【登場人物】

ケチ元興業(株) A
宮川大輔    B
宮川鼻子

【物語】

 〜宮川鼻子、独白の巻〜

   あんな、聞いて、聞いて。
   ウチとこのケチ元興業。銀行から借り入れするのに、
   主人が物上保証人になってるんよ。

   えっ?
   保証人じゃないからええやろって!?

   そんな滅相もない。
   ケチ元から頼まれて、ウチとこの不動産に抵当権を設定
   したんやで。
   ウチの主人、カバみたいな顔して、義理だけ篤くて
   敵いませんわ。
   だいたい、あの不動産は私のしゃべくりのお陰や
   のにねぇ。
   
   そりゃね。
   ケチ元が、銀行に返済してくれればええんよ。

   でも、最近、若手が仰山増えて、人件費が経営を
   圧迫してますやろ。
   このままじゃ、ウチとこの不動産、実行されて
   しまうのが目に見えてますがな。

   へっ!?
   保証人なら、あらかじめ求償できるだろって!?

   あんた、そういう手があるんか。
   ま、物上保証人も、「保証人」て言うくらいやし。
   今なら、ケチ元にも資金が残ってるから、
   ほな、あらかじめ求償権を行使させてもらおうかな。
   でも、そんなこと、ホンマにできるん!?


【問題】
 私は、AがBから金銭の貸付を受けるにあたり、Aに頼まれて物上保証人となることにし、Bのために私が所有する不動産に抵当権を設定しました。このたびAの債務の期限が到来しましたが、最近資金繰りに窮しているAには債務を履行する様子がみられず、抵当権が実行されるのはほぼ確実です。私はAに資力があるうちにあらかじめ求償権を行使しておきたいのですが、これは可能でしょうか。(H22−31)
【正解】「可能でない」

【解説】

鼻子:あ〜悔しいわぁ。
   あらかじめ求償権を行使できないって
   ことやね。

さくら:確かに、委託を受けて保証人となった者は、
    一定の場合には、主たる債務者に対して
    あらかじめ求償権を行使することができますが
    (460条)、物上保証人は、委託を受けた場合
    であっても、債務者に対し、あらかじめ求償権を
    行使することはできません(最判H2.12.18)。

鼻子:保証人と物上保証人、同じようなフリして
   なんでそないに違うんよ。

さくら:まぁ、一言でいうと、物上保証人については、
    保証人のように事前の求償権を認めた規定が
    ないってことですね。

鼻子:えらい、簡単に答えてくれるわなぁ。
   ウチにとっては、大問題やで。

さくら:保証人の場合は、主たる債務者が債務を履行
    しなかった場合に履行しなければならないという
    「保証債務」を負っているのに対し、物上保証人は、
    抵当不動産の価格の限度で「責任」を負担するのみで
    自ら債務を負っているわけではありませんからね。

鼻子:そりゃあんた、ケチ元の肩代わりなんて、
   できますかいな。

さくら:しかも物上保証人の場合、求償権の成立や範囲は、
    抵当不動産の売却代金が配当されてはじめて確定
    します。そのため、保証人に関する事前求償権の
    規定を類推することもできないとされています。

鼻子:あぁ、もうアカンなぁ。
   恐い兄ちゃんたちを連れて、分捕ってくる
   わけにもいかんしなぁ。。。

大輔:それなら、お前が昔いた大阪府警の知り合い。
   一緒についてきてもろて、話をつけようやないか。

鼻子:さすが、私のダーリン。
   今まで黙っていただけのことは、あるやんか。

大輔:お前のことが一番、恐いだけや。


【条文】
(委託を受けた保証人の事前の求償権)
第460条  保証人は、主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、次に掲げるときは、主たる債務者に対して、あらかじめ、求償権を行使することができる。
一  主たる債務者が破産手続開始の決定を受け、かつ、債権者がその破産財団の配当に加入しないとき。
二  債務が弁済期にあるとき。ただし、保証契約の後に債権者が主たる債務者に許与した期限は、保証人に対抗することができない。
三  債務の弁済期が不確定で、かつ、その最長期をも確定することができない場合において、保証契約の後十年を経過したとき。