2006年09月30日

『 わたしを離さないで 』 カズオ・イシグロ 著

わたしを離さないで ◆ 『 わたしを離さないで 』  カズオ・イシグロ 著 
土屋政雄 訳   2006年  早川書房

抑制された描写の中に、閉じ込められた思いの丈を感じた物語。多くを語るのは憚られます。あさこさんの紹介で読むことが出来ました。彼女に本当に感謝しています。
私にとっても、深く心に残る作品となりました。

最初のページから違和感のある言葉が、読み進めるうちに、やはりそうなのだと愕然とする。運命を受け入れる側の人間の感情が、何ゆえここまで統制され静かなのかと信じられない思いで読む。しかし、そのことがかえって事の異常さを際立たせている。一人ひとりの子供たちの壊れそうな感情の中に、人間としての願いや思いがこめられていて悲しい。恩恵にあずかる大多数の人間たちの醜いエゴは、物語には表裏一体とさせて描かれていないが、それだけにおぞましく感じる。未来への警鐘などという言葉は、この美しい物語の前に陳腐で無力だ。
傑作と思う小説でした。(ここから先は、読まれた方だけに)

そして…
輝夜姫 ◆ 『 輝夜姫 』 全27巻  清水玲子 著
1994〜2005年 連載

『わたしを離さないで』からすれば、その12年前に 清水玲子が『 輝夜姫 』(かぐやひめ)を描き始めている。彼女の並々ならぬ才能も、耽美な絵と共に感じずにはいられない。ヘールシャムは、神淵島。
こちらは闘っている。闘って傷ついて答えを探し求めている。

しかし『わたしを離さないで』の静けさは、『輝夜姫』と同じくらい、強いメッセジー性を放つ事を可能にしている。二つを比べ、それぞれをまた再認識する。

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ノーフォークにあるという、探し物や落し物の集まった、遺失物保管所。私も行ってみたい場所。失くしてしまった大切なものがきっと見つかる気がする。
聴いてみたい曲…ジュディ・ブリッジウォーターのLP『夜に聞く歌』 3曲目「わたしを離さないで」(実在しないという事だが)

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1. わたしを離さないで  [ おかぼれもん。 ]   2006年09月30日 12:00
わたしを離さないでカズオ イシグロ 早川書房 2006-04-22売り上げランキング : 36おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools 内容(「BOOK」データベースより) 自他共に認める優秀な介護人キャシー・Hは、提供者と呼ばれる人々を世話している。キャシーが生まれ育った施設...
2. Never Let Me Go  [ コウカイニッシ。 ]   2006年09月30日 23:23
わたしを離さないでカズオ イシグロ 早川書房 2006-04-22by G-Tools オンライン書店ビーケーワンで詳細を見る 傑作だ。 なんて、なんて優しくて残酷な話なんだろう。 読み終えて胸が痛くて、苦しくてたまらない。 この本をできれば10代で、高校生あたりで読みたかっ...
3. わたしを離さないで  [ Le Journal de La Princesse frivole ]   2006年10月01日 03:22
『わたしを離さないで』 カズオ・イシグロ/著 土屋政雄/訳(早川書房) あさこさんの記事を読んで購入。 なんの予備知識もなく読み始めたのだけれど、結果としてはそれで正解だったようだ。 作中の大人達が、少しずつほのめかしながらその全容は注意深く伏せている...
4. カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』  [ うるしのうつわ うたかたの日々の泡 ]   2006年10月18日 16:43
胎児は、母親のお腹の中で、ずっと音を聴き続けている。 電車に乗っていると眠くなる原因である、あの音。 すべてを凌駕し、抗うことのできない音。 遠くから聞こえる、弱くて、強い音。 この小説は、とてもとても
5. 2006新刊本ベスト投票結果発表。  [ 読者大賞blog ]   2007年03月20日 00:10
遅くなってすみませんでした。新刊本ベスト投票2006、投票締め切って集計しました。 総勢90名の方に投票いただきまして、たくさんの本好きな方に選んでいただけて、 信頼度の高い結果が出せたと思います。どうもありがとうございました。 さて、早速、気になるベスト3...

この記事へのコメント

1. Posted by pico    2006年09月30日 11:20
なぜか、昨晩からコメントできなくって・・
今日はできるかしら。

ワルツさん、おはようございます!
私も、輝夜姫を思い出していました。
もしくは、映画「ブレドランナー」とか。
すばらしい作品ですよね!

>何ゆえここまで統制され静かなのかと信じられない思いで読む。

ほんと、ずっと、ノイズをたてているような感じでしたよね。
テーマは違えど、邪魅の雫も空気感が似ていました。

空気感といえば、映画「太陽」も。
http://www.taiyo-movie.com/theater.html
太陽は、10月7日から、大津ユナイテッドシネマ、京都シネマで上映されるので、お時間がありましたら、是非是非、ご覧くださいませ。

yamatatzさんが書いてらっしゃるのも、感動です。
http://homepage.mac.com/yamatatz/iblog/C1333458916/E20060909014838/index.html
2. Posted by あさこ    2006年09月30日 23:20
ワルツさん、こんばんは〜。
TBありがとうございました!とてもうれしかったです!

本当にすごい作品だなぁと読み終えて時間がたった今も思います。そして、何度考えても答えがでない。
ぐるぐるといろんなことを考えて、いまも考え続けています。
余韻が残りますね。

『輝夜姫』ぱらりと読んだことはありますが、最初から通して読んだことはありません!清水さんの絵は本当に美しいですよね。
『わたしを離さないで』と通ずるとは!かなり読んでみたくなりました!
3. Posted by Delius    2006年10月01日 00:51
Valseさん、Waltzさん、ワルツさん♪
わたしは読んでませんが、聴いてます。
http://www.ad-max.jp/cafe/vocal04.html
わたしの管理するHPでNever Let Me Goが聴けるようになってますので、よろしかったらお試しを。
4. Posted by Mlle C    2006年10月01日 03:21
ワルツさんこんばんは(「おはよう」か?)。
トラバありがとうございました。

先日の紀子さんご出産にあたっていろいろブログを見ていたら、誕生した親王の運命と『わたしを離さないで』のキャシーたちを重ね合わせている人がいらっしゃって、妙に納得してしまいました…

『輝夜姫』ってそういうお話だったんですね。
本屋でよく見かけてタイトルは知っていましたが、内容までは知りませんでした。
こちらも読んでみたいです。

横レスですが、picoさんの
>邪魅の雫も空気感が似ていました
ってのが気になります!
邪魅、やっと半分くらいまで進んだ所です。なんか読み終えるのがもったいなくて(笑)
5. Posted by ワルツ    2006年10月01日 22:10
◆ picoさん、こんばんは。
何だか、blogの調子が悪くてすみません。
もう何度もなので、半ば諦め気味なのですが、
ご迷惑かけてしまって、許してね。(*^。^*)

この小説、静かな中に いたたまれない様な感情を内包した作品でした。
圧倒されてしまって、しばらくは次の本を読みたくない思いです。
「邪魅の雫」にも同じ空気感を持っているのですね。期待が高まります。(*^。^*)
6. Posted by ワルツ    2006年10月01日 22:11
〜picoさん、続きです〜
>「太陽」
教えて下さってどうも有り難うございます。
リンクして下さってる公式サイトから予告編を観せて貰って驚きました。
「昭和天皇」を描いているのですね!それも外国の監督が。
映像も素晴らしくて、釘付けになってしまいました。
是非是非、観たいです。
以前、「いい映画を教えて下さい」って、picoさんにお願いしていたら、こうやって、忘れず紹介して下さって……ものすごく嬉しかったです。
どうも、ホントにありがとうございますね。(*^。^*)
7. Posted by ワルツ    2006年10月01日 22:25
◆ あさこさん、こんばんは。
素晴らしい本を紹介して下さって、どうも有難うございました。
それにね、何と言っても、あさこさんの感想&レビューの素晴らしい事。
あれを読ませてもらったら、ダメです。(笑)いっぺんに心を心をわしづかみにされてしまいました。

本も!期待に違わぬ内容でした。
いつまでもいつまでも余韻に浸っていたい作品。
傑作ですね。

>輝夜姫は、同じテーマを扱っています。
美形がわらわら、わんさか登場してますYO。
美形好きには(自分。笑)たまらん作品でした。
あさこさんも…?
良かったら読んでみて下さいね。
1巻目からショッキングな内容にぐらぐらします。
連載期間も長かったので、テーマが拡散していってしまい、途中どうなることかと思いましたが。。。(^^ゞ
8. Posted by ワルツ    2006年10月01日 22:51
◆ Deliusさん、こんばんは。

>Never Let Me Go
紹介下さって、どうも有り難うございます。
早速、聴かせてもらって、うっとりしています。
ジェーン・モンハイトの静かでメロウな歌声がとても美しいですね。
彼女の切ない歌声は、この小説の設定には少し大人っぽいかもしれませんが、本当に素晴らしい。
(小説では、12歳の女の子が、枕を赤ちゃんに見たてて、抱いてあやすように、この曲を聴いてダンスをしているシーンが出てきています。勿論、大人の曲なのですが。)

でも、彼女の歌をもっと聞いてみたくなりました。
最近の女性Jazzシンガーなのですね。今度、是非探してみます♪
教えて下さって、嬉しいです。どうもありがとうございます。(*^。^*)
9. Posted by ワルツ    2006年10月01日 23:07
◆ Mlle.Cさん、こんばんは〜♪

素晴らしい作品に出合えて、未だに世界を漂い中です。
このまま、どこまでも、静かに流されたい気分。
こういう英国調というのか、作品の風景観は(こんな言葉ないですよね。(^^ゞ) 日本人には あまり無いような気がしました。

>輝夜姫
は、美形が、わらわら・わんさか出てきます。
美形フェチにはたまらん作品です。
そうそう、英国王室、タイ王室、中国の李家など、王族・貴族のインフレ状態。
あさこさんにもオススメしたのですが、
Mlle.Cさんにも、是非是非読んで頂きたいわ。
私は、イギリス王室の戴冠式の場面にうっとりしました。それと、中国の李家のお衣装にも。
連載が長かっただけに、とんでもない方向にお話が進んでいって目が回りそうになりましたが、ある意味すごかったです。
ホント、また読んでね。分かち合いたい、この気持ち。(哀願。笑)

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