2005年09月10日 20:58

北へ 其乃捌 札幌〜東追分

96704696.JPG 長月二日(金) 晴
 札幌で一夜を明かしたわかぞ〜、今日の朝は大分余裕があります。部屋でごろごろしているのももったいないこと山の如しなので、どっかでかけましょう。選択肢としては、函館本線札幌〜小樽と学園都市線があります。小樽には、運河プラザや、『最終兵器彼女』で重要な鍵を握る旭展望台、地獄坂など、見所多しなのですが、そこまで見物する時間はないので、学園都市線でお茶を濁します。札幌に帰った後、千歳線で新千歳空港まで行ってから千歳に戻ります。千歳から乗るのはたった一輌の気動車。通勤電車が行き交う千歳線には全く似合いません。
 気動車は南千歳から石勝線に入ります。途端に景色は札幌郊外の住宅地からヒグマが出そうな原生林に……。原生林を抜けると広い盆地に出ます。ここが追分。夕張線(後の石勝線)と室蘭本線が分岐することからこの地名がついたそうです。で、わかぞ〜は追分の次の東追分で下車します。駅の周りは牧草地で人家は片手で数え切れるくらいしかありません。駅の出口には巨大なくもの巣が張っていました。定期的に人の行き来があるところにこんなくもの巣はできません。ということは、少なくとも半年以上はこの駅を利用した人はいないということに……。こんな都会の感覚なんかまるっきり通用しない駅で下車したわかぞ〜、ついに頭がおかしくなったわけではありません! 実は、ここ北海道勇払郡追分町はZONEの名曲中の名曲といえる『secret base〜君がくれたもの〜』のPVの撮影地で、その多くはこの東追分駅周辺で撮られたものなのです。
 まず、第一のチェックポイント、駅の裏にあるサイロです。このサイロはPVで謎の少年たちが遊んでいたところなのですが、なんか、見当たりません。ここかなと思ったところにはブルーシートが置いてありました。もしかすると、取り壊されてしまったのかもしれません……。
 気を取り直して、第二のチェックポイント、冒頭で千歳バスが走ってくる田舎道に行きます。その道は、東追分駅のポイント設備を雪から守るスノーシェッドが途切れたところにある「東通り踏切」という踏切の近くにありました。道を境に左が牧草地、右がトウモロコシ畑です。なんか、妙に牧歌的な景色で、さだまさしでなくてもあ〜あ〜歌いたくなってきます。しかし、この道、未舗装のくせに大型ダンプカーがバンバン行き交います。ぐはっ! 砂埃が目に! わかぞ〜が乗ってきた普通列車は一輌ぽっきりでしたが、この石勝線は飛行機も道央自動車道もかなわないJR北海道の高速路線、帯広・釧路に向かう十輌編成くらいの気動車特急が怒涛のようなスピードで通過していきます。これも恐い……。
 その後、駅近くを通る道道462号線を東へと歩きますが、この道道、追分方面から夕張への抜け道になっているようで、乗用車だけでなく、道央自動車道に行けよ! というくらいの大型トレーラーなんかが轟々行き交います。あのタイヤに巻き込まれたら、わかぞ〜は ぴぴるぴるぴるぴぴるぴー♪ も効果がないほど木端微塵の肉塊と化して北海道の大地に返っていってしまうことでしょう。そんなのは嫌なので、道道を外れて、田んぼの真ん中を行く農道を歩くことにしました。農道を歩いていると、ゴゴゴという音がします。雷でしょうか? これはまずいことです。周辺は広大な田んぼで、電柱すらまばらです。こんなところに突っ立っていたら、雷は間違いなくわかぞ〜目がけて落ちてきます。どうしようと思って空を見上げていると、飛行機が一、二、三……。どうも、ゴゴゴという音はあの飛行機の音のようですが、あれはどう見ても旅客機ではありません。紙飛行機みたいな三角形のシルエットは間違いなく戦闘機のものです。それが、旅客機ではありえないようなスピードで飛んでいきます。さ、札幌空襲!? いや、多分、千歳基地の空軍です。多分……。牧歌的な景色ですが、ここは間違いなく、空都・千歳の近郊なのです。よく考えると、札幌から鉄道で一時間ほどのところにこんな景色が残っていること自体、不思議な感じがします。大阪近郊なら「都心まで五十分」とかいう看板が立っているでしょうし、札幌近郊でも、札幌駅から一時間の石狩当別はベッドタウンになっていました。列車本数さえ増やせば十分、住宅地として売り出せるはずです。それなのに、この景色……。もしかすると、この田んぼの下に……。
 田んぼの中を一時間ほど歩いていると、ゴルフ場が見えてきました。目的の場所はもうすぐです。ゴルフ場の脇の山道に入ると、右に分かれる砂利道が見えてきます。「安平墓地」という案内が立っていて、お地蔵様が安置されていました。……墓地? インターネットで入手した地図にはここだとありますが、墓地……? とりあえず砂利道に入ってみます。わかぞ〜にはよくわからない種類の木や、笹なんかが生い茂っていて、なんか、激しく不気味ですが、歩いていくと、急に視界が開けました。あのゴルフ場の裏に出たのです。目標のものは……、……、……(汗)、ありました。本当にありました。あの、赤い消防自動車が!!
 『ZONE CLIPS 01』を持っている人はその『secret base〜君がくれたもの〜』をチャプターで観てください! 『夢ノカケラ』のCDがある人はジャケットを見てください! その消防自動車です!!ついに会えました……。
 ボロボロに錆びた消防自動車は草の中に埋もれるようにして停まっていました。季節は夏の終わり、蝶が戯れ、赤蜻蛉が朽ちかけたサイドミラーにとまります。
  この車はいつからここにあったのでしょうか?
  何で、こんなところにあるのでしょうか?
 ZONEのPVに出たからとか、そういう以上に、この車にはすごいものを感じました。無念……ではありません。死……でもありません。やすらぎ……? ちょっと近いような気がしますが、違います。消防自動車は何かを語りかけてきますが、それは「言葉」ではないので、無理やり「言葉」にすることはできません。写真を撮ったり、運転席に座って、「次は篠路一条八丁目〜」とか言ってみましたが、消防自動車は、拒絶することもなく、また、迎え入れてくれることもありません。この消防自動車にとっては、わかぞ〜、そして、ZONEの皆さんまで、蝶や蜻蛉と同じような存在なのだろうと思います。
 わかぞ〜は、消防自動車の前に座って、札幌駅北口のサンクスで買ったおにぎりを喰らいました。夏の終わりの空は、どこか寂しげで、雲の合間から見える青空を戦闘機が横切っていきました。涼しい風に夏草が揺れます。

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