先日行われた、電王戦について。
電王戦とは、先日行われたコンピュータと将棋のトッププロとの団体戦だ。ドワンゴがスポンサーとなり対局の模様がニコニコ動画で放送されたので、見た人も多いことだろう。
また、結果的に、(大方の予想を裏切り)プロが1勝3敗1分けと負け越すことになったため、テレビやらYahoo!ニュースやらいろんなところで「コンピュータが人を超えた!」とセンセーショナルな話題になっていたのを見た人も多いと思う。

僕自身は、この中継を台湾からiPhoneアプリで見ていた。僕も多分に漏れず「どうせ人が勝つだろう」と思っていた。もちろん、以前の米長邦雄−ボンクラーズ戦や、清水市代−あから戦などで人が負けたことは知っていたけど、それでも現役の男性棋士となるとコンピュータが勝つわけない、と思って、台湾のホテルで楽勝気分で対局を見ていた。
なのに、なのにですよ!
初戦で先方の阿部光瑠四段が勝ったまでは良かったけれど、佐藤慎、船江がまさかの連敗。
ここでもう、人間側はかなりの悲壮感漂うムードに。。
副将の塚田八段は、ほとんど負けの状態から持将棋狙い。なんとか引き分けに持ち込むと、観戦者から拍手が沸き起こったという。コンピュータ相手に引き分けて拍手だなんて!
そして最後の三浦八段。この時点でも僕はまだ「三浦が負けるはずが無い」と思って観戦していた。将棋は矢倉の脇システムで、三浦が最も得意とする戦法。そこへGPS将棋が突然、歩をついて仕掛けると、ターミネータのような正確無比な攻めでA級棋士三浦を負かしてしまう。
これが世界コンピュータ選手権優勝ソフトの強さだったのだ。なんてことだ!
単なるおもちゃと思っていたものが技術の進歩によって、今ではターミネータ並の強さを持つようになってしまったんだ!ちくしょう!


。。。と思ってのが数週間前。その後僕はそのときの興奮からだんだん冷めてきて、今度はこのコンピュータ対人の世紀の対戦!を仕掛けた米長邦雄という人は改めて凄いなと感じるようになった。
たぶんこの人は、コンピュータがいずれ人に勝つようになることは分かっていて、それを如何に興行として盛り上げ、将棋連盟が儲けるかを相当、考えたのだと思う。そして結果的に興行は大成功し、将棋への
社会の注目度は一気にあがった。うまく行けば、今後も人対コンピュータの対決が、将棋の人気コンテンツになる可能性があると思う。
そういう視点から見た時に、世の中が変化し、自分の得意なことが他の方法で置き換えられるのが時間の問題というタイミングで、人は一体どう振る舞うべきか?を、今回の電王戦は象徴していると思う。大手企業的発想だと、きっとこの脅威を恐れて変化を先延ばしし、結果的に「少しずつ腐っていく」状態になると思うのだけれど、ところがこの米長さんという人は、このピンチを興行に利用し、結果としてお金を儲けて将棋界への注目度も集める、という最高の結果を手にした。この変化に飛び込んでいく決断を下した米長邦雄はやっぱりスゴい、人は団体戦で勝負に負けたかもしれないけれど、この人は経営者としては勝負に勝ったと思う。目先のプライドとか、金にもならないものには拘らない大局観、とでも言うんですか。
残念ながら、米長邦雄永世棋聖は昨年末に亡くなったけれど、きっと天国でどうだ俺の筋書きどおりだろ、俺の勝ちだ、なんて言ってると思う。凄い人だと改めて思います。ご冥福をお祈りします。