2009年03月23日

トーキョー

1週間ぐらいおったろー!とか思っていたのに、本日23日、大学に大事な用事があることに気付き昨日帰って来ました。
2日しかトーキョーに滞在できませんでした。
池袋しかぶらぶらできなかったです。渋谷の109でギャル観察もくそもなかったです。
初日兄の引越しを手伝い、その夜に焼肉食べて酔っ払ってすぐ寝てしまい、起きたらAM4時。
速攻で外に飛び出し(もちろんトーキョーは危ない、と聞いていたのでズボンの裾にはナイフ&腹部には少年ジャンプを装着し、兄の部屋を出てから兄の部屋へ帰るまでずっと「はぁ、また殺してしもた……。」とつぶやいていました。誰も近づいてきませんでした)ロマンス通りなるところを徘徊するも、いかがわしいお店は案の定全て閉店。
悔しいのでネカフェへ行き、インタネーッツを駆使し作戦を立てるも池袋はモーニング無し&ホテヘルばっかりで料金高すぎ&夜中に薄着で動きすぎて発熱でダウン。
トーキョーへ行くと必ず発熱するのですが、なんなのでしょうか。テンション上がり過ぎなんでしょうか。

池袋西口公園を2秒眺めて、兄の部屋へ退散し寝っぱなしでした。
昨日の朝に大阪へ帰ってきても発熱は収まらず、今朝までぶっとおしで寝てました。

必ずリベンジしに行きます。次こそは標準語の女の子とニャンニャンしてやるーーーー!!

HIROさんのコメントで気付いたのですが、もうそろそろ3年目に突入するらしいです。
ライブドアがつぶれるまでダラダラ更新してやるぜ。

wakuue at 10:57|PermalinkComments(1)TrackBack(0)雑記&日記 

2009年03月18日

明日からトーキョーへ行きます。

兄がトーキョーで就職が決まり、今朝トーキョーに旅立ちました。
僕は明日トーキョーへ行き、兄の引越しの手伝いをかねて、1週間ぐらいトーキョーでプラプラするつもりです。
中学の修学旅行以来、人生二回目のトーキョーということでとても楽しみです。
「もぉ〜んっこんなに環状線乗ってたらバターになっちゃうよぉ〜んっ><」っていうくらい環状線でグルグルするつもりです。

誰がちびくろサンボの虎やねん。

とりあえず、銀座にシーラカンスの刺身とカブトガニのてんぷらのおいしい店があるらしいのでそこへ行こうと思っています。
その後109でカリスマギャル店員に札束をちらつかせてチヤホヤされ、下着屋さんでギャル店員さんの目の前でセクシースキャンティーを×××に○○○して▲▲▲して気持ちよいことをしたり、本屋さんのレジのかわいい店員さんにエロ本とエロ本の間に哲学書を挟みこむ逆サンドイッチ攻撃をしたりしたいと思います。
うひーーー楽しみやっ!

wakuue at 18:00|PermalinkComments(2)TrackBack(0)雑記&日記 

2009年02月23日

ピアス

窓の外ではしんしんと雪が降っている。冬は嫌いだ。ケイゴは思った。
オカンと自転車に乗る練習をしていてドブに突っ込んで頭を切って八針縫ったのも、オカンが死んだのも、地元の先輩に顔の大きさが倍になるほど殴られたのも、思い出の中の悲しい出来事は全て季節は冬だった。そしてもちろんアイコに振られたのも季節は冬だった。
冬になるとどうしてもアイコの事を考えてしまう。そしてどうしようもないほどひどい気持ちになってしまう。悲しみ、切なさ、寂しさ、怒りなどが入り混じって頭が破裂しそうになってしまう。

アイコと付き合ったのは中学に入学してすぐだった。
入学式で初めてアイコを見たとき、集団の中で一人スポットライトが当たっているかのように際立って目立っていた事を覚えている。顔立ちも綺麗で、先月まで小学生だったとは思えないほどに色気があったし、スタイルもとてもよかったがそれ以上にアイコの出す雰囲気がアイコを目立たせていた。
それは全てを包み込むような優しい雰囲気で、オカンが早くに死んでしまったオレにとっては痛いほどにアイコのその雰囲気に強く引かれた。そしてオレはすぐにアイコに告白した。
「まだ知り合ってすぐやけどな、ほんまに好きやねん。付き合ってくれへん?」人生初めての告白だった。アイコはオレと付き合ってくれる確信があった。別に何かそう確信できるような出来事があったわけじゃない。ただその確信はそこに忽然とあった。だから不思議と緊張もしなかったし、恥ずかしさも無かった
アイコは簡単にいいよ、と付き合ってくれた。
金の無いオレ達は公園で喋ったり、オレの家で遊ぶことが多かった。公園で6時間しゃべったこともあった。家に遊びに来た時は、一度長いセックスをし、その後はずっと軽いキスをした。夏になるとコンビニでジュースを買い、電車に乗って海に行った。花火を観に行った。正月には近所野の神社初詣にも行った。ほんとうに仲がよかった。
アイコは誕生日に何かオレとお揃いで身につけることができるものが欲しいと言った。オレはペアリングを買ってあげたかったが、オレにはそんな金は無かった。家は片親な上、父親は体が弱くてまともに働きに出ることが出来ずに貧乏だったし、中学生のオレには金を稼ぐ手段が無かった。だからピアスを買った。二つセットで400円の安物だ。妙に軽くて鈍く銀色に光るシンプルなリング状のピアスだった。
アイコはとても喜んでくれた。オレは左耳にそれを付け、アイコは右耳に付けた。アイコの耳についたそのピアスはとてもキレイに見えた。アイコは鏡に右耳を映してとてもうれしそうな顔をした。その顔はとても印象的だった。オレ達はそれから風呂に入るときも、寝るときもいつもそのピアスをつけていた。
オレの中学生活はアイコを中心に成り立っていた。入学から卒業までの3年間、何を思い出してもそこには絶対にアイコが関わっている。

アイコと一緒に高校に行きたかったが、オレの家はほんとうに貧乏でオレが高校に行く余裕が無かった。オレは工務店に就職してアイコは高校に進学した。相変わらずオレ達の耳には安っぽいピアスがついていた。
仕事はほんとうに辛かった。オレは成長期が遅くて、その頃はまだ背も160ほどしかなく、体も細かった。
秋にオトンの体調が急激に悪くなり、オトンが入院した。入院費と薬代はオレの給料でどうにかなるようなものではなかった。
圧倒的に金が足りなかった。どれだけ残業をしても金が足りなかった。アイコは学校に終わるとバイトに向かい、朝は弁当を作ってくれ、バイトが終わると家に来て飯を作ってくれた。
アイコにどれだけ飯を食わせてもらっただろうか。アイコがいなければ、オトンが病院を追い出されて死ぬか、オレが過労と栄養失調で死ぬかのどちらかが確実に現実になっていた。アイコにはほんとうに助けられた。しかしそれでも金が足りなかった。オトンの薬代は日増しに金額を増していった。
オトンの名義で借金もしたが、限度額一杯まであっという間に薬に変わっていた。
限界だった。そしてオレは夜中になると友達に車を借り、街を徘徊し、車や単車のパーツをトランク一杯に盗んでは地元のヤクザの先輩に売るようになった。
そうするしかなかった。いくら働いても金が足りるということは無かった。ほんとうに仕方なかった。
最初は順調だった。できるだけ遠くの町に行き、地元の店や知り合いにパーツを売っていた。
しかし徐々にうまくいかなくなってきた。アイコにばれないようにアイコが帰ってから家を出てパーツを盗んで帰って来て少し眠って仕事へ行く。という生活には無理があった。
そして徐々に近くの町でパーツを盗むようになった。そしてついに悪運は尽きた。
あの日の事はよく覚えている。いつものように近所の公園の前で先輩と待ち合わせし車のトランクを開けてパーツを見せると、先輩は一つのパーツを手にとって首をかしげて「あれ?これどこでパクったん?」とつぶやいた。とても嫌な予感がした。オレが場所を言うと、先輩はすぐに友達に電話をした。
先輩の友達はすぐにやってきた。見覚えのあるセルシオが目の前に止まった瞬間、オレは目の前が真っ暗になった。先輩の友達は車を降りてくると、スタスタとオレのほうに歩いてきた。先輩の友達が目の前に立った。オレは土下座しようと思った瞬間、糸を切られた操り人形のように地面にへたり込んでしまった。何が起こったのかわからなかった。そして次の瞬間右足の太ももに激痛が走った。見ると右足の太ももに何かが刺さっていた。それは砂漠に桜の木が一本は生えているように奇妙な光景だった。一瞬なにが刺さっているのかわからなかった。よく見るとそれはドライバーだった。あ、これドライバーや……。気付いた次の瞬間には目の前に足があり、顔面への強い衝撃と共にオレはひっくり返っていた。鼻からあごにかけて燃えているような熱い感覚があった。口の中に血の味がしてあまりの怖さに息が止まっていた。上半身を起こして目線を上にやると男が見下ろしていた。その男の目は平然としていて冷たかった。男がすーっと手を伸ばしてオレの太ももに生えたドライバーを握り一気に引き抜くと、また太ももに痛みが走った。あまりの痛みに少し声が出た。するとどすぐろい鼻血がダラリと流れた。
「示談金100万払うか、100回シバかれるか選べや」男の言葉は淡々としていた。「明日夜中の1時にここ来いや。それまでにどっちか選んどけよ」男はそう言うとセルシオに乗って来た道を帰っていった。
先輩は長い溜息をついて、地面に呆然として座り込んでいるオレを引き起こした。「ポリに職質されだらダルいから送っていくわ」そういってオレを助手席に乗せた。
「まぁおまえが悪いわな。おれがパーツパクってこいって言うたんやったらおれもかばうけどなー、おまえが持ってきた話しやからのー。まぁどうなるかわからんけどオレも行くからおまえも明日ちゃんと来いよ。来やへんかったらおまえほんまに殺されんで」オレは車中で終始無言だった。夢をみているようだったが、ドクドクと脈打つ太ももと鼻の痛みだけが妙に現実感があった。

家に帰ってきて玄関に入った瞬間にそのままへたり込んでしまった。靴を脱ぐ気力すらなかった。そのままボーっとしていると、いきなり猛烈な眠気に襲われ血まみれの服のままで玄関に座り込んだまま眠った。
日が昇り始めた頃、痛みと寒さで目が覚めた。とりあえず靴をぬいで家に上がりズボンを脱いでみた。さされた部分を中心に腫れ上がっていた。鼻も折れてはいないようだった。足をかばってぬるいシャワーを浴び、服を着替えて布団でもう一度眠ろうと思った。仕事にいく気力は無かった。布団に入り少しするとアイコが弁当を届けにやってきた。
アイコはオレの腫れ上がった顔と部屋の隅においてある血まみれの服を見て驚き、立ったまま泣き出してしまった。アイコを抱き寄せて座らせると、「大丈夫や」なんどもそう言いながら背中を撫で続けた。
アイコは少し落ち着くと何があったのか聞いた。オレは隠さずに全て話すとアイコはまた泣き出した。
先ほどまではほんとうに何も考えられなかったが、アイコを見ているとなんとかなりそうな気がしてきた。ほんとうにアイコはおれの支えなんだと思った。
「100万とか払えるわけ無い、警察にチクったらオレもパクられる、オレがパクられたらオトンが病院を追い出される。黙ってシバかれてくるわ。たぶん5回ぐらいシバいたら飽きるやろ〜わははは」おれがいくら気丈に振舞ってもアイコはずっと泣いたままだった。結局アイコは学校を休んで、1時前までずっとオレから離れなかった。
アイコは最後までオレを行かせようとしなかったが、行かなければ事態がさらに悪くなることは目に見えていた。だからおれはアイコを無理やり家まで送り届け、先輩達のところへ向かった。
昨日のセルシオが目に入った瞬間、足が震えた。左耳のピアスを掴み、必死でアイコの顔を思い浮かべた。すると徐々に震えが止まった。セルシオの前まで行くと、先輩と昨日の男が降りてきた。
「どうすんねん」男が言った。男の右手に何か握られている。ドライバーだった。それに気付いてしまうと怖くて声が出なかった。
「黙ってたら解らんやんけ。どうすんねん」男の喋り方は相変わらず淡々としている。
そのときだった背後からすすり泣く声が近づいてきた。振り向くとアイコだった。「すいません……許してください……」アイコは泣きながら頭を下げた。
「おまえの女か?」男はアイコをみつめたまま言った。
「はい……」
男はアイコの耳元で何かを囁くといきなりオレの顔面を思い切り殴った。パァン、という音に混じってバギ、と音がした。あまりの痛みにめまいがし、立っていられなかった。アイコが何か叫びながらオレを守ろうと必死でおれの前に立っている。
「よかったなぁ、ええ女おって」男はそう言うとセルシオに乗り込んだ。先輩も続いて乗り込むと荒い運転で国道のほうへ向かっていった。
とてつもなく鼻が痛かった、そしてとてつもなくアイコに申し訳なかった。アイコが止めに入ってくれていなかったらこの程度ではすまなかった。アイコはワーワー泣きながらおれの横に座り込んだ。オレは「ごめんな」と謝り続けた。
ひと段落着くと不思議なもので不思議なもので鼻の痛みも、足の痛みも、それほど深刻なものでは無くなっていた。とてつもなく痛いのだが、その痛みが全て終わったんだということをオレに教えてくれているような気がしてなんだかそれほど嫌なものではなかった。
あまりにもアイコが心配するのでオレは安心させるために無理やり翌日から仕事に出た。仕事が終わり家に帰ると家の前に知らない車が止まっていて、運転席にはオトンの従兄弟のおじさんが乗っていた。おれに気付くとおじさんは車を降りてオレに駆け寄ってきた。「お父さんが病院で自殺した」
病院に行くとオトンは冷たくなっていた。

オトンの葬式の段取り等は全ておじさんがやってくれた。葬式は身内だけで行った。その身内も6人でその内オレがどういう関係かわかるのはおじさんだけだった。現実感が沸かなかった。
オトンは遺書も何も残さなかった。たぶん自分が入院していることでオレを困らせている状況に耐えられなかったんだと思う。オレにはなんとなくわかっていた。
葬式が終わり家に独りきりになっても現実感が何もわかなかった。今でも病院にいてるんじゃないかと思う。でもオトンは間違いなく目の前のこのツボの中にいる。ツボをあけると白い骨が少しはいっているだけだ。間違いなくこれがオトンなのだ。オトンは病院にはいない。これがオトンだ。何度もそういう風に頭の中で思っていても全然現実感は沸かなかった。
四十九日の納骨にはアイコも参加した。おじさんとオレとアイコの三人だけだった。未だに現実感なんてものは無かった。そんなものは一生沸いてこないんじゃないかと思った。

そして冬が終わる頃、アイコにふられた。何が理由だったのかは全くわからない。昼休憩の時、弁当を食べようとアイコが弁当を入れてくれているポーチを開けると、弁当と一緒に手紙が入っていた。そこには「別れよう。サヨウナラ」とだけ書かれていた。それから毎日アイコの家に行ったがアイコは決して会ってくれなかった。アイコの家に行くのが3日に1回になり、5日に1回になり、週に1回になり、月に1回になり、行かなくなった。それから二度とアイコに会うことは無かった。

おれはひどく落ちぶれた生活を送るようになった。仕事を辞め、昼間から酒を飲み、マリファナを吸い、変な女を抱いた。アイコを失うと、あれほどまでに現実感が沸かなかったオトンの死が急激に現実のものとして感じられた。何をしていてもひどく孤独だった。

どうしようもない日が3ヶ月ほど続いたある日、あてもなくフラフラと道を歩いていると先輩に会った。先輩とはあの男に鼻を折られた夜以来だった。どうせならあの男に殺されたかった。あそこで殺されていれば、悲しむことも無かったし、こんな意味も無く生きることは無かった。「おー鼻綺麗に治ってるやんけー、折れてたんやろ?」先輩はおれの鼻を感心した様子で見ながら言った。
「誰に聞いたんですか?」鼻が折れた事はアイコと親戚と仕事の人しか知らないのだ。なぜ先輩が知っているのだろうと思った。「アイコちゃんや。てかおまえアイコちゃんに感謝せぇーよ。あの子未だにアイツにええように使われてんねんぞー」先輩が何を言っているのかさっぱり解らなかった。「何ガですか?」
「何がって、アイコちゃんがあいつに100回ヤらせなあかんようなったんはおまえの責任やろー。適当に付き合ってただけなんかー?まぁあいつもまぁまぁ男前やからアイコちゃんもそんな嫌がってないんかもなぁー」そう言うと先輩はいやらしい笑みを浮かべた。
あの夜、男がアイコに耳元で何か囁いていた事を今になって思い出した。今すぐに自分の頭を割って、脳を取り出して蹴り飛ばしたかった。自分の心臓を取り出して噛み潰したかった。自己嫌悪なんてものじゃなかった。本当に自分を殺したかった。なのに、気がつくと先輩の顔面にオレの拳がめり込んでいた。そして次の瞬間には先輩の顔面をおもいっきり蹴り飛ばしていた。先輩は驚いた様子で地面に座り込んでいた。
「おい!そいつどこいてんねん!電話せぇ!」自分の体じゃないようだった。先輩が立ち上がって口答えしたので顔面を思いっきり蹴り飛ばし、馬乗りになって思いっきり殴りつけた。殴りつけた拳に激痛が走ったので拳をみると先輩の折れた歯が突き刺さっていた。
「やめてくれ!電話するわ!」先輩はそう言うと携帯を取り出して電話をかけた。男は家にいるとのことだった。おれは先輩を助手席に乗せてそいつの家に向かった。途中でホームセンターに寄って包丁を買った。
男の家はインターホンも付いていないような古いアパートで、先輩を前に立たせてドアをノックさせた。ドアが開いても先輩はうつむいたまま喋らなかった。
「なんや。ん、おまえアイコの元彼の泥棒やんけ。さっきまでアイツおってんぞ。ヤりすぎて疲れてるからさっさと用あるんやったら言――」男は喉元から血しぶきを上げてそのばにへたり込んだ。そのまま顔に包丁を打ち下ろすと、男の顔にサックリと包丁がめりこんだ。それは、いつか思い浮かべた砂漠に咲いた一本の桜の木ようだった。そこからは何も覚えていない。
次に正気に戻った時はパトカーの中だった。赤いペンキをバケツに入れて頭から被ったように、体中血まみれで、手には重く、鈍く光る手錠がされていた。あの時左耳のピアスに血がついていないかが、やたらと気になった事を覚えている。
そうしてオレは特別少年院に送致された。

窓の外では今日もしんしんと雪が降っている。
アイコに「ごめんな、愛してる」と短い手紙を出してから2ヵ月後に「待ってる」とだけ書かれた短い返事が返ってきた。その手紙を見てからは余計にアイコの事ばかり考えるようになった。ほんとうに長かった。この2年間、ほんとうに気が狂いそうだった。眠ると必ずといっていいほど、包丁を顔にはやしたあの男が夢にでてくる、オレはその男の顔から包丁を引き抜き、泣きながら男が細切れになるまで包丁で斬り、刺し、刻む。そして目が覚めるといつも涙が頬を伝っていた。
そしてようやく退院することが出来る。ひさしぶりにつけたピアスはとてもぬくもりがあった。
オレは退院したその足でアイコの家に向かった。嫌いな冬の匂いも雪も、なんだか好きになれそうだった。
インターホンの前でボタンを押すのにかなりためらった。気付くと肩に雪が積もっていた。
左耳のピアスを触り、ゆっくりと深呼吸すると、ボタンを押した。
ドアがガチャと開いてアイコの母親が出てきた。
「ケイゴ君……」お母さんの顔は浮かなかった。
アイコはあの男にHIVを移され、先月死んだそうだ。そしてオレには何も怒っていないということだった。怒って欲しかった。おまえのせいでアイコは死んだんだとののしって欲しかった。でもアイコの母親は何も怒らなかった。
オレはずっと仏間で遺影と骨壷の前で座って泣いていた。いくら泣いてもきりが無かった。遺影のアイコはオレが最後に見たときよりずいぶん大人に見えにっこりと笑っていた。そして右耳にピアスをつけていた。
アイコのお父さんがアイコが右耳につけていたピアスをくれた。相変わらずの妙な軽さがなんだか悲しかった。お母さんは仏間に布団を敷いてくれ、気が済むまでいてくれていいと言った。
おれは陽が昇り始めるまでずっと座って泣いていた。ふとアイコの遺影が窓から差し込む朝陽に照らされた瞬間、なんだか心配そうな顔つきに見えた。
なんだかどうしようもない気持ちだった。でもこれ以上ここで泣いていてもアイコは喜ばないような気がした。左耳のピアスを取るとそっと骨壷に入れ、アイコのピアスを付け、家を出た。

いったいどこに帰ればいいのかわからなかった。
空気はとても冷たく、チンコの皮に付けているアイコのピアスが外気にさらされるとヒヤッとした。
空をみあげると、しんしんと雪が降っていた。嫌なことは全て冬に起こる。
やっぱり冬は嫌いだ。ケイゴは思った。



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7ヶ月ぶり

おひさしぶりです。
放置しっぱなしにも関わらず、コメントくださった方ありがとうございます!
ほんとうにありがとうございます。
春休みに入りグダグダになるかと思いきや、なかなかシャキシャキした日々をおくっています。

ここまでキーボードを叩いていて気付いたのですが、長い間パソコンを触っていなかったせいか、キーボードがめちゃくちゃ壊れてます。とくにKのキーがやばいです。
kkkk←Kのキーを30回押してこれだけしかでてきませんでした。
まぁそんな事は劇団ひとりと、大沢あかねの結婚。ピッコロの指が4本しかなくて、なんだか見てて歯痒い、というぐらいどうでもいい事ですね。

スロや近況のことでもいいから更新しなさい、との事なので久しぶりに日記と最近のパチスロを打っていて思うこと、みたいな物を書いてみます。

まずは近況報告みたいなものを、書いてみます。
http://blog.livedoor.jp/wakuue/archives/64958866.htmlで書いている新しい彼女とは一年ほど付き合った後、去年の年末に別れました。
全面的に僕が悪い上に、僕から別れようと言った自分に対して耐えられないほどの嫌悪感を感じ。自分を律する、すぐに他の女の子に行くような事だけはしたくない、と思い、別れた日に0.3mmの坊主にしました。
こんなださい坊主にすれば、行きたくてもいけないだろう。
とか思っていたのですが、次の週には「うへへ、この頭な、最近坊主にしてん」と女の子に擦り寄り、理由を聞く女の子に「プリズンブレイク見ててなぁー。かっこえーなぁ思てたんやんかー、ほんなら気付いたら風呂場でバリカン握ってたわ〜!うひひ〜!爆笑じゃ〜!」等と、女の子を笑わせるネタにしていました。


スロットについて書きます。
ただでさえ読んでくれる方がいるかどうかも怪しい上に、その方がスロットの事を解るかどうか怪しいので、パチンコ屋さんに入った事もない方が読んでも理解できるように解説をつけます。

相変わらず、パチスロ(ネトネトしたコイン3枚を入れてレバーを倒し、ボタンを三つ押すと、たまにネトネトしたコインが2枚〜15枚ほど出てくる機械)はちょくちょく行っています。

基本的に夕方から等価(パチスロ店ではネトネトしたコインを50枚あたり1000円で貸してくれる。返すときは、60枚で1000円くれたり、55枚で1000円、など、各店で違いがある。等価というのは、返すときも50枚1000円の店)の店に出かけ、期待値(その台を打ったときに、平均的にいくらお金が動くのかということ。)の高い台をひたすらハイエナ(期待値が確定している台だけを打つ行為。フェラがうまいと評判の女の子を口説くのもハイエナと言える)しています。
最近近所の店が熱いイベントをするときは、店員の制服が超絶ミニスカセーラー服(ぼーっと見ていると、知らぬ間に携帯を低めに構えてしまうので注意が必要)になるのでうれしいです。
収支は毎月10万勝つかどうかです。
それでも皆が汗水垂らしてバイトしている時に、ボタンをポチポチしているだけなんだから文句はいえないです。
文句といえば相変わらずパチンコ屋のトイレットペーパーが硬すぎて僕の肛門を攻撃してくることです。
書きたいことはまだまだあるのですが、kのキーを押すたびにストレスがたまるので
この辺にしときます。

wakuue at 00:42|PermalinkComments(0)TrackBack(0)雑記&日記 

2008年07月03日

ドーナツの穴

ある休日の昼下がり、小さな食卓を小さな女の子とその両親が囲んでいた。

食卓の真ん中には、大きな白い皿が置かれている。皿には、大きな穴の開いたドーナツが5つ盛られている。

「あっはっは。付き合っているころからおもっていたけど、ほんと、いつも君の考えは的が外れているね」と男は言った。男のくだけた優しい表情と真剣な目つきは、チョコレートと茶色の分厚い辞書ほどにかけ離れていた。

男が話し終わると、ゲートが開くのを待ち構えた競走馬が、ゲートが開いた瞬間に全力で走り出すように、女が喋りだした。「あら、奇遇ね。私も付き合っているころからあなたの考えはいつもおかしいと思っていたのよ」女も男と同じように目と表情が不釣合いにみえる。

「ははは。それは確かに奇遇だね。だいたいね、ドーナツは穴まで含めてドーナツだと言い張るならね、君はこのドーナツを半分にわけるときに、穴のほうでも文句は言わないんだよね?ほら、どうだい?ドーナツの穴はドーナツの一部でもなんでもない、それはただの空間さ」と、いうと男は、ふんっと勝ち誇ったように鼻で笑った。

「あなたそういうところがずれているのよ。その理屈は、上にイチゴの乗っかったケーキを半分にするときに、包丁を横に入れて、いちごとクリームの乗った上半分と、スポンジだけの下半分にわけるようなものよ。ドーナツは穴までドーナツなのよ。」と言うと女は、大げさに足を組みかえ、これ以上ないほどに肘を張って腕を組んだ。

男は苦い顔をしたまま女を睨みつけた。女もその視線に自分の視線をぶつけた。二人は机をはさんで睨み合ったまま動かない。

「でもね、どっちにしてもドーナツの味には関係ないよね」そう言うと女の子は幸せな顔でドーナツを口いっぱいにほうばった。


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2008年06月29日

ウンコを踏む女

僕は、大学卒業を間近に控えたある日、99.9パーセントの女の子に出会った。

彼女はきれいな顔立ちではあるが、皆が大騒ぎするほどの美人でもない。かといって、聖書の中で語られるイエス・キリストのように、誰に対しても平等の優しさを持っている、という訳でもない。だが、産まれたての馬が誰に教わることも無く、立ち上がるように、僕は、彼女が僕にとって99.9パーセントの女の子であると当然のようにわかった。そして、僕も彼女にとっての99.9パーセントの男であることもすぐにわかった。僕らは当然すぐに打ち解けあい、交際が始まった。

出会ったその日に結婚してもよかったのだが、いくらなんでもそれは周りの目が痛かった。それに僕は、僕にとっての99.9パーセントの相手がいるのなら、100パーセントの女の子がいるかも知れない、と考えていた。だから僕たちは付き合った日その日に約束した。「2年たってもお互いに結婚したければ、すぐに結婚しよう」と。

彼女と過ごす毎日は、とても楽しかった。心の底からお互いを愛し合い、僕たちは、コーヒーにミルクを入れてゆっくりと掻き混ぜるみたいに、徐々に混ざり合って行った。

それでも僕と彼女の関係は99.9パーセントの関係であり続けた。残された0.1パーセントは埋まることが無いどころか、その姿すらも見せなかった。その0.1パーセントが何なのか僕にはさっぱりわからなかった。彼女と僕との間に、不都合や、行き違いなんてものはひとつも思いつかなかった。

姿を見せない0.1パーセントはじれったいようであり可愛くもあった。

彼女との2年間はこれまでの人生とは比べ物にならないほどに時間が進んだ。彼女といると、時計が壊れてしまったんじゃないかとか、カレンダーが2枚ほど抜け落ちてしまったんじゃないかと考えてしまったほどだ。

そして僕たちは2年前に交わした約束通り結婚することになった。

約束の日、僕たちは早起きして、市役所に婚姻届を出しに行った。婚姻届を窓口に提出した。事務員が婚姻届を記入漏れなどがないか確認し始めると、微かに事務員の口元が緩んだ。記入漏れがあったのかな、と思ったが、婚姻届は、そのまま受理され、僕と彼女は夫婦になった。

市役所から帰る途中、僕はずっとあの口の緩みが気になっていて、ずっと何がおかしかったのか考え続けていた。そして僕は、事務員の微かな笑いの意味と、残された0.1オパーセントの意味をやっと見つけることができた。
僕の苗字は馬場で、彼女の名前は文子だった。


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2008年05月22日

膝をすりむいた男の子

「うわーん!うわーん!いたいよー!」小さな男の子は足を放り出し、ぼろぼろと涙を流しながら泣いていた。男の子の膝からは何かの印のように少し血が流れていた。
その周りを大勢の動物と人間が取り囲んでいる。みんな心配そうな表情を浮かべていた。

長い帽子をかぶったコックさんが輪の中から一歩踏み出した。「僕はついさっき、料理をしていてあやまって指を包丁で少し切ってしまった。君より血が一杯出てとても痛かったけど、僕は泣かなかった。だから君も泣くのはよそう」コックさんは男の子の目の前に包帯の巻かれた指を差し出した。包帯は血が染みて赤く染まっていた。

男の子は一旦泣きやんだが、すぐにまた泣き出してしまった。

「うわーん!いたいよー!」コックさんはやれやれといった顔で輪の中に戻ってしまった。

輪の中から小さなうさぎがぴょこんと飛び出した。「大丈夫だよ!私はもう三日間も何も口にしていないのよ。それでも私は泣かないわ。私の空腹に比べればあなたの痛みなんて比べられる物じゃないわ!だから泣かないで!」うさぎの体は不自然に痩せていた。

男の子は泣き止むと、うさぎの体を調べるようにじっくりと眺めた。しかし男の子はまたすぐに泣き出してしまった。

「うわーん!痛いよー!」うさぎは残念そうな顔をして輪の中に戻った。

その後もかわるがわる男の子よりひどい目にあった動物や人間が男の子を慰めた。飼い主に捨てられた犬。戦争で子供を無くしたおばあさん。牙をとられた像。しかし男の子は一旦泣き止みはするものの、すぐにまた泣き出してしまった。

みんなが困り果て、頭を抱えていると、人ごみを掻き分わけて男の子のお母さんが輪の中心に入ってきた。
「あらあら。血が出てる!」
男の子は母親の顔を見るとますます泣き出した。みんなはますます困り、頭を抱えだした。

「どうして血が出てるの?」お母さんはそう言うと、男の子を抱き上げた。

男の子は少ない語彙の中で言葉を探し、難解なパズルを解くように、ゆっくりと並べ、膝からなぜ血が出るに至った経緯を説明した。男の子が全てを話し終えると、お母さんは、「大丈夫」と優しく男の子の頭を撫でた。

男の子は泣き止み、照れくさそうな笑顔を浮かべた。男の子を囲むみんなも照れくさそうに笑顔を浮かべた。

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2008年04月15日

つ、つまんねーー!!

新年度が始まり、昨日から大学に行っているわけですが、講義がとてもつまらないです。
犬の四十八手を想像している方が4倍ぐらい楽しいです。

世の中の大方の人は講義や授業は往々にしてつまらないものだと考えてると思いますが、それにしてもつまらないです。
つまらなさすぎて久しぶりに臭いもの書きました。
まだここを見ている方がいるのかどうか不安ですが、読んで頂けたらとても嬉しいです。


wakuue at 22:51|PermalinkComments(3)TrackBack(0)雑記&日記 

静かなセックスをする女

 その日の朝もいつものように満員電車の中で僕は神経を磨り減らしていた。
いつもなら小さな文庫本を広げるぐらいの余裕があるのだが、入社式だか、入学式だかで、真新しいスーツを着た若者が多く目に付き、電車は大変込み合っていて、真っ直ぐに立っていることさえままならなかった。
さきほどから背中にもたれかかってくる人を支えるために、無理な体勢で足に力を入れて立っているので足が痛くてしかたがない。
本来ならば――多少自己中心的な考えかもしれないが、本当に混雑している電車では仕方が無い――僕も力に逆らわずに前の人にもたれかかれば良いのだ。そうすればみな前の人なり壁なりにもたれかかれる。
なぜ僕がこれほどまでに足を痛くしてまで圧し掛かる力に逆らっているかというと、目の前の恰幅のいい男が縦長に新聞を折って読んでいるからだ。
僕が足の力を抜けば僕の身体は、圧縮された空気に押されて飛び出す吹き矢のように、彼の新聞目がけて飛び出して、あっという間に彼の新聞を、洗濯機から出したばかりのカッターシャツのようにぐしゃっとしてしまうだろう。
他人である僕に、このような思いをさせてまで読まなければいけない新聞には、どれほど興味深いことが書いてあるのだろう?そうでないとすれば、彼には今、新聞を読まなければいけない理由でもあるのだろうか。
どんな理由があるにせよ、僕は目の前の男の都合などに付き合わずに、足を楽にしようかと思ったが、彼が持っている新聞に懐かしい名前をみつけてしまい、僕はもう少し足を痛めるはめになってしまった。
新聞のすみっこの小さなスペースに載っている新書の広告に、小さな文字で書かれた「村上みどり」という名前が、僕の目には一面の見出しのようにでかでかと映った。

彼女とは大学生の頃に、共通の友人を介して知り合った。
その頃、僕は小説家を目指していて、彼女も同じく小説家を目指していた。それもあってか、僕らはすぐに親密になり、1年ほど付き合っていた。
彼女は驚くほどほどの美人ということもないが、美人だった。でも、彼女はとても静かで、同年代の男からすれば退屈な女の子だったのだと思う。でも、同じく退屈な男であった僕――今では、いくらか間を持たせる術を手に入れた――からすれば、彼女はぴったりな女性だった。
僕が下宿していたアパートから彼女の家は自転車で十分程度の距離で、僕が時間を持て余しているときには、僕の部屋へ遊びに来てくれた。
僕と彼女のセックスはとても静かだった。僕がどれほど激しくしようとも、乾いたスポンジに水が吸い込まれるように、激しさは彼女に吸い込まれていき、後には静寂だけが残った。
やはり、彼女は大学生の男には、つまらないと感じる類の女だったのだろう。そして僕も、そうなるならそれでいい、と考えるつまらない男だった。
彼女はセックスが終わるといつも、そっと服を着て机に座り、僕のノートパソコンのスイッチを入れて、ワードを立ち上げると、小さな子供がピアノを玩具にして遊ぶように、ポツポツとキーボードを叩いた。
僕はいつもベッドに寝転んだままそんな彼女の後姿を眺めていた。
彼女は僕と付き合った1年ほどの間に、中篇ほどの小説を5つ書き上げた。そのどれもが素晴らしい物語だった。
彼女の創る物語の結末は決まって悲しいものだった。そんな悲しい結末を書くとき、彼女は決まって涙を眼に溜めながら、愛する人の亡骸を撫でるようにキーボードを優しく叩いた。
僕は彼女が涙を溜めながらキーボードを叩く姿を見たとき、小説家を目指す事を諦めた。諦めたというよりは、目指すことを辞めたといったほうが近いかもしれない。
そして彼女は物語を書き終えると、決まってベッドに戻ってきて僕にそっと寄り添うと、水ではち切れんばかりに膨らんだ風船を針で突いて割るように、机に向かっている間に溜め込んだ悲しみを一気に吐き出して泣いた。
「また幸せにしてあげられなかった」彼女はひとしきり泣いて落ち着くと、いつもそう言ってから少し眠った。

彼女となぜ別れたかはよく覚えていない。僕も彼女も浮気もしなかったし、相手を傷つけるようなことはあまりしなかった。
ただ単にお互いに退屈だったから別れたのだろうか。
その後僕は旅行代理店に就職し、彼女はあいかわらず物語を書き続けている。
彼女の創る物語は世間でも好評で、彼女の名前はよくメディアで目にする。
彼女の書いた本は本屋でみつけるたびに買って読んでいるが、相変らず決まって結末はとても悲しい。

彼女は今も、悲しい物語が終わるたびに誰かの胸で泣いてるんかなぁ   みつを


wakuue at 22:43|PermalinkComments(3)TrackBack(0)臭い物置き場 

2008年01月18日

アケオ、執事、少女

 少女は、小さな家の扉ほどある大きな窓の側で、真っ白な椅子に腰掛け、開け放たれた窓から吹き込む心地いい春風と暖かい陽の光りを全身に受けながら読書に励んでいた。
少女の着ているツヤツヤとした生地の真っ白な洋服と首もとの白い宝石、それに彼女の綺麗なブロンドの長い髪が陽の光に照らされ、きらきらと光り輝いている。
「今日はいいお天気だから、お庭で昼食を頂くわ」少女は視線を手に持った分厚い本に注いだまま、綺麗な声で独り言のようにつぶやいた。
「かしこまりました」扉の脇に立っている若い執事ははっきりとした声で返事をすると、背を向けたままの少女に対し、頭を下げ、静かに扉を開き、そこでまた頭をさげ、ゆっくりと扉をしめた。この若い執事の一連の動きには無駄が無く、ただ扉を閉めただけにもかかわらず、感心するほどに華麗であった。
 この若い執事にかぎらず、この大きな城に携わる者には皆――といっても過言ではないと思う――華があった。この城に住む王族を筆頭に、執事、コック、庭師などみんな華麗で品があった。
 その中でもこの若い執事の容姿、立ち振舞いは群を抜いて華麗であった。この城の主である少女の父が、この若い執事が少女の専属であると知ったとき、「間違いが起こってし 
まったらどうするのだ」と、この若い執事を少女の専属から外そうとしたのだが、一目見たときからえらくこの若い執事を気に入っていた少女に強く抗議され、若い執事は結局この少女の専属のままである。
それほどまでにこの若い執事には華があった。
 少女が細く白い指先でページをめくっていると、窓から声が入ってきた。少女は本に栞を挟むと、窓の外へ目をやった。
 広大な庭には、絵の具をひっくり返したように色とりどりの花と木々が植えられている。
窓のすぐ下のパンジーの花壇の前で先ほどの若い執事が指示を出し、昼食の準備が進められていた。
指示を出す若い執事の足に真っ白な猫がじゃれ付いているが、若い執事は何も気にせずに指示を出し続けている。
この猫は少女にとても可愛がられており、首元には少女からプレゼントされた「アケオ」と名前の刺繍が入った薄い青色の首輪をしていた。
アケオは気まぐれに城内をうろついては、人の足にじゃれつくくせがあった。
アケオにじゃれつかれた時、誤ってアケオの足を踏んづけてしまったり、アケオを蹴飛ばしてしまうことがあった。多くの場合は誰の目にも触れず、知らぬ顔でいればどうにもならずにすむのだが、たまたまそれを見かけたり耳にした少女にひどい罰をうけた者も数多くいた。そのためにアケオは多くの仕様に畏怖の目で見られていた。
ある使用人などは、じゃれついてきたアケオに躓き転び、運んでいた紅茶をアケオに浴びせ、アケオに火傷を負わしてしまった。
その使用人は、魔女の疑いがあるものや、殺人等、凶悪犯に科せられる罰である火あぶりにされてしまった。
それほどまでにアケオは少女に寵愛されていた。
少女は若い執事とその足元にじゃれつくアケオを見てほほえましく思った。
陽の光りに照らされ、きらきらと光る薄緑色の短い芝に、若い執事の黒のスーツと、アケオの真っ白な毛がとても栄えて見えた。
昼食の準備が整うと、使用人達の数人は屋敷に引っ込んだ。
若い執事は芝に膝を着き、アケオの頭を撫でながら少女の部屋の窓を見上げた。
少女が窓から小さく手を振ると、若い執事は少し驚いたように立ち上がり、頭を下げてさっさと屋敷に引っ込んでしまった。
若い執事の様子が可愛らしかったものだから少女がクスクスと笑っていると、すぐにメイドがやってきた。
「お昼の準備が整いました」メイドははっきりとした声でそう言うと先ほど若い執事がしたように何度か頭を下げて部屋を出ていった。
少女はクローゼットを開け、薄手のピンクのショールをかけ、部屋を出た。
 廊下に出ると若い執事が待っていた。執事は頭を下げると少女の少し後ろを歩いた。
「さっきはなぜ慌てていたの?」少女は前を向いたまま言った。毛の長いふかふかの絨毯は二人の足音を吸い込み、廊下はしんとしており、少女の綺麗な声は小さいながらも良く響いた。
若い執事は少女の質問に体をびくっと強張らせ、「失礼しました」と前を歩く少女の背中に向け、歩きながら頭を下げた。
少女は振り返り、頭を下げている若い執事を見て微笑んだ。
「なぜ慌てていたのかと聞いたのよ。ふふふ。あなたおもしろいわね。食後にお庭を一緒にお散歩しましょう」少女はまた前を向き、歩きながら言った。
 「かしこまりました」若い執事は自分の頬が赤くなっているのが恥ずかしく、少しうつむき加減で少女の後を付いて歩いた。
 庭に出ると若い執事は何事も無かったかのように少女をテーブルまでエスコートし、少女も何もなかったかのように淡々と食事を進めた。
 若い執事は少女が食事している間、この後の散歩の事を考え終始緊張していた。
 少女は食事を済ますと、早速若い執事を連れて散歩に出た。
 「私の横を歩いてくれない?私はあなたと散歩しているのよ?」
 「失礼します」若い執事はそういうと、どこかぎこちない歩き方で少女の横に並び歩き始めた。
「陽の光とたくさんの花の匂い、それに春の暖かい風。おそらく今この国でこの庭が一番素敵な場所だわ。そう思わない?」少女は若い執事の顔を覗き込むにようにして質問した。
「はい。」
「あなたの生まれ育った町はこの時期どんな景色なの?」少女は遠くに見える庭師を見つめながら言った。
「この時期はまだ薄く雪が積もっていて花は咲いていません。でもところどころ薄い雪の切れ間に見えている土には小さな芽がでています」執事は緊張で少し声が上ずっていた。
 その後も少女の質問は続いた。庭をぐるりと回る二十分ほどの間、会話は終始少女の質問に若い執事が答えるといった形がほとんどであった。質問は子供じみた物から哲学的な物まで及んだ。
最初は粗相のないようにと恐々と質問に答えていた執事も、少女の子供じみた一面を垣間見てか、屋敷に帰ってくる頃には緊張もほぐれ、楽しく少女の質問に答えていた。
屋敷の前まで来るとカーネーションの花壇からアケオがそろそろとでてきて若い執事の足元にくると、足にじゃれついた。
「アケオもあなたを気に入っているのね」少女はしゃがみこんでアケオの尻尾に付いた花びらをそっと指先で払った。
アケオは嬉しそうに喉を鳴らした。

季節がめぐり、桜の花が落ち、庭の花壇にアジサイが咲く頃には若い執事と少女は日課のように二人きりで一緒に庭の花を見てまわるようになっていた。
いつの間にか少女にとって若い執事はとても身近で、少女が心を許す和少ない存在になっていた。
花について話したり、今読んでいる本について話したり、少女と若い執事は毎日仲良く話すようになっていた。
そうなると少女の父親にとってはやはり気が気ではなかった。少女と若い執事は誰の目に見てもいつ恋中になってもおかしくない状況だった。少女の父親はそれだけはどうしても避けたかった。
しかし少女の若い執事への気持ちはもう恋人に対するそれと、寸分違わぬものになっていた。
そしてついに少女の父親が恐れていたことが起きてしまった。
それはいつものように、少女と若い執事が散歩している時の事だった。
「貴方のことが好きなの」少女は他の使用人が屋敷に引き払うと、開口一番に自分の気持ちを若い執事に伝えた。
若い執事は一瞬顔を驚きの表情の染め、すぐに頬を染めてうつむいた。
「あなた心を寄せている人はいるの?」少女の口からは、もう抑えきれないといわんばかりに核心にせまる言葉が飛び出してくる。
「はい」執事の顔はもう真っ赤になっている。
少女は執事の言葉に心を躍らせた。
「……、それはだれ?」
「田舎の幼馴染です……」執事はうつむいたまま答えた。
少女はその短い言葉をすぐには理解できなかった。難解な外国語を訳すかのように、少しずつ少しずつその意味を理解していった。
「その子の名は?」少女は目に涙を溜め、わなわなと肩を震わせていた。
「……。」執事はうつむいたまま唇をかみ締めていだ。
「名はなんだってきいているの!」少女は量の拳を握り締め、目の涙を溢れさせていた。
若い執事には少女が名前を聞いてどうするのか見当がついていた。だからどうしても言えなかった。この少女の理不尽な一言で命が二つ三つ消えるようなことは良くあることなのだ。
執事は少女を哀れみ、正直に心を寄せる者がいると言ってしまったことをひどく後悔した。
「もういいわ……」少女は震える声でそういうと若い執事をのこしさっさと屋敷の方へと引き返していった。
残された執事は、不安と恐怖で未だ顔をあげることができず、唇をかみ締めていた。

その夜、少女は珍しくアケオを自室に連れて行った。
若い執事がいつものように、寝る前に何か用はありませんかと少女に聞きに行くと少女はすでに床に着いており、返事は無かった。若い執事は少女が心配だったが、言葉を交わさなくて済んだことに安心していた。
若い執事が扉を閉めてから一時間ほど経ち、城に住む多くの者達が寝静まった頃、少女はベットから降りると、机の上のランタンに火を灯した。
ランタンの側でチッチと舌打ちをすると、ランタンの灯が届かないとこのからにゅっとアケオがやってきて、少女の足元に擦り寄った。
喉を撫でてやるとアケオはいつものように喉を鳴らした。
少女はランタンを床に置き、しゃがみこんで、左手でアケオの口をぐっともったかと思うと、次の瞬間には少女の右の親指がアケオの左目にずっぽりと入っていた。
アケオは「ぶふぅーっ!」と押えられた口の隙間から息を漏らし、体の毛を逆立てたかと思うと、少女の親指を眼窩に納めたまま力なくよろよろとその場にへたりこんでしまった。
少女はアケオがへたり込むとすぐにアケオを抱えて部屋を飛び出し、父親の部屋へ向かった。
途中何人かの使用人とすれ違ったが、少女は一瞥もくれずにアケオを抱えたまま父親の部屋へと走った。
絶対に執事を処刑してやる。どんなひどいことをしてやろうか。そんな事を考えながら真っ赤に染まったアケオを抱きかかえながら走る少女の目はぎらぎらと輝いていた。
少女が父親の部屋の前に付いた頃には少女の腕のアケオはもうすっかりつめたくなっていた。
少女はどうしたのですかと驚いている使用人に「アケオが執事に殺されたのよ!」というと父親の部屋の扉を押した。
「お父様、アケオが執事に……目を……」
少女には初め父親が何をしているのか良くわからなかった。小さなランタンの灯の中で父親は全裸でせっせと腰を前後に振っていた。
 そして父親に組み敷かれている若い執事は恍惚の表所を浮かべている。
徐々に少女は目の前の光景を理解していった。
「アケオの目が……」少女の言葉は声にならなかったが執事は少女の存在に気付き、顔をこわばらせた。父親も執事の目線を追うように振り返り、少女を見て顔をこわばらせた。
少女の手からアケオが滑り落ちた。毛の長い絨毯はドサリという音とともにアケオの眼窩からもれる血を吸い取っていった。
「アケオ……目が……シツジニ…………」少女の目は真っ赤に染まり、絨毯で倒れているアケオの目とそっくりだった。
執事と父親はピクリとも動かずに少女を見つめていた。

「アケオ……メ……」


「アケオメ」続きを読む

wakuue at 09:07|PermalinkComments(3)TrackBack(0)臭い物置き場