2008年12月17日

08年度第39回相殺―508条

【登場人物】

大 家(甲)
与太郎:大工(乙)

【物語】

これは江戸時代に現行の民法が施行されていたらのお話です。

大 家:与太郎いるかい。今日こそは逃がさねぇよ。
    なんだい、もう仕事に出てるはずの
    時刻だってのに…いやがったよ

与太郎:いたらまずかったですかい。

大 家:まあいい。とにかく今日こそは払ってもらうよ。

与太郎:なんです起き掛けにそんなひどいこと…

大 家:もうとっくにお天道様は昇りきってるよ。
    もう半年分も店賃はたまり放題だってのに、
    よくもまあ、のうのうと寝ていられるもんだ。
    さっさと仕事に行きやがれってんだ

与太郎:それじゃさっさといくんで、そこどいてくれ

大 家:いや、今日という今日は家賃を払うまでどかないよ。

与太郎:どっちなんだよ


大工の与太郎は考えた挙句に苦しい言い訳をする


与太郎:するってえと何かい?
    ここに入るとき建具がぼろぼろだったのを
    俺が自分で直したことはお忘れじゃないよな?
    そのときの修理代金と相殺してやる

大 家:あの修理は…(敷金の代わりって言ってたような)
    まあいいや。だけどそんなの10年も前の話だろ。
    そうだ今月で丸10年たったよ。
    お前がうちの店子になってから。
    あのころはお前の女房も生きていて、
    お前も身持ちがよかったのに
    飲むは打つはで店賃も滞るようになっちまってさ…
   あんときの修理代なんてもうとっくに時効だよ!

【過去問】
 甲・乙の債権が相殺適状になった後、乙の債権についてのみ消滅時効が完成した場合にも、乙は相殺をなしうる。(司S46−2)


【正解】「○」

【解説】

sakura04さくら:
相殺とは、2人がお互いに金銭債権などの
同種の債権をもっている場合に、
      一方の意思表示によって互いの債権
      対当額で消滅させることをいいます
      (505条、506条)。
      簡易な決済当事者間の公平を図るために
      認められました。

大 家:でも、与太郎の修理代金は、
    時効で消滅したはずですぜ。

さくら:時効によって債権が消滅した場合でも、
    その消滅する以前相殺に適するように
    なっていた場合には、相殺をすることが
    できます(508条)。

大 家:へー、そんなことができるんですか?

さくら:ええ、お互いに債権を持っている場合は、
    相殺適状に達したら相殺できると期待していますし、
    しかも相殺で決済したはずだと考えがちです。
    そこで、相殺に対する期待を保護するため、
    時効消滅以前相殺に適するようになっていた
    場合は、相殺できるとされました。
    ですから与太郎さんは相殺をすることができるんです。

大 家:期待してたのかねぇ。
    今まで何も言ってこなかったくせに。
    どうせその場の言い逃れだろ。
    権利の上に胡坐をかくものは保護に値しないって
    いうんじゃなかったかね。

さくら:でもこの場合、消滅時効の完成より前に
    相殺できる状態だったので…
    店子といえば子も同然。
    まあ勘弁してあげたら?

【条文】
(時効により消滅した債権を自働債権とする相殺)
民法第508条 時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は、相殺をすることができる。

『民法なエブリディ』では他にも相殺について取り上げています。
あわせてご覧ください。
2007年10月30日
第57回相殺…第505条
http://blog.livedoor.jp/wanwansakura/archives/64756314.html



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