2012年09月27日

‘12年度 第42回 売買(557条)

【登場人物】
阿部興産:不動産屋
村の長老:


【物語】

阿部興産:おかげさまで阿部興産。このたび顧客満足度、
     第1位とさせていただきました。
     これからも美しい日本の不動産を皆様に、
     ご提供させていただくのが私の使命で
     ございます。

長老:もう、それはわかっとるから。
   それより、この間、お前さんと契約した土地。
   いつになったら引き渡してくれるかのう。

阿部:手続が遅れておりましたが、このたび前所有者から
   登記の移転を受けましたので、来月10日に
   お引き渡しするということでいかがでしょうか?

長老:それならよかろう。
   君に期待するしかないんだから、
   よろしく頼むよ。

しかし、その3日後。
阿部興産が長老を訪ねると―。

阿部:お客様、誠に申し訳ございません。
   例の不動産の売買契約ですが、お客様から頂いて
   いた手付けは倍額にしてお返ししますので、
   解除させていただきたいと存じます。

長老:か、解除だと
   君は、この間、前所有者から登記を移転したから
   不動産を引き渡すと言っとったじゃないか

阿部:………。
   (もっと高く買ってくれる人が現れたから、仕方ないんです)

長老:第一、民法には、解約手付けの倍額を返して
   契約を解除できるのは、「履行に着手」するまでと
   書いてある(557条1項)。
   君が、前所有者から登記を移転したのは
   「履行の着手」じゃろう。
   ここまできて解除なんて認められんよ。

【問題】
 売買契約において買主から売主に解約手付が交付された場合に、売主が売買の目的物である土地の移転登記手続等の自己の履行に着手したときは、売主は、まだ履行に着手していない買主に対しても、手付倍返しによる解除を主張することはできない。(H23−32)

【正解】「×」

長老:ええっ。
   わしが、手付け倍返しで契約を解除されて
   しまうというのか!? 

さくら:お客様が不動産屋に渡したのは解約手付け
    でしたね。
    買主から解約手付けが交付されていた場合、
    売主は、手付けの倍額を償還しさえすれば、
    契約を任意に解除することができますからね。

長老:しかし、解約手付けを交付していても、
   当事者の一方が「契約の履行に着手」した後は、
   契約を解除できんはずじゃよ(557条1項)。
   それとも、不動産屋は、まだ「契約の履行に着手」
   していないとでもいうのかね。

さくら:「契約の履行に着手」したとは、履行行為の一部
    するか、又は履行の提供をするために欠くことが
    できない前提行為をした場合をいいます
    (最大判S40.11.24)。
    阿部興産が、不動産を引き渡すために、
    前所有者から移転登記を受けたことは、
    欠くことができない前提行為として、「契約の履行
    に着手」したと言っていいでしょうね。

長老:それなのに、なんで契約を解除できるんじゃ。

さくら:当事者の一方が「契約の履行に着手」すると、
    他方の当事者が解約手付による解除ができなく
    なる(557条1項)のは、契約の履行に着手した者
    保護するためです。
    履行に着手した者が、相手方から契約を解除
    されては、それまでの行為が無駄になり、
    たまったものではないですからね。

阿部:契約の履行に着手したのは、私ですから、
   お客様が履行に着手していない間は、
   私から契約を解除することはできるという
   ことでございます。

長老:あぁ、またやりかけてから、辞めるのか。。。
   いい薬ができたと聞いておったが、
   君につける薬は、もうないというものじゃ! 

【条文】

(手付)
民法第557条 買主が売主に手付を交付したときは、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。
2 第545条第3項の規定は、前項の場合には、適用しない。

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