2012年07月05日

‘12年度 第31回 詐害行為取消権(424条)

【登場人物】

橋本不動産 不動産屋
尾沢二朗 ラーメン屋
岩原椎太郎 Olynpick(スーパー)経営


【物語】

このたびラーメン店を独立開業することにした尾沢二朗。
空店舗のあっせんを橋本不動産に頼んでいた。

橋本不動産:尾沢さん、この空店舗なんかいいと 
      思いますよ。
      近く、隣にスーパーが進出する計画もあるし。

尾沢:ほぉ。これなら丁度いいや。
   今度は、一兵卒から卒業して、やりたいように
   やってやるぞ。
   お客様の生活第一!
   原点に還る、だ。

橋本:んっ?
   なんかよくわかんないけど、じゃ、契約書を
   交わしましょう。

ところが、ほどなくして、スーパーOlynpickを 
経営する岩原が橋本不動産を訪れた。

橋本:これは、これは、岩原さん。
   直々にお越しですか。

岩原:今度、進出予定の用地なんだけど、
   隣に空き店舗あったよね。
   あそこ潰してウチの駐車場スペースにもらおうかと
   思って。

橋本:(うーん、あそこの空き店舗は、尾沢さんと
   売買契約書まで交わしちゃったんだよなぁ。
   でも、岩原さんに乗った方が得だしな) 
   岩原さんの頼みということでしたら
   なんとか致しましょう。

こうして空き店舗のあった土地はOlynpickに
売却され無事、引き渡された。

尾沢:くそ〜っ、橋本のやつ 
   うまいこと言って契約までさせたくせに
   二重譲渡するなんて。
   こうなったら橋本不動産とOlynpickとの
   売買契約を詐害行為として裁判所に訴えて
   取り消してやる

【過去問】
 不動産が二重に譲渡されたため、第一の買主が不動産の引渡しを受けることができなくなった場合には、第一の買主は、債務者と第二の買主との間で行われた売買契約を詐害行為として取り消すことができる。(H12−29)

【正解】「×」

【解説】

尾沢:先にあそこを買い受けたのは、俺だよ。
   それを後で売買したやつらが邪魔したんだから
   後の売買は詐害行為だろ。
   それなのに、どうしてこれを取り消せないんだ。

さくら:まあまあ落ち着いて。
    詐害行為取消権というのは、債務者が、債権者を害する
    法律行為をしたときに、債権者がこれを取り消して
    債務者の一般財産(債務の引き当てとなる財産)を保全
    する制度です。
    そこで、後の売買が、債権者を害する法律行為
    にあたるか、順番にみていきましょう。

【要件1】
被保全債権が詐害行為前に成立したこと。

【要件2】
財産権を目的とした法律行為であること。

尾沢:俺の方が先に売買契約をしてるんだから、
   店舗の引渡請求権は、詐害行為前に成立してるし、
   売買は財産権を目的とした法律行為だから
   問題ないでしょ。

さくら:まだまだ、あるのよ。

【要件3】
被保全債権が原則として金銭債権であること。

尾沢:これが問題なのか?

さくら:尾沢さんの店舗の引渡請求権というのは
    特定物の引渡請求権でしたが、先にOlynpickさんが
    物件の引渡しと登記を備えたことで、
    履行不能となり、損害賠償請求権に変わりましたよね。
    そうすると債務者の一般財産によって担保されるので
    金銭債権と同様の扱いになります(最大判S36.7.19)。

【要件4】
債務者が無資力となること。

尾沢:橋本家は、子沢山でしょ。
   これまでの子ども手当ては廃止されたから
   苦労してると思うよ。

さくら:無資力というのは債務超過ということです。
    橋本不動産は無資力ではないので、詐害行為取消権
    を行使できません。
    一応、残りの要件も紹介だけしておくわね。

【要件5】
債務者に債権者を詐害する意思があること。

【要件6】
受益者(Olynpick)または転得者悪意

尾沢:なんてこった

さくら:でも、詐害行為取消権を行使してて物件を橋本さんの
    ところに取り戻しても、債権者全員の引当てに
    なるだけですから(425条)。
    後は債務不履行に基づいて損害賠償でも請求して
    くださいね(415条)。

――――――――――――――――――――――

橋本:岩原さん。
   あなたのお陰で尾沢さんから損害賠償請求
   されちゃいましたが、それにしてもなんで
   あの物件を追加でお買いになったんですか?

岩原:俺は、アイツが隣に来るなんて嫌。
   絶対、生理的に嫌だったんだ! 


【条文】
(詐害行為取消権)
第424条 債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者又は転得者がその行為又は転得の時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。
2 前項の規定は、財産権を目的としない法律行為については、適用しない。

(詐害行為の取消しの効果)
第425条 前条の規定による取消しは、すべての債権者の利益のためにその効力を生ずる。

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