【登場人物】
八五郎:おなじみ長屋の住人
熊五郎:同じく長屋の住人

【物語】

八:よ、熊つぁん。今日も寒いねぇ。
  どうだい、熱燗でもきゅ〜っと行かねぇかい?

熊:八っつぁん。おいら、それどころじゃねぇんだよ。。。
  この間、質屋から金を借りたときに
  「二月末日までに返済する」って書くつもりだったのに
  ついうっかり「一月末日までに返済する」って
  書いちまったんだ。
  もうすぐ1月末だろ。金がなくて困ってんだよ。

八:熊つぁん、お安い御用だ。
  「一月」に、線を一本足して「二月」にすりゃあ
  いいってことよ。

熊:そんなこと、質屋の親爺に通用するわけねぇだろ。

八:はっ、はっ、はっ。それもそうだよな。
  うーん、なんかこう民法でうまいこと言えねぇ
  かねぇ。

熊:民法で説明すると、「二月末日までに返済すると
  書こうと思った」というのが表示意思。
  そして「一月末日までに返済する」と表示したんだから
  表示意思と意思表示が違うってことだよな。

八:表示意思と意思表示が違うってことはさ、
  それ動機の錯誤とかって言うやつじゃねぇかい。
  熊つぁん、質屋の親爺には動機の錯誤で契約が
  無効だって言えばいいんじゃねぇか

【問題】
動機の錯誤は、表示意思と表示との不一致を表意者が知らない場合である。(H14−27)
【正解】×

熊:あ〜ぁ、おれのは動機の錯誤じゃねえのか。

さくら:「動機の錯誤」とは、内心の意思と表示一致
    しているけど、内心の意思を形成する動機
    誤りがある場合のことですね。
    たとえば、「この壷は本物に間違いないから
    買おう」と考えて偽物を買った場合です。
    「この壷を買おう」という内心の意思と
    「この壷を買います」という表示は一致して
    いますが、「本物に間違いない」という
    動機に誤りがありますね。

八:はは〜ん。
  ウチのかみさんも、なんて優しい娘だろうと思って
  結婚したら、てぇへんな鬼ばばぁだったってことも
  動機の錯誤ってことだね。

さくら:まぁ、それも動機の錯誤ではありますけど、
    ここは、もう離婚するのかどうかというお話に
    なりますね。

八:お前さん、よくそんなこと軽く言ってくれるねぇ。
  かみさんが恐くて離婚話なんか切り出せるかって。

熊:おいおい、そんなことより、問題は俺の借金
  錯誤で無効だって言えねえかねぇ。

さくら:熊さんの場合、表示意思と表示が一致して
    いませんが、元を正せば、「二月末に返済する」
    という内心の意思と「一月末に返済する」という
    表示の不一致を、知らなかった場合ですから、
    まさに錯誤の典型ですね。

八:お、こりゃいいねぇ。
  質屋の親爺には錯誤で借金は無効だと言って
  やればいいんだ。

さくら:そう簡単にはいきませんよ。
    借金について錯誤無効を主張するには、
    ,修虜誤が要素の錯誤であること、
    つまり契約の重要な部分に錯誤があることと
    表意者に重大な過失がないことが必要
    です(95条)。
    どんな場合でも錯誤無効を主張できたら
    相手方はたまりませんからね。

熊:返済の期日は重要な部分だから、要素の錯誤で
  いいけど、返済期日を間違えただなんて、
  重大な過失があったって言われそうだなぁ。

さくら:仮に錯誤無効を主張できても、受け取ったお金は
    無効な消費貸借契約に基づくものですから、
    不当利得として返さないといけません。
    結局、1月末に返済するのと、あまり変わらないですね。

八:しょうがねぇなぁ。
  こうなったら質屋の親爺に酒でも飲ませて、横線でも
  足しちまえ。
  うまくいけば「一月末日」を「三月末日」まで延ばせるって
  ことよ。


(錯誤)
第95条  意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。


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