外資に転職して1年ぐらい経ちました。
前の会社と今の会社を比べて考えたことがいろいろと溜まってきたので、そろそろ少しずつ書き留めておきたいと思う。最初は、前の会社で長く感じていた「残念な感じ」をできるだけ正確にここに書いてみたい。今だからわかるけど、あの残念な感じは自分が無理して前の会社の価値基準に合わせようとしていたことが原因だった。自分の価値観を受け入れてくれる今の会社に転職したのは正解だった。

で、ここからは昔話。
前の会社は業界最大手の家電メーカだった。入社するときに感じた興奮は忘れられない。最初の仕事はある電子部品の開発設計業務で、先輩方が設計した試作品を評価するが最初の仕事だったけれど、測定してデータをまとめるのなんで僕にとっては好奇心と知識欲が満たされる趣味みたいなものだったので(だからその会社に就職したのだ)遊んでて20万円以上も毎月給料をくれるなんて、会社って何ていいところなんだと思ったのを覚えている。そして、この遊びは定年まで残りたったの40年弱しか続けられないんだ、なんて短いんだ、と少し寂しく感じたのを覚えている。そんなだったから、今考えると周りからはちょっと変な子だと思っていたたかもしれない。
まあともかく、そういう感じで技術はともかくモチベーションは高い状態で会社に入り、大企業だったお陰で優秀な先輩や同僚に恵まれていろいろと勉強させてもらった。ただ、会社に5年、10年と長くいると、少しずつ不思議だったり残念に思ったりすることを経験するようになった。
その中でも割に頻繁に経験したのが、元々は優秀なエンジニアと思っていた人が、出世してマネジャーになると途端にキレがなくなる現象だった。これはもう日常茶飯事だった。この間までは、新技術の開発でスジのいいアイデアを出してみんなの尊敬を集めていた人が、みんなの期待を背負っていざマネジャーになってみるとこれが全然さっぱりということがよくあった。体感的には、およそ8割ぐらいの人はダメだったと思う。
で、さらにタチが悪いのは、エンジニアとしてはイマイチでも管理者としては上からの受けがいい、あるいはプレゼンテーションが上手い人というのが結構いて、長い目で見るとだいたいこっちの人の方が重宝される確率が高かった。その結果、研究開発部隊であるにもかかわらず、技術についての議論が的外れだったり、大きな意思決定に時間がかかったり、せっかく時間をかけて議論したのに結果的に技術的にスジの悪いものを選んだりするようになる。
正直そういうケースを幾つも見て、僕は結構こたえた。何故なら、僕は根っからの技術タイプなのが自分でもわかっていたから。将来マネジャーになって成功するイメージが全然持てなかったし、第一、上司に受けようとか、社内で自分がうまく立ち回ろうとか言うことにもこれっぽちも興味が持てなかった。こういう自分の気持ちに気づくようになった辺りから、僕は前の会社では出世に対する意欲を失って、もう出世しなくていいから目の前の技術の問題については誰よりも詳しくなろうと心に決めて、地味に(本当に地味に)毎日目の前の仕事だけをやっていた。
わかってもらえるだろうか。この残念な感じ。現状に明確な不満はない。大企業で研究開発の仕事をして、それなりに給料ももらっている。だけど昇進する気もないというなら、それはただ、定年まで上司の指示に従い、同じようなことを続けることが自分の目標、と言っているようなものだ。
そしてそんな時、僕は定年までの時間はなんて長いんだろうと感じた。そして、若い頃と比べて自分はずいぶん変わってしまったと残念な気持ちになった。その頃は気持ちの面でも結構荒れていて、朝までボロボロになりながら酒を飲んだり、その帰る途中に若者に殴られたりしていた。また、外見もある程度人の内面を写しているのか、鏡を見ると自分が急速におじさん化していると感じるようになった。そういえばその頃は、頭頂部の髪もだいぶ薄くなっていた。

そんな僕にも転機は来た。僕が長いこと携わってきた電子部品の開発がうまくいかず、本社から方向性の見直しを求められたのだ。その時、僕はよしこれが会社を辞めるチャンスだと思って、今の外資系の会社の募集を見つけ、何度かの面接を経て無事採用された。
会社に入ってみると、仕事のやり方や組織がずいぶん違うのに気付いた。決定的に違ったのは、僕みたいな純粋なエンジニアにもキャリアパスがあることだった。もちろん、出世するとチームを率いたりする必要は出てくるが、それでも技術そのものに、それこそ会社を辞めるまでずっと触れていられる。
なあんだと僕は思った。自分の場所は他所にはちゃんとあったんだと思った。逆に言うと、前の会社でずっと自分のことを残念に感じていたのは、そこが単に自分のための場所じゃなかったからだったんだと思った。自分が何か間違っていたわけじゃなかった。

というような経験を経て、僕はだいぶ自信を取り戻しました。繰り返すけど、ずっと自分が間違っていると思っていたけど、そうじゃなかった。単に自分のいる場所があっていなかっただけだった。
今、会社で何か居心地が悪くて、自分にどこか自信が持てない。。そういう人はいっぱいいると思います。でも実際、世の中は広いし、自分に合う場所は他にあるかもしれない。あまり思い詰めず、さっさと転職するのも良いのではと思います。だって、人生は有限で、やりたくないことをやる時間なんてない。