「いやーどうなることかと思った! 某君が来てくれなかったらあたしたちあのまま閉じ込められて飢え死にか特攻して失血死だったよ!」

 大きな卓上電灯の明かりに照らされる茶色コートの女子高生……汗をかいて暑いからと言ってコートは脱いでいたが、彼女の話によると、彼女の姿をしていたモノはA子さんが作った「吸血生物とスライムの融合体」だったらしい。

 A子さん曰く、「星の下僕(スターバンパイア)だけじゃあんまり頭が良くないけど、ショゴスと一緒だと自己成長できるかなって思ったの。色々呪文とか遺伝子組み換えとかして、どうにかくっ付けられたんだけど……

「呪文ってなんだよ……えーと、スターバンパイアってなんだっけ」

「デ・ヴェルミス・ミステリイスに出てくる吸血生物なんだけどね、弱い個体は吸血鬼と同じで誰かに招待されてない場所には入れないから」

「だから研究室には入れなかったってこと? ……で、確かショゴスっていうのは姿変えられる奴だっけ」「うん」

……ってことは、インターホンに出たのって」

「こいつの方だよ」セーラー服がクリアボックスの側面を叩く。「研究室でA子ちゃんが飼ってたけど、姿も声もやることも覚えちゃってたんだね。ちょっと薬垂らしたから今は寝てる」

「研究室だけじゃなくて何度かリビングにも出してたから君のことも知ってるよ!」A子さんちょっとそれは初耳なんだけど。

「はぁ……で、僕が来ることも知ってたから、先にこっちに入れて入るのを促そうとしたってことか」

「あたしの血が欲しかったみたいだからね」

 セーラー服が髪をかき上げつつ言う。やっぱりこっちの方が香水が強い。

「え?」

「それなりに貴重だから、この血は。そりゃそうだよ、最高神の加護を受けた眷属の血液なんだから力も倍増するさね」

……なんです、それ」

「んん? え、聞いたことなかった?」猫目を更に丸くする。「え、え、え。じゃあオフレコにしといてくれないかな……

「いや、聞きたくないんでいいですけど……そういえば、そいつ貴方より香水薄かったですよ。匂いを再現ってのも怖いけど、し切れないとこがあったんですかね」

「え? 香水……どんな匂い? あたしそんなきついの付けてないよ」

「え」じゃあ、この匂いって。 

 猫目のセーラー服が何かを言おうとして少し口を開いた時、 

「あの、ねぇちょっと」

 A子さんがそれより先に発言する。「そろそろお腹空いたんだけど」

「あそっか、そろそろ夕飯作らないとね。……って、何で僕らはまだここにいるんですか。貴方ももう帰って欲しいんですけど」

……んんんんん。様子見をしようと思ったんだよね、実は」

「は?」様子見? 猫目少女は聞き耳を立てているようだ。

「頭部を切ったら暫く動けないと思ってたけど……甘かったかもね」

 

 するとその時、リビングから、

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 一応元々出す予定でした、猫目のこいつ。設定もあったのよ。