【登場人物】

ルパン4世 C
ルパンの4世の叔母 B
ボナリー 隣の住人 A
峰不三子


【物語】

不三子:ルパン、今日は、別荘にご招待、あ・り・が・と
    とても素敵だわ。

ルパン:ここさ、10年前に叔母さんから相続したんだよね。
    叔母さんに子どもがいなかったから、俺に相続の
    お鉢が廻ってきたというわけ。

不三子:お庭も随分と広いじゃない。
    お花がとっても綺麗!

ルパン:相続のときに調べてわかったんだけど、本当は、
    この木から向こうは、隣の家の所有なんだよね。
    叔母さんがここを買ったときに、不動産屋に
    騙されて、全部自分の敷地だと思い込んでた
    らしいんだよ。
    まぁ、広い分にはいいかと思って、そのまま
    俺の庭にしてるけどさ。

ボナリー:やっと会えましたな、ルパン。
     君がそこまで知ってるなら、話が早い。
     ここから先の土地を明け渡してもらおう
     じゃないか。

ルパン:ひぇ〜、お、隣のボナリーさん。
    えーと、えーと、即時取得ってやつでしたっけ。
    ここはいい加減、俺のものってことで。

不三子:即時取得じゃなくて、時効取得でしょ。
    占有の開始の時に善意無過失なら10年間の
    占有の継続で所有権を取得できるわ(162条2項)。

ルパン:そうそう。
    えーと、叔母さんは、善意無過失で5年間
    占有して、その後は、俺が相続して10年間
    占有したから、時効取得は完成だね。

ボナリー:悪意の君に10年の時効取得なんて
     認められんよ 

【過去問】
 A所有の乙土地につき、Bが5年間占有した後にCがこれを相続して、さらに10年間占有を継続した時点において、CがBの占有と併合して取得時効を援用した場合、C自身が占有開始時に悪意であったときは、Bが占有開始時に善意であり、かつ無過失であったとしても時効取得は認められない。(H23−28)

 乙地(A所有)
 Bが5年占有 →Cが相続して10年占有
 (善意・無過失) (悪意)
正解「×」

不三子:正解が「×」ということは、10年の時効取得が
    認められるってことよね。

ボナリー:しかし、10年の時効取得(162条2項)が認められる
     には、占有者が善意無過失でないといけなかった
     はずですよ。

さくら:ルパンは、相続によって前主の占有をそのまま
    承継すると同時に、自己固有の占有を新たに
    取得したわけです。
    この場合、ルパンは占有の承継人として
    自己の占有だけを主張してもいいですし、
    自己の占有に前主の占有を併せて主張することも
    できます(187条1項)。

ボナリー:そこまではいいが、ルパンは本当は
     私の敷地だと知っている悪意者ですよ。

さくら:時効取得との関係で自己の占有に前主の占有を
    併せて主張する場合、占有者の善意・無過失は、
    最初の占有者占有開始時点を基準に判断します
    (最判S53.3.6)。
    1人で10年間土地を継続して占有した場合に、
    占有の開始時に善意無過失であれば、途中で
    事情を知って悪意になっても、10年で時効取得が
    完成するのと同じよう考えるわけです
    (162条2項)。

ルパン:俺が、叔母さんの5年の占有に自分の占有を
     併せて主張する場合は、叔母さんが善意無過失
     だから、10年で時効取得できるわけだ。
     
不三子:じゃ、この敷地は全部ルパンの所有ということで
    確定ね。
    それじゃ、ルパン、あなたの実印と登記済証は
    私がいただいて行くわね。
    Alors! 

ルパン:ふ、不三子のやつ〜っ

【条文】
(所有権の取得時効)
第162条  20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2  10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。

(占有の承継)
第187条  占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる。
2 前の占有者の占有を併せて主張する場合には、その瑕疵をも承継する。