

チラシから引用開始)
日弁連人権擁護大会プレシンポジウム
“公文書”はのもの?
~あらためて国民の知る権利を考える~
 
昨今、行政官庁の公文書の管理体制が問題となっています。行政が持っている情報や文書の開示は、国民の知る権利、民主主義の基礎をなすものです。この機会に、あらためて国民の知る権利とは何か、公文書とは一体誰のためのものなのかについて、一緒に考えてみませんか?
 
2017年8月23日(水)
開場:18:00 開演:18:30
和歌山県民文化会館小ホール
入場無料 
予約不要
 
第1部 基調講演
講師 獨協大学特任教授
    三宅 弘 弁護士(第二東京弁護士会・元日弁連副会長)
【講師略歴】
1983年 弁護士登録(第二東京弁護士会)
1997年、1998年
 東京都における情報公開制度のあり方に関する懇談会委員
1999年、2000年
 内閣府・高度情報通信社会推進本部個人情報保護検討部会委員
2003年~2006年
 内閣府・公文書の適切な管理、保存及び利用に関する懇談会委員
2003年~2011年
 独立行政法人国立公文書館有識者会議委員
2004年、2005年
 総務省・情報公開法の制度運営に関する検討会委員
2010年
 内閣府・行政透明化検討チーム座長代理
2015年4月~2016年3月
 第二東京弁護士会会長・日本弁護士連合会副会長
現在
 獨協大学特任教授(2004年~)
 内閣府・公文書管理委員会委員長代理
 
第2部 会場質問
 
【主催】和歌山弁護士会
【共催】日本弁護士連合会・近畿弁護士会連合会
【お問い合わせ】
〒640-8144 和歌山市四番丁5番地(和歌山弁護士会)
TEL:073-422-4580
FAX:073-436-5322
(引用終わり)


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「大学人と市民のつどい 自由が危ない―表現・思想・学問の自由」(7/9学者の会)の動画を視聴する

 2017年7月13日配信(予定)のメルマガ金原.No.2872を転載します。
 
「大学人と市民のつどい 自由が危ない―表現・思想・学問の自由」(7/9学者の会)の動画を視聴する
 
 自宅のパソコン(及びメールアカウント)が不調となり、現在、「メルマガ金原」の配信を一時休止中(7月6日以来)なのですが、休止前に、「なお、万一、「メルマガ金原」が届かなくなりましたら、復旧までの間は、ブログ版でお読み下さるようにお願いします。」とメルマガ読者にお願いしていましたので、休止以降、ブログへのアクセスが少しは増えるかと思いきや、アクセス数に有意な変化は認められず、「ブログにアクセスしてまで読もうという読者はほとんどいなかった」という事実を突き付けられ、いささかがっかりというところです。まあ、皆さん忙しいから仕方がないですけどね。ということで、「メルマガ金原」の配信を休止してからも、メルマガの通し番号は付番し続けているものの、これもいつまで続けるか思案中です。メルマガ配信を休止してから、確実に1時間は睡眠時間が増えましたので、もしかしたらこのまま休止状態が永続するかもしれません。
 
 というような力の抜ける話題はさておき、しばらくシンポや講演の動画をチェックするのを怠っている間に、だいぶ重要な動画がたまっていました。
 今日は、そのうち、「安全保障関連法に反対する学者の会」が7月9日(日)に開催した「大学人と市民のつどい 自由が危ない―表現・思想・学問の自由」(於:早稲田大学8号館106教室)をご紹介することにします。複数の動画が見つかりますが、以下には、「学者の会」ホームページにアップされていた公式動画をご紹介します。
 「大学人と市民のつどい」とあるとおり、前半では、4人の著名な学者の皆さんが20分ずつ、ご自身の専門分野から重要テーマについて手短かに解説をされ、後半では、様々な立場からの意見表明が行われています。
 長時間の講演ではありませんから、物足りなく思う向きがあるかもしれませんが、そのような方は、それぞれに発言者の長目の講演動画を探すなどの努力をすれば良く、リレートークにはリレートークの良さがあります。ということで、視聴の便宜のため、各登壇者の発言についての目安時間を記載しておきますので、ご活用ください。
 
大学人と市民のつどい自由が危ない—表現・思想・学問の自由【前半】(1時間37分)

1分~ 開会挨拶 広渡清吾氏(東京大学名誉教授)
リレートーク
8分~ 中野晃一氏(上智大学教授)「現代政治と市民の自由」
30分~ 岡野八代氏(同志社大学教授)「フランスの今から見えること」
50分~ 高山佳奈子氏(京都大学教授)「共謀罪問題の本質」
1時間17分~ 青井未帆氏(学習院大学教授)「安倍改憲の危険性」
 
大学人と市民のつどい自由が危ない—表現・思想・学問の自由【後半】(1時間19分)

冒頭~ 吉岡 忍氏(日本ペンクラブ会長、作家)
15分~ 金平茂紀氏(ジャーナリスト)
32分~ 馬場ゆきの氏(大学3年)「未来のための公共」
43分~ 永田爽真氏(大学3年)「エキタス」
51分~ 長尾詩子氏(弁護士)「安全保障関連法に反対するママの会」
1時間02分~ 小原隆治氏(安全保障関連法の廃止を求める早稲田大学有志の会)
1時間10分~ 閉会挨拶 佐藤 学氏(学習院大学教授、東京大学名誉教授)

紀南ピースフェスタ2017~つながるいのちのために~(8月5日・6日)のご案内

 2017年7月8日配信(予定)のメルマガ金原No.2867を転載します。
 
紀南ピースフェスタ2017~つながるいのちのために~(8月5日・6日)のご案内
 
 田辺・西牟婁地方で、日頃から平和、環境、人権などに取り組んでいる諸団体が実行委員会を結成し、年によって、憲法記念日の頃であったり、夏休み中であったりと、開催時期は変わりつつ、開催を続けて今年で第8回目となる「紀南ピースフェスタ~つながるいのちのために~」。
 和歌山市方面での行事と日程がかぶることも多く、過去、魅力的な企画に参加できずに残念な思いをすることも度々でしたが、さて今年は?と思っていたところ、九条の会・わかやまホームページ(県内の取り組み)に今年のチラシが掲載されていました。
 いつもは6ページもあるような情報満載(過多?)のリーフレットでしたが、今年は両面印刷のチラシ1枚に情報を凝縮するという作戦のようです。チラシ記載のテキスト(文字情報)が抽出されているのがありがたく、「九条の会・わかやま」ホームページから全文転載させていただきましょう。さて、今年の「紀南ピースフェスタ」の中身やいかに?
 
チラシ文字情報から引用開始)
[オモテ面の文字情報]
2017
紀南ピースフェスタ
つながるいのちのために
 
会場:紀南文化会館 1階 展示ホール ほか
    (和歌山県田辺市新屋敷町1番地)
日時:8/5(土)12:00~17:00
      展示ホール~16:00・研修室~17:00
     8/6(日)10:00~15:00
入場無料
 
開催にあたって
 「平和」、「持続可能な地球」、「人権」、「環境」、「安全な食」、「フェアトレード」などをキーワードに紀南ピースフェスタを開催してきて今年で8回目となります。広がる一方の経済格差、脅かされる内心の自由、地方に押し付けられる基地と原発・・・という状況の中で、ピースフェスタが、わたし達のいのちと生活を守り、未来につなげていくための自由な井戸端会議として、また、アクションを起こしていく場となっていくことを願っています。皆さまのご来場を心よりお待ちしています。
 
オープニング Opening Concert
「阿部ひろ江ミニコンサート」
5日(土)12:00~12:25
1階展示ホール
 
演劇 Special Stage
「わたしたちのマララに」
出演:神島高校演劇部
5日(土)15:40開場 16:00~17:00上演
4階研修室 入場無料
 
こどもと一緒に楽しめる体験ブースやカフェ、クラフトコーナーなど盛りたくさん!
詳しくはウラ面へ
 
主催:紀南ピースフェスタ2017実行委員会
イベント情報・詳細の確認はこちら http://blog.murablo.jp/peace2011/
問い合わせ:事務局 
津村光男 TEL 090-5099-3753
木川田道子 TEL 090-7490-5032(20時以降)
 
 
[ウラ面の文字情報]
紀南ピースフェスタ2017 プログラム
8/5(土)
1階展示ホール
12:00 オープニング「阿部ひろ江ミニコンサート」
 飾らない詩、大地に根差した癒しの歌声を聴いてください。
 プロフィール:養護(支援)学校教師時代より平和、人との出会い、環境などをテーマに曲を作りギターで歌う。ベラルーシ、福島などの被災地やドヤ街、途上国などに精力的に歌いに行っている。CD「満月」「平和を願う心の歌」など。
12 :35 憲法まちかど対話「平和憲法が危ない!!~あなたの思いを話してみませんか」 (紀南9条交流ネット)
13:55 ヨツシーのバルーンアート(ヨッシーオカモト)
14:30 うたごえ広場(田辺・9条の会)
 
4階研修室
16:00 演劇上演「わたしたちのマララに」
 出演 神島高校演劇部 15:40開場・入場無料
 2014年17歳で「ノーベル平和賞」を受賞したマララ・エスフザイさんの物語を神島高校演劇部が朗読劇にしました。教育の大切さと武力の愚かさを訴えるマララさん。詩の朗読と合わせて、平和を守るために本当に必要なことについて、高校生と一緒に考えてみませんか。
 
8/6(日)
1階展示ホール
10:05 人形劇(9条ママnetキュッと)
10:25 筆の会しおんによる演奏
10:50 阿部ひろ江 歌とトーク
11:50  「ハツピィアイランドはどこ?今、福島を伝えたい」        福島の現状や紀南での保養キャンプの取り組みを聞き、わたし達にできることを一緒に考えたいと思います。(南紀おたすけ隊/福島=田辺サマーキャンプ実行委員会)
13:00 手話コーラス(若草&スマイル)
13:20 ヨッシーのバルーンアート(ヨッシーオカモト)
14:30 クロージングコンサート
 
4階研修室
13:00 沖縄の話を聞く会
 
*時間帯によってパソコン要約筆記friends9紀南支部による情報保障が付きます。
*出店・出展内容、ステージ演目や上演時間は変更する場合がありますのでご了承ください。
 
ピ-スフェスタ茶席
 茶券(¥300)は当日受付で販売
 
アート&クラフトコーナー
 紀南ゆかりの作家さんたちによる作品展示
 
Foods・カフェコーナー
 
ビデオブース
『いのちの森 高江』ほか。マスコミでは取り上げられることの少ないドキュメンタリー作品などを観て学びます。上映時間など詳しいご案内は、ブログでご確認ください。
 
出店・出展・体験ブース(一部有料)
 
風船のワークショップ
 ヨッシーオカモト
 
絵手紙展示・絵手紙体験
 新日本婦人の会
 
核廃絶に関するパネル展
 平和委員会
 
自然エネルギーや福島の子ども遠のための支援活動を紹介する展示
 つゆくさと大地の会
 
フリーペーパー紹介と配布
 Y’s Factory
 
フィリピン支援等の手づくりグッズ販売
 カトリック紀伊田辺教会
 
交流の揚
 和のサロン
 
地球温暖化防止に関するパネル展示
 エコネット紀南
 
ライティングマラソン
 アムネスティ田辺よんろく
 
沖縄発“オキネシア”お菓子販売
 和歌山ネーネーズ+田辺聖公会有志
 
オーガニックフード
 K's gardeN
 
フェアトレードの製品販売とバングラディッシュの伝統刺繍「ノクシカタ」体験
 「フェアトレード&エコロジーショップ ぴーす」と「世界と暮らしをつなぐハナソラ」(5日のみ)
 
子どもの工作ワークショップ、リサイクル品、お菓子の販売など
 南紀おたすけ隊 
 
その他の皆さん
(引用終わり) 
 
 今年も盛り沢山な「紀南ピースフェスタ」。特に、1日目の神島高校演劇部によるリーディング公演(のようですね)「わたしたちのマララに」は大いに興味がわきます。
 8月の第一土曜日は、和歌山市で紀州おどりがあり、2005年以来「九条連」が連続出場してきましたので、普通に考えれば「8月5日は残念ながら田辺にうかがえません。ご盛会をお祈りします」ということになるのですが、今年は「普通でない事態」が進行しており、果たして「九条連」が8月5日に紀州おどりに出場するかは流動的です。さて、どうなることやら。
 いずれにしても、紀南ピースフェスタ2017が、例年以上の盛り上がりとなることを心よりお祈りします。


紀南ピースフェスタ2017紀南ピースフェスタ2017裏

「リスペクトの政治をつくる大阪弁護士有志の会」設立記念集会(6/2)@ドーンセンター(記念講演:中野晃一氏)を視聴する

 本日(2017年6月3日)配信した「メルマガ金原No.2832」を転載します。

「リスペクトの政治をつくる大阪弁護士有志の会」設立記念集会(6/2)@ドーンセンター(記念講演:
中野晃一氏)を視聴する

 今年の4月28日(金)、青年法律家協会和歌山支部の「憲法を考える夕べ」に、上智大学の中野晃一教授をお招きし、「市民の力で立憲民主主義を創る~他者性を踏まえた連帯の可能性~」と題した講演をお願いしたことは、既にこのメルマガ(ブログ)で、講演動画を含めてご紹介しているところです(
中野晃一氏講演会「市民の力で立憲民主主義を創る~他者性を踏まえた連帯の可能性~」@和歌山市(4/28)の動画紹介/2017年4月28日)。

 「市民連合」呼びかけ人、「立憲デモクラシーの会」呼びかけ人である中野先生は、4月からは、上智大学国際教養学部長という要職も担われることとなる中、全国各地を東奔西走、今日(6月3日)お昼過ぎの中野先生のFacebookへの投稿を読むと、間もなく長年の歴史に幕を下ろす「鎌倉市民アカデミア」主催による「特別市民講座 中野晃一教授が語る日本の未来」の舞台上の横看板の写真とともに、「9日連続
講演のグランドフィナーレ、ぜーはー。」というコメントが。いやはや、お疲れ様でした。
 
 その中野晃一先生の「9日連続講演の8日目」だったのが、昨日(6月2日)午後6時半から大阪のドーンセンターで開かれた「リスペクトの政治をつくる大阪弁護士有志の会」設立記念集会「いま、『個人
の尊厳』を考える」での記念講演でした。
 IWJ大阪によってTwitcasting中継が行われ、全編のアーカイブが視聴できますのでご紹介します。音声レベルが低めなので聴き取りにくいとは思いますが、耳を澄まして聴き入る価値はあると思います。

いま、「個人の尊厳」を考える~リスペクトの政治をつくる大阪弁護士有志の会設立記念集会~2017.6.2
冒頭~ 司会
1分~ 主催者挨拶 大川一夫氏(弁護士、リスペクトの政治をつくる大阪弁護士有志の会呼びかけ人)
6分~ 講演 中野晃一氏(上智大学国際教養学部長・教授、安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める
市民連合)
1時間06分~ 質疑応答
1時間35分~ 立憲野党各党からの来賓挨拶
(1)辻元清美氏(衆議院議員、民進党)
(2)清水忠史氏(衆議院議員、日本共産党)
(3)服部良一氏(社会民主党大阪府連代表、元衆議院議員)
(4)渡辺義彦氏(自由党大阪府連代表、元衆議院議員)
2時間07分~ 応援スピーチ
(1)湊隆介氏(安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める関西市民連合)
(2)内海洋一氏(みんなで選挙☆ミナセン大阪)
2時間16分~ 今後の取り組み 弘川欣絵(ひろかわ・よしえ)氏(弁護士、リスペクトの政治をつく
る大阪弁護士有志の会呼びかけ人)
2時間20分~ 閉会挨拶 石田法子氏(弁護士、リスペクトの政治をつくる大阪弁護士有志の会呼びかけ人)

※別動画 
20160602 今「個人の尊厳」を考える。中野晃一氏講演(2時間31分)
 

 なお、「リスペクトの政治をつくる大阪弁護士有志の会」が、今年の5月3日に公表した「個人の尊厳と平和のための設立宣言」を、同会公式Facebookから全文引用します。

(引用開始)
              個人の尊厳と平和のための設立宣言

                    リスペクトの政治をつくる大阪弁護士有志の会

 私たち弁護士は、憲法や法律によって依頼者の権利や利益を守る仕事をしています。たとえ、法律だけ
を使っていても、背後にはいつも憲法があります。
 もしも、憲法に反する法律が許されるなら、私たちは依頼者の権利や利益を守ることができません。も
しも、憲法が権力の濫用を止められない代物になるなら、もう私たちの打つ手は無くなるでしょう。
 主権者でもある私たちは、民主主義のプロセスにおいても、法の支配に対する理解と法的知識を用いて、個人の権利や利益を守る活動をしていきたいと思います。それも、弁護士としての大事や役割だと思い
ます。
 私たちは、自分の思うことを言い、知りたいことを学び、政治に参加し、平和を与え/与えられる政治
をつくるために、特定秘密保護法、安保法制、共謀罪法案の廃止を目指します。
 私たちは、法の支配の下、全ての人が社会から愛される存在であることを確認し、自分らしく幸せに生
きていくために、国家主義的な憲法改正の阻止を目指します。
 私たちは、これら「個人の尊厳」(憲法13条)が守られる政治を「リスペクトの政治」と呼び、さらにそのプロセスにおいてお互いの立場や考えを尊重し合いながら民主主義を実践できる政治を「リスペクトの政治」と呼びたいと思います。

 私たちは、個人の尊厳と平和のため、「リスペクトの政治をつくる大阪弁護士有志の会」を設立します。

                              
2017年5月3日
(引用終わり)
 

(付録)
『希求』 作詞・作曲:長野たかし 演奏:長野たかし&森川あやこ
 

国連「平和への権利宣言」(2016年12月19日総会にて採択)を読む

 今晩(2017年2月22日)配信した「メルマガ金原No.2731」を転載します。

国連「平和への権利宣言」(2016年12月19日総会にて採択)を読む

 日本国憲法前文は4つの段落で構成されていますが、そのうちの第2段落は、「恒久の平和を念願」するとともに、「全世界の国民が」「平和のうちに生存する権利を有することを確認する」と宣言しています。

 日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
 
 日本国憲法施行の翌年(1948年)、第3回国際連合総会は、「世界人権宣言」を採択し、世界人権法発展の画期をなしましたが、そこに「平和のうちに生存する権利」を認めた明確な規定はありませんでした。
 「世界人権宣言」は、その後、1966年の第21回国連総会で、2つの国際人権規約(いわゆる社会権規約自由権規約)として採択され、締約国に法的義務が課されるとになりましたが、「平和のうちに生存する権利」あるいは「平和への権利」が保障されることはなく、その実現は、2016年12月19日、「平和への権利宣言」(Declaration on the Right to Peace)が国連総会全体会合で採択されるのを待たねばなりませんでした。
 昨年12月の国連総会での採択に際しては、賛否が分かれ、賛成多数での採択となりました。2月19日付の東京新聞が報じたところによると、主な賛成国、反対国、棄権国は以下のとおりだったとのことです。
 
賛成(131カ国) 
 中国、ロシア、インド、ブラジル、キューバ、インドネシア、北朝鮮、シリアなど
反対(34カ国)
 米国、英国、フランス、ドイツ、日本、カナダ、スペイン、韓国など
棄権(19カ国)
 イタリア、トルコ、ポルトガルなど
 
 東京新聞の記事の一部を引用します。

東京新聞 2017年2月19日 朝刊
「平和に生きる権利」日本、採決反対 戦争を「人権侵害」と反対する根拠 国連総会で宣言

(抜粋引用開始)
 
平和に生きる権利をすべての人に認める「平和への権利宣言」が国連総会で採択された。国家が関与する戦争や紛争に、個人が「人権侵害」と反対できる根拠となる宣言。日本の非政府組織(NGO)も深く関与し、日本国憲法の理念も反映された。NGOは宣言を具体化する国際条約をつくるよう各国に働きかけていく。(清水俊介)
 日本のNGO「平和への権利国際キャンペーン・日本実行委員会」によると、きっかけは二〇〇三年のイラク戦争。多くの市民が巻き込まれたことをスペインのNGOが疑問視し「平和に対する人権規定があれば戦争を止められたのでは」と動き始めた。賛同が広がり、NGOも出席できる国連人権理事会での議論を経て、昨年十二月の国連総会で宣言を採択した。
(略)
 立案段階で日本実行委は「全世界の国民が、平和のうちに生存する権利を有する」との日本国憲法前文を伝え、宣言に生かされる形に。憲法施行七十年となる今年、各国のNGOとともに、国際条約をつくって批准するよう働き掛けを強めていきたい考え。
 ただ、国連総会では、米英などイラク戦争の有志連合の多くが反対。日本も反対に回った。日本外務省人権人道課の担当者は「理念は賛成だが、各国で意見が一致しておらず議論が熟していない」と説明する。
(引用終わり)
 
 東京新聞も伝えるとおり、このたびの国連総会における「平和への権利宣言」の採択に至る道のりでは、世界各国のNGOが主導的な役割を演じ、我が国においても、「平和への権利国際キャンペーン・日本実行委員会」が中心となって活発な活動を行ってきました。今後は、さらに「宣言から条約へ」を目指していくとのことです。

 私としては、「平和への権利宣言」の採択に勇気付けられる一方、欧米諸国の「反対」の真の理由が知りたいという気持ちもぬぐえません。日本が「反対」した理由?別に外務省に教えてもらわなくても、「反対」している諸国を見れば推測はつこうというものです。

 「平和への権利宣言」に対してどのような評価をするにしても、この宣言の採択に至った経緯を知り、さらに何よりも「宣言」そのものを熟読するのが前提であることはいうまでもありません。
 そのように考え、「平和への権利宣言」を日本語で読めるサイトを探したのですが、やはり「平和への権利国際キャンペーン」ホームページに載っている(仮訳)しかないようです。
 そこで、同キャンペーン・日本実行委員会事務局長の笹本潤弁護士のご了解をいただき、同キャンペーン・ホームページの中の「平和への権利とは」というコーナーに掲載された経過と(仮訳)のほぼ全文を転載させていただくことにしました。
 私も、じっくりと読み、「平和への権利」について考えをめぐらしたいと思います。
 皆さまも是非ご一読ください。

平和への権利国際キャンペーン 平和への権利とは
(引用開始)
平和への権利のあゆみ
はじまりは、戦争で“生きること”を奪われた人々を守りたい想い
スペイン市民から成る団体(スペイン国際人権法協会)が、2005年、ひとつの権利を国際人権として認めてもらうために運動を始めました。この権利こそが平和への権利です。
2003年からイラク戦争が国連の承認を得ぬまま始められました。
“もしこのときに、世界に「平和への権利」があれば、戦争を止め、“生きること”で苦しむ人々を救えるのではないか“
 
市民一人ひとりが導いた平和への権利
スペインからはじまった平和のための一滴は、世界中のNGOを巻き込み大きな波へと成長を遂げます。
世界各地で国際NGO会議を開き、専門家や市民の声を集め世界の市民による平和への声として宣言を出しました。
2006年スペインでは、「ルアルカ宣言」の採択を機に、「ビルバオ宣言」、「バルセロナ宣言」の採択へと継きました。そして、アジア、アフリカ、南北アメリカでも市民一人ひとりがNGOとして30回以上の議論を経て、2010年12月には、世界900ものNGOが集結し、多くの専門家や各NGOの平和への考えを人権として反映させた「サンティアゴ宣言」が採択されました。
 
平和を人権として謳うサンティアゴ宣言
サンティアゴ宣言は、「平和」の意味の多義性を人権という視点から実現させようとしています。
それは、戦争や軍事的行動の否定だけでなく、貧困などの構造的暴力や差別や偏見を生みだす文化的暴力の否定も含まれています。
 
市民から国連へ「平和への権利」のお届け物
NGOによってつくられた「サンティアゴ宣言」が2011年に正式に国連に提出されたことにより、平和への権利は、議論の場を国連に移しました。平和への権利を国連人権理事会で国際宣言として採択するため、サンティアゴ宣言は国連の諮問委員会草案として「国連宣言案を検討するための作業部会」で、2013年から2015年にかけてNGOと政府によって議論がなされました。
 
平和への権利宣言の誕生へ
2016年7月1日、平和への権利宣言がキューバ政府の提案により、国連人権理事会32会期で正式に採択され、国連総会に提出されました、これには、世界中のNGOが驚かされました。そして遂に同年12月、国連総会31会期において平和への権利は国際宣言として採択されました。
 
これからの平和への権利宣言――あなたにできること
平和への権利は、国際宣言として採択されましたが、一人ひとりの平和を権利として保障するためにはここからが正念場です。国際宣言が国際条約として各国に批准され、平和が人権として市民の手に戻ってくるためにも、あなたの協力が必要です。平和への権利がより良い人権として、平和のうちに生きることを私たち自身の手で実現していきましょう。署名にご協力を宜しくお願いします。

   
平和への権利宣言(仮訳)

国連総会は、

国連憲章の目的及び原則に導かれ、

世界人権宣言、市民的及び政治的権利に関する国際規約、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約、ウィーン宣言及び行動計画を想起し、

また、発展の権利に関する宣言、持続可能な開発目標を含む国連ミレニアム宣言、2005年世界サミット成果文書をも想起し、

さらに、平和的生存のための社会の準備に関する宣言、平和に対する人民の権利宣言及び平和の文化に関する宣言と行動計画、かつ、この宣言に関連する他の国際文書を想起し、

植民地独立付与宣言を想起し、

諸国家は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならないという原則、諸国家は、その国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決しなければならないという原則、国連憲章に従って、いずれかの国の国内管轄権内にある事項にも干渉しない義務、国連憲章に従って、協力し合う諸国家の義務、人民の同権及び自決の原則、諸国家の主権平等の原則及び諸国家は、国連憲章に従って負っている義務を誠実に履行しなければならないという原則を、国連憲章に従った諸国間の友好関係及び協力についての国際法の原則に関する宣言が、厳粛に宣言したことを想起し、

その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、又は、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎み、かつ、その国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決するための、国連憲章に掲げられているすべての加盟国の義務を再確認し、

平和の文化の十分な発展は、外国の支配又は占領という植民地的あるいは他の形態のもとで生きる人々を含む、国連憲章に掲げられ、かつ、国際人権規約、並びに、1960年12月14日国際連合総会決議1514(XV)に盛り込まれている「植民地及びその人民の独立を認める宣言」に具体化されている自己決定に対するすべての人民の権利の実現と一体的に結びついていること(integrally linked)を確認し、

1970年10月24日国際連合総会決議2625(XXV)に具体化されている「国際連合憲章に従った諸国間の友好関係及び協力についての国際法の原則に関する宣言」に規定されているように、国又は領域の国民的統一及び領土保全の部分的又は全体的破壊に対して、又はその政治的独立に対して行われるいかなる試みも、国際連合憲章の目的及び原則に矛盾することを確信して、

平和的手段による紛争又は争議の解決の重要性を認め、

テロリズムの行為、方法及び実行が、国際連合の目的及び原則の重大な侵害を引き起こすものであり、かつ、国際の平和及び安全に対して脅威となり、諸国の友好関係を害し、諸国の領土保全及び安全を脅かし、国際協力を妨げ、人権、基本的自由及び社会の民主的基盤の破壊を目的とするものであることを認め、国際テロリズムに関する廃絶措置宣言を想起し、テロリズムのいかなる行為も、行われたとき及び行った者のいかんを問わず、犯罪であり、かつ、正当化することのできないものであることを再確認し、

テロリズムとの闘いにおけるあらゆる方途は、国連憲章に掲げられているものと同様に、国際人権法、難民法及び国際人道法を含む、国際法のもとでの義務に従わなければならないことを強調し、

テロリズムにかかわる国際条約の当事国となっていないすべての諸国に、当事国になることを優先事項として考慮することを要請し、

万人のための人権促進と保護及び法の支配は、テロリズムとの闘いに必要不可欠であることを再確認し、効果的なテロ対策措置と人権の保護は矛盾する目標ではなく、補完及び相互補強であることを認め、

戦争の惨害から将来の世代を救い、基本的人権に関する信念をあらためて確認し、一層大きな自由の中で社会的進歩と生活水準とを促進し、かつ、寛容を実行し、また、善良な隣人として互いに平和に生活するため国連憲章前文に掲げられているとおり連合国の人民の決定を再確認し、

平和と安全、開発と人権は、国連システムの柱であり、集団的安全と福祉のための基盤であることを想起し、開発、平和及び安全、人権は関連しあうものであり、相互に補強するものであること認め、

平和とは、紛争のない状態だけでなく、対話が奨励され紛争が相互理解及び相互協力の精神で解決される、また、社会経済的発展が確保される積極的で動的な参加型プロセスを追求するものであることを認め、

人類社会すべての構成員の固有の尊厳と平等で譲ることのできない権利とを承認することは、世界における自由、正義及び平和の基礎であることを想起し、平和が人間の固有の尊厳に由来する不可譲の権利の完全な享受により促進されることを認め、

すべての人は、世界人権宣言に掲げる権利及び自由が完全に実現される社会的及び国際的秩序に対する権利を有することをも想起し、

さらに、貧困を根絶し、万人のための持続的経済成長、持続可能な開発及び世界の繁栄を促進する世界的な取り組み、かつ、各国内及び各国間の不平等を是正する必要性を想起し、

国連憲章の目的及び原則に従った武力紛争予防、かつ、世界中の人民が直面する相互連関的な安全及び開発課題に効果的に対処する手段として武力紛争予防の文化を促進する取り組みの重要性を想起し、

国の十分かつ完全な開発、世界の福祉及び平和の目的は、あらゆる分野における男性と対等な条件での最大限の女性参加を追求することをも想起し、

戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならないことを再確認し、平和的な手段による争議や紛争を解決する重要性を想起し、

人権及び宗教と信念の多様性の尊重を基礎とし、あらゆるレベルで寛容及び平和の文化を促進する世界対話を発展させる国際的な努力を強化する必要性を想起し、

紛争後の状況における国家オーナーシップ原則を基礎とした開発援助及び能力強化は、携わるすべての者を含む社会復帰、社会再統合及び和解の過程を通じて平和を回復すべきであることをも想起し、かつ、平和及び安全の地球的規模の追求のために国際連合の平和創造、平和維持及び平和構築活動の重要性を認め、

さらに、平和の文化及び正義、自由、平和のための人類の教育とは、人間の尊厳に欠くことのできないものであり、かつ、すべての国民が相互の援助及び相互の関心の精神を持って果たされなければならない義務であることを想起し、

平和の文化は、平和の文化に関する宣言で確認されるように、価値観、考え、行動の伝統及び様式、かつ、生き方から成る一連のものであり、このすべてのことは、平和への寄与を可能にする国内的及び国際的環境によって育まれるべきであることを再確認し、

平和及び安全の促進に貢献する価値観として緩和及び寛容の重要性を認め、

市民社会組織が、強化された平和の文化をもたらし得ることと同様に、平和構築及び平和維持をもたらし得るという重要な貢献を認め、

諸国家、国際連合及び他の関連ある国際機構が、平和の文化を強化し、かつ、訓練、指導、教育を通じて人権意識を保つことを目的としたプログラムへの資源を分配するための必要性を強調し、

さらに、平和の文化の促進に対する人権教育・研修に関する国際宣言の貢献の重要性も強調し、

相互の信頼と理解を根底にして、文化の多様性、寛容、対話、協力を重んじることが世界の平和と安全を保証する最善策のひとつであることを想起し、

平和を可能にし、平和の文化に貢献する美徳と同様に、寛容とは、我々の世界的文化、表現形態及び人間の在り方の豊かな多様性の尊重、受容及び理解であることを想起し、

さらに、法の支配を基礎とした社会全体及び民主的枠組みのなかでの発展における不可分なものとして、民族的または種族的、宗教的及び言語少数者に属する人々の権利の継続的な促進及び実現は、人民及び諸国家間の友好、協調、平和を強化することに対する貢献であろうことを想起し、

国家、地域及び国際レベルで戦略、計画、政策及び特別な積極的措置を含む適切な立法を立案し、促進し、実施し、平等な社会発展を進め、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連ある不寛容の犠牲者すべての市民、政治、経済、社会、文化的権利を実現することを想起し、

人種主義、人種差別、外国人排斥及び関連ある不寛容は、それが人種主義及び人種差別に等しい場合、人民と諸国の間の友好で平和な関係の障害となり、武力紛争を含む多くの国内紛争や国際紛争の根因となることを認め、

平和を推進する手段として、全人類、世界の人民及び諸国の間の寛容、対話、協力及び連帯を実践することが非常に重要であると認めることにより、自らをこれらの活動へと導くよう、そのためにも、現在及び将来の世代の双方が、将来の世代を戦争の惨害から免かれるという最高の願望で、平和のうちに共に生きることを学ぶことを現在の世代が確保すべきであり、関係者らに厳粛に招請し、

以下のとおり宣言する。
 
Article 1
Everyone has the right to enjoy peace such that all human rights are promoted and protected and development is fully realized.

第1条
すべての人は、すべての人権が促進及び保障され、並びに、発展が十分に実現されるような平和を享受する権利を有する。

Article 2
States should respect, implement and promote equality and non-discrimination, justice and the rule of law and guarantee freedom from fear and want as a means to build peace within and between societies.

第2条
国家は、平等及び無差別、正義及び法の支配を尊重、実施及び促進し、社会内及び社会間の平和を構築する手段として、恐怖と欠乏からの自由を保障すべきである。
 
Article 3
States, the United Nations and specialized agencies should take appropriate sustainable measures to implement the present Declaration, in particular the United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization. International, regional, national and local organizations and civil society are encouraged to support and assist in the implementation of the present Declaration.

第3条
国家、国際連合及び専門機関、特に国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)は、この宣言を実施するために適切で持続可能な手段を取るべきである。国際機関、地域機関、国家機関、地方機関及び市民社会は、この宣言の実施において支援し、援助することを奨励される。
 
Article 4
International and national institutions of education for peace shall be promoted in order to strengthen among all human beings the spirit of tolerance, dialogue, cooperation and solidarity. To this end, the University for Peace should contribute to the great universal task of educating for peace by engaging in teaching, research, post-graduate training and dissemination of knowledge.

第4条
平和のための教育の国際及び国家機関は、寛容、対話、協力及び連帯の精神をすべての人間の間で強化するために促進されるものである。このため平和大学は、教育、研究、卒後研修及び知識の普及に取り組むことにより、平和のために教育するという重大で普遍的な任務に貢献すべきである。
 
Article 5
Nothing in the present Declaration shall be construed as being contrary to the purposes and principles of the United Nations. The provisions included in the present Declaration are to be understood in line with the Charter of the United Nations, the Universal Declaration of Human Rights and relevant international and regional instruments ratified by States.

第5条
この宣言のいかなる内容も国連の目的及び原則に反すると解釈してはならないものとする。この宣言の諸規定は、国連憲章、世界人権宣言及び諸国によって批准される関係する国際及び地域文書に沿って理解される。

​​(翻訳:本庄未佳)
(引用終わり)

シンポジウム「障害者差別解消法と弁護士の役割」(3/18@和歌山ビッグ愛/和歌山弁護士会主催)のご案内

 今晩(2017年2月20日)配信した「メルマガ金原No.2729」を転載します。

シンポジウム「障害者差別解消法と弁護士の役割」(3/18@和歌山ビッグ愛/和歌山弁護士会主催)のご案内
 
 年度末の1~3月に集中する傾向のある和歌山弁護士会主催シンポジウムですが(憲法問題など、日弁連が重点活動分野に指定して共催分担金を出してくれる緊急企画は別です)、今年度の掉尾を飾るのは、高齢者・障害者支援センター運営委員会が準備してきたシンポジウム「障害者差別解消法と弁護士の役割」です。
 同委員会が3月にシンポを計画しているという話はだいぶ以前から耳に入っていましたが、昨日、長岡健太郎委員長が、近弁連管内の弁護士が登録している某MLに、チラシのデータなどを添付して内容を紹介した上で、「拡散歓迎です。」「盛りだくさんの内容です。」「3/18は和歌山ビッグ愛へ!」「皆様ぜひご予定ください!」という熱烈参加要請の投稿を行っているのに気付き、それで初めてシンポの内容を知りました。

 以下に、チラシ記載情報を転記しておきますが、委員長自身が「盛りだくさん」と言うとおり、基調講演が2人(岡山理科大学、和歌山大学)、基調報告が3人(和歌山県、和歌山市、障害者本人)、それにパネルディスカッション(明石市、沖縄県ほか)を行い、トータル4時間を予定するというのですから、そのゲストの多彩さと併せて、「これは近弁連(近畿弁護士会連合会)のシンポか?」と見まがうばかりであり、担当委員会の気合いの入り方も尋常ではないようです。

 ということで、私も和歌山弁護士会の会員として、シンポに参加するだけではなく、広報に一役買うくらいの協力はしなければならないだろうと思い、まだ会員に対してチラシを添付した参加要請書も届いていないにもかかわらず、弁護士会事務局からチラシを1枚入手して本稿を書いているという次第です。

 なお、障害者差別解消法については、2015年12月17日に、私のメルマガ(ブログ)で「障害者差別解消法(2016年4月1日施行)を学習するための資料のご紹介」という記事を書き、基礎的な法令等にはリンクしておきましたので、ご参照いただければと思います。
 ここでは、障害者差別解消法そのものにだけリンクしておきます。

 それでは、チラシに記載された内容を転記します。

チラシから引用開始)

シンポジウム 
障害者差別解消法と弁護士の役割

2017年3月18日(土)
午後0時30分~午後4時30分(午後0時 開場)
和歌山ビッグ愛 1F 大ホール

入場無料・予約不要
手話通訳、要約筆記、ユーストリーム中継あり

 平成28年4月1日、障害者差別解消法が施行され、和歌山市では障害者差別解消推進条例も施行されました。
 本シンポジウムでは、何が「差別」に当たるのか、「合理的配慮」とは何かについて、具体的事例も交えながら理解を深めるとともに、障害当事者、市民、行政、そして弁護士・社会福祉士等の専門職が広く連携して、障害の有無を問わず共に暮らせる社会を作っていくためにどのようなことが必要か、そのための具体的な相談体制や解決のための仕組みについて考えていきたいと思います。

基調講演
①川島 聡氏(岡山理科大学 総合情報学部 社会情報学科 准教授)
 「合理的配慮とは何か」
②西倉実季氏(和歌山大学 教育学部 准教授)
 「合理的配慮をめぐるプライバシーの問題」

基調報告
①和歌山県の取組状況(和歌山県障害福祉 課長 中林憲一氏)
②和歌山市の取組状況(和歌山市障害者支援課 課長 坂下雅朗氏)
③和歌山での具体的事例を元に(石田雅俊氏=和歌山市内の障害当事者)

パネルディスカッション
【コーディネーター】
長岡健太郎(和歌山弁護士会高齢者・障害者支援センター運営委員会委員長)
【登壇者】
石田雅俊氏
山田 賢氏(明石市 福祉部 福祉総務課 障害者施策担当係長)
上間清香氏(沖縄県 広域相談専門員)
森脇大介(弁護士・和歌山弁護士会)

主催 和歌山弁護士会(担当:高齢者・障害者支援センター運営委員会)
共催 障害と人権全国弁護士ネット
後援 和歌山県、和歌山市、和歌山県社会福祉士会
お問い合わせ 和歌山弁護士会 TEL:073-422-4580 FAX :073-436-5322
(引用終わり)

 それから、チラシに記載されているとおり、昨年4月の法律の施行に合わせ、和歌山市では、和歌山市障害者差別解消推進条例が施行されたのですが、その際、和歌山市手話言語条例も同時に施行されたということを、今日、このメルマガ(ブログ)を書くために和歌山市のホームページを閲覧して初めて知りました。
 和歌山市民でも知らない人が多いと思いますので、最後に、この2つの条例を(少し長くなりますが)全文引用します。
 
和歌山市障害者差別解消推進条例
(目的)
第1条 この条例は、障害を理由とする差別の解消について、基本理念を定め、市の責務並びに市民及び事業者の役割を明らかにするとともに、障害を理由とする差別の解消を推進するために基本となる事項を定めることにより、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「障害者差別解消法」という。)による施策と相まって、障害のある人もない人も共に安心して暮らしやすい和歌山市の実現に寄与することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(1)障害 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害をいう。
(2)障害者 障害がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
(3)社会的障壁 障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。
(4)障害を理由とする差別 障害を理由とするあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のあらゆる分野において、他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するものをいう。
(基本理念)
第3条 障害者に対する障害を理由とする差別の解消は、次に掲げる事項を旨として図られなければならない。
(1)全ての障害者は、自ら選択した場所に居住し、その地域社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されること。
(2)全ての障害者が、必要かつ合理的な配慮が的確に行われることにより、障害者でない者と等しく、権利を行使し、機会を得、又は待遇を受けることができること。
(3)全ての障害者は、言語(手話を含む。)、文字の表示、点字、触手話、指点字、拡大文字、音声、平易な言葉、朗読その他の補助的及び代替的な意思疎通の形態、手段及び様式(次条及び第5条において「意思疎通手段」という。)であって、当該障害者が選択したものによる情報の取得又は利用するための支援が保障されること。
(市による意思疎通支援の実施)
第4条 市は、前条の基本理念にのっとり、障害者に対し、情報の取得又は利用のための支援を行うものとする。
2 前項の規定による支援は、障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じ、適切に行われなければならない。
3 市は、第1項の規定による支援について、情報処理に関する技術を活用して行うよう努めるものとする。
(市の責務)
第5条 市は、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明(障害者の保護者、後見人その他の関係者(以下「保護者等」という。)が当該障害者の代理人として行ったもの及びこれらの者が当該障害者の補佐人として行ったものを含む。)があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないと認めるときは、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮を行わなければならない。
2 市は、第3条に定める基本理念にのっとり、障害及び障害者に対する理解を深め、障害を理由とする差別を解消するために必要な施策を策定し、及び実施する責務を有する。
3 市は、第3条第3号に規定する支援を行うため、次に掲げる施策を行うものとする。
(1)障害者の意思疎通手段に対する市民の理解の増進及び当該意思疎通手段の普及を図るための施策
(2)手話通訳者、要約筆記者、点訳者、朗読者その他の意思疎通支援(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号。次項及び第7条第3項において「障害者総合支援法」という。)第77条第1項第6号に規定する意思疎通支援をいう。)を行う者の配置の拡充
(3)その他障害者の円滑な情報の取得又は利用に資する施策
4 市は、前項各号に掲げる施策を障害者基本法(昭和45年法律第84号)第11条第3項の規定に基づく和歌山市障害者計画及び障害者総合支援法第88条第1項の規定に基づく和歌山市障害福祉計画との整合性を図りながら、総合的かつ計画的に実施するものとする。
(市民等の役割)
第6条 市民及び事業者は、障害及び障害者に対する理解を深めるとともに、市が実施する施策に協力するよう努めるものとする。
(障害を理由とする差別に関する相談)
第7条 障害者又は障害者の保護者等は、当該障害者が障害を理由とする差別を受けたと認めるときは、当該障害を理由とする差別について、市長に相談することができる。
2 市長は、前項の規定による相談があったときは、次に掲げる事務を行うものとする。
(1)障害者又は障害者の保護者等への事実の確認を行う事務
(2)障害者又は障害者の保護者等に必要な助言及び情報提供を行う事務
(3)関係行政機関への紹介を行う事務
3 市長は、市が障害者総合支援法第77条第3号に掲げる事業の実施を委託している者に、前項各号に掲げる事務の全部又は一部を委託することができる。
(助言又はあっせんの求め)
第8条 障害者は、障害を理由とする差別を受けたと認めるときは、市長に申し出て、当該障害を理由とする差別に該当する事案(以下「差別事案」という。)を解決するため、市長が障害者、障害者の保護者等又は障害を理由とする差別をしたとされる者(市を除く。)(以下「当事者等」と総称する。)に必要な助言をすること又は当事者等の間に立ち、差別事案の解決に資するあっせん案の提示を行うことを求めることができる。
2 障害者の保護者等は、前項の規定による申出をすることができる。ただし、当該申出が当該障害者の意思に反することが明らかであると認められるときは、この限りでない。
3 前2項の申出は、次の各号のいずれかに該当すると市長が認めるときは、することができない。
(1)行政不服審査法(平成26年法律第68号)その他の法令により審査請求その他の不服申立てをすることができるとき。
(2)申出の原因となる差別事案が発生した日(継続的な行為にあっては、その行為の終了した日)から3年を経過しているとき(その期間内に申出ができなかったことにつきやむを得ない理由があるときを除く。)。
(3)現に犯罪の捜査の対象となっているとき。
(調査)
第9条 市長は、前条第1項又は第2項の規定による申出があったときは、当該申出に係る事実について調査を行わなければならない。
(助言又はあっせん)
第10条 市長は、前条の規定による調査の結果、必要があると認めるときは、当事者等に対し、必要な助言をし、又は当事者等の間に立ち、差別事案の解決に資するあっせん案の提示を行うことができる。
2 市長は、前項の規定による助言又はあっせん案の提示を行うかどうかの判断に資するため、又は前項の助言又はあっせん案の内容について意見を求めるため、第14条の規定により置く和歌山市障害者差別解消調整委員会(以下「調整委員会」という。)に諮問することができる。
3 市長は、第1項のあっせん案を作成しようとするときは、当事者等の意見の聴取を行わなければならない。
4 当事者等は、第1項のあっせん案を受諾したときは、その旨を記載し、記名押印又は署名した書面を市長に提出しなければならない。
(勧告)
第11条 市長は、前条第1項の規定により助言をし、又はあっせん案を提示した場合において、障害を理由とする差別をしたと認められる者が正当な理由がなく当該助言に従わず、又は当該あっせん案を受諾しないときは、当該障害を理由とする差別をしたと認められる者に対して当該助言に従うこと又は当該あっせん案を受諾するよう勧告することができる。
(公表)
第12条 市長は、前条の勧告を受けた者が、正当な理由がなく、当該勧告に従わないときは、当該者が受けた勧告の内容を公表することができる。この場合において、当該勧告の内容に個人又は法人(法人でない団体を含む。以下この条において同じ。)に関する情報であって、特定の個人又は法人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより特定の個人又は法人を識別することができることとなるものを含む。)が含まれているときは、当該情報を除いて公表しなければならない。
(意見の聴取)
第13条 市長は、第11条の勧告又は前条の公表をしようとする場合には、あらかじめ、期日、場所及び差別事案の内容を示して、公表の対象となる者その他差別事案に関係する者又はその代理人の出席を求めて、意見の聴取を行わなければならない。ただし、当該公表の対象となる者その他差別事案に関係する者又はその代理人が正当な理由がなく意見の聴取に応じる意思がないと認められるときは、意見の聴取を行わないで勧告し、又は公表することができる。
(和歌山市障害者差別解消調整委員会の設置等)
第14条 本市に障害を理由とする差別を解消するための取組を推進するため、調整委員会を置く。
2 調整委員会は、次に掲げる事項について調査審議し、市長に意見を述べるものとする。
(1)市長が諮問する差別事案に対する助言又はあっせん案の提示に関する事項
(2)障害を理由とする差別の解消の推進に関する事項
(3)障害者の意思疎通支援に関する施策の実施状況等に関する事項
(4)その他障害を理由とする差別の解消の推進に関して市長が必要と認める事項
3 調整委員会は、委員35人以内で組織する。
4 委員は、次に掲げる者のうちから、市長が委嘱し、又は任命する。
(1)国又は地方公共団体の機関の職員であって、福祉、保健、医療、介護、教育その他の障害者の自立と社会参加に関連する分野の事務に従事するもの
(2)特定非営利活動法人促進法(平成10年法律第7号)第2条第2項に規定する特定非営利活動法人その他障害者に係る公益の増進に資することを目的とした団体に属する者
(3)障害者又はその介護若しくは支援をする者に関する団体が推薦する者
(4)障害者に係る福祉又は保健に関する学識経験者
5 委員の任期は、2年とする。ただし、委員が欠けた場合における補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
6 委員は、再任されることができる。
7 調整委員会に委員長を置き、委員の互選により選任する。委員長は、会務を総理し、調整委員会を代表する。
8 委員長に事故があるとき、又は委員長が欠けたときは、あらかじめ委員長が指名する委員がその職務を代理する。
9 調整委員会の会議(以下この条において単に「会議」という。)は、委員長が招集する。ただし、委員の全員が新たに委嘱され、又は任命された後最初に招集すべき会議は、市長が招集する。
10 委員長は、会議の議長となる。
11 調整委員会は、委員の過半数の出席がなければ、会議を開くことができない。
12 調整委員会の議事は、出席委員の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
13 調整委員会は、必要があると認めるときは、委員以外の者に対して会議への出席を求め、その意見若しくは説明を聴き、又は必要な資料の提供を求めることができる。
14 委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とす
る。
15 調整委員会の庶務は、福祉局社会福祉部において処理する。
16 この条例に定めるもののほか、調整委員会の運営に関し必要な事項は、委員長が調整委員会に諮って定める。
   
附 則
(施行期日)
1 この条例は、平成28年4月1日から施行する。ただし、第8条から第14条までの規定は、同年7月1日から施行する。
(検討)
2 市長は、この条例の施行後3年を経過した場合において、条例の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の見直しを行うものとする。

和歌山市手話言語条例
(目的)
第1条 この条例は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話を普及させ、かつ、地域において手話が使用されやすい環境を整備するための市の責務並びに市民及び事業者の役割を明らかにすることにより、ろう者とろう者以外の者が共生することのできる地域社会の実現に資することを目的とする。
(基本理念)
第2条 手話は、独自の言語体系を有する文化的所産であり、ろう者が大切に伝承し、かつ、育んできたものであるということに鑑み、手話についての理解及び手話の普及は、手話を必要とする市民が手話により意思の疎通を円滑に行う権利を有しており、その権利は最大限尊重されるべきであるという認識に基づいて行われなければならない。
(市の責務)
第3条 市は、市民及び事業者の手話についての理解の促進を図り、手話が使用されやすい環境を整備するために、次に掲げる施策を推進するものとする。
(1)手話についての理解の推進及び手話の普及に関する施策
(2)市民の手話の獲得及び習得に関する施策
(3)前2号に掲げるもののほか、市長が必要と認める施策
(市民等の役割)
第4条 市民及び事業者は、第2条に定める基本理念に対する理解を深め、前条各号に掲げる施策に協力するよう努めるものとする。
(施策を推進するための方針)
第5条 市長は、第3条各号に掲げる施策を推進するための方針を定めるものとする。
2 市長は、前項の方針を定めようとするときは、ろう者、手話通訳者その他の関係者の意見を聴かなければならない。
   附 則
 この条例は、平成28年4月1日から施行する。

(弁護士・金原徹雄のブログから)
2015年12月17日
障害者差別解消法(2016年4月1日施行)を学習するための資料のご紹介

2016年6月5日
緊急予告!6/19市民集会「緊急事態条項と日本国憲法(講師:伊藤真弁護士)」(和歌山弁護士会)のご案内
2016年10月19日
12/3シンポジウム「シングルマザーの権利擁護―養育費算定表の問題点と履行確保の方策について―」(和歌山弁護士会)のご案内
2016年12月26日
1/21「シンポジウム 実りある面会交流~子どもの健やかな成長のために~」(和歌山弁護士会)のご案内
2017年1月20日
2/15「低周波音問題について考える」シンポジウム(和歌山弁護士会)のご案内

障害者差別解消法シンポ・チラシ 

「リスペクトの政治に向けたシンポジウム」(1/22関西市民連合)動画のご紹介

 今晩(2017年1月24日)配信した「メルマガ金原No.2702」を転載します。

「リスペクトの政治に向けたシンポジウム」(1/22関西市民連合)動画のご紹介

 “SEALDs KANSAI”は昨年8月15日をもって解散しましたが、「関西市民連合(安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める関西市民連合)」は、現在も活発に活動を続けています(公式サイトFacebookTwitter)。
 その関西市民連合が、一昨日(1月22日)、京都大学吉田キャンパス(本部構内法経済学部本館法経第5教室)で、「リスペクトの政治に向けたシンポジウム」を開催しました。
 「リスペクトの政治って何?」と思われますよね。シンポジウムのためのFacebookイベントページから、少し長くなりますが、〈趣旨〉を引用します。

(引用開始)
 次期衆院選に向けた野党の共闘は一進一退の状況ですが、立憲野党の間でも、市民の間でも、違いを認め合いながらも、再びお互いの目を見て真摯に話し、立憲主義の回復や、個人の尊厳を擁護する政治の実
現といった一致点を前に進めるための、「リスペクトの政治」の実践が求められています。
 「リスペクトの政治」の実践にあたり、立憲野党と市民の一致点となり、重大かつ喫緊の課題として、女性を中心として個人が生きづらさを感じる社会、というものがあります。この問題意識から、本シンポジウムでは、ジェンダー論がご専門の大阪大学の牟田和恵先生に「政治をわたしのものにする」と題して講演していただきます。また、この間の新たな市民運動に参加してきた主婦や学者、学生により「いま、
市民が政治に求めること」と題してパネルディスカッションを行います。
 2016年、「保育園落ちた、日本死ね」という言葉が大きな反響を呼びました。
 仕事と子育てや介護を両立させたい。組織のなかで働きに見合った評価をされたい。結婚しても慣れ親しんだ従来の名字を使用したい。女性に対する様々なハラスメントを受けることなく、安心して暮らした
い。これらの願いは、個人のわがままなのでしょうか?
 「すべて国民は、個人として尊重される」と日本国憲法第13条にもうたわれているように、元来「個人的なものは政治的なもの」であり、「個人の生きづらさ」に関する課題は、政治的な課題として解決に向けて取り組まれなければならないはずです。しかし、自民党改憲草案の第24条にみられるような、男尊女卑的な家族観に基づく自民党を中心とした政権のもとでは、「選択的夫婦別姓」や「政治分野における男女共同参画推進」など基本的人権にかかわるような分野の取り組みですら、実現することが極めて厳しい
状況です。
 本シンポジウムを通じて、私たち市民1人1人が、日常の体験のなかから、政治に求めることを掬い上げ形にする術を身につけることで、主体的に争点を設定し、これらの課題の解決に資する政治を盛り上げ
ていきたいと考えています。
(引用終わり)

 関西市民連合が主催するシンポジウムの基調講演がジェンダー論の専門家を招いてのものであるという意外性(?)が、実は意外でも何でもなく、より広い層の市民が政治に関与していくための重要な切り口なのだということに肯く人も多いでしょう(私はそうでした)。
 幸い、IWJ京都による中継アーカイブが全編無料で視聴できます。正直、私もまだあちこちつまみ食
い的に覗いただけなのですが、是非、時間を作って全編視聴したいと思います。私が関わっている「市民連合わかやま」の今後の活動の方向性を考える上でも、大いに参考となるに違いありませんから。
 ちなみに、シンポの最後で挨拶された塩田潤さんのお話は、単なる主催者による閉会挨拶というにとどまらない、この日の企画全体の「まとめ」を兼ねたものでした。

関西市民連合 リスペクトの政治に向けたシンポジウム 2017.1.22(2時間22分)
冒頭~ 開会・趣旨説明
6分~ 挨拶 西牟田祐二氏(京都大学大学院経済学研究科教授)
8分~ 挨拶 穀田恵二衆院議員(日本共産党/国会対策委員長)
12分~ 挨拶 福山哲郎参院議員(民進党)
18分~ メッセージ代読(服部良一社民党元衆院議員、豊田潤多郎自由党元衆院議員)
23分~ 講演「政治をわたしのものにする」 講師 牟田和恵氏(大阪大学大学院人間科学研究科教授
、ジェンダー論・歴史社会学)
1時間27分~ パネルディスカッション「いま、市民が政治に求めること」
進行 元橋利恵氏(大阪大学大学院生)
パネリスト
小川郁氏(民主主義と生活を守る有志〔SADL〕)
西郷南海子氏(安保関連法に反対するママとみんなの会@京都)
中野里佳氏(子どもの未来を考えるママの会@大阪)
新ヶ江章友氏(違憲安全保障法に反対にする大阪市立大学有志の会、大阪市立大学准教授)
2時間16分~ 挨拶 塩田潤氏(関西市民連合)

沖縄で起こっている異常な事態~山城博治さんの長期身柄拘束と接見禁止

 今晩(2017年1月14日)配信した「メルマガ金原No.2691」を転載します。

沖縄で起こっている異常な事態~山城博治さんの長期身柄拘束と接見禁止

 昨年10月以来、沖縄平和運動センター議長の山城博治(やましろひろじ)さんが、再三にわたって不当に逮捕・勾留・起訴されていること、そして、起訴後も保釈が認められず、弁護士以外との接見も禁止されたままという異常な状況に心を痛め、何とかしなければと考えている方が多いことと思います。
 けれども、大手メディアが大きく取り上げることをしないため、十分な情報を得られず、基本的な事実の経過すら判然としないという方が大半かもしれません。であるならば、インターネットで集められる情報の内主要なものを整理してご紹介するだけでも、何ほどかの役には立てるかもしれないと考え、この情報のコラージュをお届けすることにしました。
 まずは、沖縄の地元2紙の報道などを基に、事実経過を振り返っておきましょう。
 
2016年10月17日(月)
器物損壊で逮捕
沖縄タイムス+プラス(2016年10月18日 07:39) 
「市民運動リーダー逮捕、有刺鉄線2本切った疑い 高江ヘリパッドに反対」

(引用開始)
 
沖縄県東村高江周辺の米軍北部訓練場内に設置された有刺鉄線を切断したとして、県警は17日、沖縄平和運動センターの山城博治議長(64)を器物損壊の疑いで現行犯逮捕した。調べに対し、黙秘しているという。
 県警によると、山城議長は17日午後3時半ごろ、北部訓練場内で、ヘリパッド建設工事現場への進入を防ぐために設置されたフェンスの上に張られた有刺鉄線2本を、ペンチのようなもので切って壊した疑いがある。発生現場は、同訓練場メインゲートから北東に約1・8キロ離れた地点で、フェンスは沖縄防衛局が設置した。
 当時、現場周辺には山城議長のほかに十数人の市民らがいたため、防衛局職員が山城議長らに対し、訓練場内からの退去を要求。山城議長が鉄線を切ったのを防衛局職員が目撃し、県警に通報した。
 通報を受けて、訓練場内に駆け付けた捜査員らが山城議長を追跡し、県道70号に出たところで逮捕した。
 県警は「米軍の同意があれば基地内でも逮捕できる」とし、基地外で逮捕したのは「現場は足場も悪く、混乱を避けるために県道上で逮捕した」と説明した。
 9月22日からヘリパッド建設工事に反対する市民らが同訓練場内に入って抗議活動を始めて以降、逮捕者は2人目になる。
(引用終わり)
 
2016年10月20日(木)
傷害及び公務執行妨害で再逮捕
沖縄タイムス+プラス(2016年10月21日 09:38)
「山城議長を再逮捕 公務執行妨害・傷害容疑で」

(抜粋引用開始)
 
東村高江の米軍北部訓練場工事用道路で侵入防止フェンスを設置していた沖縄防衛局職員(42)に暴行を加えたとして、県警警備1課は20日、沖縄平和運動センターの山城博治議長(64)と神奈川県の牧師の男性(31)を公務執行妨害と傷害の容疑で逮捕した。
 逮捕容疑は8月25日、通称「N1裏地区」で工事現場への侵入防止フェンスを設置していた男性職員の腕を強くつかみ、肩をつかんで激しく揺さぶる行為などで頸椎(けいつい)捻挫と右腕打撲のけがを負わせた疑い。県警は2人の認否を明らかにしていない。
 山城議長は17日に器物損壊容疑で逮捕された。弁護人によると、検察は20日、同容疑で身柄を引き続き拘束する勾留請求をし、那覇簡裁は却下したが、那覇地裁が勾留を認めた。20日夜に山城議長と接見した三宅俊司弁護士は「警察は一般的に勾留満期で再逮捕する。今回は請求が却下されると見越して再逮捕したのだろう。(反対運動の中心人物を)何が何でも拘束したいのは明らか。極めて悪質な手段で、住民弾圧だ」と批判した。
(引用終わり)
 
2016年11月9日(水)
勾留理由開示手続(那覇簡易裁判所・上原宏光裁判官)が開かれる。
琉球新報(2016年11月10日 11:32)
「山城氏「大衆運動への弾圧」  勾留理由開示で捜査を批判」

(抜粋引用開始)
 山城議長は「もし傷害があったとしたなら、私たちの望むところではない。心からおわびしたい」とした。
 一方、「7月22日に多数の機動隊が私たちに襲いかかった事態を明らかにせず、私たちを毎日捜査するのは沖縄の抵抗、大衆運動に対する弾圧だ」と批判した。
(引用終わり)
 
2016年11月11日(金)
山城博治氏と神奈川県の牧師を傷害、公務執行妨害で起訴。山城氏については器物損壊でも起訴。
琉球新報(2016年11月12日 11:55)
「弁護士「運動弾圧だ」 山城議長ら2人起訴 北部ヘリパッド」

(抜粋引用開始)
 
那覇地検は11日、米軍北部訓練場のヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の工事用道路上で、沖縄防衛局の職員に揺さぶるなどの暴行を加えてけがを負わせ、公務を妨害したとして逮捕・送検された沖縄平和運動センターの山城博治議長(64)を、傷害と公務執行妨害の罪で起訴した。米軍提供区域内で防衛局が設置した有刺鉄線を切断したとして、器物損壊の罪でも起訴した。ヘリパッド建設工事に反対する抗議運動のリーダーとして活動していた山城議長が起訴されたことを受け、弁護士から「政府が抗議運動の萎縮を狙ったものだ」との声が上がった。
 ヘリパッド建設への抗議活動中の逮捕者の中で、起訴されたのは山城議長で2人目。山城議長と共謀したとして、神奈川県の牧師の男性(31)も、傷害と公務執行妨害の罪で起訴した。地検は2人の認否を明らかにしていない。
(略)
 山城議長の弁護人を務める金高望弁護士は「必要性のない不当な起訴であり、現場の運動に対する弾圧だ」とコメントした。保釈請求する方針も示した。
(引用終わり)
  
2016年11月29日(火)
山城博治氏ら4人を威力業務妨害で再逮捕
琉球新報(2016年10月21日 09:38)
「威力業務妨害容疑 4人逮捕 県警、辺野古新基地建設で」

(抜粋引用開始)
 
県警警備一課と名護署は29日、名護市辺野古の米軍キャンプシュワブゲート前で、コンクリート製ブロックを積み上げて工事車両の進入を阻み、威力をもって沖縄防衛局の業務を妨害したとして、威力業務妨害の疑いで沖縄平和運動センターの山城博治議長(64)を含む計4人を逮捕した。県警は捜査に支障を来すとして、それぞれの認否を明らかにしていない。
 逮捕されたのは山城議長、職業不詳男性(66)=宜野座村、職業不詳男性(59)=名護市、職業不詳男性(40)=名護市。逮捕容疑は今年1月28日午後2時5分ごろから同30日午前8時41分ごろにかけて、米軍キャンプシュワブゲート前の路上にコンクリート製ブロック1400個余りを積み上げ、工事関係車両の搬入と沖縄防衛局の業務を妨害した疑い。
(略)
(引用終わり)
 
2016年12月12日(月)
威力業務妨害についての勾留理由開示手続(那覇簡易裁判所)が開かれる。
琉球新報(2016年12月13日 11:00)
「「運動への圧力」山城議長が陳述 那覇簡裁で開示手続き」

(引用開始)
 
名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブゲート前でコンクリート製ブロックを積み上げて沖縄防衛局などの業務を妨害したとして、威力業務妨害容疑で逮捕された沖縄平和運動センターの山城博治議長ら4人の勾留理由開示手続きが12日、那覇簡裁で行われた。
 山城議長は意見陳述で「(発生から)10カ月も経過した事案であり、政治的な捜査であることを勘ぐってしまう。運動への圧力ではないか」と述べた。
(引用終わり)
 
2016年12月20日(火)
威力業務妨害で起訴
※報道記事は見つかりませんでしたが、12月28日付で発表された刑法研究者による緊急声明に「さらに山城氏は、③11月29日、名護市辺野古の新基地建設事業に対する威力業務妨害の疑いでまたしても逮捕され、12月20日、追起訴された。」とあります。

2016年12月26日(月)
名護署から拘置所に移監
※1月12日の記者会見前の照屋寛徳衆議院議員による報告で明らかに(照屋議員は弁護士資格があるので接見できます)。

 以上の経過を整理すると以下のとおりです。

2016年10月17日 第1回逮捕 
罪名 器物損壊(現行犯逮捕)
被疑事実 2016年10月17日、東村(ひがしそん)高江周辺の米軍北部訓練場内で、ヘリパッド建設工事現場への進入を防ぐために設置されたフェンスの上に張られた有刺鉄線をペンチのようなもので切ったとの疑い。

2016年10月20日 第2回逮捕
罪名 傷害、公務執行妨害
被疑事実 2016年8月25日、通称「N1裏地区」で工事現場への侵入防止フェンスを設置していた沖縄防衛局の男性職員の腕を強くつかみ、肩をつかんで激しく揺さぶる行為などで頸椎(けいつい)捻挫と右腕打撲のけがを負わせ、公務の執行を妨害したとの疑い。

2016年11月11日 第1回起訴
罪名 傷害、公務執行妨害、器物損壊
 
2016年11月29日 第3回逮捕
罪名 威力業務妨害
被疑事実 2016年1月28日午後2時5分ごろから同30日午前8時41分ごろにかけて、米軍キャンプシュワブゲート前の路上にコンクリート製ブロック1400個余りを積み上げ、工事関係車両の搬入と沖縄防衛局の業務を妨害した疑い。

2016年12月20日 第2回起訴
罪名 威力業務妨害

 この間、弁護団としては、2回の勾留理由開示請求の他、保釈請求却下に対する準抗告、接見禁止決定に対する準抗告、特別抗告など、あらゆる手段で山城さんの身柄を取り戻すべく努力しているようですが、いまもって接見禁止が付いたままの勾留が続くという異常事態となっています。
 
 それにしても、弁護士の目から以上の経過を見ると、10月20日の傷害と公務執行妨害による2回目の逮捕が、「あらゆる手段を使って反対派のリーダーを高江の現場から引きはがす」という権力の意思が明確になった分水嶺であるように思えます。三宅俊司弁護士もコメントしているとおり、「何が何でも拘束したいのは明らか」ですから。

 その後の経過の問題点については、12月28日に公表された刑事法研究者による緊急声明に詳しく述べられていますので、是非お読みください。
 前田朗東京造形大学教授のブログに掲載された声明を全文紹介します。

(引用開始)
プレスリリース「山城博治氏の釈放を求める刑事法研究者の緊急声明」について 016.12.28
 日本政府は、民主的に表明される沖縄の民意を国の力で踏みにじっておきながら、日本は法治国家であると豪語する。法律を学び、教える者として無力感におそわれる。まことに残念ながら刑事司法もこれに追随し、非暴力平和の抗議行動を刑法で抑え込もうとしている。平和を守ることが罪になるのは戦時治安法制の特徴である。しかし、今ならば引き返して「法」をとり戻すことができるかもしれないので、刑事法学の観点から、山城氏の逮捕・勾留こそが違法であり、公訴を取消し、山城氏を解放すべきであることを説明する必要があった。
 10日前に海外識者らの「山城博治氏らの釈放を求める声明」が発表され、その後、沖縄県内の二紙が、勾留中の山城氏の「県民団結で苦境打開を」「未来は私たちのもの」とする声を伝えた。日本の刑事法研究者としても、刑事司法の側に不正がある、と直ちに応じておかねばならないと考え、別紙のとおり、「山城博治氏の釈放を求める刑事法研究者の緊急声明」(2016.12.28)を発表する。

呼びかけ人(50音順) 
春日勉(神戸学院大学教授)、中野正剛(沖縄国際大学教授)、本庄武(一橋大学教授)、前田朗(東京造形大学教授)、森川恭剛(琉球大学教授)

賛同人(50音順) 
足立昌勝(関東学院大学名誉教授)、雨宮敬博(宮崎産業経営大学准教授)、石塚伸一(龍谷大学教授)、稲田朗子(高知大学准教授)、内田博文(神戸学院大学教授)、内山真由美(佐賀大学准教授)、梅崎進哉(西南学院大学教授)、大場史朗(大阪経済法科大学准教授)、大藪志保子(久留米大学准教授)、岡田行雄(熊本大学教授)、岡本洋一(熊本大学准教授)、垣花豊順(琉球大学名誉教授)、金尚均(龍谷大学教授)、葛野尋之(一橋大学教授)、黒川亨子(宇都宮大学講師)、斉藤豊治(甲南大学名誉教授)、櫻庭総(山口大学准教授)、佐々木光明(神戸学院大学教授)、笹倉香奈(甲南大学教授)、島岡まな(大阪大学教授)、鈴木博康(九州国際大学教授)、陶山二郎(茨城大学准教授)、関哲夫(國學院大学教授)、高倉新喜(山形大学教授)、寺中誠(東京経済大学非常勤講師)、豊崎七絵(九州大学教授)、新倉修(青山学院大学教授)、新村繁文(福島大学特任教授)、平井佐和子(西南学院大学准教授)、平川宗信(名古屋大学名誉教授)、福井厚(京都女子大学教授)、福島至(龍谷大学教授)、福永俊輔(西南学院大学准教授)、保条成宏(福岡教育大学教授)、本田稔(立命館大学教授)、前野育三(関西学院大学名誉教授)、松宮孝明(立命館大学教授)、松本英俊(駒澤大学教授)、三島聡(大阪市立大学教授)、水谷規男(大阪大学教授)、宮本弘典(関東学院大学教授)、宗岡嗣郎(久留米大学教授)、村井敏邦(大阪学院大学教授)、村田和宏(立正大学准教授)、森尾亮(久留米大学教授)、矢野恵美(琉球大学教授)、吉弘光男(久留米大学教授)他4人
以上 56人(2017/01/05現在)

以上 41人(12月28日13:00 第1回集約)
(注) 引き続き賛同を呼びかけ、2017年1月中旬に次回集約の予定。

         山城博治氏の釈放を求める刑事法研究者の緊急声明

 沖縄平和運動センターの山城博治議長(64)が、70日間を超えて勾留されている。山城氏は次々に3度逮捕され、起訴された。接見禁止の処分に付され、家族との面会も許されていない山城氏は、弁護士を通して地元2紙の取材に応じ、「翁長県政、全県民が苦境に立たされている」「多くの仲間たちが全力を尽くして阻止行動を行ってきましたが、言い知れない悲しみと無慈悲にも力で抑え込んできた政治権力の暴力に満身の怒りを禁じ得ません」と述べる(沖縄タイムス2016年12月22日、琉球新報同24日)。この長期勾留は、正当な理由のない拘禁であり(憲法34条違反)、速やかに釈放されねばならない。以下にその理由を述べる。
 山城氏は、①2016年10月17日、米軍北部訓練場のオスプレイ訓練用ヘリパッド建設に対する抗議行動中、沖縄防衛局職員の設置する侵入防止用フェンス上に張られた有刺鉄線一本を切ったとされ、準現行犯逮捕された。同月20日午後、那覇簡裁は、那覇地検の勾留請求を却下するが、地検が準抗告し、同日夜、那覇地裁が勾留を決定した。これに先立ち、②同日午後4時頃、沖縄県警は、沖縄防衛局職員に対する公務執行妨害と傷害の疑いで逮捕状を執行し、山城氏を再逮捕した。11月11日、山城氏は①と②の件で起訴され、翌12日、保釈請求が却下された(準抗告も棄却、また接見禁止決定に対する準抗告、特別抗告も棄却)。さらに山城氏は、③11月29日、名護市辺野古の新基地建設事業に対する威力業務妨害の疑いでまたしても逮捕され、12月20日、追起訴された。
 山城氏は、以上の3件で「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」(犯罪の嫌疑)と「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」があるとされて勾留されている(刑訴法60条)。
 しかし、まず、犯罪の嫌疑についていえば、以上の3件が、辺野古新基地建設断念とオスプレイ配備撤回を掲げたいわゆる「オール沖縄」の民意を表明する政治的表現行為として行われたことは明らかであり、このような憲法上の権利行為に「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」があるのは、その権利性を上回る優越的利益の侵害が認められた場合だけである。政治的表現行為の自由は、最大限尊重されなければならない。いずれの事件も抗議行動を阻止しようとする機動隊等との衝突で偶発的、不可避的に発生した可能性が高く、違法性の程度の極めて低いものばかりである。すなわち、①で切断されたのは価額2,000円相当の有刺鉄線1本であるにすぎない。②は、沖縄防衛局職員が、山城氏らに腕や肩をつかまれて揺さぶられるなどしたことで、右上肢打撲を負ったとして被害を届け出たものであり、任意の事情聴取を優先すべき軽微な事案である。そして③は、10か月も前のことであるが、1月下旬にキャンプ・シュワブのゲート前路上で、工事車両の進入を阻止するために、座り込んでは機動隊員に強制排除されていた非暴力の市民らが、座り込む代わりにコンクリートブロックを積み上げたのであり、車両進入の度にこれも難なく撤去されていた。実に機動隊が配備されたことで、沖縄防衛局の基地建設事業は推進されていたのである。つまり山城氏のしたことは、犯罪であると疑ってかかり、身体拘束できるような行為ではなかったのである。
 百歩譲り、仮に嫌疑を認めたとしても、次に、情状事実は罪証隠滅の対象には含まれない、と考えるのが刑事訴訟法学の有力説である。②の件を除けば、山城氏はあえて事実自体を争おうとはしないだろう。しかも現在の山城氏は起訴後の勾留の状態にある。検察は公判維持のために必要な捜査を終えている。被告人の身体拘束は、裁判所への出頭を確保するための例外中の例外の手段でなければならない。もはや罪証隠滅のおそれを認めることはできない。以上の通り、山城氏を勾留する相当の理由は認められない。
 法的に理由のない勾留は違法である。その上で付言すれば、自由刑の科されることの想定できない事案で、そもそも未決拘禁などすべきではない。また、山城氏は健康上の問題を抱えており、身体拘束の継続によって回復不可能な不利益を被るおそれがある。しかも犯罪の嫌疑ありとされたのは憲法上の権利行為であり、勾留の処分は萎縮効果をもつ。したがって比例原則に照らし、山城氏の70日間を超える勾留は相当ではない。以上に鑑みると、山城氏のこれ以上の勾留は「不当に長い拘禁」(刑訴法91条)であると解されねばならない。
 山城氏の長期勾留は、従来から問題視されてきた日本の「人質司法」が、在日米軍基地をめぐる日本政府と沖縄県の対立の深まる中で、政治的に問題化したとみられる非常に憂慮すべき事態である。私たちは、刑事法研究者として、これを見過ごすことができない。山城氏を速やかに解放すべきである。
(引用終わり)

 以上の刑事法研究者による緊急声明により、刑事訴訟法学的観点からの問題点はほぼ網羅されていると思います。
 なお、上記プレスリリースで引用されている「海外識者らの「山城博治氏らの釈放を求める声明」」をご紹介しておきます。

 ところで、11月11日に第1回起訴、12月20日に第2回起訴なのだから、もう第1回公判期日が決まっているだろうと普通思いますよね。公判前整理手続をやるような重大事件ではないのですから。ところがどうもまだ第1回公判期日の日程すら決まっていないようなのです。
 目に付いたネットの記事を(情報の確実性については保証しかねますけど)ご紹介しておきます。
 
レイバーネット日本から
沖縄「山城博治さんたちの早期釈放を求める会」から緊急署名のお願い

(抜粋引用開始)
 1月17日に、那覇地裁で三者(弁護士、検察官、裁判官)面談があり、そこで第一回公判の日取りが決まるようです。第一回裁判終了後に、被疑者は釈放(保釈)されるのが通例です。しかし、検察側の裁判日引き延ばしが予想されることから、それを許さないためにも、裁判所に早期釈放を求める署名を提出することになりました。このままだと微罪にも関わらず、4~6カ月も拘留されかねません。多く署名を集め、国=検察側の言いなりにならないよう裁判所に圧力をかける意味でも大変重要な闘いとなります。
(引用終わり)
 
 ところで、上記記事の中に「検察は体を養生するための靴下の差し入れもさせず」とある部分については、地元紙による以下のような記事がありました。

沖縄タイムス+プラス(2016年12月21日 06:00)
勾留中の山城議長へ、靴下の差し入れ実現 沖縄県警が認める

(抜粋引用開始)
【名護】新基地建設の抗議行動に絡んで起訴、勾留されている沖縄平和運動センターの山城博治議長への靴下の差し入れが20日、沖縄県警に認められた。全国的には認められる中、県警はこれまで「自殺予防」を理由に認めておらず、改善を求める声が上がっていた。
 東京の女性(68)が、「靴下を差し入れるため」に来県。名護署で長いものから短いものまで3種類を示して交渉し、短いものだけが認められた。「山城さんは大病を患ったばかりで足元の冷えが心配だった。大きな勝利だと思う」と喜んだ。
(略)
(引用終わり)
※後掲の院内集会動画の1時間21分~で、おそらくこの「東京の女性」の発言を聞くことができます。

 なお、上記「山城博治さんたちの早期釈放を求める会」による署名とは別に、鎌田慧、澤地久枝、佐高信、落合恵子、小山内美江子の5氏が要請者となり、那覇地検及び那覇地裁宛の「山城博治さんらの釈放を求める要請書」へのインターネットを通じた賛同署名が呼びかけられており、既に多くの人が署名されたことと思います。普段はネット署名にはあまり積極的ではない私も署名しました。

 一昨日(1月12日)、上記要請人5名の内、鎌田慧さん、佐高信さん、落合恵子さんが出席して記者会見と院内集会が開かれました。
 しばらく休養されていた三輪祐児さん(UPLAN)が現場に復帰して中継動画をアップしてくださっていますのでご紹介します。

20160112 UPLAN【記者会見】山城博治さんらの釈放を(50分)

20170112 UPLAN【院内集会】山城博治さんらを救え!(1時間43分)

冒頭~ 司会 満田夏花さん
5分~ 落合恵子さん
6分~ 国会議員スピーチ(共産党、民進党、社民党)
23分~ 鎌田慧さん
38分~ 前田朗さん(東京造形大学教授)
45分~ 佐高真さん
51分~ (電話出演)伊波義安さん(山城博治さんたちの早期釈放を求める会)
57分~ 寺井一弘さん(弁護士)
1時間08分~ 藤本泰成さん(平和フォーラム)
1時間14分~ イイクラオサムさん(日本国際法律家協会)
「沖縄/琉球での政治弾圧に抗議する JALISA(日本国際法律家協会)声明」
1時間21分~ オオキセイコさん(年末に山城さんに靴下を差し入れに行った方)
1時間27分~ 会場発言

放送予告・拡散希望1/29『沖縄 さまよう木霊~基地反対運動の素顔~』(MBSドキュメンタリー映像’17)

  今晩(2017年1月4日)配信した「メルマガ金原No.2681」を転載します。

放送予告・拡散希望1/29『沖縄 さまよう木霊~基地反対運動の素顔~』(MBSドキュメンタリー映像’17)  

 世間では、大晦日・紅白歌合戦の「ここがよくなかった」などということがいまだに話題となっているようですが、私自身は、紅白を見なくなってから10年どころではなく、仮に、出場歌手の歌唱部分に限定し、その半数以上の歌手(1曲全部でなくても一部を試聴すればよいことにする)を見れば「紅白を試
聴した」ことになると定義したとしても、間違いなく20年以上、もしかしたら30年くらいは「試聴していない」ことになるかもしれません。
 とはいえ、テレビやNHKを全く見なくなった訳ではなく、12月にも、四夜連続で放送されたNHKスペシャル『ドラマ 東京裁判』は、しっかりと録画して試聴しましたよ。オランダのプロダクションが共同制作に参加しているからか、オランダのベルト・レーリンク判事をやや理想化している傾向がありましたが、十分に見応えはあったかと思います。ただし、東京裁判についてほとんど予備知識のない者が試聴したとして、どのような感興を持ち得たかにはやや疑問もありますが。

 ということで、このメルマガ(ブログ)で時々(たびたび?)ご紹介してきたように、テレビで見る番組は、ほとんどがドキュメンタリー番組となっており、それ以外の番組は本当に見なくなりました。和歌山県の九度山が舞台の一つにもかかわらず、『真田丸』を1回も試聴せず、そもそも主演俳優が誰かもいまだに知りません(何かの雑誌で主人公の父親役を草刈正雄が演じたというのを読んだような気がします
が)。『べっぴんさん』も『逃げ恥』も見たことがなく、どんなストーリーかも知りません。中学生や高校生がこういう生活を送るのは難しいとは思いますが、還暦を過ぎればまあ怖いものはないので、残された貴重な時間をどう使うかには、自分なりの基準・原則を打ち立てるべきでしょう。

 私がメルマガ(ブログ)で取り上げる番組の放送予定は、半ば以上、私自身が忘れてしまわないようにという「備忘録」を兼ねているのですが、たまたまそれを目にして「自分も見てみよう」と考えてくださる方が少しでもおられれば幸いです。

 さて、今日ご紹介するのは、関西ローカルではありますが、月に1本のペースで質の高いドキュメンタ
リー番組を放送してくれる大阪の毎日放送(MBS)「映像」(今月からは「映像’17」)の最新作です。『100分の1の声をめぐって~沖縄「土人」発言その後』という仮題が予告されています。
 
毎日放送 2017年1月30日(月)午前0時50分~1時50分(29日・日曜深夜)
MBSドキュメンタリー 映像’17
100分の1の声をめぐって~沖縄「土人」発言その後(仮)
  
(番組案内から引用開始)
 2016年の師走。目まぐるしく事態が動き続ける沖縄で、住民がもっとも恐れていたことが現実とな
った。名護市辺野古から遠くない浅瀬に米軍輸送機オスプレイが墜落したのだ。日本政府は米軍に抗議したが、わずか6日後に米軍の意向に沿って飛行再開を受け入れ、東村高江地区を取り囲むように建設を進めていたオスプレイ用の新ヘリパッド(着陸帯)を完成させて、米軍に引き渡した。
 「ボケ、土人が」。この高江で10月、大阪府警機動隊員が工事に反対する住民に放ったこの言葉に沖縄県知事はじめ県をあげて反発がひろがった。しかし、この発言に対し「差別とは断言できない」、「差別用語かどうか、一義的に述べることは困難」という趣旨の閣議決定がなされ、その後、基地に反対する人々への冷たい非難が増幅したかに見え、むしろ基地に反対する住民たちの振る舞いこそが「問題である」との声が広がった。インターネットで検索すると沖縄の市民運動そのものを「過激」「違法」とする書き込みが続々登場。オスプレイなどこれ以上の基地負担に抵抗する声は、戦後71年を経てもなお、米軍
と米軍の意向のまま動く日本政府によって、押さえつけられている。
(略)
 「土人」発言をきっかけに広がった沖縄ヘイトといえる現象。基地反対運動に関し、これまで以上に虚実が入り交じる言論空間。私たちが見つめるべき真実は、どこにあるのだろう。番組では、日本全体の100分の1にあたる沖縄の声をめぐり、インターネットを中心にデマやバッシングが広がり、沖縄の人々
の1の声が、いかに消されようとしているのか、その裏側と構図に迫りたい。
(引用終わり)
 
 「土人」発言の張本人(大阪府警機動隊員)を沖縄に送り出した大阪の放送局として、取り上げざるを得ないと考えた企画でしょう。また、大阪に隣接する和歌山県民(私がそうですが)としては、記者会見や国会答弁で、「土人」という言葉が差別であるとは断言できないと繰り返した鶴保庸介沖縄及び北方対策等担当大臣(参議院議員)を国会に送り出した選挙民の責任として、これは見なければいけないでしょう(ちなみに、同議員は大阪市出身です)。

 MBSの「映像」は、2015年9月に『なぜペンをとるのか~沖縄の新聞記者たち』(第59回JCJ賞受賞)という優れた番組を作っており、ディレクターが同じ斉加尚代さんかどうかは分かりませんが、『100分の1の声をめぐって~沖縄「土人」発言その後(仮)』も大いに期待できま
す。 
 放送エリアは基本的に近畿圏であり、試聴できない方には申し訳ありませんが、近畿圏にお住まいの方は、是非とも情報拡散にご協力いただいた上で、1人でも多くの方が試聴されるよう、よろしくお願いします。

(追記/2017年1月28日)
 タイトルが仮題(『100分の1の声をめぐって~沖縄「土人」発言その後(仮)』)の段階でメルマガ(ブログ)でご紹介しましたが、最終的なタイトルは『沖縄 さまよう木霊~基地反対運動の素顔~』となりました。そこで、このブログ版のタイトルも確定版に変更しました。
 併せて、「取材ディレクターより」も掲載されていましたので、その一部をご紹介します。是非お読みいただければと思います。
(抜粋引用開始)
 「ほっとけなかった・・・」。沖縄で生まれ、沖縄で暮らす泰真実さん(51)が、基地反対運動に関わることになったその理由です。(略)とても優しい目をしている泰さん。ところが、インターネットで検索すると「沖縄極左」「過激派」とされています。1970年代の「成田闘争」で暗躍した人物だと告発する脅迫状が職場にも届きました。根も葉もないデマです。こうして、泰さんはネット空間で危険人物に仕立て上げられていったのです。
 「基地反対運動は県外からの活動家、過激派」。大阪府警機動隊員が東村高江のゲート前で暴言を吐いて以降、そんな言説が一気に広まりました。高江を取り囲んで建設される米軍北部訓練場のヘリ着陸帯に反対する人たちをめぐる風雪。衝撃だったのが、ネット空間に影響されてか「基地反対派は酷いねえ」と身近な人たちが語り始めたことでした。
(略)
 今回の取材では、「え、まさか」と絶句する出来事が連続しました。その極めつけが、「基地反対派は暴力集団」「危険で近寄れない」と新年早々に報じた東京の情報番組。信じる人はいないだろう、そう思う自分がいると同時に、取材を通じ「デマは大げさなほど拡散する」ことを身をもって体験した自分がいます。この言論空間で基地反対運動への虚構が作り上げられようとしているのだとしたら、一体それはなぜなのか・・。突き詰めれば、私たちの暮らしそのものにもつながっていて、沖縄だけの問題ではありません。であるならば、今こそ基地反対運動の素顔に目を向けてほしい。そんな思いで作った番組です。ずっと語り継がれてきた沖縄戦と戦後72年間を歩んできた沖縄の人々の歴史に思いを寄せることができたなら、この言論空間にさまよう木霊(こだま)のありように、これからどう向き合うべきか考えることができると思うのです。

(引用終わり)
 
(参考サイト)
 以下には、「土人」問題についての基礎的資料のみいくつかご紹介しておきます。番組案内に書かれた「インターネットを中心にデマやバッシングが広がり」については、ご自分で確認してみてください。
 

動画(目取間氏撮影/41秒)


(参考サイト2 鶴保庸介国務大臣国会答弁)
第192回国会 参議院 内閣委員会 会議録(第4号)
平成二十八年十一月八日(火曜日)

(抜粋引用開始)
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 法案への質問の前に、鶴保大臣にお聞きをしなければならない問題があります。
 沖縄県東村高江で、ヘリパッド建設に反対する市民に対して、大阪府警から派遣をされた機動隊員が土
人、シナ人という言葉を発したことが大きな問題となっています。
 鶴保大臣は、十月二十一日の記者会見で、大変残念な発言としつつ、殊更これが人権問題と騒ぐのではなく、県民感情を損ねているのかどうか虚心坦懐に見ていきたいと述べられ、さらに三十一日には沖縄県
内で、本当に差別かどうかということになるといろんな問題が出てくると思うと述べられています。
 言論の自由ということにも触れた発言ですが、一般に国民がこういう言葉を使ったというのとは違いま
す。公務員が、しかも逮捕権を持つ警察官が、その公務の行為として、土人、シナ人という言葉を使って市民を侮蔑した、これが人権問題ではないということなんでしょうか。
○国務大臣(鶴保庸介君) 人権問題調査会というのが自民党内にございまして、そこの私は事務局長を長らく務めさせていただきました。人権問題に関しての議論を大変深く、そして広範にわたってこれまで議論をしてきた経験上、人権問題であるかどうかの問題について第三者が一方的に決め付けるというのは
、これは非常に危険なことであります。
 言論の自由は、もちろんどなたにもあることでありますし、そして状況的判断がやっぱりあるものでございます。その人権問題のやっぱり一番のポイントは、被害者、その差別発言を受けた方の感情に寄り添うことであることは論をまたないわけでありますけれども、その感情に対して、どうして、誰がどういう理由でこれが差別であると判断するかについては、大変けんけんがくがくの議論があるところであります

 そうした重い判断を私個人が大臣という立場でこれが差別であるというふうに断じることは到底できな
いことでありまして、まだ今もその議論は続いておると私は認識をしておるからこそ、そういう発言をさせていただきました。
○田村智子君 土人、シナ人という言葉は、自分よりも劣る民族、人種という意味で差別的な侮蔑用語と
して使われてきた、それ以外に使われた例なんて私聞いたことないですよ。
 沖縄県では選挙で何度も米軍基地建設を拒否する意思が示されてきたにもかかわらず、沖縄担当大臣だった島尻氏が参議院選挙で落選した翌日から大量の警察官、機動隊員を動員して高江のヘリパッド建設が強行された。沖縄には民主主義がないのかという猛烈な怒りの声が起こる中で、沖縄県民に対するヘイト
とも言えるような発言が飛び出したわけですよ。
 これ、官房長官も国家公安委員長も遺憾であるという言葉しか述べていない中で、鶴保大臣が、人権問題かどうかとか、こういう事の重大性を薄めるような発言をすると。私は、これはいかがなものかという
ふうに思うんですけれども、もう一言いただきたいんですけれども。
○国務大臣(鶴保庸介君) 今委員がくしくも御発言なさった、土人という発言が差別以外の何物でもないとおっしゃったけれども、それこそが、申し訳ないけれども、私は判断のできるものではないというふ
うに思っています。
 過去に、その土人という言葉の経緯でありますとか、その言葉が出てきた歴史的経緯でありますとか、様々な考え方があります。また、今現在は差別用語とされるようなものであったとしても、過去には流布しておったものも歴史的にはたくさんございます。そんな事例もたくさんございます。そういう意味におきましても、それを、土人であるということが差別であるというふうに、私は個人的に自分がこれは差別
であるというふうには断定はできませんと、このことを強調しておきたいと思います。
(略)
○山本太郎君 ありがとうございます。生活の党と山本太郎となかまたち改め、自由党の山本太郎です。社民党との会派、希望の会を代表いたしまして、人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律案と衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いの確保に関する法律案について質問に入る前に、一つだけ
質問させてください。
 宇宙政策担当大臣として来られている鶴保大臣、沖縄北方担当大臣でもいらっしゃいます。沖縄県東村高江、米軍ヘリパッド建設現場、このことに関しましては田村委員からも御指摘がありましたけれども、抗議活動中の市民に対し、機動隊員が、ぼけ、土人が、シナ人と罵声を浴びせた問題についてお聞きした
いと思います。
 大臣は、十月二十一日、記者会見で、我々がこれが人権問題だというふうに考えるのではなくて、これが果たして県民感情を損ねているかどうかについてしっかり虚心坦懐につぶさに見ていかないといけないと、そのようにおっしゃられました。あの会見から二週間以上、細かく言うと十九日目ですか、本日で、
鶴保大臣が虚心坦懐につぶさに見ていかれた結果、お聞かせ願えますか。
○国務大臣(鶴保庸介君) 先ほど来申し上げておりますとおり、私の立場でこれを断定するべきものではありません。まず、議論を整理したいと思いますが、先ほど田村先生の方からも御指摘がございました。私たち、この差別問題については慎重に、本当に慎重に議論をしないと、これは間違った方向に行く私
は懸念があると心の底からそう思っております。
 威圧的言辞、ぼけとおっしゃったから申し上げますが、こういう威圧的言辞の問題と、またそれが差別
であるかどうかというのはまた違う種類の話でありますから、私としてはこのことについて立場を変えるつもりはございません。
○山本太郎君 全然お答えになってないんですよね。県民感情を損ねているかどうかについてしっかり虚心坦懐につぶさに見ていかないといけないということで、十九日間たったんですけれども、これ、県民感
情を損ねているということにならないんですか。
 県民に対して土人、県民に対してシナ人という言葉を、逮捕権を持つ機動隊員が、特権を持っているということですよ、これ、権力者ですよね、権力者側からそのような発言が行われたということ自体、これ、県民感情を損ねているというふうには十九日たった今でも感じられないということでよろしいですか、
感じられていないということで。
○国務大臣(鶴保庸介君) お答えを繰り返しになって大変恐縮でありますが、県民感情を損ねていると私が断定するものではありません。また、しないと、していないというふうに断定もできません。私は、
そのことについてはこれを申し上げる立場にないということを強調しておきたいと思います。
(引用終わり)
 
動画 2016 11 08 参議院内閣委員会(2時間51分)

※田村智子議員(日本共産党)の質問は1時間23分から、山本太郎議員(自由党)の質問は2時間02分からです。
 
(参考サイト3 「土人」問題に関する質問主意書と内閣答弁)
~「土人」発言自体について~
長妻昭衆議院議員(民進党・無所属クラブ) 提出日:平成28年10月20日
「機動隊員の沖縄における暴言に関する質問主意書」

※この長妻議員の質問主意書は、基本的な事実関係の確認を求めるものでしたから、それに対する内閣答弁書は、この問題の事実関係の基本的前提(政府が公式に認めたもの)となるものですから、以下に引用
しておく価値があるでしょう。
(答弁本文を引用開始)
 沖縄県警察によると、平成二十八年十月十八日、大阪府警察の管区機動隊隊員として同県警察に派遣された巡査及び巡査部長それぞれ一名が、北部訓練場のヘリコプター着陸帯の移設工事に反対する個人に対し、それぞれ「シナ人」又は「土人」と発言したとのことであり、同府警察によると、同月二十一日、同府警察において、当該発言が、地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)第三十二条等の規定に違反することから、これらの警察官に対し、同法第二十九条第一項第一号、第二号及び第三号の規定に該当するとして戒告の処分(以下「本件処分」という。)を行ったとのことである。また、同府警察によると、これらの警察官については、いずれも「感情が高ぶる」などした結果当該発言をしたとのことであるが、お尋ねの「沖縄の人を見下していた」との認識はなかったとのことである。内閣としては、本件事案は極めて遺憾であると考えており、警察庁において、全国の警察に対し、適切な警備実施を確保するための指導教養の確実な実施等を指示したところである。なお、お尋ねの「沖縄における警察の警備において、警察官が暴言を吐いたり、暴力をふるったりした事例」の意味するところが必ずしも明らかではないが、同庁として把握している限りでは、本件処分を除き、沖縄県内における警備活動を実施中の警察官の行
為について懲戒処分が行われた事例はない。
(引用終わり)
 
仲里利信衆議院議員(無所属) 提出日:平成28年10月25日
「沖縄県東村高江のヘリパッド建設工事に反対する住民・県民を警備するため派遣された大阪府機動隊員
による差別発言に関する質問主意書」

※仲里議員によるこの1回目の質問主意書では、鶴保大臣による(参院内閣委員会での発言はまだ飛び出していなかったので、その前の)記者会見における発言を取り上げていますので、その部分の質問主意とこれに対す
る内閣答弁をご紹介します。
(抜粋引用開始)
仲里議員質問主意
四 質問三に関連して、鶴保庸介沖縄担当大臣は差別発言に対して「果たして県民感情を損ねているかど
うかにしっかり虚心坦懐、見ていかないといけない」とし、さらに「言論の自由、社会の自由が著しく損ねられているという論争に今もなっている。今のタイミングで「間違っている」「正しい」ということでもない。答えられるのは、これはつぶさに見ていかざるを得ない」と述べ、人権問題には当たらないとの認識を示している。これらの発言は一見すると慎重な対応を心掛けたいとの発言であるかのように見受けられるが、その実、問題をすり替え、ことさら矮小化しようとする発言に他ならない。鶴保沖縄担当大臣は、なぜ沖縄県民や沖縄県議会、市町村議会、市町村が相次いで抗議の意思を表示し、謝罪と撤回を求めているか真摯に考えるべきである。特に沖縄担当大臣であればこそ沖縄県民の思いに寄り添い、今回の差別発言がいかに沖縄県民の心を傷つけ、政府への不信感と怒りを増大させているかについて率先して配慮
すべきであると思われるが、政府の認識と見解を答えられたい。
内閣答弁
 御指摘の「今回の差別発言がいかに沖縄県民の心を傷つけ、政府への不信感と怒りを増大させているか
」の意味するところが必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難であるが、御指摘の鶴保国務大臣の発言については、本件発言を人権問題と捉えるかどうかについては、言われた側の感情に主軸を置いて判断すべきであり、本件発言が沖縄県民の感情を傷つけたという事実があるならばしっかりと襟を正していかなければならず、また、人権問題と捉えるかどうかも含め、個別の事案についてはつぶさにこれを注視していくことが重要であるとの趣旨を述べたものであり、「問題をすり替え、ことさら矮小化しよ
うと」したものではなく、自らの見識に基づき適切に判断し発言したものと承知している。
(引用終わり)
 

※大西、初鹿、仲里各衆議院議員に対する内閣答弁は、いずれも11月18日付でなされており、ここで
は大西議員の質問主意書に対する答弁を引用します。
(引用開始)
 お尋ねの「差別用語」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではなく、一概にお答えすることは困難であるが、「土人」という語は、例えば、広辞苑(第六版)によれば、「①その土地に生まれ住む人。土着の人。土民。②未開の土着人。軽侮の意を含んで使われた。③土でつくった人形。土人形。泥人形。」とされているものと承知しており、この語がどのような意味合いで用いられているかについて、一義
的に述べることは困難である。
 この点、鶴保国務大臣は、平成二十八年十月十八日、大阪府警察から沖縄県警察に派遣された警察官が、北部訓練場のヘリコプター着陸帯の移設工事に反対する個人に対し、「土人」と発言したこと(以下「本件発言」という。)については、警察官のように逮捕権を有し、公権力を行使する者がかかる言動を行ったことについては許すまじきことと考えている一方で、本件発言を人権問題と捉えるかどうかについては、言われた側の感情に主軸を置いて判断すべきであり、本件発言が沖縄県民の感情を傷つけたという事実があるならばしっかりと襟を正していかなければならず、また、人権問題と捉えるかどうかも含め、個別の事案についてはつぶさにこれを注視していくことが重要であるとの趣旨を述べており、菅内閣官房長官からも政府の見解として同様の趣旨を述べているところであり、鶴保国務大臣が謝罪し、国会での答弁
を訂正する必要はないと考えている。
(引用終わり)
 

「原発被害者の子どもに対するいじめについての声明」(12/22原発被害者訴訟原告団全国連絡会)を是非読んで広めてください

 今晩(2016年12月23日)配信した「メルマガ金原No.2669」を転載します。

「原発被害者の子どもに対するいじめについての声明」(12/22原発被害者訴訟原告団全国連絡会)を是非読んで広めてください

 東京電力福島第一原発事故で福島県から横浜市に自主避難した現在中学1年生の男子生徒が、転入先の横浜市立小学校でいじめを受けて不登校になった問題は、多くの人に暗澹たる思いを抱かせたことと思います。
 報道により、経過を再確認しておきましょう。

東京新聞 2016年11月9日 夕刊
横浜で原発避難の生徒にいじめ 第三者委、学校など批判

(抜粋引用開始)
 
東京電力福島第一原発事故で福島県から横浜市に自主避難した中学一年の男子生徒(13)が不登校になり、いじめ防止対策推進法に基づく調査の結果、横浜市教育委員会の第三者委員会が避難直後から同級生によるいじめがあったと認定し、市教委や学校の対応を「教育の放棄」などと批判する報告書をまとめたことが、生徒側への取材で分かった。
 報告書によると、生徒は小学二年だった二〇一一年八月、横浜市立小に転校。直後から名前に菌を付けて呼ばれたり、蹴られたりするなどのいじめを受け、小三になって一時、不登校になった。
 小五の時には、同級生から「(原発事故の)賠償金をもらっているだろう」と言われ、ゲームセンターでの遊興費などを負担。一回当たり五万~十万円を約十回、十人前後に支払ったと生徒は証言した。その後現在に至るまで不登校が続いている。
 第三者委は、学校側について「原発事故からの避難で内面的な問題を抱えた生徒への配慮に欠け、積極的に対応する姿勢がうかがえない」と指摘。金銭の授受そのものはいじめと認定していないが、いじめから逃れるためだったと推察できるとし、事態を把握しながら指導しなかったことを「教育の放棄に等しい」と批判した。市教委に対しても、重大事態と捉えず調査の開始が遅れ、生徒への適切な支援が遅れたとした。
 生徒側が昨年十二月、調査を求める申し入れ書を市に提出。推進法に基づき、市教委の諮問で第三者委が調査していた。
 両親によると、生徒は精神的に不安定でカウンセリングを受けている。母親は取材に「市教委や学校は指摘されたことを受け止め、二度と同じことを繰り返さないでほしい」と話した。
(引用終わり)
 
毎日新聞 2016年11月15日 21時17分(最終更新 11月15日 23時16分)
いじめ 福島から避難生徒、手記を公表 横浜の中1

(抜粋引用開始)
 
生徒側の代理人の弁護士が15日、記者会見し、生徒の手記と保護者の声明を公表した。生徒は手記の中で「いままでなんかいも死のうとおもった。でも、しんさいでいっぱい死んだからつらいけどぼくはいきるときめた」などと書き記していた。
(引用終わり)
 
毎日新聞 2016年11月15日 19時26分(最終更新 11月15日 20時44分)
いじめ 不登校生徒の手記詳細 福島から横浜に避難

(抜粋引用開始)
「(加害児童生徒の)3人から…お金をもってこいと言われた」
「○○○(加害児童生徒名)からは メールでも 言われた」
「人目が きにならないとこで もってこいと 言われた」
「お金 もってこいと言われたとき すごい いらいらと くやしさが あったけど ていこうすると またいじめがはじまるとおもって なにもできずに ただこわくてしょうがなかった」
「ばいしょう金あるだろ と言われ むかつくし、ていこうできなかったのも くやしい」
「○○○(加害児童生徒名) ○○(加害児童生徒名) には いつも けられたり、なぐられたり ランドセルふりま(わ)される、 かいだんではおされたりして いつもどこでおわるか わかんなかったので こわかった。」
「ばいきんあつかいされて、 ほうしゃのうだとおもって いつもつらかった。 福島の人は いじめられるとおもった。 なにも ていこうできなかった」
「いままで いろんな はなしを してきたけど (学校は)しんようしてくれなかった」
「なんかいも せんせいに 言(お)うとすると むしされてた」

(引用終わり)
 
読売オンライン 2016年12月13日
原発避難問題 いじめ内容、一部公表

(抜粋引用開始~
 
2011年の東京電力福島第一原発事故後に福島県から避難した男子生徒(13)が、転校先の横浜市立小でいじめを受けた問題で、同市教育委員会は12日、これまで公表していなかったいじめの内容の一部を市議会で明らかにした。市議からは、市教委の対応の遅れを批判する声が相次いだ。
 この日は、市教委の第三者委員会が11月にまとめた報告書のうち、生徒が2~5年生時に「プロレスごっこ」と称して複数人から暴力を受けていたことなどが市議会の常任委員会で公開された。一方で、「内部調整が終わっていない」(市教委)などとして、5年生の時に同級生らから「賠償金もらっているだろう」などと言われたことについては、引き続き明らかにしなかった。
 生徒が不登校となったため、保護者が学校に「100万円以上の現金がなくなった」「2年生の時からいじめがあり、いじめられるのが嫌でお金を持っていった」などと相談したことや、「学校が話を聞いてくれない」と副校長に訴えたことなども伏せられた。
 生徒側の代理人弁護士は読売新聞の取材に「一歩前進だ」としながらも、「個人情報でない部分も非公開となっていることは問題だ」と指摘した。
(引用終わり)

 上記報道にいう横浜市教育委員会の第三者委員会というのは、「横浜市いじめ問題専門委員会」のことで、いじめ防止対策推進法(平成二十五年六月二十八日法律第七十一号)第14条3項「前二項の規定を踏まえ、教育委員会といじめ問題対策連絡協議会との円滑な連携の下に、地方いじめ防止基本方針に基づく地域におけるいじめの防止等のための対策を実効的に行うようにするため必要があるときは、教育委員会に附属機関として必要な組織を置くことができるものとする。」に基づき、横浜市いじめ問題対策連絡協議会等条例(平成26年2月25日条例第7号)によって設置された組織です。
 同条例によれば、いじめ問題専門委員会は、「教育委員会の諮問に応じて、法第1条に規定するいじめの防止等のための対策その他教育委員会が必要と認める事項について調査審議し、答申し、又は意見を具申する。」(第11条)とあり、今回の具体的ないじめ問題の調査は、「その他教育委員会が必要と認める事項について調査審議し、答申し、又は意見を具申する。」活動の一環として行ったということです。

 このような「いじめ問題専門委員会」は、多くの自治体が条例によって設置しており、教育学、医学、心理学の専門家などと並び、弁護士も委員に加わっているのが通例です。
 私自身、所属弁護士会の推薦により、和歌山県下の某市教育委員会が設置した「いじめ問題専門委員会」の委員を務めています。
 「いじめ問題専門委員会」が調査にあたる案件は、いじめ防止対策推進法第28条1項に定めるいじめ事案、すなわち、
一 いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき。
二 いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき。
のいずれかに該当すると認める(とりあえずの認定権は教育委員会にあるのでしょう)事案ということになるのが通常だと思いますが、仮にそこまでの認定に至らぬ段階であっても、いじめ防止のための適切な提言を心掛けねばと気持ちを引き締めています。

 ところで、昨日(12月22日)、東京都千代田区霞が関の司法記者クラブにおいて、原発被害者訴訟原告団全国連絡会の代表らが出席して記者会見を開き、「原発被害者の子どもに対するいじめについての声明」を発表しました。
 同会共同代表の1人である森松明希子さんのFacebookに「声明」全文が掲載され、「できるだけ多くの方々に広めて下さい。」ということでしたので、以下に全文転載することとしました。
 「声明」はその末尾で、「子ども社会で起きていることは、大人の社会を映し出している鏡のようなものです。「子どものいじめ」は,実は誰にでも起こりうることです。そして何よりも、被害者への「いじめ」はそれによって自死に至ることもある、人の命に係わる重大な問題であり、国際人権法と日本国憲法で保障された、基本的人権の侵害にほかなりません。」「子ども達に対するいじめがあってはならないことはもちろんですが、これを子どもだけの「子どものいじめ」問題として捉えるのでは不十分です。」と訴えます。
 原発避難者である児童生徒に対するいじめのさらに奥にあるものへの理解を訴えるこの「声明」に込められた思いを、1人でも多くの方に共有していただきたく、ご紹介しました。「拡散」にご協力いただければ幸いです。
 なお、記者会見の動画はないかと探しているのですが、残念ながら見つけられませんでした。

(引用開始)
         原発被害者の子どもに対するいじめについての声明

 2016年12月22日

                 原発被害者訴訟原告団全国連絡会
                   共同代表 早川篤雄 中島孝 鴨下祐也
                           村田弘 森松明希子 金本友孝

胸が痛むいじめ事件
 横浜市の事例をはじめとして、各地に避難している原発避難者の子どもに対するいじめ事件が報道されています。
 私たちは、この「いじめ」の連鎖に深い悲しみと怒りに打ちひしがれています。どのような理由であれ、いじめは絶対に許されるものではないことを訴えます。本来学校は、子どもたちが安心して教育を受けられる場でなくてはならないはずです。管理が強化されているなかでも、学校は子どもたちの成長や悩みに寄り添い、すこやかな人格の形成を進める場であってほしいと願います。
 残念なことに、報道された原発避難者の子どもに対するいじめは氷山の一角です。そして、子どものみならず、大人の世界でも、心ない仕打ちや嫌がらせという事態が続いているのが実情です。全国21か所で提訴している私たちの裁判の中でも、以下のように、多くの法廷で、子どもや大人に対するいじめや嫌がらせがあることが明らかにされています。
・避難地から福島に戻り、新しい学校に転校、少し新学期から遅れたために、いじめにあった。その結果不登校になり、転校した。
・福島県民と分かると差別されるので、出身地を言えない。隠れるように生活している。
・福島から来ましたとあいさつをしたら、あなたとはおつきあいできませんと言われた。
 私達原発事故被害者は、このような事態が生じてしまう根底には、残念ながら、以下のとおり、原発事故による被害者が置かれた現状に対する周囲の理解が不足しているものと感じています。

原発事故による避難者が置かれた現状

 原発事故による避難者は、原発事故そのものによる被害を受けたばかりか、国や東京電力による誤った被害対応と、被害区域の線引きによる「分断」、不当な「帰還政策」による被害者の切り捨てによって、さらに苦しめられています。
 国と東京電力は事故発生の直後から、国による避難指示の範囲と被害補償をリンクさせる「分断」政策をとることによって、責任を曖昧にして賠償を低額にとどめようとしてきました。その ために被災者は、「避難するか、留まるか」という、いのちと健康に関わる個々の判断を「賠償」の有無という「基準」によって歪められてきました。
 その結果、被害補償の打ち切りによって不本意な帰還を余儀なくされ、他方では避難区域外からの避難者は、現に避難生活が続いているのに、何の保障も得られず、困窮に陥るという事態が生じたのです。
 さらに、事故後5年目を迎えた昨年から、国と東京電力は、「福島原発は終わった」「汚染水は完全にブロックされている」という誤った説明を繰り返して、「帰還強要」政策を強めました。
 すなわち、来年2017年3月には帰還困難区域を除いた避難区域を解除し、これと 合わせて賠償と住宅支援打ち切りという、被害者の切り捨てを強行しようとしており、福島県もそれを容認しています。
 他方で、帰還困難区域についても、復興支援住宅などへの「定住」を求める政策が始まっています。これらは、「もう安全だから避難など認めない」か、「もう戻れないのだから移住しろ」という両面によって、「避難者をいなくする=抹消する」ことを目論む政策と言わざるを得ません。
 その「論拠」として言われているのが「20ミリシーベルト以下の放射線被ばくには健康への影響はない、癌の発症率は、喫煙、肥満、野菜不足の方が高いなどという 「20ミリシーベルト安全論 」です。しかし、そのような言説は、国際的な放射線防護学の知見に反するものであり、ICRP(国際放射線防護委員会)の見解では、100ミリシーベルト以下においても、被ばくした線量に応じた影響があるとされています。それにもかかわらず、国と東京電力は、あたかも福島県全土が放射能汚染から解き放された安全な地域になった、帰らない方が悪いと思わせようとする政策をとり続けているのです。
 その目的は、賠償責任を小さくすることと、帰還の促進によって「復興」を進めようとすることです。こうした意図による「復興政策」「避難者抹消政策」のために、困難な避難生活をしている被害者が一層困難な状況に追いやられていることを、どうかご理解頂きたいと思います。
 このような 政策が実施され、さらにはその内実や被害者の置かれている実情の報道が不十分な中で、誤解と偏見が蔓延していることから、残念ながら、本来被害者である福島県民・原発被害者 に対し、「多額の賠償金をもらっている」とか「なぜ帰らないのか、わがままだ」という誤った理解や、歪んだ見方をしてしまう風潮がつくられていることも事実です。
 私達は、原発事故による被害者が置かれたこのような現状が周囲に十分に理解されていないことが、全国で報道されているような、いじめや嫌がらせにつながっているのではないかと感じています。

深刻な被害の継続と、 国と東電の明白な加害責任
 各地における被害者を原告にした裁判を通じて、避難区域からの強制避難者も避難区域外からの避難者も同様に、避難生活による著しい生活阻害による苦痛が今も続いていること、そして「故郷(ふるさと)の喪失」という深刻な被害が生じていることが明らかになっています。被災者の多くは、懐かしい町で家庭を築き、学び、働き、地域の暖かな交流の中で過ごしてきたのです。そうした大切な故郷(ふるさと)に戻れないということは、人間にとって耐えがたい事態です。
 そして、現在も多くの被害者が避難生活を続けていますが、皆、故郷(ふるさと)を深く愛しているけれども、「避難をする必要があるので避難を続けている」のです。誰が、深く愛している故郷を、理由もなく離れることができるでしょうか。
 原発事故被害者が受けている甚大な被害は、国と東京電力の過失によるものであり、法的責任を負うことも明白です。これまでに多くの専門家の知見によって、この事故は「想定外の自然災害」などではなく、東京電力は津波によるシビアアクシデントの発生を予見できたこと、従ってこの事故を防止する手段を講じることが可能であったことが示されました。また、原発事業に対する安全規制の責任を負う国も、必要な規制権限の行使を怠っていたことが明らかにされています。
 それにも関わらず、被害者である避難者が、被ばくを避けるためにやむを得ず行っている避難生活について、心ない批判や理不尽な仕打ちを受けることは、まことに残念な事態です。

私たちは訴えます

 子ども社会で起きていることは、大人の社会を映し出している鏡のようなものです。「子どものいじめ」は,実は誰にでも起こりうることです。そして何よりも、被害者への「いじめ」はそれによって自死に至ることもある、人の命に係わる重大な問題であり、国際人権法と日本国憲法で保障された、基本的人権の侵害にほかなりません。原発事故にかぎらず、すべての災害の被災者は社会全体で保護すべきであることは国際人権法で確立されている原則です。
 子ども達に対するいじめがあってはならないことはもちろんですが、これを子どもだけの「子どものいじめ」問題として捉えるのでは不十分です。私たちは、上記のとおり、やむを得ず故郷(ふるさと)を失い、困難な避難生活を送っている深刻な被害、あるいは今も日々被ばくの不安にさらされている被害の実相について、多くの国民のみなさんのご理解を切に願うものです。それが、原発事故を二度と起こさないための、そして被害者への二重の侵害となるいじめを繰り返さないために必要な礎になると信じます。
 みなさまのご理解と温かいご支援をお願いいたします。
                                     以上
(引用終わり) 

弁護士ドットコム・ニュース 2016年12月22日 17時35分
原発避難でいじめ、原告団が声明「報道は氷山の一角」「大人の世界でも嫌がらせ」

(付録)
『Don't mind(どんまい)』 
作詞・作曲:ヒポポ大王 演奏:ヒポポフォークゲリラ
 

「戦争できる法と社会のつくり方」を視聴しよう(12/16日隅一雄・情報流通促進基金)~金平茂紀さん、海渡雄一さん、小笠原みどりさん

 今晩(2016年12月19日)配信した「メルマガ金原No.2665」を転載します。

「戦争できる法と社会のつくり方」を視聴しよう(12/16日隅一雄・情報流通促進基金)~金平茂紀さん、海渡雄一さん、小笠原みどりさん

 「一般社団法人 News for the People in Japan」が運営するサイト「NPJ」は、今年の8月末にかなり大がかりな運営方針の変更を行いましたが、「NPJ動画ニュース」での動画配信の積極的推進は、その改革の一環であろうと思います。
 今日は、去る12月16日(金)に日比谷図書文化館大ホールで開催された「戦争できる法と社会のつくり方」の中継動画がアップされていましたので、私自身、全編視聴はこれからですが、多くの方にご覧いただきたい好企画なので、とりあえず紹介させていただきます。
 本シンポジウム(とはチラシには書かれていませんが)の概要を、チラシ記載情報から転載します。

(引用開始)
戦争できる法と社会のつくり方
●日時:2016年12月16日(金)18:30~20:30
●会場:日比谷図書文化館大ホール(東京都千代田区日比谷公園1-4)
●参加費:無料
●主催:日隅一雄・情報流通促進基金
  共催:NPJ、ファシズムと言論研究会
●講演:報道の自由の現在と緊急事態宣言条項 金平茂紀さん(ジャーナリスト)
●講演:治安維持法・隣組・特高がつくる密告社会 海渡雄一さん(弁護士)
●パネルディスカッション:戦争できる社会を食い止める!
  金平茂紀さん・海渡雄一さん・梓澤和幸さん(弁護士)
●開催趣旨
 政府は、広範な市民活動が検挙の対象となりうる共謀罪法案の国会提出を検討しています。また自民党憲法改正案には緊急事態宣言条項が盛り込まれています。2013年12月に成立した特定秘密保護法につづいて、今後ジャーナリズムや市民活動への監視と規制が強まることが懸念されます。過去の戦争はどんな法と社会の中で遂行されていったのかを踏まえつつ、いま何が起きているのか、そして私たちに何ができるのかを一緒に考えましょう。
●問合先:東京共同法律事務所 03-3341-3133
(引用終わり)

 以上は、チラシに掲載された「予定」であったのですが、基調講演を予定されていた金平茂紀さんが、よんどころない業務のために登壇できなくなったという予告記事が何日か前に掲載されたのですが、今日(19日)アップされた動画を見てみると、講演の順番は海渡雄一弁護士の方が先に登壇されていましたが、日露首脳会談の取材を途中で放り出した(?)金平さんがちゃんと駆け付けてお話されていました。金平さんとしても、いったんは取材優先ということで欠席することにしたものの、考えを変えたということであり、まずは皆さん、動画の34分からの金平さんの発言から聴かれてはどうでしょうか。
 それから、金平さん欠席ということで急遽「代役」として登壇されるといったん予告されたのがカナダ在住のジャーナリスト・小笠原みどりさんで、実際にも、パネルディスカッションの冒頭で基調発言をされており、小笠原さんが加わったことにより、結果として議論に厚みが出たのではないかと思います。
小笠原みどりさんについて
「朝日新聞記者を経て、2004年、米スタンフォード大でフルブライト・ジャーナリスト研修。現在、カナダ・クイーンズ大学大学院博士課程在籍。監視社会 批判を続ける。  共著に『共通番号制(マイナンバー)なんていらない!』(航思社)、共訳に『監視スタディーズ』(岩波書店)。近著に「スノーデン、監視社会の恐怖を語る 独占インタビュー全記録 」(毎日新聞社出版)」

 
戦争できる 法と社会のつくり方(2時間15分)

冒頭~ 開会挨拶 梓澤和幸氏(弁護士)
7分~ 「良心を、あきらめず(エルズバーグ映画)」予告編上映
9分~ 海渡雄一氏(弁護士)講演「戦争できる法と社会のつくりかた」
34分~ 金平茂紀氏(ジャーナリスト)講演
1時間03分~ パネルディスカッション
パネラー
 小笠原みどり氏(ジャーナリスト)
 金平茂紀氏
 海渡雄一氏
コーディネーター 
 梓澤和幸氏
 
 故・日隅一雄弁護士は、NPJの初代事務局長でもあり、このシンポジウムは、NPJにとって(形式上は「共催」とはいえ)、最も重要な主催行事と言っても過言ではないでしょう。
 まさに、「今」最も重要なことは何かを考える得難い企画であると思います。是非皆さん視聴されますように。

藤田早苗氏講演会「改憲するとどうなる?―日本の『言論・報道の自由』は今」(12/10安全保障関連法に反対する関西圏大学・有志の会)視聴の薦め(IWJ京都)

 今晩(2016年12月15日)配信した「メルマガ金原No.2661」を転載します。

藤田早苗氏講演会「改憲するとどうなる?―日本の『言論・報道の自由』は今」(12/10安全保障関連法に反対する関西圏大学・有志の会)視聴の薦め(IWJ京都)

 風邪引き、なのでしょうね。熱は全くないのでインフルエンザとも思いにくいし。まだ夕方5時にもならないうちに「早退け」したのは何年ぶりかですが。
 こんな日にも、メルマガ(ブログ)「毎日配信」を続けようというのですから、我ながら「異常」というか「意地」というか。
 ただ、さすがにあれこれ情報を検索している体力はないので、IWJ京都が中継した動画が気になっていましたので、これをご紹介することにしました。
 それは、「安全保障関連法に反対する関西圏大学・有志の会」が主催し、奇しくも国際人権デー当日の12月10日、京都市の龍谷大学響都ホールで開かれた藤田早苗氏(英エセックス大学人権センターフェロー)講演会「改憲するとどうなる? ―日本の『言論・報道の自由』は今」です。
 IWJの地方局の中では、大阪や岡山と並び、京都はその取り上げるラインナップが充実しており、画質はともかく、音質・音量は概ね聴き取りやすいレベルであり、しかも、原則として、非会員でも全編視聴できますので、お薦めです。
 

 講演の冒頭で藤田さんが紹介している2015年2月2日に駐英日本大使館から在英邦人に送られたメールの内容は衝撃的です。藤田さんから岩上安身さんに送られ、すぐにIWJで公開された記事も是非読み返して欲しいですね。

IWJ 安倍総理の報復宣言で150万人の在外邦人の安全が脅かされる! 平和国家・日本の「ブランド」に終幕!? イギリスから岩上安身に届いた在外邦人の叫び 2015.2.10
(抜粋引用開始)
岩上さま、(スタッフの皆様)
 イギリスから藤田です。昨日の古賀さんのインタビュー拝見しました。
 インタビューで話された内容、もう「ステップ」まで来ている、ということ、今回の「外交ミス」は実は確信犯だったというのも、気がめいりましたが、とても勉強になりました。ありがとうございます。
 今日、「在英国日本大使館からのお知らせ」がメールできました。「今回の事案の発生によって、日本人及び日本の関連施設がテロ・誘拐等のターゲットになり得ることが改めて明らかになりました」と。そして注意事項として:○常にアンテナを張って、○連絡手段の再確認、○その日の行動日程の共有… そして、こんなことまで・・
 
目立たない
 当地は様々な人種の人たちが住んでいるので、日本語であっても公の場(レストランなど)での言動に注意→政治的な話や特定の国や民族、宗教、習慣、文化などについて大声で話さない。
周囲に注意を向ける
 人が多く集まる場所を訪れる際には、周囲にも注意を払うようにする。また、一つの場所に不必要に長居しない(待ち合わせ場所の選定等にも注意)。

 2005年7月7日のロンドンでのテロ事件の時も、「私の国は大丈夫だ」と日本の平和主義を本当に誇りに思い、感謝したのに、現政権の悪政のおかげでみるみるそれが崩れていくのを見ていて毎日いたたまれない思いです。ほんとに最近気がめいっています(特に周りに日本人の仲間がいないのもきついかな)。
(引用終わり)

12/18「ふぉーらむ 食・遊・学びの子ども居場所づくりで 地域で子そだち・子そだて支援」(放送大学和歌山学習センター)のご案内

 今晩(2016年12月2日)配信した「メルマガ金原No.2648」を転載します。

12/18「ふぉーらむ 食・遊・学びの子ども居場所づくりで 地域で子そだち・子そだて支援」(放送大学和歌山学習センター)のご案内

 知っている人は前から注目していたものの、このメッセージで初めて「子ども食堂」って何?と思った
方もおられるかもしれませんね。
 

あなたは決してひとりではありません。
こども食堂でともにテーブルを囲んでくれる
おじさん、おばさん。
学校で分からなかった勉強を助けてくれるお兄さん、お姉さん。
あなたが助けを求めて一歩ふみだせば、
そばで支え、その手を導いてくれる人が
必ずいます。
あなたの未来を決めるのはあなた自身です。
あなたが興味をもったこと、好きなことに
思い切りチャレンジしてください。
あなたが夢をかなえ、活躍することを、
応援しています。

平成28年11月8日

内閣総理大臣
安倍晋三
(引用終わり)

 SNSの世界では、「子ども食堂」がなぜ必要となったのかを考えれば、「総理大臣としてよくこんな
ことが言えるな」、「呆れ果てた」という反応が多かったと思いますが、ネトウヨ界ではこれでも「賞賛の嵐」だったのかもしれません。
 もともと、「子供の未来応援国民運動」自体、「何だかなあ」といういかがわしさはぬぐえず、その官
製・国民運動の「一周年の集い」で発表されたメッセージですから、まことに運動の実体に則した内容のメッセージだという評価(?)が可能かもしれません。
 悪くとれば、この官製・国民運動に「子ども食堂」が絡め取られて変質する恐れも絶無ではないかもしれませんが、それはさておき。
 
 いずれにせよ、「子ども食堂」の知名度アップになにがしかの貢献はあったということで、この機を逃さず、その実態を広く国民に知ってもらう必要がありますが、その一助となる企画の案内が届きましたので、ご紹介することとしました。
 それは、放送大学和歌山学習センター地域貢献プロジェクト2016「食・遊・学びの子ども居場所づ
くりで 地域で子そだち・子そだて支援」の一環としてのフォーラムを開催するという案内です。
 以下に、チラシ掲載の情報を転記してご紹介します。

チラシから引用開始)
放送大学和歌山学習センター地域貢献2016 公開講演Ⅱ

ふぉーらむ
食・遊・学びの子ども居場所づくりで 
地域で子そだち・子そだて支援

日時 2016年
12月18日(日)
    13時30分~16時15分(13時 受付開始)
場所 和歌山大学地域連携・生涯学習センター2階ホール(和歌山県立図書館の東隣り)
     和歌山市西高松1丁目7-20

第1部 基調講演 13時30分~15時00分 
①子どもはジグザグの道を歩む-生きづらさと向き合う子どもを支える-
  講師:谷尻 治 氏(和歌山大学教育学部 教職大学院 教授)
②子ども食堂でみんなの居場所づくり-私たちにできること-
  講師:新家 貢 氏(中之島子ども食堂 代表)

第2部 パネル討論 15時15分~16時15分
問題提起
地域で子そだち・子そだて支援-みんなの居場所、逃げ場所、心の修復場所づくり-
コーディネーター 
 森下順子氏(放送大学客員准教授/和歌山信愛女子短期大学准教授) 
パネリスト
 谷尻 治 氏 
 新家 貢 氏
 古賀敬教 氏(NPOフードバンク和歌山 会長)
 阪田由美子 氏(和歌山大学地域連携・生涯学習センター子そだて支援員研修担当/放送大学学生)

お申し込み・お問い合わせ
放送大学 和歌山学習センター

〒641-0051 和歌山市西高松1-7-20
TEL 073-431-0360
Email
wakayama-sc@ouj.ac.jp
(引用終わり)

 私自身、放送大学和歌山学習センターに所属する現役の学生(あと2年は在籍できます~うっかり卒業に必要な単位を取ってしまわない限り)であり、時々このような案内が学習センターから届きます。参加
したいと思う企画も少なくないのですが、なかなか日程が合わず、めったに参加できないのが残念です。
 実際、今日ご紹介した12月18日(日)の企画にしても、案内が届いた時には既に別件の予定が入っ
てしまっており、私自身は参加することができません。
 けれども、これは放送大学とは関係のない市民の方にも、きっと関心をもってご参加いただける企画だ
と思いましたので、メルマガ(ブログ)でご案内することとしました。
 なお、参加される場合には、駐車場に限りがありますので(はっきり言って少ないです)、極力公共交通機関を利用されるようにお勧めします。

「避難の権利」を訴える総理大臣と福島県知事への手紙~森松明希子さんから

 今晩(2016年11月30日)配信した「メルマガ金原No.2646」を転載します。

「避難の権利」を訴える総理大臣と福島県知事への手紙~森松明希子さんから

 原発事故被害者団体連絡会(ひだんれん)、原発被害者訴訟原告団全国連絡会、避難住宅問題連絡会、「避難の権利」を求める全国避難者の会の4団体は、「自主避難者の住宅無償提供継続を求める/原発事故被害者を切り捨てるな!/4団体共同全国集会in福島」を12月4日に開催します(会場:福島県教育会館)。
 連絡先となっている「ひだんれん」のホームページは、以下のようにアピールしています。
 
(引用開始)
 日本政府と福島県による、自主避難者の住宅無償提供打ち切りは、すでに社会的、経済的にダメージを受けている避難者を切り捨て、救済をせず無権利状態に陥れることになり、人道上も許せることではありません。また、このことは原発事故被害者全体の今後に大きな悪影響を及ぼすことになり、認めることはできません。
 私たちは12月6日からの福島県議会に、自主避難者の住宅無償提供の継続を求め、請願書を提出します。
 これに向けて、11月28日(月)から12月2日(金)までの1週間、県庁前アピールと内堀県知事に直訴する連続行動を行い、12月4日(日)は4団体共同の全国集会とデモを開催します。
 和製パンク「切腹ピストルズ」も全国から集結して一緒に福島の街を練り歩きます。参加する方の鳴り物、踊りの飛び入り大歓迎!
 原発事故被害者の切り捨てを許さないために、是非、ご参集ください!
(引用終わり)
チラシ(PDF)

 内堀雅雄福島県知事に対する「直訴状」の一部が「ひだんれん」ホームページに掲載されています(11月28日の知事への直訴状より抜粋)。

 避難先自治体が独自の支援策(公営住宅の1年間無償提供など)を決定したというニュースに接することはあるものの、国や福島県が来年3月で災害救助法に基づく住宅無償提供を打ち切るという方針を変えるという兆候も認められぬ中、避難者4団体が実施することとなった企画です。

 このような動きに呼応して(だろうと思いますが)、森松明希子さん(原発賠償関西訴訟原告団代表、東日本大震災避難者の会 Thanks & Dream 代表)が、安倍晋三内閣総理大臣と内堀雅雄福島県知事に対する手紙(2016年11月28日付)を公開しました。
 「住宅支援を受けておられる方が最も当事者性があり説得力もあるのも承知で、私も何か力になれないか、意見表明はできないかと考え、一福島県民、一国民、一避難民として渾身の思いで書いた」そうで(森松さん自身は住宅支援は受けていません)、「無断で転記・転載、大歓迎」ということなので、私のメルマガ&ブログに「無断転載」することにしました。
 ただ、文章自体は、サンドリのホームページに掲載されたものをそのまま転載したことはもちろんですが、どこで改行するか、どこで1行空白スペースを設けるか、などの文章の体裁については、私の判断で(つまり私の読み方に従って)大幅に改めていることをお断りします(これも「無断」ですが、森松さん、「金原編集ヴァージョン」もOKですよね?)。
 「「避難の権利」を訴える総理大臣と福島県知事への手紙」というタイトルも、手紙を読んだ上で、私が考えたものです。住宅支援継続問題も、つまりは「避難の権利」を認めるかどうかというところが岐れ目なのだ、という主張だと私は読み取ったのですが、これはあくまで私個人の読み方です。
 

内閣総理大臣 安倍 晋三さま
福島県知事 内堀 雅雄さま

 前略

「復興庁 避難者消したら 復興か」
「福島県 避難者無視して 復興か」

 福島県郡山市から大阪市に2児を連れて母子避難を5年8か月間敢行しつづけている森松明希子と申します。1年前にも内閣総理大臣および福島県知事にお手紙を差し上げました。

 何度でも繰り返します。
 放射線被曝から免れ健康を享受する権利は、人の命や健康に関わる最も大切な基本的人権にほかなりません。誰にでも、等しく認められなければいけないと、私は思うのです。
 なぜなら、少しも被ばくをしたくないと思うことは人として当然のことであり、誰もが平等に認められるべきことだと思うからです。
 また、これから先、将来のある子どもたちに、健康被害の可能性のリスクを少しでも低減させたいと思うことは、親として当然の心理であり、子どもの健やかな成長を願わない親は一人としていないと思うのです。
 そこには、一点の曇もなく、放射線被曝の恐怖、健康不安があってはならないと思うのです。
 たまたま県外に親戚・縁者・支援者のつながりがあった人だけが被ばくを免れることができる、とか、経済力はじめ運良く様々な条件に恵まれた人たちだけが被ばくから遠ざかることができた、というようなことで本当に良いのでしょうか?

 今、次々となされる施策、法律で定められている年間1ミリシーベルトを超える放射線量が確認されても帰還困難区域を解除する、避難者にとっての命綱である支援住宅の打ち切り(他方で帰還者にだけは手厚い保護)など、これらの非道な施策により、幼い子どもの被ばくを少しでも避け避難を続けていたいと願っても、泣く泣く帰還するしか選択肢がなくなるという世帯もあるということをご承知の上での措置なのでしょうか?
 そして、それが本当に平等でフェアな施策だと言えるのでしょうか?
 何よりも、それは本当に正しいことなのでしょうか?

 そもそも、避難するという選択肢を選び、安心して避難を続けるという道筋が立てられる制度が5年以上経過しても何一つ確立されることもなく、避難したくてもできない世帯があることを国や福島県は分かった上でのこれまでのこの5年8か月間のご対応なのでしょうか。
 もしもご存知ないのでしたら、それは、「声なき声」、生活者の視点、ふつうの暮らしをしている人々の思いや声を聞き漏らしていることにほかならず、大変な無礼を承知の上で申し上げますが、為政者としては致命的であると言っても過言で無いと思うのです。

 原発事故子ども被災者支援法という法律はあるのにずっと棚晒しの現状・・・
 法律があっても、実際の被災者は何ら救済されないというこの現実。
 私は、福島にとどまり日々放射線と向き合う暮らしを余儀なくされていらっしゃる方々の選択をとやかく申し上げたことは一度もありません。むしろ、子どもを育てる同じ親としてのお立場の方々を思うにつけ、心中、心よりお察し申し上げる次第です。
 一方で、避難という選択をした私たちもまた、紛れも無く福島県民であることにかわりありません。遠く離れた土地に幼子と避難をしていたとしても、福島が、3.11前の何の健康被害のリスクも不安もない状態にもどりさえするのなら、すなわち、3.11前には現存しなかった放射線がなくなり3.11前の福島でありさえするのなら、今すぐにでも家族揃って福島での生活をまた再開したいと心から願っているのです。
 そう願い続けて5年8か月の歳月が流れました。

 避難をしている福島県民の「声」は届いているのでしょうか。
 それとも「意図的に無視」されているのでしょうか。
 県政を担われる内堀知事におかれましても、どうか、避難という選択をした者もまた県民の一人として捨て置くことなく、人の生命・健康にかかわる最も大切な基本的人権を尊重していただけますよう、避難民にもまた、温容な具体的施策の継続、実施をお願いしたく存じます。
 原子力災害がひとたび起きた時に、これまでのご対応が常套の手法とされてしまうことで計り知れない国民の権利が将来にわたり侵害されることになると私は危惧するのです。
 人の命や健康よりも大切にされなければならないものはあるのでしょうか?
 国民は、等しく、自らの命を守り健康を享受する権利があるはずです。
 生命や健康を守る行為が原則であり、その原則的行為を選択した人に対して、どうか最低限度の制度を保障してください。
 そして、不幸にも原子力災害を経験してしまった県民(国民)として、次の世代に対して恥ずかしくないアクションを県政、県民として手を取り合って進めて頂きたいと思うのです。

 同様の事が、国政においても言えると思います。
 そのためには、一部の経済的利害関係の発生する人々の声だけでなく、人として当たり前の事を申し上げているだけにすぎない一母親、一生活者、一県民、一国民の真摯な声にどうか耳を傾けてくださいますよう、心からお願い申し上げます。

 避難者の存在そのものが社会的事実であり歴史的証拠なのです。「意図的な無視」により数にも数えようともしない、数に上げてしまったものは線引き・支援の打ち切りによって、全力で存在そのものを消そうとすることは、為政者としてあるまじき恥ずべき行為だと思うのです。
 私や私の子どもたちも含め、「避難している人々」は間違いなく存在しているのです。
3.11から今現在に至るまで、間断なく避難という選択をし続けています。汚染があるから帰らないという選択を尊厳をもって敢行しているのです。

 最後にこれだけはお伝えさせてください。
 トップが事実から目を背け、隠蔽体質を貫かれますと、国民・住民はさらなる苦痛と困難を強いられます。福島原発事故による国土の汚染は国のトップが世界に向けてアンダーコントロールと隠蔽しました。
 福島県からの避難者は北海道から沖縄まで全47都道府県全てに存在するというのに、
県のトップは物産売り込みには熱心で全国飛び回ったとしても、全国に散らばる避難者には会おうともせず無視しつづけています。
 私たち避難者の正確な数や実態、苦難の状況を把握しようともしないし、声も聞かない、
受け入れ先の自治体に「避難者をよろしく」とお願いもしてくれない。
 学校のいじめは学校長が無視、隠蔽したら苦しむのは子どもたちです。
 隠蔽されて再発防止策が講じられないと、被害の子も加害の子も、そして今は加害者にも被害者にもなっていないけれど、新たな犠牲者が出ることは必至です。
 そして再発防止は事実(何が起きていたかという被害の事実)と向き合わずしてはありえないと思うのです。
 いじめも原子力惨禍もそれは同じことです。
 なかったことにする、見ないことにする、臭いものに蓋が、どれだけ多くの子供たちの未来を奪っていることか・・・
 そのことに全ての人が気づくべきだと私は思うのです。
 避難児が恐喝いじめ事件に遭っていたという痛ましい事件がありましたが、全国に散らばる避難者の子どもたちは、国・県からの保護が皆無に等しく、同様の危険にさらされ続けているという現状があります。避難するという選択を尊重されないばかりか、さらなる危険にさらされながらの避難の継続を強いられることは、あってはならないことです。
 子どもたちの未来と健康を最優先に考えてください。
 子どもたちはこの国の未来であり、福島県にとっても大切な宝物です。
 避難を続ける人々の選択を尊重し、特に保護すべき避難の子どもたちをどうか全力で守ってください。
 内閣総理大臣と福島県知事が全力でその姿勢を示してください。

 長文かつ乱文、大変失礼いたしました。

 福島の復興を切に願う一県民として、また、東日本大震災の真の復興を心から願う一国民として、筆を取らせていだだきました。
 最後までお読み下さいましてありがとうございます。

  2016年11月28日

                                       森松明希子


12・4チラシweb版 

伝えたいことは数あれど~原発事故被害者の住宅支援についての院内集会2つ(10/26)、テレメンタリー「神の海に暮らす~まだ見えぬ原発に揺れる島~」(11/6)ほか

 今晩(2016年10月27日)配信した「メルマガ金原No.2612」を転載します。

伝えたいことは数あれど~原発事故被害者の住宅支援についての院内集会2つ(10/26)、テレメンタリー「神の海に暮らす~まだ見えぬ原発に揺れる島~」(11/6)ほか

 今夜7時から、11月12日(土)に和歌山市河西(かせい)コミセンで開催する「前田佳世ソプラノコンサート」の実行委員会(成功させる会)があり、会議はたけなわだったものの、今晩のメルマガ(ブログ)の下書きが全く出来ていないと呟いたところ、会議出席者が全員、「メルマガ金原」もしくは「弁護士・金原徹雄のブログ」の愛読者であり、「是非先に帰ってメルマガ(ブログ)を書いてください」というありがたい配慮を示してくださり、私だけ一足早く9時過ぎに帰宅の途についたという次第です。
 
 とはいえ、メルマガ(ブログ)を書くために一番時間を要するのは、「何を素材として取り上げるか」を決めるという部分であり、二番目が素材が決まった後に関連情報をネット検索して探す時間、実際に執筆する時間は一番短いというのが最もよくあるパターンなのです。
 ということで、時間のかかる素材探しと関連情報の検索は省略し、頭の中にあることを思いついた順に書いていきます。

 実は、昨日(10月26日)、東京で、原発事故からの自主避難者に対する住宅支援打切に反対する運動にかかわる大きな集会が2つ開催されました。とても気になっていますので、その集会の動画をじっくりと視聴したいのは山々なのですが、そんな時間はとても確保できず、やむなく以下にUPLANによる動画を紹介するにとどめます。時間の都合のつく方は、是非視聴し、「拡散」にご協力ください。
 
院内学習会「長期避難者の住宅支援制度の充実に向けて~それぞれの選択を尊重した施策の重要性~」
日時 2016年10月26日(水)11時30分~13時00分
場所 衆議院第一議員会館第2会議室
主催 日本弁護士連合会
日時:2016年10月26日(水)13:30~16:30
会場:参議院議員会館 講堂
主催:原発事故被害者救済を求める全国運動
http://act48.jp
共催:ひだんれん(原発事故被害者団体連絡会)、「避難の権利」を求める全国避難者の会、原発事故子ども・被災者支援法市民会議
 

 これらの動画の視聴も気になりつつ、少し先のテレメンタリーで「これは見逃せないな」と思う番組があります。簡単な番組告知だけですが、ご紹介しておきます。

テレビ朝日 2016年11月6日(日)4時30分~5時00分
朝日放送 2016年11月6日(日)5時20分~5時50分
山口朝日放送 2016年11月7日(月)25時46分~26時16分
テレメンタリー「神の海に暮らす~まだ見えぬ原発に揺れる島~」

「山口県上関町の離島、祝島。過疎高齢の島に1000年以上伝わる祭り「神舞」がある。4年に1度の祭りの舞台となるのは、島の前に広がる海。しかし、そこには、国内唯一の新規原発立地計画がある。「海を守りたい」と30年以上に渡り激しい反対運動をしてきた島民たち。一方で、若い移住者たちは、「新たな反対運動の形」を模索する。
それぞれの思いが交錯するなか、原発計画に動きが…。
予定地の海に、この夏、祭りの舟歌が響いた。
ナレーター:下平さやか(テレビ朝日アナウンサー)
制作:山口朝日放送」

 今年の「神舞(かんまい)」に参加した東条雅之さんのレポート(動画はありません)が、ブログ「スナメリチャンネル」に掲載されています。

 さて、雑然と書き連ねてきた今日のメルマガ(ブログ)の最後は、和歌山以外の方にはほぼ無関係で申し訳ないのですが、これから2週間の私が参加予定の企画(全てメルマガ(ブログ)で紹介済み)のおさらいです。
 まだ、参加するかどうか迷っている方、うっかり忘れていた方、ご参加いただけると嬉しいです。決して後悔しない企画ばかりです。

映画『標的の村』和歌山県橋本市上映会
日時・会場
(1)映画上映のみ 
   2016年10月29日(土)11:00~ 
    橋本市産業文化会館「アザレア」3F会議室
     和歌山県橋本市高野口町向島135番地 TEL:0736-42-5070  
(2)映画上映+座談会(希望者のみ) ※座談中、梅川幸子さんの琴演奏あります♡♡
   2016年10月29日(土)13:00~
    橋本市産業文化会館「アザレア」3F会議室
     和歌山県橋本市高野口町向島135番地 TEL:0736-42-5070
(3)映画上映+交流会 ※民家のため20名迄、要予約。
   2016年10月29日(土)19:00~
    岸上 丸九(まるきゅう)食堂(丸九は、正しくは「〇」の中に「九」の字)
     和歌山県橋本市岸上(きしかみ)  
入場料(各回とも) 前売り1,000円 当日1,200円
申し込み、問い合わせ先
 090-8753-4784(クサジマ)
 
marukyuushokudou@i.softbank.jp

木村草太氏(首都大学東京教授・憲法学)講演会
「テレビが伝えない憲法のはなし」

日時 2016年10月29日(土)午後4時~6時
場所 和歌山県勤労福祉会館プラザホープ4Fホール
      和歌山市北出島1丁目5番47号 【TEL】073-425-3335
参加費 無料
主催 和歌山県保険医協会
    〒640-8157 和歌山市八番丁11番地 日本生命和歌山八番丁ビル8F

第13回 憲法フェスタ 9条をまんなかに~えがこう平和への道~

開催日 2016年11月3日(木・祝)
場所 河北コミュニティセンター(和歌山市市小路192-3)
入場無料 予約不要 会員でなくてもどなたでもご参加いただけます!
メイン会場(2F多目的ホール)
【開始】14:00【終了】16:30頃
第1部 親子バンド「Crowfield」ミニコンサート
第2部 憲法漫談「これがアベさんの本音だ」
      演者 コバヤン こと 小林康二氏 (お笑い集団「笑工房」代表)
主催 守ろう9条 紀の川 市民の会  
お問合せ先 073-462-0539 原

前田佳世ソプラノコンサート 祈り、平和。そして希望へと
日時 2016年11月12日(土)14:00~16:00(13:30開場)
会場 河西コミュニティセンター 2F多目的ホール
       和歌山市松江北2-20-7 ☎073-480-1171
料金 1,000円(前売・当日) 
    障がい者500円/大学生・高校生500円/中学生以下無料
出演 前田佳世(ソプラノ)& 細尾和代(ピアノ伴奏)
     クロマティカ! 田中麻衣子(ヴィブラフォン)& 多田安希子(ピアノ)
主催 前田佳世コンサートを成功させる会
お問合せ 090-5465-3105(西郷)、090-1142-7774(里崎)、090-5670-7157(田村)
 

(付録)
『ラブソング・フォー・ユー(LOVESONG FOR YOU)』
作詞・作曲:ヒポポ大王 演奏:ヒポポフォークゲリラ
 

12/4「人権のつどい」@きびドーム(和歌山県有田川町)に「ちゃんへん.」がやってきます

 今晩(2016年10月26日)配信した「メルマガ金原No.2611」を転載します。

12/4「人権のつどい」@きびドーム(和歌山県有田川町)に「ちゃんへん.」がやってきます

 皆さんは、法務局や県や市町村などが一緒になって開催する「人権のつどい」が近くで開催されると知って、「行ってみよう」という気になるでしょうか?たとえ、入場無料であってもです。
 私が、今日ご案内しようとするのは、和歌山県下の市町村において、毎年持ち回りで開催されている「人権のつどい」ですが、おそらく全国どこの都道府県でも、同様の催しは、特に人権週間(12月4日~10日)の前後に開催されているところが多いのではないでしょうか。
 他府県の様子は知りませんが、和歌山県では、以下に転記した今年の「人権のつどい」のチラシ記載内容のとおり、前半で「全国中学生人権作文コンテスト」(主催:法務省、全国人権擁護委員連合会)の和歌山県大会入賞作品の表彰と朗読、後半に人権啓発のための講演会等を行うということが恒例となっています。
 そして、近年は、地元の中学生に司会を担当してもらうなど、積極的に「人権のつどい」に関わってもらう工夫が行われており、今年も司会の他、有田川町立吉備中学校音楽部に合唱を披露してもらうことになっています。
 
 ここまでの書きぶりで、私がどちらかといえば「主催者側」の人間であることはご想像がついたと思いますが、まさにそのとおり、主催の和歌山県人権啓発活動ネットワーク協議会の構成団体の1つである和歌山県人権擁護委員連合会に所属する人権擁護委員の一人として、私も参加予定なのです。

 例年そうなのですが、「人権のつどい」前半の白眉は、「人権作文コンテスト」和歌山県大会入賞作(今年は5編のはず)の朗読であり、どうしても都合がつかない場合は人権擁護委員が代読しますが、原則として執筆した中学生ご本人に朗読をお願いすることになっています。
 入選作をまとめた冊子もいずれ作られますが、やはり文章を目で追うだけとは比べものにならない感動が、本人の朗読からは得られます。是非一度、聴いていただきたいと思います。

 そして、後半の人権講演、今年はパフォーマーとして有名な「ちゃんへん.」さんが「きびドーム」に
やってきます。チラシにも簡単なプロフィールが掲載されていますが、以下には、「ちゃんへん.」公式ホームページに掲載されているプロフィールをご紹介します。

プロフィール

(引用開始)
1985年10月10日、京都府宇治市に生まれる(現在、京都府京都市在住)。
中学2年生の時にジャグリングと出会い、パフォーマーを夢見て独学で技や芸を学ぶ。
日々の練習を積み重ねた結果、半年後には地域のイベントに出演し、初舞台を経験する。そんな彼の名を
一躍世に知らしめたのは『大道芸ワールドカップ2002』だった。
最年少17歳で出場し、人気投票で1位に輝き、同時にプロパフォーマーとなった。
高校卒業後、5年間ほど海外をメインに活動し、これまで世界65か国で公演を行う。
デズモンド・ツツやマイケル・ジャクソンなど、数々の著名人の前でも芸を披露する一方、飢えや貧困、紛争や難民などの社会問題を抱える国や地域でも積極的に公演を行っている。
2009年からは日本での活動がメインとなり、東京ディズニーリゾートイクスピアリ、大阪ユニバーサルシティウォーク公認のレギュラーパフォーマーとなる(現在も出演中)。
また、2010年には第50回ムーンバフェスティバルにて最優秀パフォーマー賞を受賞。
現在、地域や企業、娯楽施設や商業施設等のイベントに数多く出演しつつ、 学校行事の芸術鑑賞や人権学習などで幅広く活動し、年間200以上もの営業をこなす。
(引用終わり)

 また、あまり頻繁には更新されていないようですが、ブログもあり、その中から最新の(と言っても今
年の8月30日ですが)「ウトロ地区」という記事をご紹介します。

(抜粋引用開始)
 
8月28日、韓国の友人がウトロを案内してほしいとのことで急遽数年ぶりにウトロに行った。
 ウトロ地区とは、僕が幼少期に育んだ地区であり、多くの在日コリアンが暮らす場所だ。
 ウトロ地区は今年から始まった市営住宅建設、いわゆる再開発のため家屋の取り壊しが始まっており、
僕自身も行かなきゃ行かなきゃと頭の片隅では思いつつもどうも踏ん切りがつかず、正直、もう開発前のウトロに戻る機会というのはないと思っていて、しかも9月1日には約1ヶ月弱海外に行くので、帰国後もお仕事が年末まで立て込んでいるので、きっと次ウトロに行く頃には、僕の知るウトロの風景とは大き
く違っているのだろうと、心のどこかでは覚悟していたところだった。
 そんな僕の心境を、何か見えない力が導いてくれたのだろうか、このタイミングで僕がウトロ地区に再
び足を運ぶことになったのは、きっと何か意味があるのだろう。
(略)
 数年ぶりにウトロの地を踏むと、それはそれで思い出深く、何て言うかな、母校に戻ってきた様な気持ちというのでしょうか、でもどこかそれとは違う。この場所に住んでいた人間にしか分からないかもしれ
ないウトロの色褪せてしまった部分を僕の身体は感じとっている様だった。
(略)
 さて、次は僕がかつて住んでいた家に向かう。
 家の方に向かっていると、まさに工事が進んでいる場所があった。
 『あぁ・・・もしかしたらかつて住んでいた家はもう取り壊されているかもしれないな・・・』
 ウトロに来る前は全然平気だと思っていたけれど、いざ現実を目の当たりにすると自分の精神がグラつ
いてきた。
 言葉での表現は難しいけれど、自分の母校が取り壊された気分というより、自分の体の一部が壊された
様な、そんな気持ちだ。
 ちなみに、実はこの辺りで半泣きになっていた。サングラスをしてたのでイチローの様に涙を必死に隠
していた。
 家はあるのだろうか・・・

 あった。
 よかった。
 記憶なんてもちろん薄いけれど、かつて住んでいた家をじーっと眺めていると、なんだか自然と涙が流
れた。
 しかし家という存在は本当に不思議だ。家は人が住まないと家自体がダメになっていくという話を母から聞いたことがある。きっと家は、住む人が居て活かされるのだろう。そういう意味では、家も僕たち人
間のように命があるのだろうな。
 かつて住んでいたこの家は、きっと家としての役目を果たしたのだろう。
 数年後に戻った家は生きてる様に死んでいたのだった。
 話は少し変わるけれど、僕という人間は本当に恵まれた人間である。恵まれ過ぎていて恥ずかしいくら
いだ。
 僕の苦労なんて先祖の苦労に比べれば1ミリも、1ミクロンも及ばないし、でも逆に言えばそれだけ先祖
たちが当時生きるため、そして家族を幸せにするために一生懸命努力したってことなのだろう。
 きっと一生かかってもこの感謝の気持ちは伝えきれないだろうし、返しきれないほどの愛や恩を僕は頂
いたのだろう。
 だからこそ僕は、この今ある命を時間を無駄にせず、後世に還元していかなければならない。
 先祖たちが紡いでくれた今を大切に噛み締め胸に抱きながら、これからも前を向いて生きていかなけれ
ばならない。
 良かれ悪かれ、全ての出来事に감사합니다.
 ウトロの地から、愛と痛みを感じて。Peace.
(引用終わり)

 「ちゃんへん.」さんのジャグリングの腕前が分かるプロモーションビデオが3本公開されていますが、その中から、最新の2015年ヴァージョンをご紹介しましょう。
 
ちゃんへん. PV2015 (reupload)(5分56秒)


 この他にも、公式ホームページをあちこち見たり読んだりしていると、とっても楽しいですよ。自分が
観たお勧め映画についての短評を集めたコーナーなど、「すごい!」の一言です。
 12月4日(日)の「きびドーム」では、「人権講演会」と銘打たれていますので、はたしてジャグリングのパフォーマンスが観られるのか?(全く無いということはないでしょう・・・と私は思っていますが)ということはあるのですが、講演だけでも充分に聴いていただく価値があるはずです。
 和歌山県にお住まいの方は(別に県外でも良いのですが)、是非迷わず和歌山県有田振興局総務県民課まで、電話かFAXで申し込みを!もっとも、事前申し込みをしていなくても、満席でない限りは当日も入場できますが。

チラシ表面から引用開始)
人権のつどい  入場無料

日時 平成28年12月4日(日)13:00~16:00(開場12:30)
開催場所 きびドーム 1F文化ホール
    和歌山県有田郡有田川町下津野2021(TEL:0737-52-8002)
   ※高速道路をご利用される方へ
    ・和歌山市方面からお越しになる方は、有田ICをご利用ください
     (有田南ICから乗り降りできません)
    ・田辺方面からお越しになる方は、有田南ICをご利用ください
     (有田ICから乗り降りできません) 

1部 13:00~13:30 有田川町立吉備中学校音楽部による合唱
2部 13:40~14:50 「第36回全国中学生人権作文コンテスト」
               和歌山県大会表彰式と作文朗読
3部 15:00~16:00 人権講演会「過去を変えずに未来を変えろ!」
               講師:在日3世の世界的パフォーマー ちゃんへん.
国籍・いじめ・目標・夢・挑戦・栄光・挫折・蘇生
すべての過去を受け入れて・・・
現在の自分と共に歩もう
●ちゃんへん.プロフィール●
小学生の頃に在日という理由でいじめを受けるが、中学2年生の時に出会ったジャグリングによって、人生で初めて喜びと感動を知る。高校2年生の時に出場した大道芸ワールドカップ2002では、観客による投票で1位を獲得。高校卒業後には海外を中心に活動を始め、これまで60以上の国で公演を行った世界的パフォーマーである。

●定員/300人
●参加方法/事前に氏名、連絡先を下記までお申し込みください。
 (お席に余裕がある場合、当日の参加も可能です。)
●お申し込み先/和歌山県有田振興局総務県民課
 TEL:0737-64-1257 FAX:0737-64-1256
 (電話による受付は、土・日・祝日を除く午前9時から午後5時45分まで。)
●一時保育/事前申込が必要です。
【11月18日までにお申し込みください】
●手話通訳・要約筆記あります。
●会場近くに駐車場があります。
 (限りがありますので、できるだけ乗り合わせてお越しください。)

第68回 人権週間 12月4日(日)~10日(土)
みんなで築こう 人権の世紀
~考えよう 相手の気持ち 未来へつなげよう 違いを認め合う心~

主催/和歌山県人権啓発活動ネットワーク協議会
和歌山地方法務局・和歌山県・和歌山県内全市町村・和歌山県人権擁護委員連合会・(公財)和歌山県人
権啓発センター
(引用終わり)
 
(弁護士・金原徹雄のブログから)
2014年12月5日
「子どもの人権SOSミニレター」を知っていますか?


(付録)
[MV] 『ヘタレとちゃんへん. / 秋』


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「避難住宅打ち切り反対 福島原発事故避難者の院内集会」(10/20)動画(UPLAN)のご紹介

 今晩(2016年10月21日)配信した「メルマガ金原No.2606」を転載します。

「避難住宅打ち切り反対 福島原発事故避難者の院内集会」(10/20)動画(UPLAN)のご紹介

 昨日ご紹介した樋口健二さんと小出裕章さんによる講演会&トークディスカッション(10/16)の動画に引き続き、今日も三輪祐児さんが主宰するUPLANによる貴重な動画をご紹介します。
 今日ご紹介する動画は、昨日(10月20日)、参議院議員会館1階101会議室において開催された「避難住宅打ち切り反対 福島原発事故避難者の院内集会」の模様を収録したものです。
 この院内集会の開催趣旨については、主催した「避難住宅問題連絡会」の事務局を担当している「ひなん生活をまもる会」のホームページに掲載された呼びかけの文章を引用してご紹介します。

(引用開始)
「避難住宅打ち切り反対 福島原発事故避難者の院内集会」へのご参加のお願い
 わたしたち「避難住宅問題連絡会」は、福島原発事故のため、全国のみなし仮設住宅(公営住宅など)
に避難している避難者等で組織する全国15団体の連絡会です。
 福島原発事故では、避難指示の有無にかかわらず、子どもたちや家族、そして自分自身の被ばくを少し
でも軽減したいと願う多くの人びとが、避難生活を続けています。
 ところが、福島県は避難指示区域以外からの避難者に対する応急仮設住宅の提供期間を2017年3月末までで打ち切るとの方針を発表し、政府もこれを追認しています。また、楢葉町についても、避難指示
が解除されたのを機に、2018年3月末で打ち切るとの方針が発表されています(福島県発表)。
 しかし、仮設住宅は避難生活の基盤であり、避難世帯にとっては、まさに命綱です。それが本当に打ち切られるとすれば、わたしたち避難者には大きな打撃です。多くの避難世帯が打ち切りに反対し、仮設の期間延長を求めていますが、ついに打ち切りの予定日まで半年を切り、全国の避難者は追い出しに怯える
日々を送っています。
 そこで、わたしたち福島原発事故避難者でつくる「避難住宅問題連絡会」が主管団体となって、院内集会を開くことにしました。わたしたち避難者が実情を訴えることで、避難区域以外からの避難者に対する応急仮設住宅の打ち切りを阻止し、原発事故被害者に対する長期・無償の住宅提供を実現させていきたい
と思います。
 避難区域外からの避難者は、夫婦が別居して「二重生活」となっている世帯も多く、その負担は重くなっています。また、避難区域外では賠償金もわずかで、仮設住宅の無償提供が終わってしまうと、避難生活が成り立たなくなってしまう世帯も多いのです。仮設からの転居ができない、希望しない世帯は、強制的な追い出しがあるのではないかとおそれています。避難住宅問題連絡会では、仮設の打ち切り撤回を求める署名活動を行い、今年3月には6万4041筆(政府・福島県への第1次提出分)の署名を集めることができました。現在も、更に署名を続けていますが、住宅を追い出されるとという非情な仕打ちに対抗
するには、もっと多くの市民の皆さんの応援が必要です。
 集会では、全国の避難者(10人ほど)が、リレー形式で、打ち切りを控えた避難者の先が見えない状
況を報告します。各地の避難者のリーダーや、子どもを抱えた母子避難者の発言もなされる予定です。
 ぜひ、多くの避難者・支援者・ジャーナリスト・市民の皆さんに多数参加くださいますようお願いしま
す。

日時 平成28年10月20日(木) 11:45 ~13:30
場所 参議院議員会館 1階 101会議室
内容 全国の避難者による現状報告と具体的要望/参加国会議員挨拶/など

※ 参加希望者は、11時15分から、スタッフが参議院議員会館1階ロビーで入館証を配布いたしますので、手荷物検査を受けてロビーに来てください。予約は不要です。入館の際、手荷物検査がありますので、時間には余裕を持ってお越しください。

2016年10月5日

避難住宅問題連絡会・事務局
「ひなん生活をまもる会」代表 鴨下祐也

(引用終わり)

 なお、今日の同会ホームページには、「院内集会へのご参加ありがとうございました」という記事が掲
載されていました。

(引用開始)
 昨日の院内集会では、沢山の方にお集まりいただき、本当にありがとうございました。正確な参加人数はこれから調べますが、国会議員や秘書さんを除いても、190個の通行証が使用されましたので、受付に名
前を残されなかった方も相当数いたようです。
 遠方から駆け付けてくれた皆さま、勇気を振り絞って辛い胸の内を話してくださった仲間達、またそれを応援に来た、沢山の『声なき当事者』の姿に心打たれました。実は受付けも案内も準備も、避難ママたち
ががんばっていたのです。その数も、後ほどUPさせていただきます。
 もちろん、駆けつけてくださり、応援してくださり、中にはお手伝いもしてくださった沢山の支援者の
皆さま、想いを持って会場に来てくださった議員の皆さまに、心から御礼申し上げます。
 本当にありがとうございました。
(引用終わり)

 それでは、UPLANによる動画をご紹介します。

20161020 UPLAN 避難住宅打ち切り反対 福島原発事故避難者の院内集会(1時間58分)


冒頭~ 避難者アンケート用紙の紹介
4分44秒~ 「避難者あるある五七五」8句の紹介
 「災害は いつ何度でも 起こり得る」
 「安全論 健康被害を なきことに」
 「避難民 いつまで経っても 根なし草」
 「尿検査 子の体から セシウムが・・・」
 「マイホーム 今ではただの 核のゴミ」
 「甲状腺 ガンになっても 自己責任」
 「ありがとう 理解ある人の 温かさ」
 「汚染水 世界の皆さん ごめんなさい」
※以上の8句は、UPLANのカメラが据えられた会場正面向かって左側に掲げられたもので、反対の右側にも8句が掲げられていましたし、演台の前にも貼ってあったらしいですね。もちろん、「東日本大震災避難者の会Thanks & Dream(サンドリ)」の森松明希子さんが、大阪から持参したものです。
5分~ 開会挨拶 鴨下祐也氏(避難住宅問題連絡会・事務局 「ひなん生活をまもる会」代表)
以下、多くの方が発言されましたが、そのうちの一部ですが、何人かご紹介しておきます。
8分~14分 森川清弁護士(東京災害支援ネット(とすねっと)代表)
31分~35分 茨城から大阪に避難した男性(原発賠償関西訴訟原告団・住宅担当)
※先日(9月27日)、大阪市立社会福祉センターで開かれた「避難者ぴあサポート交流会」でご一緒した避難者の方が、昨日の院内集会で報告されているのを見つけて嬉しかったですね。お疲れ様でした。ありがとうございました。
37分~41分 山本太郎参議院議員(自由党)
47分~50分 森松明希子さん(郡山市から大阪市に避難)
※「誰決めた 勝手に決めるな 帰還時期」を読み上げた後の森松さんのアピール、凄い気迫でしたね。原発賠償関西訴訟弁護団の全員にも是非聞かせたい。
51分~55分 福島みずほ参議院議員(社民党)
56分~1時間04分 宇野朗子(うのさえこ)さん(福島市から京都に避難)
1時間04分~1時間08分 菅直人衆議院議員(民進党)
1時間50分~ 資料の紹介

 実は、発言をご紹介したのは、私が名前を知っていたり、お会いしたことのある方だけであり、実は、
それ以外の、特に避難者の方々(中には氏名公表も上半身の撮影も不可という方もおられます)の発言にこそ是非耳を傾けていただきたいと思うのです(これは私自身に対する戒めでもあります)。

 なお、この住宅問題については、来週の10月26日(水)、日本弁護士連合会が主催して、院内学習会「長期避難者の住宅支援制度の充実に向けて~それぞれの選択を尊重した施策の重要性~」が開かれることになっています。
 専ら、避難者からの訴えに特化した昨日の集会とは、やや視点を変えてということになるようですが、
目指すところは同じはずです。
 ところで、サンドリのホームページを見たら、「東日本大震災避難者の会 Thanks&Dream(サンドリ)代表・原発賠償関西訴訟原告団代表 森松明希子(福島→大阪)も参加・現状報告を行う予定となっています。」とありました。
 多分、26日も日帰りでしょうねえ。お身体大切に。
 
(弁護士・金原徹雄のブログから)
2016年1月11日
2016年9月30日

12/3シンポジウム「シングルマザーの権利擁護―養育費算定表の問題点と履行確保の方策について―」(和歌山弁護士会)のご案内

 今晩(2016年10月19日)配信した「メルマガ金原No.2604」を転載します。

12/3シンポジウム「シングルマザーの権利擁護―養育費算定表の問題点と履行確保の方策について―」(和歌山弁護士会)のご案内

 今日は、私が所属する和歌山弁護士会のシンポジウム「シングルマザーの権利擁護」をご案内します。

 所管の「両性の平等に関する委員会」は、和歌山弁護士会の数ある委員会の中で、災害対策委員会とともに、ごく最近設置された委員会です。
 ということで、私自身、この委員会に所属したことはなく、これまでの活動実績についても、恥ずかしながら、和歌山弁護士会ホームページの中の「委員会活動報告」を読んで初めて知ったものもあるというありさまです。
 引用してみます。

(引用開始)
両性の平等に関する委員会 2016年(平成28年)度
委員長 松原 敏美
副委員長 足立 聖子、岡  正人

1 委員会の設置目的

 両性の平等を実現するために活動を行うことを目的とし、社会における両性の平等の実現状況、現行法制に関する調査及び研究をする他、国、地方公共団体、その他の関係団体と両性の平等実現のための連絡協議活動を行う委員会です。

2 活動実績
両性の平等実現状況の把握

 平成27年5月19日「和歌山県における男女共同参画の現状と課題」
  講師 和歌山県青少年共同参画課 課長 谷口恵美氏
  同 和歌山県男女共同センターりぃぶる 所長 山中浩子氏
 平成27年9月9日「和歌山県における女性労働の現状と課題」
  講師 和歌山労働局雇用均等室長 小田江里子氏

現行法制に関する意見の発表

 夫婦同姓強制及び再婚禁止期間に関する事例の最高裁大法廷回付を受けて平成27年7月10日付会長声明、及び平成27年12月16日に出された2つの最高裁大法廷判決を受けて平成28年3月16日付会長声明を各起案し、民法(家族法)の差別的規定の早期改正を求めました。

※金原注
「民法(家族法)の差別的規定の早期改正を求める会長声明」 
「民法(家族法)の差別的規定の早期改正を求める会長声明-2015年12月16日に出された2つの最高裁大法廷判決を受けて-」

男女共同参画週間に寄せて
 日弁連が全国の弁護士会に呼びかけて一斉に行う「女性の権利110番」を実施し、当会所属の女性弁護士が中心となって対応しました。

意思決定の場への男女共同参画実現に向けて

 参画率アップのために、当会所属女性弁護士にアンケートを実施し、その結果を当会から委員等を推薦する場合の参考資料としてまとめました。

委員会内研修

 「子どもの養育費の算定基準と養育保障は現状のままでよいのか」、あるいは「公平な離婚給付」の考え方、さらには「LGBTの正しい理解とあるべき法制」等々、委員会内の研修を行いました。

3 今後の活動予定

 「男性は仕事、女性は家庭」という伝統的な性別による役割分担を前提とした社会のしくみの中で、実際上性別による差別の影響を一番受けているシングルマザーについて、その現状を分析すると共に、その権利擁護のため法制度あるいは司法制度上、改善に役立つ方策を探るシンポジウムを、今年度中に開催する予定にしています。
 
(引用終わり)

 上記「今後の活動予定」で予告されていたシンポジウムが、いよいよ開催される運びになったということです。
 以下に、チラシ記載情報を転記します。

チラシから引用開始)
シンポジウム
シングルマザーの権利擁護
―養育費算定表の問題点と履行確保の方策について―

開催日時 
 2016年(平成28年)12月3日(土)
 開場:13時 開演:13時30分
開催場所
 和歌山弁護士会館 4階 講堂
  〒640-8144 和歌山市四番丁5番地


プログラム
第1部
 基調報告「和歌山のシングルマザーの現状について」
 和歌山県子ども未来課 家庭福祉班長 木村高秀(きむら・たかひで)氏
第2部
 基調講演「現行の養育費算定表の問題点と改善案」
 講師 日弁連両性の平等に関する委員会副委員長
     竹下博將(たけした・ひろゆき)弁護士(第二東京弁護士会所属)
第3部
 トーク&トーク「貧困から母子を守る養育費って?」
 出演 和歌山弁護士会 両性の平等に関する委員会委員 戸村祥子(とむら・しょうこ)
     和歌山弁護士会 両性の平等に関する委員会委員 岩橋幸誠(いわはし・こうせい)
 アドバイザー 竹下博將弁護士

入場無料★予約不要


主催 和歌山弁護士会(両性の平等に関する委員会)
お問い合わせ
 〒640-8144 和歌山市四番丁5番地(和歌山弁護士会)
 TEL:073-422-4580 FAX:073-436-5322
(引用終わり)   

 実にシンプルなチラシで、内容説明が全くない!
 まあ、弁護士や、離婚調停の当事者になった経験のある人なら、シンポのタイトルやプログラムの内容に目を通すだけで、主催者の問題意識はすぐに了解できると思いますが。

 そこで、僭越ながら、若干の補足説明を加えることにします。
 まず、第2部の講演のテーマとなっている「養育費算定表」とは何か?ですが、実際、離婚調停などの当事者になった人、特に未成年の子どもがいる場合、非常に切実な関心対象とならざるを得ないのがこの「養育費算定表」です。
 これは、インターネットでも容易に見ることができます。例えば、東京家庭裁判所のホームページには、「家庭裁判所において,養育費又は婚姻費用の算定をする際に参考として活用している資料です。」という説明付きで、「養育費・婚姻費用算定表」が掲載されており、その冒頭に、
○この算定表は,東京・大阪の裁判官の共同研究の結果,作成されたものです。
○現在,東京・大阪家庭裁判所では,この算定表が,参考資料として,広く活用されています。

と書かれているとおり、あくまでも建前上は「参考資料」なのですが、実際の調停実務では、事実上の規範性をともなって運用されているという実感を多くの弁護士は共有しているのではないかと思います。
 なお、2012年3月15日に日本弁護士連合会が「養育費・婚姻費用の簡易算定方式・簡易算定表」に対する意見書を公表しています。
 
 それから、第3部の「トーク&トーク」、「“養育費”の何が語られるのか?」チラシを見ただけではさっぱり分からないと思いますが、それを推測させるヒントを1つご紹介します。
 和歌山弁護士会館の中の事務室には、私たち会員1人1人のレターケースが設置されており、会から会員へのお知らせの文書などが入っているのですが、最近、両性の平等に関する委員会のシンポジウム実行PT座長(シンポにも登場する戸村祥子さんです)名による、会員宛の「アンケートのお願い」が入っていました。そこには、「養育費を任意に支払わない相手方に対して、「こういう手段を取ったら奏功した」という成功例や「こういう手段を取ったが、この点で限界があって取り立てできなかった」等の失敗例をご紹介いただきたいと考えています。」とあり、裏面には様々な質問項目が書かれていました。そういえば、明後日(10月21日)が締切だけど、まだ書いていなかった。
 何となくイメージがわきましたか?つまり、シンポ・サブタイトルの後半「(養育費の)履行確保の方策について」、実践例を踏まえながら語り合うということのようなのです。
 これって、とても重要な問題で、立法的手当の必要性も議論されているテーマですよね。

 以上のような様々な視点から取り組むシンポジウム「シングルマザーの権利擁護」。是非関心を持たれる多くの方にご参加いただきたく、ご案内します。

弁護士会シングルマザー・シンポ

UPLAN【原発事故被害者インタビュー(3)】吉田千亜さん(フリーライター)~『ルポ 母子避難―消されゆく原発事故被害者』著者~のご紹介

 今晩(2016年10月13日)配信した「メルマガ金原No.2598」を転載します。

UPLAN【原発事故被害者インタビュー(3)】吉田千亜さん(フリーライター)~『ルポ 母子避難―消されゆく原発事故被害者』著者~のご紹介

 いつもの午後2時からではなく、午後1時半から始まった原発賠償関西訴訟(大阪地方裁判所)の第11回口頭弁論、パワーポイントを使用した原告訴訟代理人による弁論も1本だけ、20分くらいで終わってしまい、傍聴された方にとってやや物足りなかったかもしれませんが、弁護団の一員として和歌山から大阪地裁まで出かけた私にとって、弁論が終わった後、午後2時過ぎから場所を移して行われた進行協議こそ、今日のメイン企画(?)でした。3人の裁判官に対し、原告、被告国、被告東京電力の三当事者が、それぞれこれまでの主張(一部これからの予定を含む)のポイントを(原告と国はパワーポイントまで用意して)プレゼンするというもので、終わったら5時を回っていました。私は、ただ聞いているだけの立場ですが、疲れました。非公開で行われた進行協議なので、その内容を勝手に書く訳にもいきませんが、「いっそ、このプレゼンを公開の法廷でやったら?」とは思いましたけどね。
 
 さて、難波から電車に1時間揺られて和歌山に帰り、ほぼ1日留守にしていた事務所に寄ってから「今日のメルマガ(ブログ)どうしよう?」「とても時間がかかる素材は取り上げられないし」と頭をひねっていると、さすがに5年半のキャリアは伊達ではなく(かな?)、今日1日を締めくくるに相応しい素材をすぐに見つけました。
 三輪祐児さんが主宰するUPLANが始めた【原発事故被害者インタビュー】シリーズの第3回がアップされていたのです。
 第1回の松本徳子さん、第2回の森松明希子さんのインタビュー動画については、まとめてメルマガ(ブログ)でご紹介していました。

 第3回となる今回は、ご自身が避難者という訳ではなく、避難者に寄り添い、交流し、取材した結果を発表して、避難者への理解を訴えているフリーライターの吉田千亜(よしだ・ちあ)さんがゲストです。
 
20161011 UPLAN【原発事故被害者インタビュー(3)】吉田千亜氏(フリーライター)に聞く(56分)


 吉田さんは、ライターとして週刊女性などの週刊誌にも寄稿しており、今発売中の同誌10月25日号にも書いておられるそうなのですが、未読ながら、同誌の表紙には、「10P大特集 原発は今、どうなっているのか!なかったことにされていく「被害」の現状」とありますので、この大特集の一部として、住宅支援打ち切りなどで追いつめられている避難者の現状をレポートしておられるのではないかと思います(想像ですけど)。

 また、このメルマガ(ブログ)を書くために調べていて気がついたのですが、吉田さんは、今年の2月、岩波新書から『ルポ 母子避難―消されゆく原発事故被害者』を刊行されているのでした。これも是非読まねば。岩波書店ホームページに掲載された情報を引用します。

(引用開始)
『ルポ 母子避難―消されゆく原発事故被害者』

この事実をまず知ってほしい

 原発事故による難をのがれ、県外へ自主的に避難した人たちのほとんどが、母と子だけの避難者であるといわれます。本書は、その母子避難者たちが強いられてきた苦しい生活の実態を初めて伝えるルポです。子の健康と成長を気遣う、母であればごく自然な思いが、ただ「避難指示区域外だから」ということだけで、冷たい無理解にさらされてしまう。本書が突きつけているのは、他者の境遇にたいする私たち自身の想像力の欠如と無関心です。原発事故のもたらした見過ごせない事実が、ここにもあります。本書を読
んで、なによりもまず知っていただきたいです。
(本書編集担当)
■著者紹介
吉田千亜(よしだ・ちあ)立教大学文学部卒業。出版社勤務を経て、フリーライター。東日本大震災後、
放射能汚染と向き合う母親たちの取材を続けている。原発事故と母親を取材した季刊誌『ママレボ』、埼
玉県に避難している人たちへの情報誌『福玉便り』などの編集・執筆に携わる。
著書に『原発避難白書』人文書院(編集幹事、分担執筆)がある。
季刊誌『ママレボ』公式サイト
情報誌『福玉便り』公式サイト
■目次
はじめに

第1章 地震直後―迫られた選択
3・11/爆発/さらに遠くへ/親戚宅で/埼玉へ
[コラム]事故直後の被曝
第2章 避難生活―劣悪な環境
築40年の団地で/住み替え問題/「帰れ!」/郊外の公営住宅で/孤独な子育て/生活保護
[コラム]福島第一原発事故における甲状腺がん
第3章 夫― 一人残されたとき
転々と/東京へ/残された夫
[コラム]放射能汚染の測定
第4章 作られていくしくみ―被害の矮小化のはじまり
賠償指針/賠償を元手に/子ども・被災者支援法/「住民票」という問題/閉ざされた新たな自主避難
[コラム]分離世帯
第5章 なぜ避難者支援が不十分なのか
法律の基本方針/避難者とは誰か/原発ADR
[コラム]残った夫たち
第6章 帰還か、避難継続か
葛藤/帰還/強いられる選択/2014年になって初めて/広がる不安
[コラム]北海道と沖縄
第7章 消されゆく母子避難者
住宅提供の打ち切り報道/「避難する状況にない」/帰還に向けて/市長との対話/泣きながら待つより

おわりに
(引用終わり)
 
 『ルポ 母子避難』刊行時に受けたインタビューの中から、週刊通販生活にリンクしておきます。

週刊通販生活 今週の読み物
『ルポ 母子避難』著者 吉田千亜さんインタビュー
「来年3月に迫った借り上げ住宅の無償提供打ち切りを、なんとかして食い止めたい」

(抜粋引用開始)
──副題の「消されゆく原発事故被害者」はまさに、被害者にとって苦しい現状を言い表しています
吉田 何年後かには、原発事故の被害は住民の帰還が叶わない一部の地域だけにしかなかったことにされ
てしまうかもしれません。
 でも、母子避難者がどれだけ大変な思いで避難してきたかを側で見てきた私は、彼女たちの5年間を消したくないし、今後も子どもを被ばくから守りたいという意思を否定したくない。この本を通じて、現状
に一石を投じたいですね。
──『ルポ 母子避難』を読んだ方からは、どんな反応が寄せられましたか。
吉田 あるお母さんが「ここには、私のことが書いてあると思った」という感想を寄せてくださって。その方は、避難者ではないのですが、もし同じ状況になったら、自分も子どもを連れて避難するかも、と。
一番伝えたいことが伝わったのかな、と思えました。
(略)
 結局、私が一番伝えたいのは「自主避難している人たち、間違ってないよね」ということなんです。「
もし同じ状況に立たされたら、あなたも同じ選択をしない?」と問いかけたかった。
 住宅提供打ち切りは、自主避難の正当性を真っ向から否定する決定です。だからこそ、「子どもを守りたい」と思う人なら、母子避難者の思いが通じるはずだ、通じないかな、頼む、通じて!という、ギリギリの願いを『ルポ 母子避難』に託しました。母子避難者の現状を「明日の私の話」と捉え、打開策を一
緒に考えてくれる人が増えるようにと、願っています。
(引用終わり)

 UPLANによるインタビュー動画の紹介だけのつもりが、吉田千亜さんの著書や活動のご紹介にまで及びました。これを機に、『ルポ 母子避難―消されゆく原発事故被害者』は絶対に読もうと決意しました。皆さんも是非!

 最後に、いつものことながら、このような貴重な動画を無償配信してくださるUPLANに心から感謝したいと思います。と、お礼を言いながら書くのも気が引けますが、吉田さんインタビューの音声レベルが低く
て聴き取りにくいのです。これは私のパソコンだけの問題なのでしょうか?

10/29映画『標的の村』自主上映会@和歌山県橋本市のお知らせ~今の沖縄問題が90分で分かる!

 今晩(2016年10月12日)配信した「メルマガ金原No.2597」を転載します。

10/29映画『標的の村』自主上映会@和歌山県橋本市のお知らせ~今の沖縄問題が90分で分かる!

 メルマガやブログをやっていると、時々事務所に全く一面識もない方から手紙が届くことがあります。幸い、これまでのところ、ブログに書いた記事に対する非難中傷めいたものはほとんど来ておらず、かといって、賞賛のファンレターもなく、多くは行事のご案内だったりします。
 そして、その内容次第では、メルマガ(ブログ)で案内させていただくこともあります。
 今日、ご案内する映画上映会も、そのようにして私のところに届いた手紙とチラシをきっかけとして企画を知ったものです。
 私が、この上映会を取り上げようと即座に決めたのは、手紙を寄越された方が、私がいつもお世話になっている方のお知り合いであったということもありますが、何より、(おそらく)個人で上映会を企画したと思われるその映画というのが、三上智恵監督の2013年作品『標的の村』(制作:琉球朝日放送)だったからです。
 米軍ヘリパッド建設のために全国の警察力だけではなく、自衛隊のヘリコプターまで動員するというとんでもない状況が連日続く沖縄県東村(ひがしそん)高江。その高江の歴史と闘いを描いた三上智恵さんの3年前の夏に公開された初監督作品にして、琉球朝日放送に残した置き土産となった『標的の村』。和歌山県でも、紀南の方で上映会が行われたという話は聞いているのですが、かけ違ってまだ観る機会を持てていませんが、それにもかかわらず、少なくとも2回、私はこの映画をメルマガ(ブログ)で取り上げています。
 
2013年8月8日
映画『標的の村』が観たい!

 最初のブログにも書きましたが、『標的の村』は、琉球朝日放送が撮影したニュース素材などを基に、まずANN系列局で放送するための「テレメンタリー2012」用の30分ヴァージョンが作られ、ついで沖縄限定で放送するための60分ヴァージョンが作られました。この放送用の作品は、『標的の村 国に訴えられた東村・高江の住民たち』というタイトルでした。そして、全国の多くの人に観てもらうため、劇場公開用の91分ヴァージョンが作られたという経緯をたどった作品です。
 この内、私は、沖縄限定で放送された60分ヴァージョンが、2013年末に関西の放送局(多分、朝日放送)から1回だけ放送された際に録画して視聴し、深い感銘を受けたものの、劇場公開版はいまだに観られていないということは、先ほど書いたとおりです。

 映画の概要については、後ほど引用するチラシの記載情報をお読みいただくこととして、まずは、映画の予告編をご覧になっていただいた上で、今回ご案内する和歌山県橋本市での上映会の概要をご確認ください。その上で、上映日(2016年10月29日(土)3回上映)に橋本市に出向くことが可能な方には、是非、連絡先にメールか電話をして、『標的の村』をご覧になっていただきたいとお勧めします。
 

『標的の村』劇場予告編(2分06秒)

 
橋本市上映会のお知らせ
日時・会場
(1)映画上映のみ 
   2016年10月29日(土)11:00~ 
    橋本市産業文化会館「アザレア」3F会議室
     和歌山県橋本市高野口町向島135番地 TEL:0736-42-5070  
(2)映画上映+座談会(希望者のみ) ※座談中、梅川幸子さんの琴演奏あります♡♡
   2016年10月29日(土)13:00~
    橋本市産業文化会館「アザレア」3F会議室
     和歌山県橋本市高野口町向島135番地 TEL:0736-42-5070
(3)映画上映+交流会 ※民家のため20名迄、要予約。
   2016年10月29日(土)19:00~
    岸上 丸九(まるきゅう)食堂(丸九は、正しくは「〇」の中に「九」の字)
     和歌山県橋本市岸上(きしかみ)  
      ※金原注 岸上「まるきゅう食堂」で、地元の人は誰でも分かるのでしょうね。
入場料(各回とも) 前売り1,000円 当日1,200円
申し込み、問い合わせ先
 090-8753-4784(クサジマ)
 
marukyuushokudou@i.softbank.jp

 10月29日(土)、午前中は私的な輪読会、16時からは木村草太氏講演会(於:和歌山県勤労福祉会館プラザホープ)ということで、和歌山市・橋本市間を往復しているだけの時間はとてもなく、今回の企画も私自身は見送らざるを得ません。
 橋本市での上映会が、3回とも盛況でありますよう、お祈りします。

 以下に、チラシの記載情報を転記します。
 
チラシから引用開始)

標的の村
スクリーンに叩きつける、伝えきれない沖縄
2012年9月29日。
アメリカ軍・普天間基地は完全に封鎖された。
この前代未聞の出来事を「日本人」は知らない。

ナレーション:三上智恵 音楽:上地正昭 構成:松石泉 題字:金城実 編集:寺田俊樹・新垣康之 撮影:寺田俊樹・QAB報道部 音声:木田洋 タイトル:新垣政樹 MA:茶畑三男 
統括プロデューサー:賀数朝夫 プロデューサー:謝花尚 
監督:三上智恵
制作・著作:琉球朝日放送 配給:東風
2013年/HD/16:9/日本/91分/ドキュメンタリー 

公正中立などありえない。
なぜなら情報は視点なのだ。主観的で当たり前。
ところが現在のマスメディアは、ありえない公正中立を偽装している。
特に大メディアになればなるほど、この建て前は崩せないのだろうか。
……僕のその思いを、この作品はあっさりと覆した。
全編にみなぎる人々の怒りと悲しみは、撮影クルーや取材する記者たちの怒りと悲しみの声でもある。
すがすがしいほどに主観全開。それでいい。
だってそれが本来のメディアなのだから。
森 達也(作家・映画監督)

日本は未だにアメリカの植民地じゃないか。
それが沖縄の現実だ。
その最も象徴的な理不尽さに闘いを挑んでいる東村高江の人々。
米軍の軍事訓練の標的にされながら生活するその過酷な日常は殆ど報道されず、黙殺されている。
この映画はそれを訴える。
これは僕らの現実でもあり高江の人々の闘いは僕らの希望なのだ。
遠藤ミチロウ(ミュージシャン)
 
アメリカ軍・普天間基地が封鎖された日
全国ニュースから黙殺されたドキュメント

日本にあるアメリカ軍基地・専用施設の74%が密集する沖縄。5年前、新型輸送機「オスプレイ」着陸帯建設に反対し座り込んだ東村(ひがしそん)・高江の住民を国は「通行妨害」で訴えた。反対運動を委縮させるSLAPP裁判[※1]だ。わがもの顔で飛び回る米軍のヘリ。自分たちは「標的」なのかと憤る住民たちに、かつてベトナム戦争時に造られたベトナム村[※2]の記憶がよみがえる。10万人が結集した県民大会の直後、日本政府は電話一本で県に「オスプレイ」配備を通達。そして、ついに沖縄の怒りが爆発した。

2012年9月29日、強硬配備前夜。台風17号の暴風の中、人々はアメリカ軍普天間基地ゲート前に身を投げ出し、車を並べ、22時間にわたってこれを完全封鎖したのだ。この前代未聞の出来事の一部始終を地元テレビ局・琉球朝日放送の報道クルーたちが記録していた。真っ先に座り込んだのは、あの沖縄戦や米軍統治下の苦しみを知る老人たちだった。強制排除に乗り出した警察との激しい衝突。闘いの最中に響く、歌。駆け付けたジャーナリストさえもが排除されていく。そんな日本人同士の争いを見下ろす若い米兵たち……。

本作があぶりだそうとするのは、さらにその向こうにいる何者かだ。復帰後40年経ってなお切りひろげられる沖縄の傷。沖縄の人々は一体誰と戦っているのか。抵抗むなしく、絶望する大人たちの傍らで11才の少女が言う。「お父さんとお母さんが頑張れなくなったら、私が引き継いでいく。私は高江をあきらめない」。奪われた土地と海と空と引き換えに、私たち日本人は何を欲しているのか?

[※1]SLAPP裁判
国策に反対する住民を国が訴える。力のある団体が声を上げた他人を訴える弾圧・恫喝目的の裁判をアメリカではSLAPP(Strategic Lawsuit Against Public Participation)裁判と呼び、多くの州で禁じられている。
[※2]ベトナム村
1960年代、ベトナム戦を想定して沖縄の演習場内に造られた村。農村に潜むゲリラ兵士を見つけ出して確保する襲撃訓練が行われていた。そこで高江の住民がたびたび南ベトナム人の姿をさせられていた。
(引用終わり)

(付記/劇場上映について)
大阪:シアターセブン(大阪市淀川区十三本町1-7-27サンポードシティ5階)で上映中
2016年10月8日(土)~10月14日(金) 15:40~17:16
2016年10月15日(土)~10月21日(金) 10:30~12:06
※金原注 三上智恵さんご自身のtweetから
「関西の皆さんへ!今の沖縄問題が90分でわかるドキュメンタリー映画「標的の村」の追加上映始まりました!来週金曜日、21日までです。今、劇場で見られるのはここだけです。今度こそお見逃しなく!十三シアターセブンで、高江と繋がって下さい!」

東京:ポレポレ東中野(東京都中野区東中野4丁目4-1)特集上映「地方からの声」で上映決定 
『標的の村』の上映予定
2016年11月12日(土)13:00~
2016年11月13日(日)15:30~
2016年11月14日(月)13:00~
2016年11月15日(火)15:30~
2016年11月17日(木)13:00~
2016年11月18日(金)15:30~

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UPLAN【原発事故避難者インタビュー】に注目しよう~まずは松本徳子さんと森松明希子さん

 今晩(2016年9月17日)配信した「メルマガ金原No.2572」を転載します。

UPLAN【原発事故避難者インタビュー】に注目しよう~まずは松本徳子さんと森松明希子さん

 かつて、IWJで「百人百話」という、岩上安身さんによる原発事故後の福島の人々に対する連続インタビューが行われ、第2集まで本になっています。
 


 当初はUSTREAM中継され、その後文字化されたものですが、事故直後の2011年から2012年にかけて、否応なく原発事故に巻き込まれた当事者の率直な声を届けてくれる、そして、今となっては歴史に残る、貴重な記録(オーラルヒストリー)であったと思います。

 そして、事故から5年が経過した今年(2016年)、三輪祐児さんが主宰するUPLANが、【原発事故避難者インタビュー】シリーズの収録・公開を開始しました。
 まだ、松本徳子さん(「避難の協同センター」代表世話人)インタビュー(2016年7月14日)と森松明希子さん(東日本大震災避難者の会Thanks&Dreamサンドリ代表、原発賠償関西訴訟原告団代表)インタビュー(with松本徳子さん)(2016年9月17日)の2本がアップされただけですが、おそらくこれからもシリーズで避難当事者へのインタビューが集積されていくのだろうと思います。

 最初の頃の百人百話をUSTREMで視聴した時もそう思ったのですが、「体験」というのは、1人1人にとって全部違うのですよね。そこに「共通性」を見出すことは可能だし、必要なことであるにしても、まずなすべきことは「個別の体験」に耳を傾けることなんだという当たり前のことに、優れたインタビューを視聴すると気付かされます。

 今日(9月17日)の森松さんのお話の中でも(29分~)、2014年4月に韓国で発生した旅客船「セウォル(世越)号」沈没事故で船内に閉じ込められて沈んでいった人々の様子が写されたスマホ映像などをワイドショーで見ながら、福島に取り残された住民と同じだと連想し、涙が止まらなかったという話など、その身になってみなければ分からないことですよね。もちろん、避難者がみんな森松さんと同じように感じたということでないのは言うまでもありません。

 今後もUPLANによる【原発事故避難者インタビュー】に注目していきたいと思います。

20160714 UPLAN【原発事故避難者インタビュー(1)】松本徳子氏(「避難の協同センター」代表世話人)に聞く(1))(31分59秒)

(動画紹介文から引用開始)
【UPLAN月島スタジオ】
「避難の協同センター」(2016年7月12日設立)の代表世話人に就任された松本徳子氏(郡山市から川崎市に避難中)にお話を伺いました。
撮影場所はUPLAN月島スタジオ、聞き手はたまちゃんです。
原発災害避難者に対する住宅補償打ち切りの時期が来年3月に迫る中、こどもを殺して自分も死ぬという、母子心中まで考えるような切羽詰まった状況になっています。原発事故以前にはごくあたりまえの普通の家庭生活を送っていた母子です。避難先で孤立し、どのようにしたらいいかわからないでいるお母さん、同じような状況で苦しんでいる人がたくさんいることをこの映像から知っていただけると思います。ひとりで悩まないで、ぜひ「避難の協同センター」またはUPLANまでご連絡ください。
※20160712 UPLAN「避難の協同センター」設立集会(1時間50分)

(引用終わり)

20160917 UPLAN【原発事故避難者インタビュー(2)】森松明希子氏を迎えて(59分21秒)

(動画紹介文から引用開始)
【UPLAN月島スタジオ】
原発事故から五年半。福島から全国に避難している罹災家族の生活は、住宅支援打ち切り問題などでますます混迷を深めております。今回は郡山から大阪に避難している森松明希子氏をゲストに迎え、第一回目のインタビューのゲスト松本徳子氏(「避難の協同センター」代表世話人)とともにお話を伺いました。
司会はたまちゃんこと赤坂珠良(フリー)。
(引用終わり)

有識者共同声明「沖縄の人権・自治・環境・平和を侵害する不法な強権発動を直ちに中止せよ!」への賛同をお願いします

 今晩(2016年9月9日)配信した「メルマガ金原No.2564」を転載します。

有識者共同声明「沖縄の人権・自治・環境・平和を侵害する不法な強権発動を直ちに中止せよ!」への賛同をお願いします

 本日(9月9日)午後、参議院議員会館において、「普天間・辺野古問題を考える会」が主催して、「〈共同声明〉沖縄の人権・自治・環境・平和を侵害する不法な強権発動を直ちに中止せよ!」の発表・記
者会見が行われました。
 広くインターネットを通じて賛同署名を求めているところから、昨年4月1日に発表された
声明「辺野古米軍基地建設に向けた埋立工事の即時中止を要請する!」に続く第2弾という位置付けであろうと思います。
 また、この間、昨年の10月26日には、有識者24名の連名による声明「私たちは、翁長沖縄県知事による辺野古米軍基地建設の埋め立て承認取り消しを断固支持します!」も発表されていますから(※記者会見動画)、これも一連のものと考えれば、今日の声明は第3弾という見方もできるでしょう。

 以下に、沖縄タイムスの記事から一部引用します。

沖縄タイムス+プラス 2016年9月9日 18:46
辺野古新基地・高江ヘリパッド中止を 有識者らが抗議声明

(抜粋引用開始)
 声明は、復帰後も続く米兵がらみの事件事故や高江などでの機動隊による強圧的な排除を批判し「これ
以上、基本的人権のじゅうりんを続けさせてはならない」と訴えた。
 さらに「沖縄の自治と自立の侵害は許されない」「貴重な自然環境を破壊してはならない」、米軍基地の強化による「沖縄、日本、アジアの平和を脅かしてはならない」と、4つの観点を指摘し、「沖縄に対
する安倍政権の強権発動に強く抗議し、直ちに中止するよう求める」としている。
 会見には賛同する8人の学者が出席。宮本氏(金原注:宮本憲一大阪市立大学名誉教授)は「沖縄で起こっていることは平和、環境、人権、自治の問題で沖縄だけの問題ではない。日本人全体が政権を批判し、沖縄に平和をもたらさないといけない」と強調。先週訪ねた高江で機動隊に拘束された香山リカ立教大教授も「東京だったら大問題になることが沖縄では見逃されている。人権問題、沖縄への差別と認識し問
題にするべきだ」と話した。
 宮本氏らは昨年4月にも辺野古新基地建設の即時中止を求める声明を発表し、全国から8千人以上の賛
同署名を集め政府に提出。今回も10月10日までに署名を集めて政府に要請する。
 声明文や賛同署名は以下のURLから。
 
http://goo.gl/51odu3
(引用終わり)

 上記沖縄タイムスの記事の末尾で紹介されているURL(Change.org)から賛同署名が出来ます。私も
署名を済ませました。ご協力いただける方は是非よろしくお願いします。
 以下に、共同声明を全文転載します。

<有識者共同声明>

沖縄の人権・自治・環境・平和を侵害する不法な強権発動を直ちに中止せよ!

 私たちは、沖縄の辺野古米軍基地建設をめぐる問題に重大な関心を寄せ、昨年(2015年)4月1日付けで「<緊急声明>辺野古米軍基地建設に向けた埋立工事の即時中止を要請する!」を公表し、全国から寄せられた8000名を超える賛同署名と併せて、同年4月27日、内閣府に直接提出した。以来、1年以上が経過しているが、その後も安倍政権は、私たちの要請を完全に無視したまま、辺野古米軍基地建設に向けた強権的な対応を取り続けている。

 他方、今年6月の沖縄県議会選挙、さらには7月の参議院選挙において、辺野古米軍基地建設に強く反対する沖縄県民の総意が、再三にわたり、きわめて明確な形で示されている。とりわけ参議院選挙における沖縄選挙区では、辺野古米軍基地建設に反対する候補が大差で当選し、沖縄担当の現職大臣を落選させた。これで、衆参両院とも沖縄の選挙区選出での辺野古基地建設賛成議員は一人もいなくなった。名護市長選挙、沖縄県知事選挙の結果とも合わせ、沖縄県民の意思は、これ以上明らかにしようがないほど、明らかである。

 にもかかわらず、参議院選挙の直後、安倍政権は、県外からの機動隊500人を投入して、米軍北部訓練場がある東村高江でのヘリパッド(オスプレイ着陸帯)建設工事の再開を強行し始めた。高江は人口150名ほどの小さな集落で、既設の2ヶ所を含め、6カ所ものヘリパッドに囲まれることになるため、地元では粘り強い反対運動が展開されてきたところである。すでに完成したN4というヘリパッドには頻繁にオスプレイが飛来して低空飛行が繰り返され、夜間の10時過ぎにも実施される飛行訓練によって地元住民の安眠が奪われ、暮らしが脅かされている。加えて、生活道路である県道70号の封鎖、反対運動のテント撤去、立木無許可伐採、金網設置などが矢継ぎ早に強行され、あたかも「緊急事態条項」を先取りする無法な工事が強権的に進められている。高江の工事は、辺野古基地建設と同じく、1996年の日米SACO合意での北部訓練場返還に伴い計画されたものだが、東村議会、沖縄県議会の反対決議にもかかわらず強行されたことは、「地方創生」といいながら地方自治を無視する安倍政権の尊大な態度を鮮明に表しており、辺野古工事強行への布石ともとれる。こうした態度と行為は、沖縄県民が示した明瞭な意思を無視し、それに挑戦し、侮辱するものである。およそ民主主義にもとづく法治国家にあるまじき強権発動だといわざるをえない。

 私たちは、日本およびアジアの未来にかかわる重大な問題として、この間の事態を深刻に憂慮している。とりわけ、以下に述べる4つの観点から、沖縄に対する安倍政権の強権発動に強く抗議し、このような対応を直ちに中止することを求め、ここに、改めて<有識者共同声明>を公表するものである。

1.これ以上、基本的人権の蹂躙を続けさせてはならない

(1)沖縄では、1972年の日本復帰以降に限っても、米軍基地関係者による刑法犯罪事件が6000件近くも多発してきた。これに追い討ちをかけるように、去る2016年5月、米軍属による残虐な女性暴行殺人事件が新たに発覚した。米軍基地の存在が、沖縄の人々の安全と基本的人権を脅かしている。翌6月19日には、那覇市内で県民大会が開かれ、6万5000人もの人々が集まり、今後、このような痛ましい事件がなおも引き起されることがないよう、強く抗議している。

(2)この間、辺野古米軍基地建設反対、および、高江ヘリパッド建設反対の抗議行動を行う市民に対しても、県外から動員された機動隊員による強圧的な排除行為によって多数の怪我人が続出している。これ以上、こうした沖縄での基本的人権の乱暴な蹂躙を続けさせてはならない。

2.沖縄の自治と自立の侵害は許されない

(1)2015年10月13日、翁長沖縄県知事は、「第三者委員会」による検証結果報告書を受けて、「公有水面埋立法」にもとづく仲井真前知事による辺野古埋立承認の取消しを発表した。これは、同法および「地方自治法」にもとづく翁長県知事の当然の権限行使である。ところが、これに対し、防衛省沖縄防衛局が「私人」になりすまして「行政不服審査法」にもとづく「承認取消し」の取消しを求める審査請求、および、「承認取消し」の効力を止める執行停止の申立てを行い、国土交通大臣が即座に執行停止を決定するという異例の事態になった。その後、国と県が争う3つの訴訟と「国地方係争処理委員会」を舞台とした攻防が続いてきたが、一時的な和解・協議のあと、去る7月22日、安倍政権は、さらに翁長沖縄県知事を相手取って違法確認訴訟を起こすに至っている。この判決が9月16日に予定されているが、裁判所には、戦後憲法で保障された地方自治の本旨、および、国と地方の対等な関係と国による違法・不当な関与に対する地方の不服争訟権を明示した1999年の「地方自治法」改正の主旨を踏まえた適正な判断が求められている。

(2)去る8月3日に安倍政権の第3次改造内閣が発足したが、その後の記者会見で、続投となった菅官房長官は「基地問題の進捗が沖縄関係予算に影響する」と述べ、新たに沖縄担当となった鶴保大臣もそれに同調する発言を行った。これは、いわゆる「リンク論」だが、地方自治と地域の自立的発展を保障すべき財政規律を根幹から揺るがすものである。ちなみに「沖縄振興法」では「沖縄の自主性を尊重しつつ総合的かつ計画的な振興を図る」とされており、同法の趣旨にも反する暴言である。

3.貴重な自然環境を破壊してはならない

(1)辺野古米軍基地建設に向けて埋立が進められようとしている辺野古岬・大浦湾は、沖縄県の環境保全指針で「自然環境の厳正なる保護を図る区域」(ランクⅠ)とされ、ジュゴンをはじめ絶滅の恐れがある多様な生物種が生息する海域であり、世界自然遺産の候補にもなっている。ちなみに、すでに世界自然遺産となっている知床で確認されている生物は約4200種であるのに対し、辺野古岬・大浦湾で確認されている生物は絶滅危惧種262種を含む5800種以上である。国際自然保護連合(IUCN)は2000年ヨルダンのアンマンで開いた世界自然保護会議で、「沖縄島およびその周辺のジュゴン、ノグチゲラ、ヤンバルクイナの保全」勧告を採択している。このようなかけがえのない貴重な自然環境は後世に残すべきものであり、無謀に破壊する愚行を絶対に許すことはできない。

(2)ヘリパッド建設工事が強行されている東村高江は、「やんばるの森」の一角にあり、沖縄島北部の国頭山地に広がる亜熱帯の豊かな自然環境を有している。そこには、ヤンバルクイナをはじめ、琉球列島にのみ生息し進化してきた固有種が多数見られ、独特の自然生態系が形成され、生物多様性の保全においてもきわめて重要な地域である。このような貴重な自然環境を破壊する愚行は、直ちに中止すべきである。

(3)上記の埋立工事と建設工事に関する「環境アセスメント」は、きわめて杜撰な手続きにもとづく「欠陥アセス」であり、到底、正当なものとは認めがたい。本来の適正な手続きにもとづく環境アセスメントのやり直しが不可欠であり、少なくともそれ以前には、すべての工事を中止するのが当然である。

4. 沖縄、日本、アジアの平和を脅かしてはならない

(1)現在、日米安全保障条約にもとづく在日米軍基地の74%が、国土面積の0.6%にすぎない沖縄に集中している。しかも、その7割が海兵隊の基地である。なぜ、沖縄に海兵隊を集中させる必要があるのか。これまで日本政府は「抑止力」「地理的優位」「一体的運用」などを根拠に挙げてきたが、それらはいずれも説得力に欠ける。実際、2012年12月、当時の森本敏防衛大臣は、退任時の記者会見で、「(普天間の移設先は)軍事的には沖縄でなくても良い」と発言している。

(2)辺野古米軍基地建設、および、高江ヘリパッド建設は、世界一危険な普天間飛行場の代替移設や米軍北部訓練場の一部返還に伴う再編等を建前としている。だが、実態的には、沖縄での米軍基地の一層の増強と永久固定化が進みつつある。こうした在日米軍基地強化の動きは、沖縄、日本、そしてアジアにおける軍事的な緊張をさらに高め、私たちが強く求めている平和を根底から脅かすものとなる。これからの21世紀には、戦争放棄を掲げた戦後日本の平和憲法の原点に立ち返り、在日米軍基地の縮小、とくに沖縄での過重な基地負担の根本的な解消に向けた国民的な議論と合意づくりを早急に推し進め、沖縄県民の意を体してアメリカ政府と交渉していくことが求められている。

2016年9月9日

<有識者共同声明>への賛同呼びかけ人(連名)(50音順)

青木克明(広島医療生協副理事長),青井未帆(学習院大学教授),姉歯曉(駒澤大学教授),東幹夫(長崎大学名誉教授),阿部治(立教大学教授),有本信昭(岐阜大学名誉教授),淡路剛久(立教大学名誉教授),碇山洋(金沢大学教授),池享(一橋大学名誉教授),池内了(名古屋大学名誉教授),池田清(神戸松蔭女子学院大学教授),石川康宏(神戸女学院大学教授),礒野弥生(東京経済大学教授),伊藤武彦(和光大学教授),稲村充則(埼玉協同病院医師),井上隆義(岩手大学名誉教授),井上博夫(岩手大学名誉教授),井上真(東京大学教授・早稲田大学教授),井原聰(東北大学名誉教授),今井晋哉(徳島大学准教授),今岡良子(大阪大学准教授),五十子満大(元東京都立大学教員),岩井浩英(鹿児島国際大学教授),岩佐和幸(高知大学教授),岩橋法雄(琉球大学名誉教授),上園昌武(島根大学教授),上間陽子(琉球大学教授),宇民正(元和歌山大学教授),内橋克人(評論家),内山昭(成美短大学長),浦田賢治(早稲田大学名誉教授),遠藤誠治(成蹊大学教授),大江健三郎(作家),大田直史(龍谷大学教授),大矢正人(長崎総合科学大学名誉教授),岡田健一郎(高知大学准教授),岡田知弘(京都大学教授),岡田正則(早稲田大学教授),岡田洋一(鹿児島国際大学准教授),岡本茂樹(医療法人おかもと小児科クリニック院長),岡本祥浩(中京大学教授),小沢隆一(東京慈恵会医科大学教授),大島堅一(立命館大学教授),大西智和(鹿児島国際大学教授),賀数清孝(琉球大学名誉教授),片山和希(名古屋経済大学准教授),勝俣誠(明治学院大学名誉教授),加藤節(成蹊大学名誉教授),紙野健二(名古屋大学教授),亀山統一(琉球大学助教),加茂利男(大阪市立大学名誉教授),香山リカ(立教大学教授),河上茂(日本科学者会議東京支部幹事),川瀬憲子(静岡大学教授),川瀬光義(京都府立大学教授),川原紀美雄(長崎県立大学名誉教授),菊地裕幸(鹿児島国際大学教授),君島東彦(立命館大学教授),草刈英榮(千葉大学名誉教授),栗田禎子(千葉大学教授),河野仁(兵庫県立大学名誉教授),古関彰一(独協大学名誉教授),小原隆治(早稲田大学教授),小林武(沖縄大
学客員教授),小林芳正(京都大学名誉教授),小淵港(愛媛大学名誉教授),小堀勝充(医療生協さいたま熊谷生協病院院長),小森陽一(東京大学教授),齋藤純一(早稲田大学教授),斉藤隆仁(徳島大学教授),斎藤正美(北見工業大学教授),榊原秀訓(南山大学教授),坂本恵(福島大学教授),桜井国俊(沖縄大学名誉教授),桜田照雄(阪南大学教授),佐々木寛(新潟国際情報大学教授),佐々木雅幸(大阪市立大学名誉教授),佐藤保彦(日本科学者会議埼玉支部幹事),塩崎賢明(立命館大学教授・神戸大学名誉教授),重松公司(岩手大学教授),重森曉(大阪経済大学元学長),白藤博行(専修大学教授),菅野礼司(大阪市立大学名誉教授),鈴木勝久(横浜国立大学名誉教授),関耕平(島根大学准教授),宗川吉汪(京都工芸繊維大学名誉教授),高石光雄(埼玉協同病院院長補佐),醍醐聰(東京大学名誉教授),高作正博(関西大学教授),高塚龍之(岩手大学名誉教授),高橋哲哉(東京大学教授),高原孝生(明治学院大学教授),高山新(大阪教育大学教授),高山進(三重大学名誉教授),武井隆明(岩手大学教授),武田晃二(岩手大学名誉教授),武田真一郎(成蹊大学教授),立花敏(筑波大学准教授),田中稔(岩手大学名誉教授),谷口正厚(沖縄大学名誉教授),種倉紀昭(岩手大学名誉教授),千葉眞(国際基督教大学教授),辻忠男(埼玉協同病院部長),蔦川正義(佐賀大学名誉教授),槌田洋(元日本福祉大学教授),鶴田廣巳(関西大学教授),寺西俊一(帝京大学教授・一橋大学名誉教授),土井妙子(金沢大学教授),徳田博人(琉球大学教授),鳥畑与一(静岡大学教授),豊島耕一(佐賀大学名誉教授),長尾演雄(横浜市立大学名誉教授),中川武夫(中京大学名誉教授),中川直哉(電気通信大学名誉教授),中杉喜代司(弁護士),中西新太郎(横浜市立大学名誉教授),中野晃一(上智大学教授),中道一心(同志社大学准教授),中村寿子(阪南大学非常勤講師),中本正一朗(元地球科学技術総合推進(機構主任研究員),中山智香子(東京外国語大学教授),名嶋義直(琉球大学教授),西川潤(早稲田大学名誉教授),西谷修(立教大学教授),西山勝夫(滋賀医科大学名誉教授),野底武浩(琉球大学教授),長谷川公一(東北大学教授),原科幸彦(千葉商科大学教授・東京工業大学名誉教授),樋浦順(岩手大学名誉教授),土方直史(中央大学名誉教授),人見剛(早稲田大学教授),藤井伸生(京都華頂大学教授),保母武彦(島根大学名誉教授),本多滝夫(龍谷大学教授),前田耕治(京都工芸繊維大学教授),前田定孝(三重大学准教授),前田哲男(評論家),増澤誠一(日本科学者会議東京支部幹事),増田剛(埼玉協同病院院長),増田善信(日本科学者会議会員),松田正久(愛知教育大学前学長・名誉教授),松野周治(立命館大学名誉教授),松本滋(兵庫県立大学名誉教授),間宮陽介(京都大学名誉教授),丸山重威(ジャーナリスト・元関東学院大学教授),宮入興一(愛知大学名誉教授),三宅明正(千葉大学教授),宮﨑礼二(明海大学准教授),宮田惟史(駒澤大学准教授),宮本憲一(大阪市立大学名誉教授・滋賀大学名誉教授),三村和則(沖縄国際大学教授),三好永作(九州大学名誉教授),村上博(広島修道大学教授),村上祐(岩手大学名誉教授),森明香(高知大学助教),森原康仁(三重大学准教授),森裕之(立命館大学教授),諸富徹(京都大学教授),矢ヶ崎克馬(琉球大学名誉教授),八幡一秀(中央大学教授),山川充夫(帝京大学教授・福島大学名誉教授),山口裕之(徳島大学准教授),山崎健(新潟大学名誉教授),山下英俊(一橋大学准教授),山下竜一(北海道大学教授),山田昌樹(秩父生協病院院長),雪田慎二(埼玉協同病院副院長),除本理史(大阪市立大学教授),吉尾寛(高知大学教授),横田茂(関西大学名誉教授),横山英信(岩手大学教授),和田春樹(東京大学名誉教授),渡邉知行(成蹊大学教授)(計171名,2016年9月8日現在)
 
金原注:声明の末尾の一文「沖縄県民の意を対してアメリカ政府と交渉していくことが求められている。」の「対して」は、明らかに「体して」とすべきものと考えられますので、私の判断で修正しました。

国分寺まつり出店拒否事件に対する東京弁護士会の「人権救済申立事件について(要望)」(8/17)を読む

 今晩(2016年8月29日)配信した「メルマガ金原No.2553」を転載します。

国分寺まつり出店拒否事件に対する東京弁護士会の「人権救済申立事件について(要望)」(8/17)を読む

 日本には、全部で52の弁護士会があります(全国組織の日本弁護士連合会は除く)。47でないのは、北海道に地方裁判所が4つある(札幌、函館、旭川、釧路)ことに対応して弁護士会も4つあり、歴史的経緯から東京に3会(東京、第一東京、第二東京)あるからです。
 そして、全ての弁護士会及び日弁連には人権擁護委員会が設置され、人権救済の申立てを受け付けており、調査の結果、人権侵害の事実を認定した場合には、要望、勧告、警告等の措置を執ることになります。
 人権擁護委員会による措置は、法的な強制力は持ちませんが、司法の一翼を担う弁護士会の法的な判断として一定の影響力を持ち得ます。
 
 今日は、東京弁護士会に対して人権救済が申し立てられていた、いわゆる「国分寺まつり出店拒否事件」について、同会が本年8月17日付で執行した「国分寺市」及び「第33回国分寺まつり実行委員会」宛の各「要望」についてご紹介しようと思います。
 私自身、まだ2通の要望書にざっと目を通しただけであり、詳細な検討をするだけの余裕は持てていま
せん。
 従って、今日のところは、皆さんに「国分寺まつり出店拒否事件」の存在を知っていただくこと、これに対する東京弁護士会(人権擁護委員会)による「人権侵害にあたる」との判断に出来れば目を通し、問題の所在に思いを巡らしていただきたいとお願いするにとどめたいと思います。
 とはいうものの、末尾に若干の感想は書かせていただこうと思いますが。

 まず、本件をめぐる東京弁護士会への人権救済申立て、及び今回の同弁護士会による措置(要望)とその後の状況を伝えた報道を引用します。

東京新聞 2015年12月25日 朝刊
国分寺まつり出店拒否 3団体が救済申し立て 「護憲、反原発に差別的扱い」

(抜粋引用開始)
 東京都国分寺市で毎秋、開かれている「国分寺まつり」への出店を拒否された市民団体「国分寺九条の会」など三団体が二十四日、「特定の思想信条に基づき差別的取り扱いを受け、市民参加の機会を奪われ
た」などとして、東京弁護士会に人権救済を申し立てた。(萩原誠)
 二〇一三年まで毎年、参加が認められていた三団体は「内容が政治的意味合いを持つ」と一四、一五年
と二年連続で拒否されており、来年以降は認めるよう求めている。
 申し立てたのは、九条の会と、原発関連の勉強会などを開催している「Bye-Bye原発/国分寺の
会」と「ちょっと待って原発の会」で、いずれも国分寺市民でつくる団体。「公共の場のまつりへの出店拒否は、憲法で定めた表現の自由や平等権の侵害に当たる」などと主張している。
 まつりは市が事務局で、市民らでつくる実行委の主催。九条の会は〇八年から出店し、憲法九条に関するパネル展示やシール投票などを実施。「Bye-Bye」は一一年、「ちょっと待って」は一二年から
参加し、東京電力福島第一原発事故関連のパネル展示などをしてきた。
 一四年、まつり出店者の募集要項に「政治的・宗教的な意味合いのある出店」は参加を断る旨の条件が
加えられた。実行委は同年以降、この要項を根拠に、三団体の参加を拒否している。
(略)
 まつり実行委事務局の市文化と人権課の宮本学課長は「実行委の役員会が、市民の親睦の場に、賛否があるものが参加するのは好ましくないと決定した」とした上で、申し立てについては「内容を確認してい
ないのでコメントできない」と話した。
(引用終わり)
 
※参考動画 「国分寺まつり人権救済申立て」記者会見 20151224(55分29秒)


朝日新聞デジタル 2016年8月26日01時29分
まつり参加拒否、弁護士会が撤回求める 東京・国分寺

(引用開始)
 東京都国分寺市内で開催される「国分寺まつり」への参加を市民団体に認めなかったのは、表現の自由の侵害に当たるとして、東京弁護士会は25日までに同市とまつりの実行委員会に対し、参加を拒否しな
いよう要望書を出した。団体は25日、記者会見を開き、今年のまつりには参加させるよう求めた。
 参加を拒否されたのは「国分寺9条の会」「ちょっと待って原発の会」「Bye―Bye原発/国分寺
の会」の3団体。
 例年11月に開催される国分寺まつりに参加し、憲法9条や原発事故を考えるパネル展示などを行っていた。だが2014年と昨年の2回にわたり、内容が「政治的な意味合いを持つ」などとして市内の団体などでつくる実行委に参加を拒否された。このため昨年12月、東京弁護士会に人権救済を申し立ててい
た。
 弁護士会は人権擁護委員会での調査を経て、参加が認められないのは「表現の自由の行使が妨げられたことになる」と指摘。「政治的な意味合い」という理由に「合理性はない」とした。市に対しては、実行
委に補助金を出していることなどから「適切な関与をすることが要請される」と求めた。
 3団体の代理人、梓澤和幸弁護士は「市民が広く社会に主張を伝えるための機会について、市は表現の
自由を実現すべき公的責任がある」としている。
 国分寺市の宮本学・文化と人権課長は「要望書は受け取っているが、今の段階でコメントはできない」
としている。
(引用終わり)
 
毎日新聞 2016年8月26日 地方版〔都内版〕
国分寺まつり 「今年こそ参加を」 護憲など3団体「政治的」と拒否され

(抜粋引用開始)
(略)
 3団体は昨年末、人権救済の申し立てを行い、東京弁護士会が今月18日、まつりへの参加を認めるよ
う求める文書を実行委と市側に送付した。これに対し、今年も参加を認めない旨の実行委員長名の通知が
23日に3団体に届いた。
 記者会見した「国分寺9条の会」代表の増島高敬さん(76)は「まつりは公共の空間であり、表現の
自由は保障されるべきだ。ぜひ参加させてほしい」と話している。一方、まつり実行委事務局の同市文化と人権課は「実行委の役員会で決まったことであり、現段階では今年も参加を拒否する方針」としている
(引用終わり)
 
NPJ通信 2016年8月25日
国分寺まつり出店拒否事件~表現の自由を侵害したと東京弁護士会が認定~
寄稿:大城 聡(弁護士)

(抜粋引用開始)
(略)
今年11月開催の国分寺まつりへの出店等について
 「国分寺9条の会」、「ちょっと待って原発の会」、「Bye-Bye原発/国分寺の会」の3団体は、8月23日、
今年11月開催の第33回国分寺まつりに関して出店拒否の通知を受け取りました。国分寺市に問い合わせたところ、出店拒否を決定した実行委員会は、東京弁護士会の調査結果(要望)を受け取る前の8月17日に開催
されたとのことです。
 この状況を受けて、出店を拒否された「国分寺9条の会」、「ちょっと待って原発の会」、「Bye-Bye原
発/国分寺の会」の3団体は、8月25日に記者会見を開き、国分寺市及び実行委員会に対し、東京弁護士会からの要望に基づき、再考の上、第33回国分寺まつりにおける3団体の出店を認めるべきことを強く求めています。
 東京弁護士会からの要望を真摯に受入れ、市民が自由に参加できる本来の国分寺まつりに戻すかどうか
、国分寺市と実行委員会の判断に注目したいと思います。
(引用終わり)

 さて、本件人権救済申立事件について、東京弁護士会では2件の事件番号を付して受理しています。「東弁28人第198号」が国分寺まつりの主催団体である実行委員会を被申立人とするもの、「東弁28人第199号」が国分寺市を被申立人とするものであり、今回、いずれについても「要望」という措置がなされました。
 東京弁護士会のホームページに、両事件についての「人権救済申立事件について(要望)」が、固有名詞を匿名化した上で掲載されています。
 その内の結論部分にあたる「要望の趣旨」、及びその結論を導いた「要望の理由」の中核部分である「人権侵害性」を判断した部分を、やや長文となりますが、引用したいと思います。
 
【東弁28人第198号 被申立人 第33回国分寺まつり実行委員会】
(抜粋引用開始)
第一 要望の趣旨
 第31回及び第32回国分寺まつりにおいて、「国分寺9条の会」が出店の申込みを、「ちょっと待って原
発の会」及び「Bye-Bye 原発/国分寺の会」がイベント参加の申込みを行ったことに対し、各回の国分寺まつり実行委員会が、「政治的な意味合いを持つ」との理由で出店、イベント参加を認めなかったことは、これらの団体に所属する申立人らの表現の自由を侵害するものでした。
 よって、貴実行委員会に対して、今後は、申込みがあった者につき、「政治的な意味合いを持つ」との
理由で、出店やイベント参加を拒むことのないよう、要望致します。
 
第二 要望の理由
二 人権侵害性
1 第31回及び第32回の本件祭り実行委員会

(一)両実行委員会の性格
 第31回及び第32回の本件祭り実行委員会(以下「両実行委員会」という。)は、市の市長の説明によれ
ば市民によって構成される組織であることが認められ、これを覆すに足りる証拠はない。
 他方、両実行委員会は、それぞれの本件祭りの開催のために、市からそれぞれ金466万円の交付を受けている。また、実行委員会の事務局は市の庁舎内に設置され、事務局の事務は市職員が担っている。また、
本件祭りは、都の管理する公園を市が同市の費用で借り上げて実施するものである。
 これらの事情、即ち、公共団体からの多額の財政的援助の存在、市庁舎の市職員が事務局事務を担ってくれるという特権的待遇、公共施設(公園)を独占的に無償使用して実施する祭りであるという事情をふまえると、両実行委員会の性質は、単なる市民の組織ということはできず、極めて公共性の強い組織であるということができ、その公共性の結果として、市とともに市民の人権を侵害してはならないという規律
を受けるものというべきである。
(二)申立人らの人権
(1)申立人らは、「国分寺9条の会」、「ちょっと待って原発の会」または「Bye-Bye 原発/国分寺の会」
という名称でグループを作り、第31回及び第32回の本件祭りに参加しようとした者である。
(2)「国分寺9条の会」は、2004(平成16)年に大江健三郎らが発した「日本国憲法を守るという一点で手をつなぎ、『改憲』のくわだてを阻むため、一人ひとりができる、あらゆる努力を、いますぐ始めることを訴えます。」との「九条の会アピール」に賛同することを会員の唯一の条件として人びとが集まった団体であり、同会に属する者は、駅前での宣伝活動や毎月のニュースの発行などをしてきたものであって、
会の存在とその活動をより多くの市民に認知してもらうために本件祭りに参加してきた。
 かような動機によって本件祭りに参加することは、日本国憲法を守るという自身の見解を広める活動で
あり、かかる活動は表現の自由として憲法21条によって保障されている。
(3)「ちょっと待って原発の会」は、1986(昭和61)年4月のチェルノブイリ原発事故の後に設立された市
民グループであり、原子力発電の危険性を多くの市民に伝えること等を目的に勉強会や集会を開き、活動をしてきた。
 同会に属する者は、日頃の学習の結果を多くの市民に伝えて意見交換をするために本件祭りに参加して
きた。
 かような動機による本件祭りへの参加は、原子力発電は危険であるとの自身の見解を広め、また意見交
換をするという活動であり、かかる活動も表現の自由として憲法21条によって保障されている。
(4)「Bye-Bye 原発/国分寺の会」は、福島第一原発の事故後の2011(平成23)年6月に結成した市民団体であり、原子力発電をなくして自然エネルギーによる電力供給の実現を目指し、定例会で情報交換をした
り、脱原発を呼びかけるチラシを作成し駅前で配布したりする等の活動を行なっている。
 同会に属する者は、自身の集めた情報をパネルにまとめて展示し、市民に広く伝え、交流するために本
件祭りに参加してきた。
 かような動機による本件祭りへの参加は、原子力発電をなくし自然エネルギーによる電力供給を実現しようという自身の見解を広める活動であり、かかる活動も表現の自由として憲法21条によって保障されて
いる。
(三)出店等が認められなかったことの人権侵害性
(1)申立人らは、第31回及び第32回の本件祭りへの出店等の申込みを行ったが、それぞれの実行委員会は、
これを認めなかった。
 申立人らが本件祭りにおいて活動することが、申立人らの表現の自由として保障されることは(二)で述べた通りであり、よって、本件祭りに出店等ができなくなったことは、申立人らの表現の自由の行使が妨
げられたことになる。
 かように表現の自由の行使が妨げられたことが申立人らに対する人権侵害といえるかにつき、以下検討
する。
(2)表現の自由は、思想及び情報の自由な伝達並びに交流を促進するものであるところ、これらの伝達及び交流は民主的な社会を維持発展させるために不可欠であり、よって、何らかの理由により表現の自由に対
して制約が課されることがあったとしてもその制約は必要最小限のものでなければならない。
 本件は、公園という公共施設における表現行為が問題となっており、かような事案の場合、規制の必要最小限性をどう考えるかについては、集会の自由に関して公共施設の利用拒否の合憲性が問題となった最
3小判1995(平成7)年3月7日(民集49巻3号687頁)の判示が参考になる。同判決は「集会の用に供される公共施設の管理者は、当該公共施設の種類に応じ、また、その規模、構造、設備等を勘案し、公共施設としての使命を十分達成せしめるよう適正にその管理権を行使すべきであって、これらの点からみて利用を不相当とする事由が認められないにもかかわらずその利用を拒否し得るのは、利用の希望が競合する場合のほかは、施設をその集会のために利用させることによって、他の基本的人権が侵害され、公共の福祉が損なわれる危険がある場合に限られる」としている。
 かかる判旨をふまえれば、申立人らの出店等を拒みうるのは、他の者の基本的人権が侵害される危険が
ある場合に限られるというべきである。
(3)一3の認定のとおり、両実行委員会が申立人らの出店等を認めなかった理由は、「政治的な意味合いを
持つ」との一事である。
 しかし、いうまでもなく、出店等が「政治的な意味合いを持つ」からといって他の基本的人権を侵害す
ることにはならないのであり、よって、両実行委員会が出店等を認めない理由にはなんら合理性はない。
(4)なお念のため、現実に、申立人らの出店等により他の者の基本的人権を侵害する危険があるかを検討す
る。
 「国分寺9条の会」を通してその会員が本件祭りで行なおうとしたことは、(二)(2)のとおり、会の存在
およびその活動をより多くの市民に認知してもらうことである。
 また、「ちょっと待って原発の会」を通してその会員が本件祭りで行なおうとしたことは、(二)(3)の
とおり、日頃の自身の学習の結果を多くの市民に伝えて意見交換をするためである。
 そして、「Bye-Bye 原発/国分寺の会」を通してその会員が本件祭りで行なおうとしたことは、(二)
(4)のとおり、自身の集めた情報をパネルにまとめて展示し、市民に広く伝え、交流するためである。
 これらからは、何ら他の者の基本的人権を侵害する危険性は看取されない。
 また、申立人らのこれまでの出店等において何らかの問題が発生したことは証拠上全く認められず、ま
た、申立人らの出店等を問題とした市議会総務委員会の議論においても、申立人らがこれまでの出店等において他の者の基本的人権を侵害するような行動をしたとは全く述べられていない。
 これらの事情をふまえると、申立人らの出店等により他の基本的人権を侵害する危険があるとは到底言
えない。
(5)そうであるとすると、両実行委員会は、何ら合理的理由なく申立人らの第31回及び第32回の本件祭りへの出店等を拒んだのであり、両実行委員会のこれらの行為は、申立人らの表現の自由を侵害したものとい
わざるを得ない。
(引用終わり)
 
【東弁28人第199号 被申立人 国分寺市】
(抜粋引用開始)
第一 要望の趣旨
 第31回及び第32回国分寺まつりにおいて、「国分寺9条の会」が出店の申込みを、「ちょっと待って原
発の会」及び「Bye-Bye 原発/国分寺の会」がイベント参加の申込みを行ったことに対し、各回の国分寺まつり実行委員会が、「政治的な意味合いを持つ」との理由で出店、イベント参加を認めなかったことにつき、貴市が、これを黙認するだけでなく、漫然と市報に出店の広告を掲載して、両実行委員会の判断を助長したことは、これらの団体に所属する申立人らの表現の自由を侵害するものでした。
 そこで、貴市におかれては、今後は、国分寺まつり実行委員会に対し、「政治的な意味合いを持つ」との理由で、出店、イベント参加を拒むことのないよう適切に働きかけをするとともに、「政治的な意味合
いを持つ」との理由で出店、イベント参加が拒まれることがないことを、広く市民に広報されたく、要望致します。
 
第二 要望の理由
二 人権侵害性
1 第31回及び第32回の本件祭り実行委員会の性格
 第31回及び第32回の本件祭り実行委員会(以下「両実行委員会」という。)は、市民によって構成され
る組織であることが認められ、これを覆すに足りる証拠はない。
 他方、両実行委員会は、それぞれの本件祭りの開催のために、市からそれぞれ金466万円の交付を受けている。また、実行委員会の事務局は市の庁舎内に設置され、事務局の事務は市職員が担っている。また、
本件祭りは、都の管理する公園を市が同市の費用で借り上げて実施するものである。
 これらの事情、即ち、公共団体からの多額の財政的援助の存在、市庁舎の市職員が事務局事務を担ってくれるという特権的待遇、公共施設(公園)を独占的に無償使用して実施する祭りであるという事情をふまえると、両実行委員会の性質は、単なる市民の組織ということはできず、極めて公共性の強い組織であるということができ、その公共性の結果として、市とともに市民の人権を侵害してはならないという規律
を受けるものというべきである。
2 市の人権侵害性の有無
(1)市は、両実行委員会にそれぞれ466万円の補助金を交付し、また、実行委員会の事務局を庁舎内に設置
し、事務局の事務を市職員に担わせている。
 また、本件祭りは、都の管理する公園を相手方市が同市の費用で借り上げて実施しているものである。
 かように市は、自身の強い関与によって本件祭りを実現させているのであり、かかる関与によって前述
1の如く実行委員会が公共性を帯びているのであるから、本件祭りの運営につき、挙げて実行委員会に任せて全く関知しないということは相当ではなく、実行委員会がその公共的役割を全うするよう関与することが市には求められるというべきである。
 とりわけ、本件祭りの空間は、市が主体的に関与をして市民の集まる場を作り出したものであり、一種のパブリック・フォーラムとして表現の自由の保障が強く及ぶ空間だというべきであるから、実行委員会
が市民の表現の自由を侵害することのないよう、市には適切な関与をすることが要請されるのである。
(2)かかる観点からいうと、第31回及び第32回の本件祭りにおいて、申立人らが出店等の申込みをしたのに対し、「政治的な意味合いを持つ」との理由で、これを認めなかった両実行委員会の行為については、申立人らの表現の自由を侵害するものであることが明らかなのであるから、そのパブリック・フォーラムを
実現した市としては、出店等を認めるよう両実行委員会に働きかけるべきであったといえる。
 更に言えば、そもそも市報に掲載された出店等の勧誘を行う広告に、「参加不可」の事由として、「政
治的な…意味合いのある出店である(こと)」を挙げていること自体、何ら合理的な理由なく出店等を制限するものであって、文面上表現の自由を侵害するものというべきであるから、かかる広告の文言(仮にそのような要綱があるのであればその要綱自体)を再考するよう実行委員会に働きかけるべきであったといえる。
(3)以上の次第であり、市は、両実行委員会が申立人らの第31回及び第32回本件祭りへの出店等を認めなかったことにつき、何の対応もせずに黙認し、それどころか、漫然と市報に広告の掲載をさせて両実行委員
会の判断を助長したものといえ、申立人らの人権を侵害したというべきである。
(引用終わり)

 各「要望書」のうち、引用しなかった「第二 要望の理由」「一 認定した事実」も、是非リンク先でお読みいただきたいと思います。この認定事実を踏まえた上で、人権侵害にあたるかどうかの判断が導か
れたのですから。

 その「認定した事実」のうち、私の読み落としかもしれないのですが、このような事実も記載しておいて欲しかったということがあります。幸い、私の知りたかった事実は、東京新聞が記事の中で触れていました。
「(国分寺)九条の会は〇八年から出店し、憲法九条に関するパネル展示やシール投票などを実施。「Bye-Bye(原発/国分寺の会)」は一一年、「ちょっと待って(原発の会)」は一二年から参加し、
東京電力福島第一原発事故関連のパネル展示などをしてきた。」
 東京弁護士会(人権擁護委員会)が、3団体が拒否されるようになる前年(2013年)の第30回国
分寺まつりに出店が認められていたことには触れながら、それ以前の参加実績にあえて触れなかったのは、もしかしたら意図的であったかもしれない(長年の参加実績が無かったとしても人権侵害になるのだという論理を貫くため)と思いつつ、やはり私としては、認定事実に含めて欲しかったですね。

 それから、引用した人権侵害性の判断について読むにあたり、法律家ならざる人にとって少し分かりにくいのは、以下の部分かもしれません。
 
これらの事情、即ち、公共団体からの多額の財政的援助の存在、市庁舎の市職員が事務局事務を担ってくれるという特権的待遇、公共施設(公園)を独占的に無償使用して実施する祭りであるという事情をふまえると、両実行委員会の性質は、単なる市民の組織ということはできず、極めて公共性の強い組織であるということができ、その公共性の結果として、市とともに市民の人権を侵害してはならないという規律を受けるものというべきである。(下線は金原による)」(198号事件より)

 国分寺まつりのように、実行委員会形式をとりながら、実質的には地方公共団体が事務局を取り仕切っているところは、全国いたるところにありますが(我々が「九条連」を結成して長年出場を続けている和歌山市の紀州おどりがまさにそうです)、そのような組織が「その公共性の結果として、市とともに市民の人権を侵害してはな
らないという規律を受ける」という部分は、実は「人権」とか「人権侵害」ということを考える上で、非常に基礎的かつ前提的な認識を明示した部分なのです。
 これは、近時ようやく国民の間に理解が広がりつつある「立憲主義」とも密接に関連することですが、「人権を侵害してはならない」という規範の名宛人は、何よりも国(及び地方公共団体等の公的組織)であるということです。もちろん、私人間における人権侵害が無いと言っている訳ではありませんが、まず第一義的に人権侵害が問題となるのは、国等の公的組織との関係においてなのです。

 そして、私としては、国分寺まつり実行委員会の公的性格を丁寧に認定した上で、東京弁護士会人権擁護委員会が、実行委員会による3団体に対する出店拒否を人権侵害と認定したその結論自体に異論はないのですが、はたしてその論理が、他の同種事案にも適用可能な普遍性を持つのかどうか、これから時間をかけて吟味しなければと思っています。
 私が、何故特にこの「国分寺まつり人権救済申立事件」について関心を持つのかについては、以下の私のブログから、末尾の部分を引用することで説明に代えたいと思います。
 
2016年7月23日
今年も「九条連」が紀州おどり(第48回 2016年8月6日)に参加します
(抜粋引用開始)
 様々な企画が生み出されても、始めたころの熱気がそのまま維持・発展していくケースは多くありません。大抵は、年を経るにつれて勢いを失い、やがて消滅に至るのが普通ですから、「九条連」とて例外で
はないと考えれば、いまさらじたばたしても始まらないのかもしれません。ただ私としては、「九条連」にここまで付き合った以上、最後まで見届ける責任があるだろうと思っています。
 ・・・というかなり悲観的な感想は、昨年の参加状況を踏まえてのものですが、ここに来て、「これが最後の九条連かもしれない」別の要因が浮上しつつあるようなのです。
 今のところ、この点に詳しく触れるだけの情報を私個人は持ち合わせていませんので、これ以上書く訳
にはいきませんが、2014年の憲法記念日に開催される憲法集会(講師:内田樹氏)の後援を求められた神戸市が、「憲法に関しては、『護憲』『改憲』それぞれ政治的な主張があり、憲法に関する集会そのものが、政治的中立性を損なう可能性がある」として後援不承諾としたこと、同年6月、「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」という俳句が俳句教室会員の互選によって公民館報に載せる句に選ばれながら、公民館(さいたま市)が独断で掲載を中止したこと(この事件はその後、さいたま市を被告とする訴訟に発展)などが、決して対岸の火事などではないのだということを私たちは自覚する必要があります。
 現に、先の参院選の最中、「選挙に行こうよ」と街頭でアピールしていた女性たちに対し、和歌山県警
が「集団示威行為であり、県条例に違反する」と警告したではありませんか(「選挙に行こう」と呼びかけることは集団示威運動か?~市民連合わかやま有志弁護士から和歌山県警に対する申入書(2016年7月1日)/2016年7月4日)。
 私たちは、「世界に誇る平和憲法9条を守り、再び戦争の惨禍が起こることのないよう活動」すること
や、「平和な日本を築き上げてきた憲法9条に感謝しながら、力いっぱい踊」ることが出来て当たり前だと思ってきましたよね。
 そのような「当たり前」が「当たり前」でなくなりつつある世界に私たちは現に生きているのだということを認識した上で、一人一人が今年の「九条連」に参加するかどうを決めて欲しいと切に願っています。
(引用終わり)

 最後に付言すると、今年の8月6日に開催された第48回紀州おどりに、市民有志による「九条連」(憲法9条を守る和歌山弁護士の会と9条ネットわかやまによる共同呼びかけ)は、2005年以来11回目の出場を無事果たしました(2014年は荒天により中止)。参加者数も、危機バネが働いたからか、前年のほぼ倍の約80人が参加してくれました。
 弁護士9条の会が弁護士会に人権救済を申し立てる全国初の事例とならぬよう、今後とも、和歌山市が国分寺市のような愚かな判断をせぬよう願っています。
 これが、私が「国分寺まつり人権救済申立事件」に注目する大きな理由の1つです。
 

(付録)
『めぐり逢い』 演奏:長野たかし&森川あやこ
 

沖縄県東村高江での機動隊による取材妨害に対する地元2紙の見解を読む

 今晩(2016年8月24日)配信した「メルマガ金原No.2548」を転載します。

沖縄県東村高江での機動隊による取材妨害に対する地元2紙の見解を読む

 去る2016年8月20日(土)、沖縄県東村高江での米軍ヘリパッド建設に抗議する市民を取材していた地元2紙(沖縄タイムス、琉球新報)の記者が、市民と共に機動隊車両の間に閉じ込められ、一定時間、現場の取材ができないという「事件」が発生しました。高江では、連日様々な事件が生じていますが、権力が、むき出しの暴力を報道機関にまで及ぼしてきたという事態は、1つの階梯を上がってしまった徴表として、記録にとどめる必要があるだろうと思い、やや遅ればせながらではありますが、沖縄地元2紙の報道・声明・社説などを引用したいと思います。
 本来、メディアのまとまった記事や社説を引用する場合、全文を転載することは遠慮すべきなのでしょうが、本件については、事案の性質上、沖縄タイムス、琉球新報の両社から、著作権に基づく削除要請がなされることはないだろうと判断し、「事件」を報じた記事と社説、並びに抗議声明の全文を紹介させていただくことにしました。
 もちろん、両社から削除要請があれば、直ちに応じるつもりです。
 まずは、「事件」を報じた両社の記事を引用します。

琉球新報 2016年8月21日 05:04
機動隊が記者排除し閉じ込め 東村高江 弁護士「報道の自由侵害」

(引用開始)
 【ヘリパッド取材班】東村と国頭村に広がる米軍北部訓練場の新たなヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設をめぐり、東村高江で抗議活動をする人たちを県道上で取材していた本紙記者が20日午前、機動隊に強制排除され、約15分間、隊員による人垣と車両の間に閉じ込められた。この間、工事車両の資材搬入などの現場に近づくことができず、取材機会が奪われた。沖縄タイムスの記者も同様に排除され、一時閉じ込められた。弁護士らは報道の自由の侵害と問題視している。
 朝から抗議行動をしていた市民ら約50人は、東村高江のN1地区ゲート前から南下し、工事車両の搬入を止めようと県道70号の高江橋の上に座り込んだ。午前10時25分、南側から約30人の機動隊員が近づき、座り込む人たちの腕や体をつかんで強制的に排除した。
 排除される際、本紙記者は機動隊員に腕章を示した上で「琉球新報だ」と訴えたが、解放されず、その後、閉じ込められた。現場にいた小口幸人弁護士は「記者排除は大問題だ。国家権力が、強制力を持って市民を排除する場から記者を排除して、報道させないのは、報道の自由の根幹部分の侵害だ。絶対に許してはいけない行為だ」とした。
 座り込みを排除した後、砂利を積んだ工事車両10台が警察車両に守られながら、ゲート内へ入っていった。
強く抗議する
 普久原均琉球新報編集局長の話 本紙記者は琉球新報の腕章を身に着け、住民の抗議行動を記録するための正当な取材をしていた。現場には県民に伝えるべきことがあった。警察の妨害によって、その手段が奪われたことは大問題だ。警察官が記者を強制的に排除し、行動を制限した行為は報道の自由を侵害するもので、強く抗議する。
(引用終わり)
 
 琉球新報は、同紙記者が強制排除される模様を撮影した動画も公開しています。

機動隊が記者排除し閉じ込め 東村高江(1分09秒)


沖縄タイムス+プラス 2016年8月21日 14:28
沖縄タイムス記者も拘束 高江で取材中、機動隊聞き入れず

(引用開始)
 20日、沖縄県東村の高江橋で機動隊が市民らを排除する様子を取材していた本紙記者ら報道関係者も拘束され、バスとバスの間に押し込められた。「記者である」ことを訴えたが最終的に聞き入れられず、取材活動を制限された。
 本紙記者は午前10時26分すぎ、排除の様子を取材していたところ、機動隊4人に囲まれた。背中を強く押されながらバスとバスの間に連れて行かれ、すでに拘束されていた市民ら15人と一緒に押し込められた。
 県警に「取材中である」ことを訴えると、一度は解放された。だが午前10時41分すぎ、別の機動隊に再び拘束され、バスとバスの間で身動きが取れず、取材活動を制限された。他社の記者も同じく拘束された。
 小口幸人弁護士は、記者の拘束について「主権者が知るべきことを報道する権利を侵害する行為で許されない」と話した。交通を妨げるなど、排除される理由がなかった中での拘束に「法律に基づいた行動だとは思えない」と述べた。
 沖縄平和運動センターの山城博治議長は「マスコミを萎縮させることにつながりかねない行為で、あり得ない」と語気を強めた。
 県警警備2課は、バスとバスの間に市民や記者を拘束したことについて「危険防止や安全確保のため。取材を規制する目的ではない」と答えた。
(引用終わり)
 
 なお、沖縄タイムスも、正式な抗議声明を発表しています。

沖縄タイムス+プラス 2016年8月23日 20:31
記者排除は「報道の自由を侵害」 沖縄タイムス社が抗議声明

(引用開始)
 
沖縄県東村高江周辺のヘリパッド建設に反対する市民らを取材中の沖縄タイムスと琉球新報の記者が20日、機動隊に強制排除されたことを受け、沖縄タイムス社は23日、石川達也編集局長名で「報道の自由を侵害するものであり、断じて許すことはできない」とする声明を発表した。声明は次の通り。
 沖縄タイムスの社員証を見せ、記者であることを訴えたにもかかわらず、2度にわたって拘束状態に置かれ、計30分程度取材活動が制限された事に強く抗議する。本紙記者は市民らの抗議活動を通常通りに取材し、県民の知る権利に応えようとしていたもので、こうした警察権力による妨害は、憲法で保障された報道の自由を侵害するものであり、断じて許すことはできない。
(引用終わり)
 
 最後に、両紙の社説をご紹介します。
 
琉球新報 2016年8月22日 06:02
<社説>高江で記者排除 報道の自由侵害を許さない

(引用開始)
 思想・信条の自由に基づいた市民の抗議行動を国家権力が容赦なく組み敷く。今、そんな現場は国内で沖縄の名護市辺野古と東村高江をおいて、ほかにない。
 この国の民主主義の成熟度が鋭く問われる現場を歴史に刻むことは報道機関の責務だが、機動隊を投入した強権的な警備は、取材中の記者の排除、拘束に行き着いた。
 民主主義の根幹を支える報道の自由を侵害する行為であり、強く抗議する。
 米軍北部訓練場の新ヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の建設に抗議する市民を取材していた県内2紙の記者が、市民と共に機動隊車両の間に閉じ込められた。
 機動隊は20日午前、資材を搬入する工事車両を止めようと、県道70号の高江橋の上に座り込んだ市民約50人の排除を始めた。
 排除の模様を撮影していた本紙記者は機動隊員に2度も両腕をつかまれ、背中を押されて約40メートルも移動させられた。2度目は車両の間に押し込められた。約15分間の不当な拘束により、記者は市民排除の様子を取材できなかった。
 県警は「安全確保のため。記者とは明確に分からなかった」と釈明しているが、琉球新報の腕章をして記者と名乗り続け、あらがう記者が力ずくで排除された事実は動かない。明確な意図に基づく取材妨害があったことは間違いない。
 新基地建設現場の辺野古でも、市民と、機動隊や海保とのせめぎ合いが続く。大浦湾の海域で2015年1月に起きた「馬乗り」問題は、報道によって過剰な警備の真相が照らし出された例だ。
 海上保安官が船上で撮影中の女性映画監督に馬乗りになった。本紙が連続写真を掲載して検証したことで、「馬乗り」を否定していた海上保安庁は「体全体を使って(女性が)転落しないようにした」と説明を一転させた。報じられなければ、海保は「知らぬ存ぜぬ」を貫いていただろう。
 国連は4月に日本の表現の自由に関する暫定調査結果を出し、安倍政権が新基地建設に抵抗する市民に対して「過度な権力を行使している」と警鐘を鳴らした。国際基準に照らせば、過剰な警備は明らかに人権を侵害しているのである。
 行き過ぎた権力行使に歯止めをかけるには、現場に身を置いた取材が不可欠だ。記者の拘束は、民主主義と人権を危機に陥れる。二重、三重の意味で許し難い行為だ。
(引用終わり)
 
沖縄タイムス+プラス 2016年8月22日 07:00
社説[取材妨害・住民排除]工事止め協議の場作れ

(引用開始)
 
この工事は一体全体、誰のための、何を目的にした工事なのか。
 違法性の疑いのある検問が現場の県道で実施され、事前協議もなしに勝手に立木が伐採された。機動隊による力ずくの警備によって住民は強制排除され、長時間の道路封鎖によって地元住民の日常生活にも支障が生じた。
 20日には、記者も抗議行動中の市民とともに一時的に拘束状態に置かれ、取材活動を妨げられた。
 米軍北部訓練場でのヘリパッド建設工事が進む東村高江。ヘリパッド建設に反対する住民ら約30人はこの日朝、工事車両の搬入を止めようと県道70号にかかる高江橋の上に座り込んだ。
 機動隊は、座り込む市民らを抱え上げ、強制的に場所を移動させた。その上で、抗議する市民を機動隊の車両と車両の間に押し込め、隊員が人垣を作って身動きの取れない状態にした。市民らはおよそ30分にわたって道路脇に閉じ込められた。
 度を越した拘束であり、市民の権利をないがしろにする警備と言うほかない。
 沖縄タイムスの記者は、県警の腕章をつけた隊員に社員証を提示し、取材中なので出してもらいたい、と申し入れた。いったん拘束を解かれたものの、しばらくして別の機動隊員が近寄ってきて別の場所に押し込められたと言う。
 琉球新報の記者も腕章を示して取材記者だということをアピールしたが、正当な取材活動を妨害され、工事車両の資材搬入の現場に近づくことができなかった。
■    ■
 この状況は1950年代の島ぐるみ闘争を思い出させる。米軍の強制的な土地接収と、軍用地料の一括払いや新規土地接収に反対して行政・議会・地主・住民が立ち上がった、あの島ぐるみの闘いである。
 北部訓練場やキャンプ・シュワブは、本土に駐留していた海兵隊を沖縄に移駐させるため、あのとき建設されたものだ。本土の負担軽減が進んだ半面、沖縄は「基地の島」として過大な基地負担を背負わされることになった。
 日米特別行動委員会(SACO)は基地の整理・統合・縮小計画に合意した。だが、ほとんどが県内移設で、北部訓練場の過半約3987ヘクタールの返還は、SACOの返還合意面積を大きく見せるための措置だった。
 米軍は不要な部分を返還する見返りに、6カ所のヘリパッドの移設と、海への出入りを確保するための土地と水域の追加提供を勝ち取った。
■    ■
 半世紀以上も前に建設された沖縄最大の基地の不要部分を返還し、日本の予算によって新たな機能を備えた訓練基地としてリニューアルし、恒久使用する。それが米軍の狙いだ。
 一方、ヘリパッドが高江の集落を取り囲むように移設され、オスプレイの訓練に使用されることは、高江の住民にとっては生活破壊を伴う大きな負担増となる。
 政府が過半返還を強調するのは高江の暮らしや豊かな自然環境への破壊的影響を無視した一方的な主張である。
(引用終わり)

「選挙に行こう」と呼びかけることは集団示威運動か?~市民連合わかやま有志弁護士から和歌山県警に対する申入書(2016年7月1日)

「選挙に行こう」と呼びかけることは集団示威運動か?~市民連合わかやま有志弁護士から和歌山県警に対する申入書(2016年7月1日)
(配信日:2016年7月4日)

 今日(7月4日)、週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館)No.32(7月18日号)が「漫画史上初![日本国憲法全文]小冊子付きプレミア号」と銘打ち、全44ページの充実した小冊子付きで発売されました。
 私も早速近くのコンビニで買い求めましたが(税込360円)、売切店の続出が予想されますので、目に付いたら迷わず購入されることをお奨めします。

 今日は、この話題を書こうかとも思ったのですが、表現の自由や公正な選挙運動をめぐる重要な問題が和歌山で起きていますので、とりあえずこの問題についての報道、及び弁護士有志(私も名前を連ねていますが)から和歌山県警察本部への申入書をご紹介しておきます。
 実は、この件は、突き詰めて考えていくと、県条例の憲法適合性まで行き着かざるを得ないのではないかという予感も働くのですが、今はとてもそこまで検討している余裕がありません。
 何が起こったのか、そして、市民や弁護士有志が何を問題としているのかを知っていただければと思います。
 
和歌山放送ニュース 2016年07月02日 14時22分
警察の投票呼びかけ中止に弁護士ら抗議

(引用開始)
 
和歌山市内で「選挙に行こう」と呼びかけていた男女の活動を中止させたのは違法だとして、安全保障関連法の廃止を求める市民団体の担当弁護士が、きのう(1日)和歌山県警察本部に抗議しました。抗議したのは、安全保障関連法の廃止を求めている「市民連合わかやま」の豊田泰史(とよだ・やすふみ)弁護士らです。
 豊田弁護士によりますと、団体の男女およそ20人が、きのうの午前中、和歌山市内の量販店前で投票を呼びかけていたところ、和歌山西警察署の警備課長らにビデオなどで撮影され、集団による行進などに関する和歌山県の条例に違反することを理由に、中止させられたということです。
 豊田弁護士らは、きのうの夕方、和歌山県庁で記者会見を開き「条例で選挙運動は除外されており、示威(じい)行為にも当たらない。県警の対応は違法だ」と批判しました。
 一方、抗議を受けた県警察本部は「選挙運動ではなく、全員で声を合わせ『選挙に行こう』などと叫んでいた点が集団示威に当たる。適正な職務執行だった」とコメントしています。
(引用終わり)
 
毎日新聞 和歌山版 2016年7月2日
警告で県警に申し入れ 選挙活動の市民団体

(引用開始)
 和歌山市内の歩道で選挙活動をしていた市民団体メンバーに、県警が県条例違反に当たると警告したのは誤っているなどとして、市民団体「市民連合わかやま」の弁護士らが1日、直江利克県警本部長宛ての申し入れ書を県警に提出した。
 記者会見した豊田泰史弁護士らによると、女性市民グループ約20人は1日午前10時45分ごろ、歩道から通行人らに向かって「市民の力で政治を変えましょう」などと呼び掛けていた。これに対し、和歌山西署が、許可なく示威運動をすることなどを禁じた県条例に違反するとして警告。その際、写真やビデオ撮影もしたという。
 申し入れ書では女性らの行為を、「選挙の啓発活動で許可を必要とせず、示威運動にも該当しない」と指摘。県警の対応について、「条例の解釈・運用を誤っており、選挙活動の自由などを侵害するおそれが強い」と主張している。
 県警警備課の増田雅美次席は事実関係を認めた上で、「適正に職務を執行したと考えている。(申し入れ書については)意見として承りたい」と話した。【倉沢仁志、最上和喜】
(引用終わり)
 
 上記報道に引かれている申入書は、既に1日の記者会見でマスコミに配布しているものですから、以下に全文引用します。

(引用開始)
                                       平成28年7月1日

和歌山県警察本部長 直 江 利 克 殿

            安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合わかやま
                    代表 弁護士 豊 田 泰 史
                        弁護士 山 﨑 和 友
                        弁護士 上 野 正 紀
                        弁護士 阪 本 康 文
                        弁護士 小野原 聡 史
                        弁護士 金 原 徹 雄

               申        入       書

 本日午前10時45分頃発生しました事案について、以下のとおり申し入れ致します。
 上記日時頃、和歌山市広瀬所在のコーナン前歩道上で20名程度の女性市民グループが、「市民の力で政治を変えましょう」「選挙に行きましょう」などと道行く市民に呼びかけ行動をしていたといころ、突然、和歌山西警察署の警備課の〇〇課長以下4名の署員の方が近づき、この女性達に対し、「上記行動が集団行進や集団示威運動に関する条例に違反する」として警告し、直ちにその活動をやめるよう求めてきました。
 この女性達は、訳が分からないまま恐怖心を覚え、すぐに上記呼びかけを中止しましたが、彼女らの行動は、現在行われている参議院議員通常選挙の期間において、自らの政治的意見を述べたり、選挙の啓発活動を行ったりしていたもので、上記条例6条2項により、許可を要しない行為であります。そもそも、同条例4条によって、警告を発しその行為を制止出来るのは「公共の秩序を保持するため」に限定されているところ、彼女らが行っていた行為は前記のとおりであり、これが示威運動に該当するようなものでないことは誰の目から見ても明らかであり、公の秩序を害するようなものではありません。
 さらに、〇〇氏らは、上記活動を行っていた人々の写真撮影やビデオ録画をされていましたが、これは最高裁判決からも許される行為ではありません。
 以上により、今回和歌山西警察署警備課において行った行為は、上記条例の解釈・適用を誤っているだけでなく、参議院議員選挙期間中における市民の選挙活動の自由並びに表現の自由を侵害する惧れが強く、今後、かかる問題が生じないよう善処を求めるとともに、上記違法な撮影による映像等を破棄されるよう申し入れ致します。
(引用終わり)
※注 引用に当たり西警察署警備課長の名前は伏字としました。

(参考条文)
集団行進及び集団示威運動に関する条例
昭和33年7月12日 和歌山県条例第23号

(許可を要する行為)
第1条 道路、公園その他公共の用に供せられる場所で、集団行進を行おうとするとき、又は場所のいかんを問わず集団示威運動を行おうとするときは、あらかじめ和歌山県公安委員会(以下「公安委員会」という。)の許可を受けなければならない。ただし、次の各号に掲げるものは、この限りでない。
(1) 学生、生徒その他の遠足、修学旅行及び体育競技
(2) 婚礼、葬儀及び宗教上の祭礼

(違反行為に対する措置)
第4条 警察本部長又は警察署長は、第1条の規定、第2条の規定による記載事項及び前条第1項ただし書の規定により付けられた条件に違反して行われた集団行進又は集団示威運動の主催者、主催団体の代表者及び参加者に対して、公共の秩序を保持するため警告を発し、その行為を制止し、その他その違反行為を是正するについて必要な限度において所要の措置をとることができる。

(注意規定)
第6条 この条例は、第1条に定めた集団行進又は集団示威運動以外の集会を開催する権利をいかなる方法においても禁止し、又は制限するものではない。また公安委員会、警察職員その他公共団体の職員に対して集会、政治運動、プラカード、出版物その他の印刷物若しくは文書を監督し、又は検閲する権限を与えるものでもない。
2 この条例は、公職の選挙に関する法令に何等の影響を及ぼし、又は選挙運動中における政治的集会若しくは演説に関し許可を要するものとするものではない。

“GO VOTE サウンドウォークデモ”@和歌山市(6/11)のご案内

 今晩(2016年5月17日)配信した「メルマガ金原No.2458」を転載します。

“GO VOTE サウンドウォークデモ”@和歌山市(6/11)のご案内

 いわゆる「サウンドデモ」が全国的に広がるきっかけとなったのは、3.11直後から東京で始まった反原発デモだったように記憶します。
 もちろん、和歌山においては、イラストレーター(というのは今やその活動のごく一部となっているようですが)の奥野亮平さんが呼びかけた「原発さよなら行進@和歌山」をはじめ、何度も反原発デモが取り組まれており、それらのデモでは、持参した楽器を演奏しながら参加してくださる人の姿も珍しくなくなっていました。
 けれども、「サウンドカー」が先導し、その荷台からコールやスピーチが行われるという、本格的な「サウンドデモ」が和歌山で行われたのは、去る3月27日(日)の“Sound Walk Festa –Democracy Never Falls Silent–”(サウンド・ウォーク・フェスタ「民主主義は黙らない」)が初めての試みだったと思います。
 従来のデモに慣れた年輩の参加者の中には、「あのテンポには付いていけない」という声があったりしたものの、他方、「元気が出てとても良い」という人も結構多く、「この試みを続けて、もっと若い人に参加してもらえるように努力したい」というあたりが、大方の感想だったような気がします。
 3月27日の第1回「サウンドデモ」については、私がFacebookに写真レポートをいくつか投稿していますので、末尾に転記しておきます(写真はリンク先でご覧ください)。

 そして、いよいよ待望の「サウンドデモ」第2弾が、来る6月11日(土)に行われることが決まり、フライヤーも入手できましたので、以下にご紹介します。

フライヤー文字情報から引用開始)
フライヤーA面】
GO VOTE
SOUND WLAK -DEMO-

2016/6/11(SAT)
14:30 START@和歌山市役所前広場

【フライヤーB面】
It’s time to change ××
「選挙」     「和歌山」      「生活」
     「未来」      「政治」

今が、変える時。
あなたは××に何を入れますか?
それぞれの××を胸に
今、思いを一票に変えるための一歩を。

・日時:6/11
・場所:和歌山市役所前広場
・時間:14:30 START

・SCHEDULE:
14:30~ 集会(あいさつ・コール練習)
15:00~ デモ出発

主催:GO VOTE -It's time to change-××-実行委員会
お問合せ:
go_vote_wakayama@yahoo.co.jp
(引用終わり)

 6月11日という開催時期にまことにふさわしい「GO VOTE」がメインのキャッチコピーとして使われています。
 前回(3月27日)とは異なり、和歌山城西の丸広場に先約があったために使用できず、和歌山市役所前の使用許可を申し込み、同所が集合場所となりました。
 今回も、企画・運営は若い人たち(せいぜい30代まで?)が中心となって担ってくれています。
 どんなコールやスピーチが飛び出すか、楽しみですね。ただ、時期が時期なので、「アベは辞めろ!」は止めておいた方がいいでしょうね(などということは先刻ご承知でしょうが)。
 
 ただ、個人的に大問題なのは、このメルマガ(ブログ)でもご紹介したとおり、6月11日の午後、デモの集合場所(和歌山市役所前広場)からもほど遠からぬ和歌山市あいあいセンター6階ホールにおいて、核戦争防止和歌山県医師の会主催による、映画『放射線を浴びたX年後』第1作(2012年)、第2作(2015年)一挙上映と伊東英朗監督講演会という長時間企画(13:00~17:30)がかねてから予定されており、これは、我が国で放射線被ばくの問題を考える上で、逸することのできない企画なのです。時間帯がもろにバッティングしており、正直「どうしたらいいんだ」と悩んでいるところです(予告6/11映画『放射線を浴びたX年後』2部作一挙上映と伊東英朗監督講演会へのお誘い(核戦争防止和歌山県医師の会)/2016年4月26日)。

【和歌山市あいあいセンターにて 映画と講演のつどい】
13:00~14:30 第1作『放射線を浴びたX年後』上映
14:45~16:15 第2作『放射線を浴びたX年後2』上映
16:20~17:20 伊東英朗監督講演会
【和歌山市役所前から GO VOTE サウンドウォークデモ】
14:30~ 集会
15:00~ サウンドデモ

 私は、上記時間表を眺めながら、
①映画『放射線を浴びたX年後』(第1作)鑑賞
②市役所前の集会に途中から参加し、そのままデモに加わる
③デモは1時間ほどで離脱して再び和歌山市あいあいセンターを目指す
④伊東英朗監督講演会に参加する
という作戦は実行可能だろうか?と検討を始めたところです。
 デモコースが、前回と同じだと仮定すると、デモ隊が元寺町通りのドンキホーテ前付近に差しかかかったところで離脱し、中ぶらくり丁を抜けてさらに西進し、あいあいセンターに戻るというのはどうでしょうか。体力勝負の1日になりますが。
 

写真レポートで振り返る“Sound Walk Festa –Democracy Never Falls Silent–” サウンド・ウォーク・フェスタ「民主主義は黙らない」
※各タイトルから私のFacebookアルバムにリンクしていますので、写真はそちらでご覧ください。 
 いよいよ今度の日曜日(3月27日)に迫ってきた“Sound Walk Festa –Democracy Never Falls Silent– サウンド・ウォーク・フェスタ「民主主義は黙らない”(和歌山城西の丸広場)。先ほどプレスリリースを送信しましたので、FBにもアップしておきます。ちなみに、WAVEsの橋本さんには、FBが勝手にタグ付けしてくれました。
サウンドデモ1・開会前に朝方の雨模様でどうなることかと心配された今日(3月27日)の「サウンド・ウォーク・フェスタ 民主主義は黙らない」(和歌山城西の丸広場)ですが、予報通り、昼前から天候が持ち直し、絶好の集会日和、デモ日和となったのは幸いでした。何枚か写真をお届けします。アルバム(1)は、集会開始前の写真。パラソル付きの無料法律相談所を開設したのは「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」。私も1件相談を聞きましたが、こういう場所なので、ご本人の相談というよりは、友人・知人から相談を受けている案件について弁護士に助言を求めるという人が何人か訪れており、それなりに良い機会になったようです。なお、会場で口に入るものといえば、美里からやって来た焼き芋屋さんと「ママの会」の手作りクッキーだけ。どちらもとても美味しかったですよ。
「サウンド・ウォーク・フェスタ 民主主義は黙らない」アルバム(2)は、ついに和歌山に登場したサウンドカーの勇姿です。泉州から応援にかけつけた(のでしたっけ?)2tトラックと、和歌山現地調達の軽四トラック2台がサウンドカーに早変わりです。事前に綿密な打ち合わせをして本番に備えます。
サウンドデモ1・WAVEs「サウンド・ウォーク・フェスタ 民主主義は黙らない」アルバム(3)は、午後2時から始まった集会の様子。トップに演奏した北野亮さんは、どうやら予定されていた人が出られなくなったため、急遽代役で登場した模様(ではなかったかな?)。お疲れ様でした。WAVEsのお2人は、19日の和歌山弁護士会主催の集会のためのネタをさらに練り上げての登場。「安保法制の廃止を求める和歌山の会」からは由良登信弁護士がスピーチ。
「サウンド・ウォーク・フェスタ 民主主義は黙らない」アルバム(4)は、リレートークのトリを務めた服部涼平さん(WAASA)、服部さんの首唱でコーラーの皆さんと一緒にコールの練習、デモ出発前に注意事項を説明する芝野友樹弁護士。
サウンドデモ1・スタート「サウンド・ウォーク・フェスタ 民主主義は黙らない」アルバム(5)は、いよいよサウンドデモのスタートです。最初の2枚はダイワロイネット前を行く第1てい団と第2てい団、3枚目は三木町交差点を左折して北上するデモ隊が中谷医科歯科病院前に差し掛かり、音を出さないようにセーブしているところ。
サウンドデモ1・WAASA「サウンド・ウォーク・フェスタ 民主主義は黙らない」アルバム(6)は、「安全保障関連法制の廃止を求める和歌山大学有志の会(WAASA)」の皆さんをフューチャーしました。越野章史先生は、事前の企画準備の取りまとめ役を担われた上にデモの際は2号車に搭乗し、学生の服部さんの活躍は既にご紹介済みですが、教育学部教授の山崎由可里先生は、ドイツを訪問された際に感じたことをはじめ、今の状況についての思いをトラックの荷台から訴えられました。1号車ではパンダさんの横で、2号車では服部さんや越野先生とともに。
「サウンド・ウォーク・フェスタ 民主主義は黙らない」アルバム(7)はドンキホーテ前を行く1号車とデモ隊です。この通りがデモのルートになるって、やっぱり珍しいんだろうか?道行く人が珍しがっているのがひしひしと伝わってきました。

【アルバム(8)ゴールは近い】
サウンドデモ1・車の上「サウンド・ウォーク・フェスタ 民主主義は黙らない」アルバムは、(8)でとりあえず終了です。ゴールの南海和歌山市駅を目指して西進する「サウンド・ウォーク・デモ」の一行です。皆さん、お疲れ様でした。なお、参加者数は、西の丸広場の後片付けのためにデモ自体には参加できなかった方も含めて200名だったと推計しています。参加された皆さん、ありがとうございました。サウンド・デモ、是非またやりたいですね。

サウンドデモ2フライヤー 

放送予告4/24「らいは不治にあらず~ハンセン病 隔離に抗(あらが)った医師の記録」(ETV特集)

 今晩(2016年4月20日)配信した「メルマガ金原No.2432」を転載します。

放送予告4/24「らいは不治にあらず~ハンセン病 隔離に抗(あらが)った医師の記録」(ETV特集)

 今日は、今週末に放送されるETV特集に注目しました。ハンセン病問題について詳しく調べたことの
ある人にとっては、「いまさら」でしょうが、不明にして、私はその人物の存在を知りませんでした。
 愛知県海部郡甚目寺村(現・あま市)の圓周寺という真宗大谷派寺院の住職の息子として生まれた小笠原登氏(京都帝国大学医学部助教授。退官後は、豊橋病院、国立療養所奄美和光園で患者の治療にあたる)が、「ハンセン病の発病は体質を重視すべきことや不治ではないことを主張し、当時行われていた患者の強制隔離・断種に反対した」(Wikipediaより)ことなどは、少しネット検索しただけでも非常に多くの研究成果が公開されていることが分かりました(巻末「参考サイト1」参照)。
 まず、番組案内を紹介します。

NHK・Eテレ「ETV特集」
本放送 2016年4月23日(土)午後11時00分~午前0時00分
再放送 2016年4月30日(土)午前0時00分~午前1時00分(金曜深夜)
「らいは不治にあらず~ハンセン病 隔離に抗(あらが)った医師の記録」

(番組案内から引用開始)
ハンセン病患者の隔離を定めた「らい予防法」の廃止から20年がたつ。多くの患者を苦しめた「絶対隔離」という誤った政策。その闇を検証する上で重要な資料が最近見つかった。元京大医学部助教授・小笠原登の日記や書簡である。小笠原は「らい菌は伝染性が弱く治療も可能」との信念から国の隔離政策に異を唱え独自の治療実践を行っていた。なぜ小笠原の説は主流にならなかったのか。発見された文書や関係者
の証言を基に検証する。
(引用終わり)

 番組案内から推測するに、「小笠原登の日記や書簡」というのは、生家である圓周寺に保管されてきた文書ではないかと思われ、そうすると、4回にわたって所属大学の紀要に「圓周寺所蔵「小笠原登関係文書」の分析」を発表し、先月『孤高のハンセン病医師―小笠原登「日記」を読む』(六花出版)という著
書を刊行した藤野豊敬和学園大学教授による研究成果に依拠して制作された番組である可能性が高いのかなと思います。
 藤野教授による小笠原登氏研究についての評価は分かりませんが、「ETV特集」取材班が取り上げた日記・書簡からうかがわれる1人のハンセン病研究者・治療者の考え方、身の処し方が、私たちの生き方の参考になることを願い、視聴しようと思います。
 
(参考サイト1 小笠原登氏について)
◎愛知学院大学文学部 紀要 第37号
 「小笠原登-特にハンセン病に関する博士の先見性について-」 小笠原眞

◎敬和学園大学 研究紀要 第21号(2012年2月)
 「第15回日本癩学会総会における小笠原登―圓周寺所蔵「小笠原登関係文書」の分析(1)」 藤野 豊

◎敬和学園大学 研究紀要 第22号(2013年2月)
 「小笠原登とハンセン病患者 1941年―1942年―圓周寺所蔵「小笠原登関係文書」の分析(2)―」 藤野
 豊

◎敬和学園大学 研究紀要 第23号(2014年2月)
 「小笠原登とハンセン病患者 1943年―1944年―圓周寺所蔵「小笠原登関係文書」の分析(3)―」 藤野
 豊 

◎敬和学園大学 研究紀要 第24号(2015年2月)
 「小笠原登のハンセン病絶対隔離政策とのたたかい~圓周寺所蔵「小笠原登関係文書」の分析(4・小括
)」 藤野 豊

◎朝日新聞デジタル 2016年03月09日
 「〈寄稿〉小笠原登の日記を読む」 敬和学園大学教授・藤野豊

(抜粋引用開始)
 小笠原登の軌跡をたどると、そこに見えてくるのは、国策に左右されず、自らの医学的知見に基づいた医療を実践した医師の姿である。小笠原は、戦時下も戦後も一貫して学問の自由、研究の自由の大切さを身を以(もっ)て示したのである。国益のためなら人権を犠牲にしてもやむを得ないと政治が暴走しつつ
ある今こそ、小笠原登の業績から多くを学びたい。
(引用終わり)
◎愛知県人権ファンクション委員会・甚目寺町人権教育調査研究委員会(挿絵:立松泰博)
 「ハンセン病と小笠原登博士」


(参考サイト2 熊本地裁判決について)
◎鹿児島大学法学論集 36(2), 1-53, 2002-09-30
 「ハンセン病訴訟熊本地裁判決について」 采女博文

◎信州大学経済学論集 第54号(2006)
 「ハンセン病国家賠償訴訟熊本地裁判決」 青井未帆

※2001年(平成13年)5月11日、熊本地裁が言い渡した画期的な判決については様々な評釈がなされましたが、ネットで容易に読めるものを2つご紹介しておきます。
 

当事者と弁護士が語る「震災から5年 原発訴訟をとおして考える区域外避難者の人権」(3/24ヒューマンライツ・ナウ)

 今晩(2016年3月25日)配信した「メルマガ金原No.2406」を転載します。

当事者と弁護士が語る「震災から5年 原発訴訟をとおして考える区域外避難者の人権」(3/24ヒューマンライツ・ナウ)

 昨日(放送予告(3/27深夜)MBS映像'16「“自主避難”~原発事故から5年・真実と風化」/2016年3月24日)に引き続き、自主避難者の置かれた状況がテーマです。森松明希子さんも2日連続の登場です。

 昨日(3月24日)18時30分から、青山学院大学総研ビル(14号館)8階10会議室において、認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウが「震災から5年 原発訴訟をとおして考える区域外避難者の人権」というイベントを開催しました。
 今日は、その模様を中継したUPLANの動画をご紹介しようと思います。
 このイベントでは、郡山市から大阪市に避難した森松明希子さん(原発賠償関西訴訟原告団代表)と同弁護団の中島宏治弁護士(大阪弁護士会、ヒューマンライツ・ナウ会員)、いわき市から東京に避難した鴨下裕也さん(福島原発被害東京訴訟原告団長)と福島原発被害首都圏弁護団共同代表の中川素充弁護士(東京弁護士会)がスピーカーとして話をされました。
 映像の紹介の前に、ヒューマンライツ・ナウのホームページに掲載された開催趣旨を引用します。

(引用開始)
 5年前に起きた福島第一原発事故では、子どもへの健康不安などから、政府による避難指示区域以外の区域からも多くの人が、東京や関西など全国各地に避難しています。こうした区域外避難者は、東電からの賠償金はほとんどなく、生活の困窮や家族離散、世間の無理解からくる誹謗中傷などに耐える生活を余儀なくされています。
 他方で、区域外避難者は、現在、災害救助法に基づき応急仮設住宅(みなし仮設住宅も含む)が無償で提供されていますが、政府はこの応急仮設住宅の無償提供期間を2017年3月末までで終了するとの閣議決定を行いました。このままでは、多くの区域外避難者は、事実上望まない形で避難元への帰還を余儀なくされることになります。
 この企画では、2人の区域外避難者を呼び、二重生活による生活の困窮などの区域外避難者の現状と、「住宅問題」についてのお話し、訴えをいただきます。さらに、弁護士からは、訴訟の現状などを報告いたします。
 皆様のご参加をお待ちしています。
(引用終わり)

 以下にUPLANの中継動画をご紹介します。2時間を超える動画ですが、是非時間を作って耳を傾けていただければと思います。

20160323 UPLAN 震災から5年 原発訴訟をとおして考える区域外避難者の人権』(2時間11分)


冒頭~ 司会 吉田悌一郎弁護士(福島原発被害首都圏弁護団、ヒューマンライツ・ナウ会員、東京弁護士会)
2分~ 開会挨拶 後藤弘子ヒューマンライツ・ナウ副理事長(千葉大学大学院教授)
7分~ 森松明希子氏(原発賠償関西訴訟原告団代表)
34分~ 中島宏治弁護士(原発賠償関西訴訟弁護団、ヒューマンライツ・ナウ会員、大阪弁護士会)
53分~ 鴨下裕也氏(福島原発被害東京訴訟原告団長、ひなん生活をまもる会代表)
1時間19分~ 中川素充弁護士(福島原発被害首都圏弁護団共同代表、東京弁護士会)
1時間36分~ 質疑応答
 

(付録)
『あなたへ』 
作詞:村嶋由紀子 作曲:檀美知生 ピアノ編曲:早川奈穂子 合唱:奇跡の街合唱団
 

伊藤あすみ弁護士による講演「『子どもシェルター』のとりくみを通して、伝えたいこと」(3/6@和歌山県勤労福祉会館プラザホープ)のご案内

 今晩(2016年2月8日)配信した「メルマガ金原No.2360」を転載します。

伊藤あすみ弁護士による講演「『子どもシェルター』のとりくみを通して、伝えたいこと」(3/6@和歌山県勤労福祉会館プラザホープ)のご案内

 和歌山県でただ1つの子どもシェルター「るーも」を運営する特定非営利活動法人子どもセンターるーもが和歌山県と共催したシンポジウム「子どもたちのSOS―今私たち大人にできること―」が和歌山県民文化会館小ホールで開催されたのは1月24日(日)のことでした。私は、予告記事をメルマガ(ブログ)に書いて少しだけ広報のお手伝いをしただけで(予告1/24「子どもたちのSOS―今私たち大人にできること―」@和歌山県民文化会館(主催:子どもセンターるーも・和歌山県)のご案内/2015年12月11日)、当日は、放送大学の単位認定試験を2科目受験しなければならず、残念ながらシンポに参加することはできませんでした。
 後に聞いたところでは、多くの人が会場を訪れ、子どもたちの置かれた状況についての理解が深まったという反応が多く寄せられ、大きな成果をあげたそうです。
 
 各報道機関も事前告知に協力的でしたが、シンポ自体も多くのメディアが報じてくれました。以下に、毎日新聞の記事を引用します。
 
毎日新聞 和歌山版 2016年1月25日
子どもシェルター 理解を 「今私たち大人にできること」
現状や利用者の声紹介 桐蔭高生、創作劇も

(引用開始)
 虐待などで安心して生活する居場所を失った子どもたちの緊急避難場所「子どもシェルター」への理解を深めるためのシンポジウム「子どもたちのSOS−今私たち大人にできること」が24日、和歌山市小松原通1の県民文化会館であった。パネルディスカッションに加えて演劇も上演され、市民や福祉関係者らが熱心に見聞きした。【道岡美波】
 県内のシェルター「るーも」は2013年10月に開所。これまで10代後半の女子を中心に延べ29人を受け入れた。子どもたちは平均2カ月の入居期間中、一般的な家庭を経験し、担当弁護士やスタッフらと共に児童養護施設や親元など次の行き先を一緒に探す。
 パネルディスカッションでは、元児童相談所職員や担当弁護士らがシェルターの現状や利用者の声を紹介。伊藤あすみ弁護士は「るーもに来る子どもは大人や社会への不信感が強い。自分が大事にされているという実感が生きる力の回復につながる」と話した。今後の課題としては、シェルター退所後のケアやスタッフの負担の軽減などが挙がった。
 その後、県立桐蔭高演劇部が子どもシェルターについて学び脚本を手掛けた創作劇「seven−day prologue」を上演。シェルターでの生活を通し成長していく主人公らを演じた。
(引用終わり)

 毎日の記事でも紹介されていますが、1月24日のシンポジウムの第1部パネルディスカッションでパネリストを務めた伊藤あすみ弁護士(るーも理事)は、「るーも」が女子専用の施設であること、また、「るーも」の構想段階から、立ち上げ、そして運営に共に尽力してきたもう1人の若手女性弁護士が、現在、出産・育児休暇中であるということもあって、「るーも」にとって絶対に無くてはならない存在です。

 その伊藤あすみ弁護士が、「『子どもシェルター』のとりくみを通して、伝えたいこと」という演題で、単独で講演されるという案内が「民主教育をすすめる和歌山県民連合(教育連合)」から届きました。
 その「御案内」の文書には、「同封のチラシを使って広く参加を呼びかけてください。今回、子育て中の保護者の方にも多く参加いただけるよう、日曜日午後に設定しました。できるかぎり多数の参加をお願いいたします(参加規模は50名以上を予定しています)」とあり、さらに、午後2時から4時(予定)までの2時間のうち、伊藤弁護士の講演が90分、参加者の意見交流が30分という時間配分まで書いてありました。
 1月24日のシンポでのパネリストの1人としての発言だけでは物足りないと思った方には是非お奨めしなければと思った次第です。
 以下に、チラシの文字情報を転記します。

チラシから引用開始)
若手弁護士が語る「今、私たちにできること」
「子どもの人権」って知っていますか?
講演 「子どもシェルター」のとりくみを通して、伝えたいこと
講師 伊藤あすみ(弁護士、子どもセンターるーも理事)
□と き 2016年3月6日(日)午後2時~4時(予定)
       受付:午後1時30分~
   
□ところ 和歌山県勤労福祉会館 プラザホープ 2階 多目的室
       和歌山市北出島1丁目5番47号 TEL:073-425-3335(代)
 
※講師プロフィール
伊藤あすみ弁護士
・和歌山弁護士会所属
・きのくに法律事務所で勤務
・「子どもセンターるーも」理事
・和歌山弁護士会子どもの権利委員会委員、同高齢者・障害者支援センター運営委員会委員 など

 みなさんは「子どもの人権」について考えたことがありますか?今、子どもたちをとりまく環境は、私たち大人の想像以上に厳しいものになっています。虐待・貧困・いじめ・・・こういった状況の中で、健やかに育つ権利を奪われながら「SOS」を出せないでいる子どもたち。
 今回の学習会では、「子どもシェルター」の運営にとりくんでおられる伊藤あすみ弁護士を講師にお招きして、「子どもの人権」について考えます。「子どもシェルター」のとりくみを通して、子どもたちの声に耳を傾けてきた若手弁護士が語る「今、伝えたいこと」・・・。
 子どもたちの生きづらさと「今、私たちにできること」。学校教職員や子育てにかかわっておられる方・福祉関係者はもとより、多くの方々の参加をお待ちしています。ぜひ、お気軽に足を運んでください!

お問い合わせ
民主教育をすすめる和歌山県連合【教育連合】
〒640-8241 和歌山市雑賀屋町東ノ丁50 高校会館内
電話:073-432-6355 FAX:073-432-6357 
(引用終わり)

 実は、私と伊藤さんは、同じ和歌山弁護士会の会員というだけではなく、Facebook「友達」でもあるのですが、そこから得た情報によると、伊藤さんは、昨日(2月7日)開催された「紀州口熊野マラソン」のフルマラソンの部に出場し、3時間31分28秒(ネットタイム3時間30分52秒)で完走したとか。これがフルマラソン2回目というのですから凄い!
 そういえば、昨年12月には「龍神温泉木の郷マラソン大会」ハーフの部に、11月には「和歌浦ベイマラソンwithジャズ」5㎞の部と「紀の川万葉の里マラソン」(リレーマラソン)に出場していたはず、などと書き出せばきりがなく、さらにトライアスロンにも挑戦しており、彼女のFacebookタイムラインは、「アスリートあすみ」の話題に満ちあふれている、というより、それ以外の話題は載っていないと言っても過言ではありません。
 
 なお、弁護士としての本来業務と弁護士会活動、それから「るーも」とマラソン以外の伊藤さんの活動を、かつて、私がメルマガ(ブログ)でご紹介したことがありました。
 2013年に、青年法律家協会和歌山支部が3回シリーズの「青法協憲法連続講座~完全攻略 深めよう憲法~」を開催したのですが、その第3回「自民党改正草案の問題点」を、伊藤あすみさんと同期の重藤雅之弁護士の2人が担当して解説したのでした(青法協(和歌山支部)憲法連続講座第3回(最終回)のご報告/2013年8月21日)。
 あれからもう2年半も経ったのですね。その間「るーも」の運営に精力を傾け、子どもたちと接してきた伊藤あすみ弁護士の、経験に基づく貴重な講演が聴ける得難い機会だと思いますので、多くの人に参加をお奨めしたいと思います。
 

(付録)
『Don't mind (どんまい)』 作詞・作曲:ヒポポ大王 演奏:ヒポポフォークゲリラ
 

伊藤あすみ弁護士・講演チラシ 

映画『ヤクザと憲法』(東海テレビ)を観たいと思いませんか?

 今晩(2016年1月8日)配信した「メルマガ金原No.2329」を転載します。

映画『ヤクザと憲法』(東海テレビ)を観たいと思いませんか?

 時々このメルマガ(ブログ)で映画の上映会をご案内しておきながら、こんなことを言うのははばかられるのですが、私自身、いわゆる映画館(私の場合、現状ではシネコンとほぼ同義)で映画を観るという
習慣がなく、昨年1年間で(自主上映以外で)観た映画は、『インサイド・ヘッド』(ピート・ドクター
監督)1本だけという有様です。
 自宅から車で15分圏内に、10スクリーンを持つシネコンが2箇所もあり、既に還暦を過ぎた私は、
どちらのシネコンであれ、いつでも1,100円で観られるのですから、地方居住者としては非常に恵まれた環境にあるはずなのに、全然活用できていない訳で、周りに映画館が全くない地域に住む映画好きの人に対して申し訳ないような気持ちです。

 というようなマクラをふったのは、年明け2回にわたって映画『みんなの学校』を取り上げた上に(1月5日7日)、今日もまた、映画の話題だからです。しかも、現状では、1月2日から公開が始まった東京のポレポレ東中野でしか上映されておらず(明日9日から名古屋シネマテークで公開されるようです
が)、和歌山では果たして上映の機会があるかどうか疑問という作品です(多分、2月13日から始まる大阪の第七藝術劇場まで行くしかないようです)。
 その映画とは?『ヤクザと憲法』(土方宏史監督/東海テレビ放送/96分)なのです。

『ヤクザと憲法』劇場予告編(1分47秒)


 映画好きの方ならとうに情報を持っておられたでしょうが、私はこんな映画が作られていたというのは
今日初めて知りました。
 知ったきっかけというのは、週刊通販生活メールマガジンが着信し、何気なく開いてみたところ、「今週の読み物」として、以下のような記事が掲載されており、ついつい読みふけってしまったことです。
 
映画『ヤクザと憲法』監督 土方宏史さんインタビュー
「『ヤクザと憲法』をどう解釈すればよいか、僕も分からない。だけど、まずは今生きているヤクザを見
てほしい」

(抜粋引用開始)
――その暴排条例によって、「ヤクザとその家族が人権侵害を受けている」と親分が語るシーンは印象的
です。
土方 ヤクザが人権を語るのですから、驚きますよね。でも話を聞けば、親が暴力団員であることで、子どもが保育園の入園を拒否されたり、学校側から偏見を受けたりすることがあるそうで、「子どもはヤクザやないんやから」と言う親分の気持ちも分からなくはない。また、ヤクザだからという理由で、銀行口
座の開設や保険の加入を拒否されるというのも、困るだろうなとは思います。
 一方で、彼らが超えてはいけない一線を超えているのもまた、事実でもあり……。
――作中には、野球賭博や違法薬物売買を匂わせるような言動をするヤクザの姿も収められています。
土方 ああいったシーンでは、こちらの方が「えっ、撮っていいの?」とびっくりしてしまうのですが、彼らはなぜか、ギリギリのところまで見せるんですよ。ただ、肝心なところは絶対見せない。普段、警察
に追われ慣れているから、決定的なところを隠す技術に長けているのかもしれません。
――監督自身、そういった違法行為すれすれのシーンを目の当たりにしながら、タイトルを『ヤクザと憲
法』としたのはなぜでしょうか。
土方 これはプロデューサーが決めたんですけど、いいタイトルですよね(笑)。まず、公の場で表現す
るのがなんとなくはばかられつつある〝ヤクザ〟という単語を前面に出すこと自体に、大きな意味があると思います。メディアがどんなに自主規制を敷こうと、ヤクザが社会の中で生きているのは事実ですから

 テレビドキュメンタリーの担い手としては、見る人それぞれに自由な解釈の余地を残しながら、〝今起
きていること〟を伝えるのが一つの役割だという思いがあります。違法行為を生業とするヤクザに人権を語る権利はあるか否か。このテーマ自体、受け容れ難い人もいるかもしれませんが、まずは僕自身が見て
きた〝現状〟を知ってもらい、そこから何かを感じてほしいですね。
(引用終わり)
 
 このインタビューを読み、公式サイトを閲覧し、予告編を視聴した結果、ついメルマガ(ブログ)でご紹介しようという気になってしまったのです。
 皆さんも、「観てみたい」と思いませんか?
 
 ただし、映画公式サイト「作品解説」はいまひとつ解説になっていないところがあるので、この映画のベースとなったテレビドキュメンタリー「ヤクザと憲法~暴力団対策法から20年~」(2015年3月30日(月)深夜24時35分~)放映時の「プロデューサーより」という文章を引用したいと思います。

(引用開始)
 疑問に思ったこと。知りたいと思ったこと。それが番組の原点です。
 取材、撮影、編集、ナレーション、整音、音楽、字幕、CGを作る…。そうして番組を放送する。これ
が、私たちの仕事の流れです。取り扱う題材に禁止事項を設けるべきではありません。むしろ、難しいことこそトライしたいと思っています。取材を通じて知ったことを、それを取材のプロセスも含めて描き出
すことで、この時代の一端を伝えたい。そう思うのです。
 かつて、『山口組~知られざる組織の内幕~』(NHK特集)などヤクザの内部に入ってその様子を世に知らせるドキュメンタリーが何本かありました。しかし、この20年、取り締まりの際の断片的情報はありますが、暴力団の内側を描いた番組はありませんでした。その理由はわかりません。ただ、ヤクザのイメージと実態は、乖離しているようです。 「暴力団排除条例以降、ヤクザと接触ができなくなり、実態がつかめない。」「ヤクザは地下にもぐり始めている」「ヤクザのかわりに半グレやギャングなど面倒な
連中が蔓延してきた」。
 この番組のディレクターは最近まで事件・司法担当記者で、捜査関係者からそんな話を聞いていました。テレビドラマや映画などで描かれるヤクザは縄張りをめぐって抗争を繰り返す輩たちで、拳銃を所持し、地上げに介入し、覚せい剤を密売する犯罪集団…。しかし、現実はそうではなさそうだ…。ディレクタ
ーは、暴力団対策法、続く、暴力団排除条例以降のヤクザの今を知りたいと考えました。
 「取材謝礼金は支払わない」「収録テープ等を放送前に見せない」「顔のモザイクは原則しない」。こ
れは、私たちがこの取材の際に提示する3つの約束事です。しかし、この条件に応えるヤクザはいません
。彼らにとって、姿をさらしても、何の得もないし、警察に睨まれたくないのです。
 そんな中、大阪の指定暴力団「東組」の二次団体「清勇会」に入ることになりました。半年に及ぶ取材の途上、組トップが全国の組関係者の実例を出して、「ヤクザとその家族に対する人権侵害が起きている」と言い始めます。ヤクザと人権…!?。また、山口組の顧問弁護士を30年してきた弁護士を追いますが、自ら被告となった裁判などに疲れ、引退を考えていると言い出します。徐々にヤクザの現実が見えてき
ます。
 ヤクザの存在を擁護するつもりはありません。「社会」と「反社会」…。その一線はどこにあるのか。ヤクザを無くしていく、その道程を振り返って考える時に来ているのではないか…。知られざるヤクザの実像から、私たちの社会の姿が見えてくるかもしれません。 この番組に何を感じ、どう考えたか、どう
ぞ、ご意見をお寄せください。
(引用終わり)

 本来「何の得もない」はずの取材に応じた「ヤクザ」についてさらに知りたい方(もしかするといるかもしれない)には、以下のような記事を見つけましたのでご紹介します。ただし、私はこの世界に疎いので、内容の真偽のほどは判断できません。
 

 正直言って、私の家の近所にある2箇所のシネコンで『ヤクザと憲法』が上映される可能性は(現状では
)ほぼ無いだろうと思います。
 それでは、自主上映はどうだろうか?と考えてみるのですが、この作品の上映を企画する団体って、あ
るでしょうか?
 実は、次々と自社ドキュメンタリー作品の劇場用映画化を進める東海テレビは、1月2日の『ヤクザと憲法』に続き、1月16日から『ふたりの死刑囚』(鎌田麗香監督/85分)を、やはりポレポレ東中野で緊急公開すると予告しています。
 
『ふたりの死刑囚』劇場予告編(2分07秒)


 「ふたりの死刑囚」とは、「袴田事件」の袴田巖さん(2014年に約48年ぶりに釈放)と「名張毒ぶどう酒事件」の奥西勝さん(2015年に獄死)のことで、昨年10月25日に放映された「ふたりの死刑囚~再審、いまだ開かれず~」をベースとして劇場用に再編集されたものです(ナレーション:仲代達矢)。
 実際、『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』(主演:仲代達矢/東海テレビ)や『BOX 袴田事件 命とは』(高橋伴明監督)は、和歌山弁護士会でも、人権擁護委員会が所管する死刑を考える集いで上映されていますので、『ふたりの死刑囚』も、和歌山での自主上映のチャンスはありそうです

 でも、『ヤクザと憲法』はどうでしょうかね?仮に、和歌山弁護士会の人権擁護委員会が「やりたい」
と声をあげても、他の委員会から反対される可能性が高いでしょうしね。
 ということで、『ヤクザと憲法』を観ようという人は、当面公式サイトの中の「公開劇場」のページに
注目するしかないようです。

 なお、「東海テレビドキュメンタリー劇場」という自社ドキュメンタリーの映画化作品を広報するための公式Facebookページに最新情報が掲載されており、『ヤクザと憲法』については、Yahoo!ニュース毎日新聞、それに東京新聞こちら特報部などで取り上げられた記事が紹介されています。

(付記1/映画のデジタル化について)
 いくら映画は門外漢の私でも、さすがに、フィルムの時代が終焉し、映画の撮影から上映までの全過程がほぼ完全にデジタルに移行しているくらいの知識は持っていますが、そのことが映画の在り方にどのよ
うな影響を与えたのか、与えつつあるのかについては、全く「分かりません」と言うしかありません。
 ただ、東海テレビが自社ドキュメンタリーをかくも矢継ぎ早に劇場用映画にできるのも、映画がフィルムからデジタルに移行したことと無縁であるはずはなく、また、身近では、昨年私が少し自主上映のお手伝いをした映画『祝福(いのり)の海』(東条雅之監督)にしてもそうなのですが、映画はフィルムで撮るしかなかった時代に比べ、多くの意欲を持った映像作家に門戸が(とりあえず撮影するこ
とに関しては)開かれていることもまた、映画デジタル化の効果でしょう。
 この映画デジタル化という、サイレントからトーキーへ、あるいはモノクロからカラーへの転換に比すべき、いやそれ以上の大転換かもしれない現象を考えるために有用なサイトを探しているのですが、自分
の不得手な分野はネット検索もあまりうまくいかないもので、今のところこれはというサイトを見つけら
れていません。
 ただ、なかなか興味深く、時間があれば目を通す価値があるかもしれない「報告書」が、東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻サイトに掲載されていましたのでご紹介します。
デジタルシネマの制作プロセスの標準化によるアジア映像教育の拠点化

(付記2/落合恵子さんと岸井成格さんの対談/2015年「通販生活秋冬号」より)
 実は、「週刊通販生活」をネットで閲覧し、『ヤクザと憲法』の監督インタビューを読むことになったのですが、その際、気がついた対談記事がこれです。
 

 「通販生活」の2015年秋冬号のための仕込み(上記対談)がいつなされたのかよく分かりませんが、杉田二郎さんが「戦争を知らない子供たち」を歌うCMがYouTubeにアップされたのが昨年10月5日のことなので、対談自体が安保法案国会通過の前に行われたものであることは確実でしょうし、もちろん、11月14日(産経)、15日(読売)に掲載された「放送法遵守を求める視聴者の会」の全面意見広告
のずっと前のことです。
 そういう時期的なことはのみこんだ上で、一読されることをお勧めしたいと思います。
 
2015年秋冬号TVCM60秒バージョン【通販生活公式】
 

「慰安婦」問題についての日韓外相記者発表を読んで歴代総理大臣の「お詫びの手紙」を思い出す

 今晩(2015年12月29日)配信した「メルマガ金原No.2319」を転載します。

「慰安婦」問題についての日韓外相記者発表を読んで歴代総理大臣の「お詫びの手紙」を思い出す

 昨日(12月28日)午後、ソウルで行われた日韓外相会談において、いわゆる「従軍慰安婦」問題について協議が行われ、その結果を踏まえ、岸田文雄外務大臣と尹炳世(ユン・ビョンセ)韓国外交部長官
が共同記者発表を行いました。
日韓外相会談 今回の合意の背景として、米国政府の強い働きかけがあったのだろうということは誰にでも推測のつく
ことですし、それだけではなく、日韓両国政府とも、それぞれ独自の思惑があったことは当然でしょう。
 そして、この重大な「人権問題」が、両国政府間の「合意」だけで解決するなどということは期待し難いのではないかとか、いわゆる「従軍慰安婦」問題を抱えているのは韓国とだけではないだろうとか(実際、台湾政府はすぐに反応したようです)、色々な問題が直ちに想起されますが、現時点であれこれ論評するのはまだ早いのではないか、とりあえずその内容を確認するにとどめようと思います

 つまり、何を言うにせよ、まずこれだけの文章は最低限読んでおくべきだろうというものに目を通した上で、じっくり考えようという訳です。従って、今日のメルマガ(ブログ)は大半が「引用」です。
 
 外務省ホームページを読んでまず分かるのは、「共同声明」は作られず、日韓両外相が個別に記者発表を行ったということです(同じ会見の席でですが)。
 とりあえず、その両外相の発表内容を読んでみましょう。

(引用開始)

(1)岸田外務大臣による発表は,以下のとおり。
 日韓間の慰安婦問題については,これまで,両国局長協議等において,集中的に協議を行ってきた。そ
の結果に基づき,日本政府として,以下を申し述べる。
ア 慰安婦問題は,当時の軍の関与の下に,多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり,かかる
観点から,日本政府は責任を痛感している。
 安倍内閣総理大臣は,日本国の内閣総理大臣として改めて,慰安婦として数多の苦痛を経験され,心身
にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し,心からおわびと反省の気持ちを表明する。
イ 日本政府は,これまでも本問題に真摯に取り組んできたところ,その経験に立って,今般,日本政府の予算により,全ての元慰安婦の方々の心の傷を癒やす措置を講じる。具体的には,韓国政府が,元慰安婦の方々の支援を目的とした財団を設立し,これに日本政府の予算で資金を一括で拠出し,日韓両政府が
協力し,全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復,心の傷の癒やしのための事業を行うこととする。
ウ 日本政府は上記を表明するとともに,上記(イ)の措置を着実に実施するとの前提で,今回の発表に
より,この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。
 あわせて,日本政府は,韓国政府と共に,今後,国連等国際社会において,本問題について互いに非難
・批判することは控える。
(2)尹外交部長官による発表は,以下のとおり。
 韓日間の日本軍慰安婦被害者問題については,これまで,両国局長協議等において,集中的に協議を行
ってきた。その結果に基づき,韓国政府として,以下を申し述べる。
ア 韓国政府は,日本政府の表明と今回の発表に至るまでの取組を評価し,日本政府が上記1.(1)(イ)で表明した措置が着実に実施されるとの前提で,今回の発表により,日本政府と共に,この問題が最終
的かつ不可逆的に解決されることを確認する。韓国政府は,日本政府の実施する措置に協力する。
イ 韓国政府は,日本政府が在韓国日本大使館前の少女像に対し,公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し,韓国政府としても,可能な対応方向について関連団体との協議を行う等を通じ
て,適切に解決されるよう努力する。
ウ 韓国政府は,今般日本政府の表明した措置が着実に実施されるとの前提で,日本政府と共に,今後,
国連等国際社会において,本問題について互いに非難・批判することは控える。
2 なお,岸田大臣より,前述の予算措置の規模について,概ね10億円程度と表明した。
 また,双方は,安保協力を始めとする日韓協力やその他の日韓間の懸案等についても短時間意見交換
を行った。
(引用終わり)
上記同内容・英語版上記同内容・韓国語版(PDF)

 さらに、外務省ホームページからもう1つ引用しておきます。昨日夕刻、安倍首相が韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領と行った電話会談の内容を伝えたものです。
 
(引用開始)
 12月28日17時48分から約15分間,安倍内閣総理大臣は,朴槿恵(パク・クネ)韓国大統領と首脳電話会談を行ったところ,概要以下の通り。(日本側から,菅官房長官,萩生田官房副長官,世耕官房副長官,
谷内国家安全保障局長,長谷川総理補佐官,齋木外務事務次官ほか同席。)
1 両首脳は,慰安婦問題をめぐる対応に関し,11月の日中韓サミットの機会に行われた日韓首脳会談を
受け,協議を加速化し,今般合意に至ったことを確認し評価した。

(1)安倍総理から,日本国の内閣総理大臣として改めて,慰安婦として数多の苦痛を経験され,心身にわたり癒やしがたい傷を負われた全ての方々に対し,心からおわびと反省の気持ちを表明した。その上で,慰安婦問題を含め,日韓間の財産・請求権の問題は1965年の日韓請求権・経済協力協定で最終的かつ完全に解決済みとの我が国の立場に変わりないが,今回の合意により,慰安婦問題が「最終的かつ不可逆的に
」解決されることを歓迎した。
(2)朴槿恵大統領から,今次外相会談によって慰安婦問題に関し最終合意がなされたことを評価するとし
た上で,新しい韓日関係を築くために互いに努力していきたいといった発言があった。
(3)両首脳は,今回の合意を両首脳が責任をもって実施すること,また,今後,様々な問題に,この合意
の精神に基づき対応することを確認した。
3 両首脳は,安全保障,人的交流,経済を始めとする様々な分野における日韓協力を強化し,日韓関係
を前に進めていく重要性を確認した。
(引用終わり)

 以上は、昨日発表された文章ですが、以下に、この問題についての歴史的文書として、日本人が必ず読んでおくべきだと私が考えるものを引用しておきま
す。
 これらを一読すれば、昨日の日韓合意が、安倍首相の「歴史的決断」でも何でもないことは誰の目にも
明らかになるはずです。
 まずは、いわゆる「河野談話」から。今から22年前(1993年)、宮澤喜一内閣の官房長官であっ
た河野洋平氏により発表されました。
 
慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話
平成5年8月4日

(引用開始)
 いわゆる従軍慰安婦問題については、政府は、一昨年12月より、調査を進めて来たが、今般その結果が
まとまったので発表することとした。
 今次調査の結果、長期に、かつ広範な地域にわたって慰安所が設置され、数多くの慰安婦が存在したことが認められた。慰安所は、当時の軍当局の要請により設営されたものであり、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した。慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかにな
った。また、慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった。
 なお、戦地に移送された慰安婦の出身地については、日本を別とすれば、朝鮮半島が大きな比重を占めていたが、当時の朝鮮半島は我が国の統治下にあり、その募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、
総じて本人たちの意思に反して行われた。
 いずれにしても、本件は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である。政府は、この機会に、改めて、その出身地のいかんを問わず、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる。また、そのような気持ちを我が国としてどのように表すかということについては、有識者のご意
見なども徴しつつ、今後とも真剣に検討すべきものと考える。
 われわれはこのような歴史の真実を回避することなく、むしろこれを歴史の教訓として直視していきた
い。われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して
繰り返さないという固い決意を改めて表明する。
 なお、本問題については、本邦において訴訟が提起されており、また、国際的にも関心が寄せられてお
り、政府としても、今後とも、民間の研究を含め、十分に関心を払って参りたい。
(引用終わり)

 上記談話において「そのような気持ち(注「お詫びと反省の気持ち」)を我が国としてどのように表すかということについては、有識者のご意見なども徴しつつ、今後とも真剣に検討すべきものと考える。」とされたことの一つの帰結が、アジア女性基金による「償い事業」でしたが、その一環として、歴代内閣総理大臣が、直筆で署名したお詫びの手紙が元「慰安婦」の方々に届けられたことを知る日本人はそう多くはないかもしれませ
ん。
 アジア女性基金は2007年に解散しましたが、それ以降も
「デジタル記念館 慰安婦問題とアジア女性基金」というサイトが遺されています。
 同サイトから、「アジア女性基金の誕生と事業の基本性格」を、少し長くなりますが、全文引用したいと
思います(その中に総理大臣によるお詫びの手紙も収録されています)。
 ただし、様々な事情により、韓国では「償い事業」によって「償い金」と総理大臣からの「お詫びの手紙」を受け取った方は少数にとどまりました。その間の事情をアジア女性基金の立場から叙述した文章(各国・地域における償い事業の内容-韓国)もご一読いただければと思います。もちろん、これは基金の立場から見た評価であり、韓国政府や韓国挺身隊問題対策協議会などの支援団体には、それぞれの立場からの主張があったことは言うまでもありません。
 ただ、償い事業を受け容れた韓国人女性が同国人から受けた非難や冷遇を思えば胸が痛みますし、他方、歴代4人の内閣総理大臣が署名した「お詫びの手紙」など無かったかのようなふるまいに及ぶ日本人の姿を見るのも悲しいことです。
 
アジア女性基金の誕生と事業の基本性格
(引用開始)
 基金の成立に対して、韓国政府は「一部事業に対する政府予算の支援という公的性格が加味されており」、「当事者に対する国家としての率直な反省及び謝罪を表明し」、「真相究明を行い、これを歴史の教訓にするという意志が明確に含まれている」とし、これを「誠意ある措置」として歓迎する意向を示しました。他方、運動団体の多くは、日本政府の謝罪と補償を要求し、「民間団体」による「慰労金」支給は受け入れられないと批判しました。その結果、韓国政府の態度もこれに影響を受けました。運動団体はその後問題の本質は戦争犯罪であるとして、法的責任を認めること、責任者を処罰することをもとめるにい
たり、国連の人権委員会などでそれらの主張を訴えました。
 国連人権委員会の「女性に対する暴力に関する特別報告者」に任命されたクマラスワミ氏は、1996年1月4日、人権委員会に報告書の付録として「慰安婦」問題に関する北朝鮮、韓国、日本での訪問調査の報告書を提出しました。その中で、「慰安婦」問題を「軍事的性奴隷制」の事例であったとし、日本政府は国際人道法の違反につき法的責任を負っていると主張しました。もっとも、同氏は、日本政府がこの件での道義的責任を認めていることを「出発点として歓迎する」と述べ、アジア女性基金は「『慰安婦』の運命に対する日本政府の道義的配慮の表現」だとしましたが、これによって政府は「国際公法の下で行われる『慰安婦』の法的請求を免れるものではない」と強調しています。日本政府は法的責任を認め、補償を行い、資料を公開し、謝罪し、歴史教育を考え、責任者を可能な限り処罰すべきだというのが同報告書の勧告
でした。(全文はこちら)
 このような状況の中で、初期の「基金」は、呼びかけ人、理事、運営審議会委員の三者が一つになって、「基金」の事業の骨格を作り上げるための討論を重ねました。その上で政府の関係者との話し合いもへて、「基金」の事業の基本が決められたのです。それが明確に定式化されたのは、1996年9月に出された「
アジア女性基金」のパンフレット第2号においてです。
 まず、アジア女性基金は日本政府が「慰安婦」問題に対する道義的責任を認め、反省とお詫びを表明したことに基づいて、国民的な償いの事業を政府との二人三脚によって実施するものであることが明確にされました。その事業は、当該国や地域の政府、ないし政府の委任による民間団体が認定した元「慰安婦」
の方々に対して実施されます。
 国民的な「償い事業」は三本の柱からなっています。
 第一は、総理の手紙です。手紙は、「慰安婦」問題の本質は、軍の関与のもと、女性の名誉と尊厳を深く傷つけたところにあるとして、多くの苦痛を経験し、癒しがたい傷を負われたすべての人々に対し、道義的な責任を認め、心からのお詫びと反省を表明するとしています。また歴史を直視し、正しく後世に伝えることを約束しています。基金は、この手紙を元「慰安婦」の方々お一人おひとりにおわたしします。それに加えて基金としては、政府と国民の立場が一層はっきりと被害者につたえられるように「基金」理事長の手紙をそえることにしました。
 
【元「慰安婦」の方への総理のおわびの手紙】
拝啓
 このたび、政府と国民が協力して進めている「女性のためのアジア平和国民基金」を通じ、元従軍慰安
婦の方々へのわが国の国民的な償いが行われるに際し、私の気持ちを表明させていただきます。
 いわゆる従軍慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題でございました。私は、日本国の内閣総理大臣として改めて、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを申し上げ
ます。
 我々は、過去の重みからも未来への責任からも逃げるわけにはまいりません。わが国としては、道義的な責任を痛感しつつ、おわびと反省の気持ちを踏まえ、過去の歴史を直視し、正しくこれを後世に伝えるとともに、いわれなき暴力など女性の名誉と尊厳に関わる諸問題にも積極的に取り組んでいかなければな
らないと考えております。
 末筆ながら、皆様方のこれからの人生が安らかなものとなりますよう、心からお祈りしております。
                                    敬具
平成8(1996)年
日本国内閣総理大臣 橋本龍太郎
(歴代署名:小渕恵三、森喜朗、小泉 純一郎)
 
【元「慰安婦」の方への理事長の手紙】
謹啓
 日本国政府と国民の協力によって生まれた「女性のためのアジア平和国民基金」は、かつて「従軍慰安
婦」にさせられて、癒しがたい苦しみを経験された貴女に対して、ここに日本国民の償いの気持ちをお届
けいたします。
 かつて戦争の時代に、旧日本軍の関与のもと、多数の慰安所が開設され、そこに多くの女性が集められ、将兵に対する「慰安婦」にさせられました。16、7歳の少女もふくまれる若い女性たちが、そうとも知らされずに集められたり、占領下では直接強制的な手段が用いられることもありました。貴女はそのような
犠牲者のお一人だとうかがっています。
 これは、まことに女性の根源的な尊厳を踏みにじる残酷な行為でありました。貴女に加えられたこの行為に対する道義的な責任は、総理の手紙にも認められているとおり、現在の政府と国民も負っております
。われわれも貴女に対して心からお詫び申し上げる次第です。
 貴女は、戦争中に耐え難い苦しみを受けただけでなく、戦後も50年の長きにわたり、傷ついた身体と残
酷な記憶をかかえて、苦しい生活を送ってこられたと拝察いたします。
 このような認識のもとに、「女性のためのアジア平和国民基金」は、政府とともに、国民に募金を呼び
かけてきました。こころある国民が積極的にわれわれの呼びかけに応え、拠金してくれました。そうした
拠金とともに送られてきた手紙は、日本国民の心からの謝罪と償いの気持ちを表しております。
 もとより謝罪の言葉や金銭的な支払いによって、貴女の生涯の苦しみが償えるものとは毛頭思いません。しかしながら、このようなことを二度とくりかえさないという国民の決意の徴(しるし)として、この
償い金を受けとめて下さるようお願いいたします。
 「女性のためのアジア平和国民基金」はひきつづき日本政府とともに道義的責任を果たす「償い事業」のひとつとして医療福祉支援事業の実施に着手いたします。さらに、「慰安婦」問題の真実を明かにし、
歴史の教訓とするための資料調査研究事業も実施してまいります。
 貴女が申し出てくださり、私たちはあらためて過去について目をひらかれました。貴女の苦しみと貴女
の勇気を日本国民は忘れません。貴女のこれからの人生がいくらかでも安らかなものになるようにお祈り申し上げます。
平成8(1996)年
財団法人女性のためのアジア平和国民基金
理事長 原文兵衛
(歴代署名:村山 富市)

 第二は、元「慰安婦」の方々への国民からの「償い金」の支給です。国民からの募金に基づいて、一人
あたり200万円をお渡しするものです。
 第三は、医療福祉支援事業です。これは日本政府が道義的責任を認め、その責任を果たすために、犠牲者に対して5年間で総額8.3億円の政府資金により医療福祉支援事業を実施するものだとの位置づけがあたえられました。この規模は、各国・地域の物価水準を考慮にいれてきめました。韓国と台湾については一人あたり300万円相当、フィリピンについては120万円相当とさだめられました。方式のちがうオランダで
も、一人あたり300万円相当となりました。 
(引用終わり)

(弁護士・金原徹雄のブログから)
2013年6月1日
“慰安婦”問題を考える様々な視点(たとえば「アジア女性基金」)

「避難の権利」を考えるための視点~医師、看護師を目指す学生の皆さんに語ったこと

 今晩(2015年12月25日)配信した「メルマガ金原No.2315」を転載します。

「避難の権利」を考えるための視点~医師、看護師を目指す学生の皆さんに語ったこと

 クリスマスにもかかわらずというか、年末押し詰まりながらというか、この時期に学習会をやるということで講師に呼ばれるという珍しい経験をしました。
 声をかけてくださったのは、和歌山県民主医療機関連合会というところで、医科大学、看護学部、看護学校などに在籍する医系の学生さんたちを対象とした学習会ということでした。
 クリスマスプレゼントの交換などの後、約1時間半お話したのですが、主催者が用意した演題は「目の前の人を助けたい」という、医師や看護師を目指す学生の皆さんの前でお話するのにまことに相応しいものではありましたが、さすがにそこまで言い切る自信はなく、私自身が作ったレジュメの演題は、「『避難の権利』を考えるための視点」というものにしました。
 主催者から伺ったところでは、これらの学生さんたちは、原発事故を逃れて避難された方からお話を伺ったり、今後、福島を訪問する希望もあるとのことで、避難者支援などにかかわる話をして欲しいということでした。
 しかし、振り返ってみても、私自身、支援らしい支援をしてきたと言えるような実績はないし、学生さんたちの役に立つようなお話ができる自信は全然ないということで、最初はお断りしようかと思ったのですが、熱心に依頼してくださり、また和歌山民医連には「メルマガ金原」を送信して読んでいただいているという繋がりもあって断り切れず、一昨日(12月23日)半日かけてレジュメを書き上げ、それに基づいて拙いお話をしたという次第です。
 学習会後の懇親会にもお招きいただき、美味しい料理までご馳走になっていたおかげで、別の素材を探してメルマガ(ブログ)を書いている時間はなく、かくなる上は、今日のために書いたレジュメをそのまま掲載するしかないということで(これもよくある話ですが)、以下に全文転載することにしました。
 もちろん、このレジュメのとおり話したということでは全然なく、書いていないこともお話しましたが、骨子はだいたいレジュメ通りであったと思います。
 なお、実際の学習会では、安保法制についても若干お話しましたが、その点については、末尾の過去ブログでご紹介したレジュメなどをご参照ください。
 私自身、若い学生の皆さんを相手にお話する機会などそうそうありませんので、貴重な体験でした。このような機会を与えていただいた和歌山民医連と和歌山生協病院の皆様に心よりお礼申し上げます。
 それから、避難者としての発言を勝手に引用させていただいたINさん、YWさん、森松明希子さん、宇野朗子さん、事後で申し訳ありませんが、何卒ご了解ください。私が「避難の権利」について人前でお話できるのも、皆さんとの出会いがあったればこそです。ありがとうございました。なお、INさん、YWさんとも、事前にお願いすれば「名前を出してもかまわない」と言っていただけたかもしれませんが、時間がなかったのでイニシャルとしました。
 

                            「避難の権利」を考えるための視点

                                      弁護士 金 原 徹 雄

はじめに~自己紹介をかねて

 我が国における法曹(弁護士、裁判官、検察官)養成制度は、近年、大きな変貌を繰り返しているが、私が司法試験に合格し、司法修習生として過ごした2年間(1987年~89年)は、変貌が始まる前の「旧体制」下の比較的安定した時期だった。毎年の合格者は500人を少し下回る程度に抑えられ、司法修習生には国家から給与が支給された(もちろん、修習専念義務が法律で課されていた)。弁護士法1条1項の「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。」という規定を読んでも、冷笑的になることなく、素直にそれを受け容れることのできる社会的基盤が用意されていたというべきかもしれない。
CIMG4927 とはいえ、司法研修所のカリキュラムで、憲法や人権が教え込まれていたなどと思ったら大間違いである。少なくとも、私は、司法研修所で憲法の講義を聴いた記憶など一切ないし、民事裁判・刑事裁判・民事弁護・刑事弁護・検察という主要5教科の講義や起案の中で、持参した六法全書の冒頭に収録された憲法の条文を参照する必要があったことすら(多分)なかったように思う。
 修習生は、原則として全員司法試験に合格しているのだから、憲法についての知識は持っていて当たり前であり、あらためて研修所で教える必要はない(これは他の実定法についても同じ)。憲法を活用して人権救済に務めるというのは、実務に就いた後の基本的な法曹としての身の処し方、心構え、理念の問題であって、そういうことは教えられるものではない(各自が努力して身につけるべきもの)。従って、研修所としては、実務法曹として最低限必要なスキルを身につけさせる教育に力を注ぐ。・・・と聞いた訳ではないものの、おそらくそういうことなのだろうと思っていた。
 1989年に司法研修所を修了し、地元の和歌山弁護士会に入会して以降、特段世間の耳目を集めるような大事件を担当することもなく、特殊専門的な分野を持つ訳でもなく、依頼があった事件をこつこつと処理する、普通の田舎の「町弁(まちべん)」としての生活を続けてきた。
 その間、弁護士会の委員会活動の中では、子どもの権利委員会にずっと所属していたこともあり、歳を重ねるにつれ、弁護士会から推薦されて、要保護児童対策地域協議会などの委員に就任する機会が多くなるのは自然なことだった。
 やや特筆すべきは、2005年5月に設立された有志弁護士による任意団体「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」の2代目事務局長を6年間(2006年~2012年)務めたことだろう。その6年間の最後の1年にとんでもない事件が起こった。
 
3.11で人生が変わった人、変わらなかった人
 2011年3月11日に東北地方を襲った大地震と津波によって生じた大災害は、日本に住む全ての人に大きな衝撃を与えたが、とりわけ過去の大災害と決定的に異なったのは、福島第一原発が全電源喪失に陥り、内閣総理大臣から原子力緊急事態が発令されるという未曾有の事態が生じたことであった。
 その後の経過について、これを要領良くまとめる能力の持ち合わせは私にはないが、皆さんには、せめて「国会事故調 報告書」(徳間書店/1600円+税)は、(報告書の内容はインターネットでも閲覧できるが)安価なこともあり、是非1冊は手元に置き、折に触れて目を通すことをお奨めしたい。
国会事故調 報告書
東京電力福島原子力発電所事故調査委員会
徳間書店
2012-09-11

 ところで、私は3.11から17日後の2011年3月28日に、現在に至るまで「毎日配信」を続けている「メルマガ金原」なるささやかな個人メールマガジンの配信(BCCによるメールの一斉送信)を始めた。親しい友人・知人25人が最初の読者だった(現在では和歌山民医連事務局を含めて247人)。
 これを始めた動機は?といえば、政府広報が全く頼りにならないと見切りをつけた以上、情報の洪水の中で、最も信頼に値する情報はどれかということを、つたない自分のスキルを可能な限り研ぎ澄ました上で選択し、少しでもそのような情報を得たいと考えている人に届けるべきではないかという、目標はかなり壮大でありつつ、その実体はまことにささやかなパーソナル・メルマガであった。
 もっとも、客観的にはささやかな営みではあるが、テーマを決めて情報を集め、その中から取り上げるに値する情報を選択し、出来ればこの情報に対する私の意見・評価も添えて配信するという作業を毎晩1人でやり続けるということは、想像以上に大変な負担となった。何より睡眠時間が少なくなった(これは現在まで続いている)。
 この「毎日配信」しているメルマガについては、2013年1月からは、全て「弁護士・金原徹雄のブログ」に転載することにしており、私は自動的に「毎日更新」するブロガーにもなっている。
 なぜこのような活動を続けているのか(来年の3月で丸5年になる)については、過去何度か話したり書いたりしたことがあるが、再説させていただく。
 一言で言えば、私を駆り立てているものは「悔恨」である。小出裕章氏(元京大原子炉実験所)は、「自分を含めた原子力の専門家には事故を防げなかった責任がある。しかし、だまされた者にも責任がある」と主張されており、まことにその通りだとは思うが、私自身をかえりみた時、「はたしてだまされていたのだろうか?」ということが問題である。私の周囲には、長年、和歌山に原発を建てさせないために体をはった闘争を続けてきた方もおられ、原発の危険性を学ぶための学習会にもたびたび誘ってただいていた。そして、私自身、詳しく分からぬながら、「原発は危険なもので止めた方が良いのだろう」と漠然と考えていた。しかし、私は何もしなかった。そして、3.11が起きてしまった。
 本質的な危険性を隠蔽しながら原発を推進してきた政治家、官僚、電力会社をはじめとする経済界、学者、マスメディアなどが重大な責任を負うべきは当然である。法律家の観点からこれを評すれば「確信的故意犯」にあたる。また、これら「確信的故意犯」にだまされて、原子力発電に何の疑いも抱かなかった人たちにももちろん責任はあるが、法的にいえばこれは「過失犯」にとどまると言うべきである。
 それでは私はどうなのか?原発は安全だと思いこまされていたのか?そんなことはない。積極的に学ぶことはしていなかったけれど、電力会社の原発CMなどを見ながら「うさんくさい」と思う程度の感性は持っていた。原発の真実にたどりつく糸口はいくらでも周りにあった。けれど、何もしなかった。ここでも法的比喩を用いれば、「未必(みひつ)の故意」ということになるだろう。簡単に言えば、結果が発生するかもしれないことを認識しながら、そうなっても仕方がないとして、あえて結果発生を防止せずに放置する心的態度、ということである。
 当然、「未必の故意」も故意犯である。だまされた過失犯より大きな責任を負わねばならない。
 3.11を境に人生が変わった、という人の多くは、おそらく以上の私と同じような「悔恨」を出発点としているのではないかと推測している。「悔恨」を抱くということは、福島第一原発事故について「個人的な責任」があると自覚するということと同義なのだから。
 
3.11で避難を余儀なくされた人々との出会い
 福島第一原発事故によって放射能が拡散される中、福島県を中心に、東北や関東から多くの人々が全国各地に避難した。和歌山にも、少なくない数の人々が避難してきたが、事情により避難元に帰還した人、さらに他県や(場合によっては他国に)再避難した人なども多い。
 そのような避難者のうち、私が直接お話を伺う機会のあった4人の女性の印象的な言葉をご紹介したい。
 
INさん(福島県川俣町から3人の子どもを連れて和歌山県紀美野町の空き家になっていたお母さんの生家に避難)
「だんだん生活に慣れてくるにつれ、今まで馴染んできた、大好きな川俣での大好きな人たちとの生活が、突然奪われた喪失感が深くなりました。仕事や家事を忙しくしている時には感じないのですが、買い物に出かけて夕焼け空を眺めた時や、車を運転している時にふと、「なんでここにいるんだろう。なんで私はここにいなきゃならないんだろう。」と思ってしまうのです。
 子どもの授業参観や運動会に行っても、知らない子どもたちと知らない父兄が多く、寂しさを強く感じてしまうのです。自分の子どもだけでなく、よその子たちの成長を見るのも楽しみだったんだなあ、と今になって分かります。
 仕事と子育てをしていると生活のリズムは出来上がるので、「慣れましたか?」と聞かれると、「はい、おかげさまで。」と答えるのですが、心は置いてけぼりでした。
 今まで10回以上引っ越しをし、自分の意志ではなく転居せざるを得なかったことも何度もありますが、今回の避難は、どうしても前向きに受け止められずにいました。子どもには、和歌山に来た当初、「人間、どこででも生きられるよ!」と言い聞かせていたのに、自分は後ろ向きのままでした。」
※2011年3月16日未明に紀美野町に車でたどり着いたINさんの、ようやく同町での生活にも慣れてきたころの思いを、手記『放射能から逃げて~福島県川俣町からの避難記録~』(月刊「むすぶ」2011年12月号、2012年1月号)から抜粋引用した。ちなみに、この手記のオリジナル原稿は、まず「メルマガ金原」に9回に分けて連載した。

YWさん(福島県郡山市から和歌山市に3人の娘を連れて母子避難)
「郡山に戻ったところ、ほとんどの店舗が営業を再開し、外見上、日常生活はほぼ元に戻っているように見えた。しかし、このまま子どもたちとここに住み続けて良いのかという疑念は消えず、避難のための支援は得られないものかと、情報を探し続けた。すると、自主避難者を対象とした民間による支援が各所で行われていることを知った。特に目が釘付けになった支援情報があった。「高台にあり津波の心配なし。3DK。テレビ、冷蔵庫、寝具4組等備え付け。家賃、光熱費無料」という信じられないような内容だった。それが和歌山大学のそばにあるエス・ティー・ワールドという海外旅行専門の旅行代理店が所有する施設だった。
 その情報を知った10日後、子ども3人と荷物を満載した車を運転し、日本海経由で和歌山を目指した。高速道路から初めて眼下に広がる和歌山の市街を見たのは夕暮れ時だった。子どもたちはみんな眠りこけていた。夕焼けに染まる和歌山の市街を見おろしながら、郡山から860㎞離れたこの街で、今日から自分はこの子どもたちの母親兼父親になるのだと決意した。」
※原発事故直後、神奈川県の親戚方に一時避難したYWさん親子だったが、いつまでも親戚の家にやっかいになる訳にもいかず、いったん郡山市に戻った後、ネットで知った支援情報により、あらためて和歌山市に母子避難することになった。上記の文章は、YWさんが、2014年11月1日、「和歌山障害者・患者九条の会」の学習会に招かれて話された内容を、私が整理してメルマガ(ブログ)に掲載したものである。

森松明希子さん(福島県郡山市から大阪市に子ども2人を連れて母子避難)
「避難を続けて4年半以上が経ちましたが、あの時と状況は何も変わっていないと私は感じます。(略)
 皆さん、会場の斜め後ろを振り返って、ちょっとあの白板をご覧いただけますでしょうか。関西から持ってきました。チラシにもお配りしていますように、東日本大震災避難者の会 Thanks & Dreamが、関西に避難をした人たちの声を一生懸命この1年をかけて集めました。例えば、川柳「避難者あるある575」を集めました。こんな川柳があります。「安全論 健康被害を 無きことに」(ペンネーム:空さん)。「母子避難 私が倒れたら どうなるの・・・」(「けっこう切実です」さん)。「避難して 底を尽きてく 我が貯金」(ペンネーム:「どなたか庭の除染土お引き取りいただけますか?」さん)。「子の不調 その都度ひばくに 思いはせ」(ペンネーム:症状ありさん)。こんな形で、声を集めれば、こうしてスピーチをしに大阪から、関西から駆けつけれないけども、多くの思いを持った避難者の方たちが、この日本の国には、北海道から南は沖縄まで、全国ばらばらに散らばって、今なお避難生活を続けています。(略)
 私は、関西で今司法裁判所に「避難の権利」を求めて、近畿地方では、大阪地方裁判所、京都地方裁判所、神戸地方裁判所に、それぞれ100人以上の避難者たちが集団で提訴をしています。損害賠償という形をとっていますが、日本の国は民事訴訟か刑事訴訟しか出来なくて、憲法訴訟は出来ないからやっているんです。多くの全国で起こっている1万人を超える原告になった人たちは、みんな口を揃えて言います。「この裁判は、人権救済裁判なんだ」と。子ども被災者支援法という法律が出来ても、中身がなく、骨抜きにされ、店ざらしの状態では、具体的に人は救えません。もう頼るところは、司法裁判所しかなくなったから、裁判所にお願いをしている訳です。
 普通の暮らしをしていた、皆さん(と)同じように普通に暮らしていた普通の人たちが、裁判を起こしてまで「避難の権利」を訴えなければばらないんですか。危険を感じたら逃げるのが当たり前だと私は思うのです。どうして、命を守るという原則的な行為が、裁判所にまで訴えて、確立をしなければならないのか、というところに私はとても今の現状のおかしさを感じます。そのことを、今日はこんなに大勢の心ある皆さんと共有できて、本当に私は嬉しく思います。」
※原発賠償関西訴訟原告団代表であり、東日本大震災避難者の会 Thanks & Dream(サンドリ)代表でもある森松明希子さんは、「避難の権利」を訴えるために東奔西走しておられる方である。このスピーチは、2015年10月29日に参議院議員会館で行われた「『避難の権利』を求める全国避難者の会」設立集会のリレートークで話されたことの一部である。
 
宇野朗子(うのさえこ)さん(福島市から京都府に避難)
「うのさんのお話の中でやはり胸を打たれたのは、原発事故子ども・被災者支援法が出来て、その内容を避難している人たちに説明したところ(福岡でのこと、ということだったと思いますが)、2条2項で、避難するという選択も尊重されなければならないと定められていることを知って、自分たちの決断を「認めてもらえた」という思いで皆涙を流したこと、また、この理念の実現に努力することによって、被災地にとどまった人たちのためにも力になれると信じられたことなどでした。
 それから2年、基本方針が定められてから8ヵ月、実際の支援施策が到底当初の期待に添ったものではないという現実とどう折り合いをつければ良いのか、どのように将来に向かってモチベーションを高めれば良いのか、おそらく様々な葛藤があったのではないでしょうか。
 そのことは、昨日の院内集会での うの さんの短い会場発言(後半の1時間08分~)を聞いただけでも、何となく想像されます。」
※2014年6月21日、「子どもたちの未来と被ばくを考える会」の招きにより、和歌山ビッグ愛で宇野朗子(うの・さえこ)さんが話された内容のうち、最も印象深かった部分を私がメルマガ(ブログ)に書いたもの。
「皆さん、こんにちは。今日はお集まりいただきまして、ありがとうございます。「避難の権利」とは、原発事故により、放射能汚染を被った地域で、地域の人々が、被ばくによる被害を避けるために避難をすることが、避難を選択することが出来る、そのために実質的な支援が存在する、それの権利です。
 この権利は、私たち、今避難している避難者の人たちが、避難し続けることができる、移住し、新しい暮らしを始めることができる、そのための権利であるばかりでなく、今汚染を被っている地域に暮らす人々が、最大限、被ばくから免れるための医療支援や、様々な支援がそこに存在し、私たちに実質的に、避難をするか、そこに暮らすか、そういうことを自己決定することができる、そのための大切な権利だと私たちは考えています。
 今この権利は、残念ながらこの国では保障されてはいません。事故から4年7か月が過ぎ、今日2015年10月29日、今日全国から集まった避難者、それから帰還者の私たちは、ここに集い、あらためて私たちには「避難の権利」があることをここに表明したいと思います。そして、「避難の権利」を求め、「避難の権利」の保障される社会を目指して、「「避難の権利」を求める全国避難者の会」を設立致します。」
※2015年10月29日、参議院議員会館で行われた「『避難の権利』を求める全国避難者の会」設立集会での同会共同代表・宇野朗子さんによる開会挨拶から。
 
避難の権利~平和的生存権・個人の尊厳~原発事故子ども・被災者支援法
 森松さんや宇野さんが、そして全国の避難者が求める「避難の権利」。その究極の憲法上の根拠は以下の各条項だろう。
 
前文第二段第三文 われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。 
第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

 「究極の」とわざわざ断ったのは、他に実定法上の根拠がなくても、直接憲法の規定を適用して裁判所に救済を求め得る権利か否かという論点を想定しているからである。そもそも、「避難の権利」によって何を実現しようというのかを明確にしない限り、それがあるとか、ないとか、訴訟で救済されるとか、されないとかの結論は出しようがない。
 例えば、自主避難者に対するほぼ唯一の実効性ある支援策である避難先での住宅無償提供(災害救助法に基づく)が、2017年3月をもって打ち切られるという方針が国・福島県から公表されており、これが実施されることになると、経済的理由によって、心ならずも帰還を余儀なくされる人々が続出するのではないかと懸念されている。
 しかしながら、このような「住宅支援をしない」「打ち切る」ことを阻止する効力を直接憲法の規定に求めることには相当無理がある。
 であればこそ、基本法である原発事故子ども・被災者支援法(東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律(平成二十四年六月二十七日法律第四十八号))が重要となるのだが、超党派の議員立法による良さもないわけではないものの、その限界も露呈しているのがこの法律である。何より、被災者支援のための具体的な施策を政府に丸投げしてしまっており(同法4条、5条)、しかも致命的なことに、肝心な支援対象地域(その地域における放射線量が政府による避難に係る指示が行われるべき基準を下回っているが一定の基準以上である地域)をどの範囲とするかまで、政府が基本方針で定めることにしてしまったため(8条、5条)、まことに恣意的な運用を許すことになっている。
 同法2条(基本理念)の内でも最も重要な規定は2項だろう。「被災者生活支援等施策は、被災者一人一人が第八条第一項の支援対象地域における居住、他の地域への移動及び移動前の地域への帰還についての選択を自らの意思によって行うことができるよう、被災者がそのいずれを選択した場合であっても適切に支援するものでなければならない。
 しかし、現実がそれを裏切るものとなっていることは、住宅支援の打ち切りという国の方針一つをとっても明らかである。
 
避難者と向き合う視点
 私は、弁護士として、避難者の代理人として原発ADR(原子力損害賠償紛争解決センター)に対して和解仲介手続申立てをしたり、今は、国と東京電力を被告として、大阪地方裁判所に提訴した原発賠償関西訴訟の代理人となったりしている。
 このように、自分の専門分野で避難者支援に役立つことがあれば、可能な範囲で協力したいとは考えているが、私の力など微々たるものであり、訴訟での準備書面の検討・作成などは、実質、大阪弁護士会所属の主要メンバーに任せきりである。
 それはさておき、一市民として、原発事故からの避難者の皆さんとどう向き合うかについて一言して、本日の拙いお話のまとめとしたい。
 原発事故によって避難を余儀なくされた、避難を決断した人たちは、間違いなく原発事故(3.11)によって「人生が変わった(変わらざるを得なかった)」人々である。
 私が、今日のお話の最初の方で、「3.11で人生が変わった人、変わらなかった人」ということを語ったのは、原発事故によって「人生が変わった(変わることを余儀なくされた)」人たちと向き合う時に、「自分たちはどうなんだ?」ということを自問して欲しいと思ったからである。
 3.11から間もなく5年が過ぎようとしている。原発事故が発生した時はまだ未成年だったという人もこの席には多いようだし、そういう人に、原発事故についての「責任」があるとは私も思っていない。
 しかしながら、原発事故から「我が子を守る」「我が身を守る」ことを決断することを、決してひとごととは思って欲しくない。3.11当時、54基もの原発が立地する原発大国になりおおせていたこの国で生活していく以上、誰が避難者になってもおかしくはない。事故を起こしたのが、たまたま福島第一原発であったから、福島県を中心に、東北・関東の人々が避難しなければならなくなったけれど、これが高浜原発や大飯原発がメルトダウンしていれば、私たち関西の人間が避難しなければならなくなっていたという想像力を持つことは最低限必要である。
 避難するという選択が「我がこと」と思えれば、避難者に向き合う際の意識も全く変わるはずだと思う。
 私たちは、政府の役人ではない。原発を推進する必要などさらさらない。私たちと全く同じ立場の仲間が、たまたま窮地に陥った時、自分は何をすべきかと考えれば良い、と私は思う。
 そして、原発事故について、自分にも「個人としての責任」があると考えるのであれば、その責任の取り方を自分で考え、実行するのみである。
                                                   以 上
 

(弁護士・金原徹雄のブログから)
2015年6月21日
“原発事故子ども・被災者支援法”施行から2年 東京から 和歌山から

2014年8月20日
東日本からの避難者健診のご案内(和歌山民医連)
2014年11月2日
原発避難者と原発阻止運動オーガナイザーの講演を聴く~これからの私たちの行動のために(11/1和歌山障害者・患者九条の会)
2015年8月13日
「第3回 和歌山民医連 東日本からの避難者健診」のご案内(付・9/5シンポ「これでいいのか!? 福島県県民健康調査」大阪弁護士会)
2015年10月30日
「避難の権利」を求める全国避難者の会が設立されました
2015年11月14日
9.19以降の「安保法制」学習会用レジュメ(論点絞り込み90分ヴァージョン)
2015年11月29日
予告12/12「『避難の権利』を求める全国避難者の会 設立記念集会 Part.2 つながろう!はじめの一歩 in 京都」(付・宇野朗子さんによる「設立宣言」文字起こし)

障害者差別解消法(2016年4月1日施行)を学習するための資料のご紹介

 今晩(2015年12月17日)配信した「メルマガ金原No.2307」を転載します。

障害者差別解消法(2016年4月1日施行)を学習するための資料のご紹介

 昨日(12月16日)、大阪市で開かれたある会議に出席したところ(前半で私が報告しなければならない案件があったため)、その後半は、辻川圭乃(つじかわ・たまの)弁護士を講師に迎えた「障害者差
別解消法の施行にむけて」という研修会でした。
 お恥ずかしいことですが、障害者法制に関する私の知識ははなはだ頼りないレベルであるため、「猫に
小判」状態であったかもしれません。
 そもそも、障害者差別解消法という新しい法律が出来たということは、うっすらと聞いたことがあったように思いますが、実はまだ施行されておらず、来年(2016年)4月1日から施行されるのだという
こと自体、昨日の研修会で初めて知ったありさまです。
 
 そこで、せっかく障害者問題に造詣の深い辻川弁護士から分かりやすい解説を伺ったのですから、これを契機として、「猫に小判」状態から抜け出して少しは知識を身につけるため、このメルマガ(ブログ)
で同法のことを取り上げようと思いたちました。
 いわば、本格的に勉強したくなった際のインデックスにしようという魂胆であり、読者の方も、私に付き合っていただければ、有益な知識が得られる(?)という仕掛けです。
 
 ただし、障害者差別解消法の内容をご紹介する前に、その前提として、やはり障害者権利条約(障害者の権利に関する条約)への署名と批准に触れざるを得ません。
 「全ての障害者によるあらゆる人権及び基本的自由の完全かつ平等な享有を促進し、保護し、及び確保すること並びに障害者の固有の尊厳の尊重を促進することを目的と」して、2006年12月13日に国連総会で採択され、2008年5月3日に発効した「障害者の権利に関する条約」について、我が国は、2007年9月28日に署名しましたが、批准書を寄託し、我が国について効力が発生したのは、ようや
く2014年2月19日のことでした。
 以下には、締約国に課された一般的義務を定めた第4条を引用します。
 
第四条 一般的義務
1 締約国は、障害に基づくいかなる差別もなしに、全ての障害者のあらゆる人権及び基本的自由を完全に
実現することを確保し、及び促進することを約束する。このため、締約国は、次のことを約束する。
(a)この条約において認められる権利の実現のため、全ての適当な立法措置、行政措置その他の措置をと
ること。
(b)障害者に対する差別となる既存の法律、規則、慣習及び慣行を修正し、又は廃止するための全ての適
当な措置(立法を含む。)をとること。
(c)全ての政策及び計画において障害者の人権の保護及び促進を考慮に入れること。
(d)この条約と両立しないいかなる行為又は慣行も差し控えること。また、公の当局及び機関がこの条約
に従って行動することを確保すること。
(e)いかなる個人、団体又は民間企業による障害に基づく差別も撤廃するための全ての適当な措置をとる
こと。
(f)第二条に規定するユニバーサルデザインの製品、サービス、設備及び施設であって、障害者に特有のニーズを満たすために必要な調整が可能な限り最小限であり、かつ、当該ニーズを満たすために必要な費用が最小限であるべきものについての研究及び開発を実施し、又は促進すること。また、当該ユニバーサルデザインの製品、サービス、設備及び施設の利用可能性及び使用を促進すること。さらに、基準及び指
針を作成するに当たっては、ユニバーサルデザインが当該基準及び指針に含まれることを促進すること。
(g)障害者に適した新たな機器(情報通信機器、移動補助具、補装具及び支援機器を含む。)についての研究及び開発を実施し、又は促進し、並びに当該新たな機器の利用可能性及び使用を促進すること。この
場合において、締約国は、負担しやすい費用の機器を優先させる。
(h)移動補助具、補装具及び支援機器(新たな機器を含む。)並びに他の形態の援助、支援サービス及び
施設に関する情報であって、障害者にとって利用しやすいものを提供すること。
(i)この条約において認められる権利によって保障される支援及びサービスをより良く提供するため、障
害者と共に行動する専門家及び職員に対する当該権利に関する研修を促進すること。
2 各締約国は、経済的、社会的及び文化的権利に関しては、これらの権利の完全な実現を漸進的に達成するため、自国における利用可能な手段を最大限に用いることにより、また、必要な場合には国際協力の枠内で、措置をとることを約束する。ただし、この条約に定める義務であって、国際法に従って直ちに適用
されるものに影響を及ぼすものではない。
3 締約国は、この条約を実施するための法令及び政策の作成及び実施において、並びに障害者に関する問題についての他の意思決定過程において、障害者(障害のある児童を含む。以下この3において同じ。)を
代表する団体を通じ、障害者と緊密に協議し、及び障害者を積極的に関与させる。
4 この条約のいかなる規定も、締約国の法律又は締約国について効力を有する国際法に含まれる規定であって障害者の権利の実現に一層貢献するものに影響を及ぼすものではない。この条約のいずれかの締約国において法律、条約、規則又は慣習によって認められ、又は存する人権及び基本的自由については、この条約がそれらの権利若しくは自由を認めていないこと又はその認める範囲がより狭いことを理由として、
それらの権利及び自由を制限し、又は侵してはならない。
5 この条約は、いかなる制限又は例外もなしに、連邦国家の全ての地域について適用する。
 

 我が国が、この条約に署名してから批准するまでに6年以上を要したのは、締約国に課される立法等の措置を実現する必要があったからですが、その間の経緯をまとめた論考が、国立国会図書館(調査及び立法考査局)が発行する月刊「レファレンス」2015年10月号に掲載されていましたので、ご一読をお
勧めします。
 以下には、目次及び要旨を引用します。
 
レファレンス 平成27年10月号
わが国の障害者施策―障害者権利条約批准のための国内法整備を中心に―
国立国会図書館 調査及び立法考査局 主幹 社会労働調査室 岡村 美保子

(引用開始)
目次
はじめに
Ⅰ 障害者権利条約
 1 概要
 2 条約作成の経緯
 3 障害の概念―社会モデル―
 4 主な内容
Ⅱ わが国の障害者施策の歴史
 1 第2 次世界大戦まで
 2 第2 次世界大戦直後
 3 厚生白書にみられる障害者施策
 4 国際障害者年以降
Ⅲ 条約批准のための法整備
 1 障害者基本法改正
 2 障害者差別解消法制定
 3 障害者雇用促進法改正
 4 障害者総合支援法(障害者自立支援法の改正)
 5 精神保健福祉法改正
 6 障害者虐待防止法制定
おわりに
要旨
① 平成18(2006)年の国連総会で採択された「障害者の権利に関する条約」(障害者権利条約)は、“Nothing about us without us” という有名なフレーズに象徴されるように、起草段階から障害当事者が深く関わり、その内容は、障害の概念そのものに対する発想の転換を含め、大きなインパクトを与える
ものである。
② 障害者権利条約は人権条約であり、障害者の諸権利が人権であることを再確認し、その権利の尊重を強化するためのものである。同条約における障害の概念は、いわゆる障害の「社会モデル」を反映したものであり、締約国に対し、障害者の直接的な差別を禁止するのみならず、障害者が社会における真の平等を享受できるような措置を取ることを求めており、その中には「合理的配慮」の提供といったものが含ま
れる。
③ わが国は、この条約に起草段階から積極的に参画し、平成19(2007)年に署名を行った。しかし、わが国の障害者に対する政府の考え方や施策は、従来障害者権利条約のものとは異なるものであった。徐々に変化を遂げてきてはいたものの、条約の実施を担保するに十分なものではなかったため、拙速な締結に
対する障害者団体の反対もあり、国内法整備を行ってから、平成26(2014)年に批准するに至った。
④ 平成21(2009)年に発足した、障害者、障害者の福祉に関する事業に従事する者及び学識経験者等を構成員とする「障がい者制度改革推進会議」での議論を基として、条約に示された障害観に即した障害者基本法の改正、障害者の差別禁止に関する法律の制定、障害者の地域での自立した生活を担保する福祉法
等の改正、障害者の人権侵害に対処するための法整備が行われた。
⑤ 障害者を治療や社会的保護の対象として扱ってきた障害者観を転換し、権利の主体として認識し、差別をなくし、人権を守るために社会的障壁の除去や合理的配慮の措置を取るという条約の要請に応えるため、今後、新たに制定された法律の適切な施行のための準備や、制度のさらなる見直し等を行っていく必
要がある。
(引用終わり)
 
 上記論考で解説されている「Ⅲ 条約批准のための法整備」で取り上げられた諸法について、以下にリンクしておきます。
 

 そこで、障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)についてなのですが、本文26条、附則9条と、それほど条文数が多いというほどではなく、最初から条文を読んでいけば、おおよその内容は分かるとはいえ、やはり、法律に馴染みのない方には分かりづらいと思いますので、前掲の「レファレンス」に掲載された岡村美保子さんによる論考から、同法制定の経緯とその内容を説明した部分を引用しますので、まずこれで概略を頭に入れていただくのが良いと思います。
 
(引用開始)
2 障害者差別解消法制定
(1) 経緯
 上記のように、障害者基本法に第4条として差別の禁止が規定され、社会的障壁の除去の実施において合
理的な配慮が義務付けられた。なお、障害者に対する差別禁止が障害者基本法に盛り込まれたのは、平成
16(2004)年改正時である(本稿Ⅱ4(3)参照)。
 日本国憲法にも差別禁止が定められている(第14条)が、憲法の差別禁止条項は基本的には私人間を問題にしないという枠組みとなっており、差別の防止や救済が困難であること、障害者基本法の差別禁止は
理念規定であり、裁判規範性が弱く、救済手続もないことから、差別禁止法が必要であるとされた。
 平成22年閣議決定により、「障害を理由とする差別の禁止に関する法律の制定」につき、推進会議の第一次意見に沿って必要な検討を行い、平成25年常会への法案提出を目指すこととされたのを受け、平成22年(2010)年11月、推進会議に「差別禁止部会」が設置された。ここで21回の会議を行った後、平成24(2012)年7月に障害者政策委員会の下に置かれた「差別禁止部会」に移行して、さらに検討を重ね、同年9月「「障害を理由とする差別の禁止に関する法制」についての差別禁止部会の意見」が取りまとめられた。一方、同年7月に民主党に「障害者差別禁止PT」(江田五月会長)が設置され、12月に考え方(方針)を取りまとめ、政権交代後には自由民主党の障害者特別委員会(衛藤晟一委員長)、公明党の「障がい者福祉委員会」(高木美智代委員長)を中心に、与党内での検討が開始された。翌年(平成25(2013)年)には、自由民主党、公明党、民主党の3党による協議の結果、「障害を理由とする差別の禁止に関する立法措置に係る主な論点と基本的な考え方について」がまとめられた。これを受けて、政府が障害者政策委員会差別禁止部会の意見や障害者団体を含めた関係団体からの意見も盛り込んで法案を作成、3党協議の場に提示して説明し、各党の部会等の法案審査手続を経て了承を得、閣議決定の上国会に提出した。衆参とも全会一致で可決・成立した「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(平成25 年法律第65 号。いわゆる「障害者差別解消法」)は、このような成立過程を経ており、「閣法でありながら実質的には
議員立法」と評されている。
(2) 内容
 この法律は、障害者基本法第4条に規定された差別禁止の基本原則を具体化するものであって、差別の禁
止に関する具体的な規定をガイドライン方式で示し、それが遵守されるよう具体的措置等を定める、「行政法的アプローチ」(行政法規により行為規範を定立し、行政措置によりその実効性を確保する手法)を基本としている。題名が「差別解消法」とされた趣旨については、『概説障害者差別解消法』では、「本法は、差別を禁止するとともに、それを社会において実効的に推進するための基本方針や指針の策定等の措置、相談、紛争解決の体制整備等の国や地方公共団体における支援措置についても規定しており、これ
らを通じて差別のない社会を目指すものであることから」としている。
 この法律は、障害者に対する差別一般を律するものであるが、雇用分野については、同じ常会で改正さ
れた障害者雇用促進法の定めるところによるとされた(第13条)。
 具体的な措置は、行政機関等と事業者に義務付けられる差別を解消するための措置(第3章)と、国及び地方公共団体が行うこととされる差別を解消するための支援措置(第4章)の2種類であり、前者は「差別的取扱いの禁止」と「合理的配慮の提供」からなる。合理的配慮の提供は、民間事業者に関しては努力義務とされている。支援措置としては、相談・紛争の防止又は解決の体制整備、啓発活動、情報収集等のほか、地域における関係者のネットワーク構築のため、障害者差別解消支援地域協議会の組織の根拠規
定を置き、同協議会による関係機関等の連携を図ることとしている。
 本法の平成28(2016)年4月1日の施行に向け、準備作業が行われており、平成27(2015)年2月24日
には「基本方針」が閣議決定された。その概要は以下のとおりである。
 「不当な差別的取扱い」については、「障害者に対して、正当な理由なく、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否、場所・時間帯などを制限、障害者でない者に対しては付さない条件を付けることなどによる、障害者の権利利益の侵害を禁止する」という趣旨であり、障害者の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別の措置は、不当な差別的取扱いとしないとしている。「合理的配慮」については、「行政機関等及び事業者が、その事務・事業を行うに当たり、個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の表明があった場合に、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁を除去するための必要かつ合理的な取組であり、その実施に伴う負担が過重でないもの」であり、その事務・事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られ、非障害者との比較において同等の機会の提供を受けるためのもので、事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないものとしている。また、「過重な負担」は、事務・事業への影響の程度、実現可能性の程度、費用・負担の程度、事務・事業規模、財政・財務状況等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断するとしている。なお、相談及び紛争の防止等のための新たな機関は設置せず、既存の機関等の活用・充実を
図るものとされた。
 禁止される不当な差別的取扱いや義務とされる合理的配慮の具体的内容については、障害者や事業者等の意見を反映し、今後作成される対応要領(行政機関等が自らの職員に向けて示すもの)や対応指針(民間事業者の事業を担当する大臣が民間事業者に向けて示すもの)で具体的事例を示しつつ、事例や裁判例を積み上げていく中で概念の共有を図っていくものとされている。実効性を確保するためには、「国民に
差別に関わる「ものさし」がいかにわかりやすく示されるか」が重要であろう。
(引用終わり)

 以上の概説を読んだだけでも、少なくとも、この法律の条文を読んでいるだけでは、実質的な差別解消に向けた具体的なイメージがわいてこないはずだ、ということは理解できました。
 そこで、「この法律は、障害者基本法第4条に規定された差別禁止の基本原則を具体化するもの」である以上、その条文をまず読んでみましょう。
 
障害者基本法(昭和四十五年五月二十一日法律第八十四号)
(差別の禁止)
第四条
 何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為を
してはならない。
2 社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによつて前項の規定に違反することとならないよう、その実施について必要
かつ合理的な配慮がされなければならない。
3 国は、第一項の規定に違反する行為の防止に関する啓発及び知識の普及を図るため、当該行為の防止を図るために必要となる情報の収集、整理及び提供を行うものとする。
 
 この基本理念を踏まえて制定された障害者差別解消法ですが、はじめの方だけでも読んでみましょう。
 
障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成二十五年法律第六十五号)
第一章 総則
(目的)
第一条
 この法律は、障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)の基本的な理念にのっとり、全ての
障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを踏まえ、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項、行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置等を定めることにより、障害を理由とする差別の解消を推進し、もって全ての国民が、障害の有無によって分け隔てら
れることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする。
(定義)
第二条
 略
(国及び地方公共団体の責務)
第三条
 国及び地方公共団体は、この法律の趣旨にのっとり、障害を理由とする差別の解消の推進に関し
て必要な施策を策定し、及びこれを実施しなければならない。
(国民の責務)
第四条
 国民は、第一条に規定する社会を実現する上で障害を理由とする差別の解消が重要であることに
鑑み、障害を理由とする差別の解消の推進に寄与するよう努めなければならない。
(社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮に関する環境の整備)
第五条
 行政機関等及び事業者は、社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮を的確に行
うため、自ら設置する施設の構造の改善及び設備の整備、関係職員に対する研修その他の必要な環境の整
備に努めなければならない。
第二章 障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針
第六条
 政府は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策を総合的かつ一体的に実施するため、
障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定めなければなら
ない。
2 基本方針は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する基本的な方向
二 行政機関等が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項
三 事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項
四 その他障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する重要事項
3 内閣総理大臣は、基本方針の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
4 内閣総理大臣は、基本方針の案を作成しようとするときは、あらかじめ、障害者その他の関係者の意
見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、障害者政策委員会の意見を聴かなければならない。
5 内閣総理大臣は、第三項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、基本方針を公表しなけ
ればならない。
6 前三項の規定は、基本方針の変更について準用する。
第三章 行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置
(行政機関等における障害を理由とする差別の禁止)
第七条
 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差
別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。
2 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実
施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。
(事業者における障害を理由とする差別の禁止)
第八条
 事業者は、その事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いを
することにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。
2 事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必
要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない。
(国等職員対応要領)
第九条
 国の行政機関の長及び独立行政法人等は、基本方針に即して、第七条に規定する事項に関し、当
該国の行政機関及び独立行政法人等の職員が適切に対応するために必要な要領(以下この条及び附則第三
条において「国等職員対応要領」という。)を定めるものとする。
2 国の行政機関の長及び独立行政法人等は、国等職員対応要領を定めようとするときは、あらかじめ、
障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない。
3 国の行政機関の長及び独立行政法人等は、国等職員対応要領を定めたときは、遅滞なく、これを公表
しなければならない。
4 前二項の規定は、国等職員対応要領の変更について準用する。
(地方公共団体等職員対応要領)
第十条
 地方公共団体の機関及び地方独立行政法人は、基本方針に即して、第七条に規定する事項に関し
、当該地方公共団体の機関及び地方独立行政法人の職員が適切に対応するために必要な要領(以下この条
及び附則第四条において「地方公共団体等職員対応要領」という。)を定めるよう努めるものとする。
2 地方公共団体の機関及び地方独立行政法人は、地方公共団体等職員対応要領を定めようとするときは、あらかじめ、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるよう努めなければな
らない。
3 地方公共団体の機関及び地方独立行政法人は、地方公共団体等職員対応要領を定めたときは、遅滞な
く、これを公表するよう努めなければならない。
4 国は、地方公共団体の機関及び地方独立行政法人による地方公共団体等職員対応要領の作成に協力し
なければならない。
5 前三項の規定は、地方公共団体等職員対応要領の変更について準用する。
(事業者のための対応指針)
第十一条
 主務大臣は、基本方針に即して、第八条に規定する事項に関し、事業者が適切に対応するため
に必要な指針(以下「対応指針」という。)を定めるものとする。
2 第九条第二項から第四項までの規定は、対応指針について準用する。

 以上の第11条まで読んだだけでも、「レファレンス」掲載論文が言う「「行政法的アプローチ」(行政法規により行為規範を定立し、行政措置によりその実効性を確保する手法)を基本としている」という
ことの意味が何となく分かってきました。
 「行政法規により行為規範を定立し」に対応するのが、基本方針(第6条)、対応要領(第9条、第10条)、対応指針(第11条)ということですね。つまり、これを読まないと具体的な行為規範の内容(
公務員や事業者が、何をなすべきか、何をしてはならないか)が分からないということです。
 いちいち引用しませんが、内閣府ホームページの中の「障害者施策」「障害を理由とする差別の解消の推進」に、基本方針、対応要領、対応指針にリンクがはられていますので、ご参照ください。それらの文書に記載された「具体例」を、より豊富に、かつ適切なものにしていくことが、今後期待されているとい
うことだと思います。


 なお、「行政法的アプローチ」の後半部分「行政措置によりその実効性を確保する」については、障害者差別解消法の「第4章 障害を理由とする差別を解消するための支援措置(第14条~第20条)」を
ご覧ください。
 この中では、第17条~第20条に規定された「障害者差別解消支援地域協議会」(設立は任意)が注目されますが、はたして実効性のある組織になり得るかどうか、まずは、地方公共団体の意欲と力量が試されると思われます。
 
 何しろ、私自身が「本格的に勉強したくなった際のインデックスにしようという魂胆」で書いたものですから、もしも付き合ってここまでお読みいただいた方がいたとして(それほどいるとは思えませんが)、「何だかよく分からなかった」という感想を持たれるのではないかと思います。
 そういう方のために、内閣府ホームページ「障害を理由とする差別の解消の推進」に掲載された以下の
「関連資料」を最後にご紹介しておきます。
 障害者差別解消法のだいたいのイメージをつかんでいただくためには有用だろうと思います。

(付録)
『ラブソング・フォー・ユー(LOVESONG FOR YOU)』 
作詞・作曲:ヒポポ大王 演奏:ヒポポフォークゲリラ
  

予告1/24「子どもたちのSOS―今私たち大人にできること―」@和歌山県民文化会館(主催:子どもセンターるーも・和歌山県)のご案内

 今晩(2015年12月11日)配信した「メルマガ金原No.2301」を転載します。

予告1/24「子どもたちのSOS―今私たち大人にできること―」@和歌山県民文化会館(主催:子どもセンターるーも・和歌山県)のご案内

 このメルマガ(ブログ)で「子どもシェルター」のことを取り上げるのは2回目になります。前回は、和歌山に初めて誕生した「子どもシェルターるーも」(全国でも9番目の施設)の開所記念シンポジウム(主催:和歌山弁護士会・和歌山県・特定非営利活動法人子どもセンターるーも)の開催をご案内した記事でした(予告2/11「子どもシェルターるーも開所記念シンポジウム」(in和歌山市)/2013年12月17日)。
 それからちょうど2年、再び「るーも」が主催する(共催:和歌山県)シンポジウムが、来る2016年1月24日(日)に開催されることになりましたので、このメルマガ(ブログ)でもご紹介することにしました。
 
 そもそも、「子どもシェルター」って何?という方のために、今回のシンポジウムのチラシ裏面に掲載された文章を引用します。

(引用開始)
 子どもシェルターとは
 本来、子どもは家庭で育つ権利を持っています。しかし、最近、虐待など様々な理由によりその権利を奪われ、家庭で暮らせない子どもが増えています。
 そのような子どもを一時的に保護し、安心して暮らしてもらえる緊急避難場所が子どもシェルターです。
 子どもシェルターでは、子どもを一人ぼっちにせず、一緒に歩み、子どもの生きる力を蓄えることを目指しています。
 和歌山では、平成25年10月に子どもシェルターるーもを開設し、これまでに24人の子どもを受け入れてまいりました(平成27年10月23日現在)。
 また、全国的にも子どもシェルター開設の動きが活発で、現在までに全国に13か所の子どもシェルターが誕生しているほか(東京、神奈川、千葉、新潟、宮城、愛知、広島、岡山、京都、福岡、大分、和歌山、北海道)、大阪・沖縄などで子どもシェルターを開所する動きが進んでいます。
(引用終わり)
 
 また、「子どもシェルターるーも」開設の原動力となった(と評しても誰も異論はないはずの)土居聡弁護士へのインタビュー記事が「和歌山県男女共同参画センターりぃぶる」センターニュース第60号に掲載され、同センターのWEBサイトで今でも読めますので、是非ご一読をお奨めしたいと思います。
 なお、土居弁護士は、その後、「常に子どもを守る最前線で仕事がしたい」と言ったかどうかは未確認ですが、弁護士登録は維持したまま、和歌山県子ども・女性・障害者相談センター(児童相談所)の主幹に転身したため、シェルターを運営する「子どもセンターるーも」理事は辞任しています。

『居場所のない子どもたちを救いたい』
特定非営利活動法人 子どもセンターるーも 理事 土居 聡さん(和歌山市)

(抜粋引用開始)
 
弁護士として少年事件を担当してきた土居さんは、事件を起こした子どもが社会でやり直せる可能性があっても戻る場所がなく、少年院へ送られてしまうケースを重ねるうち、その状況を何とかしたいと思うようになりました。そんなとき子どもシェルターの存在を知り、強く関心を持ちました。
 児童福祉法上,虐待などを受けた18歳未満の子どもは、児童相談所の保護が受けられますが、18歳以上になると原則として対象外となり,法的な保護を受けられません。また児童相談所の一時保護所では2歳から17歳くらいまでの子どもが集団生活を送っていて,ゆっくりと物事を考えたい思春期の子どもの特性に合った場所を提供できていない場合もあることから、子どもたちの緊急避難場所として子どもシェルターをつくりたいと決意をしました。
 2012年4月、有志で和歌山弁護士会「子どもの権利委員会」に企画提案しましたが、財源や人材の確保などが厳しいと難色を示されました。そこで、全国のシェルターをすべて視察することで問題をクリアして、心理や福祉関係、行政関係者など他職種からの賛同者も得て実現にこぎつけました。
 2013年2月末、NPO法人子どもセンターるーもを設立。家庭に居場所のない子どものなかでも特に、性虐待の被害にあう可能性の高い女の子をまず救いたいと、10月1日、県内初の全国で8都道府県目となる子どもシェルターを開設しました。
(略)
 子どもシェルターの場所は非公開であるため、開設する際には賃貸や税金などの手続きひとつをとっても苦労があったと言います。るーもの定員は6人で、15~20歳くらいまでの女の子を緊急保護し、スタッフやボランティアが24時間体制で子どもの生活をサポートし、子ども一人ひとりに細やかなケアを行っています。これまでに児童相談所や女性相談所、その他福祉機関などから、性虐待の被害、親が入院してしまったケース、またどこにも行き場所がないなどの相談が寄せられたそうです。
  子ども一人ひとりにコタン(※1 子ども担当弁護士の略称)が付き、法的手続きや保護者との連絡、今後の居場所探し,退所後の生活などを支援します。コタンの活動費用は、日弁連「子どもに対する法律援助制度」※2から支払われ,子どもに負担させることはありません。入所期間は2週間~2か月程度。その後は自立援助ホームなどの施設入所や自宅に戻ることもありますが、心の傷が大きい子どもは長期ケアが必要であるため、状況に合わせた対応を行っています。また子どもが1人で外出することは、再び虐待の被害にあったり、性犯罪に巻き込まれたりなどの危険があるため、散歩や施設見学など外出時はコタンが付き添い、退所後も新しい居場所が子どもの特性に合っているかを確認するために子どもに寄り添い、継続して子どもを支えています。
(略)
 土居さんは、「シェルターでは,保護された子どもがこれからどうしたいか、すべて自分で決める。コタンやスタッフなどの大人は子どもに選択肢を提示するだけで,意見を押しつけることはありません。多くの選択肢を提示できるように情報収集や連携を広げ、子どもが決断するときにアドバイスできるようにすることが重要です。子どもは自分の意見が尊重されていると感じることで、自分に自信を持てるようになります。この繰り返しにより子ども自身の自尊心を回復させていきたい」と話されました。
(略)
(センターニュース第60号より、一部修正して掲載)
(引用終わり)
 
 それでは、以下にチラシ文字情報を転記します。

チラシから引用開始)
子どもの権利啓発シンポジウム
子どもたちのSOS―今私たち大人にできること―

日時 平成28年1月24日(日)午後1時~4時30分まで(開場/午後0時30分)
場所 和歌山県民文化会館小ホール(和歌山市小松原通り一丁目1番地)

対象 一般県民、福祉に関わりのある方、民政児童委員、教育関係者、子どもの人権・福祉に関心のある方々など
申込不要・参加無料
手話通訳あり
一時保育あり 1月10日までに下記「連絡先」まで予約必要(定員あり、先着順)
 
第1部 パネルディスカッション「子どもシェルターの取り組みとこれから」
〇コーディネーター:桑原義登(るーも副理事長、相愛大学名誉教授)
〇パネリスト:
 社会福祉法人カリヨン子どもセンタースタッフ
 永井真理子(元和歌山県子ども・女性・障害者相談センター次長)
 松木正惠(るーも理事、和歌山信愛女子短期大学非常勤講師)
 伊藤あすみ(るーも理事、弁護士)
※コーディネーター、パネリストの略歴はチラシの裏面をご参照ください。
 
第2部 和歌山県立桐蔭高校演劇部による創作演劇「子どもシェルターと出会って(仮題)」
※和歌山県立桐蔭高校演劇部のプロフィール
「桐蔭高校は136年の歴史をもち、「文武両道」を校訓に学校生活を送っています。演劇部は今年もゆかいなメンバーで、年間6回の公演に向けて日々練習しています。平日は放課後、休日は朝から夕方まで体育館の舞台で仲良く楽しく時にはけんかもしながら活動しています。
平成25年度
第65回 和歌山県高等学校演劇祭 優秀賞 近畿総合文化祭出場
第34回 近畿高等学校総合文化祭演劇部門 奨励賞
 
主催 特定非営利活動法人子どもセンターるーも・和歌山県
協賛 和歌山南ロータリークラブ
後援 和歌山市・和歌山弁護士会・子どもシェルター全国ネットワーク会議・和歌山県教育委員会・和歌山市教育委員会・和歌山県臨床心理士会・和歌山県社会福祉士会・和歌山県児童福祉施設連絡協議会・和歌山県里親会・和歌山子どもの虐待防止協会・特定非営利活動法人トレス
連絡先 〒640-8044 和歌山市板屋町22 和歌山中央通りビル5階
 (特非)子どもセンターるーも事務局 TEL:073-425-6060 FAX:073-432-3440 

(引用終わり)

 そう、2年前のシンポジウム(2014年2月11日)に参加した私にとって、何よりも忘れ難いのが、今回と同じ和歌山県立桐蔭高校演劇部の皆さんによる創作劇「しあわせのうた」の上演でした。その日の参加者が異口同音に「桐蔭高校の演劇部が素晴らしかった」と感激し、後に作成されたシンポ報告書には、創作劇の模様を収録したDVDが付録に付いていたほどでした。
 その時の舞台写真が、今回のチラシにも使われていますが、「子どもセンターるーも」ホームページにも、その日の様子が掲載されていますので、「しあわせのうた」について書かれた部分を引用しましょう。

(引用開始)
第2部 桐蔭高校演劇部による創作演劇「しあわせのうた」が上演されました。素敵な演劇と桐蔭高校のみなさんの眩しいほどの笑顔に、会場全体が何ともいえない温かい雰囲気に包まれました。この日のために、子どもシェルターのことを勉強し、たくさん練習してきた桐蔭高校のみなさんには、感謝の気持ちでいっぱいです。また、機会があれば一緒に何かしたいと思うとともに、さらなる輝きを期待しています。
(引用終わり)

 私が桐蔭高校に在籍していた当時(1970年4月~1973年3月)演劇部があったか?すら記憶にない頼りない先輩ではありますが、後輩の皆さんが素晴らしい成果を県民文化会館の舞台で披露されることを祈ってやみません。

 支援を必要とする子どもたちのために、何をしなければならないのか、何ができるのかについて、考えを深めるシンポジウムになると確信しますので、是非多くの方にご参加いただきたく、ご案内します。
 

(付録)
『Don't mind (どんまい)』 作詞・作曲:ヒポポ大王 演奏:ヒポポフォークゲリラ
 

るーもチラシ表るーもチラシ裏 

11/23世界核被害者フォーラム「広島宣言」&「世界核被害者の権利憲章要綱草案」(付・森松明希子さんの会場発言「避難の権利と平和的生存権」)

 今晩(2015年12月1日)配信した「メルマガ金原No.2291」を転載します。

11/23世界核被害者フォーラム「広島宣言」&「世界核被害者の権利憲章要綱草案」(付・森松明希子さんの会場発言「避難の権利と平和的生存権」)

 昨日、4日連続でカテゴリー「原発」の記事を書くことになったということをマクラに振ったばかりですが、今日も「原発」です。
 「安保法制は違憲だ」と考える個人や政党の中にも原発容認派がいたりするので、なかなか一筋縄ではいきませんが、だからといって反原発の主張を手加減する訳にもいきませんからね。

 それで、今日も「原発」となったのはなぜかというと、朝、出勤前に自宅のパソコンを立ち上げてメールチェックをしたところ(ちなみに、私はスマホもタブレットも持たないので、パソコンを立ち上げるしかない)、原発賠償関西訴訟原告団代表の森松明希子さんからメールが届いており、いくつかの用事や情報共有の中に、一昨日書いた私のメルマガ&ブログ(予告12/12「『避難の権利』を求める全国避難者の会 設立記念集会 Part.2 つながろう!はじめの一歩 in 京都」(付・宇野朗子さんによる「設立宣言」文字起こし/2015年11月29日)の記述にかかわる訂正(というよりも説明)が書かれており、「これは訂正しなければ」と思ったことがまずきっかけでした。
 一昨日、森松さんを紹介する際、「原発賠償関西訴訟原告団代表で東日本大震災避難者の会 Thanks & Dream(サンドリ)世話人(と呼ぶんだろうか?)の森松明希子さん」とやや自信なげに書いたのに対し、森松さんから、「東日本大震災避難者の会 Thanks & Dreamも代表です(^^ゞ」「世話人としないのは、サンドリは主体的な避難当事者の集まりなので、世話もしないしされないで!との思いからです~。」「そういう意味で「世話人」という言葉があるとかではないとはもちろん思いますが。」という丁寧な説明をいただきましたので、早速、ブログを訂正しておきました。

 それだけのことであれば、2日前のブログの一部修正で終わりなのですが、森松さんからのメールによれば、11月21日から23日まで広島で開催された世界核被害者フォーラムに参加し、1日目の「原発事故/原発労働(チェルノブィリ・福島)」のセッションにおいて、コーディネーターの白石草さんの配慮で会場発言をさせてもらったこと、同席したサポーターの皆さんが協力して文字起こししてくださり、サンドリ公式サイトにアップすることができたことが書かれていましたので、「これは、私のブログでもご紹介しなければ」と思った次第です。
 なお、森松さんの会場発言を引用する前に、「原発事故/原発労働(チェルノブィリ・福島)」セッションの事前予告された内容をご紹介しておきます。

(引用開始)
16:40-18:20
[4] 原発事故/原発労働(チェルノブィリ・福島)
コーディネーター
:湯浅一郎 NPO法人ピース・デポ 副代表
:白石 草 NPO法人Our Planet TV
スピーカー
1) アレキサンダー・ヴェリキン Alexander Velikin (ロシア・リクビダートル)
2) アントン・ヴドヴィチェンコ Anton Vdovichenko(ロシア・チェルノブィリ原発事故被害支援NGOラディミチ代表)
3) 長谷川健一(福島原発事故被害者、福島原発事故被害者団体連絡会共同代表)
コメンテーター
:井戸川克隆(福島県双葉町前町長)
(引用終わり)

 それでは、「東日本大震災避難者の会 Thanks & Dream(サンドリ)」公式サイトに掲載された森松明希子さんの会場発言の文字起こしをご紹介します(写真も同サイトから転載しました)。

(引用開始)
 発言をさせていただいてありがとうございます。
 わたしは 4 年 8 カ月前に東京電力福島第一原発が事故を起こして,その当時,福島に住んでいました。ふたりの子どもがいて,その子どもを連れて大阪に避難をしています。わたしの夫は福島県に今も住んでいます。(事故前と)同じ仕事をしています。
 世界の方はご存じないかもしれませんが,日本では母と子どもだけが避難をする,父親,稼ぎ手の人だけが汚染地にとどまるということで,母子避難という形態で避難を継続させています。その状態が 4 年半以上続いています。
森松明希子さん@世界核被害者フォーラム きょうは世界核被害者フォーラムというところで,放射線の被害については説明をはぶくことができる,そして被曝を避けるために,わたしは,幼いふたりの子どもに放射線のリスクをできるだけ避けるために,避難を続けているわけですが,いま,すごく貴重なご発言をしてくださって,たとえロシアが 5 年後にできた法律であっても,ロシアはチェルノブィリ法というものをつくりました。そしてそこの中には,「避難の権利」というものもきちんとありました。
 なのに日本では「原発事故子ども・被災者支援法」もできたのですが,結局その法律は中身が骨抜きにされて,いまは実質的には救われている人はいないとわたしは感じています。
 いま,アレキサンダーさんから「日本はなんの法律で救われるんだ?」と聞かれましたが,わたしは,日本には憲法という法律があります。憲法は国家権力の濫用を抑制するものですし,日本国憲法があります。
 わたしはとくに,その憲法にたよって,憲法訴訟ということでいま裁判を起こしています。それは避難する人だけの正当性を主張するのではなくて,放射線被ばくからまぬがれて健康を享受する権利というのは,人々が普遍的に持つ,人が当然に生きる権利として持つ権利だと考えています。
 それが実質の法律ではないので,憲法にたよるしかない,生存権をはじめ,こういう条文があります。「全世界の国民はひとしく恐怖と欠乏から免れ,平和のうちに生存する権利を有する」と,前文ですが書いてあります。
 これはよく戦争法案(*反対運動)とかのときにも使われますけれども,恐怖と欠乏からまぬがれ,生存する権利を有する,放射線被ばくの恐怖からまぬがれてひとしく人々は生存権を主張することができると,わたしは思っています。
 いま福島の人たちは(*避難)区域内と区域外との分断や,放射線の汚染は,さきほどのセッションでも発言されたように,県境で止まるわけではありません。子どもの健康や命を守りたいという多くの人々が避難生活を苦しいなか,続けています。
 そのことを,今日は世界から集まってきてくださっているみなさまにお伝えしたいとともに,一緒に共有をしていただいて,福島の事故も核被害のひとつということで,教訓にしていかなければいけないと,わたしは思います。
 発言の機会を与えてくださいまして本当にありがとうございました。
(引用終わり)
 
 「避難の権利」を支える最も重要な法的根拠は、日本国憲法が保障する「平和的生存権」だというのは、森松さんの年来の主張、意見であり、私も全く同感なのです。
 ただし、実定法上の法的根拠に基づいて権利侵害を立証していかなければならない訴訟において、「平和的生存権」を主戦場にできるかには疑問がありますし、憲法第9条との関わりで発展してきた「平和的生存権」をめぐる理論状況から考えて、まだまだ議論を深めなければならない点が多いことは間違いありませんが、この論点は、私自身にとっても重い「宿題」なのです。

 最後に、世界核被害者フォーラムで、最終日の11月23日に採択された「広島宣言」と「世界核被害者の権利憲章要綱草案」を、長くなりますが全文引用します。是非、この思いを多くの方と共有できますように。

(引用開始)
世界核被害者フォーラム 広島宣言
(世界核被害者の権利憲章要綱草案)

2015年11月23日

1 われわれ、世界核被害者フォーラムに参加した者は、アメリカ政府による原爆投下70周年に当たる2015年の11月21~23日に、ここ広島に集った。
2 われわれは、核被害者を以下のように定義する。すなわち、狭義では、原爆の被爆者、核実験被害者、核の軍事利用と産業利用の別を問わず、ウランの採掘、精錬、核の開発・利用・廃棄の全過程で生じた放射線被曝と放射能汚染による被害者すべてを含む。また、広義では、核時代を終わらせない限り人類はいつでも核被害者=ヒバクシャになりうることを認識して、核と人類は共存できないことをあらためて確認した。
3 われわれは、広島、長崎への原爆投下により、日本人だけでなく、日本の植民地支配と侵略を受けたためにその地にいた朝鮮半島、中国、台湾の人々や連合国の捕虜たちも犠牲になったこと、放射線・熱線・爆風で虐殺され、生存者も「地獄の苦しみ」を味わったことを想起した。また、われわれは、被爆者が、侵略戦争を遂行した日本政府の責任を問い、健康と生活の保障を権利として求め、法律で一定の補償を勝ち取ってきたこと、今なお被爆者が、「国家補償」を被爆者援護法に明記することを求め、被爆したのに、被爆者と認定されない者が権利を求めて闘っていること、核兵器廃絶に加え原発再稼働反対・原発輸出反対、原発事故被害者援護を求めて闘っていることを再確認した。
4 われわれは、2013年にオスロ、2014年にナジャリットとウィーンで開かれた「核兵器の非人道的影響に関する国際会議」の結果として、核兵器爆発が環境、気候、人間の健康、福祉、社会に破滅的な影響をもたらし人類の生存さえ脅かし、対処が不可能であるという認識が国際的に共有されたことを確認した。われわれは、核兵器の禁止と廃絶に向けた法的ギャップを埋めることを誓約し121カ国が賛同している「人道の誓約」を歓迎する。また、われわれは、2015年11月初旬には国連総会第1委員会(軍縮)で、「核兵器のない世界を実現し維持するために締結されるべき効果的な法的措置…および規範を実質的に取り扱う」公開作業部会を開催する決議が、賛成135カ国、反対は12カ国のみで採択されたことを支持する。
5 われわれは、ウラン採掘や精錬、核実験、核廃棄物の投棄が、いまもつづく植民地支配、差別抑圧の下で先住民族の権利-先祖代々の土地と関連する諸権利をふくむ-を侵害しながら強行され、被曝を強要されるとともに、環境を放射能で汚染され、人間生活の基盤をも奪われた核被害者を日々増やし続けていることを確認した。
6 われわれは、核の連鎖が環境を放射能で汚染し生態系を破壊して人間をふくむ生物にさまざまな放射線障害を引き起こしてきたこと、またチェルノブイリに続くフクシマの原発苛酷事故の体験から、原発周辺の広大な地域に住む住民と事故処理労働者が被曝させられること、この過酷事故への対処が不可能であること、さらにはグローバルな放射能汚染を引き起こすことを認識した。また、われわれは、「核の軍事利用」と「核の産業利用」が原子力産業を通じて密接につながっていること、さらに劣化ウランを使用した放射能兵器など核の連鎖が全過程で大量の核被害者を生みだしてきたことを認識した。
7 われわれは、核の連鎖があるかぎり放射能災害の発生を防ぐことはできず、増え続ける核廃棄物の処理・処分の見通しは全く立たないうえ、核汚染は長期にわたり、環境の原状回復は不可能ということから、人類は核エネルギーを使ってはならないと認識した。
8 われわれは、東京原爆訴訟判決(1963年12月)が米軍の原爆投下は国際法違反と認定したこと、国際司法裁判所が「厳格かつ実効的な国際管理のもとで、全面的な核軍縮に向けた交渉を誠実に行い、その交渉を完結させる義務がある」と勧告的意見(1996年7月)を表明したことを知っている。この勧告的意見に基づき、2014年4月、核実験の被害を受けたマーシャル諸島の人々の政府が、国際司法裁判所に、9つの核武装国に対して、提訴したことを支持する。
 また、さらに、われわれは、核被害者世界大会が核保有国と原子力産業の犯罪責任を追及し(1987年ニューヨーク決議)、また軍産複合体に損害補償の責任を負わせるとしたこと(1992年ベルリン決議)を想起する。さらに、われわれは、「原爆投下を裁く国際民衆法廷・広島」がトルーマンを含む被告たち15名全員の有罪を確定したこと(2007年7月)を確認する。
9 われわれは、核エネルギー政策を推進した国家及び放射能汚染を引き起こした事業者と原発など核施設のメーカーはその株主、債権者が責任を負担することを含めて、加害に対して責任を負うこと、また、原発輸出は人権侵害と環境破壊をもたらす危険があることを主張する。
10 われわれは、国際原子力機関(IAEA)や国際放射線防護委員会(ICRP)が、これまで放射線被曝による被害について過小評価して原発事故などの本当の影響を隠蔽してきたことを弾劾する。また、われわれは、IAEAに与えられた「原子力の平和利用促進」権限の廃止を求める。
11 われわれは、核の利用により、人間の生存の基盤を破壊し、生き物すべての生存を侵害する原因を生み出した者が、軍産官学複合体およびこれを支援する国家であることを指摘する。また、われわれは、これらの軍産官学複合体の構成員の行動が国際人道法、国際環境法および国際人権法の根本原理を侵犯していることを主張する。
12 われわれは、日本政府が、フクシマ事故後も、反省するどころか、適切な事実及び被害調査をせず、被害の実相を隠蔽し矮小化しながら被害者への支援を切り捨てる一方で、原発の再稼動及び海外輸出を行っていることを糾弾し、日本及び世界各地の原発と産業用核施設の建設・運転並びに原発輸出に強く反対する。
13 われわれは、ウラン採掘、精錬、核燃料の製造、原子力発電、再処理を中止し、核の連鎖を廃棄することを求める。
14 われわれは、核兵器を禁止し廃絶を命ずる法的拘束力ある国際条約を緊急に締結することを求める。
15 われわれは、劣化ウランを利用した兵器の製造・保有・使用を禁止することを求める。
16 われわれは、今回の世界核被害者フォーラムを契機として、核被害者の情報を共有し、芸術などを含むさまざまな方法やメディアなどの媒体で発信し、共に連帯して闘っていくこと確認した。
17 われわれは、この世界核被害者フォーラムの成果をもとに以下の世界核被害者の権利憲章要綱草案を世界に発信するため、広島宣言を採択する。


世界核被害者の権利憲章要綱草案

[Ⅰ]核被害者の権利の基礎
1 自然界はすべての生命の基礎であり、人類を構成し文明を享受するすべて人間は個人として生命、身体、精神および生活に関する生来の平等な権利を有する。
2 何人も恐怖と欠乏から免れ、平和で健康で安全に生きる環境への権利を有する。
3 人類の各世代は、あらゆる生物の将来世代の利益を損なわないよう、持続可能な社会を享受する権利がある。
4 国際連合憲章でうたう本来的な人間の尊厳と人民の自決権,世界人権宣言、国際人権規約その他の国際人権文書及び先住民族の権利の宣言など、これらの国際実定法が定める生命、健康と生存に関する諸権利、並びに生成途上にある人類の法の内容をなすべき慣習国際法の原則が存在する。

[Ⅱ]権利
(1)核時代に生きる何人も、現在と将来の核被害を防ぐために以下のことを求める権利を有する。
1 自然放射線・医療用放射線以外の放射線被曝を受けないこと。
2 被曝労働を強制しないこと。被曝労働が回避できない場合には、最小化すること。 
3 医療被曝を必要最小限に留めること。
4 放射線被曝の危険性について、正確な情報を学校教育、社会教育を通して提供すること。情報には放射線被曝にリスクのないレベルはなく、とくに子どもや女性は被曝に対する感受性が高いことを含む。
(2)核被害者は次のことを求める権利を有する。
5 人格権、健康権を含むあらゆる人権及び基本的自由に対する核被害者の国内法上の権利を認めること。
6 過去、現在と将来の被ばく(被爆・被曝)による健康影響に対する持続的な健康診断と最善の医療の提供を自己負担なく受けること。これには、被ばく(被爆・被曝)2世、3世および将来世代も含む。
7 核利用の結果もたらされたすべての生命と健康、経済、精神、文化への被害について、加害者による謝罪と補償を求めること。
8 放射能で汚染された土地、住居、地域社会の環境の回復および地域(民族)文化の再生を求めること。
9 被ばく(被爆・被曝)状況について、加害者から独立した信頼できる科学的な調査と完全な情報公開を求め、この調査と個人情報に配慮しつつ情報管理とに被害者自身が参加すること。
10 放射能汚染地への帰還を強制されないこと。被曝地から避難するか被曝地に留まるかの選択の自由が保障されること、いずれの選択をした場合でも、できる限り被曝を避け、健康を守り、生活を維持、再建できる支援を受けること。
11 放射能汚染で健康が害される環境での労働を拒否すること、拒否後も不利益取扱を受けないこと。
(以上)
(引用終わり)

(上記の宣言と権利憲章要綱草案の英語版)
Declaration of the World Nuclear Victims Forum in Hiroshima(Draft Elements of a Charter of World Nuclear Victims’ Rights)

(付記その1)
 11月23日には、「フクシマを忘れない、繰り返させない特別アピール」も採択されました。

(付記その2)
 森松明希子さんが書かれた世界核被害者フォーラム参加レポートが、サンドリの公式サイトに掲載されています。
 

(忘れないために)
 「自由と平和のための京大有志の会」による「あしたのための声明書」(2015年9月19日)を、「忘れないために」しばらくメルマガ(ブログ)の末尾に掲載することにしました。

(引用開始)
  あしたのための声明書

わたしたちは、忘れない。
人びとの声に耳をふさぎ、まともに答弁もせず法案を通した首相の厚顔を。
戦争に行きたくないと叫ぶ若者を「利己的」と罵った議員の無恥を。
強行採決も連休を過ぎれば忘れると言い放った官房長官の傲慢を。

わたしたちは、忘れない。
マスコミを懲らしめる、と恫喝した議員の思い上がりを。
権力に媚び、おもねるだけの報道人と言論人の醜さを。
居眠りに耽る議員たちの弛緩を。

わたしたちは、忘れない。
声を上げた若者たちの美しさを。
街頭に立ったお年寄りたちの威厳を。
内部からの告発に踏み切った人びとの勇気を。

わたしたちは、忘れない。
戦争の体験者が学生のデモに加わっていた姿を。
路上で、職場で、田んぼで、プラカードを掲げた人びとの決意を。
聞き届けられない声を、それでも上げつづけてきた人びとの苦しく切ない歴史を。

きょうは、はじまりの日。
憲法を貶めた法律を葬り去る作業のはじまり。
賛成票を投じたツケを議員たちが苦々しく噛みしめる日々のはじまり。
人の生命を軽んじ、人の尊厳を踏みにじる独裁政治の終わりのはじまり。
自由と平和への願いをさらに深く、さらに広く共有するための、あらゆる試みのはじまり。

わたしたちは、忘れない、あきらめない、屈しない。

     
自由と平和のための京大有志の会
(引用終わり)

予告12/12「『避難の権利』を求める全国避難者の会 設立記念集会 Part.2 つながろう!はじめの一歩 in 京都」(付・宇野朗子さんによる「設立宣言」文字起こし)

 今晩(2015年11月29日)配信したメルマガ金原No.2289を転載します。

予告12/12「『避難の権利』を求める全国避難者の会 設立記念集会 Part.2 つながろう!はじめの一歩 in 京都」(付・宇野朗子さんによる「設立宣言」文字起こし)

 今からちょうど1か月前の10月29日、参議院議員会館において、「『避難の権利』を求める全国避
難者の会」(共同代表:宇野朗子氏、中手聖一氏)の設立集会が開かれました。
 私は、その翌日、このメルマガ(ブログ)で同会の設立をご紹介するにあたり、当日のリレートークの中から、原発賠償関西訴訟原告団代表で東日本大震災避難者の会 Thanks & Dream(サンドリ)代表でもある森松明希子さんのスピーチを文字起こししてご紹介しました(
「避難の権利」を求める全国避難者の会が設立されました/2015年10月30日)。

 そしてその1週間後の11月6日、和歌山弁護士会主催のシンポジウム「今、報道の自由を考える~国民の知る権利の観点から~」にパネリストとして登壇された宇野朗子(うの・さえこ)さんとお目にかか
った際、「宇野さんの挨拶も文字起こししますから」と(ご本人の固辞にもかかわらず)約束したことがずっと気になっていたのですが、ようやく文字起こしが終わりました(森松さんのスピーチより短かいというこ
とは分かっていたのですが、なかなか取りかかるタイミングがとれませんでした)。
 主催者を代表しての集会冒頭における開会挨拶ではあるのですが、内容は、「『避難の権利』を求める全国避難者の会」の「設立宣言」そのものです。
 なお、文字使いは金原の判断によるものですし、思わぬ聴き取りミスがあるかもしれませんので、その場合は何卒ご容赦ください。

 以下に、OurPlanet-TVによる中継動画をご紹介するとともに(前回はUPLANの動画をご紹介しましたので
)、宇野朗子さんによる「設立宣言」の文字起こしを掲載します。
 宇野さんの「宣言」は、1本目の動画の5分~9分です。
 
「避難の権利」を求める全国避難者の会設立集会(1時間44分)

避難の権利」を求める全国避難者の会(2)(9分)


「『避難の権利』を求める全国避難者の会」設立記念集会冒頭の共同代表・宇野朗子さんによる開会挨拶
(設立宣言)
「皆さん、こんにちは。今日はお集まりいただきまして、ありがとうございます。「避難の権利」とは、原発事故により、放射能汚染を被った地域で、地域の人々が、被ばくによる被害を避けるために避難をす
ることが、避難を選択することが出来る、そのために実質的な支援が存在する、それの権利です。
 この権利は、私たち、今避難している避難者の人たちが、避難し続けることができる、移住し、新しい
暮らしを始めることができる、そのための権利であるばかりでなく、今汚染を被っている地域に暮らす人々が、最大限、被ばくから免れるための医療支援や、様々な支援がそこに存在し、私たちに実質的に、避難をするか、そこに暮らすか、そういうことを自己決定することができる、そのための大切な権利だと私
たちは考えています。
 今この権利は、残念ながらこの国では保障されてはいません。事故から4年7か月が過ぎ、今日201
5年10月29日、今日全国から集まった避難者、それから帰還者の私たちは、ここに集い、あらためて私たちには「避難の権利」があることをここに表明したいと思います。そして、「避難の権利」を求め、「避難の権利」の保障される社会を目指して、「「避難の権利」を求める全国避難者の会」を設立致しま
す。
 私たちは、この4年と7か月、本当に様々な分断に苦しみ、傷つき、もがいてきました。私たちは、どこに散らばってしまっているのか、私たち自身を見つけることができずにきた4年と7か月でもあります。私たちこの会は、まず知り合うこと、繋がり合うことを大事にしていこうというふうに考えています。
 今、スライドショーを見ていただきましたが、最後に舟の写真があったと思います。私たち、この有志、準備会で6月から準備を重ねてきましたけれども、今ここに小さな、簡素な小舟ができあがりました。ここで今日つどってくださった皆さんに、一緒に乗り込んでいただき、そしてこの舟をもっともっと多様な人たちが漕げるような舟に仕上げしていただき、様々なところから、様々な風景、様々な考えをここに呼び込んでいただき、私たちが「避難の権利」というのは一体何なのか、そしてそれを保障させるためにはどうすればいいのか、皆で考え、活動していきたいと願っています。」
 
 さて、その「『避難の権利』を求める全国避難者の会」が、来る12月12日(土)、京都市上京区の同志社大学今出川キャンパス良心館2階RY203教室において、「「避難の権利」を求める全国避難者の会設立記念集会 Part.2 つながろう!はじめの一歩 in 京都」を開催することが予告されています。
 この京都での Part.2では、集会自体は夜(18:00-20:30)第二部「311後の共生社会をめざして~『避難の権利』は生きる権利~」として行われますが(申込不要)、その前の午後(13:00-16:30)には、第一部
「避難当事者ワークショップ つながろう!はじめの一歩」(要申込)が避難当事者を対象として開催されます。
 以下に、公式WEBサイトから開催概要を引用します。
 是非多くの方が集い、充実した集会となりますように。

 福島原発事故発生から4年8か月が経ちました。私たち原発事故避難者は全国各地に散り散りになり、それぞれの場所で苦難を乗り越えようと精一杯がんばっています。今も困難を抱えた仲間たちが数多くいま
す。
 被害者救済の為に制定された原発事故・子ども被災者支援法は骨抜きにされた上に、今年2015年の8月の改定では「新たに避難する状況にない」との文言が盛り込まれ、より一層「避難の権利」は切り捨てられ
ようとしています。
 しかし、原子力緊急事態宣言発令中の今、子ども達に甲状腺がん多発など、被ばくによる健康被害が懸
念されている中、「避難」を含めた被ばく防護の権利がないがしろにされてはなりません。
 去る10月29日参議院議員会館にて、約140名の方々、避難者はもとより全国から心を寄せてくださる皆さ
まとともに、「『避難の権利』を求める全国避難者の会」設立記念集会を開催しました。
 私たちひとりひとりの復興と、大切な子どもたちの未来のため、また、未来の子どもたちのため、あき
らめることなく、つながりあって、前に進んでまいりましょう。
 第2回集会を京都で開催します。避難者の皆さま、支援者の皆さま、ぜひご参加ください。

「避難の権利」を求める全国避難者の会 設立記念集会 Part.2
つながろう!はじめの一歩 in 京都

と き:2015年12月12日(土)
13:00-16:30 第一部(12:30開場)
避難当事者ワークショップ「つながろう!はじめの一歩」
(託児対応します。申し込みの際に、お知らせください。)
18:00-20:30 第二部(17:30開場)
集会「311後の共生社会をめざして~『避難の権利』は生きる権利~」
*プログラム詳細は追って、順次ウェブサイトなどにてお知らせをさせていただきます。

ところ:京都市上京区 同志社大学今出川キャンパス良心館2階RY203教室
(京都駅より地下鉄烏丸線9分、今出川駅より徒歩5分)

資料代:
第一部:500円
第二部:700円(避難者は500円、第一部参加者は無料)

申込み:
第一部:こくちーず又は下記の連絡先へお申込みください。
 
http://kokucheese.com/event/index/354481/ (携帯からもアクセス可能)
 メール
 
hinannokenri@gmail.com FAX011-398-9769
 メールでの連絡には「12月12日当事者ワークショップ申し込み」と件名を入れ、①お名前(ふりが
な)②避難元→避難先(→帰還先) ③ご連絡先 をお伝えください。   
第二部:申し込みは不要です。直接お越しください。

※メッセージで参加しませんか?!
設立集会には参加できないけれどメッセージで参加、を10月に引き続き募集します。メールまたはFAXなどでお寄せください。当日資料の中で、10月29日メッセージ集と共に掲載します。
メール
 
hinannokenri@gmail.com FAX011-398-9769 
「1212メッセージ」と件名を入れ、①お名前(ふりがな)②避難元→避難先(→帰還先)③ご連絡先④
匿名希望の有無⑤メッセージ(約700文字以内のめやすで。短くても。)をお送りください。(12月7日締切
り)
お待ちしています!
(引用終わり)

 「『避難の権利』を求める全国避難者の会」からの情報発信については、公式サイトの他に、以下の
Facebookページも随時ご覧ください。

(忘れないために)
 「自由と平和のための京大有志の会」による「あしたのための声明書」(2015年9月19日)を、「忘れないために」しばらくメルマガ(ブログ)の末尾に掲載することにしました。

(引用開始)
  あしたのための声明書

わたしたちは、忘れない。
人びとの声に耳をふさぎ、まともに答弁もせず法案を通した首相の厚顔を。
戦争に行きたくないと叫ぶ若者を「利己的」と罵った議員の無恥を。
強行採決も連休を過ぎれば忘れると言い放った官房長官の傲慢を。

わたしたちは、忘れない。
マスコミを懲らしめる、と恫喝した議員の思い上がりを。
権力に媚び、おもねるだけの報道人と言論人の醜さを。
居眠りに耽る議員たちの弛緩を。

わたしたちは、忘れない。
声を上げた若者たちの美しさを。
街頭に立ったお年寄りたちの威厳を。
内部からの告発に踏み切った人びとの勇気を。

わたしたちは、忘れない。
戦争の体験者が学生のデモに加わっていた姿を。
路上で、職場で、田んぼで、プラカードを掲げた人びとの決意を。
聞き届けられない声を、それでも上げつづけてきた人びとの苦しく切ない歴史を。

きょうは、はじまりの日。
憲法を貶めた法律を葬り去る作業のはじまり。
賛成票を投じたツケを議員たちが苦々しく噛みしめる日々のはじまり。
人の生命を軽んじ、人の尊厳を踏みにじる独裁政治の終わりのはじまり。
自由と平和への願いをさらに深く、さらに広く共有するための、あらゆる試みのはじまり。

わたしたちは、忘れない、あきらめない、屈しない。

     
自由と平和のための京大有志の会
(引用終わり)
 

(付録)
『プルトニウムの場合』(『フランシーヌの場合』の替え歌) 演奏:ヒポポフォークゲリラ(?)
 

「どう活かす―生活困窮者自立支援法」(12/4和歌山クレサラ対協)のご案内

 今晩(2015年11月22日)配信した「メルマガ金原No.2282」を転載します。

「どう活かす―生活困窮者自立支援法」(12/4和歌山クレサラ対協)のご案内

 今日は、和歌山での行事のご案内です。
 来る12月4日(金)、和歌山市中央コミュニティセンターにおいて、和歌山クレジット・サラ金問題対策協議会(略称:和歌山クレサラ対協)の定期総会を兼ねた記念企画として、今年4月から施行された
生活困窮者自立支援法をテーマとした記念講演とパネルディスカッションが行われます。
 うっすらと聞いたことはあっても、生活困窮者自立支援って、生活保護とどう違うの?というところからしてよく分かっていない人も多いでしょう(私自身、生活困窮者自立支援制度を要領よく説明せよ、と
言われても正直困惑します)。
 記念企画では、しが生活支援者ネット副代表等を務める羽田慎二司法書士に、滋賀での取組みについて講演していただいた後、反貧困ネットワークわかやま代表の由良登信(ゆら・たかのぶ)弁護士をコーディネーターとし、行政担当者(和歌山県、和歌山市)や支援活動の第一線で活動する方々をパネリストに迎えたパネルディスカッションが行われるということなので、この問題に関心を持たれている方に是非参
加をお勧めしたい企画です。
 以下にチラシ記載の文字情報を転記します。

チラシより引用開始)
和歌山クレジット・サラ金問題対策協議会(和歌山クレサラ対協)
2015年定期総会記念企画
どう活かす―自立支援法 
こらからの和歌山の取組みを考える

記念講演 滋賀の取組み
講師:羽田慎二 司法書士
 しが生活支援者ネット副代表
 NPO法人反貧困ネットワーク滋賀・びわ湖あおぞら会副代表
 滋賀県司法書士会副会長

パネルディスカッション
【コーディネーター:由良登信弁護士】
(パネリスト)
 羽田慎二氏・・・講師
 小池恒弘氏・・・和歌山県福祉保健総務課保護援護班課長補佐兼班長
 崎山隆弘氏・・・和歌山市福祉局社会福祉部生活支援課副課長
 太田 勝氏・・・NPO法人和歌山ホームレス支援機構理事長、司祭
 田中千鶴子氏・・・あざみの会・なんでも相談相談員

日時 2015年12月4日(金)18:30~20:30
場所 中央コミュニティセンター
    (和歌山市三沢町1丁目2番地 TEL:073-402-2678)
入場無料 どなたでも参加できます。

「生活困窮者自立支援法」は政府がはじめて日本に「貧困」があることを認め
その対策と支援を国と自治体に求めた法律です。

主催:和歌山クレジット・サラ金問題対策協議会(和歌山クレサラ対協)
〒640-8354 和歌山市北ノ新地東ノ丁19番地2 りんどう司法書士事務所内
[お問い合わせ]TEL 073-433-2244 URL
http://cresara.org/
(引用終わり)

 なお、もとのチラシの記載に気になるところがありました。それは、パネリストのお1人である太田勝
さんの肩書きが、
  
NPO法人ホームレス支援機構理事長、牧師
となっていることです。
 まず、太田さんが理事長をされている団体の表記としては、「NPO法人和歌山ホームレス支援機構」とするのが普通だろうと思います。他県にもホームレス支援機構という組織があって紛らわしいからですが、正式名称にも「和歌山」が入っているはずと思い、和歌山県ホームページ(特定非営利活動法人(NPO法人)の認証・申請状況)を調べてみたところ、やはり「和歌山ホームレス支援機構」でした(268番
)。
 それよりももっと気になるのは「牧師」です。いつから太田神父がプロテスタントに鞍替えしたんだろうか?正しくは「イエスの・福音の小さい兄弟会 司祭」だと思います(普段は「太田神父」とお呼びして
いますが)。一例として、3年前に新潟教区の正義と平和委員会主催によるカトリック平和旬間行事で講演された
田神父についての文章をご紹介します。
 ということで、主催者ではないものの、勝手ながら
  太田 勝氏・・・NPO法人和歌山ホームレス支援機構理事長、司祭
と訂正させていただきました。
 もっとも、主催者ではないと書きましたが、和歌山クレサラ対協ホームページ
「会員弁護士・司法書士名簿」の中に私の名前が載っているところをみると、私も主催者の一員なのかもしれませんが。

 あと、企画のタイトルが「どう活かす―自立支援法」となっていますが、メルマガ(ブログ)のタイトルは「どう活かす―生活困窮者自立支援法」としました。何しろ、「自立支援法」ってたくさんありますからね。 

 参考までに、以下に、生活困窮者自立支援法、同施行令、同施行規則、和歌山市の施行細則をご紹介しておきます(支援法は一部のみ引用、施行令と施行規則はリンクのみ、和歌山市施行細則は全文引用)。

(関連法令)
生活困窮者自立支援法(平成二十五年十二月十三日法律第百五号)
   第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、生活困窮者自立相談支援事業の実施、生活困窮者住居確保給付金の支給その他の生
活困窮者に対する自立の支援に関する措置を講ずることにより、生活困窮者の自立の促進を図ることを目
的とする。
(定義)
第二条 この法律において「生活困窮者」とは、現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することが
できなくなるおそれのある者をいう。
2 この法律において「生活困窮者自立相談支援事業」とは、次に掲げる事業をいう。
一 就労の支援その他の自立に関する問題につき、生活困窮者からの相談に応じ、必要な情報の提供及び
助言を行う事業
二 生活困窮者に対し、認定生活困窮者就労訓練事業(第十条第三項に規定する認定生活困窮者就労訓練
事業をいう。)の利用についてのあっせんを行う事業
三 生活困窮者に対し、当該生活困窮者に対する支援の種類及び内容その他の厚生労働省令で定める事項を記載した計画の作成その他の生活困窮者の自立の促進を図るための支援が一体的かつ計画的に行われる
ための援助として厚生労働省令で定めるものを行う事業
3 この法律において「生活困窮者住居確保給付金」とは、生活困窮者のうち離職又はこれに準ずるものとして厚生労働省令で定める事由により経済的に困窮し、居住する住宅の所有権若しくは使用及び収益を目的とする権利を失い、又は現に賃借して居住する住宅の家賃を支払うことが困難となったものであって
、就職を容易にするため住居を確保する必要があると認められるものに対し支給する給付金をいう。
4 この法律において「生活困窮者就労準備支援事業」とは、雇用による就業が著しく困難な生活困窮者(当該生活困窮者及び当該生活困窮者と同一の世帯に属する者の資産及び収入の状況その他の事情を勘案して厚生労働省令で定めるものに限る。)に対し、厚生労働省令で定める期間にわたり、就労に必要な知
識及び能力の向上のために必要な訓練を行う事業をいう。
5 この法律において「生活困窮者一時生活支援事業」とは、一定の住居を持たない生活困窮者(当該生活困窮者及び当該生活困窮者と同一の世帯に属する者の資産及び収入の状況その他の事情を勘案して厚生労働省令で定めるものに限る。)に対し、厚生労働省令で定める期間にわたり、宿泊場所の供与、食事の提供その他当該宿泊場所において日常生活を営むのに必要な便宜として厚生労働省令で定める便宜を供与
する事業をいう。
6 この法律において「生活困窮者家計相談支援事業」とは、生活困窮者の家計に関する問題につき、生活困窮者からの相談に応じ、必要な情報の提供及び助言を行い、併せて支出の節約に関する指導その他家計に関する継続的な指導及び生活に必要な資金の貸付けのあっせんを行う事業(生活困窮者自立相談支援
事業に該当するものを除く。)をいう。
(市及び福祉事務所を設置する町村等の責務)
第三条 市(特別区を含む。)及び福祉事務所(社会福祉法 (昭和二十六年法律第四十五号)に規定する福祉に関する事務所をいう。以下同じ。)を設置する町村(以下「市等」という。)は、この法律の実施に関し、公共職業安定所その他の職業安定機関、教育機関その他の関係機関(次項第二号において単に「関係機関」という。)との緊密な連携を図りつつ、適切に生活困窮者自立相談支援事業及び生活困窮者住
居確保給付金の支給を行う責務を有する。
2 都道府県は、この法律の実施に関し、次に掲げる責務を有する。
一 市等が行う生活困窮者自立相談支援事業及び生活困窮者住居確保給付金の支給並びに生活困窮者就労準備支援事業、生活困窮者一時生活支援事業、生活困窮者家計相談支援事業その他生活困窮者の自立の促進を図るために必要な事業が適正かつ円滑に行われるよう、市等に対する必要な助言、情報の提供その他
の援助を行うこと。
二 関係機関との緊密な連携を図りつつ、適切に生活困窮者自立相談支援事業及び生活困窮者住居確保給
付金の支給を行うこと。
3 国は、都道府県及び市等(以下「都道府県等」という。)が行う生活困窮者自立相談支援事業及び生活困窮者住居確保給付金の支給並びに生活困窮者就労準備支援事業、生活困窮者一時生活支援事業、生活困窮者家計相談支援事業その他生活困窮者の自立の促進を図るために必要な事業が適正かつ円滑に行われ
るよう、都道府県等に対する必要な助言、情報の提供その他の援助を行わなければならない。
   第二章 都道府県等による支援の実施
第四条(生活困窮者自立相談支援事業)
第五条(生活困窮者住居確保給付金の支給)
第六条(生活困窮者就労準備支援事業等)
第七条(市等の支弁)
第八条(都道府県の支弁)
第九条(国の負担及び補助)
   第三章 生活困窮者就労訓練事業の認定
第十条
   第四章 雑則
第十一条(雇用の機会の確保)
第十二条(不正利得の徴収)
第十三条(受給権の保護)
第十四条(公課の禁止)
第十五条(報告等)
第十六条(資料の提供等)
第十七条(町村の一部事務組合等)
第十八条(大都市等の特例)
第十九条(実施規定)
   第五章 罰則
第二十条
第二十一条
第二十二条
第二十三条
   附 則 抄
(施行期日)
第一条 この法律は、平成二十七年四月一日から施行する。ただし、附則第三条及び第十一条の規定は、
公布の日から施行する。
(検討)
第二条 政府は、この法律の施行後三年を目途として、この法律の施行の状況を勘案し、生活困窮者に対する自立の支援に関する措置の在り方について総合的に検討を加え、必要があると認めるときは、その結
果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
(施行前の準備)
第三条 第十条第一項の規定による認定の手続その他の行為は、この法律の施行前においても行うことが
できる。
(政令への委任)
第十一条 この附則に規定するもののほか、この法律の施行に伴い必要な経過措置は、政令で定める。
 

和歌山市生活困窮者自立支援法施行細則(平成27年3月31日規則第54号)
(趣旨)
第1条 この規則は、生活困窮者自立支援法(平成25年法律第105号。以下「法」という。)の施行に関し、
生活困窮者自立支援法施行規則(平成27年厚生労働省令第16号。以下「省令」という。)に定めるもののほ
か、必要な事項を定めるものとする。
(生活困窮者自立相談事業の申請)
第2条 法第4条第1項に規定する生活困窮者自立相談支援事業の相談支援を受けようとする者は、市長に申
請しなければならない。
(住宅を喪失している場合の住居確保給付金の支給手続)
第3条 省令第13条の規定による申請をした者は、当該申請後に生活困窮者住居確保給付金(以下「給付金」という。)の支給を受けることができることを条件に入居することができる住宅を確保したことを明らか
にすることができる書類を提出しなければならない。
2 市長は、前項の書類の提出があったときは、省令第13条の規定による申請を審査し、当該申請を適正と認めたときは、当該申請をした者に対し、給付金の支給の対象となったことを証する書類(以下この条にお
いて「支給対象者証明書」という。)を交付するものとする。
3 市長は、前項に規定する申請の審査により、給付金の支給をしないことと決定したときは、理由を付し
てその旨を当該申請をした者に対し、文書により通知するものとする。
4 支給対象者証明書の交付を受けた者(省令第13条の規定による申請時において既に住宅を喪失している
ものに限る。)は、第1項に規定する住宅に係る賃貸借契約を締結するものとする。
5 前項の賃貸借契約を締結した者は、住宅に入居したときは、当該入居した日から7日以内に、その旨を文書により市長に届け出なければならない。この場合においては、当該住宅に係る賃貸借契約の写し及び住民票の写し(住民基本台帳法(昭和42年法律第81号)第22条第1項又は第23条の規定により届け出た後に交
付されたものに限る。)を添えなければならない。
6 支給対象者証明書の交付を受けた者(第4項に規定する支給対象者証明書の交付を受けた者を除く。)は
、居住する住宅に係る賃貸借契約の写し及び住民票の写しを提出しなければならない。
7 市長は、第5項の規定による届出があったときは、これを審査し、住宅確保給付金を支給することと決
定したときは、その旨を当該届出をした者に対し、文書により通知するものとする。
8 前項の規定は、第6項の規定による賃貸借契約の写し及び住民票の写しの提出をした者について準用す
る。
(給付金の支給額の変更)
第4条 給付金の支給を受ける者(以下「受給者」という。)は、次の各号のいずれかに該当するときは、市
長に対し、給付金の額の変更の申請をすることができる。
(1) 前条第5項又は同条第6項に規定する住宅の家賃が変更されたとき。
(2) 給付金の額が家賃の額に満たない場合において、給付金の支給を受ける期間中に収入が減少し、省令
第4条第1号イに規定する基準額を下回ることとなったとき。
(3) 受給者の責めに帰することができない事由により転居せざるを得ないとき、又は市長の指導により和
歌山市の区域内に存する他の住宅に転居したとき。
2 市長は、前項の申請があったときは、これを審査し、適正と認めるときは、給付金の額を変更する旨を
当該申請をした者に対し、文書により通知するものとする。
(給付金の支給期間の延長)
第5条 省令第12条第1項本文に規定する期間の経過後も生活困窮者住居確保給付金の支給を受けようとす
る者は、市長に申請をしなければならない。
2 市長は、前項の申請があったときは、これを審査し、当該申請をした者に係る生活困窮者住居確保給付金の支給期間を省令第12条第1項ただし書に規定する市長が定める期間とすることと決定したときは、その
旨を当該申請をした者に対し、文書により通知するものとする。
(給付金の支給の中止)
第6条 市長は、省令第15条の規定により給付金を支給しないこととしたときは、その旨を当該支給しない
こととした給付金に係る受給者に対し、文書により通知するものとする。
(給付金の支給の停止等)
第7条 受給者は、職業訓練の実施等による特定求職者の就職支援に関する法律(平成23年法律第47号)第7条第1項の規定による職業訓練受講給付金の支給を受けることができることとなったときは、その旨を市長
に届け出なければならない。
2 市長は、前項の届出があったときは、省令第18条第1項の規定により給付金を支給しない旨の決定をし
、当該決定をした旨を当該届出をした者に対し、文書により通知するものとする。
3 第1項の届出をした受給者は、職業訓練受講給付金の支給を受けることができる期間(以下この項において「職業訓練受講給付金受給期間」という。)が満了した場合(給付金の支給を受けることができる期間内にある場合に限る。)において、再び給付金の支給を受けようとするときは、市長に対し、当該職業訓練受
講給付金受給期間の満了を届け出ることができる。
4 市長は、前項の規定による届出があった場合において、当該届出をした者に対して再び給付金を支給す
ることと決定したときは、その旨を当該届出をした者に対し、文書により通知するものとする。
(常用就職及び就労収入の報告)
第8条 支給申請者又は受給者は、期間の定めのない労働契約又は期間の定めが6月以上の労働契約により
就職した場合には、市長に対し、その旨を届け出なければならない。
2 前項の規定による届出をした者は、当該届出をした日の属する月以後は、毎月収入の額を確認すること
ができる書類を市長に提出しなければならない。
(就労訓練事業の認定等の通知)
第9条 市長は、法第10条第1項の認定をしたときは、その旨を同項に規定する生活困窮者就労訓練事業を
行う者に対し、文書により通知するものとする。当該認定をしないことと決定したときも、同様とする。
(就労訓練事業の認定取消の通知)
第10条 市長は、法第10条第3項の規定により同条第1項の認定を取り消したときは、その旨を同項に規定
する生活困窮者就労訓練事業を行う者に対し、文書により通知するものとする。
附 則
この規則は、平成27年4月1日から施行する。
 

(忘れないために)
 「自由と平和のための京大有志の会」による「あしたのための声明書」(2015年9月19日)を、「忘れないために」しばらくメルマガ(ブログ)の末尾に掲載することにしました。

(引用開始)
  あしたのための声明書

わたしたちは、忘れない。
人びとの声に耳をふさぎ、まともに答弁もせず法案を通した首相の厚顔を。
戦争に行きたくないと叫ぶ若者を「利己的」と罵った議員の無恥を。
強行採決も連休を過ぎれば忘れると言い放った官房長官の傲慢を。

わたしたちは、忘れない。
マスコミを懲らしめる、と恫喝した議員の思い上がりを。
権力に媚び、おもねるだけの報道人と言論人の醜さを。
居眠りに耽る議員たちの弛緩を。

わたしたちは、忘れない。
声を上げた若者たちの美しさを。
街頭に立ったお年寄りたちの威厳を。
内部からの告発に踏み切った人びとの勇気を。

わたしたちは、忘れない。
戦争の体験者が学生のデモに加わっていた姿を。
路上で、職場で、田んぼで、プラカードを掲げた人びとの決意を。
聞き届けられない声を、それでも上げつづけてきた人びとの苦しく切ない歴史を。

きょうは、はじまりの日。
憲法を貶めた法律を葬り去る作業のはじまり。
賛成票を投じたツケを議員たちが苦々しく噛みしめる日々のはじまり。
人の生命を軽んじ、人の尊厳を踏みにじる独裁政治の終わりのはじまり。
自由と平和への願いをさらに深く、さらに広く共有するための、あらゆる試みのはじまり。

わたしたちは、忘れない、あきらめない、屈しない。

     
自由と平和のための京大有志の会
(引用終わり)

自立支援法シンポ 

「避難の権利」を求める全国避難者の会が設立されました

 今晩(2015年10月30日)配信した「メルマガ金原No.2259」を転載します。

「避難の権利」を求める全国避難者の会が設立されました

 昨日(10月29日)、参議院議員会館において、「『避難の権利』を求める全国避難者の会」の設立集会が開かれました。
 東京新聞の事前報道と毎日新聞の事後報道をご紹介しておきます。
 
東京新聞 2015年10月25日 朝刊
原発避難の権利確立を 全国組織、29日に設立集会

(抜粋引用開始)
(略)
 「さまざまな避難者に呼び掛けが伝わる工夫を」「住宅支援問題の取り組みは外せない」
 七日夜、札幌市のアパートで福島市から妻子と自主避難した介護サービス業中手聖一さん(54)が、
インターネット電話「スカイプ」で設立準備会の会議に臨んでいた。
 準備会メンバーは、福島県やその近隣から避難し、十都道府県で暮らす約十五人で、今夏ごろから話し
合いを重ねてきた。この夜も活動方針や入会方法など、会議は三時間を超えた。
 同会が求める避難の権利を、中手さんは「避難する人もとどまる人も、自分の意思で選択できるよう等
しく支援を受けられること」と説明する。
 政府は住民が帰還できる環境が整ったとして、これまでに福島県楢葉町などの避難指示を解除。放射線量が高い帰還困難区域以外の他の地域も二〇一七年三月までに解除する方針だ。福島県も自主避難者に対
する住宅無償提供を同じ時期に打ち切ることを決めている。
 こうした状況に中手さんらは「避難の権利が切り捨てられようとしている」と危機感を抱き、政府と交
渉できる全国組織が必要と考えたという。
 会では、避難の支援や健康診断の充実を政府に求めていくとともに、避難者の実態把握などにも取り組む方針だ。強制避難、自主避難にかかわらず入会でき、被災当時、どこにいたかも問わない。経済的な理
由などで帰還した人も参加可能だ。
 避難者が抱える課題は一人一人異なり、行政からの支援にも格差がある。避難指示の解除により、自主避難の立場に変わる人が増える可能性もある。福島市から京都府木津川市に家族で避難し、中手さんと共に共同代表に就任予定の宇野朗子(さえこ)さん(44)は「お互いに理解して支え合い、分断を乗り越
えたい」と話している。
(略)
(引用終わり)

毎日新聞 2015年10月29日 23時13分
福島原発事故:住宅や健康・医療保障要求へ 避難者の会

(抜粋引用開始) 
 東京電力福島第1原発事故の避難者らでつくる「『避難の権利』を求める全国避難者の会」が29日、参院議員会館で設立集会を開いた。避難者同士が団結し、避難生活を支える住宅や健康・医療の保障など
を国や自治体に求めることを決めた。
 集会には約130人が参加した。政府と福島県は2017年3月までに「帰還困難区域」を除いて避難指示を解除し、自主避難者へのみなし仮設住宅の提供を打ち切る方針を示しており、「原発避難者が消さ
れようとしている」との危機感を訴える声が相次いだ。
 福島県いわき市から埼玉県内に2人の子どもと自主避難する河井加緒理さん(34)は「子どもたちか
ら『いつここを出ていかないといけないの』と聞かれてつらい」と訴えた。
 避難指示区域内からの強制避難者、区域外からの自主避難者のほか、やむを得ず帰還した人も入会でき
る。問い合わせは
hinannokenri@gmail.com12月12日に京都市で第2回集会を開く予定。【日野行介
(引用終わり)

 10月17日付で公表された同会の設立趣意書を全文ご紹介します。

「避難の権利」を求める全国避難者の会 設立趣意書
(引用開始)
 本会の設立にあたり、原発事故により自らの生活の場が長期にわたる放射能汚染を被った私たちには「避難の権利」があることを、改めてここに表明します。そして、避難の権利を求めるあらゆる当事者がつながりあい、その権利保障を求めて活動していくために、この会を設立します。

 東京電力福島原発事故が起こってからの4 年7か月、この国の政府は避難を福島だけの問題にし、復興の問題にすり替えて、避難者の権利をないがしろにしてきたといわざるを得ません。そして「原発事故子ども・被災者支援法」をいよいよ骨抜きにして、避難指示解除・賠償打ち切り・帰還政策を進め、“避難者ゼロ”へ向け猛進しています。いま避難者は、その存在を無き者にしようとする力に抗って、つながり合い、力づけ合って避難の権利を求めていくべき時が来ています。

 汚染地に居住する者は、避難するかまたは留まるかの自己決定を保障されるべきで あり、それは決して被曝か貧困かの選択を強いるものであってはなりません。「被曝なき居住」「貧困なき避難」は、私たちの生きる権利であり基本的な人権です。これから私たちは、自らの権利として実質的な保障の獲得を目指していきます。そのため にはまず、避難当事者による運動が不可欠であると自覚して、私たちはこの会の活動 をスタートします。また、二度と私たちのような被害者を生まないために、すべての原発の廃止を求める立場を明らかにして活動していきたいと思います。

1.[活動の重点課題]
 全国の避難者、帰還者および避難の権利を求める在住者のネットワーキング、避難の権利確立に必要な
施策や賠償・立法等の取り組みを活動の両輪とし、当面の重点課題を次の5つとする。
① 移住・保養
② 住宅保障
③ 健康・医療
④ 避難者の実態把握
⑤ 全国的なつながり作り

2.[構成メンバー]
 政府指示の有無にかかわらず、原発事故避難者、帰還者の個人の会員により構成する。

2015 年10月17日 「避難の権利」を求める全国避難者の会準備会
(引用終わり)

 昨日開催された設立集会において、予定通り、中手聖一さんと宇野朗子(うのさえこ)さんが共同代表に選ばれました。
 そして、多くの避難者の皆さんが自らの思いを語られたのですが、いくつかアップされている動画の中から、三輪祐児さんが撮影されたものをご紹介します。

20151029 UPLAN「避難の権利」を求める全国避難者の会設立記念集会(2時間08分)


 リレートークの中から、郡山市から大阪市に母子避難されている森松明希子さん(原発賠償関西訴訟原告団代表)のスピーチを文字起こししました(55分~1時間06分)。聞き間違っていたらご免なさい。
 森松さんだけではなく、全ての避難者の皆さんの声に耳を傾けられますように。

「皆さん、こんにちは。森松明希子と申します。私は、福島県の郡山市から大阪市に避難をしています。子どもは2人いまして、母子避難をしています。夫は、今も福島県郡山市で同じ仕事をずっと続けています。0歳で大阪に連れてきた私の娘は、先週、5歳になりました。0歳の時から父親と一緒に暮らすという生活を知りません。3歳(の時)に連れてきた上の子は、福島県民でありながら、大阪の小学校に昨年入学して、今小学校2年生をやっております。震災の日は、東北弁を覚え始めた、ずーずー弁を話し始め
た可愛い盛りでしたが、今はばりばりの関西弁をしゃべります。(笑)
 避難を続けて4年半以上が経ちましたが、あの時と状況は何も変わっていないと私は感じます。今日は「「避難の権利」を求める全国避難者の会」の設立記念集会で発言の場を与えてくださいまして本当にあ
りがとうございます。
 皆さん、会場の斜め後ろを振り返って、ちょっとあの白板をご覧いただけますでしょうか。関西から持ってきました。チラシにもお配りしていますように、東日本大震災避難者の会 Thanks & Dreamが、関西に
避難をした人たちの声を一生懸命この1年をかけて集めました。例えば、川柳「避難者あるある575」を集めました。こんな川柳があります。「安全論 健康被害を 無きことに」(ペンネーム:空さん)。「母子避難 私が倒れたら どうなるの・・・」(「けっこう切実です」さん)。「避難して 底を尽きてく 我が貯金」(ペンネーム:「どなたか庭の除染土お引き取りいただけますか?」さん)。「子の不調 その都度ひばくに 思いはせ」(ペンネーム:症状ありさん)。こんな形で、声を集めれば、こうしてスピーチをしに大阪から、関西から駆けつけれないけども、多くの思いを持った避難者の方たちが、この日本の国には、北海道から南は沖縄まで、全国ばらばらに散らばって、今なお避難生活を続けています

 今日は、全国各地で「避難の権利」の確立を求め、日々ご尽力くださっている多くの方々がこの会場でも集まっておられるわけで、私は今日何を話そうか考えました。私の考える「避難の権利」とは「生きる
権利」ということの意味をお伝えしたいと思います。
 「避難の権利」とは、人が命の危険に直面した時に、自分の身を守るために、そこから待避することは
当然の権利であり、憲法で保障されている基本的人権です。なぜ「避難の権利」が大切なのか。人の命や生命に直接関わる権利だからです。多くの人たちが、身の危険に直面したら逃げるのが当然で、逃げることは簡単にできると思い込んでいます。でも、今回3.11後の東京電力福島第一原発事故を経験して、そんなあたりまえのことができない社会的状況があることを、私たちは身をもって知ったと思いますし、今5人の方たちが登壇されて仰ってたことのように、私も含めてですが、現在も避難した人たちは、苦境に立たされています。それは、避難した人たちだけでなく、避難していない人もです。あまりにも当たり前過ぎて、憲法の人権カタログに記載する必要もないと思われていたことも、現実に原子力災害という人災を通じて、そしてその経済的利害関係がからむ社会構造の中で、あまりに当たり前の権利が踏みにじられていることに気づいた訳なんです。気づいた人は、それにきちんと社会に、具体的に、分かりやすく、理解が得られるように、訴えなければならないと私は思います。自分の選択の正当性だけを主張していたのでは、いろんな立場の人が、立場を超えて繋がることはできません。その時に、憲法にはこういう条文もあります。憲法13条、「個人の尊厳」というものです。この「個人の尊厳」に基づいた基本的人権の尊重というところで、それを道しるべにして進んで行くべきだと私は思います。それが、1人1人が大切にされ、生活の置かれた状況の、それぞれの違いを乗り越えて、互いに尊重しながら真の復興に向かえる
唯一の方法であると私は考えます。
 そして、何度も繰り返しますが、人の命や健康よりも大切にされなければならないものはないのです。経済活動を支えるのも人です。復興に携わるのも人です。原子力の事故の収束にあたるのも人です。それらの人は、生きてこそ、健康であってこそ、そして命を繋いでこそ、そういうことに携われるのです。この
最も大切で、そして普遍的で世界共通のこと、命を守る行為が原則であるということに一致点を私は求め
るべきだと思うのです。
CIMG4626 「避難の権利」は、何度も申し上げますが、避難をした人たちだけの正当性を求める権利ではありません。ひとたび、原子力災害を経験した私たちは、何が最も大切にされなければならないか、それを考えて行動に移し、アクションを起こし、具体的に進んで行くのが、次の世代にバトンを渡す大人の責任だと私は思います。この会場は、国会の参議院議員会館で、国会議員の先生方も今日はたくさんお見えになっています。私は、関西で今地方裁判所に「避難の権利」を求めて、近畿地方では、大阪地方裁判所、京都地方裁判所、神戸地方裁判所に、それぞれ100人以上の避難者たちが集団で提訴をしています。損害賠償という形をとっていますが、日本の国は民事訴訟か刑事訴訟しか出来なくて、憲法訴訟は出来ないからやっているんです。多くの全国で起こっている1万人を超える原告になった人たちは、みんな口を揃えて言います。「この裁判は、人権救済裁判なんだ」と。子ども被災者支援法という法律が出来ても、中身がなく、骨抜きにされ、店ざらしの状態では、具体的に人は救えません。もう頼るところは、司法裁判所しか
なくなったから、裁判所にお願いをしている訳です。
 普通の暮らしをしていた、皆さん(と)同じように普通に暮らしていた普通の人たちが、裁判を起こしてまで「避難の権利」を訴えなければばらないんですか。危険を感じたら逃げるのが当たり前だと私は思うのです。どうして、命を守るという原則的な行為が、裁判所にまで訴えて、確立をしなければならないのか、というところに私はとても今の現状のおかしさを感じます。そのことを、今日はこんなに大勢の心
ある皆さんと共有できて、本当に私は嬉しく思います。
 私は、大阪の方に避難をしていますから、大阪や兵庫や京都、滋賀、奈良、和歌山、そこに散らばる人たちと声を合わせて、顔は出せない、先ほども言われていました。私たちの間では関西ではその人たちのことを「隠れ避難民」と呼んでいます。なぜ隠れなければならないのか。「隠れキリシタン」ならぬ「隠れ避難民」だと。最初にご登壇の宍戸さんも仰っていました。数さえ分からない。こんな現状で、本当に世界に対して恥ずかしくないんでしょうか。そういう風に私は思います。人類史上、チェルノブイリの事故も
経験しています。避難しているお母さんたちが一番切実にその教訓として声を聞き取って参考にしているのが、チェルノブイリのお母さんたちの証言です。そして今福島のお母さんだけでなく、福島の被害に遭った人、先ほども堂々と「私たちは被害者です」と仰っていた登壇者の方もおられました。声を合わせて、私は命を守る行為が原則であるということを社会に伝え続けていきたいと思います。でも、1人で声を上げることは、反発も大変あります。それは、山本議員が一番よくご存知だと思いますけれども、テレビの向こう側で本当に励まされていました。1人1人が勇気ある行動と、バッシングにも耐えながら、原
則的な行為は、そして普遍的なことは何なのか、命を守る行為が原則だとお思いであるならば、「避難の権利」の確立を求めて一緒に歩んでください。長い時間、ありがとうございました。(拍手)」
 
※写真は、去る2015年10月15日(木)、原発賠償関西訴訟の第6回口頭弁論が大阪地裁で開かれる日の正午過ぎ、淀屋橋で道行く人に「ふつうの暮らし 避難の権利」への理解を訴える森松明希子さんら、原告団と弁護団のメンバー(撮影:金原)。

(参考サイト)

(忘れないために)
 「自由と平和のための京大有志の会」による「あしたのための声明書」(2015年9月19日)を、「忘れないために」しばらくメルマガ(ブログ)の末尾に掲載することにしました。

(引用開始)
  あしたのための声明書

わたしたちは、忘れない。
人びとの声に耳をふさぎ、まともに答弁もせず法案を通した首相の厚顔を。
戦争に行きたくないと叫ぶ若者を「利己的」と罵った議員の無恥を。
強行採決も連休を過ぎれば忘れると言い放った官房長官の傲慢を。

わたしたちは、忘れない。
マスコミを懲らしめる、と恫喝した議員の思い上がりを。
権力に媚び、おもねるだけの報道人と言論人の醜さを。
居眠りに耽る議員たちの弛緩を。

わたしたちは、忘れない。
声を上げた若者たちの美しさを。
街頭に立ったお年寄りたちの威厳を。
内部からの告発に踏み切った人びとの勇気を。

わたしたちは、忘れない。
戦争の体験者が学生のデモに加わっていた姿を。
路上で、職場で、田んぼで、プラカードを掲げた人びとの決意を。
聞き届けられない声を、それでも上げつづけてきた人びとの苦しく切ない歴史を。

きょうは、はじまりの日。
憲法を貶めた法律を葬り去る作業のはじまり。
賛成票を投じたツケを議員たちが苦々しく噛みしめる日々のはじまり。
人の生命を軽んじ、人の尊厳を踏みにじる独裁政治の終わりのはじまり。
自由と平和への願いをさらに深く、さらに広く共有するための、あらゆる試みのはじまり。

わたしたちは、忘れない、あきらめない、屈しない。

     
自由と平和のための京大有志の会
(引用終わり)
 

(付録)
『世界』 作詞・作曲:ヒポポ田 演奏:ヒポポフォークゲリラ
 

11/28石川康宏氏講演会(国賠同盟和歌山県本部創立30周年記念講演会)へのお誘い

 今晩(2015年10月23日)配信した「メルマガ金原No.2252」を転載します。

11/28石川康宏氏講演会(国賠同盟和歌山県本部創立30周年記念講演会)へのお誘い

 3日前に「安保法制:「5党合意」「附帯決議」「閣議決定」をどう読むか(9)」でとりあえず逐条解説を終え、一昨日は「憲法53条後段に基づく臨時会召集要求と国会の先例」を調べ、昨日は
「放送大学「日本美術史('14)」」をめぐって怒りの声を上げ、ということで、いささか疲れました。それに、今日は時間もありません。
 こういう時の奥の手はほぼ2つ。1つは「動画(番組)紹介」であり、もう1つは(主に地元和歌山の)「行事案内」です。
 とはいえ、「動画(番組)紹介」にしても「行事案内」にしても、私は手抜きさせてもらっても、紹介する中身に手抜きはありません。

 今日お送りするのは、「行事案内」の方です。
 しかも、記念講演をされるのが経済学者の石川康宏さん(神戸女学院大学教授)という、私がかねて一度は講演を聴きたいと願っていた方なのです。・・・が、当日は、放送大学和歌山学習センターで面接授業を受講する予定になっているのでした。まことに残念です。
 和歌山市周辺で関心をお持ちの方に是非参加をお勧めしたいと思います。

 以下に、チラシの文字情報を転記しますが、読んでいただければ分かるとおり、このチラシが完成した
時点では、安保関連法案はまだ成立していませんでした。11月3日に関西大学の高作正博教授(憲法学)をお招きすることとした「守ろう9条 紀の川 市民の会」主催の第12回憲法フェスタと同様、企画者や講師は、講演の演題をどうするか、非常に頭をひねっただろうと思います。
 そういえば、憲法フェスタも国賠同盟の企画も、チラシはどちらも南本勲さん(九条の会・わかやま事
務局)が担当されたのでした。

チラシ文字情報から引用開始)
治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟和歌山県本部
創立30周年記念講演会

 戦前は、「戦争はいやだ」と言っただけで「治安維持法」で逮捕され、厳しい拷問にあいました。全国
で虐殺された人は93人、獄死者などは421人で、和歌山県関係者でも逮捕・投獄された人が300余人もいます。それでも彼らはひるまず、「侵略戦争反対!」と命がけでたたかいました。彼らの勇気ある行動があって、今の憲法に「戦争放棄」や「基本的人権」などが取り入れられました。戦争を放棄し、戦力と交戦権を否認した憲法9条は、「二度と戦争はしない」という私たち日本人の決意であるとともに、大きな被害を与えたアジアの人たちへの約束でもあります。
 安倍政権は、その憲法9条を根底から破壊する「戦争法案」を衆議院で強行可決し、参議院での可決を狙い、日本を「戦争する国」にしようとしています。そして、戦後70年談話にみられるように、表面だけを取り繕い、先の戦争をまともに反省し謝罪することもしません。しかし、大多数の国民は「戦争法案
」に反対し、その声は若者たちも含めてますます大きく広がっています。
 私たち「治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟(略称:国賠同盟)」は平和憲法の制定に大きく貢献した治安維持法の弾圧犠牲者の名誉回復を求める団体です。国賠同盟和歌山県本部は1985年3月24日に創立され、今年で30周年になります。30周年記念行事として記念講演会を開催いたします。日本を「戦争する国」にさせないために、その決意を固める場にしたいと思います。多数のご参加をお願いいたします。

日時:2015年11月28日(土)
    午後1時30分~4時(開場1時)
会場:ルミエール華月殿(6階 富士の間)
         和歌山市屋形町2-10 TEL:073-424-9392
◎犠牲者の親族より「治安維持法と戸臺俊一(とだい・としいち)」
◎記念講演
    演題:
 「歴史の歪曲と戦争する国づくりを許さない」
   講師: 石川康宏氏(神戸女学院大学教授) 

※同日午後5時から開催しますレセプションに参加をご希望の方は事前に国賠同盟和歌山県本部までお申し込みをお願いいたします

治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟和歌山県本部
〒640-8434 和歌山市吉田102 国労会館2階 TEL/FAX:073-422-7076
(引用終わり)

 なお、私のメルマガ(ブログ)で石川康宏さんを取り上げたことが一度だけありました。2012年11月28日に(奇しくも上記講演会のちょうど3年前)、札幌市で開かれた北海道社会保障推進協議会主催による「社会保障マスター養成第3講座」で「日本の政治と