2015年10月25日

ミッドウエー海戦の敗北分析 保険金請求できる精度で書くべきではないのか

最近、戦史ものの本を読む機会が増えた。しかしながら、歴史書として、これはと思えるものに出会えない不満がある。自分で調べ、書いた方が、納得できるのではないかと思っているくらいなのだ。

いわゆる実話小説の類のものばかりで、歴史書的書き方になっておらず、その多くが人物描写に特化し、核心を分析、敗北原因を特定し得ていないのではないかと思っている。

私は、歴史の専門家ではない。小説家でもない。ただただ、視点が変われば、戦史の評価(敗北原因)が変わることを説明しようとして書いている。

事例として、以下の二つの原稿を示す。

・真珠湾攻撃はアメリカ空母が真珠湾にいない前提での作戦だった?
http://blog.livedoor.jp/waninoosewa/archives/1656014.html

・ミッドウエー海戦は飛行機数の差で負けたのではないのか?
http://blog.livedoor.jp/waninoosewa/archives/1656613.html

実は、損害保険会社向けの説明資料を業務上作成したことがある。報告書を書いたとして、現象面での経緯、事故の原因の絞り込み、再発防止対策、それらが、個々に関連づけられた報告書になっている状況であると説明できる状態でなければ、報告書として決裁されず、保険金がおりない業務システムになっていた。

要するに、事故原因がわかるように現象を記述し、分析し、原因を特定し、再発防止対策を記述しなければ、保険金はおりないし、次年度以降の予算もつかないし、事業の継続もできない、ただそれだけである。

そうした視点で、ミッドウエー海戦の戦史本を眺めてきたのだが、業務上の経験と対比して眺めてみて、満足できる水準に達している本は極めて少ない。

「凡将 山本五十六」(生出寿)は、その中では満足できる水準に達している本である。

業務上の視点で書こう。

敗北して船が沈没して、保険金がおりるようにするには、保険金がおりるような(論理的飛躍がない)書きぶりでないと、保険金はおりない。
しかし、作家たちは、そのことを意識して書いてはいない。作家たちは、ともすれば戦争調査報告書ではなく、小説を書きたい人たちなのだ。従って、現象を文章で時系列的に長々と書き、あるいは、人物描写に会話文を挿入して書いたものになりやすい。

では、保険会社は、どう反応するだろうか。

200頁もの小説みたいな文書を読んで判断するのであろうか。ビジネス常識的にはありえない。判断してもらうには、まとめの部分にA4で2頁程度で要約して書いてなければ、保険会社は判断を保留すると考える。

敗因の要因分析が、一部核心をついていたにせよ、現象面として起きたことと敗北の原因との因果関係について、簡明かつ体系的かつ論理的に説明し得ていないことを指摘するのだ。

たとえば、「ミッドウエー海戦 第二部」(森史朗)という本は、現象面を詳細に亘って時系列的、かつ日米双方の視点で書いた、異色の労作である。ところが、現象面的には、一部実話小説タッチで描かれている。調査報告書みたいな書きぶりの箇所もある。形態的には、部分的に小説で部分的にはノンフィクションなのだ。全体を眺めて、調査報告書という印象はない。それでいて、最後の方で敗北の原因は人だとしている。(第二部、408頁)

………………………………

「ミッドウエー海戦 第二部」(森史朗)

408〜409頁
終章 海戦の果てに

各章でのべてきたように、事態を詳細に点検していくと日本側の敗北の原因は技術的な側面ではなく、人間的なものであった。南雲忠一中将を頂点とする司令部幕僚たちは、戦闘に当たっての冷静な判断力と臨機応変の対応力、勇断や決定力の資質が欠けていた。いたずらに判断を先送りにし、結果的には一航艦の主力三空母は一機の反撃航空機も送り出すことなく、乗員ともども海底に没したのである。万斛の涙を呑んで、ミッドウエー沖に沈んで行く若き戦士たちの無念が思いやられてならない。

………………………………

(現象面から追いかけた)敗北の総括としての記述は、この書きぶりで良いように思っているが、それを裏付ける、要因分析を絡ませた、論理的な説明が不足していると考える。

この書きぶりでは、沈没した空母や軍艦についてもし保険が掛けられていても「保険金はおりない」のである。

敗北の原因が人であるという調査報告書にするつもりで書いているのであれば、それ以前の原稿において、実話小説的記述はすべきではない。このことについて、説明は不要だろう。

最後に敗北の総括を書くのであれば、それ以前の文章は、戦争調査報告書の形式でなくてはならない。

著者が書きたかったのが、実話小説なのか、調査報告書なのか、どちらだったのであろうか。



waninoosewa at 13:34│Comments(2)TrackBack(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Clip to Evernote ◆ 歴史の見分け方 

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この記事へのコメント

2. Posted by 一斎   2015年10月28日 02:36
まだ読んではおりません。
数年前に、書名忘れましたが、軍事オタクぽい人が、こうすれば勝てたみたいな本を読んだことがあります。
ご紹介いただいた本をネタにして書かれた可能性はあるでしょう。
1. Posted by 山路 敬介   2015年10月28日 01:34
ブログ主様はもう「日米開戦 陸軍の勝算」林千勝著(祥伝社新書)を読まれました?

なぜ日本は敗戦したのか。「陸軍省研究班の通りに戦争を進めなかったからである。真珠湾攻撃をして米国を怒らせてしまったからだ。山本五十六連合艦隊司令長官の『暴走』が招いた敗戦だ、と本書は指摘しています。





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