それは、ある梅雨の夜のことでございました。
蒸し暑さにうんざりしながらも、
夜着に着替え布団に入り明かりを消し、
眠りに落ちようとしておりました。
そのとき、
カサリ、と物音が致しました。
最初は雨の音かと思いました。
しかし、その幽かな音はどうも家の中から聞こえて参ります。
ゴミ屋敷の我が家のこと故、
何かが落ちた音かと耳を澄ましましたが、
どうも様子が違うようでございました。
なにかがいる・・・
恐怖にわたくしは打ち震えました。
思わず明かりを付けましたところ、
物音は止み、辺りには静寂が漂いました。
しばらく様子をうかがったものの変化はなく、
首をかしげつつも再び明かりを消したのでございます。
しかし、
部屋が闇に包まれるとまた、
コソリ、と音が致します。
そのとき、はたと思い出しました。
寝に入る前にリビングで発見したあるもののことを。
そやつは、洗濯物に紛れ込み家に入ってきておりました。
あやつだ、あやつに違いない、と確信したのは、
三度目に明かりを付けたときでございました。
恐怖に打ち震える胸を抑えつつ辺りを見渡すも、
敵の姿は見えません。
部屋が明るい間は奴は動きません。
わたくしは、明かりを消すことができなくなったのでございます。
煌々と明かりを付けたまま瞼を閉じたものの、
なかなか寝入ることができません。
夜中の二時を回った頃、
わたくしはようやく敵と相対する覚悟を決めたのでございます。
そうして、明かりを消して待つこと数分。
敵が動き出しました。
さっと明かりを付け、音の方へ視線を向けると、
黒くて丸い直径1センチ弱の虫が蠢いておりました。
わたくしは、手近にあった紙をまとめて、
敵の上にかぶせました。
ごめんごめんごめんと言いつつ、力を込めました。
音はやみました。
これで安心して眠れるはずでございました。
しかし、昂ぶった神経は、
疲れているわたくしを眠りに誘うことはございませんでした。
つまり、今日のわたくしはチョー寝不足でございます。
ああ、お休みで良かった・・・