【登場人物】

田口真也:茶川賞作家 Y
洲英子  :田口の秘書 A
奥村事務店 X

【物語】

小説「大食い」で茶川賞を受賞した田口真也。
受賞会見が話題になったこともあって、書店での売り上げは
急上昇。
しかし、マスコミ対応が鬱陶しく、秘書を雇うことにしたが―。

秘書:こんにちは。
   この度、田口の秘書となりました、洲英子と
   申します。先生に関する事務一般は、私が
   すべて担当させていただくことになりましたので
   どうぞよろしくお願いします。

奥村:いや〜このたびは田口先生、茶川賞受賞、
   誠におめでとうございました。
   それにしましても、このところの先生のご活躍ぶり
   はすごいですね。
   そろそろ、事務所にこのコピー複合機を導入されて
   はいかがでしょうか。受賞記念で75万円相当を
   50万円に致しますよ。

秘書:そうねぇ、茶川賞作家の事務所なんだから
   それぐらい必要よね。

奥村:はい。このコピー複合機でしたら原稿の送信も
   実にスピーディ。
   多忙な執筆活動も、少しはお楽になるかと…。

秘書:じゃあ、これ購入させていただくわ。
   請求書は田口宛によろしくね。


後日、田口宛に請求書が届いたが、秘書に、5万円以下の
日用品を購入する権限しか与えていなかった田口は激怒。
代金の支払いを拒絶した。


奥村:えっ、田口先生、代金を支払っていただけない!?

田口:勝手に騒がれてもねぇ。
   とっとと、終わりましょうよ。

奥村:あのぉ、受賞のお祝いに75万円相当を50万円まで
   お安くさせていただいたんですよ。

田口:確かシャーリー・マクレーンだったと思いますが、
   アカデミー賞に何度も候補になって、最後に受賞
   したときに『私がもらって当然だ』と言ったが、
   そういう感じ。

奥村:もう埒があかないよ。。。
   こうなったら、裁判で支払いの請求とこれに代わる
   請求をするしかないか…。
   えーと、それにはその根拠を書かないといけないん
   だけど。
   うーんと、えーと。。。

【問題】

作家Yに雇用されている秘書Aは、Y名義で5万円以下のYの日用品を購入する権限しか付与されていなかったが、Yに無断でXからYのために50万円相当の事務機器を購入した。しかし、Xは、Aに事務機器を購入する権限があるものと信じて取引をし、Yに代金の支払いを請求したところ、Yはその支払いを拒絶した。このようなYの支払い拒絶を不当と考えたXは、Yに対して、支払いの請求、およびそれに代わる請求について検討した。この場合において、Xは、どのような根拠に基づき、いかなる請求をすればよいか。「Xは、Yに対して、」に続けて、考えられる請求内容を二つ、40字程度で記述しなさい。(H23−46)
【解説】

さくら:まず、作家が代金の支払いを拒絶した根拠から
    考えて見ましょう。

奥村:秘書に田口先生名義で5万円以下の日用品を購入
   する権限しか与えていなかったのに、先生の名義で
   50万円相当の事務機器を購入したからでしょ。

さくら:そう、秘書には50万円の事務機器を購入する
    代理権がなかったわけです。
    代理権があれば、代理人が本人名義でした契約は、
    本人に帰属しますが、代理権がない者が本人名義
    で契約をしても、本人に効果は帰属しません。
    作家は、これを理由に代金の支払いを拒んだ
    というわけですね。

奥村:ということは、田口先生に代金の支払いを請求
   するには、無権代理人のした契約の効果が先生に
   帰属するという説明を考えればいいですね。

さくら:はい、そのとおり

奥村:無権代理人のした契約の効果が本人に帰属する場合
   といえば、表見代理ですよね。

さくら:表見代理には
    )椰佑代理権を与えたと表示した場合(109条)
    ∨椰佑なんらかの代理権を与えていた場合(110条)
    かつて代理権を与えていた場合(112条)
    がありますね。
    秘書には、5万円の日用品の購入権限を与えて
    いたわけですから、△慮限外の表見代理を
    主張することが考えられます。

奥村:でも、表見代理が成立するには、代理権が
   与えられていないことについて、善意無過失
   が必要ですよね。。。
   過失があると突っ込まれたらどうしましょうか。。。

さくら:○×問題なら、その請求が認められるかどうかが
    問題になりますが、ここでは、請求として主張し
    得るものを書けばいいんですよ。
    あとは、裁判所がどう判断するかになりますね。
    ということで、まずは「表見代理の成立を理由に
    代金支払請求をする」、でいいですね。

奥村:次は、代金の支払いに代わる請求ですか…。
   代金の支払いに代わるということは、
   無権代理人に対する損害賠償請求とか!

さくら:ぶーっ。
    作家に対する請求が問題になっていますから、
    秘書に対する請求を考えてもしょうがないですね。

奥村:損害賠償といえば、代表的なのものは、債務不履行
   と不法行為ですが、不法行為をしたのは秘書で
   作家ではないですし…。

さくら:秘書は、仕事上で不法行為をしたわけですから、
    それを作家に損害賠償請求するには…?

奥村:そっか。
   田口先生は秘書の使用者ですから、秘書の仕事上
   不法行為については、使用者責任に基づいて
   損害賠償を請求できますね(715条)。
   よし、これで裁判所に訴状を提出だ!

と、そのとき、奥村に一枚のファックスが届いた。

「都知事閣下と都民各位のために、支払っておいてやる」


【条文】
(代理権授与の表示による表見代理)
第109条  第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。

(権限外の行為の表見代理)
第110条  前条本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。
(代理権消滅後の表見代理)

第112条  代理権の消滅は、善意の第三者に対抗することができない。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。

(使用者等の責任)
第715条  ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2  使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3  前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。



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