【登場人物】

尾浜:ベンチャー企業社長
野場:車金融

【物語】

尾浜:あ〜ぁ、今月も赤字か。
   なんとか資金調達しないと、秋には役員選挙も
   あるし、やばいよなぁ。。。
   こうなったら車を担保に融資を受けるか。

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 『車でご融資、事業資金はスピード第一
  当日申込もOK』

尾浜:ちわーっす。

野場:これは、これは。小浜社長。
   ご融資のご相談でございますね。

尾浜:よくわかってるねぇ。
   今度、グアムに事業所を展開させたいんだけど、
   事業資金が足りなくてね。
   俺の愛車、飛天間号を担保に入れるから融資して
   欲しいんだよね。

野場:はいはい、それはもう。
   精一杯、高額査定をさせていただきます。
   こう見えて私、バスケットボールでいえばポイント
   ガード。
   目立ちませんが、結果を残しますから。

尾浜:それは頼もしいねぇ。
   君には期待してるから。

野場:では、お車には質権を設定いたしますので
   こちらにお引き渡しいただきまして。。。

尾浜:俺さ、飛天間号に質権を設定するのはいいんだけど、
   まだこれ使っていたいんだよね。
   引渡しが必要なら、俺が君のために車を保管する
   から。これって、占有改定による引渡しになるだろ。

野場:そ、そんなことを言われましても…。

尾浜:君は、俺の言うことを聞いていれば大丈夫だから。
   じゃ、後のことはよろしく


【問題】
 質物は、質権者に対し、占有改定の方法によって引き渡すことができる。(司書H11−14)
【正解】「×」

野場:そもそも、占有改定ってなんでしたっけ?

さくら:占有改定とは、占有物を以後本人のために占有する
    意思を表示することによって、本人に占有
    取得させる方法で(183条)、引渡しの一種です。

尾浜:ほらね、占有改定も、『引渡し』だろ。
   それなのに、なんで占有改定の方法で質権を設定
   できないのか、理解に苦しむよ。

さくら:質権というのは、質権者が、債権の担保として
    受け取った物を占有し、債権の弁済を受けられ
    なかった場合は、質物を競売にかけ、その代金を
    他の債権者よりも優先的に弁済に当てることが
    できるという権利ですからね(342条)。

野場:そうそう。
   目的物はこちらにお渡しいただき、弁済して
   いただけたら、これをお返しすることで、
   弁済を確保するわけです。

さくら:ところが、占有改定による引渡しは、占有権を移転する
    といっても、観念的なものですから、占有改定をしても
    実際には質権設定者の下に目的物があります。
    それでは、質権者が受け取った物を占有して弁済を促す
    という質権の本質と矛盾するため、質権設定者には、
    質権者に代わって質物の占有をさせることができない
    とされました(345条)。
    つまり、質権設定者は、占有改定の方法では目的物を
    引き渡すことができません。

尾浜:あ〜ぁ。
   でも、君には融資をタップリしてもらうからね。
   ついでにTPPも、牛肉の輸入拡大もよろしくぅ


【条文】

(占有改定)
民法第183条 代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。

(質権の内容)
民法第342条 質権者は、その債権の担保として債務者又は第三者から受け取った物を占有し、かつ、その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。

(質権設定者による代理占有の禁止)
民法第345条 質権者は、質権設定者に、自己に代わって質物の占有をさせることができない。