【登場人物】

どら衛門
伸太
ジャイヤン


【物語】

30歳を過ぎて、ようやく運転免許を取得した伸太。
しかし、案の定、自動車をぶつけてしまった―。

伸太:ねぇ、どら衛門。
   今度の日曜日に静ちゃんとドライブ行くことに
   なっているんだよ。
   修理には2週間かかるっていうし、
   なんとか直してくれないかなぁ?

どら衛門:もう、相変わらずしょうがないなぁ。
     じゃ、『なんでも☆ナオルー』
     これで、ちょ、ちょいの、ちょいと。

伸太:やったー、流石、どら衛門だ
   これでドライブに行けるぞ。

どら衛門:待って。もう君も大人なんだから、
     修理代を払ってくれなきゃ、車は渡さないよ。

伸太:そ、そんな…。

どら衛門:修理代は車から生じた債権でしょ。
     払ってもらうまでは、僕には車を留置しておく
     権利があるんだからね。

ジャイヤン:よっ、お前ら何、揉めてんの?

伸太&どら衛門:ジ、ジャイヤン!

ジャイヤン:へぇ、これが伸太の買った車かぁ。
      ちょいと俺様に乗らせてみろよ。

――――――――――――――――――――

    ガッチャーン!!! 

どら衛門:あ〜あ。
     『なんでも☆ナオルー』は、そのまま30分
     置いておかないと、全部壊れちゃうんだよね。

伸太:ジャ…、ジャイヤンに、損害賠償を請求しなくちゃ。
   でも、僕がジャイヤンに損害賠償請求するなんて
   できないよぉ。。。

どら衛門:よし。僕は、留置権者だから、
     留置権者として、君の損害賠償請求権を
     ジャイヤンに行使してやる
     ついでに、修理代もそこからもらうよ。

ジャイヤン:ふん。ネコ型ロボットなんて、所詮、
      その程度だな。
      そんなの認められるわけねぇだろっ。

【過去問】
 留置権には、質権と異なり、被担保債権につき優先弁済を受ける権利がないので、目的物が滅失した場合、これにより債務者が取得する代位物には留置権の効力が及ばず、留置権は消滅する。(司H10−31)
正解「○」


【解説】

どら衛門:僕の留置権が消滅…。

さくら:留置権というのは、物について生じた債権
    弁済を受けるまで、その物を留置することが
    できるというだけの権利ですからね。

どら衛門:あのさ、先取特権、質権、抵当権だと
     物上代位ってあったじゃん。
     担保の目的物が消滅したら、それによって
     債務者が取得する損害賠償請求権についても
     担保権を行使できるってあったよね
     (民法304条、350条、372条)。

さくら:たしかに、これらの担保権では、目的物が売却、
    賃貸、滅失、または損傷
によって、債務者が代金、
    賃料、損害賠償
といった債権を取得する場合、
    その債権にも担保権の効力が及びます
    (物上代位性)。
    それは、これらの担保権が、目的物の交換価値を
    把握するものだからです。

どら衛門:交換価値を把握!?

さくら:これらの担保権は、担保を設定した物を
    競売にかけて、その代金から他の一般債権者
    よりも優先的に弁済を受けることができるでしょ。
    それは担保権が目的物の交換価値を把握するもの
    だからなんですよ。
    そのため、競売代金に限らず、目的物の滅失に
    対する損害賠償請求権など、その目的物の交換
    価値が転嫁したと認められるものには担保権が
    及ぶというわけです。

伸太:でも、留置権は、物を留置できるだけで
   目的物の交換価値を把握しているわけではないから、
   留置権者は物上代位できないってことか。。。

さくら:そのとおりです。伸太さんも、成長されましたね。
    留置物が滅失すると留置権自体が消滅して
    しまうのです。

どら衛門:そうだよ、伸太君。
     もう大人なんだから、損害賠償は自分で請求しろって
     ことだよ

【条文】
(留置権の内容)
第295条  他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。
2  前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。

(物上代位)
第304条  先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。
2  債務者が先取特権の目的物につき設定した物権の対価についても、前項と同様とする。

(留置権及び先取特権の規定の準用)
第350条  第296条から第300条まで及び第304条の規定は、質権について準用する。

(留置権等の規定の準用)
第372条  第296条、第304条及び第351条の規定は、抵当権について準用する。