okazu通信

October 22, 2023

okazu通信 第100号「龍乗りの物語 in 猪苗代」

ウォールアートプロジェクトを応援してくださっているみなさま

いつもご声援をありがとうございます。ウォールアートプロジェクトのメールマガジンokazu通信です。冬が近づき、山々の色が変わりゆく猪苗代町では、ウォールアート制作真っ只中です。今回はカトウシモンさんの制作エピソードをお届けします。
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okazu通信 第100号「龍乗りの物語 in 猪苗代」
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2023.10. 子どもたちが描いた絵と再会したシモンさん

JR猪苗代駅に降り立つと、雄大な磐梯山が姿を現す。その一方、目の前にはシャッターが降りた建物が並び、お世辞にも活気があるとは言えない。そんな風景が、カトウシモンさんの壁画によって一変しようとしている。

今年のウォールアートフェスティバルふくしま in 猪苗代には一つの大きなテーマがある。来年度、町内の6つの小学校が2つに統合される。子どもたちにとって、単に学舎が変わるだけではなく、喪失感や環境の変化への戸惑い、漠然とした不安が生じることが否めない。統合を目前に控えた彼ら、彼女らにエールを送る取り組みができないだろうか。

そこで白羽の矢が立ったのがカトウシモンさんだ。絵描き、音楽家、詩人・・・シモンさんの活動を何かのラベルで区別することは難しい。「私はこれを伝えたいのだ」ということを多彩な表現方法で、全身全霊で人々に発信し続けている。

9月、まだ暑さが残りつつも、猪苗代では爽やかな風が吹いていた。シモンさんに担当してもらったのは、猪苗代の南側にある翁島小、緑小、千里小の3校。ワークショップの冒頭でシモンさんは子どもたちに「この宇宙のどこまで行っても一つしかない、めちゃくちゃレアなもの、何かわかる?」と問いかけた。考えを巡らせる子どもたち。「心臓!」「自分の想像力!」という答えが聞こえてくる。「惜しい!それもその一部。けど、違う。答えは『自分』です。宇宙の中で唯一無二、君たち自身すべてがとてつもなく貴重なんだよ」とシモンさん。

彼は続けた。

「人生、生きているといろいろあるよ。いろいろな出来事がやってくる。オレはそれを『流れ』だと思っている。避けるでもなく、ぶつかるでもなく、それを乗りこなしていくことが大事なんだ。流れという漢字には、『リュウ』という読み方もあるでしょ?だから流れは『龍』でもあるんだよ。オレは龍に乗っている人の絵をよく描く。この龍乗りは、オレでもある、君でもある、そこの先生でもある。今、生きている一人一人、みんな龍乗りだと思っているんだ。今日はそんな、みんなのエネルギーを一筆に注いで、この板に込めてほしい。バーンッ!と。出来上がった絵を壁に貼って、じっくり観て、浮かび上がってくる何かを描き出します。楽しみましょう」。

声も、体も、ジェスチャーも大きくて、坊主頭のシモンさん。一見ちょっと怖い。けれど子どもたちは臆するどころか、目に熱を宿していく。この人はどうやら本気で自分に向き合っているぞ、と伝わったようだった。子ども×シモンの化学反応が起こった瞬間を目の当たりにした。

ワークショップでは、一人が筆を持ち、描いている間、周囲の人はその姿を見守った。シモンさんは持参したドラムを叩き、空間をリズムとメロディで満たしていく。「大胆にいけ」「もっとそこも描けるよ」と子どもたち同士が声援を送る。やがて、各学校、全児童の筆が入った。200人の子どもたちの巨大なエネルギーの塊が誕生した。

 1018日に制作がスタートしてから4日。早くも何者かの姿が立ち現れてきた。さらに、壁画は、シモンさんがつむぐ詩によって物語になる。1145日のWAF一般公開の日に、ぜひ見にきてほしい。

 

okazu

ワークショップの様子を動画にまとめました。下記リンクよりご覧ください。

https://youtu.be/p0ai7AzAb44

 

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ウォールアートフェスティバルふくしま in 猪苗代 2023特設ウェブサイト

https://inawashiroartproject.com/waf

 

猪苗代町内、14の壁画をバスでめぐる鑑賞会への参加者、まだまだ募集中です!

残席が少なくなってきました。申し込みはお早めに!

https://coubic.com/waffinawashiro/2118492#pageContent

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ウォールアートフェスティバルふくしま in 猪苗代 2023

【主催】 猪苗代アートプロジェクト実行委員会 https://inawashiroartproject.com/

【共催】猪苗代町教育委員会、ウォールアートフェスティバルふくしま in 猪苗代実行委員会、社会福祉法人安積愛育園はじまりの美術館、NPO法人ウォールアートプロジェクト
【助成】令和5年度福島県地域創生総合支援事業(サポート事業)補助金、公益財団法⼈ 福武財団
【後援】猪苗代町、一般社団法人猪苗代観光協会、福島民報社、福島民友新聞社

【協賛】貝印株式会社 ベンジャミンムーア 薮内利明 有限会社ブルーベア ポーラスター株式会社 佐保田雅代

【協力】ターナー色彩株式会社

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ウォールアートプロジェクトは、活動を応援してくださる応援団を募集しています。
サポートは、一口3000円から。ご寄付をいただいた方にメールマガジンokazu通信を配信しています。
詳細はこちらをご覧ください。

https://wallartproject.net/supporter/


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ウォールアートプロジェクト 2023年度
【協賛】貝印株式会社 Blue Bear Inc. ポーラスター株式会社
【協力】コクヨカムリン合同会社 
WAP応援団 2023 2023.10.22 現在 6
林原裕子 菅原信子 鹿島和生 いやまっち 内野友稀 佐保田雅代

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October 08, 2023

okazu通信 第99号「ワルリ画の制作ボランティア in 猪苗代、大募集!」

ウォールアートプロジェクトを応援してくださっているみなさま

いつもご声援をありがとうございます。ウォールアートプロジェクトのメールマガジンokazu通信です。猪苗代町で6回目の開催となる「ウォールアートフェスティバルふくしま in 猪苗代」 2023の滞在制作がスタートしています。インドからのワルリ画家ワィエダ兄弟の制作ボランティアを
大募集
中です!詳しくは下記をご覧ください。

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okazu通信 第99号「ワルリ画の制作ボランティア in 猪苗代、大募集!

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2023.10.4 描き始め@猪苗代高校アートルーム
 今年のWAFふくしま in 猪苗代の滞在制作がスタートしている。ワルリ族のワィエダ兄弟が猪苗代高校で巨大な壁画制作に取り掛かって3日が経った。この10年間、彼らはウォールアートプロジェクトに欠かせない存在であった。ボランティアとしてアーティストの制作アシストから始まり、次第に一アーティストとして作品を描くようになっていった。二人が暮らすガンジャード村。ラダック。ビハール州カガリア。初来日となった猪苗代でのWAFプロローグ。そして伝統的な家を建てたnoco projectや世界森会議。一緒に取り組んだプロジェクトは10にのぼる。
 コロナ禍で隔てられた3年間を経て、彼らはさらにパワーアップしていた。ワルリ族の年長者やシャーマンたちからの聞き取り調査に注力し、神話、歌、植物の扱いなど、古くからの暮らしの知恵を集めてきた。それは、自らのアイデンティティを深めることに直結し、ワルリ画のバックボーンとなって表現をグンっと加速させている。
 猪苗代高校の全校生徒へ向けて彼らはこう語った。「皆さんが準備してくれた下地に私たちが描こうと思っているのは、目に見えないエネルギーです。視覚では捉えられないけれど、確かにそこに存在するものがこの世界にはあります。もちろん猪苗代にも。私たちが挑戦するのは、そんなエネルギーをいかに描き出すか。いつでも気軽に現場に見にきてくださいね」。
 ワィエダ兄弟は、水、風、火、土、などエレメントの表現も豊かだ。それは、対話を生み出す種になるという。また、神話や村の生活を描くことは、ワルリ族が自然とどう関わって生きてきたのかを表す。それも見る人の間に対話を促す。
 ワルリ画は線や、丸や四角などの幾何学模様を多用する。彼らはそれをアルファベットのようなものだという。そのアルファベットを使い、物語を描いていく。猪苗代での1ヶ月間の滞在で、彼らはワルリ画で何を語るのか。刮目してほしい。

 okazu

===わふのこNEWS===
ワィエダ兄弟の制作を手伝ってくれるボランティアを募集しています!
ワィエダ兄弟の制作過程を見ることができるのは、猪苗代高校の生徒と先生と、制作ボランティアの人のみです!
10月16日から、公開日直前の11月2日まで。土日を除く平日の9:00〜17:00。この間にワンポイントでも良いので手伝える制作ボランティアを絶賛募集します。
1日4人は欲しい。それ以上いないと終わらないかも!?という切羽詰まった状況です。
絵の具が垂れてしまったり、はみ出ると絵の雰囲気が異なってしまうため、筆の扱いにある程度慣れている方を募集します。
芸術系の学校の出身の人。
芸術学部の学生さん。
絵手紙描くのが好きな人。
日曜画家している人。
丁寧な手仕事に自信がある人。
やってみたい気持ち優先です。かつてのWAFでは、インドまでたくさんのボランティアが来てくれました。でもみんな成長して、それぞれの仕事がある。土日ならまだしも、平日は難しいかもしれません。
それでも!
この日ならいけるよ!
猪苗代まで駆けつけるよ!
という方がいらっしゃいましたらメールください。
詳細をやりとりしましょう。
info@tsomoriribunko.com 

このアドレスは不達になりにくいけれど、もしもお電話なら、ツォモリリ文庫03-6338-1469へ。

「猪苗代の制作ボランティアの件です」と伝えてください。
ご連絡、お待ちしています!

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ウォールアートフェスティバルふくしま in 猪苗代 2023特設ウェブサイト

猪苗代町内、14の壁画をバスでめぐる鑑賞会への参加者、募集中です!
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ウォールアートフェスティバルふくしま in 猪苗代 2023
【主催】 猪苗代アートプロジェクト実行委員会 https://inawashiroartproject.com/
【共催】猪苗代町教育委員会、ウォールアートフェスティバルふくしま in 猪苗代実行委員会、社会福祉法人安積愛育園はじまりの美術館、NPO法人ウォールアートプロジェクト
【助成】令和5年度福島県地域創生総合支援事業(サポート事業)補助金、公益財団法⼈ 福武財団
【後援】猪苗代町、一般社団法人猪苗代観光協会、福島民報社、福島民友新聞社
【協力】ターナー色彩株式会社
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ウォールアートプロジェクトは、活動を応援してくださる応援団を募集しています。
サポートは、一口3000円から。ご寄付をいただいた方にメールマガジンokazu通信を配信しています。
詳細はこちらをご覧ください。

https://wallartproject.net/supporter/



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ウォールアートプロジェクト 2023年度
【協賛】貝印株式会社 Blue Bear Inc. ポーラスター株式会社
【協力】コクヨカムリン合同会社 
【WAP応援団 2023】 2023.10.6 現在 5名
林原裕子 菅原信子 鹿島和生 いやまっち 内野友稀
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June 06, 2023

okazu通信 第98号 「植樹の日」

ウォールアートプロジェクトを応援してくださっている皆様

いつもご声援をありがとうございます。ウォールアートプロジェクトのメールマガジンokazu通信です。ラダック、マトー村にていよいよ植樹の日を迎えました。My Tree プログラム、セカンドチャレンジ受付も残り4日となりました!

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okazu通信 第98号 「植樹の日」
on the dy of plantation
2023.6.2 植樹チーム in マトー村。丘の上にマトーゴンパ

 朝5時、岩でゴツゴツした山肌と雪を頂く峰々が薄らと赤く染まりつつあった。マトーゴンパ(寺院)宿坊の窓の外には、今日は素晴らしい日になりそう、そんな予感をさせる景色が広がっていた。62日、2年前から計画を進めてきた植樹に取り組む日がやってきた。
 「1日までには大部分の木々を植えて、当日は残りを植える計画でいきましょう」と、今回のプロジェクトでタッグを組んでいる農業・文化大臣のチョスペルさんは当初話していた。だが、蓋を開けてみると、植樹をするための穴掘りが殆どできず、この当日に村人の協力のもと、一気に植える、ということになった。私の胸の内は「果たしてどうなってしまうのだろうか」という不安と、彼を信じようという気持ちがない混ぜになっていた。
 ところで、マトーゴンパに宿泊できたのは、植樹のミッションを担ってやってきた曹洞宗福島県青年会のお坊さんたちに同行していたためだ。前夜には、チベット仏教サキャ派のマトーゴンパと曹洞宗のお坊さん同士の座談会、この日の朝には座禅を組んだり、朝のお祈りに参加する交流が図られた。マトーゴンパには70名ほどのお坊さんが在籍していて、ほとんどがマトー村出身。そのうち30名は、インド各地の仏教寺院に修行に出ている。15年から20年程で戻ってくるそうだ。2017年からマトー村のプロジェクトで接点はあったものの、私自身、本格的な交流は今回が初めてだった。毎朝のお祈りは、600年前に建立されたお堂で行われる。経文を唱える声、貝、ラッパ、太鼓の音色、上に吹き抜ける構造の建築、壮麗な壁画、小ぶりながらも存在感のある観音像。お堂という空間に歌、演奏、絵画、建築、彫刻といったアートの領域にある活動が凝縮されていた。信仰と芸術の深い関係性や、ヒトは想像力を用い、それら文化を作り出すことを営々とやってきているのだな、と思いを巡らせた。そして、それら文化が保たれ続けているゴンパは、まさに村人にとっての精神的支柱であった。

 外に出ると、なんと、あられのように硬い雪が降っていた。まさか今の時期に降るなんて、誰も予想していない。ゴンパの僧長も「今日は特別な日ですね」と言っている。驚きながらゴンパから見下ろす丘の下にある植樹地に目をやると、村の人々が集まって作業している。穴を掘って木を植えてくれているに違いない!この時、私がいかに胸を撫で下ろしたか・・・言葉に尽くせない。日本人お坊さんチームと私も植樹地に移動すると、150人ほどの村の人々が敷地内で散り散りになって作業してくれている。アーティストチームと行動を共にしていたakkoさんも加わり、いざ植樹。植樹地は硬い地面で、掘るにはスコップではなく、先端がヘラ状になった鉄の棒を使い崩し、土をカップや手で掘り出していく。30cmほど掘らなくてはならず、一つ掘るだけで結構な労力。「深さはこのくらいですか?」と見守ってくれるゴンパのお坊さんに尋ねると、まだもうちょっと、と言う。このやり取りを5回くらい繰り返し、ようやく30cmに達すると、苗木を挿し、掘り起こした土をかぶせ、ぎゅっと固める。水をあげて、カタックという白い布を祈り込めて結びつけ、完了。この頃には雪は止み、晴れ間がのぞいていた。だが相変わらず風は強い。

昼近く、上部に集合し、ティーセレモニーの時間となった。そこで今回の植樹の目的は「アートの森」を作ること。今年は二人のアーティストが制作にやってきていること。森の成長を見守るために来年、再来年へと繋げていくこと、などを吹き付ける強風の中、お腹から声を出して伝えた。途中途中で盛大な拍手をもらい、わかってもらえている手応えを感じた。朝私が抱いていた不安は雪のように溶けて、希望が胸を暖めてくれた。セレモニーが終わると、みんなすぐに作業に戻った。そして夕方5時半まで作業を続けてくれた。なんと頼もしいことか。
 それと波長を合わせるように、アーティストチームも611日のオープニングセレモニーを目指し、日夜鋭意制作中だ。今日6日に、日本からのボランティアチームもインド入りし、植樹と制作アシストに取り組む。いよいよ木を植えることからはじまる芸術祭が始まる。

 

okazu


My-tree-プログラム

mytree達成度_20230606_4

自分の木がラダックの大地を緑の森に変える!
ラダックに行けなくても、苗木を贈り、システムをサポートし、現地の森でMy Treeが育つ様子を見守っていただくプログラムです。
現在、セカンドチャレンジ中です。受付は、6月10日までとなっています。

目標300本 達成度…237本/300本(2023/6/6更新)
詳細はこちらをご覧ください。
https://wallartproject.net/my-tree-program/

苗木のドネーションをしてくださった方々はこちらです。
https://wallartproject.net/my-tree_program_level/

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ウォールアートプロジェクト 2023年度
【協賛】貝印株式会社 Blue Bear Inc. ポーラスター株式会社
【協力】コクヨカムリン合同会社
【WAP応援団 2023】 2023.5.21 現在 5名
林原裕子 菅原信子 鹿島和生 いやまっち 内野友稀




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May 21, 2023

okazu通信 第97号「ウォールアートプロジェクトと森」

ウォールアートプロジェクトを応援してくださっている皆様

いつもご声援をありがとうございます。ウォールアートプロジェクトのメールマガジンokazu通信です。ラダックでのフォレストアートフェスティバルへ向けて、私たちウォールアートプロジェクトと森の関係を振り返ります。

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okazu通信 第97号「ウォールアートプロジェクトと森」
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2023.4.22 ラダック現地のメンバー

 4年ぶりとなるインドでのプロジェクト「フォレストアートフェスティバル」開催へ向けて出発間近となった。キーワードは、「木を植えることからはじまる芸術祭」。そして「アートの森を作るプロジェクト」。

 先日、シャワーを浴びながら考えを巡らせていると、2010年、1回目のウォールアートフェスティバル(WAF)から森のイメージが私たちと共にあったことを思い出した。

舞台は茶褐色の乾燥した村だった。そこにのびのびと植物が生い茂っていくような作品を制作していた淺井裕介さんに来てもらった。完成した壁画のタイトルは『誓いの森』。

 石鹸で体を洗いながら、「そうだ、この時から森だった!」と脳内のシナプスに電気信号が走った。

 私たちが森にもう一歩近づいたのは、ワルリ族の村でWAFを開催している時だった。森に囲まれた村で生活している彼らの伝統的な家は、木と土と牛ふんからできている。けれど、家の大黒柱になるサーグの木(インディアンチーク)が手に入れにくくなっていた。こんなに木がたくさんあるように見えるのに、なぜ、と疑問に思ったが、その背景に迫っていくと、外部の人々による木々の伐採によって、森が減少しつつあることが分かってきた。ワルリ族の人々も家の素材を変えるなど、暮らし方を変えつつあった。その時から、森と人、水、土、種子、生態系、農業について情報を集め、学び直しをしてきた。
 世界森会議に向けた勉強会の中で、写真家セバスチャン・サルガドを追ったドキュメンタリー映画を見た。その終盤で、彼らが伐採により不毛の地となったブラジルの土地に森を作る活動をしていることを知った。原生種にこだわり、植えた初年度は6割が枯れ、翌年は4割が枯れ・・・という失敗を乗り越え、20年間で200万本の木を植え、失われていた滝が蘇り、鳥をはじめとした野生動物たちが戻ってきて、豊かな生態系が復活した。
 また、インドのデラドゥーンにあるヴァンダナ・シヴァ博士のナヴダーニャを訪れた時のこと。有機農業の実践と研究、ファーマーへの教育を行うその農園は、緑にあふれていた。彼女が活動を始めた30年前は荒地だった。「こんなところで農園なんて馬鹿げている」と周囲の人は言っていたそうだ。けれど、農業をしながら木を植え続けた結果、今では、地下水位も上昇し、豊かな農園になっている(google mapで航空写真を見るとそこだけ森になっている)。
 その時は私たちがインドで植樹をすることになるなんて思っても見なかった。それが実現しようとしている(経緯は前号のokazu通信96号を参照のこと http://blog.livedoor.jp/wall_art/archives/52104054.html)。
 心強いのは、ラダックの人々の後押しだ。農業・文化大臣のチョスペルさんに尋ねてみた。―チョスペルさんは、自治評議会の中でアートと文化担当ですが、どんな出来事がチョスペルさんにアートや文化への興味を持たせたのでしょう?
 「自分のバックグラウンドは法学なので、アートを学んだり作品を作ってきたわけではなく、門外漢なのです。ですが、農業部門担当になった際に、文化・アート担当にもなります、と自分から申し出ました。アートと文化交流が人々の意識を変え、枠の外に出る可能性を秘めていると私は信じているからです。道路や建物がいくら素晴らしく立派になったとしても、文化的に貧しくなっていっては、人に平和や幸せはやってこない。これまでの2年間で村に伝わる踊りや歌を残し、次世代に伝える取り組みに力を入れてきました。ラダックには、素晴らしいアーティストたちが生まれつつあります。来年もぜひアーテイスト同士の交流を深める計画を進めましょう。目の前の数十万ルピーの話ではなく、人と人が出会い、交流を深め、相互理解をし、繋がっていくことがこれからの時代に大切になってくるはずです」
 彼が向いている方向は、私たちと同じだと感じた。一昨日彼から電話があり、「okazu、プロジェクトの規模が大きくなる。マトー村の寺院が多くの樹木の寄附をしてくれることになった。これでこそコラボレーションになるぞ!」と驚きのニュースを聞かせてくれた。わたしたちから何かをもたらすだけでなく、この手と手を取り合う流れが生まれたことがたまらなく嬉しい。
 単純に植樹するだけだったら、彼もこうは動かなかったかもしれない。今回もアートが私たちと相手の媒介になってくれた。滞在制作やワークショップでどんな化学反応が起こるのか。ワクワクを抑えきれない。

okazu

My-tree-プログラム
自分の木がラダックの大地を緑の森に変える!
日本にいながらラダックでの森づくりに参加するMy Treeプログラムを創設しました。

ラダックに行けなくても、苗木を贈り、システムをサポートし、現地の森でMy Treeが育つ様子を見守っていただくプログラムです。
目標300本 達成度…149本/300本(2023/5/21更新)
詳細はこちらをご覧ください。
https://wallartproject.net/my-tree-program/

苗木のドネーションをしてくださった方々はこちらです。
https://wallartproject.net/my-tree_program_level/

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ウォールアートプロジェクト 2023年度
【協賛】貝印株式会社 Blue Bear Inc. ポーラスター株式会社
【協力】コクヨカムリン合同会社
【WAP応援団 2023】 2023.5.21 現在 5名
林原裕子 菅原信子 鹿島和生 いやまっち 内野友稀



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March 10, 2023

okazu通信 第96号「フォレストアートフェスティバルに向けて」

ウォールアートプロジェクトを応援してくださっている皆様

いつもご声援をありがとうございます。1月下旬にインドを訪れました。真冬のラダックは寒く、室内に置いてある玉ねぎも凍ってしまうほど。
そんなラダックからのレポートです!

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okazu通信 第96号「フォレストアートフェスティバルに向けて」
 
 L_forest art festival
2023.1.26. ラダック・マトー村の植樹予定地

 飛行機に接続されたタラップに一歩踏み出すと、太陽の光を反射する銀世界が広がっていた。1月24日、標高3250mにあるラダック唯一の飛行場・レー空港に降り立った。気温は氷点下7度。荷物を受け取り、タクシーに乗り込む。寒さは想像していたほどでもない。「久しぶりに日光が降り注いでいるから、日中はどんどん暖かくなっていくよ」とドライバーのドルジェイさん。確かに時計の針とリンクして気温が上昇していた。太陽って偉大だ。ゲストハウスに向かう道中、人はほぼおらず、店も大体閉まっている。夏のハイシーズンには、ラダックの全人口10万人よりも多くの観光客や出稼ぎの人々が訪れる。その賑やかさが嘘のように静まりかえっていた。
 ラダックに来た目的は5月から6月にかけて開催する新プロジェクト”Forest Art Festival”へ向けての準備だ。2010年から学校の教室という壁に囲まれた空間を壁画の力で別世界に変えてきたWall Art Festival(WAF)。その次のフェーズとして、ラダックやワルリ族の人々と木を植えることから始める芸術祭”Forest Art Festival”に取り組んでいく。
 2020年、コロナ禍となりインドに行けなくなった私たちは“ノコ・チームのビヨンド・コロナ”というオンライントークセッションを始めた。ワルリ族やラダックの遊牧民の知恵に学び、土・風・水といったエレメントについて考えを深め、場を創作することについて話してきた。それは過去と出会い直す時間であり、今生きていることの大切さを実感する機会だった。そして「またインドと日本を行き来できる時=ビヨンド・コロナが来るといいな」と思いを募らせていた。
 そんな中、一緒に猪苗代でWAFを開催してきている楠さんに「曹洞宗福島県青年会の周年事業として社会貢献活動を計画しているのだが、WAPと協働できることはないだろうか」との相談を受けた。私とあっこさんは、これまで自分たちが取り組んできたことや、関わり合いになってきたインドの人々との関係性を丸ごとひっくるめて熟慮を重ねた。やがて「アートの森」を一緒に作るプロジェクト“Forest Art Festival”に思い至った。木を植え育てることが得意なラダックのマトー村や、ワルリ族の人々と協力して森を作り、その生長を見守る存在としてアート作品を展示する。木の世話をする人、作品の制作に携わる人、収穫に来る人、作品を観に来る人など、関係人口を増やし、数年後、誰もが楽しめる「アートの森」ができたら。森を作ることが創造的行為になっていく。そんな光景を思い描いた。
 話は1月、厳冬期のラダックへ戻る。ゲストハウスに着いてまず連絡を取ったのは、マトー村のキングに繋いでもらったラダック自治政府の農業担当大臣Stanzin Chosphelさんだった。翌日、彼のオフィスでForest Art Festivalについてプレゼンをすると「実は、私は文化政策も担当しています。森とアートを組み合わせる、というのはまさに私が実現したいことでもあります」と前のめりで話を聞いてくれた。さらに翌日、マトー村の植樹の候補地を下見に行き、寺院のお坊さんたちに案内してもらった。
 見渡す限りの岩石地帯だが、雪解け水が地下を流れているので、泉が湧いていて(氷結していたけれども)、すでに一基井戸があった。Chosphelさんの提案では、植樹に際に新しく井戸を掘削し、点滴灌漑で根元に給水する計画だ。植えるのは、リンゴやアプリコットなど、少ない水でも育つ果樹を中心にする。気候変動で近年ラダックでもそれら果樹が育つようになっているとのこと。5月まで残り少ない期間で、実現に向けてどう計画を進めていくか、打ち合わせをし、ラダックを後にした。
 2020年からの3年間は、ぎゅっと縮まり、まるでその時から今にワープしてしまったかのようだ。コロナ禍が収まりつつある現在、私たちはあの時に思っていた“ビヨンド・コロナ”のほど近いところまで来ている。

okazu

☆わふのこNEWS☆
●Forest Art Festivalを一緒に作っていくプロジェクト参加者を募集しています!
下記のリンク先より詳細をご覧ください
https://wallartproject.net/special/forest-art-festival/
 
●3月18日 ウォールアートフェスティバルふくしま in 猪苗代2022 報告会
スギサキハルナ展「偶然の着地」での壁画完成記念イベントとして、本年度、猪苗代で開催したWAF2022報告会を行います!
日時:2023年3月18日(土)午後6時30分~午後8時
会場:ツォモリリ文庫(東京都調布市仙川町1-25-4 1F)
詳細はこちらをご覧ください。

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ウォールアートプロジェクト 2022年度
【協賛】貝印株式会社 Blue Bear Inc. ポーラスター株式会社
【協力】カモ井加工紙株式会社
【助成】東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京 (ワィエダ兄弟のワルリ画の世界「ANCIENT FOREST-太古の森」)
【WAP応援団 2022】 2023.3.9 現在 14名
薮内利明 林原裕子 本田啓之 菅原信子 鹿島和生 佐保田雅代 佐保田昌美 北辻宣宏 五十嵐ファミリー ひろちゃん 東京ヨーガセンター 敦子 ツツミエミコ まるこ 内野友稀 


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January 11, 2023

okazu通信 第95号「土地に生かされている感覚」

ウォールアートプロジェクトを応援してくださっている皆様

ウォールアートプロジェクトより新年のご挨拶を申し上げます。2023年、いよいよインドでのプロジェクトを再始動する予定です。変わらぬご声援をどうぞよろしくお願い致します!
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okazu通信 第95号「土地に生かされている感覚」
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2022.7. ワィエダ兄弟(左:マユール,右:トゥシャール)のアトリエにて.二人の女性は弟子.(撮影:おおくにあきこ)

 福島県八山田の実家で年を越し、初詣のついでに神社の隣にある墓地を訪れ、墓参りをした。降っていた天気雨はあがり、澄んだ空気の中、トンビの声が響いていた。通路以外は土が剥き出しで、目を足元に向けると、単子葉類の植物が見たことのない青い実をつけていた。地這い性の赤銅色の草はエンジ色の花を咲かせている。土っていいなと思い、ふと、ワルリ族のワィエダ兄弟が昨夏に来日し展示とワークショップをしたときのマユールの言葉を思い出した。彼は、自分の家族の墓の話をした。
「今回の展示『太古の森 Ancient Forest』の根底にあるのは、『肥沃な土 fertile soil』。僕らワルリ族は、家庭ごとに死後、遺体を焼き、葬る場所が決まっているんだ。先祖は死後、灰になってまた土へ戻って行った。他の自然の生命体と同じように、生まれて、育って、生み出して、育てて、死んで、次の命を育む土になる。『人も自然である』というワルリ族に伝わる思想なんだ」
 肥沃な土、に注意が向くようになったのは、コロナが一つの転機だったという。
「これからのコミュニティを担っていく世代として、自分自身も肥沃でなくちゃいけないなと思った。まずは自分の身体に優しくすること。それまではとにかく作品を描いて、ワルリ画家として身を立てようと必死で走り続けていたから、体調を崩すことも多くなっていたんだよね。今は、走ったり、遠くまでサイクリングしたり、運動もだいぶするようになったよ。そしてワルリ族の古くから伝わる生きる知恵、口伝の民話、儀式の詳細についての聞き取り調査に一層力を入れるようにしたんだ。それを自分たちの中で醸成させて、創作の栄養にしているんだ」
 さらに彼は続けた。
「それと、そういう記録や自分たちが積んできた経験をひと回り下の世代にパスすることで、人を育てたいと思うようになった。そこに至れたのが大きな変化だった」
 ワィエダ兄弟が展示した作品の中に、「Dwellers -住人-」という作品があった。ワルリ族はサイヤドリ山脈と呼ばれる海抜500mに満たない程度の山々に暮らしている。「ワルリ」の語源は、「ワラル」という、地面を掘って米やタネを埋め、水が入らないように石を積み、木や竹の囲いで覆っていた保存方法のことを言う。ワラルを作る人々=ワルリ、となった。
 この作品では、自然と共にあり、自然を利用し、恵みに感謝し、自然に戻っていく、本来のワルリ族の暮らしを描いていた。そこには、”土地に生かされている感覚”を感じ取ることができた。
 思い出し終わると、ポッケに手を入れないとたまらなかった冷たい風はいつのまにか落ち着いていた。2羽になったトンビは風の流れに乗り泳ぐように舞っている。墓地は小高い丘にあるから360°視界が開けている。眼下には開発が進んだ住宅地、背面に私が小学6年生の時に新しく建設された小学校が見える。分校のような存在だった行健第二小学校は当時児童数が120人だった。現在は600人を超え、周辺地域で最大らしい。住宅地方面はアスファルトで覆われ、土が剥き出しの所はほぼない。冬の柔らかい陽光に居心地の良さを感じ、この土地に暮らし始めた人、暮らし続ける人の気持ちが少しわかった気がした。けれど、記憶に残る田畑ばかりの八山田の風景は失われた。『肥沃な土』や『土地に生かされている感覚』は確かにここにもあったのだろうけれど、今はだいぶかぼそい。
 ワィエダ兄弟を迎える前にガンジャード村を3年ぶりに再訪したのだが、似たような変化を見た。高速道路や鉄道など巨大インフラ工事のために森が伐採され、川が堰き止められ、水の流れが変わっていた。引っ越してくる住民の数も増え、それにともない新しい店や24時間営業のガソリンスタンドができていた。そこがAmazonで注文したものの預かり所にもなっているそうだ。ワルリ族もAmazonを頼りに暮らしている。それはかなりの驚きだった。
 現代は生きるために必要なものほぼ全てを金銭で交換できる。金銭と引き換えに移動も自由自在だ。一方で、その暮らしの中では “土地に生かされている感覚”は薄らいでいく。金銭を使い、願いが思い通りに叶えば叶うほど、そうなっていくのではないだろうか。私は “土地”という言葉を、生まれた場所に限るつもりはない。土地に縛られる必要はないと思うから。今まさに生きているその場所のことを”土地”だとすれば、地球全土どこにいってもそれがあてはまる。私を含め、多くの人がワルリ画に惹かれる理由は”土地に生かされている感覚”を思い起こさせる力が絵にあるからではないだろうか。その感覚をコンパスに「生きる」という旅を続けようと思った1月1日だった。

Okazu

これを書いている時に読んだ本
「野生哲学 アメリカ・インディアンに学ぶ」菅啓次郎×小池桂一

☆わふのこNEWS☆

●3月18日 ウォールアートフェスティバルふくしま in 猪苗代2022 報告会
スギサキハルナ個展のイベントとして、本年度、猪苗代で開催したWAFを開催します!
日時:2023年3月18日(土)午後3時頃を予定
会場:ツォモリリ文庫(東京都調布市仙川町1-25-4 1F)

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ウォールアートプロジェクト 2022年度
【協賛】貝印株式会社 Blue Bear Inc. ポーラスター株式会社
【協力】カモ井加工紙株式会社
【助成】東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京 (ワィエダ兄弟のワルリ画の世界「ANCIENT FOREST-太古の森」)
【WAP応援団 2022】 2023.1.3 現在 13名
薮内利明 林原裕子 本田啓之 菅原信子 鹿島和生 佐保田雅代 佐保田昌美 北辻宣宏 五十嵐ファミリー ひろちゃん 東京ヨーガセンター 敦子 ツツミエミコ まるこ

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August 11, 2022

okazu通信 第94号「止まらない、終わらない、何もかも」

okazu通信 第94号「止まらない、終わらない、何もかも」
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ナムギャルくんとハグ(*グリーンの服が私)
 
 7月15日から31日にかけて、2年半ぶりにインドを訪れた。雨季真っ只中、地域によっては警報が出るほど雨量が多くなっていた。訪れたのは、デリー、ラダック、ジャイプール、ウダイプール、ワルリ族が暮らすガンジャード村、ムンバイ。ラダック以外、傘が手放せず、じめっとしている毎日だったが、それもまた懐かしかった。あっという間の半月の旅、振り返ると一つの言葉が思い浮かんだ。「止まらない、終わらない、何もかも」という、ワルリ画家ラジェーシュ・ヴァンガードさんがWall Art Festival 2014で描いた壁画のタイトルだ。その理由は、2人の少年の成長を目の当たりにしたことにある。
 ラダックのSECMOLという教育機関を再訪した。そこで、ラダックの中でもさらに奥地、チャンタン高原の遊牧民出身のナムギャルくんに出会った。出会い頭、彼は「私はあなたに会ったことがあります。プーガの学校で」と言う。私は耳を疑った。
 プーガは、2014年に芸術祭Earth Art Projectを開催した標高5000mにある遊牧民の子どもたちが通う寄宿学校のこと。なんと彼はそこを卒業し、太陽熱を生かした住まいづくりや、人工氷河での貯水、オーガニック農業を学ぶ研修生としてSECMOLに在籍していた
 私たちがプーガで芸術祭を行おうと決めたのは「教育を受けた遊牧民になりたい」という、当時の学生たちの言葉に衝撃を受けたからだった。自分たちのコミュニティが引き継いできた動物の毛や乳など畜産物の生産を発展させ、チャンタン地域の文化を保っていきたいという意思に感銘を受け、その存在を外へ発信したいと思ったのだ。
 持続可能な社会づくりの担い手を多数輩出し、私たちもお手本にしたいと思っているSECMOLでナムギャルくんが学んでいることが、この上なく嬉しかった。ナムギャルくんに「ここで学んだ後はどうするつもり?」と尋ねると「そろそろ本気で考えなくてはいけなくて。でもチャンタンに戻ろうと思っています」と、はにかみながら答えた。”教育を受けた遊牧民になりたい”という言葉は、私の中でずっと生き続けていて、指針になっている。ナムギャルくんはそれを体現しようとしているのか、と心に熱を感じながら、SECMOL見学者を案内する彼の背中を見送った。
 2人目はラジェーシュさんの長男ヴィシャールだ。私は2012年からラジェーシュさんの家にホームステイし、約5年間、彼や村の青年たちとプロジェクトの準備に邁進していた。ヴィシャールは、それをつぶさに見ていた。日本からやってきたアーティストもラジェーシュファミリーのお世話になっていたから、壁画制作はもちろん、その素の姿もよくよく見ていたことだろう。
 当時10歳の彼は今や20歳になった。「アートを志しているんだよ」と、不在の本人に代わりラジェーシュさんが教えてくれた。土と牛ふんでできたたたきの土間に、ヴィシャールが作ったワルリ族の伝統的な家の模型があった。その忠実な作りに驚いていると、「ちょっと待ってて」とラジェーシュさんが持ってきたのは、なんと、伝統的な暮らしを成り立たせている道具のミニチュアの数々。鎌、鋤、鶏を入れておくカゴ、米を貯蔵する竹柵・・・ちゃんと強度を増すための牛ふんも塗ってある。私はあまりのすごさに言葉を失った。「部族ミュージアムからも収蔵したいと言われているのだけど、『まだ完成していないから』、と本人が辞退していて(笑)。noco projectのみんなと一緒に伝統的な家も建てたし、これまでウォールアートプロジェクトの取り組みを見てきたことが影響していると思うよ」とラジェーシュさんが嬉しそうに話してくれた。
 ヴィシャールは、デッサンやドローイングも練習し、描き溜めていた。数冊のスケッチブックに、努力の熱量があった。「君はアートで生きている人たちにたくさん出会ってきたからな!」と心の中でハグした。
 青年となったこの2人の成長にウォールアートプロジェクトがどれほど影響を与えたのか、それを数値化することはできない。けれど、異邦人として、「君たちが暮らしているこの土地は、こんなによいものがあるよ」と、アーティストやボランティアの力を借りて伝えることに全身全霊、取り組んできた結果なのではないか、と、報われた思いがした。自分の根っこをちゃんと成長させている。
 他にも、インドの知人たちのライフステージの変化に驚いたことがたくさんあった。「止まらない、終わらない、何もかも」は、言い得て妙だなと思う。コロナ禍でさまざまなものが停滞していた、と感じていたけれど、実は植物や動物など他の生命体よろしく、私たちが知るインドの人々も変化し続けていて、次世代が育っているということがよくわかった。
 止まらず、終わらない、大きな流れの中でどう生きていくかは、私たちの手に委ねられているのだな、とインドの熱が未だ覚めず、大上段に構えて考えている。

okazu

===わふのこNEWS===
■ラダック2022ミニ報告会 part2
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8月13日(土)18:30~20:00

2014年の芸術祭「Earth Art Project」開催時から私たちツォモリリ文庫が長く関わってきたラダック。「ツォモリリ」は、ラダックの標高4500mにある湖の名前です。ツォモリリ文庫のディレクターたちが、今年7月にプロジェクトの準備のために数日間滞在してきました。
おいしい伝統食の話や遊牧民の暮らしをはじめ、中央政府管轄になり、経済発展の真っ只中にあるラダックの「今」をお伝えします。 

登壇者:おおくにあきこ / 浜尾和徳

スペシャルゲスト:スカルマ・ギュルメット(NPO法人ジュレーラダック代表)
*オンラインでラダックより参加していただきます。
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定員:20名
参加費:1000円

お申し込み方法:
Eメールにて、info@tsomoriribunko.com まで、参加をご希望の方の氏名、電話番号、Eメールアドレスを明記の上、お申込みください。ツォモリリ文庫からの返信をもって受付となります。

 
■ワィエダ兄弟のワルリ画の世界「ANCIENT FOREST-太古の森」
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ワルリ族の村から、ワルリ画家兄弟、トゥシャール&マユール・ワィエダ兄弟が来日します!
インド西部のジャングルに囲まれた村に暮らす先住民ワルリ族。神様を迎える儀式の際に描かれる線と丸と三角で構成されるワルリ画の描法で、「人類のはじまりの物語」や「シャーマニズムの風景」、「現代社会への考察」などを見事に表現してみせるワィエダ兄弟の作品展示、壁画公開制作、ワークショップを開催します。
牛糞で清めたキャンバスに白い絵の具というシンプルな描画作法を堅持しつつも、大胆で緻密な構図はトライバルアートの枠を超え、コンテンポラリーの領域で語られることの多い彼らの作品。日本では、2019瀬戸内国際芸術祭秋会期で美術家・大小島真木との滞在制作(香川県・粟島)などで注目を集めてきました。
近年では第10回アジア・パシフィックトリエンナーレ(オーストラリア)のほか、フランス、スイス、香港、ベルギーのギャラリーにて展覧会を開催。インド国内外を問わず活動の領域を広げています。またハンドメイドの絵本で知られるタラブックスより『the deep』『Tail Tale』を上梓し、ワルリ画を世界に発信しています。
兄・トゥシャール・ワィエダ、弟・マユール・ワィエダは、幼い頃からジャングルを遊び場として、魚を網や罠で捕らえ、鳥をスリングショットで撃ち落とし、高木に登り果実を採取し、牛を放牧するなど、ワルリ族の昔ながらの暮らしを体験して育った最後の世代です。大都市ムンバイの大学で学ぶ一方で、自らの部族としてのアイデンティティに目を向け、その文化を発信することをライフワークと定め、制作を続けています。

主催:NPO法人ウォールアートプロジェクト
助成:東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京
会期 2022年8月19日(金)〜2022年9月5日(月)
時間 12:00~18:00
休廊日 火・水・木曜日
入場料 無料
会場 ツォモリリ文庫 http://tsomoriribunko.com/
住所 〒182-0002 東京都調布市仙川町1-25-4
アクセス 京王線仙川駅より徒歩5分 せんがわ劇場向かい
電話番号 03-6338-1469

[関連イベント]
1. 壁画公開制作
2022年8月19日 12時〜壁画完成まで
ワルリ画は、家の壁に神様を招く神殿を描くことを起源としています。3年ぶりの来日となる今回、ツォモリリ文庫内のW290cm×H250cmの壁での壁画公開制作に取り組みます。彼らの筆遣いを間近でご覧ください。
http://tsomoriribunko.com/vayedabrothers_ancient_forest/

2. ワルリ画ワークショップ
ワィエダ兄弟が大切にしているワルリ族の文化とは? 彼らの話を聞いて、ワルリ族の文化を体感しつつワルリ画を描いてみましょう。きっとこの世界の見方が少し変わるはず。描いたワルリ画は持ち帰ることができます。ツォモリリ文庫の浜尾和徳が通訳します。言葉を超えて、どんどん参加しよう!
開催日:8月20日(土)・21日(日*キャンセル待ち)・27日(土)・28日(日)
時間:14:00~16:00
定員:各回10人程度 6歳未満の子供には付き添いが必要です
参加費:一人2000 円
申し込み方法:名前、連絡先(Eメールアドレス、電話番号)を明記の上、Eメールでツォモリリ文庫までお申し込みください。
お申し込み先:info@tsomoriribunko.com

3. ワィエダ兄弟×淺井裕介によるライブペインティング
ツォモリリ文庫ディレクションチームが主催する芸術祭「ウォールアートフェスティバル」で、ワルリ族の村の学校を舞台に2週間に渡る滞在制作を行なった美術家・淺井裕介。数年ぶりに再会する淺井とワィエダ兄弟が絵で対話します。
開催日:2022年9月4日(日)
時間:午後2時頃〜午後6時頃(途中、休憩などをはさみながら行ないます)
参加費:一人1500 円
申し込み方法:名前、連絡先(Eメールアドレス、電話番号)を明記の上、Eメールでツォモリリ文庫までお申し込みください。
お申し込み先:info@tsomoriribunko.com

■インドのおみやげマルシェ2022
インドからやってきた手仕事もののおみやげがたくさん!
日時: 2022年8月12、13、14、15日  12:00~18:00
会場: ツォモリリ文庫

ウォールアートプロジェクト 2022年度
【協賛】貝印株式会社 Blue Bear Inc. ポーラスター株式会社
【協力】カモ井加工紙株式会社
【助成】東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京 (ワィエダ兄弟のワルリ画の世界「ANCIENT FOREST-太古の森」)
【WAP応援団 2022】 2022.8.11 現在 12名
薮内利明 林原裕子 本田啓之 菅原信子 鹿島和生 佐保田雅代 佐保田昌美 北辻宣宏 五十嵐ファミリー ひろちゃん 東京ヨーガセンター 敦子

 




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December 31, 2021

okazu通信 第92号 「翻訳とウォールアートフェスティバル」

ウォールアートプロジェクトを応援してくださっている皆様

今年も1年間、大変お世話になりました。
2021年のウォールアートプロジェクトは、福島県猪苗代町を舞台にした「ウォールアートフェスティバルふくしま in 猪苗代2021」を成功に終え、5年目となる"2022"へと踏み出しました。
そして、インド行きへ向けて、エネルギーがはち切れんばかりです。
今年最後になるokazu通信の配信です。2022年も突き進んでいきますので、ご声援のほど、どうぞよろしくお願い致します!!

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okazu通信 第92号 「翻訳とウォールアートフェスティバル」
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 2021年の暮れ、郡山では雪がちらついている。父は近所の神社の元朝祭の準備でわたわたしている。「今年の冬はしっかり寒い。餅や甘酒の振る舞いもないから、どれだけ人が来るか分からないけど、準備はしっかりと」と、地域の皆さんと早朝から協働作業をしてきた。強風で飛ぶ雪を前に、ラダックでもしっかり雪が降って、近年後退しつつあった氷河の万年雪がちゃんとリチャージされるとよいのだけれど、と願う。
 インドから離れて早22ヶ月。次に行けるときはいつだろうかと、今か今かと待ちわびている。こんなに長い時間日本に居続けたのは13年ぶりだ。もうきっと体の細胞はインドのスパイスや水でできたものから、日本の物質で作られたものにそっくり入れ替わってしまったことだろう。次のインドでは腹も壊すかもしれない。せめて髭を伸ばして、インドでいつも通り交渉事に臨めるよう態勢を整えている。髭の有無でやりとりの対応が変わる。「本当にそんな効果があるのか」と半信半疑な人が大部分と思うけれど、私にとってはマジな話だ。細胞だの、髭だの、普通は思いを馳せるに及ばない身体パーツだけれど、インドとの関係性があるがゆえにそういう生な体感を味わっている。恵まれているな、としみじみと思う。
 郡山に携えてきた本がある。木村榮一著「翻訳に遊ぶ」だ。実家で妹家族の甥っ子や姪っ子の声を聞きながら読破できた。ラテンアメリカ文学翻訳の第一人者である木村さんの半生が綴られたこの本には、翻訳者として積み重ねたキャリアとその過程での苦悩、知ることの楽しさ、悔しさ、知の探究の喜びが克明に書かれている。そこからうかがいしれるのは、小手先ではない翻訳の真髄と、謙虚な達観だ。
 原文に寄り添うこと。 著者の文化や暮らしへの理解を深め、想像を十分にすること。よき読者であること。数多くの名文に触れること。生きている中で出会った自分の記憶にある言葉を、翻訳のためにその底から引き上げてくること。文章を書く時の”調子(リズム)”の大切さ。役者と訳者の共通点。“Bene qui laurie, bene vixit”「隠れて生きる者は、よく生きる」、というラテン語の格言。気取ったものではない普通の語と語のつながりが文章全体を浮かび上がらせる、という実感。
 木村さんによって”翻訳”の文脈の中で語られたこれらは、一見関係のない場でも生きてきそうだ。例えば、子どもと関わるとき。クリエイティブなものに触れ誰かに伝える場面。異文化で生きる人と友情を育む機会で。ウォールアートフェスティバルのキャッチフレーズ、「アート×学校×支援」とも結びつく。現地の状況をよく知り把握し、洞察し、未来を想像する。オーガナイザーである私たちは裏方で、スポットライトがあたるのは子どもたち。アーティストの意図や心意気を最大限ベストな形で発信し伝えること。滞在制作期間中の出来事一つ一つが輝いているから装飾する必要はなく、ありのままを見せることがプロジェクトを伝えることになること。
 拡大解釈かもしれないけれど、「翻訳」は著者や読者という人間関係の中で行われる営みだから、私たちが取り組んでいることと結びつくのは不思議でもなんでもないのかもしれない。
 なぜ最近、翻訳、というテーマに惹かれているのだろう、と謎だったけれど、なんのことはない。インドと日本の子どもたちを結びつける橋のようなものになりたい、と、13年前の初めから思ってきたことに再び全力を注ぎたい欲求に駆られているのだ。

okazu

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ウォールアートプロジェクト 2021年度
【協賛】貝印株式会社 Blue Bear Inc. ポーラスター株式会社
【WAP応援団 2021】 2021.12.31 現在 28名
薮内利明 林原裕子 宇佐美晶宏 内野友稀 みいたん ひろちゃん 東京ヨーガセンター まるこ 小野養豚ん 栗林久美子 竹之内美江 鈴木保人 佐保田雅代 佐保田昌美 長照寺 北辻宣宏 永作佳紀 なべちゃん ツツミエミコ しらがさちこ 鹿島和生 中村敦子 本田啓之 みえ よっしー sammy 鉄矢悦朗 Touch the GOND

【お知らせ】
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加入方法
1)一口3000円の会費を納入(お振り込み、または直接納入)
振り込み先
みずほ銀行 成城支店 1170797 トクヒ)ウォールアートプロジェクト
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3)サイトに記名するお名前をお知らせください。


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