わく三の「ま、こんなもんでしょ。」

日々の『こんなもん』

2007年04月

昨年の暮れにガースーが僕のジャージを履いて帰った。
長い間返してくれなかったが、僕の再三の勧告の末やっと持って来てくれる事になった。

『仕方ないから持って来てやったわよ!もう疲れちゃったわよ〜なんで私が持ってこなくちゃ行けないのよ〜!普通だったらあんたが取りにくるべきなのよ!』

....それはおかしくないか?
勝手に履いて帰ったのはあんただろ!?
だったら返しにくるのは常識だ。

『こんなもん借りるんじゃなかったわ!』
と言って、鞄の中からジャージを取り出した。

それは新聞紙で包まれている。
まるで風呂敷に包む様なそんなイメージだろう。
ガムテープで止めてあるが、新聞紙からジャージの袖口が見えている。
包むのならちゃんと包んで欲しい。

しかし何故新聞紙に包んだのか....八百屋じゃないんだから。

僕はその新聞紙を破きジャージを取り出した。

「あれっ!?」
見た事のないジャージが出て来た。
....僕のジャージじゃない。
ジャージには学校名とガースーの本名が刺繍してある。

「あの...これ、僕のじゃないんですけど...」

ガースーはそのジャージを手に取り
『あ!?これ、娘の高校の頃のジャージだわ。昨日まで私が寝るとき履いてたんだけど、今朝洗濯しようとして間違えて持って来ちゃったわよ!』

(...昨日まで履いていた?)

『あんたが悪いのよ!早く持ってこいって焦らすから!これでどっこいどっこいね!』

(...僕が悪いのだろうか?)

新聞紙の中からもう一つ何か出て来た。
それは黒いパンティーだった。

『ちょっとあんた何持ってんのよ!私の下着じゃないの〜もう油断も隙もないんだから!!』

(...僕は出て来た黒い物を掴んだだけなのに。)
黒いパンティー...あの記憶を消して欲しい。

その後、ここまでの交通費のかわりという事でお酒を奢らされてしまった。

(...何故僕が?)

去年の暮れに貸したジャージは今だに返ってはこない。
本当に困ったおばちゃんだ。

僕には56歳の女性の友達がいる。
その名は『ガースー』

ガースーは色々な物をすぐに壊す。
鞄のファスナー。
僕のあげたサングラス。
他人の自転車など多数。
『もう色んな物、壊れちゃってしょうがないわよ〜!』
自分が一番壊れてる事に、まだ気づいていない。
そんなおばちゃんだ。

去年の暮れガースーの家のお風呂が壊れた。
お湯が出なくなったので、ガースーが思いっきり叩いたらお湯のかわりに煙が出てきたそうだ。
そのお風呂はただ接触が悪くてプラグを変えれば簡単に直る程度だったのだが、ガースーが思いっきり叩いたおかげで改装する程に発展してしまったらしい。
どんな叩き方をしたのだろう?

2週間自宅のお風呂に入れなくなったガースーは、僕の部屋にシャワーを借りに来た。

『見ちゃ駄目よ!絶対に、絶対に見ないでね!』
そう言ってシャワーに向かった。
『本当に見ちゃ嫌だからね!』
それを言う為に、一回戻って来た。

これだけ念を押されると、のぞけと言われている様な。
僕は自分の母親より年上の女性のシャワーをのぞく気など一切ない。

少しするとガースーがシャワーを終えて戻って来た。
僕のジャージを勝手に着ている。
「なんで俺のジャージ勝手に着てるんだよ!?」
『いいじゃない!ちょっと臭うけど私は気にしないわよ!』
そんな事を言ってるんじゃない...

『ねぇ、ちょっとコンビニまで行ってレモンハイ買って来てよ!』
「何故俺が!?」
『このジャージの格好じゃ外歩けないわよ!恥ずかしいし、みっともないでしょ!』
「....」
仕方がないからコンビニまで行く事にした。
「パシリか!?」

レモンハイを買って戻ると、部屋が暗い。
電気を付けると、ガースーが僕のベットで寝ていた。
既に深い眠りに入っている。
「このままずーと、起きなきゃいいのに...」
そんな事になったら僕のベットは占領されたまま。
それはそれで困る。

足で蹴りを入れてやさしく起こしてやった。

ガースーはレモンハイを見るなりそれに飛びつき飲みはじめた。
猫まっしぐら状態。
『やっぱり私の恋人はレモンハイの味だわ』
恋人がレモンハイの味って...意味が分からん。

500mlのレモンハイを4本あけると、ガースーはもういい気分。
『決めた〜私今日ここに泊まるわ』
「勝手に決めるな!帰れ!」
『帰ったら、寂しいでしょ!?』
「清々する!帰れ!ハウス!!!」
『わかったわよ!帰るわよ!もうあれだからね〜もげちゃう(?)からいいわよ!』

やっと立ち上がってくれた。しかし、ジャージを履いたままだ。
「おい、ジャージは置いて行けよ」
『もうあれだから、このまま帰るわ!メンドクサイ』

ジャージで外を歩くのは恥ずかしいとか、みっともないとか言っていたくせに結局はジャージのまま帰って行った。
「なんなんだ!?」


先日ガースーが『自分の子分』と呼んでいるおばちゃん達と飲んでいた。
僕が顔を出すと、もう既にベロベロ。
そんな状態で喋りはじめた。
『これがねぇ、わくぞう!私がねぇコイツの家でシャワー浴びてベットで寝ててもねぇ、手ぇ出してこないのよ!おかしいでしょ!?普通の男だったら手を出してくるわよねぇ〜!わくぞうは男として意気地なしなのよ!』

...凄い言われようだ。...が、全然悔しくない。

『もう抱くチャンスあげないわよ!』
....そんなもんいるかーー!!!

本当にガースーはしょうがない。

例の占い師の所に行って来た。
怪しいニオイがプンプンしたが、逆にそのニオイに惹かれてしまった。

電話をかけると『北千住のミニストップの前』と待ち合わせ場所を指定された。
『私ははがきを持って待っています!』

時間ちょうどに着くと、女性がはがきを遺影のようにしっかりと持っていた。
女『運勢診断の方ですね?案内させて頂きますね〜』
とあるマンションに連れて行かれた。

その占いの店の看板がない。
というか、占いをやっている事すら感じさせない普通のマンションだ。
僕『看板ないんですね?』
女『....』
僕『あの〜看板ないんですね?』
女『....ありますよ!』
僕『どこにあるんですか?』
女『....こちらの部屋になります。入って少々お待ちください。』
結局看板の事については一切応えてくれなかった。
....怪しい。

しばらくすると、男の人が入って来た。
僕の部屋に来て占いをした『後藤』という男性だ。

後藤『いやーやっぱり来ましたか!?今人生の分岐点で一番大事な時期ですからねー!』
後藤という男は僕の目の前の席には座らず、僕の隣に座った。
後藤『あなたはとても運がいいんですね〜今日は僕もとてもお世話になっている凄い先生に運勢を見て貰える事になったんですよ。いつもは忙しくて絶対に見てもらえないんですが、あなたが人生の分岐点という事でわざわざ時間をつくって下さったんですよ〜運勢がいい方向に向かって来てますね〜』
僕『はぁ〜。ありがとうございます。』

部屋の中に変な曲が流れはじめた。
ヒーリングミュージックの様な、クラシックの様な...しかし気持ちの悪い音だ。
この音で洗脳するつもりかもしれない。
...怪しい。

ドアが開いて30代後半位の女性があらわれた。
結構な美人さん。
後藤『先生今日はありがとうございます!』
先生『人生の分岐点ですから、運勢を良くしていい方向に進んで行きましょう!』
先生は僕に手を差し出し握手を求めて来た。
先生『よろしくお願いします!わきぞうさん!』

いきなり名前を間違えられた。
...これは怪しい。

先生はまず運勢について説明を始めた。
先生『運勢というものは変わりやすいものです』
『はぁ』と僕は軽くうなずいた。
先生『だからと言ってビクビク怖がる必要もないんです』
『ホ〜なるほど!へぇ〜!』と後藤は深く感心していた。
(お前も先生と呼ばれてるんだからこれ位知ってるだろ!?)

「(コンコン)失礼します!」
先ほど案内してくれた女性がお茶を持って入って来た。
僕の前に日本茶が入った湯のみが置かれた。
まさかこのお茶を飲んだら意識が朦朧としてくるんじゃ!?
...怪しい。

そのお茶を後藤と先生が口を付けるのを見てからこちらも動こうと思ったが、一向に口を付ける気配がない。
やっと後藤がゴクゴクと飲みはじめた。
...と思ったら、お茶の入った湯のみはそのまんまだ。
後藤は自分の鞄からお茶のペットボトルを取り出して飲んでいる。
何故湯のみに入ったお茶は飲まない!?
....やっぱり怪しい。

その後、先生の運勢に関する話が続いた。
その度に『ホ〜!!へぇ〜!!』とうるさい後藤。
そして僕の名前診断へと進んでいく。

先生『とてもいい画数ですよ!今までとても苦労されたんですね〜!』
これはお決まりの台詞なのだろうか?
先生『ただ今後は、もっと苦労されるかもしれません。画数から見ると親子関係に難がありますね!ご両親と仲が悪いんじゃないですか?』
僕『いや、特にそういう事はありません。』
先生『ご両親とは会話はありますか?』
僕『はい。』
先生『本音で喋ってますか?』
僕『...言いたい事は言ってます。』
先生『悩み事は話しますか?』
僕『いや、そんなには話しませんよ。』
先生『それだ!!もうあなたとご両親の仲は崩壊してますね!』

質問をたくさんすればいずれ『NO』という答えもあるでしょ?
それで仲は崩壊って安易すぎない?

先生はその後これからの生き方のアドバイス。
運気のアップの仕方等を教えてくれた。
意外にもいいアドバイスばかり。
(あれ!?なにか違うぞ!俺はこんないい話を聞きに来たんじゃない!ここは絶対に怪しい場所のはず!俺の勘がハズレたかな?)

そんなこんなで3時間経過。
(今回はまともな占い師だったかぁ)
っと、がっかりした時だった。
先生の様子が変わった。
先生『今のままじゃあなたの運勢は落ちる一方です!』
僕『...はぁ』
先生『それもこれも家庭運が安定してないのが原因です!』
僕『...そうですか?』
先生『このままではあなたの人生は駄目になってしまいます!!!私と会えてよかった!運勢には時間、時期がとても大切なんです!』
僕『...時間?』
先生『そうです!時間すなわち今この時!!!この時を逃してはいけません!私とあなたの出会いこれも偶然ではないのです!後藤さんとの出会いも偶然ではないのです!』
後藤『そうだったんですね!!!運命!!!』
先生『そう!運命!!!運命を逃しては駄目なんです。運命を逃さない為には....お金を惜しんではいけないのです!』

(....キタ〜〜〜!!!!お金の話を始めたぞ!これは怪しい!!!)

先生『運勢を上げる為にお金を投資する気持ちはありますか?』
僕『お金ですか?』
先生『はい。ここで少しのお金を出せないようなら運勢を上げるなんてできるわけがありません。その気持ちがない人は人生も成功できないんです!』

よく考えたら全然理にかなってないのだが、僕はのってあげる事にした。

僕『そうですよね!その気持ち僕にはあります!』
先生『わかりました!ではこちらをご紹介しましょう!』

先生はとある資料を取り出した。

先生『あなたは家庭運が低いですから、まずは家庭運を固めて安定させなければなりません。その為にはいい印鑑が必要なんです!今あなたはどんな印鑑を使っていますか?』
要するに印鑑を買えという事らしい!

先生『認印、銀行印、実印、印鑑は三つ必要なんです。』
僕『はい!三つの印鑑ですね!?』
先生『一本30万円!三つセットで100万円です!』
セットで100万?値段がおかしい!?

先生『三つセットで値段が上がるのは特別の小箱をお付けするからです!山梨の山奥に住んでいる能力のある方が21日間お酒を飲まず煙草も吸わず念を込めた小箱ですから、運勢が上がる事間違いありません。』
最初から酒もタバコもやらない人だったら普通の事なんじゃないだろうか?

後藤『うわ〜安いですね〜!!これで運勢が上がるなんてわきぞうさん、なんて幸運なんだろう!』
また僕の名前を間違えた。

先生『どうしますか?買うお気持ちありますか?』
僕『行ったん家に帰って考えてもいいですか?』
先生『駄目です!今決断しないと全てが無駄になります。ここで決めて下さい。』
僕『う〜ん。でもお金がないしなぁ...』
先生『ローンで大丈夫ですよ!』
僕『生活が厳しくなるしなぁ』
先生『運勢が上がれば、収入も増えます!』
僕『印鑑三つで100万かぁ...』
先生『特別にお香と運気アップの数珠、そして対人関係を円滑にする石もお付けしますよ!』
通販の特典の様な...

その後、僕はしばし考えるフリをして先生をじらしてやった。
僕『う〜ん、悩むなぁ。』
すると先生は立ち上がり声を荒げて言い出した。
先生『だからあなたはいつも駄目人間なんですよ!グレイな気持ちじゃ何も進まない。白か黒かハッキリ決めなさい!今ここが人生の分岐点なんです!!!』
僕『....そうですよね!僕、先生の言葉でなんか凄くスーっとしました。今ハッキリと決めました!』
先生『では?』

僕『はい!僕は...印鑑を...』
先生『うん!』
僕『印鑑を......買いません!』

先生『.....う゛ぇ!!!!?』
先生の口から変な声が出た。
そして先生は立ち上がり扉を指差して言った。
先生『お帰りください!』

見ると先生はもの凄い表情で後藤を睨んでいる。
(こんな奴を連れてきやがって、後てシバイたる!)とでも言っている様な。
後藤は下を向いたまま何も言わない。

僕は無事にその場を脱出できた。
しかし、診断料として5000円はしっかり取られてしまった。
まぁ無事で良しとするか!

先日、一本の電話が掛かってきた。

『もしもし〜わたくし、先日お宅にお伺いしました矢島と申しますが...その後いかがでしょうかね〜?先生は非常にあなたの事を心配しておられますからね〜!』
先日の占いの奴だ!
口調からすると先生と呼ばれていた男の後ろにいた女だろう。

女『あなたの悩みは何なんですかね〜?』
唐突に質問が始まった。

僕『悩みなんてありませんけど。』
女『悩みのない人間なんていませんからね〜!』
僕『まぁしいて言えば、悩みがないのが悩みですね!』
女『...遊びじゃないんですからね。真剣に応えて下さいね。』
静かに怒られた。

僕『これ何なんですか?』
女『あなたの悩みをハッキリさせる事でいい方向に向かう手助けをさせて頂きたいんですね〜。』

怪しいとは思ったが、暇だったので電話に付き合って上げる事にした。

僕『実は悩みがありまして...お金が貯まらないんです。』
女『そうなんですね〜』
僕『女にもてなくて困ってるんです。』
女『そうなんですね〜』
僕『あと、電車の中の痴漢に困ってます。』
女『そうなんですね〜』

女は『そうなんですね〜』と繰り返すばかり。
返答になってない。

女『先生がおっしゃるには、あなたは変化の時で人生の分岐点なんです。それは理解されてますかね〜?』
僕『確かに!今悪い方向に誘われてる気がします!』
女『そうなんですね〜』
(おまえさんの事を言ってんだよ!)

女『だから悪いことが起こるんですね〜!』
僕『電車で痴漢されるのも、そのせいですか?』
女『そうなんですね〜』
僕『まさか...コンビニでビニールの傘を持って行かれたんですが、それも人生の分岐点だからですか!?』
女『そうなんですね〜!だいぶわかってきましたね〜!』

僕『じゃあ、ぼくはこれからどうすればどうすればいいんでしょうか?』
女『一刻も早く先生に運勢を見てもらう事をお勧めしますね〜!』
僕『一刻も早く!?そんなに急がないといけないもんなんですか?』
女『そうなんですね〜!運勢という物は凄く変わりやすい物なんですね〜。しかも、あなたは人生の分岐点なんですね〜!三日位で目紛しく変わってしまいますので一刻も早く先生に見てもらった方がいいですね〜!』

僕『あれ!?この間先生に運勢見てもらった時、人生の分岐点て言われたんですけど...あれからもう2週間経っちゃってますから、もう運勢変わっちゃいましたよね?』
女『それは大丈夫ですね〜!運勢はそんなに短期間で変わる物じゃありませんからね〜!!』

さっきと言ってる事が違う。もう、めちゃくちゃだ。

女『いつにしますかね〜?』
僕『何が?』
女『いつ先生に診断してもらいますかね〜?』
また唐突だ。

僕『20分位で終わりますか?』
女『人生の分岐点の運勢を見るわけですから、3時間は最低かかりますね〜。』

3時間!?
そんなに何するんだよ!?

僕『明日の夕方6時くらいなら空いてますよ!』
女『6時ですね〜。でも先生はお忙しい方なので急に言われても空いてるかどうか...今先生に確認して参りますね〜』
そして保留音。
今までに聞いた事もない様な、ヒーリングミュージックの様な、癒されない様な、変な保留音が流れた。

女『お待たせしましたね〜。明日の夕方なんですが、先生は大変忙しくて予定が入っていらっしゃる様なんですね〜』
僕『じゃあ、駄目ですね。』
女『でも、あなたの事が心配で運勢を是非見て差し上げたいとおっしゃられまして時間を都合つけて下さいましてね〜!あなたが今一番大切なときなので本当に心配してらっしゃるんですよね〜よかったですね〜』

僕『あっ!しまった、間違えた!?明日の夕方は駄目だった!夕方の6時までは大丈夫なんですが...』
女『あ!?そうなんですね〜!今先生に聞いてまいりますね〜でも先生はお忙しい方ですから空いてるかどうかね〜...』
また怪しい保留音。

女『お待たせしましたね〜明日の6時までなんですが、先生は大変忙しくて予定が入ってるそうなんですね〜。』
僕『じゃあ、駄目ですね。』
女『でも、あなたが人生の分岐点なので時間を都合つけて下さいましてね〜!』

僕『あっ!しまった、間違えた!?明日は駄目だった!今日の夜7時以降だったら空いてるんですが...』
女『あ!?そうなんですね〜!今先生に聞いてまいりますね〜でも先生はお忙しい方ですから空いてるかどうかね〜...』
またまた怪しい保留音。

女『お待たせしましたね〜今日の7時からなんですが、先生は大変忙しくて予定が入ってるそうなんですね〜....でもあなたが人生の分岐点で大切な時ですから先生がなんとか都合を付けて下さいました!!!』

もういいよ!
結局『先生』と言われてる奴のスケジュールはガラガラだった!
僕は『都合のいい時にこっちから電話する』と言って電話を切った。

女『よろしくお願いしますね〜!』
たぶんこの女はみんなから『ね〜』さんと言われてるんだろうな。


こんな怪しいところには絶対に行くもんか!!!

3週間前、僕の部屋にある男がやって来た。
男『今、北千住で占いの店がオープンしましたのでお伝えに来ました。手を出して下さい!』
と言って僕の有無も言わさず、勝手に手相を見始めた。どうやら占い師らしい。

男『とてもいい相をされてますね!この手相の方は家2軒位持ってる方なんですよ!たくさん貯金もされてるんでしょうね!』
僕の部屋はボロボロのアパートだ。
そんな金があるわけない。

男『あなたは優しい人なんですね〜手相に出てますよ!今まで苦労して来たんですね〜!手相でわかりますよ〜』
(怪しいもんだ...)

男『なにか悩みはありませんか?』
僕『....ありますよ!お金がなくて困ってます!』
男『....でしょうね!そういう相が出ています!』

...僕は貯金をしてるはずじゃ。さっきと言っている事が違う。

男『あなたの手相を見てると本当にパワーを感じますよ!こんないい手相は見た事ありません』
男は僕の生年月日を聞いてなにか資料と照らし合わせた。

男『なるほど!あなたは今一番大事な時なんですね〜』
僕『はぁ...』
男『人生ではチャンスが3回来ると言われています。あなたは今その時なんです!』
僕『はぁ...』
男『人生の分岐点なんです!!あ〜もう駄目だ!あなたの運勢をもっと詳しく調べたい!あなたの為にもっとちゃんと運勢を見たい!!』
僕『....』

女『凄いですね!!!先生がここまで言われる事は今までありませんよ!』
急に女が現れた!
(誰だこいつ?)
女『私も先生に運勢を見てもらってこんなに人生が変わりました!』
(こんなにって...お前の事なんて何一つ知らねーよ)

男『あ〜もっと運勢を見たい!あなたに運勢を伝えたい!今あなたの部屋に入って教えて差し上げましょう!』
男は靴を脱ぎだして僕の部屋に入ってこようとしている。

僕『ちょ、ちょっと!勝手に入るなよ!』
男『ああ〜水回りが玄関にあるからお金が貯まらないんだな。この方角のトイレはお金を流してしまうんですよ!』
部屋には入ってこなかったが、男は勝手に調べはじめた。

僕『もういいから!』
男『今分岐点ですから、教えて差し上げたいんですよ!時間あればもっと詳しく!』
僕『今から出掛けるので時間はありません』
男『何時に帰ってきますか?』
僕『なんであなたに教える必要があるんですか?』
男『あなたが心配なんです!』

(もう気持ちが悪い!)

僕『なにかあったら、こっちから連絡しますから!』
男『じゃあ念のためこちらのアンケートに応えて下さい!』
アンケートの最後には電話番号を記入する欄がっ。


...電話番号を記入してしまった。

女『先生がここまでしてくれるなんてっ!私だったら感激で言葉になりません!!!』
....だからお前は誰なんだよ!?

『人生の分岐点』
あの男の占いは本当だろうか?

45f011c4.jpg


先日お花見に行って来た。
そしたらこんな人↑がいた。

僕がベンチに座っていると覆面をかぶった人が通過。
(なんだ?ありゃ!?)

その覆面はトイレの前でおばちゃん二人に絡まれはじめた。
おばちゃんA『あんたなんなの!?』
おばちゃんB『まぁ春だからねぇ!』
覆面『....』

おばA『あんたそれとりなさいよ!』
おばB『まぁお花見だからねぇ!』
覆面『....』

おばA『あんたねぇ、捕まっちゃうわよ!』
おばB『まぁ怖い時代だからねぇ!』
覆面『....』

覆面は仕方なく覆面を脱いだ。

....僕の知り合いだった。

おばA『あら〜優しい顔してるじゃない!』
おばB『まぁ春だからねぇ!』
覆面『....』

おばA『あんた優しい顔してるんだから、そんなもんポイしなさいね!』
おばB『まぁお花見だからね!』
覆面『....はい。』

そう言っておばちゃんは去って行こうとした。
その時、覆面はまた覆面をかぶった。
それを見たおばちゃん達は

おばA『もう相手してらんないわ!しょうがないわねまったく。』
おばB『まぁ春だからねぇ!』
覆面『....』

花見にはこんな人もいるもんだ。
まぁ春だからねぇ...

昨日の15時30分頃、少し遅い昼食を食べにラーメン屋へ。
新しくできた九州ラーメン。
僕は豚骨ラーメンが大好き。

店内に入ると、お客が一人だけ。
もうランチタイムも終わっているので、仕方がない。

『こちらへどうぞ!』
食券を買うとすぐ店員さんが声をかけて誘導してきた。
見るとカウンターに水が置いてある。

お客さんは一人だけ。
(席を指定する必要あるのかな?)
僕はあまのじゃくなので
『向こうの席に座ってもいいですか?』
と四人がけのボックス席を指差した。

すると店員さんは
「いや〜向こうは四人席なんで、無理ですね!」

...お客さんは僕ともう一人!
それなのに駄目なの!?

その時、もう一人のお客さんが店を出て行った。

一応もう一度聞いてみた。
『やっぱり向こうに座りたいんですけど!』
「向こうの席は、三人以上の方に座ってもらいますんで...すいません。」

...お客さんは僕以外もういない!
それなのに...それなのに...駄目なの?
なんて強情な店員だ!

僕はちょっと腹が立ったので、カウンターのど真ん中の席に座り、右の席に鞄、左の席にi-Pod、もう一つ左の席に携帯電話を置いてカウンターの席を四つ埋めてやった。

『こんだけ融通が利かない店なのだからラーメンはうまいだろう』
と一口食べてみたら...マズかった。
(よくやっていけるなこの店)

半分ぐらい食べて、帰ろうと席を立った。
お客さんが来る気配がない。
そして店員さんの気配もなくなっていた。

パッと見ると、先ほどの店員が食事をしている。

四人がけのボックス席に一人で座っている。
(俺は駄目でお前はいいのか!?だいたい三人以上じゃなきゃ駄目じゃなかったのかよ!?)

お前の食事なんて厨房内で済ませろ!!
腹立たしい上にマズい物を食わされた。
時間と金の無駄だった。

昨日は某会社の懇親会があった。
僕はそれを見学させてもらった。

懇親会と言っても、二部構成。
二部はお酒を飲みながら、食事をしながら懇親会。
一部は前年度の収支発表。
そして自分の仕事の自己分析、今期の目標、未来構想等を舞台に上がり演説して行く。

その場に笑いは一切ない。
誰かが少し冗談を言っても、和む事はない。
社員が笑おうものなら、前にいる怖い幹部から睨みが入る。
もの凄く緊迫した雰囲気。

演説は進んでいき、常務さんの番になった。

『お前らたるんどる!今は強い気持ちと、強い意志が必要だ!』
ダレはじめた会場を一喝した!
僕も眠くなりはじめたところだったが、一気に目が覚めた。

それからも常務の力強い演説は続いた。

三分後、会場に音楽が流れた。
携帯の着信音だ。

『♪チャララン、チャララン、チャラララララララン♪』
ゴジラのテーマだ。
静まり返った会場にゴジラのテーマが響く。

皆キョロキョロと周りを見回す。
しかしゴジラのテーマは止まらない。
かわりに常務の演説が止まった。
もの凄い形相の常務。
顔を真っ赤にして、怒っている。

しかし、まだまだゴジラのテーマは止まらない。
よく聞くと、スピーカーを通して会場に流れている。
「何故?」と皆が思った。

演台の常務が懐に手を入れた。
「まさか!?」
背広の内側から携帯電話を取り出した。
その携帯からゴジラのテーマが流れている。

常務は携帯の画面を見た。
そしてボタンを押して着信を切った。

『はい!私だが、なんだ?』
常務は電話で話はじめた。携帯を切ったのではなく繋いでしまったのだ。

唖然とする会場。
皆何も言えない。

まだ電話で話し続ける常務。
『ん!?...そんな事、後でいいだろ!だから、今言うな!!』
電話の向こうに怒っている。

『...ごめんなさい』
急に謝りはじめた。
『今ね、駄目だから...すいません。』
急に弱くなった。
『...はい。わかったよ。...買っていく。わかってるから。』
さっきとは別人のようだ。
『...はい。トイレットペーパーといいちこ。はい。じゃあ...』

やっと電話を切った。
会場は変な空気になっている。
そんな空気の中、常務は普通に演説を再開した。
真剣な顔に戻ったが、先ほどの怖さは一切ない。

電話の相手は奥さんだろう。
これが噂に聞く『鬼嫁』?
社員を一喝した男があんなに小さくなってしまうとは...
その常務には『強い気持ち』も『強い意志』も感じなかったが『強い嫁』の存在は感じた。
いいものを見せてもらった。

今日、『N』という鞄をしょって塾に出かける小学生の軍団を駅で見かけた。
全員高学年ぐらいかなぁ。

皆、駅の改札に『SUICA』で入っていく。
一番最後の一人がチャージが足りないらしく改札を通れずにいた。

「あ〜通れない!どうしよう....」

困っている。先に中に入った小学生が
『じゃあ切符かって来なよ〜!』
とアドバイスをしていたが、その最後の小学生は泣き出してしまった。

『お金ないの?』
「うわ〜ん(泣)お金ある〜(泣)」
『じゃあ切符買ってきなよ!』
「うわ〜ん(泣)買い方がわからない(泣)」
『え!?あそこの機械で買うんだよ!』
「うわ〜ん(泣)機械怖いし、やり方わからない〜(泣)」

今の小学生は切符の買い方も知らんのか?

『駅員さんに聞けば?』
「うわ〜ん(泣)聞くの怖い〜(泣)」

僕はその子のすぐ近くにいたが、
『これはお前にとっての試練だ!』
と思い、見て見ぬ振りをした。

その小学生は後ろを向いて走り始めた。
しかし、券売機に向かわずにそのまま走って何処かに行ってしまった。
残された小学生の一人が
『これだから最近の若いもんわ...』
と言って、ホームに向かって行った。

あいつらいったいなんなんだ?
全く最近の若いもんは...

僕には56歳の女性の友達がいる。
その名は『ガースー』

ガースーは人の世話を焼くのが大好きだ。
人に頼られる存在になりたいらしい。
でも誰もガースーを頼らない。
言うなれば、子分のいない親分肌なのだ。

毎月第一月曜日は『江戸一万来館』という店で寄席に出演させてもらっている。
先日の寄席にガースーがお客さんとしてやって来た。
新しいお客さんを10人程連れて。全員ガースーと同世代の女性。

『わくぞう!約束通り、来てやったわよ〜!もう、あんまりしつこく誘うもんだからしょうがなく来てやったわよ〜!』
僕はガースーとそんな約束もしてないし、しつこくも誘っていない。

でもお客さんが増える事は有り難い!
しかし、ガースーの格好はもの凄い!
虎柄ともヒョウ柄とも言えぬ、コートを着て来た。
そのコートを脱ぐとスパンコールと言うか、ラメと言うか、ピンク色にキラキラ光るドレスが現れた。
舞台の芸人以上に目立つ。
『地味でごめんなさ〜い!』
ぶっ飛ばしてやりたい。

本番前ガースーがトイレに言ってる間に、ガースーが連れて来た女性達に話しかけた。
「今日はありがとうございます!ガースーとは友達なんですか?」
全員顔を見合わせた。
『友達と言うか、同じ町内会です。』
なるほど、そういう関係か!
「今日はガースーに無理矢理連れてこられたんですか?」
また顔を見合わせた。
『町会の婦人部長継続祝いなんです!』

...婦人部長?ガースーが!?
「え〜〜〜〜!?」
僕は声を上げて驚いた!

「ガースーに婦人部長やらせて大丈夫なんですか!?」
またまた、全員顔を見合わせた。
そして皆黙ってしまった。
(こりゃいつも通りなんかやらかしてるな!)
あいつに婦人部長なんてやらせたら、大丈夫なはずがない。

ある女性が口を開いた。
『だって誰もやりたがらないし...』
(そういう事か!)
『しかも、自分で立候補したし...』
(自分からか!)
『今日も婦人部長継続のお祝いしろって無理矢理連れてこられたんです。』
(やっぱりそうか!かわいそうに...)

舞台終了後、ガースーが僕のところに寄って来て言った。
「あんたねぇ、何考えてるの!」
(何を怒っているんだろう?)
「ちょっとは配慮しなさいよー!」
(何の事だ?)
「あんたが私を舞台に呼んだら仕方なく、嫌々出るつもりだったのに!!」
(舞台に出る?ははーん、そういう事か!?)

どうやらガースーは舞台に上がりたかったらしい。
お得意の欧陽菲菲(オウヤンフィフィ)の『ラヴ イズ オーバー』を歌いたかったらしい。
その為にドレスまで来て来たってわけね。
しかし、そりゃ無理な話だ!
だいたいガースーを舞台に上げるとロクな事にならない。
過去にひどい目にあった事がある。(その話はいずれまた)

悔しがるガースーをなんとかなだめ、会場から追い出した。
婦人部のメンバーと何処かで飲み直す話をしていたが、皆さん大変だなぁ。
ガースーが事件を起こさない事を祈るだけだ。

僕も会場を出て返ろうとした時、聞き覚えのある声が聞こえた。
「ちょっと〜あんた聞きなさいよ〜!私のステージルンバルンバよ〜(?)!
いくわよ〜はい、ワン、トゥー、いち、に、さん、はい!
...♪ラヴイズオーバー、悲しいけれど〜♪」

ガースーが知らない男性相手に熱唱し始めた。
どうやら男性はガースーに捕まってしまったらしい。
聞いてるこっちが悲しくなった。

「♪終わりにしよう〜きりがないから〜♪」
あんたが終わりにしてくれ!きりがないのはお前だよ!

本当にガースーはしょうがない。

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